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4/4 僕のお嬢様

4/4 僕のお嬢様

 僕のささやかな人生経験ですべてを断定的に決め付けてはいけ
ないとは思うんだけど、僕の育った時代、僕の周りにいたお嬢様
なる人物はとても腰が低かった。

 誰と話しても丁寧な言葉で、僕なんか人間ができていないから
すぐに相手を見下したような態度になってしまうけど、どちらの
お嬢様もそれはまったくなかった。

 家に遊びに行くと、そこの使用人さんにもちゃんと『誰々さん』
とさん付けで呼ぶし、何かものを頼む時だって『お願いします』
という言葉づかいだった。

 よくマンガなんかで、お嬢様が家の使用人を呼び捨てにしたり、
あごで大人の人を使ったり、タバコなんかくわえてたりするのを
見ると、この人いったいどこのお嬢様だろうと思ったりしたもの
だ。

 むしろ事実は逆で、格式のある家であればあるほど親は世間の
評判を恐れて娘たちを厳しく躾けており、くれぐれも後ろ指など
指されないよう最大限の注意をはらって教育していた。

 もちろん、これは気品や知性、プライドといった事とは別で、
お嬢様というのは幼い頃から立ち居振る舞いを厳しく躾けられて
いたから、そこに立っているだけで、庶民の子には醸し出せない
『オーラ』のようなものを持っていたのだ。

 だから、庶民出の僕には……
 『このお嬢様って、いったいどんな教育を受けてるんだろう』
という素朴な疑問がわくし、そこから、よからぬ妄想だって生ま
れてくるのである。

 ところが、最近は……
 この『お嬢様』なる人物がとんと見当たらなくなってしまった。

 もちろん、世の中にお金持ちは沢山いるし、その娘だって沢山
いるんだけど、この人たちは僕が昔出合ったお嬢様ではないよう
な気がする。

 良きにつけ、悪しきにつけ国民みんなが同じ教育を受けるよう
になったということだろうか。
 昔のようなお嬢様なんて必要ないということなんだろうか。

 『お仕置き』が虐待と同意語になってしまったように『お嬢様』
もその意味が変質して古語になってしまうのかもしれない。
 寂しい限りだ。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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