2ntブログ

Entries

3/31  子守っ子、敬子の性春 ~3~

3/31  子守っ子、敬子の性春 ~3~

 お話は多少前後しますが、私がお義母様から二度目のキツイお
仕置きをもらう少し前のことです。

 夏休みの間も私はお義母様からずっと勉強させられていました
が、最後の1週間だけは、遅い薮入りのお休みをもらって実家に
帰ることができました。

 角田の家から実家までは近くの電停から電車に乗って20分。
終点で降りて徒歩でさらに山道を30分歩かなければなりません。
ただ、道中全部あせても一時間とかかりませんから、実家までは
そんなに遠い距離ではありませんでした。……ただ、ならば週末
ごとに実家に帰れるのかというと、そうはいきませんでした。

 そもそも私のように奉公してる者には世間の人が思い描くよう
な土曜日や日曜日といった日がないのです。
 むしろ世間とは逆で、学校に行かせてもらっている子守っ子は、
学校がお休みの土曜の午後や日曜に、ここぞとばかり家の人から
御用を言いつかります。ですから、土曜日や日曜日というのは、
むしろ忙しい曜日だったのです。

 もともと奉公人のお休みは薮入りと言って1月と7月の年二回、
それもそれぞれたった一日だけが公休日ですから、ほぼ一年中が
勤務時間でした。

 もっとも、私が育った頃になりますと、さすがに363日働き
づめはオーバーで、年に二回、一週間くらいのお休みを取る事が
できました。

 その日は若奥様にあつらえて貰った着物を着て、新しい下駄を
履いて帰ります。それと懐には多少まとまったお金が、お小遣い
として入っていました。

 しかも、こうした恩恵は何も働いている私だけじゃありません。

 私が実家に着くと、すでに若奥様が送った大きな柳行李が開け
られていて、家族全員が戦利品を分配しています。
 妹はすでにワンピースを着て独りファッションショーをやって
いましたし、兄は学生服に誇らしげに万年筆が刺さっています。
 もちろん母には帯止め、父は大吟醸を茶碗に注いですでに赤い
顔をしていました。

 7人の兄弟、父母、そして祖父母にいたるまで、薮入りになる
と、若奥様は私の家族全員分のお土産を用意して送ってくださる
のです。

 1日だけの昔とは違い、奉公人が一週間も実家で暮らせば、誰
だって里心がついてしまいます。実家にいる気安さから、お店や
主人の悪口だって飛び出します。そんな時、休暇明け、奉公人の
家族が奉公人を再び安心してお店へ送り出してくれるためには、
お店側も奉公人がお店で大事にされていることを家族にアピール
しなければなりません。

 そんなこともあって、若奥様は奉公人に何かと付け届けをして
くださっていましたが、他の商家なら子守っ子にこんな事までは
しません。

 年二回お店から送られる家族へのプレゼントは、お小遣い程度
の私のお給金より高価でしたから、家に戻った私の株はその瞬間
だけ上がります。若奥様は良い人だということになります。

 そんな、みんなが喜んでいる席で私が、『奉公先をやめたい』
などと切り出して、はたして家族が賛同してくれるでしょうか?
 その辺りは若奥様も計算ずくでプレゼント攻勢をしかけている
のでした。

 私は不利な状況のなか、夕食の時、両親の前で恐る恐る話しを
してみます。

 「今さあ、あたし若奥様の命令で学校の勉強させられてるの。
私の頭が悪いの、若奥様だった知ってるはずなのに、家庭教師の
先生までつけて無理やり『勉強しろ』だもん。こんなのおかしい
よ。……しかも、ついていけないと、お仕置きでお灸まですえる
んだから……あたしさあ、うちに戻って、家の仕事を手伝うよ。
……ね、それでいいでしょう」

 私は若奥様から特別な愛情を注がれている事までは話しません
でしたが、私なりに窮状を訴えます。

 すると母も私が『お灸』という言葉を使ったので心配になった
のでしょう。隣の部屋に私を呼ぶと、裸にして丹念に灸痕を確認
します。

 心棒はさすがに黙っていましたが、お尻のお山も尾てい骨も、
乳頭の周りやお臍、ビーナスの丘まで……相手が母親ですから、
ためらいはありませんでした。

 「ね、ヒドイでしょう」
 私は母に同意を求めます。
 『これがきっかけで家へ帰れるかも…』なんて思ったりもしま
した。

 ところが、母の反応は意外なほど冷静だったのです。

 「要するに灸痕がついたのはお尻の割れ目とお臍の下だけじゃ
ろう。お前が大騒ぎするからよほど何かされたのかと思ったら…
…このくらいの事なら家にいたってばあちゃんに据えられるから
同じだよ」

 「えっ……そんなあ……」
 あてが外れた私はがっかりです。

 確かに若奥様はお灸がとっても上手で、他の箇所は私が熱さを
感じるとすぐに火をもみ消してしまういわゆる寸止めですから、
灸痕は残っていませんでした。

 「それだけじゃないの。あの人、私のお股の中にもすえたんだ
から……」
 私は恥ずかしかったのですが、とうとう最後の手段に打って出
ます。

 私は、これを見せたら母が角田のお店へ怒鳴り込むんじゃない
かって思って心配していましたが、いざという時は、母だけなら
その場所だって見せるつもりで心の準備をしていたのです。
 ところが……

 「……ふう~ん、お前、すでに心棒まで入れてもらったんだ。
……それは、やっぱり、奥様が自らなさったのかい?」
 母は私を確かめもせず、こう聞いてきます。

 私はここぞとばかり若奥様の悪口を言い立てました。
 「だから、おかしいでしょう。それだけじゃないのよ。若奥様
は私を裸にして撫でたり擦ったりもするんだから……いいこと、
あの人がおかしいの、ちょっとやそっとの事じゃないわ。あの人、
きっと変態なのよ」

 もちろんそれは、母が私を家に戻してくれることを期待しての
ことでした。

 「そうかい…………」
 母がその時考えていたのもきっとその事だと思ったのです。
 『娘の為にどうやって父を説得しようか』って……

 ところが、その時母が考えていたのは、まったく別の事でした。

 「心棒ってのは、このあたりに昔からの習慣だけど、やるのは
たいてい良家のお嬢様だけ。うちらみたな貧乏人の家じゃ、まず
やらない。女中や子守になんか、お仕置きとしてたって、やられ
たなんて話、聞いたことがないよ。ましてや奥様がご自身で据え
てくださったなんて……お前、よほど若奥様から可愛がられてる
んだね」

 「ええええっ……何言ってるのよ。そんなことないよ。だって、
あれはお仕置きなんだよ」

 「だからさ、そんなこと、本来、奥様のお仕事じゃないもの。
女中や子守が何かしでかして折檻される時は、古株の女中がやる
ものなんだから。お前だって女なんだから、わかるだろう。女の
あんな処、誰だって触りたいなんて思やしないよ。それをやって
くださってるんだよ。お前の為に…………特別な思いがなきゃ、
ありえないよ」

 「だって……」

 「しかも、家庭教師までつけて勉強させてもらってるなんて。
お母さん、正直、若奥様の真意はわかないけど、そういう時は、
乗ってやってみて損はないと思うよ。それに、お前の口ぶりだと、
しゃべってる愚痴ほどには、どうしても今の生活が耐えられない
とは聞こえないもの」

 「どうしてそんな事わかるのよ!こっちは本当に大変なのよ!」

 「何だ?違ってるのかい?」

 「えっ!」

 「私はあんたを赤ん坊の時から負ぶって世話してるんだ。……
だから、あんたがどれくらい切羽詰ってるかぐらい分かるんだ。
……私はあんたの母親なんだよ!!……違ってるかい!?」
 母は最期には語気を強めます。

 「…………」
 私は言葉を失いました。
 というのも、家庭教師を付けられて勉強を始めた頃は、確かに
毎日毎日嫌で嫌で仕方がなかったのですが、少しずつ学校の勉強
が分かってくるようになると、それはそれで楽しみも出てきます。
それを母に見透かされたのがショックでした。

 「ここで言えるだけの愚痴を言ったら、お店へお帰り。そして、
若奥様に必死に着いて行ってごらん。それが何よりおまえの為だ
から……」

 「えええっ、だって、あそこはお灸が…………」
 私は最後の抵抗を試みますが……

 「お灸なんて、ここにいたって据えられるよ。お前は、そんな
事とは引き換えにならないくらい大きなチャンスを掴んでるんだ。
頑張ってごらん」

 「ええええっ……」
 私はすっかりあてが外れてしまってがっかりです。
 でも、母の言う『どうしても今の生活が耐えられないという訳
じゃないんだろう』という言葉もまんざら嘘じゃありませんから
仕方がありませんでした。

 私の家は元々水呑み百姓と呼ばれる小作の農家で、農地解放で
地主にはなりましたが、暮らし向きは決して楽ではありませんで
した。
 楽ではないから私が子守にだされたのです。

 そんな私が「帰りたい」なんてわがままを言っても両親が困る
のは分かっていました。だって、私が帰って農作業を手伝っても
それで私が自分の食い扶持を稼ぐことはできないのですから……

 母と二人して居間へと戻ってくると、母が家族を前に重い口を
開きます。
 それは『父が春先に怪我をして1ヶ月農作業に出られなかった
こと』や『すぐ上の兄が高校へ進学したいという話』でした。

 それらはいずれも、『うちの経済事情が厳しいから、おまえは
中学を卒業するまでは今のお店で働いて欲しい』という意味です。

 予想されていた展開とはいえ、私にとってはたびたびがっかり
です。
 『幼い頃から慣れ親しんだ家で、家族と一緒に暮らしたい』
 そんなささやかな幸せでさえ、この時はできませんでした。

 でも、そんな私の姿を見て不憫に思ったのでしょう。意外にも、
大吟醸で出来上がっていた父が承知してくれたんです。

 「お前がそんなに嫌なら仕方がないじゃないか。そこの主人に
お暇をいただけるよう、わしが手紙を書いてやるから安心しろ」
 とまで約束してくれたのでした。

 私はそんな父の口約束に一縷の望みを託していました。
 ところが、そんなはかない夢も、この間お義母様からお仕置き
をいただいた時についえてしまいます。

 父が、私の希望に反して『今後とも娘をよろしくお願いします』
と若奥様宛てに手紙を書いてよこしたのを見せられたからです。

 後で知ったのですが、父はすぐ上の兄が高校へ行くための資金
を角田の家から借りたみたいでした。

 実家での約束は父が酔っていましたから仕方がないとも言える
のですが、『裏切られた』という思いは残ります。
 それはお義母様から据えられた心棒よりもずっと長い時間私の
心を苦しめたのでした。

*************************

 二学期が始まると、とたんに三田村先生の予想が的中します。

 夏休み明けの確認テスト。これは夏休み中も真面目に勉強して
いたかを確認するテストです。これで私の国語はクラストップの
成績でした。

 普段、通知表が3だった子がいきなりクラスの最高点を出した
わけですから、当然、周囲は驚きます。
 特に担任の先生は私がカンニングしたんじゃないかって疑った
くらいでした。

 「あら、何だか気落ちしているみたいね。お勉強大変かしら?」

 お義母様に言われたのでその事を話すと……
 「大丈夫よ、あなたの力は本物ですもの。心配する事はないわ。
何度か試験を受ければそんな疑いすぐに晴れることじゃないの。
女は何かと目移りするけど、あれもこれもって追いかける人より、
与えられた場所で努力した人の方が幸せになるのよ。……あなた
に与えられたのは、この場所。そして、この私」

 「…………」

 「信じられる?」
 「…………はい」
 こう答えるしかありませんでした。

 「だったら、付いてらっしゃい。幸せにしてあげるから……」
 「はい」
 お義母様の強い言葉につられるように、ほんの少し声が大きく
なります。

 「その代わり、お仕置きも沢山よ。わかってる?」
 「はい」
 私はまた一歩、お義母様との中が近くなったみたいでした。


*************************

 さて、こうやってお義母様との関係ばかり述べていると、さも、
私が角田家の一員になったかのようですが、そうではありません。

 お義母様との関係は、あくまでお義母様と私が二人だけでいる
場合だけのことで、普段の私は相変わらず子守っ子のままでした。

 私は相変わらずお義母様の子どもたち三人の面倒をみなければ
なりません。着替え、入浴、食事のお給仕……はては下の男の子
二人(双子)のトイレの世話だって私の仕事でした。

 男の子は双子ですから共に4歳。お義母様がちゃんと仕付けて
らっしゃいますから身の回りのことは一通り何でもできるのです
が、私がそばにいると昔の習性で何でも甘えたがります。

 着替えや入浴は立ってるだけですし食事は欲しいものを指差す
だけ。仕方なく私がスプーンに乗せて口元まで持っていってやる
と、喜んで椅子の上で跳ね回ります。まだまだ赤ちゃん気分です
からトイレでウンチをする時なども、赤ちゃんがするように私が
だき抱えてやらなければなりませんでした。

 怖いお義母様が見ているとちゃんとしていますが……いない処
では二人とも私に甘え放題なんです。

 お義母様は、そんな二人を見て「自分でやりなさい!」と叱り
つけますが、効果があるのはその時だけ。放っておくと何もしま
せんから、結局は私がやる事になります。
 それは、子守っ子の悲しい宿命みたいなものでした。

 その点、美咲ちゃんはすでに10歳ですし、何より女の子です
から、子守の世話は受けたくないとばかりに自分のことは何でも
自分でしたがります。

 ま、それはいいのですが、彼女、大変なお転婆娘でした。

 幼稚園の頃から札付きで、女の子よりむしろ男の子の友だちの
方が多く、男の子と一緒にチャンバラごっこやターザンごっこを
やって遊んでいました。

 当然、喧嘩相手も大半が男の子ですし、顔はいつも日焼けして
真っ黒、年がら年中生傷が絶えませんでした。

 ご主人(お父さん)がよく冗談めかしに……
 「あいつ、そのうちオチンチンが生えるじゃないか」
 なんて言っていたほどなんです。

 今の言葉でなら『体育会系』ということになるのでしょうか。
学校の成績はビリから数えた方が早いですし、ピアノとか日舞と
いった習い事も続けてはいましたが、サボってばかりですから、
いっこうに上達しません。
 お義母様にしてみると、それが頭痛の種だったみたいです。

 そんな事情から、美咲ちゃんはお母さんからよくお小言をいた
だいていました。
 いえ、お小言だけならまだしも、キツイ折檻(お仕置き)だって
日常茶飯事だったんです。

 つまり美咲ちゃんとお義母様って似たもの親子だったんです。

 そんなある日のこと、その美咲ちゃんに勉強を教えるように、
つまり家庭教師になるようにと、お義母様が私に命じるのです。
 それは今までの経緯から、ある程度予想できたことなのですが、
いかんせん私にはハードルが高すぎます。

 「無理です」
 私ははっきりお断りしたのですが、お義母様は……

 「いいから、やって……あなたへのフォローは何でもしてあげ
るから……もちろん、言うこと事きかないようならあなたの判断
でお仕置きしたってかまわないのよ」

 「…………」
 お義母様はそうおっしゃいますけど、私はまだ14歳、しかも
使用人の立場です。主人の娘さんをお仕置きするなんて、そんな
大それたことできるはずがありません。

 でも、お義母様は聞き入れませんでした。
 そして、敬子ちゃんを前にこう宣言します。
 「あなただって、いつまでも山猿のままってわけにはいかない
でしょう。だから今度、敬子さんにあなたのお勉強をみてもらう
ことにしたの」

 当然、美咲ちゃんは大むくれです。
 だって、私は年長者といっても子守っ子ですからお嬢様である
美咲ちゃんは私の事を自分の下にいる人間だと思っていました。
それがいきなり自分の先生になるわけですから面白かろうはずが
ありません。

 でも……
 「いいわね」
 お義母様に強く言われると……
 「はあい」
 あくびしたようにも見えますが、美咲ちゃんとしてはとにかく
こう答えるしかありませんでした。

 しかも……
 「敬子さんには、もし、あなたがサボるようならお仕置きして
かまわないって言ってあるから、そのつもりでいなさいね」

 「えっ!?」
 美咲ちゃんの顔色が変わります。
 おまけに……

 「それでは、ちゃんと正座して、先生によろしくお願いします
をしましょう」
 最後はお義母様の指示で、私を前に両手を畳に着けてのご挨拶。

 「先生、よろしくお願いします」
 私の前で笑顔なんかありませんけど、笑顔のお母さんに押し切
られた格好でした。美咲ちゃんはこの時まだ10歳。お母さんに
言われたら嫌でも仕方がありませんでした。


 そこで、美咲ちゃんの家庭教師を始めるには始めたんですが…

 案の定、元は子守っ子だった私のレッスンなんかまともに受け
てくれませんでした。美咲ちゃんはたちまち膨れっ面になって、
ストライキです。

 でも、これもまたお義母様は織り込み済みのようでした。

 昭和30時代、このくらいの年齢の子がお母さんの言うことを
きかない時はどうなるか……

 「いやあ~~お灸だめ~~ごめんなさい、ごめんなさい、……
勉強します、勉強します、だめえ~~お灸しないでしないで~」

 突然、家中にもの凄い大音響が木霊します。
 もう少し歳がいけば、女の子ですからね、自分の悲鳴がご近所
にも届いて、恥ずかしいという気持も起こるんでしょうが……

 「いやあ~~人殺し~~鬼~~やめろ~~~死んじゃう~~」

 いつも元気一杯の美咲ちゃんは、仏間に引きずられて行く時も
元気一杯でした。

 「敬子ちゃん、あなたも手伝って」
 お義母様はもの凄い形相で私を睨みつけると一緒に着いて来る
ように指示します。
 まるで、私も美咲ちゃんの共犯みたいでした。


 仏間に引っ立てられた美咲ちゃんは、さっそく畳の上に仰向け
に寝かされ、ショーツを剥ぎ取られると両足を高くされます。

 「この子、押さえてて」
 お義母様がこう言って、美咲ちゃんの両足を私に預けるまで、
あっという間でした。

 「いや、お灸いや、ごめんなさい、もうしませんから、やめて」

 美咲ちゃんは仏壇にお灸を取りに行ったお母さんに向って必死
に命乞いしますが、身体をよじろうとすると……

 「お黙り!!」
 ドスのきいた声で一喝されてしまいます。

 すると、美咲ちゃんは本当に黙ってしまいました。
 私だって経験があるから分かるのですが、美咲ちゃんは本当に
怖かったんだと思います。お母さんが怖くて怖くて、声が出ない
みたいでした。

 こんな時、今のお母さんなら、まずお仕置きをするにあたって
事情を説明してくれるみたいですが、私の育った時代、私の育っ
た町ではこの位の子供をお仕置きするにあたっては親が何も説明
しない方がむしろ一般的でした。

 おいた(罪)とお仕置き(罰)は、できるだけ時間を短くが基本
だったのです。
 「お母さんはこんなに怒ってるのよ」
 という怒りの感情を子供に伝えることが大事だったんです。

 『もう、お仕置きは逃れられない。もし、これ以上お母さんを
怒らせたらどうなるか……』
 その先を経験済みの美咲ちゃんは諦めるという道を選択したの
でした。

 「やっと、おとなしくなったわね。……どうなの?少しは反省
した?」
 お母さんは美咲ちゃんのお股から顔を覗かせて、しょげ返って
いる美咲ちゃんの顔を見ます。

 「急におとなしくなったから、お漏らししたのかと思ったけど
……それはないみたいね」
 お義母様はそうは言いつつも美咲ちゃんのお股をタオルで綺麗
に拭き取ります。

 親子ですから、そのあたり何のてらいもありませんでした。
 そして、おそらくは私が据えてもらった艾よりさらに大きな艾
をまだ小さな大陰唇の近くに乗せます。

 「ほら、火をつけるよ。歯を喰いしばって!!」

 お母さんが言ったのはそれだけ。
 私より小さな身体の美咲ちゃんが私より大きな艾の味を噛み締
めます。
 それは、私にとっても子宮がぐっとしぼむほどの衝撃でした。

 「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
 声にならない声が私にも伝わります。
 それは両足を押さえている私にとっても辛い体験でした。

 ただ、美咲ちゃんは仏間へ入って来た時とはうって変わって、
静かにお灸のお仕置きを受けています。

 「よし、あなたも少しはお姉ちゃんらしくなったみたいね」
 お母さんは満足そうに笑うと、美咲ちゃんの両足を下ろして、
ショーツを穿かせ、正座したご自分の膝に乗せます。

 私が育った世界では『まずは、とりあえずビール』じゃなくて
『まずは、とりあえずお仕置き』
 そして、ここからがお小言でした。

 「どうして、学校で敬子先生のありもしない悪口なんか言うの。
敬子先生はあなたよりお姉さんで、成績も優秀。あなたに不足の
ない先生なのよ」

 「だって、子守じゃない」

 「そうよ、子守よ。だから、あなたたちお世話になったんじゃ
ない。それのどこが問題なの?学校の成績が優秀だから、今は、
あなたたちのお勉強もみてもらってる……それだけじゃないの。
それのどこが気に入らないの?」

 「それは……」

 「敬子ちゃんはね、子守をしながらお勉強してこんなに立派に
なったの。立派になったからあなたのお勉強をお願いしたのよ。
それに引きかえあなたはどうなの?何一つお家のお仕事をしない
ばかりか、何をやらしてもサボることばかり考えてるじゃない。…
…ん?敬子ちゃんとはえらい違いよね」

 「…………」
 美咲ちゃんは泣いているのでしょうか、お母さんの胸に顔を押
し当てます。

 「あなたは何もしなくてもずっと私の娘でいられると思ってる
のかもしれないけど……私は傲慢な子や怠け者は嫌いなの。……
いいのよ、あなたなんかここにいなくても……跡取りは、すでに
二人もいるんだし……」

 「えっ?」

 「そう言えば、叔父さんがあなたを養女に欲しいっておっしゃ
ってたことがあったわ。あなた、そっちで暮らした方がよくない?
……うちは女の子が欲しかったら、敬子ちゃんを養女にするから
……」

 「…………」
 この時、美咲ちゃんの顔が真っ青になったのがわかりました。
 それはあり得ないと思っても、お母さんと離れて暮らすなんて、
子どもは絶対に考えたくありません。ですから、お尻叩きより、
お浣腸より、お灸よりこれが一番キツイお仕置きだったのでした。

 「どうやら、あなたはわかってないみたいね。敬子お姉ちゃま
からあなたが習わなければならないのはお勉強だけじゃないの。
見習わなければならないことがたくさんあるの。それをよ~~く
覚えておきなさい」

 「はい」
 美咲ちゃんは少し甘えた声を出しますが、お母さんのお仕置き
がこれで終わったわけではありませんでした。

 「そう、良いご返事ね。それじゃあ、今日学んだことをお灸で
復習しましょう」

 「はい」
 美咲ちゃんの顔には明らかに不満な様子が窺えますが、養女に
出すとまで言われたら従うしかありません。

 美咲ちゃんにとってはこれからが本番。これからがお仕置きの
メインイベントでした。

 「敬子ちゃん、この子慣れてるからたぶん大丈夫だと思うけど、
一応、美咲の身体を押さえててね」
 私はお義母様に頼まれましたが……

 「そんなことしなくていい、大丈夫だよ。あんたは何もしない
で……」
 美咲ちゃんが自分で服を脱ぎ捨てながら不満そうに言います。
当時、角田の家の子供たちがお灸のお仕置きを受ける時に許され
るのはパンツ一つ。女の子の美咲ちゃんもショーツ一枚でした。

 美咲ちゃんの気持は分かります。他人の私が見ている前で裸に
なるのは嫌でしょうし、身体を押さえられるのはもっと嫌なんで
しょうけど……

 「生意気言うんじゃありません!!あんたのそういう処がいけ
ないの!!」
 お母さんに一喝されてしまいました。

 確かに私が押さえてなくても美咲ちゃんは耐えられるかもしれ
ません。けれど、これはお仕置きのためのお灸ですから、誰かに
取り抑えられながらお灸を受けさせるという屈辱感みたいなもの
がお仕置きをする側にとっては大事な要素となるのでした。

 腹ばいになった美咲ちゃんは、まずは首筋の少し下と腰の辺り
に背骨を挟んで二つずつ、仙骨の辺りに一つ、すでにある五箇所
の灸痕に新たな艾が乗せられます。
 そうしておいて……

 「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
 「はい、先生の悪口は言いません」
 美咲ちゃんがお母さんにご返事すると、首筋の下にある艾にお
線香の火が移されました。

 「ひぃ~~~」

 「しっかりお勉強しますね」
 「はい、ちゃんと勉強します」
 今度も同じ。美咲ちゃんがお母さんの期待するご返事が出来て
から、腰の辺りに乗せられた艾に火が移されるのでした。

 「うっ~~~~」

 「次にこんなことしたら、このお尻の穴に焼き鏝ですからね。
分かってますか?」
 お母さんは、あえて美咲ちゃんの菊座に指を突き立てます。
 こんなこと、もちろん本当の親子だからできることでした。

 「はい、そんなことにならないように頑張ります」

 最後は仙骨のあたりに……

 「あっ、ああああああつ~~~」
 思わず顔が歪み、引きつったような声が出ます。
 慣れていても、やはり、ここが一番熱いようでした。


 「さあ、次は仰向けよ」

 仰向けにされた美咲ちゃんは、最後の砦である白いショーツも
剥ぎ取られて、その下、お臍の下に集中砲火を浴びます。

 もちろんここでも、一火ごとにお母さんが質問を繰り返します
から美咲ちゃんはそれに丁寧に答えなければなりませんでした。

 「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
 「はい、先生の悪口は言いません」
 お母さんはその答えを聞いてからお線香の火を艾に近づけます。

 でも、もし美咲ちゃんがちょっとでもふて腐れた顔を見せたら
……

 「あら、そう、まだ反省が足りないみたいね」
 こうお母さんに宣告されて、やり直し。
 また、熱いお灸を最初から我慢しなければなりませんでした。

 もちろん、それは美咲ちゃんも十分に承知してはいるのですが、
いかんせんまだ幼い子供のことで、そういつまでもお芝居(?)は
続きません。

 そこで……
 「もう一度、最初からやり直します」
 なんて言われたら、もう手遅れでした。

 「いやあ~~~だめ~~~ごめんなさい、もうしません、もう
しませんぁぁぁ、熱い、いやあ~~もうしないで~~いや、いや、
いや、だめ、だめ、だめ、死んじゃう、死んじゃう」
 お灸は二度目三度目は最初の時よりさらに熱いですから、美咲
ちゃんの顔も最初の一火から歪みます。

 「おかあちゃま、何でも言うことききます、何でも言うことき
きますからもうしないで……」
 美咲ちゃんはたまりかねて甘えた声を出しますが、お母さんは
決して許そうとはしませんでした。
 むしろ……

 「ほら、敬子ちゃん、もっとしっかり押さえてて、ここが肝心
なところなんだから……」
 美咲ちゃんに向ったお義母様の怒りが、私の方へも跳ね返って
来ます。

 家庭内のお仕置きって、親も子も体裁をまったく気にしません
から、そのぶん過激でハレンチ。それは戦場というか、修羅場で
した。

 お義母様は艾を小さくして、何度も何度も据えます。
 そして美咲ちゃんが泣き疲れて懺悔する声さえ出なくなるまで
それは続いたのでした。


 一区切りがつくと、お義母様は美咲ちゃんを正座した膝の上に
抱き上げます。
 そして、まるで幼子をあやすように抱きしめてから再びお小言
するのがお義母様のやり方でした。

 「あなたは自分が角田家の娘だからここで働いている人は自分
より下の人間だぐらいに思ってるみたいだけど、それは違うのよ。
そもそも、今のあなたに何が出来るの?」

 「…………」

 「力仕事はもちろん、お裁縫もお料理も何もできないじゃない。
今のあなたは、私とお父様に食べさせてもらってるだけでしょう。
……違うかしら?」

 「…………」

 「そんなあなたが、ここで働いてる人たちを足蹴にするような
ことを言っていいはずがないわ。敬子ちゃんはたしかに子守よ。
でも、あなたなんかよりはるかに偉いの。誤解したらいけないわ。
そもそも、あの人たちを雇っているのは、お父様。そして、私。
あなたじゃないの。……いいこと、これだけは覚えておきなさい。
今のあなたは、この家ではまだ何の役にもたたないお人形でしか
ないの」

 「……はい」
 美咲ちゃんの口から小さな小さな声がやっとでました。
 その美咲ちゃんにお母さんは追い討ちを掛けます。

 「お人形は誰かにあげることができるわ。幸い、家には跡取り
もいることだし、あなたはもういらないの。叔父さんが子どもが
欲しいそうだから、あなた、そこで養女になった方がよくないか
しら?」

 「いや、お母さんのところがいい」
 今度はもっとはっきりした声がでます。

 「そう、だったら仕方がないわね。ここにおいてあげるけど、
その代わり、敬子お姉ちゃんとしっかり勉強して頂戴。いいわね」

 「……はい」
 また声が小さくなりました。

 「もう一度言います。敬子お姉ちゃんは山猿のあなたなんかに
比べたら、はるかに優秀なの。十分に家庭教師が務まるわ。もし、
今度お姉ちゃまを困らしたら、その時はお尻の穴に焼き鏝。……
いいわね」

 「いや、いや……美咲どこへも行かないから……」

 お母さんの厳命に美咲ちゃんの顔が震えます。そして、震えた
顔は、やがて震えたままお母さんの胸の中に収まるのでした。


****************************

コメント

コメントの投稿

コメント

管理者にだけ表示を許可する

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR