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4/5 おやつ

4/5 おやつ

*)エッセイ

 今の人は『家』という概念が希薄なので、。世の中というのは
日本国憲法以下、それに連なる法律で万事規制されているものだ
と思ってるみたいだけど、僕たちが子供の時代には『家』という
枠内だけで通用する法律というものがあったんだ。

 日本国中でここだけにした適用されないルール。そうローカル
ルールが各家庭に存在したのである。

 もちろん、それって我が家にも色々あったんだけど、僕が一番
不愉快だったのは、おやつに関することだった。

 もともと僕のお家で『おやつ』というのは、水菓子か、貰い物
のゴーフルや泉屋のクッキー、虎屋の羊羹、なんてところなんだ
けど、そこに『近所の駄菓子屋で買ってきた御菓子』というのは
含まれていなかった。

 でも、僕にだって『お友達とのおつき合い』ってなものがある
から、お小遣いで駄菓子屋の御菓子を買いたかったのだ。

 そこで、その事をお母さんに訴えると……
 渋々、お小遣いで駄菓子屋のお菓子を買うところまでは許して
くれた。そこまでは……

 ところが……
 「そこで買ったお菓子を道々食べてはいけませんよ。必ずお家
の中で食べなさい」
 って言われてしまったんだ。

 「おやつをお外で立って食べるなんて……あなたは、乞食の子
じゃないの。そんなみっともないまねしないでちょうだい」
 というのが母の言い分だった。

 だから、ごく幼い子の頃は駄菓子屋で買った御菓子をそのまま
家に持ち帰っていたのだが……
 家に着くと不思議な事に嬉々として買ったはずのその御菓子が
あまり美味しそうじゃないんだ。

 だから、おやつはこれまでのようにゴーフルやクッキーや羊羹
をお母さんのお膝の上で食べていた。
 こちらの方が断然美味しかったからだ。

 別にお菓子の味や値段は関係ない。これらのお菓子というのは
お母さんのお膝の上で跳ね回り、お母さんのお手々を舐めながら
食べることができるからとっても美味しいのだ。

 ところが、そんなある日のこと……

 悪友たちが、「一緒に食べようぜ」と言って僕を神社の境内に
誘いこんだ。
 僕としては、もうそれだけでちょっとした不良少年気分だ。

 「こんなところで食べていいの?」
 尋ねる僕に……悪友たちは不思議そうな顔をして……
 「何言ってるんだ?オマエ?」
 と言われた。

 そこで、さっきみんなと一緒に買ってきた駄菓子屋の御菓子を
みんなと一緒に食べてみたんだけど……これが……

 「(えっ)!!(美味しい)!!」

 僕は感激した。
 そのお菓子は信じられないくらい美味しかったんだ。

 『そうかあ!駄菓子屋で買うお菓子は、みんなでお外で食べる
から美味しいんだ!!』

 これが、僕がお外のルールを初めて知った瞬間だった。

************************

コメント

[C17] 逆の体験?

お久しぶりです、しおごはんです。

小さいころに通っていた駄菓子屋さんを思い出します。冷蔵庫の音の響く薄暗い店内で、傷だらけで曇ったアクリル蓋がついた容器から出した、きなこ棒やあんこ玉。

実は先日、スーパーで駄菓子を見つけて買ってみたんですが、綺麗に個包装されたきなこ棒を食べても、なんだかモソモソするばかりで全く味気ないものでした。爽やかに感じたラムネの味も変に酸っぱくて…。

この記事を読ませていただいて、家庭毎の価値観の差に戸惑ったり、ローカルルールを破ることに微笑ましい罪悪感を懐いたりした子供時代を懐かしく思い出しつつ、やはりあれは走り回った後の空腹、握りしめた小銭を数えつ限られた自由を楽しみ、喧騒の中で食べたから美味しく感じたのだな、とあらためて思いました。

今更ながら、体調を崩されていたそうで心配しております。どうかお大事に。
  • 2016-04-09 08:57
  • しおごはん
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  • 編集

[C18] Re: 逆の体験?

> お久しぶりです、しおごはんです。
>
> 小さいころに通っていた駄菓子屋さんを思い出します。冷蔵庫の音の響く薄暗い店内で、傷だらけで曇ったアクリル蓋がついた容器から出した、きなこ棒やあんこ玉。
>
> 実は先日、スーパーで駄菓子を見つけて買ってみたんですが、綺麗に個包装されたきなこ棒を食べても、なんだかモソモソするばかりで全く味気ないものでした。爽やかに感じたラムネの味も変に酸っぱくて…。
>
> この記事を読ませていただいて、家庭毎の価値観の差に戸惑ったり、ローカルルールを破ることに微笑ましい罪悪感を懐いたりした子供時代を懐かしく思い出しつつ、やはりあれは走り回った後の空腹、握りしめた小銭を数えつ限られた自由を楽しみ、喧騒の中で食べたから美味しく感じたのだな、とあらためて思いました。
>
> 今更ながら、体調を崩されていたそうで心配しております。どうかお大事に。

体調まで気遣っていただきありがとうございます。
今は、まだまとまったものは書けず、落書きばかりです。
(昔からそうかもしれませんが……)

駄菓子のお話は気取って聞こえるかもしれませんが、
要するにうちの母親の気位が高いというだけのことで、
私が特別『いいところの子』というわけではありません。

そもそも
「駄菓子を外で食べないでどこで食べるんだ!」
ってなもんです。

ただ、駄菓子で言えば、私が試験管に入ったゼリーが
お気に入りだったのですか、これを食べると吹き出物
が出るので気にしていました。
人工甘味料か着色料が私の体にあわなかったんでしょうが、
それをチェックしたかったのかもしれません。

しおごはんの新作期待してます。

  • 2016-04-09 10:27
  • tutomukurakawa
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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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