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第 7 話

< 第 7 話 >
 真里への儀式が終わったあと、一週間ほど過ぎてから私は河村さんに
頼まれて一緒に図書館を案内することになった。もちろんそんな仕事は
他に誰でもできそうなものだが、巷での面識がある私の方が心強いのか
私を指名してきたのだった。
 「どうですか、その後、真里ちゃんとは?」
 「ええ、私の方は順調です。最初、パジャマを用意したんですが先生
から止められたんでしょうね次の日からは着なくなりました。それでも
いきなり親しみの湧かない男の隣に裸で寝るのは可哀想だと思い。タオ
ルケットを捲いて寝るようにしたんです。でも、それもNGだったらし
く、三日目はついに私の隣で裸で寝てくれました。そして四日目、恐る
恐る抱いてみると抵抗らしい抵抗は何もしませんでしたが震えてました
からね、『寒いのか?』って言ったら笑ってました。以降は他の子と同じ
です。今日の出来事をあれやこれや聞いて、これからやりたいことや夢
なんかを聞いて…私は想いで話しをして…幼い子には絵本を読んでやっ
たりします」
 「いい、お父様ですね」
 「いえ、自分の子供たちにはこんなこと、したことありませんでした。
当時は忙しかったもんでね。なかなか子供の相手はしてやれなくて……
娘とも一緒に風呂に入れたのは、たしか幼稚園まででしたよ。以後は、
一緒にお風呂に入ろうなんて言おうものなら変態扱いですからね。でも
ここでは15の子でも一緒にお風呂なんですね」
 「それが子供たちの仕事なんですよ。私たちはお父様に可愛がられる
ように動きますし、そうなるようにママや先生方から訓練され続けるん
です」
 「どうりで……ここの子供たちはなんて無垢で純粋でよく躾られてて
なんて子供らしい子供なんだろうって思ってましたけど、あれは私たち
を喜ばせるお芝居だったんですね」
 「いえ、純粋なお芝居じゃありませんよ。義務感をもってお父様たち
とは接っしますが、心にもないことをしてるってわけじゃないんです。
子供ですからね、抱かれれば素直に嬉しいし、お風呂で身体を洗っても
らうのも、同じお布団のなかで身体を撫でてもらうのも、それはそれで
楽しいことなんです」
 「でも、それって子供たちには辛いことを強いてるじゃありませんか」
 「確かに大人たちの期待に応えることができないとお仕置きお仕置き
で追いまくられますからその点は辛いですけど、ただお父様はお仕置き
なんてしませんからね、お父様との関係で辛いと思ったことはありませ
んよ」
 「でも、先週は真里にわたし……」
 「あれは例外中の例外ですよ。その代わり、慣れるまでは真里を毎晩
抱き続けてくださいって言われたでしょう」
 「ええ、……でも、うまくいってますよ」
 「女王様はそうなることを見越して河村さんお願いしたんだと思いま
す。ご自分でお灸をすえてその責任をとっていただく」
 「せ、責任ですか……」
 「いえ、そう堅苦しく考える必要はありませんよ。慣れるまで真里を
毎晩抱いてやればいいんです。普段、夜とぎの子供は日替わりでしょう
けど、真里だけは特別に毎晩抱いてくださいということなんですから」
 「なるほどそういうことなんですか」
 「相手は子供ですからね。大人のようには割り切れない子もいるわけ
です」
 「そりゃそうでしょうね。かたや物心ついた時から抱かれ続けた親、
こちらはいきなり現れたおじさん。こりゃ勝負になりませんよ」
 「でも、そんなことも想定して躾ているので大半は大丈夫なんですが
……」
 「だから、例外中の例外ってわけですか」
 「今夜あたり、あの子のお股の中に手を入れてみてごらんなさい」
 「えっ、そんなこと」
 「大丈夫ですよ。といってあまり卑猥な動きをされても困りますけど、
触れたという程度なら問題はありません。……私なんて男でしたけど、
お母様から毎晩のようにオチンチンを触られ、キスされ、ありとあらゆ
る処を濃厚なスキンシップで責められましたけど、別に不快と感じた事
なんてありませんでした。いえ僕だけじゃありませんよ。亀山で育った
子はどの子も大人のスキンシップを楽しい遊びとして躾られてますから
ね、少々のことでは驚かないんです」
 「真里のような思春期の子でも…ですか」
 「はい、そのあたりは巷の子供たちとは感性が違うはずです」
 「…………」
 河村氏は口を閉じてしまったが、後日、この事で礼を言われた。恐ら
くそんな子供がいるなんて彼には信じられなかったんだろう。しかし、
亀山とはそんな処だ。だからこそ、資産家が金を使いわざわざ移住まで
して子供の世話をする不思議な場所なのだ。
 雑談するうち目的地に着いた。そこは子供が立ち入ることのできない
大人たち専用の図書館だ。
 「ここって、学校ですよね?勝手に入って大丈夫なんですか?身分証
か何か……」
 「そんなもの必要ありませんよ。ここに限らず亀山はどこでも大半が
出入り自由なんです。そもそも怪しい人はこの山には入れませんから。」
 それは私にとっての常識だから思わず心の中でふいてしまった。
 「…河村さんだって温泉宿の大浴場に入ったことがあるでしょう?」
 「ええ、まあ…」
 「その時、身分証なんか提示して湯船に浸かりますか?」
 「……」
 「ここも同じなんです。お互い同じ常識を共有する者同士の信頼関係
で成り立っているんです。ですから、亀山のゲートをくぐる時は色々と
チェックがありますけど、入ってしまえば、中は自分の常識やモラルの
範囲で自由に行動して構わないんです。でなければ年頃の娘を素っ裸に
して公園の枷に繋ぎ止めとくなんてことができるわけないじゃないです
か。逆に言うと、そんなことができる処だからこそここは楽園なんです」
 「なるほど……だから外国人には門戸を開いていないのか」」
 「さあ、こちらです」
 講堂の中二階まで一旦上がってその奥にある目立たない扉を開ける。
 小さな踊り場の先に石造りの階段があって、螺旋状に地下へと降りて
いけるようになっている。その階段は鍵のかかった厚い木の扉で行き止
まり。だが脇にあいた小窓に部屋の鍵を置くと用務員のおじさんが扉を
開けてくれる手はずになっていた。
 「どうぞ、河村様、合沢様」
 作業服姿の用務員さんは厚い木の扉を開き丁重に二人を招き入れる。
入ると応接セットといった感じのソファとテーブルがあってバーカウン
ターも備わっている。広さも五六人がちょうど心地よいという程度だ。
 「酒も飲めるんですか?」
 「ええ、固いことは言いませんが、ドアを出れば学校ですからそこは
ご理解ください」
 「なるほど、生活のすべての面で私の良識が試されるというわけだ」
 「亀山への入場を許されている人はすでにその資質が高く評価されて
いる方ばかりですから堅苦しく考える必要はありませんが、多くの人の
美学に反するようなら問題となることもあります。ただ、ここについて
言うなら、多少の醜態は大目に見てもらえます。夜まで待って外に出れ
ばいいんですから」
 「なるほど」
 二人の会話に先ほどの用務員さんが顔を出す。
 「ご予約がございませんでしたのでこのような姿で失礼いたします。
お飲物は?」
 「ドライマティーニ」
 「ぼくはスクリュードライバーで」
 「承知しました。こちらが本日のメニューでございます」
 そう言って置いていった厚手の表紙の薄い本。
 「メニューですか」
 河村氏はそう言って手に取った。どうやらそれが本当にメニューだと
思って中を開いたようだった。
 「…………」
 驚きの表情が楽しい。
 中にはずらりと昨日今日起こった事件が……
 「なるほど」
 事のあらましまで記(しる)したお仕置きの記録がそこには写真付き
で載せてあった。
 「お気に入りのものがあれば取り寄せることができますよ」
 私は自分に渡されたメニューを見ながら河村氏に勧める。
 メニューはあくまでサンプル。学校のお仕置きは必ず動く絵となって
残っていたのだ。
 「どれもいいですね。迷ってしまいます。でも、これ全部というわけ
にはいかないんでしょう」
 「もちろん可能ですが、一皿3万円ですけど、よろしいですか?」
 「ということはこれ五本で15万円か……」河村氏はしばし笑ってい
たが、「いいでしょう。でも、ビデオは持ち帰れるんでしょう?」という
ので、その説明をしようとしたら用務員さんがドライマティーニとスク
リュードライバーを銀盆の上に乗せて現れた。
 「残念ながら旦那様、それはここでしか見ることができないんです。
ただ一旦お買いあげになられたものはここに来ていただければいつでも
無料でご覧になれますが……」
 「持ち出しはできないのか」河村氏は苦笑したが、それはあきらめた
ということではなかった。
 「分かりました。五本とも買い取りますよ。正直、私はこういう事が
嫌いではないものですから……」
 「それはようございました」
 用務員さんはメニューを下げようとしたが…
 「おう、これは失礼いたしました。今日のメニューには由香里お嬢様
のが含まれております。たしか、由香里様は河村様の……」
 「ああ、そうだよ。だからこそそれを一番始めに見てみたいと思って
たんだ」
 「でしたら、これに代金は発生しません。親御さんがご自分の娘さん
の折檻をご覧になるのは当たり前のことですから」
 「そうか……」河村氏の笑い皺がさらに深くなった。
 「ところで、もっと古いものもあるのかね。例えば、ここの合沢先生
がここにいらした頃のものとか……」
 「ええ、ございますけど、当時は8ミリか16ミリフィルムでしたの
であまり画質がよろしくございませんが……」
 「かまわないよ。探してみてくれないか。……ね、合沢先生」
 河村氏が悪戯っぽく笑う。
 「…………仕方ありませんね。本当はあまりお見せしたくないんです
が、拒否する権限もありませんから……ま、よろしいでしょう。来月、
一万円振り込まれますから、それで寝酒でも買います」
 「ん、どういうこと?」
 「ここで先生が支払われたお金はそのフィルムに映っている子の口座
に振り込まれる仕組みになってるんです。現役の子は手数料なしの3万
円、大学卒業前の子は手数料1万円を引いて2万円、私のような社会人
だと2万円が手数料で1万円が振り込まれるというわけです」
 「なるほど育英資金になってるわけか。ささやかだけど何もないより
ましだ」
 「これだけじゃないんですよ。みんな楽器を習ってるでしょう」
 「ああ、みんな上手なんで驚いてる」
 「その演奏会が年に10回くらい開かれるんですが、そこでのギャラ
ンティーなんかも個人口座に振り込まれるんです」
 「へえ~~じゃあみんなプロなんだ。どうりでうまいはずだ。でも、
そのレッスン料なんかは?」
 「もちろんお父様が払います。それに演奏会といっても多くがお父様
とコネクションのある会社で開かれるものでマッチポンプみたいな催し
ものも少なくありませんから子供たちが純粋にお金を稼いだとは言えな
いかもしれませんが……」
 「つまり、はじめから我が子にお金を渡す目的で自分で演奏会を開く
ってことだ」
 「ええ」
 恥ずかしそうに答えると…
 「でも、いいじゃないか。それだけ愛されてるって事だもん。いや、
実をいうとね。世間色々うるさい事を言う人がいるから、ひょっとして
もっとうさんくさい処なんじゃないかって心配してたんだ。でも、今の
君の話を聞いて安心したよ。ここのお父様たちは本当に子供好きで子供
を愛しているってわかったから……」
 「本当は直接お金を渡した方が安上がりなんだけど、それじゃあ子供
のためにならないからって……」
 「そうでしょうね、分かりますよ」
 「女王様やお父様達が知恵を出し合って成人になるまでにいくらかで
もお金を残してやろうというので色んな催し物に引っ張られるんです。
でも世間を知らない子供たちはそんな大人の愛情なんかも分かりません
からね。『孤児だからってこき使うなよな。僕たちだって遊びたいんだ
ぞ!』って影で言ってました」
 「親の心子知らずですね」
 「貯金通帳は一応見せられるんで、お金が貯まっていく様子は分かる
んですが、どのみち数字だけで使えませんから実感が湧かないんです」
 「どのくらいになるんですか?」
 「人によってそれぞれでしょうけど……僕の場合は一番多い時で……
三千万円くらいじゃなかったかなあ」
 「三千万ですか。そんなに……」
 「僕は男の子でしたし、それにめちゃくちゃに弾いたピアノ曲がレコ
ードになってちょっぴり売れたりしたもんだから……」
 「男の子の方が稼ぐんですか?」
 「社会人になった時の支度金として稼がせてくれるんですよ。女の子
の場合、お嫁入りの相手も結婚資金もお父様が出すケースが多いもんで
すから、手元資金はそんなにいらないんです。もし、結婚生活がうまく
いかなくてもここへ戻って先生をやるって方法もありますし……でも、
そう言うと彼女たち怒ります。そんな考えが女性の自立を妨げてるって
ね」
 「ねえ先生、そんな音楽の才能がおありだったら、先生はなぜそちら
の道には進まれなかったんですか?」
 「そちらって音楽ですか?」
 「作曲がお得意とか……さっき言われてましたでしょう……」
 「ああ、あれですか。あれは、一応、五線紙に音符は書きましたけど、
当時の音楽の先生がよりよく手直ししてくれたから完成できたんです。
僕の力だけじゃないんです。それに完成したそのレコードを売ってくだ
さったのも天野お父様なんですから僕の誇れるものは何もないんですよ。
とにかく、お父様も女王様も私たちの口座にお金が振り込まれるように
色んな仕組みを考えてくださってるんです。これだけじゃありませんよ。
これなんかその一部です」
 「そうか、そう聞いては五本では足りないな。百本くらい買ってあげ
ないと……」
 「それは豪勢ですね。でも無理なさらなくてもいいですよ。ここには
それこそ膨大な量の映像が眠っていますから。暇をみつけていらっしゃ
って、興味を引く物があれば、ぼちぼちお買い上げくだされば、それで
いいんですから。ドライマティーニはこちらによろしいですか」
 用務員さんがいつの間にか蝶ネクタイ姿になってカクテルを運んでく
る。
 「ねえ、このビデオを本人と楽しむというのは悪趣味だろうか」
 「構いませんよ。合沢様がご承知なら…」
 「いや、今の子供たちとですよ」
 「それはちょっと……先生がお仕置きの一つとしてそうしたことなさ
ることはありますけど、いずれにしてもここへは子供を呼べませんから」
 「あっそうか、肝心なことを忘れてた」
 「スクリュードライバーをお持ちしました」
 「ありがとう」私は用務員さんからカクテルを受け取ると河村さんに
助言する。
 「簡単なことですよ。その子のお父様と仲良しになればいいんです」
 「なるほど、その手があったか」
 このあと、河村氏は太古の昔に撮られた私のお仕置きフィルムを探し
出すと、楽しそうにその当時の様子を質問してくるのだが、私としては
いくら過去のことでも恥ずかしい思いでにつき合わされるのは苦痛で、
適当に調子をあわせることになる。
 ただ、……
 『おれ、こんな顔をしてお灸をが我慢してたのか』
 『あの美少女、大きくなってからはいつも凛としていて近寄りがたか
ったのに、こんな事して泣き叫んでた時もあったんだなあ』
 『あっ、高橋先生、若い!』
 『あっ、これ覚えてるよ。クラスの子全員素っ裸にされて校庭を三周
走らされた時のやつだ』
  などという発見もあったので決して無意味ではなかったのだが……。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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