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8/10  アルベルト・アンカーの絵画

8/10  アルベルト・アンカーの絵画

 アンカーさんは19世紀に活躍したスイスの画家さんである。
ほとんどの絵が故郷の村に題材をとったものなので出てくる人物
も、みな村人ばかり。しかも、お祭りのような華やかな場面では
なくて普段の生活が主なモチーフ。だから実に、地味な絵である。

 何でもスイスでは国民的な人気を誇る画家さんなのだそうだが、
遠い異国のこの日本ではあまり知られていない画家さんだ。

 でも、私はこの『絵かき』さんが好きである。
 のどかな風景の中にとけこんだ村人の顔には異邦人の私が見て
も違和感がまるでない。そこで暮らしたことのない私でも親近感
がもてるのだ。さながらその時代に撮られた写真をそのまま油彩
にしたような絵は、暗くて重いという評価もあるだろうが、私の
心にはフィットする。

 実直な大人たち、穏やかな顔の幼児、特にちょっぴり不安げな
顔をのぞかせる少年少女からは、その場の雰囲気、台詞までもが
こちらに聞こえてきそうである。

 そりゃあ同じように庶民的なモチーフで多くの画家さんたちが
色んな絵を描いているのは知っている。ところが、彼らの作品に
はどこか嘘を感じてしまう。もちろんその『嘘』こそが芸術なの
だろうが、いずれにしてもそれは私とって似て非なるものなので
ある。

 例えばフェルメール『牛乳を注ぐ女』なんかもこうした系統だ
と思うのだが、そこに描かれている人物は地味な衣装を身につけ
ていてもアンカーのとは違うのだ。

 もちろんそれはそれで意味のあることで、絵画的には成功して
いるとは思うのだが、その絵を見た瞬間、私は不自然さを感じる。
その人物を目立たせようという画家の魂胆が透けて見えるのだ。
 そうやって見てしまうとその人物は作者の主義主張が書かれた
お人形ように見えてリアリティーは失われてしまう。

 彼の作品にはそうした余分な欲がないのだ。
 だから、見ている者が素直に感激できる。
 ここが心地よいのだ。

 特に、2才で亡くなった自分の子供をあえて描いた絵は圧巻で、
ベッドに寝かされた死体をこんなにも厳かに描けるものかと感動
してしまった。

 村人の自然な生活の営み。大人たちが実直すぎる為に子供たち
も底抜けに明るいわけではない。そんな処も当時のリアリティー
だ。

 私はアンカーさんが語りかけてくる嘘のない村人の自然な生活
を垣間見ながら、こんな世界を描いてみたいと『カレンのミサ曲』
を描いてみたのである。

アンカーさんの絵

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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