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御招ばれ <第1章> 「 第 3 回 」

    御招ばれ <第1章> 「 第 3 回 」

 *** 前口上 ******
*)ソフトなソフトなお仕置き小説です。
  あくまで私的には……ということですが(^◇^)

*)あ、それと……当たり前ですけど、一応、お断りを……
  これはフィクションですから、物語に登場する団体、個人は
  すべては架空のものです。実在の団体とは関係ありません。


 *** 目次 ******
  <第1回>(1)~(6)  /いつもの大西家へ
 <第2回>(7)~(11) /お浣腸のお仕置き
  <第3回>(12)~(17)/鞭のお仕置き


 ***< 主な登場人物 >***************

 春花……11歳の少女。孤児院一のお転婆で即興ピアノが得意。
     レニエ枢機卿が日本滞在中に彼の通訳をしていた仁科
     遥との間につくった隠し子。
 美里……11歳の少女。春花の親友。春花に乗せられて悪戯も
     するが、春花より女の子らしい。絵が得意な少女。
     植松大司教が芸者小春に産ませた子。
      二人は父親の意向で母親から引き離されこの施設に
     預けられたが、彼女たち自身は父母の名前を知らない。

 大西泰幸……中世史の研究をする大学の先生。実の子はすでに
    医者として独立、『茜』という養女をもらっているが、
    春花や美里も養女にしたいという希望を持っている。
 大西一枝……大西泰幸の妻、専業主婦。茜を厳しく躾けるが、
    茜は彼女を慕っている。
 大西茜……大西泰幸の養女。13歳で春花や美里よりお姉さん
    だが、楚々とした感じのお嬢さんとして躾けられている。
 高瀬先生……古くから大西家に出入りしているお医者様。特に
    子供達へお仕置きがある時は浣腸や導尿などでお手伝い
    もする。
 明子さん……長い間大西家に仕えている住み込みの女中さん。
    大西家の生き字引。

 **************************


*********<第3回>*************


 御招ばれ <第1章>(12)

 現れた茜ちゃんはトレードマークだった三つ編みを解いていま
した。自由になった髪がストレートに肩へ流れると、今までとは
印象が少し違って見えます。ほんのちょっぴりですが、お父さん
にもその姿は大人に見えました

 茜さんはお約束の白いレースのワンピースをさらりと着こなし、
白い短ソックスに黄色いアヒルのスリッパを履いていました。
 そして、お母さんが自分のものをおまじないに振りかけたので
しょうか、ほのかに薔薇の香りが漂います。

 「何だか大人の人みたいに見えるね」
 春花が言えば……
 「ほんと、キレイ」
 美里の思いも同じでした。

 ただ、妹たち二人を見た茜さんはというと、心穏やかではあり
ませんでした。

 そんな不安げな茜さんの肩を抱くように、今度はお母さんまで
が現れます。

 「なんだ、父兄同伴かい」
 お父さんはお母さんに皮肉を言いますが……

 「仕方ありませんよ。この子は女の子。しかもまだ幼いんです
からね。あなたが恐いんですよ。誰かが着いててやらないと……
こんな処でお漏らしでもしたら大変でしょう」

 お母さんは茜さんを擁護したつもりなんでしょうか?
 茜さんは顔を赤らめます。

 いずれにしても、大西家では二親がともに子供へ厳しく接する
ということはありませんでした。
 今日はお父さんがお仕置きをするというのですからお母さんは
茜さんのサポート役だったのです。

 「あのう、あの子たち、ずっと、ここにいるんですか?」
 茜さんは、さっそく目障りな二人につけて尋ねますが……

 「いけないかい?」
 お父さんから薄情な答えが返ってきます。

 「そうだよ。……実は、今日も施設の院長先生からこの子たち
を里子にお願いできないかというお話があってね、今、考えてる
ところなんだ」

 「そうなんですか……」
 茜ちゃんは気のない返事を返します。
 茜ちゃんにしてみれば、家族の中だけならいざ知らずお仕置き
をこんな子たちに見せるなんて…という思いが心の中で渦巻いて
いたに違いありませんでした。

 「ついてはね、この子たち、これまではお客さんとしてうちに
来ていたから、うちの楽しいところしか知らないでしょう。でも、
うちにも辛いことはたくさんあるよね。それを今回見せてみて、
それでもうちに来たいというなら呼んであげようかと思うんだ」

 「えっ、それじゃあ、私のお仕置きをこの子たちに見せるの?」
 茜ちゃんは、最初、目を丸くして大声をあげましたが……
 「……私、生贄なんですか?」
 自分の声に、妹たちが肩をすくめて驚いたのを見ると、最後は
歯切れ悪くお父さんに尋ねます。

 「生贄なんて人聞き悪いなあ。たまたま同じ部屋にいるだけだ
よ。……ところで、茜は、今日何かおいたをしたのかい?」
 お父さんは皮肉たっぷりにこう尋ね返す始末でした。

 「…………」
 これには茜ちゃんも返す言葉がありません。お父さんの前で、
茜ちゃんは下唇を噛むことしかできませんでした。

 「そんなに深刻にならなくても大丈夫だよ、たとえこの二人が
うちに来ることがなくなっても、ここでのことは街に漏れたりは
しないから……」

 「どうしてですか?」

 「この子たちは『教会の子供たち』だからね。私たちとは住む
世界が違うんだ」

 お父さんは、茜さんを安心さそうとしてこう言ったのですが、
その言葉が、どれほど茜さんを励ますことになったかはわかりま
せん。
 分かっているのは、今日はこれからこの妹分二人の前で自分が
醜態を晒さなければならないという現実だけでした。

 ちなみに『教会の子供たち』という用語はその子たちが単なる
捨て子ではなく、教会関係者が神に背いて創ってしまった子ども
たちのことを指していました。

 このため、一般の孤児たちとは異なり、この子たちに対しては
親からそれなりの養育費も出ていますし、面倒をみるシスター達
の扱いも丁寧です。

 ただ、その将来は決められていて大半が聖職者。子どもたちは
隔離された世界の中で大人になり、世間で注目されるような職種
につくことは認められていませんでした。


 「じゃあ、始めようか。……こっちへ来て座りなさい」
 少し顔の表情を引き締めてお父さんが茜さんを呼び寄せます。

 茜さんに与えられたのは、妹分二人が座っているようなソファ
ではありませんでした。どこの学校にも置いてあるような座面が
硬い木でできた粗末な椅子。
 そこに今の茜さんの立場が現れていたのです。

 「先日、学校から今学期の中間テストの結果をみせてもらった
んだけど……芳(かんば)しくなかったみたいだね」

 「ちっ、やっぱり、そのことなんだ」
 茜さんは思わず小さな舌打ちをします。
 実際、お母さんからはその事でお父さんが怒っているみたいだ
との情報を得ていましたから本当は自制しなければならないので
しょうが、お父さんとの間の普段が思わず顔を出してしまいます。

 「何だか不満そうだね。『何だ、そんなつまらないことで私を
呼びつけたのか』って顔をしているよ」
 お父さんの顔は笑っていますが、舌打ちされた側の人が相手を
面白くないのは誰でも同じことです。もちろん、相手がお父さん
でも、それは同じでした。

 「今学期の始め、私は茜の為にスケジュール表を作ってあげた
けど……あの通りできなかったみたいだね」

 「そんなことは……」
 茜さんは伏し目がちに小さな声で否定しようとしましたが……

 「手元の記録では、たしかにやったってことになってるけど、
もし、本当に私の指示通りにやっていたのなら、こんな結果には
ならなかったはずだよ」

 「それは……」
 お父さんの追及に茜さんの顔が曇ります。

 「それは、やってもいない勉強をやりましたって私に報告して
いたってことじゃないのかな。……つまり、私に嘘をついていた
ということだよね」

 「えっ……」
 茜ちゃんは『嘘』という言葉にひっかかりを覚えて顔をあげま
すが、『じゃあ、どれほど真剣にやっていたんだ』と問われたら、
それには返す言葉がみつかりませんでした。

 「小学校の頃はどうだったか、覚えているかい?」

 「『どうだった』って何が……」

 「勉強だよ。茜はどうやってお勉強してたか覚えているかい?」

 「それは……」
 茜さんは、再び頭を下げると、そのままじっとしていました。
嵐の過ぎ去るのを待つことにしたのでした。

 「えっと……」
 うつむくその顔は確かに申し訳なさそうな顔にも見えますが、
内心は、『あ~あ、お小言早く終わらないかなあ』と思っていた
だけでした。

 何よりこうしていればお父さんの恐い顔を見ずにすみますし、
お小言が頭の上を通り過ぎていきますから楽だったのです。

 そんなことですから、すぐに眠くなっちゃって……
 「茜、聞いているのかい?」
 なんてお父さんに強く言われちゃいます。

 「えっ?」
 茜ちゃんは思わず顔を上げましたが、その時すでにしっかりと
寝ぼけ眼。

 「どうやら、もうオネムのようだね」
 お父さんは声こそあげませんでしたが、我慢は限界に近づいて
います。ただ、悲しいことに幼い茜ちゃんにはその事を察知する
レーダーが心にまだありません。

 「忘れちゃったかな。小学校の頃のことは……」
 「あっ……はい……あっ、いいえ」
 お父さんは相変わらずの笑顔のままですから、茜ちゃんはその
顔を見て、むしろほっと一息です。

 でも、お母さんは大人ですし、何より長らく夫婦ですからね、
お父さんの気持は茜ちゃんよりよくわかっています。

 「覚えてます。テストのお点が悪いと、そのたびにお母さんが
家庭教師をやってくれて……もし、そこでも答えを間違えると、
お尻をぶたれてました……」
 消え入りそうな声で茜ちゃんが答えます。

 「そうだね、小学校では単元ごとにテストがあるから、各教科
一学期で10回はテストがある計算だもんね。茜ちゃんも、毎日
毎日痩せる思いだった訳だ」

 「…………」

 「その点、中学校では一学期に行われる主なテストは、中間と
期末の二回だけだもんね。今はずいぶん楽になったと思ってるん
じゃないのかな。……それで、気が抜けちゃったというわけだ」

 「(えっ、何が言いたいのかしら?)」
 茜ちゃんはお父さんの言葉に身の危険を感じます。
 それって、理屈ではなく女の第六感というやつでした。

 「茜。これは今回のテストに限らないんだけど、幼い時という
のは、何かにつけてお仕置きが多いんだ。……それも、おいたを
したらすぐにぶたれる。……覚えてるだろう?」

 「…………」
 茜ちゃんは小さく頷きました。

 「それが大人に近づくと、お仕置きの回数は減るものなんだ。
勿論、分別がついておいたの回数が減ったというのもあるけど、
私たちもまた、大きくなった子に、『些細なことまでとりあげて
お仕置きをするより、もう少し様子をみよう』と思い始めるんだ。
……その間に、我が子が自分で心を入れ替えてくれることを期待
してね」

 「…………」

 「だけど、たいてい裏切られる。それに、いつまでもってわけ
にはいかないんだ。一定の期日を区切って……それまでに成果が
見えない時は……頭のいい茜だったら、お父さんの言ってること
わかるよね」

 「…………」
 茜ちゃんにはお父さんの言っている事が分かるのですが、その
結果どうなるかは認めたくありませんでした。

 「テストも同じ。一学期に二回しかテストがないからその間は
遊んでいてもいいってことにはならないんだよ。中間や期末に備
えて計画を立てて勉強しておかないと、後でこうむる罰は小学校
の時のお尻ペンペンぐらいじゃすまないんだ。わかるだろう?」

 お父さんのお説教を、相変わらず申し訳なさそうな顔で居眠り
しながら聞いてる茜ちゃんでしたが、これではまずいと思ったの
でしょう。お母さんが割って入ります。

 「そうね、ちょうどいい機会だから、今日は中学生のお仕置き
がどんなものか経験してみるのがいいかもしれないわね」

 その瞬間、茜ちゃんの目が一瞬にして醒めます。
 というのも、幼い頃からお仕置きの大半はお母さんによるもの。
お母さんがお仕置きについて話せば、ぐっと現実味が増します。
たとえ自分のことではなくても緊張感が増します。

 お母さんの声は茜さんにとっては起床ラッパと同じだったので
した。


********(12)***********


 御招ばれ <第1章>(13)

 「さあ、お父様のお膝へいらっしゃい」
 お母さんが強い調子で茜さんの腕をとります。
 慌てた茜さんは突然のことに嫌々をしますが、それはお母さん
の腕を振りほどくほどではありませんでした。それが後々どんな
結果になって自分に跳ね返ってくるかを知っていたからでした。

 「おいで……目が覚めるから」
 お父さんがご自分の膝を叩いて指示します。

 「!」
 もう、こうなったらダメです。
 茜さんはそこへ行くしかありませんでした。

 幼い頃からお尻を叩かれていた茜さんにとってお父様のお膝は
世間で言う『お尻ペンペン』なんて生易しいものではありません。
ギロチン台並みの恐怖です。
 でも、そこへ行くしかありませんでした。

 「お父様、お仕置き、お願いします」
 茜さんはお父さんに一声掛けてその膝にうつ伏せなって寝ます。

 『お仕置き、お願いします』なんて、ぶたれる子供の側が言う
セリフじゃないかもしれませんが、これも大西家のしきたりです。
大西家では、朝、『おはようございます』を言うのと同じでした。

 「恐がらなくてもいいからね。茜は女の子だから私からの経験
があまりないかもしれないけど、私もお尻叩きは上手なんだよ」
 お父さんはそう言って、まずスカートの上から叩き始めます。

 リズミカルに軽快に……
 「……パン……パン……パン……パン……パン……パン……」

 茜ちゃん、最初は『あれ?これって、お父さんの方が楽だ』と
勘違いしたのですが、すぐにその間違いに気づきます。

 最初の数回はまだそんなに痛くありませんでした。
 でも、10回を過ぎる頃から辛くなります。         
 「パン……パン……パン……パン(あっいや)……パン(ひぃ)
……パン(あっ、だめ)……パン(あっ)……パン(痛~~い)」

 普段お母さんからやられているスパンキングは、お尻の表面が
ピリピリするような乾いた感じの痛みなのですが、お父さんのは、
一発一発がお尻の肉の奥まで届く感じの重い痛みです。
 しかもお父さんのスパンキングは、お母さんと違って短い時間
では終わりませんでした。

 徐々に、徐々に蓄積されていく痛みの中で、茜ちゃんのお尻は
しだいに悲鳴を上げ始めます。

 「パン(あっ、いやあ~~~)……パン(だめえ~~~)……
パン(お願い、お母さんやめさせて~)……パン(あっいやいや)
……パン(ひぃ~~~)……パン(ああん、お母さん許して~)」

 茜ちゃんは、お父さんにお尻をぶたれていたのですが、許しを
求めたのは自分の両手を握るお母さんでした。

 ところが、そのお母さんは……
 「何やってるの。これくらいのことで、両足をバタつかせたり
して、幼い子じゃないの、みっともないことはやめなさい」
 と、逆に茜ちゃんを叱るのでした。

 いえ、それだけではありません。
 今度はお父さんが茜ちゃんのスカートを捲りあげようとします
から……

 「いやあん、しないで!!パンツ見えちゃう!!いや!!ダメ
エッチ、レディーに失礼よ」
 茜ちゃんは慌てて抵抗を試みますが、できたのは口だけでした。

 本当は右手でお尻をかばいにいきたいのですが、お父さんの膝
の上で万歳した格好の茜さんはその両手ともお母さんにしっかり
握られていてピクリとも動かせません。

 「あ~~ん、イヤだって……」
 その間にもお父さんのお尻叩きは再会します。
 今度はショーツの上から。当然スカートの上からより痛いこと
になります。

 「パン(あっ、いやあ痛い痛い~~~)……パン(だめえ~~~)
……パン(お願い、お母さんやめさせて~ホントに痛いんだって)
……パン(あっいやいやいやいや)……パン(ひぃ!ごめんなさい)
……パン(ああん、お母さん許して~誰でもいいから許してよ)」
 茜ちゃん、まだまだ口だけは達者でした。

 いえ、こうして必死に叫んでいないとお父さんの平手の痛みに
耐えられないから……というのが本当の理由かもしれません。

 ところが、真っ赤な顔をして奮闘する茜ちゃんの苦労をよそに
お父さんは涼しい顔。おまけに、茜ちゃんの最後の砦にまで手を
かけるのでした。

 「……!!!……」
 白い綿のショーツが剥ぎ取られてしまいますが、なぜかその時、
茜ちゃんに大声はありませんでした。

 妹分の二人がさっきから笑いを堪えながら見ているのは知って
いますから、もうこれ以上恥の上塗りをしたくないと思ったので
しょうか。

 もちろん、そんなことにはおかまいなく、二人は固唾を飲んで
茜ちゃんの裸のお尻を見ています。
 男の子でないのがまだしもなのかもしれませんが、女の子にと
ってはこれ以上ない屈辱でした。

 それに、当然のことですが、何の防御もない生のお尻はさらに
堪えます。

 「パン(いやあ~~もうぶたないで~~~ぶたないで~~~)
……パン(痛い、痛い、痛い~~痛いんだって~~お願~~い)
……パン(ひい~~~だめえ~~~壊れるから~~お願いよ~)
……パン(お母さんやめさせて~ホントに痛いんだってえ~~)
……パン(ああ~ん、お母さん許して~何でもする、何でもする
から~~~)」

 痰を絡ませながら必死に哀願する茜ちゃん。
 でも、お父さんからは、なかなかお許しが得られませんでした。

 「パン(いやあ~だめえ~)……パン(痛い、痛い、痛い~)
……パン(ひい~~)……パン(だめえ~壊れるから~~)……
……パン(お願い、やめてよ~)……パン(お母さんやめさせて)
……パン(ホントに痛いんだってえ~~)……パン(ああ~ん)
……パン(いやいやいや)……パン(お母さん許して、お願い、
お願い~何でもする、何でもするから~~~)」

 70回を超え、茜ちゃんはひところより口数が少なくなってい
ました。
 泣き疲れ、声も枯れて、もう大声も出なくなっていたのです。
 そして、その頃になってやっと許されます。

 茜ちゃんは床に転がると必死でお尻をさすりましたが、痛みは
すぐには引かず、5分くらいは床に泣き崩れたままただただ自分
のお尻をマッサージしていました。

 やがて、少し落ち着いた頃、お父さんと目と目があって初めて
自分の姿に気がついたみたいで……慌ててお父さんの足元に膝ま
づくと、両手を胸の前で組んでご挨拶します。

 「お仕置き、ありがとうございました」

 これも『お父様、お仕置きお願いします』という最初のご挨拶
同様、大西家のしきたり(躾と呼ぶべきかもしれません)でした。


 もっとも、これはほんの序の口。
 これはあくまで眠そうにしている茜ちゃんの目を覚まさすため
で、本当のお仕置きはこれから……ということのようでした。

 「目が醒めたかい?」
 少し仏頂面のお父さんの顔がいきなり茜ちゃんに迫ってきます。

 大人のそんな顔、恐いですからね。
 「はい」
 嗚咽の収まらない茜ちゃんでしたが小さな声が聞こえます。

 すると、お父さんはとたんに笑顔になって茜ちゃんを膝の上へ
抱き上げます。

 「お~~しばらく抱かないうちに重くなったなあ」
 お父さんの言葉はまるで幼児か赤ちゃんを抱いた時のようです。

 でも、お尻がお父さんの膝に乗っかると茜ちゃんは顔をしかめ
ます。そこはまだ完全に癒えていませんから、お愛想でも笑顔は
難しかったのでしょう。

 「どうした?まだ痛いか?……だったら、静かにして私の話を
聞きなさい。いいね」
 『動くとお尻が痛いよ』というわけです。

 お父さんは、茜ちゃんの頬にご自分の息がかかるほど強く抱き
しめます。
 普段ならタバコの臭いお父さんの顔に嫌々をするところですが、
今は、お父さんのお膝をお尻が摺れただけで飛び上がるほど痛い
ですから、おとなしくタバコの臭いを嗅ぐことになるのでした。

 「いいかい、茜。人はいろんな家に生まれる。農家もあれば、
八百屋さん、鍛冶屋さん、サラリーマン、人それぞれだ。でも、
どんな家に生まれようと、その家を盛り立てなければならない。
お父さんお母さんをお手伝いしなきゃいけない。それが子どもの
義務なんだよ。農家の一樹君も、八百屋さんの真理子ちゃんも、
鍛冶屋の高志君だって、みんなお家のお手伝いをしてるだろう。
それは、茜、君だって同じなんだよ」

 「……私もお手伝いするの?」
 茜ちゃんはぽつんと独り言のように言います。それはそれまで
一度も考えた事がなかったからでした。

 「茜ちゃん、お父さんの仕事は何だい?」

 「大学の先生」

 「そう、お家で商売してるわけじゃないよね。でも、お父さん
は茜ちゃんに手伝って欲しいんだ」

 「どんなことお手伝いするの?……お父さんの助手さんとか?」
 茜ちゃんは首を傾げます。

 「いや、それはまだ無理だろうけど、大学教授の娘らしくして
いて欲しいんだよ。茜ちゃんは世の中の事はまだ分からないかも
しれないけど、大学の先生、お医者さん、弁護士さんなんて仕事
は世間での信用が大事なんだ。『普段偉そうなこと言ってても、
あいつの娘、学校じゃ劣等生らしぞ。娘一人満足に育てられない
奴にこんな仕事頼んで大丈夫かなあ』なんて、思われちゃうと、
お父さんもお仕事がやりにくいからね」

 「つまり私はお父さんの娘にはふさわしくないってことなの?」

 「そんなことはないよ。私はお前を施設から引き取ってから、
ずっと愛してきたし、これからだって、お前がどんな成績でも、
嫌いになることなんて事ないはずだよ。だって、お父さんはお前
を見初(みそ)めてここへ連れて来たんだから……」

 「……うん」

 「でも、お前はどうなんだい。私とは血の繋がりもないし……
こんなお尻をぶつようなお父さんは嫌いかい?」

 「…………」
 茜ちゃんは首を横に振りました。

 理由は簡単です。
 今日はたまたまお尻をぶたれていますが、普段の茜ちゃんは、
お父さんに甘えてばかりいます。お父さんとは楽しい時間がほと
んどなのです。ですから、短い時間のお仕置きのために、楽しい
時間を犠牲にするという選択はありえませんでした。

 茜ちゃんは考えます。
 『要するに、お父さんを愛しているなら成績を上げなさいって
ことよね。でも、私、頭悪いし、頑張っても成績あがるかなあ』

 そんなことを思っていると……
 「よかった、茜も私を愛しているんだね。よし、だったら明日
からは私がお勉強の面倒みてあげるから、また一緒に頑張ろうね」
 お父さんがこんなこと言うのです。

 「えっ、(お父さんと一緒に!!)」
 茜ちゃんは驚きます。

 いえ、小学校時代の茜ちゃんはお父さんのお膝の上で勉強して
いました。お父さんにしてみれば相当に重いお荷物だったと思い
ますが、何しろ甘えん坊の茜ちゃん相手では、これが最も効率的
だったからお父さんも仕方なく続けていたのでした。

 そんな昔の姿が頭をよぎったので驚いたのでした。
 今さらお父さんにだっこされて勉強するなんて、嬉しいけど、
恥ずかし過ぎます。

 すると、そんな茜ちゃんの心の中を察するように……
 「もう、抱っこはしないよ。こんな重い荷物、いつまでも膝の
上に乗せて置けないからね……でも、それ以外は今までとおりだ。
集中心を欠いたような態度なら、すぐに竹の物差しで目覚ましだ。
あんまりだらしがないなら、お灸だってまたすえるよ。それに、
日曜日の朝は必ずお浣腸。便秘なんかしてるとそれが気になって
頭の回転も鈍くなるからね」

 『また、始まるのか。お父さんと一緒のお勉強。何だか体よく
言いくるめられちゃった感じだなあ』
 茜ちゃんは心の中でため息をつくのでした。


********(13)*************


 御招ばれ <第1章>(14)

 「茜さん。お父様が教えてくださるって、よかったわね」

 お母さんは『めでたしめでたし』みたいなことを言いますが、
茜さんにしたら、これからしばらくはお父さんに管理された憂鬱
な日が続くわけで、素直に喜べるわけがありませんでした。

 そんな気持、もっと大人になればうまくセーブできるんでしょ
うが、13歳になったばかり茜さんには自分の気持を素直に表現
することしかできませんでした。

 「何がよかったのよ!!ちっともよくないわよ!!」
 口をへの字にすると、眉間に皺を寄せ、お母さんを睨み返して
しまいます。

 「あかね!」
 お父さんは即座に厳しい顔をして茜ちゃんを睨みますが……

 「あ~あ」
 出るのはため息ばかり。お母さんへの謝罪の言葉はいっこうに
ありません。

 でもそれは、親しい関係なんだから、親子なんだから、すねて
も許されるはずでした。少なくともこれまではそうだったのです。

 「しょがない子だなあ、あまえはもう小学生じゃないんだよ」
 お父さんにこう言われても……

 「は~~い」
 気のない返事をするのが精一杯だったのです。

 「茜、やる気がないのならやめてもいいんだよ」

 お父さんの突然の言葉に、茜さんは心臓に杭を刺された思いが
します。

 「えっ!?」
 目を丸くした茜さん。そのまま声が出ませんでした。

 いえ、お父さんの家庭教師なんてやめてもらいたいというのは
本音なんですが、それが許されない立場にあることも、茜さんは
十分感じていたのでした。

 『そんなのやりたくありません。やめたいです』
 素直にそんなこと言ったらどうなるでしょうか。
 お父さんからぶたれるでしょうか。
 いえ、ぶたれるよりもっと辛いことが起きやしないか……
 茜さんはそっちを心配していたのでした。

 『妹たちもやがてこの家に来るというし、このまま無視され、
スポイルされ、自分だけがこの両親から相手にされなくなったら
どうしよう』
 茜さんの心配は、もちろん実の親子だって起こり得ることです。
でも、血の繋がりのない茜さんにとってはより深刻な問題だった
のでした。

 「茜。お前は頭もいいし私でなくても里親はすぐに見つかるよ」
 案の定、お父さんは茜さんの気持を見透かして、わざとこんな
事を言います。

 もちろん、お父さんは茜さんを愛しています。誰かが茜さんを
欲しいと言ってきても、絶対にどこへもやったりはしません。
 でも、時たまこうして脅してやれば、茜はより強く私を求めて
くるはず……大人は、そう読むのでした。

 実際、これまではこういった脅かしが不首尾になることは一度
もありませんでした。

 この時も、茜ちゃんはお父さんに擦り寄ります。
 そして、お父さんが手を出せば、茜ちゃんの身体に触れられる
距離にまで近づいてから…

 「お父さん、私のこと、嫌い?」
 と言います。

 「どうして?…大好きだよ。今も昔も、子どもの中で茜が一番
大好きだって言ってるだろう」
 お父さんはそう言って、茜ちゃんを身体ごと抱き上げて膝の上
で頬ずりします。

 お尻の痛みが遠のいた今は、気持ちよさだけが茜ちゃんを包み
ます。それは親子の儀式のようなものでした。

 「何で泣いてる?私がお前をどっかにやるとでも思ったのか?」

 幼い時からの習慣。茜ちゃんは、いまだにこの頬ずりから逃れ
られないでした。

 ところがこうなると、お父さんのペース。
 次はとんでもないわがままだって茜ちゃんは飲まなければなら
なくなるのでした。


 「それでね。茜。お父さんとしては今日の事をお前が忘れない
ために鞭を使おうと思うんだ」

 「………………………………お尻、ぶつの?」
 茜ちゃんはそれだけ小さく言って生唾を一つごくんと飲みます。

 「ああ、お父さんはその方がいいと思うんだ。言葉ってのは、
時間が経つと忘れちゃうからね。茜には、もっと忘れない方法で
心に刻んでおいてもらいたいんだ」

 「パンツも脱ぐの?」

 「ああ、パンツも脱いだお尻に竹の物差しでね。……嫌かい?」
 お父さんの声は穏やかでした。

 「……………………………………」
 『嫌かい?』って……そりゃ嫌に決まってます。茜さんは声が
ありませんでした。……でも、『嫌』と言ってみても結果が同じ
なのも分かっていました。

 いえ、茜ちゃんだってこの家の子、2歳からこの家でお父さん
と一緒に暮らしています。裸でベッドを共にした事だって何度も
あります。気心の知れた親子です。

 ですから、お父さんがこんなことを言い出すことぐらい、その
流れの中から読めます。べつに、青天の霹靂というわけじゃあり
ませんが、それでもあらためてお父さんにお仕置きを宣言される
と、子供としてはどう返事をしてよいのかわかりませんでした。

 そもそも幼い頃のお仕置きはこんなことを打診しません。茜が
悪いことをすれば、お父さんもお母さんも、いきなりスカートを
捲りあげて茜のお尻をぶち始めます。
 それが、前回、小学5年生の時のお仕置きでお父さんが初めて
こんな事を尋ねたような気がします。

 『あの時、私、どうしたっけ?』
 茜ちゃんは考えますが、昔の事で思い出せませんでした。
 困っていると、その答えをお母さんが耳元で教えてくれました。

 「茜、そんな時は『はい、お受けします』と言うの。お父様は
あなたの覚悟をきいてらっしゃるんだから、しっかりご挨拶しな
ければいけないの。いいこと、あなたも中学生、もう幼い子じゃ
ないんだから、自分の罪を償う勇気を持っていなきゃいけないわ」

 「はい、お母さん」

 お父様にも当然聞こえているお母さんの助言を受けて茜ちゃん
は、あらためてお父さんにご挨拶。

 「はい、お受けします」

 茜ちゃん、お父さんに抱っこされたままでご挨拶でした。
 でも、お父さんは怒りません。とっても満足そうな笑顔を浮か
べて茜ちゃんの頭を撫でるのでした。


 大西家での子供たちへの鞭打ちは、ごく幼い時は、お父さんや
お母さんが膝に抱きかかえてヘアブラシやパドルを使って行われ
ますが、その子が大きくなると、それ専用の拘束台を使って行わ
れます。

 それは普段お父さんの書斎においてあり、まわりの家具に調和
して一見ライティングデスクにしか見えませんが、部屋の隅から
引き出されてソファの代わりにそこへ置かれると、受刑者はその
姿に恐れおおののくことになります。
 一度でもその台に乗ったことのある者はそれがどれ程の物かを
知っているからでした。

 茜ちゃんのずっと上のお兄様たちでさえ、その時の強烈な痛み、
恥ずかしさをいまだに忘れられずいました。ましてや茜ちゃんは
女の子ですから、小学5年生の時にこの台に張り付けられた記憶
はまだ心の中に鮮烈に残っていました。

 大人たちが拘束台の準備をするさなか、茜ちゃんは呆然として
その様子を見ていたのですが、過去の辛い思い出に縛られたので
しょう。拘束台を見つめたままパンツを穿くことさえ忘れていま
した。

 「何してるの茜。パンツくらい穿きなさい。みっともないわよ」

 気がついたお母さんがやって来て呆(ほう)けた顔の茜ちゃん
にパンツを穿かせようとしますが、その時、あることに気づいて
手じかにあったタオルで茜ちゃんの太股を手早く拭きあげます。

 『まったく、この子ったら……』
 お母さんは心の中で思います。

 茜ちゃんはお漏らしをしていたのです。すでにお浣腸も済んで
いましたが、最後にお腹を洗った時の残りがいくらかまだ膀胱に
残っていたのでしょう。
 二筋三筋太股を雫が伝っていたのです。
 茜ちゃんはそれも気づかぬほどぼんやりしていたのでした。

 お母さんは、そんな茜ちゃんに何も言いませんでした。
 お母さんは、茜ちゃんにパンツを穿かせると、皺になっていた
白いワンピースの裾を整え、髪を手ぐしでセット、ハンカチで涙
を拭き、鼻をかんで、茜さんを元のお嬢さんの姿へと戻していき
ます。

 「よし、できた。どこ見ても立派なお嬢様よ」
 お母さんは完成した茜さんを前にして満足そうです。
 そして、こう言って励ます……いえ、叱るのでした。

 「茜、お父様の鞭はあなたの為に振り下ろされるの。だから、
あなたはお尻だけじゃなくそれをあなたの身体全体でしっかりと
受け止めなければならないわ。悲鳴なんか上げて、そこから逃げ
ようとしちゃいけないの。ただただお父様の鞭の痛み耐えるの。
分かるかしら」

 「…………」
 お母さんの力説にも関わらずこの時の茜ちゃんはまだお人形で
した。

 「あなたはまだ幼くて詳しい理屈は分からないでしょうけど、
この鞭は刑罰の鞭ではないの。お父様の鞭が強ければ強いほど、
痛みが強ければ強いほど、お父様があなたを愛してらっしゃると
という事なのよ。……わかった?」

 「…………」
 茜さんは小さく頷きます。

 すると……
 「わかったんなら、さあ、行ってらっしゃい」
 お母さんは茜ちゃんを送り出します。
 もちろん、そこに待っているのはお父さんでした。


*********(14)***********


 御招ばれ <第1章>(15)

 茜さんがお父様の前へやってくると……お父様の顔は今までの
ようににこやかではありませんでした。
 真剣な顔、少し怒ったような顔にも見えます。
 その顔を見ながら茜さんは膝まづき、両手を胸の前に組んで
……

 「お父様、お仕置き、お願いします」

 茜さんのはっきりした声が部屋のどこにいても聞こえました。
 いつもなら、茜ちゃんがこの言葉を口にすればそれに呼応して
お父さんの顔もにこやかな顔へと変わるのですが、この時ばかり
は恐い顔のまま。

 いえ、チンピラが凄んでるのとは違いますから、こういうのは
恐いというより威厳があると言うべきかもしれません。

 茜さんのご挨拶が終わると、お父さんはその威厳のある顔で…
 「恐かったかい?よく、勇気を出して来たね。でも今の君には
それが大事なんだよ。逃げないってことがね。あとは、歯を喰い
しばって必死に頑張るだけだ。……大丈夫。逃げなかった茜には、
これから先、きっと、いいことがあるから」

 お父さんは茜さんを励まします。そのうえで……
 「……よし、じゃあ、ここにうつ伏せだ」
 お父さんは拘束台のテーブルを指差すのでした。

 茜さんが上半身をテーブルに横たえると、そのテーブルが傾斜
して頭の方が下がり、お尻が一番高い位置に来て、茜さんとして
はとても窮屈な姿勢をとらされることになります。

 でもそれだけじゃありません。両手首も両足も革ベルトで拘束
されてしまいすから、これから先は泣いてもわめいても逃げ出す
ことは不可能でした。

 「わかってるだろうけど、これから先は何があっても声は出さ
ないようにしなさい。お前も、もう小さな子供じゃないんだから
恥ずかしいまねはしないように」

 お父さんはこう注意してから白いワンピースの裾を捲ります。
 せっかく穿きなおせたショーツも再び脱がされてしまいますが、
もうこれは運命と諦めるしかありませんでした。

 「………………」
 こんな格好、そりゃあ恥ずかしいに決まってます。ですけど、
その気持は、自分の心の中に納めておくしかありませんでした。

 そんな茜さんのもとへ今度はお母さんがやってきます。
 お母さんもまたにこやかではありませんでした。

 厳しい顔のまま一言……
 「口を開けなさい」

 何をするのか、されるのか、茜さんは分かっていました。
 「うっぐ」
 開いた口の中にタオルハンカチが入ります。

 お母さんがまずやったこと。それは茜さんにまず猿轡を噛ます
ことでした。

 一方、お父さんは、すでに長さ二尺の物差しを手にしています。
この長さがお尻をぶつにはちょうどいい長さでした。

 「!!!!」
 茜さんが突然緊張します。
 お父さんが試しに竹の物差しそれを振り下ろしたのです。

 茜さんの口はお母さんによって猿轡がされていましたが、耳は
耳栓なんてしてませんから、その空なりの音をどうしても拾って
しまうのです。

 『ブン』『ブン』という音が、茜さんの身体を硬直させます。

 『何でよう!何でお母さん、耳も塞いでくれなかったのよ!』
 茜ちゃんは勝手なことを思いながらも、その音を聞いただけで
もう生きた心地がしませんでした。

 「茜、しっかり歯を喰いしばって我慢するんだぞ」
 お父さんは茜ちゃんの頭を左手で鷲づかみにすると、お仕置き
の前、最後の注意を与えます。

 「…………」
 茜ちゃんは自分では『はい』と言ったつもりでしたが、言葉に
はなりませんでした。
 過去にそれがどれほど痛いかを経験している茜さんには、とに
かく恐くて恐くて、それどころではありませんでした。

 「ピタ、ピタ、ピタ」
 小さく三つ、お父さんの竹の物差しが茜ちゃんの可愛いお尻を
とらえます。でもこれは鞭打ちではありません。
 『さあ、これから、ぶちますよ』という警告でした。

 そして、約束どおりいよいよ本体がやってきます。

 「ぴしっ~~」
 乾いた音が部屋中に鳴り響きます。

 『ぎゃあ~~~』
 猿轡をしていなければ茜ちゃんはきっとこんな悲鳴だったこと
でしょう。
 それほどの衝撃でせした。

 お尻に当たった衝撃は電気となって背骨を走り脳天を突き抜け
て一瞬でどっかへ行ってしまいました。

 茜ちゃんは必死に拘束台の天板を握っていましたが、すぐには
震えが止まりません。両手が震え、両足だって茜ちゃんの意思と
は無関係に跳ね回ります。

 おかげで、ソファにいる春花と美里には、お姉様の大事な処が
丸見え。お互い女の子同士ですからそんなものが見えたとしても
別に驚いたりはしませんが、二人とも茜さんの慌てふためく様子
がよほどおかしかったのかソファの上で笑い転げていました。

 茜さんはたった1回ぶたれただけなのに、この騒ぎ。
 でも、お母さんはその最初の1回が一番辛いことを知っていま
した。普段は厳しいお母さんが茜さんを励まします。

 「茜、心をしっかり持つの」
 「いや、痛いもん、だめ」
 茜さんはお母さんが顔を近づけてくると、さっそくすがるよう
にして愚痴を言います。

 「弱音を吐いちゃだめ。お仕置きは始まったばかりよ」
 お母さんはやさしい眼差しで額に手を置きます。
 すると、そこへお父さんもやって来ました。

 「どうした?痛かったかい?」
 お父さんがそう言ったとたん、茜ちゃんは張り付けられている
拘束台の板の上に顔を押し付けます。

 『お父さんなんて顔も見たくない』ということでしょうか?
 というより、恥ずかしいという気持の方が大きかったみたいで
した。

 「痛いのは当たり前だよ、お仕置きなんだからね……」
 お父さんがこう言うと、茜ちゃんはぶっきらぼうに……
 「恥ずかしい」
 と背けた顔で答えます。

 「恥ずかしいか……それも仕方がないな。お仕置きは、痛くて
当たり前、恥ずかしくて当たり前。どのみち子どもにとって嫌な
ことをするわけだから。痛いのも恥ずかしいのも我慢しなくちゃ」
 お父さんはそう言って茜さんの顔を覗き込もうとしましたが、
茜ちゃんは顔をあげません。どうやらすねてるみたいでした。

 いえ、甘えてると言った方が正しいかもしれません。

 すると、ここでお父さんが意外な事を言います。
 「大丈夫だよ茜、そのうち慣れるから……」

 えっ!?本当でしょうか?
 だって、さっきまでハンドスパンキングで相当やられてるのに、
その上この鞭。これからもっともっと痛くなると思うのですが…

 実際……
 「茜、歯を喰いしばりなさい」
 お父さんにこう言われて受けた次の鞭は……

 「ピシッ!!」
 「ひぃ~~」
 お尻に鞭が当たった瞬間、茜さんの身体が弓なりになりました。

 ですから相当痛かったはずですが、茜さんは悲鳴を上げません
でした。

 相変わらずお母さんだけは娘の頭を撫で続けていますが、そん
なことが何の役にもたたないほど痛かったに違いないのです。

 ところが……
 「さあ、三つ目だよ。しっかりテーブルを握ってなさい!」
 お父さんの声に茜さんは従います。

 「ピシッ!!」
 「ひぃ~~」
 茜さんは自分の身体がバラバラになるんじゃないかと思った程
でした。

 でも、最初のようなうめき声は上げません。
 いえ、それどころじゃないって感じで、とにかく鞭が近づくと
必死に机にしがみ付く。それだけでした。

 「茜、どうだい?だんだん慣れてきたかな?」
 お父さんの不気味な言葉が頭から振ってきます。
 『何言ってるんだろう』
 茜さんは思います。とにかく今は、このラックにしがみ付いて
いるしかありませんでした。

 そして、四つ目。

 「ピシッ!!」
 「…………」
 もうどんなに小さな声も出ませんでした。本当は、お母さんへ
愚痴も言いたいし、お父さんへ恨みがましい悲鳴も聞かせたいん
です。でも、今の茜さんにとってはその何もかもが無理でした。
 そう、机にしがみ付いていること以外は……

 「どうやら、少しは鞭の味が染みてきたみたいだな。……さあ、
いくよ。もう一つだ」

 「ピシッ!!」
 「…………」
 茜さんのお尻にはすでに真っ赤な筋が何本も刻まれています。

 「反省できたのかな?できないようだと、まだまだ続くよ」
 お父さんはそう言ってから、しばらく茜さんのお尻の赤い筋を
見ていました。もともと相手が13歳の少女ということですから
お父さんだって思いっきりぶってたわけではいません。それなり
に手加減してやっていたのですが……

 「…………」
 女の子の肌というのはお父さんの予想以上にデリケートにでき
ているみたいでした。

 「ピシッ!!」
 「…………」

 やや弱い当たりになった6発目を終えると、お父さんは、何も
言わず春花と美里が陣取るソファへとむかいます。
 小休止でしょうか?

 お父さんは二人の座るソファにご自分も腰を下ろすと、笑みを
浮かべてこう言います。
 「驚いただろう?恐かったかい?」

 二人は顔を見合わせ、お互いどうしようか考えていましたが、
そのうちどちらからともなく頷きます。

 「正直だね。でも、とてもいいことだよ。人間正直でなくちゃ。
……実際、恐いことをしてるんだから、当たり前なんだ」
 不安そうにしている二人に向かって大西先生は微笑みました。

 その笑顔に少しほっとしたのでしょうか、春花が、上目遣いに
尋ねます。
 「お姉ちゃまは、いつもああしてぶたれてるの?」

 「いつもじゃないさ。男の子だと一学期に一二度必ずあるけど、
女の子の場合は年に一度くらいかな。でも、ないってことはない
ってことさ。今日はたまたまだよ」

 「私たちも、ここで暮らすとお姉ちゃんみたいにぶたれるの?」
 今度は美里が尋ねます。

 「大丈夫。私が見ている限り二人はとってもいい子だからね、
そんな心配はいらないと思うよ。それに、少しぐらいミスしても、
悪戯してもだからってすぐに鞭を使うわけじゃないんだ。ここで
張り付けられるのは、親の言いつけを何度言っても聞かなかった
飛び切りの悪い子だけさ」

 「うん」
 美里は小さく頷きます。

 「……ただ、うちの子になったら、こんな事が絶対にないとは
言えないからね、二人にはあらかじめそんな怖いところも見せて
おこうと思ったんだ」

 「ふうん、お仕置きって孤児院だけじゃないんだ。私たち孤児
だから先生たちにお仕置きされるのかって思ってた」
 「そうなの、だから普通の家で暮らせばお仕置きなんかされず
にすむんじゃないかと思って……違うんだね」

 「孤児院にいるからお仕置き?そんな馬鹿な……今はオリバー
ツイストの時代じゃないんだよ」
 お父さんは明るく笑いました。そして……
 「ただね、どんな家に生まれてもお仕置きのない家というのは
まずないんだ。修道院のお仕置きなんて軽い方さ」

 「そうなの?」
 「どうしてわかるの?私たちのお仕置き、見たことあるの?」

 「君たちがお仕置きされてるところなんて僕は見たことないよ。
だけど、君たち、とっても明るいじゃないか。厳しいお仕置きの
ある厳格な家で育つとね、子どもの性格まで暗くなっちゃうけど、
君たちにはそれがないから、すぐにわかるんだ」

 「普通のお家は私たちの孤児院より厳しいの?」
 美里が心配そうに尋ねると……

 「そういう処が多いかもしれないね。輝かしい歴史のある家で
あればあるほど、守らなければならない約束事が多くなるんだ。
当然、叱られることも多くなるってわけだ。……ただ、お仕置き
って、とっても恥ずかしいことが多いから、普通は家族以外の人
には絶対に見せないんだ。君たちが知らないのも無理ないよ」

 「じゃあ、おじさまの処はどうして私たちに見せたの?」

 「僕はあいにく嘘やごまかしが嫌いなんだよ。せっかく君達が
ここで一緒に暮らしたいと言ってくれているのに、後から『こん
なはずじゃなかった』なんて言われたくないんだ。まずはありの
ままの姿を見せて、それでもここで暮らしたいなら、どうぞいら
っしゃいってことなんだ」

 「…………」
 「…………」
 二人は思わず顔を見合わせ、お互い『ふっ』とため息です。

 子供にとって、とりわけ女の子にとって父親に叱られるという
のは、たとえぶたれなくてもとてもショックな出来事です。
 ましてや、こんな台に張り付けられてお尻丸出し。竹の物差し
でピシャリピシャリだなんて……二人にとっても、とても耐えら
れそうにありませんでした。

 「どうした?そんな深刻な顔して?……ひょっとして、あてが
外れたかな。おじさんはもっと優しい人だと思ってたんだろう」
 お父さんはソファに座ったままで二人をまとめて抱きしめます。

 いきなり窮屈な姿勢にさせられた二人でしたが、二人ともそれ
自体は嫌ではありませんでした。
 荒々しく大きな胸板は安心感の証でもあります。ここが私たち
のバックグラウンドだったら楽しいだろうに……そう思う気持は
二人の心の中に残っていました。

 ただ、お仕置きは絶対に受けたくありません。特に、目の前で
見たお姉ちゃまのお仕置きは……
 もちろん、そんなことは百も承知している大西先生は、二人に
こんなことを言います。

 「べつに無理してうちに来なくてもいいんだよ。世の中、立派
な里親さんは、他にたくさんいらっしゃるからね。院長先生に、
『気が変わりました』って言えばいいんだよ。

 「他の家でも、ここと同じお仕置きってあるんですか?」
 春花が心細そうに尋ねると……

 「どんなお仕置きをするかはその家しだいだけど、お仕置きの
ない家というのは期待しない方がいいと思うよ」

 「なあ~んだ、そうなのか。私たち孤児だもん、最悪だね」
 美里がかっかりと言った顔をします。

 すると、お父さんはいきなり美里の両脇に手を入れ、目よりも
高く差し上げます。そして、その身体を揺らしながらこう言うの
でした。

 「どうしてそうなるの?美里ちゃん?……そもそも里子を受け
入れようとする家で、子どもが嫌いな家なんてあるわけないじゃ
ないか。いいかい、お仕置きっていうのはね、子どもを愛してる
からやるんだ。嫌いだったらやらないことなんだよ」

 「ホント?だったら、おじさんも子供が好きなの?」
 「おじさんじゃない。お父さんだろう?」
 「あ、そうでした。お父さんも、茜お姉様が好きなの?」

 美里の声に、お父さんはさらにその身体を高く差し上げて……
 「もちろんさあ。もちろん、君たちも大好きだよ」

 すると、それを見ていた春花まで……
 「私も……」
 お父さんに抱っこをおねだり。

 「よし、いいよ……ほら、高い、高い」
 お父さんは美里を下ろし、春花も自分の頭の上へ差し上げます。

 もう、そんな事をしてもらうにはお姉さん過ぎる二人でしたが、
その瞬間は『キャッキャ、キャッキャ』その場は明るい笑い声に
包まれたのでした。


*******(15)*************


 御招ばれ <第1章>(16)

 一方、茜ちゃんの方はというと……
 お父さんが春花と美里のソファへ行ったあと、すぐにお母さん
からその戒めを解いてもらいます。

 お母さんの行動はお父さんとのお約束ではありませんでしたが、
そこは夫婦間の阿吽の呼吸というやつでしょうか。お父さんも、
それについては何も言いませんでした。

 ただ、これで茜さんが許されたのかというと、そういうことで
はありません。

 茜さんはお母さんに部屋の隅まで連れて行かれると、壁の方を
向いて膝まづかされます。
 さらに……

 「あら、どうするのか忘れたの?」

 お母さんに促され、真っ白なワンピースの裾を捲り上げます。
茜さんは真っ赤に熟れた赤いリンゴを二つ、この場にいるみんな
に披露しなければなりませんでした。

 もちろんスカートを持つ手はこの先もずっと上げたままです。
下げることは許されませんからこれだってけっこう辛い罰でした。

 これ、西洋の家庭ではよくみられるコーナータイムというやつ
です。受刑者にとっては小休止の時間でもありますが、茜さんは
その間も恥ずかしい姿勢のままで過ごさなければなりませんから
痛みはなくとも辛い時間に変わりはありませんでした。


 そんな茜さん、最初はただ静かにしていました。泣くわけでも
なく、涙を流すわけでもなく、感情を押し殺したように無表情で
いたのです。
 きっとお尻が痛くて他のことは考えられなかったのかもしれま
せんが……。

 ただ、それからしばらくして、お父様の声と共に春花や美里の
甲高い笑い声が耳に入ってくるうち涙が止まらなくなってしまい
ます。

 もちろん、丸出しのお尻は今でも痛むでしょうけど、涙の原因
はどうやらそれではないようでした。
 お父さんと楽しげに話す妹分二人の明るい声が彼女を泣かせる
のです。

 『昨日まであそこは私の居場所だったのに……お父さん、私を
嫌いになったのかなあ』
 余計な心配が頭の中を駆け巡るうちに、女の子はやがて悲しく
なるのでした。

 そんな思いを察してか、お母さんは茜さんのそばを常に離れず
にいました。いつも微笑んで、何か話しかけるわけでも、どこか
さすってくれるわけでもありませんが、お母さんには、茜さんの
気持ちがわかっているみたいでした。

 二人は声を出しません、時折、口ぱくだけで会話します。
 もちろん、口ぱくですから100%の正確性はありませんが、
そこは親子ですから、それだけで話は通じてるみたいでした。

 やがて、その甲斐あってか、茜さんにもいつしか笑顔が戻って
いました。

 茜さんに限りません。女の子はみんな寂しがり屋さんですから
そんな親しい人が一人そばにいるだけで心が随分と楽になるので
した。


 と、そんな茜さんのもとへ、お父さんがやってきます。
 「お父様がいらしたわよ」
 壁に向かっている茜さんにお母さんが耳打ちして教えてくれま
した。

 それって、普段なら嬉しいことなのかもしれません。茜さんは
お父さんが昔から大好きでしたから。でも、今は単純には喜べま
せんでした。
 むしろ、これから先も何をされるかわかりませんから、茜さん
にとっては怖い人なのです。

 『お父さん、まだ怒ってるかなあ』
 お父さんに対する恐怖から、顔も自然と青ざめます。

 案の定、茜さんの目の前に立ったお父さんは相変わらず怖い顔
をしていました。

 そんななか、
 「どうなんだ?少しは反省したかい?」
 お父さんの顔がほんのちょっとだけやわらぎます。

 実はこれ、お父さんとの仲直りのチャンスだったのです。

 ところが茜さん。たとえお父さんでも見下ろされてるって快く
ありませんから、その通りの顔をしてしまったのでした。

 「おや、おや、怖い顔だな、お父さんは嫌いって顔だね。ま、
いいさ。無理もないだろう。お尻をぶたれたらそりゃあ痛いもん
な……よし、仕方ない、もう少し素直な顔ができるまで付き合っ
てあげるか」
 お父さんの言葉に、茜さんは震撼します。全身身震いといった
方がいいかもしれません。

 『あっ、ヤバイ。私どうして気持ちが顔に出ちゃうんだろう』
 茜さんはここで軽率な自分を反省しますがすでに手遅れでした。

 「お母さん、この子をまた拘束台に縛りつけておいてくれ」
 「まだなさるんですか?」
 「意外に元気そうだから、もう少しやってみる。あ、それから、
なまじ緩いと拘束用のベルトが擦れてかえって怪我のもとだから、
ベルトはしっかりと締め上げてといてくださいね」
 お父さんはそれだけ言うと妹分の待つソファーと戻ります。

 すると、お父さんが離れたのを見はからい、お母さんが……
 「まったくあなたって、不器用ね。女の子のくせに、どうして
泣き真似の一つもできないのかしら。お父さんはあなたを許そう
と思って、ここへ来たのよ。分からないかしら?」

 「えっ、そうなの?」
 茜さんは狐につままれたような顔をします。それはちょっぴり
おどけたようにも見える顔でした。

 「まったく、何て顔するの!」
 お母さんはちょっぴりお冠です。
 「……ま、いいわ、そんな顔ができるくらいだから、あなたも
まだ元気なんでしょうね。……そんな元気なお子さんはお父さん
から、もう少しお尻を暖めてもらった方がいいかもしれないわね」

 お母さんが突き放すように言い放ちますと……
 「そんなあ」
 茜さん、ここで初めて哀れんだ声を出します。
 どうやらお母さんとならちゃんと泣き真似ができるみたいで
した。

 「何が、そんなあよ。女の子は人の顔色がわからないようでは
生きていけないの。そのことをよ~く覚えておきなさい!!……
今度の事はあなたにとって、とってもいい経験になるわ。いっそ、
気を失うまでやってもらった方がいいかもしれないわね」
 お母さんは、そうは言いつつも茜さんにパンツを穿かせます。
 そして、ぶつくさ言いながら、再び拘束台に茜さんを縛りつけ
ていくのでした。


 準備が整うとお父さんがやってきます。
 でも、今度は一人だけではありませんでした。
 春花と美里をお供に引き連れています。

 お母さんはお父さんが何を考えているのか、すぐにピンときま
したが、あえて、それを口にはしませんでした。

 一方の茜ちゃんは、またあの痛い鞭がやって来るのかと思うと、
気が気ではありませんから、必死に首を回して何とか後ろの様子
を確認しようとしますが、如何せん手足を拘束されていています
から思うようになりませんでした。
 そのうち……

 「ほら、バタバタしない」
 お父さんの雷が落ちます。

 「お前は受ける鞭の痛みをそのお尻で目一杯受けて反省すれば
それでいいんだ。それが今のお前の義務なんだよ」

 お父様にこう言われては13歳の小娘に反論なんてできません。
 茜ちゃんは後ろは諦めて、仕方なく縛られている拘束台を抱き
しめます。

 革のベルトで縛られて不自由な両手ですが、ちょうど拘束台の
足の部分がすぐそばにあって、その柱を握ることはできるように
なっています。
 今はそれが頼りでした。

 するとお父さん、今度は茜さんの両足を大きく広げさせます。
 両手と違い、両足は拘束されていませんから自由がききます。
 そこでお父さんは茜さんの両足を目一杯広げさせてその足首も
固定しようとしたのでした。

 「いやあ」
 茜さん、お父さんの手が太股に掛かると、とたんに甘えた声を
出しますが……

 「何が『いやあ』だ。この間までオムツしていた子が、生意気
いうんじゃない。私だってお前のオムツは何度も取り替えたんだ。
今さら恥ずかしがっても仕方がないだろう」
 お父さんはそう言って、茜ちゃんの太股をピシャリと一つ平手
で叩きます。

 これは、今では通用しないでしょうが、昔はよく親が口にした
言葉でした。要するに『お前はまだ子ども。赤ちゃん。何も言う
資格はない』というわけです。

 茜さんも例外ではありません。これ以降、茜さんはお父さんに
抵抗しなくなります。躾の行き届いた家の子であればあるほど、
子どもは親に従順ですから、この言葉だけで黙らすことができた
のです。

 お父さんが茜さんのオムツを取り替えていたのは今から十数年
も前のこと。子どもの茜さんにしてみたら、そんなの自分があず
かり知らない歴史の世界なんでしょうが……親であるお父さんに
してみると、それはつい最近起こった事。現在進行形の出来事で
した。

 お父さんは茜さんの身体を完全に拘束台に張り付けてしまうと、
今度は春花と美里に驚くようなことを言います。

 「ねえ、二人とも、お父さんを手伝ってくれないかな」
 「手伝うって?」
 「どんなことするの?」
 「だからね、これでお姉ちゃまのお尻を『ぱ~ん』ってやって
欲しいんだよ」
 お父さんは、愛用の二尺の竹の物差しを右手に持つと、それを
軽く振って茜さんのお尻を叩く真似をします。

 「えっ!」
 「……ホントに」

 「ホントだよ。……二人とも、お父さんのやってたところを見
てたから、出来るだろう?」

 「それは……」
 「…………」
 二人は黙ってしまいます。

 生まれてこの方、お尻って、自分のをぶたれたことはあっても
他人をぶったことなんて一度もありませんでした。
 二人にとってお尻叩きっていうのは大人の仕事だったのです。

 「嫌かい?……お父さんね、腕が疲れちゃったからさ。二人に
頼みたいんだよ」

 「……………………………………………………………………」
 「……………………………………………………………………」
 二人に即答はできません。そんなことやった経験もありません
し、何より、そんなことをして茜お姉ちゃんに嫌われたら………
そう考えると答えはノーなのですが、これまで親切にしてくれた
お父さんの頼みごとを断るというのも、それはそれで勇気がいる
ことでした。

 「……………………………………………………………………」
 「……………………………………………………………………」
 それに春花と美里にはおじさんの言葉をどう解釈していいのか
わかりませんでした。『冗談かな?』って思いますけど……でも、
おじさんが本気なら、正直やってみたい気持ちもあります。
 ですから、その真意を計りかねていました。

 すると、お父さんがそんな二人の心の中を察したのでしょう。
先に動きます。
 「何だ、二人とも恐いのか?そんなことしたら姉ちゃんに恨ま
れると思ってるの?」

 「…………」
 「…………」
 お父さんの質問に二人は小さく頷きます。

 実際、二人の気持は複雑でした。
 二人にとって茜さんの仕返しが恐いのも事実です。うまくぶて
るかどうかも心配です。でも、おじさまのお頼みが本当ならやら
なきゃいけないでしょうし……。
 色んな思いが錯綜する中、『他人のお尻をぶつのは楽しそう』
という単純な欲望もまた心の中で芽生えていたのでした。

 「どんなに強くぶっても大丈夫。だって、これはお姉ちゃまが
悪いからこうなってるんだもの。二人に復讐なんてさせないよ。
それに、やがて君たちだって自分の子をお仕置きすることだって
あるはずだよ。そんな時の参考になるじゃないか」

 大西先生が、やや強引な理屈で二人を説得しますと、春花は、
意外にもすぐにおれて、先生から二尺の竹の物差しを素直に受け
取ります。

 事情は美里も同じようでしたが彼女は春花に比べて慎重でした。
 渡された鞭をすぐには受け取ろうとしません。

 「ほら、美里ちゃんも……」
 大西先生は、あらためて美里ちゃんにも竹の物差しを目の前に
刺し出しますが、彼女は進んでそれに手を出しませんでした。

 「怖がらなくてもいいんだ。これはあくまで茜お姉さんのため
のお仕置きなんだから……君たちが何かされる訳じゃないんだよ。
それに君たちがやってくれると、実は私も助かるんだよ」

 「………」

 「君たちはまだ幼いのでわからないだろうけど、茜お姉さんは
君たちにぶたれるのがとっても恥ずかしいんだよ。だからこそ、
君たちに協力して欲しいんだ。お仕置きって、痛い辛いだけじゃ
なくて、恥ずかしいってのも大事だからね」

 お父さんがさらに説得を続けると、とうとう美里ちゃんも応じ
ます。

 「ねえ、いくつぶってもいいの?」

 すると、それまで消極的だと思っていた美里ちゃんの目が春花
ちゃん以上に輝いていることに大西先生は気づきます。

 「たくさんぶちたいの?」
 お父さんの言葉に……
 「だって、せっかくだから私やりたい」
 美里ちゃんの明るい言葉には相手を思いやる気持ちなんて微塵
もありませんでした。

 そんなあっけらかんとした妹分二人の様子を、茜ちゃんは辛い
拘束台の上で想像して屈辱の涙を流さなければならないのでした。


*********(16)************


 御招ばれ <第1章>(17)

 「春花ちゃん、美里ちゃん、おいで」
 大西先生は二人を茜さんの突き出たお尻のあたりへ呼びます。

 「まず、こうやって、物差しの先をお尻にくっつけて……すり
すりしたり、小さくトントンって叩くんだ。ほら、春花ちゃん、
やってごらん」

 先生はまだ幼い二人に鞭打ちの基本をレクチャーします。
 春花ちゃんは緊張しているのかぎこちない動きでしたが、美里
ちゃんは、おじさんの様子をしっかり観察していたのでしょう、
意外なほど上手に茜ちゃんのお尻をじらしていきます。

 たまらず茜ちゃんのお尻がもじもじし始めますから……。

 「ほう、上手だね。美里ちゃんはやったことがあるのかな……
お友だちのお尻を叩いたことがあるんだね」
 先生にからかわれると、美里ちゃんは初々しい笑顔でした。

 「よし、では次に、実際にぶつところをやってみようね」
 
 大西先生は今さっきやったじらし方を含めて最初から始めます。
そして、頃合いを見計らって一閃。

 「ピシッ」
 小気味よく乾いた音が部屋じゅうに木霊しました。

 「(ひぃ~~)」
 茜さんが思わず海老ぞりになります。

 さっきはお尻が裸、今はショーツ一枚とはいえ防ぐものがあり
ますから、まだましなのかと思いきや、そうでもありません。

 「…………」
 茜さんは、鼻水をすすりながら板の上に顔を着けて泣きます。
それって、他人には見られたくない顔でした。

 こんなにも痛がるのは、さっきまでの折檻で痛んだお尻がまだ
治っていないから。ある意味、これが今日受けた鞭のなかで一番
痛かったかもしれません。

 お父さんは最初幼い妹たちの恐れおののく顔を見ていましたが、
そのうち二人の違いに気づきます。春花ちゃんが、純粋な恐怖で
顔を引きつっているのに対し、美里ちゃんの場合は同じ恐怖でも
眼差しはしっかりと茜さんのお尻を捕らえています。

 『この子、こうした事に興味があるんだ』
 お父さんは美里ちゃんは怯えながらもその瞳の奥に怪しい光が
揺らめいているのを見逃しませんでした。

 一方お母さんはというと、茜さんの泣き顔を見て思わず苦笑い。
それは嘲笑ではありません。微笑みかけることで茜ちゃんを励ま
していたのでした。

 そんな茜さんの様子をお父さんの方からは直接見る事ができま
せんから、こういう時はお母さんのその表情が頼りです。
 お父さんは、お母さんの表情を見ながら茜さんがあとどれだけ
堪えられかを察知するのでした。

 「(なるほど、だいぶ、堪えてるみたいだな)」
 お母さんの顔色を見てそう悟ったお父さんは、この一発だけで
やめてしまいます。
 あとは春花と美里の番でした。

 「実際にぶつ時はね、鞭をお尻のほんの少し前で急停止させて、
そのしなりで叩くんだよ」

 お父さんは、鞭を持つ春花ちゃんの手をその上から包み込むと、
茜さんのお尻に向けて軽く振ってみせます。

 「ぴたっ」
 それは茜さんのお尻にヒットしましたが飛び上がるほどの痛み
ではありませんでした。

 「どうしてスピード緩めちゃうの?お姉ちゃん可哀想だから?」
 美里ちゃんが質問してきます。

 「そうじゃないよ。怪我をさせないためさ。血が出て、その痕
がお尻に見苦しく残ったら君たちだっていやだろう?……これは
お仕置きだもん、刑罰や拷問じゃないからね。痛みと恥ずかしさ、
それに悔しさが心の奥底から湧いて出たらそれでおしまいなんだ。
それ以上は親子でもしちゃいけないんだ」

 「どうして?憎いからぶつんじゃないの?」

 「そうじゃないよ。良い子に育って欲しいからお仕置きするん
だ。憎しみからは何も生まれないよ。もし、お仕置きされて親を
憎むようなら、それはお仕置きとしては失敗だよ。……君たちは
どうだい?院長先生にお仕置きされたら院長先生を憎むかい?」

 「……」
 「……」
 二人は首を横に振りました。

 「うちでは、お仕置きの日の夜は素っ裸でお父さんやお母さん
のベッドで一緒に寝ることになってるんだ」

 「どうして?」
 「恥ずかしくないの?」

 「恥ずかしくなんかないさ。お互い親子だもん。……子どもが
親に自分のすべてを見せられないようなら、私たちもそんな子は
信用できないからね。育てていけないじゃないか。……これから
も私たちと親子でいたければそれが条件というわけさ」

 「そんなの子どもの頃だけでしょう」
 「そう、赤ちゃんとか、幼稚園とか……」

 「そんなことないよ。うちではお嫁に行くまではたとえ二十歳
を超えても娘は娘だもん。……うちで娘として暮らしている以上、
たとえいくつになってもお仕置きはあるし、素っ裸でベッドにも
来てもらうつもりだよ」

 「……!……」
 お父さんの言葉は、幼い二人を驚かしましたが、何よりここで
張り付けられている茜さんにとってそれはショックな言葉でした。
 だって、そんなこと、初めて聞いたんですから……

 「お仕置きで大切なのは実はぶつことじゃないんだ。親の意見
を聞いてもらうことなんだ。だから、目一杯は叩かないんだよ。
お説教も沢山したいからね。あんまり強くして人の話を聞く余裕
がなくなるのも親としては困りもんなんだ。だから、幼い頃は、
お膝に抱いて平手で十分ってわけさ。君たちだって先生のお膝の
上にうつ伏せになってお尻ペンペンってことがあっただろう?」

 「うん」
 「あった」

 「この子だって昔はお膝で足りてたから、こんな台や鞭なんか
使わなかったんだ。ただ、身体がこんなに大きくなっちゃうと、
お膝に乗せてのスパンキングだけじゃ、途中で寝ちゃうからね。
もう少し強い刺激のある罰が必要になるんだよ」

 「すっごい!茜おちゃま、お尻ペンペンの最中に寝ちゃうの?」
 春花が目を丸くしますが……。

 「(ははははは)あくまで比喩さ。女の子ってのは慣れるのが
早いからね。どんなに辛い罰もすぐに慣れてしまって、その間は、
自分の頭に麻酔をかけて、意識を外の世界から遮断するることが
できるんだ。君たちはそんな経験ないかな?」

 「…………」
 「…………」
 二人はしばし考え、最後は顔を見合わせますが、この時は思い
当たることがありませんでした。

 いきなりそんなこと尋ねられてもピンとこなかったのでしょう。
でも……

 「そうか、ないか。いや、それならいいんだ。……(ははは)
だったら、君たちにはまだ鞭は必要ないというわけだ」
 お父さんがこう言ったあとは……

 「へへへへへ」
 「ふふふふふ」
 意味深な笑い顔の二人は、心の奥底に秘密を抱えていました。
 そう、思い出したのです。自分たちにも同じ癖があることを。

 お父さんはその含みのある笑顔から二人が自分のことを思い出
したんだと感じましたが、それ以上、二人を追求することはしま
せんでした。
 いえ、そんなことは、実際にお尻ペンペンをやってみればすぐ
にわかることですから。

 「それじゃあ、今度は……美里ちゃんやってみようか」

 お父さんは美里ちゃんを自分の近くに呼びます。
 レクチャーの要領は春花ちゃんと同じ。美里ちゃんの手を包み
こんで、軽く茜さんのお尻にヒットさせるつもりだったのです。

 ところが、美里ちゃんは、一度包み込まれた先生の手をするり
とすり抜けると、自分で鞭を振るいます。
 一瞬の出来事、誰にも止めることはできませんでした。

 「ピシッ」
 その衝撃に、茜さんは思わず海老ぞりになります。

 「ヒィ~~」
 もう、出さないと心に決めていた悲鳴まで出す始末でした。

 美里ちゃんは特別なことをしたわけではありません。さっき、
春花ちゃんの様子を見ていて、それを真似たのでした。

 スナップの効いた実に立派な一撃にお父さんもビックリです。

 気をよくした美里ちゃんの瞳には怪しい炎が揺らめきます。
 続けて第二弾もやろうというわけです。

 「ちょっと、ちょっと、待って」
 慌ててお父さんが止めに入ります。

 すると……
 「え~~~、ダメなの?だって、さっきいくつでもぶっていい
って言ったじゃない」
 美里ちゃんはおおむくれです。

 「いや、あれは……」
 お父さんは、美里ちゃんがこんなにもうまく鞭を扱えるなんて
計算外のでした。
 そこで……

 「よし、わかった。じゃあ、茜にパンツを穿かせるから、それ
からにしよう」

 美里ちゃんは、さっき見た茜お姉様の生のお尻を叩きたかった
のかもしれませんが、仕方がありませんでした。

 お父さんは、お母さんに言ってニットのショートパンツを取り
寄せると、茜ちゃんの足枷となっているベルトを外してショーツ
の上から、これを穿かせます。

 これって衣装が増えるというのに茜さんにしてみたらとっても
恥ずかしいことでした。

 「よし、これでいいよ」

 こうして準備万端整ったあと、美里ちゃんはお姉ちゃんのお尻
に熱い鞭を6発打ち込みましたが……

 「ピタッ……ピタッ……ピタッ…ピタッ……ピタッ……ピタッ」

 気持だけが先行したのでしょう、お父さんのレクチャーを忘れ
てむやみに鞭を振り下ろしましたから思うような成果はあげられ
ませんでした。

 「もっと、やるかい?」
 お父さんの言葉に美里ちゃんは首を振ります。

 おかげで茜さんは、この台の上で恥ずかしくのた打ち回る姿を
あらためて家族に見せずにすんだのでした。


 お休みの時間、茜さんは約束どおり素っ裸でお父さんのベッド
へ現れ、床を共にします。お母さんは小さい二人のベッドでご本
を読み聞かせてから戻ってきます。

 もちろん、その間にお父さんが茜さんに対して何か特別な事を
するわけではありません。ただ……

 「今日は辛かったかい?」
 「はい」
 「だったら、私が嫌いかい?」
 「そんなことありません」
 「正直に言っていいんだよ」
 「正直にって……」
 「もし、今度の事で私が嫌いになったのなら別の里親を探して
あげるからね。……嫌いな人にぶたれるのは本当に辛いからね。
私は茜を不幸にはしたくないんだ」
 「私はお父様の処にいたいんです。他の家は嫌です」
 「ホントに?」
 「本当です」
 「そう、だったらこれからも私は茜を愛していいんだね?」
 「はい」
 「よし、わかった。だったら、これからも私はお前を目一杯愛
してあげられるね」
 「はい」
 「よかった。これで茜に嫌われたらどうしようって思ったよ。
……いいかい、茜。人は愛するだけ、愛されるだけでは幸せには
なれないんだ。愛して、愛されて、はじめて幸せが訪れるんだよ」
 「はい、お父様」

 親子でこんなおしゃべりがあっただけでした。


 一方、春花ちゃんと美里ちゃんのベッドルームではこの二人も
この日最後のおしゃべりをしていました。

 「今日は凄かったね」
 「ほんと、凄かった」

 「こんな厳しいお仕置きのある処で誰だって暮らしたくないよ
ね」
 「……うん」

 「ねえ、来月はもっとお金持ちの家にお呼ばれしようよ」
 「……うん……でも、クジ当たるかなあ?」

 「当たるわよ。私、くじ運強いもの。任せなさい!」

 「それでどこの家に行くの?」

 「ねえ、今度は安藤さん家なんかよくない?」

 「それ、いいかも、一度行ったけどお夕食超豪華だったもの」

 「そうでしょう。あそこ、この町一番のお金持ちらしいわよ。
わたし、鴨料理って食べてみたいなあ」
 春花ちゃんが大西家のベッドで夢見るのは安藤家の食卓、その
豪華な料理でした。

 「よし、決まりね。次は必ずゲットしてみせるわ。私の念力で
……そしたら、こんなオンボロ屋敷に用はないわ」
 春花ちゃんは明るく笑います。

 ところが、その瞬間になって……

 「………………」
 なぜか美里ちゃんは無反応。

 春花ちゃんは、隣りのベッドで美里ちゃんが自分と同じことを
考えていると信じて疑いませんでしたが、美里ちゃんの思いは、
春花ちゃんとは少しだけ違っていたのでした。

 『お仕置きかあ……』
 美里ちゃんの頭の中では、大西先生から厳しくお仕置きされた
あと、とっても、とっても愛される自分の姿が、走馬灯のように
流れていたのでした。

********(17)**************

*******<第3回はここまで>*********
~~ 第1章はここまでです ~~

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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