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見沼教育ビレッジ (12)

****** 見沼教育ビレッジ (12) ******

******<主な登場人物>************

 新井美香……中学二年。肩まで届くような長い髪の先に小さく
       カールをかけている。目鼻立ちの整った美少女。
       ただ本人は自分の顔に不満があって整形したいと
       思っている。
 新井真治……振興鉄鋼㈱の社長。普段から忙しくしているが、
       今回、娘の為に1週間の休暇をとった。
 新井澄江……専業主婦。小さな事にまで気のつくまめな人だが、
       それがかえって仇になり娘と衝突することが多い。
 新井香織……小学5年生で美香の妹。やんちゃでおしゃべり、
       まだまだ甘えん坊で好奇心も強い。
 ケイト先生…白人女性だが日本生まれの日本育ちで英語が苦手
       という変な外人先生。サマーキャンプでは美香の
       指導教官なのだが、童顔が災いしてかよく生徒と
       間違われる。彼女はすでに美香の両親から体罰の
       承諾を得ており、お仕置きはかなり厳しい。

**************************

 「覚悟を決めたか?……どうやら、お前も少~~しだけ大人に
なったみたいだな」
 お父さんは最初厳しい顔でそう言います。

 『覚悟って何よ!……こんな状況じゃ仕方がないじゃない……
私は私、何も変わってないわ』
 言われた私はそう思っていました。

 でも、お父さんには私の心持が最初の頃とは幾らか違ってきた
のがわかるみたいで、顔は厳しくても嬉しそうにしている様子が
こちらへと伝わってきます。

 ただ……
 『何がどう違うって言うのかしら?』
 幼い私にその具体的な中身まではわかりませんでした。

 お尻ペンペンの姿勢でお薬を塗られ、ベッドに仰向けらされて
オムツを穿かされます。
 友だちに見られたら自殺だってしかねないくらい哀れな姿です。

 当然……
 『こんな屈辱の時間、早く過ぎ去ればいいのに……』
 とそればかり思っていました。

 ただ、最初の頃と違いがあるとすれば、それはまわりの景色が
よく見えるようになったということでしょうか。
 お父さんがやっているたどたどしいオムツ替えの手つきやお母
さんとケイト先生の何気ない会話。香織の手持ち無沙汰な様子迄、
その時は冷静に観察できるようになっていたのでした。

 「要するに諦めただけよ」
 私は誰に聞かせるわけでもなく、ぼそぼそっと小さな声で独り
言を言います。

 すると、それにお父さんが反応しました。
 「だから、『お前も大人になったなあ』と言っているんだ」

 「諦めることが?」

 「そうだ、……それも一つだな」

 「どういうことよ」

 「お前はさっきまで自分のわがままや欲望だけを連呼していて、
それが受け入れられないと心を閉じていた。でも、今は、自分が
置かれている状況を冷静に観察しようとしている。こうなると、
『自分の欲望は一旦脇に置いてとりあえずは諦める』という選択
だって出てくる」

 「だって、諦めたらどのみち負けじゃない」

 「そうじゃないよ。相手のことを冷静に観察したうえで諦める
のは、何も逃げる負けるという意味じゃない。むしろ、その先で
よりよい結果を得るための手段なんだ」

 「ふうん」

 「そうしたこと分かればお前も一人前なんだろうがな。まだ、
そこまではいってないようだな。…………ま、いいさ。その方が
こちらも長いこと楽しめるというもんだ」

 お父さんは自分の出来栄えに満足したように笑うと、オムツ姿
の私を抱き上げます。
 いつ以来でしょうか、お姫様だっこなんて……。

 「先生、出来上がりましたよ」
 お父さんは自分の作品を誇らしげに目よりも高く差し上げます。

 「あら、美香ちゃん、お父様に抱っこしてもらったの?」
 「わあ~~よかったわねえ~~」
 お母さんやケイト先生の声に私の体は全身がピンク色に染まり
ました。

 「わあ、いいなあ、お姉ちゃん、私も抱っこされたい」
 妹の香織までもがお父さんの袖を引きます。

 「だめだよ。これは頑張ったおねえちゃんのご褒美なんだから。
お前もお浣腸するかい?」
 お父さんに言われると、香織はもちろん……
 「いやだあ、恥ずかしいもん」
 と、女の子らしく身体をくねらせて照れてみせます。

 「よかったわね、美香ちゃん、その調子よ」
 ケイト先生はお父さんに抱きかかえられた私の顔を覗きこむと、
人差し指で私のほっぺを突っついてあやします。

 ケイト先生だけじゃありません。この時、私を取り囲む全ての
人が私を本当の赤ちゃんを見ているように見つめ、微笑みかける
のでした。

 『まったく、何よ!馬鹿にしないでよ!』
 という気持も一瞬湧きましたが、家族全員が笑っている中では
それもすぐにかき消され、いつしか不思議な気分に……

 「ほ~~ら、高い、高~い」
 お父さんは何度も何度も私の身体を上下させます。
 すると、その度に天井が近くなったり遠くなったりしました。

 『私、赤ちゃんの頃って覚えてないけど、こんなだったのかあ。
このまま寝てしまいたいくらい気持がいいわ』
 私はお父さんの大きな腕の中でまどろみかけます。

 『不思議、痛いお尻がくすぐったくて気持いいなんて……』
 久しぶりに味わうお父さんの抱っこはパドルで叩かれたお尻が
まだ少し痛かったりしますが、それさえも心地よく感じられて、
楽しい思い出になったのでした。


 「さあ、お着替えを済ませたらしたら、顔を洗って食堂へ行き
ましょう。さっきから、いい匂いがしてきたわ」
 ケイト先生の明るい声が響きます。

 着替えと言っても脱ぐものはありません。私、その時はオムツ
しか身につけていませんから、あとは一つずつ服を着ていくだけ。
バンビのプリントされたスリーマーに始まり、袖と襟にレースの
着いた薄いピンクのブラウス。紺のプリーツスカートは膝上15
センチで小学生の妹のものより丈が短いものでした。

 しかし、ここでも私は一人前に扱われません。
 自分で服を着ることができないのです。

 お父さんとお母さんが、寄ってたかって裸の私に下着から身に
つけさせていきます。
 私はそんな甲斐甲斐しく働く二人に手出しすることは許されま
せんでした。

 「いいなあ、お姉ちゃん、お父さんとお母さんに何から何まで
やってもらって……」

 香織は脇で不満そうでしたが、私は……
 『何言ってるの。いつでも代わってあげるわ』
 と思っていました。

 実際、お母さんは、着替えの最中、目が笑っていません。
 考えてみればこのお仕置き、私だけが辛いんじゃありません。
私はお父さんお母さんにも大迷惑をかけているのです。

 ですから、お母さんがちょっとでも不機嫌な顔をすると、私は
申し訳なくて、着替えの最中や身づくろいをする洗面所でも、私
の心は針のむしろに乗ったままだったのです。

 妹はまだ幼いので私の気持なんてまだ分からないみたいで……
本当に代われるものなら代わりたいと思っていました。


 私たち家族は身支度を整えると食堂へ行きます。
 朝の食事の仕度は賄いのおばちゃんがやってくれていましたが、
私はここでも何一つ自由を与えられなかったのです。

 『?』

 私は食堂に入ってすぐ、奇妙な椅子の存在に気づきます。
 それは、サイズこそ大人用の椅子でしたが、形は幼児用の椅子
とそっくりだったのです。

 背もたれのプーさんのイラストはご愛嬌だとしても、その椅子
は前に小さなテーブルがあり、身体が転げ落ちないようにお股を
通したベルトで固定できるようになっています。
 お母さんと一緒に離乳食を食べる乳幼児が座る椅子という感じ
でした。

 『!』
 私は嫌な予感がしましたが……

 「美香ちゃん、いらっしゃい」
 ケイト先生がその椅子を引いて私にここへ座るように促します。

 『やっぱり』
 と、がっかり。どうやら、私の予感はピンポンのようでした。

 私はその椅子に座り、お父さんお母さんがその両脇に座ります。

 「いただきます」

 ケイト先生も交えて、みんなで食卓を囲みましたが、案の定、
私は何もさせてもらえませんでした。
 私に出来たのは、「いただきます」というご挨拶とお父さんや
お母さんがスプーンで口元まで運んできてくれた料理をパクリと
やって、口の中でもぐもぐするだけ。

 もし料理を乗せたスプーンが目の前にやってきたにも関わらず
口を開かず顔を背けると、もうそれだけで食事は中断。

 「いやあ、もうしないでえ~~~ごめんなさい、悪い子でした
いやいや。ごめんなさい、ごめんなさい、もうしないもうしない」

 香織がしかめっ面をする中で、私はオムツを脱がされて涼しく
なったお尻が真っ赤に焼きあがるまでお父さんやお母さんからの
平手打ちを覚悟しなければなりませんでした。

 それだけじゃありません。もし……
 「美味しいかい?」
 と尋ねられたら、満面の笑みで答えるのも、赤ちゃんとしての
私の義務だったのです。


 お浣腸されたうえにオムツにお漏らし。強烈にお尻をぶたれた
あとは、オムツをはめられて朝の食事を無理やり口の中にねじ込
まれる。これほど屈辱的な朝がこれまであったでしょうか。
 私は肉体的も精神的にもフラフラで自分の部屋へ向かったので
した。


 勉強部屋に戻ると、ごく自然に自分のベッドへ倒れこみます。

 「どう?朝の儀式の感想は?」
 それを見たケイト先生がカーテンを開けながら尋ねました。

 「…………」
 でも、私は答えません。答えたくありませんでした。

 「朝の儀式で疲れたのはわかるけど、ここからはもっと大変よ。
何しろお勉強しなきゃいけないんだもの。そのためには……まず、
オムツを外さなくてはね。この温気ですもの、こんな物してたら、
それこそお尻じゅうあせもだらけになっちゃうわ」
 ケイト先生は私が寝そべるベッドに腰を下ろします。

 「こんなこと、明日もあるんですか?」
 私は倒れこんだままの姿勢で、腰を下ろしてきたケイト先生を
薄目を開けて見つめます。

 「残念だけど、明日の朝も同じよ。そして明後日も……」

 ケイト先生は首を横に振りながら答え、私を仰向けにすると、
オムツを外し始めます。
 普通の常識なら、こんな事されたら抵抗するところでしょうが
私もすっかり慣れてしまったのか、この時は声もださず無抵抗で
した。

 「その先もずっとこうなんですね」

 疲れた声泣きそうな声に先生は……
 「疲れちゃったの?……無理もないわ。今日が初日ですもの。
……でも、すぐに慣れるわ。だって、ここにいる子たちはみんな
同じことしてるんですもの。あなただけじゃないから安心して」

 『あなただけじゃない』というのは、女の子には励ましの言葉
なのかもしれません。でも、ケイト先生にそう言われても、私の
心は『はい、そうですか』という顔をできませんでした。

 ですから、目を閉じて先生とは反対の方を向いてしまいます。
 すると、その視線の先には壁に掛かったゴム製のパドルが……

 今さら『あれ、どんな時に使うんですか?』と聞く気にもなり
ませんから、再び先生の方へ向き直ると……先生がちょうど蜀台
を戸棚から出している処でした。

 それは極太のローソクを1本だけ立てるタイプのタイプの物で、
小机の上には予備のローソクまでもがまだ箱に入ったままて準備
されています。

 『明かりなら電気で十分なはずなのにどうして?』

 パドルは今さらですが……こちらの蜀台は気になります。です
から、理由を尋ねてみたくなったのでした。

 「ローソクって必要なんですか?」
 恐る恐る尋ねてみると……

 「ああ、これ?……これは『お目覚まし』よ」

 「お目覚まし?」

 「そう、授業の途中で眠くなった子を起こす時に使うの。……
……火の着いた蝋燭をこうやって……」
 ケイト先生は私の右手を取ると、まだ火のついていない蜀台の
蝋燭をその上で傾けてみせます。

 「……!!!……」

 いくら世間知らずの私でも、それがどんな結果をもたらすかは
わかります。

 私は慌てて右手を引っ込めてしまいました。
 ただ、すねている時間はありませんでした。

 「さあ、そろそろ、最初の先生がお見えになるわ。これからは
私とあなたと、各教科の先生と三人でお勉強することになるの。
お勉強中はお父様やお母様といったご家族はご遠慮いただいてる
けど……どう、それじゃあ寂しい?」

 「……別に、そういうわけじゃあ」
 弱弱しく答えると……

 「じゃあ、しゃきっとした顔をしなさい。どの先生も真剣勝負
でみえられるのよ。50分間の授業で、あいだに10分の休憩が
入るけど……集中してやらないと……お昼も夜もごはんを立って
食べることになるから気をつけてね」

 「立って食べるって?……どうしてですか?」
 私は思わず尋ねます。
 それって、さっきは『分かりきってるから尋ねないでおこう』
としたことでした。

 「だから、お尻が痛いと椅子に座りにくいでしょう」

 「お仕置きってことですか?あのパドルで、やるんですか?」
 恐いけど、尋ねてしまいます。

 「10分休憩とお昼ごはんの後や夕ご飯の前に、先生方の指示
を受けて私がやるの。10分休憩の時は時間の関係で平手のお尻
叩きが多いけど……昼ごはんの後や夕ご飯の前は、庭の晒し台に
拘束してパドルが多いかしらね……親御さんから許可の出ている
子はお灸もあるし……赤ちゃん扱いだから公園で木馬に乗ったり、
乳母車でお散歩ってのもあるわね……こちらは気晴らしにはなる
かもしれなくてよ」

 「木馬って、三角木馬ですか?」

 「あらあら、おませさんはそんなことまで知ってるの。困った
子ねえ……」
 思わず口をついて出た言葉にケイト先生は苦笑します。そして、
こう続けるのでした。

 「ここでの木馬は、そんな危ないものじゃなくて、よく幼児が
家の中で乗って遊んでる玩具の木馬。それをただ大きくしただけ
の物なの。ただし、公園の木馬はオムツ姿で乗らなきゃいけない
から、それは覚悟しておいてね」

 「乳母車は?」

 「こちらは楽ちんよ。特注された大型乳母車に乗ってればいい
んですもの。これって中が広いでしょう、乗り心地が最高なの」

 「そうですか……」
 私が気のない返事を返しますと……
 
 「ただし、お家を出る時、もの凄くよく効くお浣腸をするから、
途中でオムツ換えをしなければならなくなるわね。知らない人が
沢山見ている前でのオムツ換えなんて、赤ちゃんにはぴったりの
お仕置きでしょう?」

 ケイト先生の皮肉な笑いに……私は滝に打たれたみたいに全身
びっしょりの脂汗。顔は真っ青になってしまいました。

 「そんなに怯えなくてもいいわ。真面目にやってさえいれば、
私のお尻叩きだけで済むはずだから……」

 ケイト先生の言葉はありがたかったのでしょうか。
 私には……
 『あなた、どんなに頑張ってもお尻叩きは免れませんよ』
 と、聞こえてしまうのでした。


****** 見沼教育ビレッジ (12) ******

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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