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見沼教育ビレッジ / 第1章 / §6~§7

***** 見沼教育ビレッジ(6) *****

 最初の12回が終わると、樺山先生は少し荒い息でした。
 そこで少し呼吸を整えてから……

 「では、次はズボンを脱いで行います」
 こう宣言して、彼のズボンを脱がしにかかったのですが……

 「先生、それは私が……」
 こう言って梶先生が手伝います。
 恐らく、ご婦人が紳士のズボンを脱がすというは、お仕置きで
あってもあまりエチケットにないと思って、手を貸されたのかも
しれません。

 いずれにしても、峰岸さんのズボンは脱がされ、私の目の前に
彼のトランクスがで~んと現れました。

 「いやん」
 私はまたキャシーの肩を借ります。

 私の家族は父を除けば女所帯ですから、男性の裸、たとえ下着
姿であってもそんなものを見る機会があまりありませんでした。

 もちろん、父と私は、幼い頃一緒にお風呂に入っていましたが、
父親というのは、性別は男であっても、男性としては見ないもの
なのので、その時は何も感じませんでした。

 そんな様子は、でもキャシーには不思議なものと映るようで…
 「ほら、何カマトトぶってるのよ」
 肩を揺すって私の顔を跳ね上げると……
 「そんなリアクションは、金玉でも見た時に取っておいた方が
いいわ」
 なんて言われてしまいます。

 私は顔が真っ赤に火照っていました。
 だって『金タマ』なんて日本語、意味は知ってはいても一回も
使ったことなんてありませんから、そりゃあ驚きます。

 『この人、どんな育ちをしてるのかしら?』
 とも思いました。

 席を立とうかとも考えましたが、でも、そうこうするうちに、
舞台では第2ステージが始まってしまい、今さら、この場を離れ
にくくなります。

 そこで、再び前を向くことに……
 そこには峰岸君(先輩だけどあえてこう呼びます)の引き締ま
ったお尻がで~んとありました。

 そこへ、樺山先生の鞭が飛んできます。

 「いいこと、邪まな心をあらためなさい」
 これから先はお説教付きです。
 そして、そのお説教の後に……

 「ピシッ」
 鞭が飛びます。

 「はい、先生」
 ズボンを穿いていても大きな音がしていましたが、下着になる
と、鞭音も変わって、だぶだぶのトランクスを揺らします。

 「……(ふぅ~)……」
 まだ下着でしたけど、私は目のやり場に困りました。

 というのも、あのトランクスのなかで、男の子の大事なものが
揺れているかと思うと、目をつむっていてもそれが脳裏に浮かん
できてしまいます。

 「女の子を忘れる最も手っ取り早い方法は、他に夢中になる事
を見つけることよ」

 「ピシッ」
 また、トランクスが揺れ、太股が揺れ、お尻が揺れます。
 すると、また例の妄想が……

 「はい、先生」
 峰岸君の声は、依然、涼やかでしっかりとしています。
 それって、今まで鞭でぶたれていないかのようでした。

 『すごいなあ男の子って…あんなにぶたれても平気なんだもん。
まるでスーパーマンだわ』
 変なことに感心しますが、それでも私のドキドキは別でした。

 「約束しなさい、あの子とはもう付き合わないって……」

 「ピシッ」
 もう、どうしていいのか分かりません。とにかくこれ以上見て
いたら、私の恥ずかしい場所が濡れだすのは目に見えてます。
 ですから、とりあえず目をつぶるしかありませんでした。

 「はい、先生、約束します」
 私は峰岸君の声を聞きながらも、目を閉じ、耳を両手で塞いで
下を向きます。

 「本当に約束できますか?」
 「ピシッ」
 「はい先生」

 「本当に大丈夫?」
 「ピシッ」
 「大丈夫です」

 「本当に大丈夫?約束できるかしら?」
 「ピシッ」
 「大丈夫です。約束します」

 私はどんなことがあっても峰岸君のお仕置きが終わるまで目を
つぶっていようと思ったのですが……

 「?」

 それまで規則正しく打ち込まれていた鞭音が、ある時ぴたりと
やみます。

 すると、不思議なもので、それはそれで気になって、やっぱり
目を開けてしまうのでした。

 すると、私の視界に最初に飛び込んできたのは……にこやかに、
樺山先生がご自分のケインを梶先生に手渡しているところでした。

 「あとは、お願いします、先生」
 どうやら、半分の18回が終わったところで選手交代という事
のようでした。

 でも、バトンを渡された梶先生というのは見るからにお年寄り。
普段から腰が少し曲がっているようにも見えます。ですから私…
 『これで、峰岸君もだいぶ楽になった』
 と思ったのです。

 ところが、ところが……

 「ピシッ」
 たった一撃で峰岸君の背中が反り返ります。

 ただ、梶先生の鞭は、先ほどの樺山先生の鞭に比べてもそんな
に高い音ではありませんでした。

 「ピシッ」
 続けて二発目が飛んできます。

 峰岸君、思わずうつ伏せになっている机に力一杯引き寄せます。
 これって、もの凄く痛い思いをした時のシグナルでした。

 鞭打ち用のテーブルは、机の幅が肩幅より若干広い程度にしか
ありませんから、みんな机を抱くようにして痛みに耐えます。

 きっと、この時は峰岸君は相当に痛かったんだと思います。
 机が浮き上がりそうでした。

 「ピシッ」
 さらに三発目。
 「ひぃ~」
 峰岸君が初めて声を上げました。女の子みたな悲鳴じゃありま
せんけど、その低い声は私の耳にもはっきりと聞こえました。

 「ピシッ」
 四つ目。

 「うっ……」
 また押し殺したようなうめき声。
 それって『僕は男の子だから、悲鳴なんか上げないぞ』という
やせ我慢にも聞こえます。

 でも、不思議でした。
 梶先生は樺山先生のように大きく振りかぶってなんかいません。
その鞭はせいぜい肩の高さくらいまでしか上がっていないのです。
ちょんちょんって軽く叩いているように見えます。なのに、樺山
先生の時より峰岸君ははるかに痛そうでした。

 「ピシッ」
 五つ目。
 相変わらず鞭の当たる音は低く、鈍い音に感じられます。

 「あっ、あああああ」
 その耐えられない痛みからくるうめき声は、今度ははっきりと
聞こえました。

 それって、もちろん私がぶたれていたわけではありませんが、
もう聞いてるだけで辛いうめき声だったのです。

 「ピシッ」

 「ひぃ~~~」
 パンツ姿の最後は少し強めだったみたいで、両手で握った机が
もう一度持ち上がろうとします。
 峰岸君は男の子の意地でやっとそれを止められた感じでした。

 鞭のお仕置きは慣れない子には拘束をかけますが、慣れた子や
上級生に対しては机に備わった革ベルトでの拘束はしません。

 これって一見すると拘束されない方が楽なように思われるかも
しれませんが、実際は逆で、お仕置き中はどんなにキツイ痛みが
襲っても、自分で自分を自制して、自分の体がテーブルから浮き
上がらないようにしなれければなりません。
 これがとっても大変だったのです。

 鞭のお仕置きでは、男女を問わずほんのちょっとでもテーブル
から身体を離せば、新たなお仕置きが追加される規則になってい
ました。


 『終わったあ』
 わたしは、梶先生が一息ついたので、これで終わりかと勝手に
思ってしまいましたが、36回のうち、終わったのは24回分。
まだ、あと12回分が残っていました。

 そこで、梶先生が峰岸君のお尻の方へやってきた時も、きっと
ズボンを元に戻してあげるんだろうと勝手に解釈していたのです。
 ところが……

 「…………」
 梶先生はズボンを穿かすんじゃなくていきなり峰岸君のパンツ
を下ろしたのでした。
 当然。峰岸君の引き締まったお尻が私の目の前に現れます。

 「いやあ!!」
 私に思い違いがあった分反応が遅れて素っ頓狂な悲鳴を上げる
ことになりました。

 当然、その声は周囲の人たちに聞こえたはずで……
 「ちょっと、変な声出さないでよ」
 キャシーに注意されます。

 すると、私はここでもう一つ思い違いをしていました。

 つまりパンツを脱いだ峰岸君の下半身は丸裸だと思ったのです。
 いくらうぶな私でもお父さんとお風呂に入ったことがあります
からそうなったら何が見えるかぐらいは分かります。
 それで、びっくりしてしまって声をあげたのでした。

 私は両手で顔を覆い、そこは見ないようにしていました。目も
つぶっていました。

 でも……
 「ピシッ」という鞭音は相変わらずですし……
 「うっっっ」という峰岸君の息苦しい悲鳴も相変わらずです。

 すると……
 数発後には、やっぱり目が開いてしまいます。

 そして、次の鞭音が聞こえると……
 私は禁断の指の扉を開いて、再び峰岸君のお尻を確認すること
に……

 峰岸君のお尻には、すでに赤い鞭傷が何本も入っていましたが、
私の目的はそれではありませんでした。

 「…………」
 私は悲鳴を上げて拒否しておきながら、それって変かもしれま
せんが、今度はアレを探してしまうのでした。

 ところが……
 「えっ?……何?……」
 目的のものは見つかりません。

 分かったのは、峰岸君が純粋な裸ではないということでした。
 彼は、パンツの下にお祭りなんかで男性がよく穿いている褌を
しめていたのです。
 ですから、目的のものは見つからないわけです。

 すると、人間勝手なもので、ほっとしたという思いのほかに、
『あ~あ、残念』という思いが混じれます。
 しかもその声が思わず独り言となって口から出てしまいます。

 「なあんだ、褌は着けてるんじゃない」

 すると、キャシーが私を振り返り……
 「ん?…………残念だった?」
 って、隣りで笑うのでした。

 私は、慌てて……
 「そんなことないわよ。変なこと言わないでよ」
 と否定しましが、本心は違っていました。

 そんな私の心を見透かすようにキャシーは頭の天辺からつま先
まで私の体の全てを一度じっくり眺めてから元の姿勢に戻ります。


 一方、舞台はいよいよ佳境に……
 「ピシッ」
 「これからは、心を入れ替えるんだな」
 それまで黙って峰岸君のお尻を叩いていた梶先生も最後の数発
ではお説教をいれます。

 「はい……先生……申し訳ありませんでした」
 苦しい息の下で峰岸君が答えます。

 もちろん最後の方は痛みが蓄積しますからその分は差し引いて
考えなければならないでしょうが、それにしても、樺山先生の時
と比べたら峰岸君の疲労度は雲泥の差です。

 ですから……
 『そんなに、たいして力入れてないみたいなのに、凄いなあ。
あんな強そうな男の子を息絶え絶えにしちゃうんだもん』
 私は変なことに感心してしまうのでした。


 公開処刑が終わり周囲の人たちが席を立ち始めるとケイト先生
たちが迎えに来ましたが、ここでキャシーが……

 「すみません、ちょっと、おトイレ…行って来ていいですか?」
 と尋ねます。

 そして、先生の許可が下りると……
 「美香、あなたも行かない」
 と私まで誘います。

 「私は……」
 その瞬間、断ろうとしたのですが……

 「いいから、付き合いなさいよ」
 キャシーはそう言って私の手を引きます。

 『まあ、仕方ないか……』
 そんな心境でした。

 「それじゃあ、ちょっと失礼して二人で行ってきます」

 キャシーは満面の笑みで二人の先生にご挨拶すると、私の肩を
抱いて出かけます。

 そのトイレですが、実はこの舞台の裏手にありました。

 行ってみると、それなりの人が見物していましたからトイレも
混んでいます。
 ただ、キャシーははじめからその列に並ぶつもりはありません
でした。その代わり……

 「こっちよ」
 私の袖をひいて同じ劇場裏手にある建物のドアを開けるのです。

 「何なの?」
 私がいぶかしげに尋ねると、人差し指を唇に当てて……
 「いいから、黙って!絶対に声を出しちゃためよ。面白いもの
見せてあげるんだから」
 そう言って中へ入っていきます。

 そこは舞台でお芝居をする時にでも使うのでしょうか、色んな
小道具や大道具が仕舞われている道具部屋でした。

 「何なの、ここ?」
 私は心配になって尋ねますが、キャシーは……
 「いいから、いいから、とにかく黙って……」
 と言うだけだったのです。

 そして、その薄暗い部屋の片隅へと私を連れて行きます。

 すると、何やら人の気配が……会話も聞こえます。
 キャシーが指を指しますから、何事かと思って覗いてみますと、
その壁のすき間から樺山先生の姿が……それだけじゃありません、
あの舞台では存在感のなかった恵子ちゃんの姿も見えたのです。

 恵子ちゃんはすでに着替え始めていました。
 私はそこで初めて恵子ちゃんもまたその時に備えてTバックを
穿いていたことを知ったのです。

 『そうか、いくら公開処刑と言っても、大事な場所まで丸見え
なんてことはないのか』
 なんて、ここでも変な事に感心してしまいます。

 すると、ここでキャシーが私に耳打ち。
 「ここは舞台の控え室なの。向こうにもう一つあるわ。きっと、
峰岸君たちはそっちを使ってるはずよ」

 どうやらキャシーのお目当ては峰岸君。こちらは的外れみたい
でした。ですから、私たちは部屋の反対側へ、峰岸君のいる部屋
へ場所を変えようとしたのでした。

 ところが……
 その時でした。ちょっとした事件が起こったのです。

 「パシ~ン」
 二人の逃げ足を止めたのは、平手打ちの甲高い音。

 見ると、ぶったのは樺山先生。ぶたれたのは恵子ちゃんでした。

***************(6)**********

****** 見沼教育ビレッジ (7) ******

 「あなた、私が何も知らないと思ってるの」

 樺山先生はそう言って、恵子ちゃんに皺くちゃになった一枚の
便箋を突きつけます。

 すると、恵子ちゃんはそれを受け取りはしましたが……
 押し黙ったまま、それを開いて読もうとはしませんでした。

 「あなた部屋のゴミ箱から出てきたわ。こういうものは人目に
つかないように処分するものよ。それもしないで、炭焼き小屋へ
遊びに行くなんて……あなたもずいぶん舞い上がっていたのね」

 「……私……」
 恵子ちゃんは、何か言わなければならないと思っていたのかも
しれませんが、声にできたのはそれだけでした。

 「そこには、あなたが、炭焼き小屋で待ってるから来て欲しい
と書いてあるわ。……あなたにしては、随分と積極的ね」

 「…………」

 「駿君は好青年だから、きっと男義を出して罪を被ってくれた
んだと思うわ。……おかげで、あなたは人前でお尻を出さないで
すんだわけだから……そりゃあ、あなたにとっては大ラッキーで
しょうけど……それで、片付けていい問題かしらね」

 「……私は……何も……そんなこと……駿ちゃんに頼んだわけ
じゃないし……」
 恵子ちゃんの言葉は途切れ途切れ。まるでオシッコにでも行き
たいかのようにもじもじした様子で弁明します。

 「そりゃあ、あなたが頼んでないのはそうでしょうね。私も、
このことは彼が独りで判断したことだと思うわ。でも、それでは
私の気持がすまないの」

 「そんなあ、だって、あれは、さっき終わったことでしょう。
……それに……私が彼を呼んだっていう証拠はあるんですか?」
 恵子ちゃんは、やばいことになったと思い、思わず言葉に力が
入ってしまいます。

 でも、それって樺山先生には逆効果でした。

 「あなた、何か勘違いしてるわね。駿君がお尻をぶたれたこと
でこの件が全て終わった訳じゃないのよ。あれはあくまであなた
と駿君が逢引したことを咎めただけ。その罪の清算がすんだだけ
だわ」

 「どういうことですか?」

 「だって、あなたは駿君をここへ呼び寄せる手紙を書いて彼に
渡してるみたいだし……炭焼き小屋の鍵だって、部外者の駿君が
そのありかを知ってるはずがないでしょう。そもそも、消灯時間
を過ぎて外出するのは重大な規則違反よ」

 「だって、あれは……………………」
 恵子ちゃんはそう言ったきり言葉が繋がりませんでした。

 「だってあれは駿君が無理やり私を脅して…とでも言いたの?」

 「…………」
 恵子ちゃんが恐々頷きますと……

 「あなた、警備員のおじさんに発見された時、どんな格好して
たかわすれたの?」

 「……(えっ?)……」

 「最もお気に入りのワンピース姿で……普段は宝石箱に入れて
あるリボンをしてなかったかしら?……脅されて連れ出されたと
いう人が、わざわざそんな粧し込んだ格好で外に出るかしらね?」

 「…………」
 恵子ちゃん、真っ青で足元が震えています。
 もう、何も言えないみたいでした。

 そんな恵子ちゃんに樺山先生は追い討ちをかけます。
 「それに大事なことを一つ……女の子の世界ではね、そもそも
証拠なんていらないの……証拠がないといけないのは男性の世界
だけよ。……女の子や子どもの世界では、親や教師は怪しいって
思えばそれで罪は確定。子どもは罰を受けなければならないわ。
……知らなかった?」

 樺山先生の笑顔は私たちにも不気味に映りました。

 「あなたには、消灯時間を過ぎて外出した規則違反で罰を与え
ます」

 「だって、あれは、駿ちゃんに脅されて……無理やり……」
 恵子ちゃんは必死になって最後の自己弁護を試みましたが……

 こんな時、女の子にはよく効く薬がありました。

 「お黙り!!!」
 と一言。

 樺山先生の剣幕に、恵子ちゃんも口を閉じるしかありませんで
した。

 「あなたが独りで炭焼き小屋へ行くところは何人かの人が見て
るけど、その時、駿君が一緒だったと証言した人は誰もいないの。
駿君の証言は嘘だと思ったけど、どうせあなたをかばってのこと
だろうと思ったから許したの。あなたもそれはそれとして駿君の
好意を受けていいのよ。但し、罰は罰としてちゃんと受けなさい。
事実を捻じ曲げることは許さないわ」

 「だってえ~……」
 恵子ちゃんは甘えたような声をだします。
 それって、男性には有効かもしれませんが……

 「いい加減にしないと、街じゅう素っ裸で歩かせるわよ」

 樺山先生、最後は語気荒く言い放ったのでした。

 その剣幕は隠れている私たちにも伝わります。
 ですから、そ~~~と、そ~~~と退散しました。

 結局、この時の罰で恵子ちゃんは管理棟1Fの床磨きをさせら
ることになりました。
 みんなの前で鞭でぶたれることを考えれば、この方がよかった
のかもしれませんが、誰もが通る1Fロビーで掃除婦さんみたい
なことをやらされたわけですから、お嬢様育ちの恵子ちゃんには
辛い罰でもありました。


 さて、私たちの方のその後なんですが……
 私は、こんな危ない目にあってはたまらないとばかり帰ること
を提案したのですが、キャシーの奴、聞き入れませんでした。

 そこで、渋々二件目の覗き見を敢行することになります。

 一軒目は、それでも大道具の陰からこっそりでしたから、まだ
足場もしっかりしています。でも、二件目は、もっと危ない場所
からの観察だったのです。

 実は私たちのいる道具部屋と男性用の控え室は大きなロッカー
で区切られていました。
 そこで、キャシーの提案は、部屋を間仕切るロッカーの破れた
背板の部分から進入。その鍵穴から向こうの部屋を覗こうという
わけです。

 一人一個の割り当てではありましたが、それにしても中は狭く
足場も悪いですから、当初から困難は承知の上でした。

 「ねえ、こんなことして、本当に大丈夫なの?」
 キャシーに尋ねると……
 「大丈夫よ。たしかここには使用禁止の張り紙がはってあった
はずだから、このロッカーへは荷物を入れないはずよ」

 私はキャシーの言葉を信じてやってみることにします。
 いえ、私も峰岸君をもっと間近で見られるチャンスだと思い、
乗ったのです。
 ただ、今にして思えば、若気の至りと思うほかはありませんで
した。

 たしかに、ロッカー自体はキャシーの言う通りでした。
 窮屈でしたが、鍵穴から向こうの部屋が見えます。会話も聞こ
えます。峰岸君が、例の褌姿でテーブルに寝そべり、梶先生から
お尻にお薬を塗ってもらっているところがバッチリ見えます。

 予想していたより少し遠い位置でしたが、でも、これなら十分
楽しめます。
 私はルンルン気分だったのです。

 ところが、しばらくしてお薬を塗り終わると峰岸君はテーブル
を下りどっかへ行ってしまいます。

 『えっ!?どこへ行ったのかしら?』
 鍵穴というのは狭いですから広い範囲が見えません。

 峰岸君がいったん視界から消えるとどこへ行ったのかまったく
分からなくなってしまったのでした。

 そして、心配して探し回ること十数秒、彼はいきなり私の鍵穴
の前に現れます。

 『えっっっっっっっっ!!!!!』
 私は慌てます。

 でも、私が目の前のロッカーに潜んでいるなんて駿君知る由も
ありません知りませんから、悠然として最後の下着を外し始めた
のです。

 『あっ……あわわわわわわ』
 もちろん、声なんて立てられません。

 そして、今度はいきなりロッカーのドアが開いたのでした。

 驚いたの何のって……
 いえ、正確にはその暇さえなかったかもしれません。
 駿君の荷物の上に乗っていた私は、泡を食った拍子にそこから
転げ落ちます。

 でも、悲劇はそれだけではありませんでした。

 慌てた私はその場ですぐに膝まづいたのです。
 裸の男性の足元で膝まづく。それがどういう結果に繋がるか。
もちろんその時はそんな事を考えて行動する余裕がありません
から、それって一瞬の出来事です。

 私の感覚では、ロッカーが開いた瞬間、辺りが明るくなって、
もう次の瞬間は、私の目の前に彼の一物がぶら下がっていた。
 そんな感じでした。

 でも、人間不思議なもので、だからってすぐには反応しません。
その色、形、大きさ……その全てを目の前でじっくりと見てから、
私は我に返り悲鳴をあげたのでした。

 しかも、片手でそれを思いっきり払い除けた反動で、そいつが
鼻に先にちょこんと当たるというおまけまで付いて……
 もう散々でした。


 その後は、どこをどう逃げたのか自分でもわかりません。
 とにかく、夢中であえいでいるうち外に出られた。そんな感じ
でした。

 「あら、随分時間がかかったのね。ケイト先生、あなたたちを
探しに行かれたのよ。キャシーはまだなの?」

 堀内先生に出合いましたが、どうして本当の事が言えましょう
か。
 「それが……途中で、キャシーとはぐれちゃって……」
 そう言ってもじもじするしかありませんでした。

 そのうち、思いがけない場所からすました顔でキャシーが現れ
ます。彼女もきっとあれから隙を見て逃げてきたんでしょう。
 もちろん、堀内先生に彼女も本当のことは言いませんでした。

 「ここのトイレが混んでたんで、ちょっと遠くまで行って借り
たんです」
 なんて言っていましたけ……思えば、女の子の口は嘘ばっかり。
これじゃあ、女の子はみんな天国へは行けないかもしれません。


 さて、しばらくするとケント先生も戻り、私たち四人は再出発。
でも、野外劇場で時間を使ってしまったこともあり、私たちは、
もうこれ以上この公園に留まっているわけにはいきませんでした。

 公園を出て街に戻るとキャシーの家を確認。彼女とは、そこで
別れて、私は再びケイト先生と二人になります。

 すると、先生が信じられないことを言うのでした。

 「どう、峰岸君の裸は魅力的だったかしら?」

 「えっ!!!」
 私の顔色が変わります。
 だって、今の今の出来事なんですから……

 「ああ、立派なお尻でしたね。あんなにぶたれたら可哀想……」
 私は、引きつった笑顔で答えます。

 でも……
 「そうじゃないの。あなたたち、峰岸君を訪ねて楽屋へ行って
きたんでしょう。怒らないから言ってごらんなさい」

 やっぱり、あのことばれてたみたいでした。

 「それは……」
 私は返事に困ります。

 すると……
 「梶先生がね、『そういえば、二匹の可愛い鼠さんたちが遊び
に来てましたよ』って教えてくださったのよ。一匹はあなたよね。
そして、もう一匹はキャシー。……違う?」

 私、色々考えたのですが……結局は……
 「ごめんなさい」
 ということになったのでした。

 「いいのよ、気にしなくも……どうせ、キャシーに誘われたん
でしょうから……それにね、異性の裸に興味があるのは何も男性
の専売特許とは限らないわ。女の子だってそれはあって当然よ。
ただ、このことは、堀内先生には言わないようにね。あの先生、
腰を抜かすともう二度と立てないかもしれないから……」
 ケイト先生は笑っています。
 そして、それだけ言うと、あとは何も言いませんでした。


 そうこうするうち、私たちはここで暮らすための自分の家へと
戻ってきました。

 すると……
 郵便受けには、両親、それに妹の名前が追加されています。
 玄関を入れば、見覚えのある靴が並んでいました。

 そこで居間へと行ってみると……
 お父さん、お母さん、香織、みんなそこに揃っています。
 家族の顔を見ただけなのに涙が溢れます。
 今日一日の中で、こんなに嬉しいことはありませんでした。


****** 見沼教育ビレッジ (7) ******

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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