2ntブログ

Entries

見沼教育ビレッジ / 第1章 / §4~§5

*****************(4)********


 「ねえ、先生、連れてって……いいでしょう……」
 キャシーはケイト先生の腕を強く引いてまたもやおねだり。
 それって、まるで幼児が親に向かって遊園地に連れて行くよう
だだをこねているのと同じだった。

 実は、公開処刑が行われる公園へは指導教官が付き添わなけれ
ばそもそも入ることが出来なかったのである。

 一方、ケイト先生はというと……
 「そうねえ、どうしようかしらねえ……」
 そんなキャシーの猛攻をのらりくらりとした調子で受け流して
いる。

というのも、これがキャシーだけならまだいいのだが、美香に
は少し刺激が強すぎるのではないかと考えていたのだった。

 と、その時である。

 「あら、あら、何かもめごとかしら?」

 低い声がキャシーの耳元に突き刺さる。
 とたんに、キャシーがその場で立ち上がった。

 それまで散々甘ったるい声を出していたキャシーが、いきなり
直立不動になったのだから、美香だってこれはいったい何事かと
びっくりだ。

 声の主は、白髪の乾いた髪に深い皺を刻んだおばあさん。老女
と呼んで差し支えない人だった。
 その人にケイト先生も立ち上がって深々と一礼する。

 「ケイトさん、どうしました?」
 このおばあさん、まずはケイト先生に事の次第を尋ねた。

 「実は、キャシーが今日の公開処刑を今日ここへ来たばかりの
新井美香に見せたいとせがむものですから、今、どうしようかと
思案しておりまして……」

 「なるほど」
 事情を理解した老婆が、今度は美香へ視線を移すと……

 「あなたね、新井美香さんというのは……」

 「あっ、はい……」
 周りの雰囲気から美香も緊張せざるを得なかった。
 『この人、きっと偉い人なんだわ』
 美香は思ったのだ。

 実際、その判断は間違っていなかった。彼女はこのビレッジの
幹部クラス。一教員にすぎないケイト先生とは身分が違っていた
のである。

 「美香さん。あなた、お父様と一緒にお風呂に入ったことある
かしら?」

 『えっ、お風呂?……どういうこと?』
 美香は、その瞬間、先生がなぜそんな事を訊くのか理解できな
かったが、とりあえず、正直に答えた。

 「あります。父は私が背中を流すと、とても喜びますから…」

 「そうなの。それは感心ね。うらやましいお父様だわ……その
時、あなたも一緒に裸になってお風呂に入るのかしら?」

 「昔はそうでしたけど、今は……ちょっと、恥ずかしくなって
……」

 「何年前まで一緒にお風呂を楽しんでたの?」

 「おととしくらいまでです。…あっ、去年も何度かありました。
……家族旅行の温泉で…ですけど……」

 「そう、それじゃあ、あなた、お父様の身体は見たことあるの
ね」

 『お父さんの身体を見たことがあるかってどういうことだろう』
 美香には老先生の謎が理解できなかったが、とりあえず……

 「はい、先生」
 と、答えたのだった。

 すると……
 「いいんじゃないですか、ケイト先生。…父親とでは感じ方が
違うかもしれませんが、何事も勉強と考えていいと思いますよ」

 この鶴の一声で話は決まり、ケイト先生も、美香が公園の中を
歩くことを許可したのだった。


 帰り道は二人増えて四人の道中。キャシーの参加で明るい道行
となったが、何より変わったのはそのルート。
 今度はフェンスの外側ではなく、公園の中を通って帰ることに
なったのである。

 公園の入口で、二人の教員は自分のカードを警備員にかざして
入る。その際、『この子たちも…』と、一言口ぞえすればそれで
よかった。
 この公園は、一般の入場者はもちろん、ここの生徒であっても
先生と同伴でなければ中に入ることが許されないエリアだった。

 「やったあ~」
 キャシーは、公園に入れたのがよほど嬉しかったのか、ゲート
をくぐるなり満面の笑みで公園内をあちこち走り回る。

 でも、美香はというと……
 『ここって、はしゃぐような処かしら。ただ木が生い茂ってて、
花壇があって、ベンチがあって、それに、噴水、東屋……こんな
公園、どこにでもあるじゃないの。……あの子、ホントにまだ、
子供ね』
 キャシーのはしゃぎぶりを冷ややかな目で見ていたのである。

 「ねえキャシー、ここって何か特別なものでもあるの?だって、
見た感じ普通の公園じゃないの」
 キャシーがひとしきり運動してから自分のそばに戻ってきたの
で美香が尋ねてみると……

 「だからあ、今日は男の子の公開処刑が見られそうなのよ。…
…こんなチャンス滅多にないんだから……」

 「公開処刑って……男の子もここに来るの?」

 「さっき、食堂であなたにも話したはずよ。この間、男の子と
女の子が逢引してるところを先生に見つかったって……うちはね、
男女問わず恋愛厳禁だもん。デートが見つかっただけでも、当然、
お仕置きってことなの」

 「それがここであるの?」

 「そういうこと。……こういう場合、例外的に男の子もここへ
呼んでお仕置きするの」

 「じゃあ、……その……そんな時は女の子も男の子のエリアへ
行ってお仕置きを受けるの?」
 その恐ろしい光景を想像して、美香の瞳孔が目一杯開く。

 「さすがにそれはないわね」
 子供の会話に割り込んだのはケイト先生だった。

 「いくら厳しく対処するといっても、男の子と女の子では受け
るショックが違うもの。ただし、女の子の方には甘いということ
にはならないわ。そういうことって、女の子の世界の中では当然
公開処刑だし、体罰も、ひょっとしたら男の子以上かもしれない
わ。……あなた、知ってるかな?『見るは法楽、見られるは因果』
って言葉」

 「見るは法楽?……見られるは因果?……何それ?……」
 最初、分からなかった美香だったが、途中で思い出した。
 「……ああ、見世物小屋の入口なんかで叫んでる口上ですね」

 「ピンポ~ン。そうそう、それそれ。ここはそういう場所なの。
青天井の大きな見世物小屋。だから、お客さんとして先生と一緒
に見物するぶんには、こんなに面白い見世物はないかもしれない
けど……もし、お仕置きとして連れてこられたら、シャレになら
ないほどの生き地獄よ」

 「ここでお仕置きされるんですね」

 「そういうこと。特に見せしめの罰ではここがよく使われるの。
この公園、もともと先生たちの憩いの場だから、生徒も特に許可
された子以外入ってこないし、もちろん一般人の出入りもなくて、
プライバシーが守れるから、ここではけっこう厳しいお仕置きが
行われるのよ」

 「だから、見るだけなら法楽なのか……」

 「そういうこと。……見るだけじゃないないわよ。参加だって
できるんだから……」
 今度はキャシーがその中へ割り込む。

 「参加?……私たちがお仕置きに参加するの?」

 「そうよ。ほら、あそこの東屋に誰かいるみたいだから行って
みましょうよ。やり方を教えてあげるわ」

 キャシーは美香の手を引っ張ると、その東屋へ。


 (美香の回想)

 私は、キャシーが独りで暴走してるんじゃないかと思って振り
向きましたが……すぐ後ろにいた先生二人もその事に対して咎め
だてする様子はありませんでした。

 「わかった。わかったから、そんなに引っ張らないでよう」
 私はキャシーに文句を言いながらも着いて行きます。

 キャシーが私を連れて来たのは青い瓦屋根の東屋でした。

 東屋というは簡単に言うと公園内の休憩所みたいなところで、
ここは六畳ほどの広さがある建物。建物といっても壁や窓はなく、
あるのは屋根とそれを支える柱だけですから、中の様子が外から
素通しで見えます。

 『ここでもやってるの!!』
 私は思いました。
 女の子が一人、東屋の中に設置されたピロリーに掴まっている
のが見えるのです。

 自分の家の庭で一度体験済みでしたからショックはその時ほど
大きくありませんが、それでも同性がこんなことされているのを
見るのは心地よいことではありませんでした。

 当然のようにその子も全裸でしたが、なぜか大きな袋を頭から
被せられていましたから顔はわかりません。

 「ねえ、あれ、誰なの?」
 私は思わずキャシーに尋ねてしまいます。
 すると……

 「そばにいる先生が担当教官だろうからから、察しはつくけど
……ほら、この子、頭からすっぽり袋を被せられてるでしょう。
こういう時は、その子が誰かわかっても、『誰々ちゃん』って、
声をかけてはいけないルールになってるのよ。……だから、あと
で教えてあげるね」

 キャシーが私に耳打ちします。

 「ねえ、この子何したの?」
 私は同じようにキャシーに耳打ちしました。

 すると……
 「それは、そこに書いてあるわ」
 キャシーは入口の掲示板を指差します。

 そこには彼女のものでしょうか、ショーツが一枚掛けてあり、
黒板には……
 『私は、テストの時間にカンニングをしてしまいました。もう
一度、真人間になってやり直したいので、どうか、皆さんご協力
をお願いします』
 と書かれています。

 この文言から、もちろん、これがカンニングの罰だという事は
分かったのですが、『皆さんご協力をお願い…』の意味がわかり
ませんでした。

 そこで……
 「ねえ、ご協力って、何するの?」
 と、キャシーに尋ねてみると……

 「ご協力って?ああ、あれね。要するに、この子のお仕置きを
手伝って欲しいってことだわ」

 「お仕置きを手伝う?……それって私たちも?」

 「そうよ。ここでは、お仕置きのお手伝い、先生じゃなくても
生徒でもいいの。この子のお尻に火の出るような鞭を与えて反省
を促すの」

 「そんな、残酷な……」

 「ちっとも残酷じゃないわよ。むしろ感謝されるわ。……ほら、
あそこに『30/12』って書いてあるでしょう。……あれはね、
現在12名の方から鞭をいただきましたって印なの。この子は、
どのみちあれが『30/30』つまり30人の人から鞭打たれる
までこの枷から開放してもらえないの。だから、あなたも、私も、
あの子のお尻をぶってあげれば、あの子だってそれだけ早く開放
されるわけだから、あの子から感謝されるってわけ。人助けよ」

 「……私、」
 私はそう言っただけでしたがキャシーは行ってしまいます。

 「あっ、待ってよう」
 私は慌ててキャシーを追いかけようとしましたが……彼女は、
すでに東屋の中。そこへ立ち入る勇気はありませんでした。

 しばらくすると、まだ外に立っていた私に向かってキャシーが
手招きします。

 そこで、恐る恐る私も中に入ってみると、いきなりそこにいた
先生に……
 「あなたも、やってくださるの?」
と、尋ねられ、ゴム製の一本鞭を手渡されそうになります。

 私は、その鞭をまるで不浄な物でも差し出された時のように、
両手を突き出して拒否。後ずさりしたのでした。
 「いえ、違うんです。私は関係ありませんから……」

 いくら行きがかりとはいえ、自分とは何の関係もない女の子の
お尻をぶつなんて、良い子を装ってきた私の常識では考えられま
せんから当然こうなります。

 「あらあら、残念ね。あなた、こうしたことは初めてかしら?」

 先生がやさしく問いかけますから……
 「は……はい、先生」
 怯えながら答えると……

 「難しく考える必要はないのよ。この子のお尻をぶつことは、
虐めとは違うの。誘惑に負けそうになるこの子の心の弱さを強く
する大事なお仕事なんだから……名誉なことなのよ」

 再度、先生に勧められます。
 すると、そばで聞いていたキャシーまでもが……

 「やってあげなよ。さっきも言ったけど、もし、あなたがやら
なかったら他の人がやるだけのことなの。どのみち、30人って
ノルマは決まってるんだから……」

 「えっ、そんなこと言わけても……私……鞭なんて使ったこと
ないし……」

 「だから、いいんじゃない。先輩にしてもそれは好都合のはず
よ」

 「えっ!?(そうか、この人、私たちより年長よね)」
 確かにその通りです。枷に繋がれたその人は私たちより身体も
一回り大きく、胸もお尻も私たちより成熟しています。

 『そうか、弱い者をぶつわけじゃないのね』
 変な安心感が生まれたのも事実でした。

 「だってあなたのような子がぶってもあまり痛くないでしょう。
それでいて一人分稼げるんだもの。芸達者な先生達に厳しくされ
るより、よっぽどラッキーだわ」

 『そうか、そういうものなのか』
 私はキャシーの言葉を単純に信じてしまいます。

 いえ、本当のことを言うと、こんな立派なお尻を、一度、鞭で
しこたま叩いてみたかったのです。
 まさに本心は好機到来なんです。
 でも、私は女の子、そんなこと表立っては言えませんでした。

 「じゃあ、先輩のためにやってみます」
 私の顔は『あくまで周りの勧めで仕方なく』という風に作って
ありましたが、内心の顔は笑っています。
 いえ、すでに笑いが止まらなくなっていました。

 『今まで、お父さんやお母さんからぶたれたことはあるけど、
人をぶつのはこれが初めてよ。お人形さんのお尻と違って、緊張
するなあ』
 鞭を持たされて足が震えているのは、怯えていたからだけでは
ありませんでした。可憐な少女の正体は、その心の内に分け入れ
ば、恥知らずなインプ(小悪魔)だったのです。


 胸の高まりを抑えきれず私は順番を待ちます。
 最初はキャシーでした。

 彼女は慣れた様子で鞭を空なりさせると、その先っちょをお尻
のお山に着けて小さく軽く叩き先輩の緊張を高めます。
 そして、その鞭が、膝まづく先輩のお尻を離れて、大きく弧を
描くと……再び急降下して来て……

 「ピシッ~~」

 東屋の天井に鞭音が反響。
 先輩は身体を固くして耐えます。
 お土産は豊満なお尻についた赤い一本の線でした。

 「あと、二つね」
 とは先生の声。

 そこでキャシーが再び鞭を空なりさせると、先輩の身体一面に
鳥肌が立ちます。
 それは、キャシーの鞭が先生方と同じ威力を持っていることの
証明だったのです。

 パターンは同じです。
 鞭の先っちょがお尻のお山をくすぐってから、やがて離れ……
大きく弧を描いて空中に舞うと……急降下して……

 「ピシッ~~」

 東屋の天井に鞭音が反響し、先輩は身体を固くして耐えます。
 抜けるはずのない厚い板の穴から両手を引き抜こうとするのは
それだけ痛かったからでしょう。
 お土産が増えて、赤い線は二本になります。

 「あと、一つ。これがラストよ」
 先生の声に、キャシーは余裕の笑顔で返事をします。

 その後のキャシーは、前の二回と同じでした。
 鞭のさきっちょがお尻のお山をくすぐり、やがて、大きく弧を
描いて空中を舞ったかと思うと、急降下して……三たび、大きな
お尻を鞭がとらえます。

 「ピシッ~~」
 「いやあ~~」

 東屋の天井に鞭音が反響し、同時に先輩の悲鳴が聞こえます。
 先輩の身体は相変わらず枷に繋がれたままでしたが、その体は、
まるで溶けた雪だるまのように、だらんとピロリーの厚い板に垂
れ下がります。


 お土産の赤い鞭筋は三つ。
 これを六本にするのが私の仕事でした。

 キャシーの動作の見よう見まね。
 「ピシッ~~」
 東屋は音響装置がいいのか。予想以上に反響します。

 そして、二発目……
 「ピシッ~~」
 「いやあ!!!」

 『私なんかの鞭で、そこまでしていただかなくても』
 なんて、こちらが恐縮したくなるのような悲鳴があがります。
そして、ピロリーが本当に倒れるんじゃないかと思うほど、枷に
捕まった先輩はその両手首と自分の首を必死に抜こうとしたので
した。

 「お譲ちゃん、あなた、なかなか筋がいいわよ。では、ラスト
ね」
 先生の声に送られて、私は再び大きな弧を描きます。

 「ピシッ~~」
 「いや!」

 最後、先輩も踏ん張って、あまり大きな悲鳴になりません。

 すると、鞭初心者の私は……
 『あれ、なぜ悲鳴が小さいんだろう?……失敗しちゃったのか
なあ。何がいけなかったんだろう』
 と、思ったのでした。


 たった三回の鞭でしたが私の身体は激しく上気していました。
 興奮状態の私はケイト先生や堀内先生がいつこの東屋を訪れた
のかも知りませんでした。

 お二人は、やはりそれが義務だと思われたのでしょう。
 私たちと同じように鞭をとって、先輩に対し三度の戒めを行い
ます。

 でも、それは、私たち子供が振るった鞭に比べてことさら強い
というものでもありませんでした。

 おそらく私たち二人がきつく叩き過ぎたので調整されたのかも
しれません。
 先輩にとって、先生方は救世主。私たちこそがお邪魔虫だった
ようでした。


************(4)***********

************(5)***********


 美香とキャシー、それに二人の先生たちは、東屋を離れると、
林を抜けて公園の奥へと入っていきます。

 このあたりは広い原っぱになっていました。
 天然の芝がはりめぐらされ、アンツーカーの赤い土がその芝を
取り囲んでいます。

 「まるで、陸上競技場みたいね」
 美香が言うと……キャシーが……
 「だって、ここ、そうだもん。サイズは少し小さいけど、ここ
で体育の授業をやるのよ」

 「体育かあ、私、苦手だなあ……」
 と美香……でも、それをキャシーが励まします。
 「大丈夫よ。運動と言っても、たいていダンスだから。激しい
運動はあまりしないの。ほら、あそこでやってるでしょう。……
激しい運動をさせられるのはお仕置きの時だけよ」

 キャシーの視線の先では、女の子たちがフォークダンスを練習
している。そのカセットで流す音楽が、かすかに二人の歩く場所
まで届くのだ。

 「よかった、体育ってダンスなのね。だったら、私でも何とか
なるわ」
 美香は安堵の色だが……
 「ただし、真面目にやらないとだめよ。……サボってると……
ああなるから……」

 キャシーがそう言って振り返った瞬間だった、二人の女の子が
赤いアンツーカーを全速力で駆け抜け、おしゃべりしながら歩い
ている二人を追い越していく。

 「えっ!!!何?……どういうこと???」
 美香は、その瞬間、狐につままれたような顔になった。

 今、追い越して行ったランナー、帽子を目深に被り、靴と靴下
は確かに穿いていたのだが……それ以外、何も身につけていない
ように見えたのである。

 「ねえ、今の子たち……たしか、服……着てなかったよね」
 美香が確認すると、キャシーはあっさりしたものだった。
 「そうよ、裸だった。それがどうかした?」

 「えっ?」

 驚く美香の顔を見て、キャシーは美香にはそれでは足りないと
悟ったのだろう。言葉を足してくれた。

 「体育の京子先生って陰険なのよ。一通り教えたあと、『それ
では、各自、自主練習』なんて言ってその場を離れるんだけど、
その実、どっかで様子をうかがってて、サボってる子がいると、
ああして全裸でトラックを走らせるの。……裸で走るとねえ……
お股がすれて痛いのよねえ……」
 最後は苦笑するような顔になる。

 「キャシー、あなたも、やられたことあるの?」

 「あるわよ。そのくらい」
 キャシーは自慢げに笑い…
 「私、そんなに良い子に見える?」
 と続ける。
 『新参者をからかってやろうか』
 そんな感じの笑い顔だった。

 「ここって、すぐに裸にさせるのね」
 「まあね、周りに女の子しかいないし、やりやすいんでしょう。
でも京子先生は特にそうよ。……ほら、あそこでサングラスして
生徒たちを怒鳴りまくってるでしょう。……あの人よ」

 「あっ、今、お尻叩いた」
 美香が声を上げると……

 「そうそう、あの先生の鞭は樫の棒なの。折れてもいいように
何本もストックがあるわ」

 「樫の棒って、痛いの?」

 「当たり前じゃない。痛くない鞭じゃお仕置きにんらんいじゃ
ない。……だけど、他の先生がよく使うゴム製の鞭とは感じ方が
違う痛みなの。男の子の痛みっていうのかなあ……お尻の皮じゃ
なくてお尻の中、筋肉が痛いのよ。あの先生、ミストレスだから、
ちょっとした規律違反でも口より先に平手が飛んで来て、次は、
すぐに裸にされちゃうの。生徒とっては要注意の危険人物だわ」

 「ほかの先生は?」
 「京子先生よりましだけど……どの先生も学校の先生と比べた
ら大変よ」
 「厳しいの?」
 「当然そう。みんな立派なサディストよ。女の子を虐めるのが
楽しくて仕方がないって感じだもん。一度ね『男の子より厳しい
なんておかしい』って不満を言ったら、『女の子はあれこれ指図
しないと自分じゃ動かないから体罰は男の子以上に必要なんです』
って、怒鳴られちゃったわ」

 「……(そうか、ここって男の子より厳しいところなんだ。私、
やっていけるかな)……」
 美香は今さらながらここが怖い処だと思ったが、ふとした疑問
をキャシーにぶつけてみる。

 「ねえ、あなたは大丈夫なの?こんな処にいて……」

 「大丈夫じゃないよ。毎朝、浣腸されて、鞭でお尻叩かれて、
何かあればすぐに裸にされて……その日その日でまちまちだけど、
今日一日よい子でいなかったら、夜はお灸だってあるんだから。
今でもちっとも大丈夫じゃないけど、……でも、慣れるのよ」

 「慣れる?」

 「そう慣れちゃうの。最初は私だって、浣腸も、鞭も、裸も、
お灸も、何かやられるたびに暴れて悲鳴上げて、抵抗できるたけ
抵抗してたんだけど、それが、そのうち生活の一部みたいになっ
ちゃって、苦痛じゃなくなるの。それに二年もここにいるとね、
先生たちの癖みたいなものがわかってくるから、こちらもそれに
応じた対応ができるようになって罰を受ける回数も少なくなった
わ」

 「じゃあ、あの東屋にいた先輩はまだ慣れてない人なの?」

 「そういうわけじゃないわ。……ただ、人間って、罰を受ける
ことは承知しててもやりたいこと、やらざるを得ないことっての
がでてくるのよ。今日の公開処刑だって、二人ともそれを犯せば
どうなるかは知ってたはずよ。……でも、やめられなかった……
そういうことじゃない」

 「キャシーさんて……考えが深いんですね」

 それまで軽い人間だとばかり思っていたキャシーのこんな一面
を見て、美香は感慨深げにつぶやく。
 すると、彼女は彼女でこう返すのだ。

 「あなた、私がケイト先生にべたべたしてたから、『こいつ、
そんな人間か』って思ったんでしょう」

 「私はべつに……」
 美香は慌てて否定したが……

 「女の子は色んな顔を持ってて、それを相手に応じて使い分け
なきゃいけないの。……それは、私もここへ来て習ったわ。……
あっ、そうだ。東屋ってあそこだけじゃないの。まだ、三四箇所
あるから、暇なら一緒に回ってあげてもいいのよ」

 「いえ、結構です」
 美香はそれも慌てて否定する。

 「そりゃそうよね。私たちが女の裸見ても楽しくないもん。…
…それは見られる方だって同じように思ってると思うわ。きっと
『あんたたち暇ね』って顔されるだけだもんね」
 キャシーは、裸にされるお仕置きなんて大したことじゃないと
言わんばかりのしたり顔で美香を見つめたのだった。


 さて、そんな二人から50mほど後ろを歩いていた二人の先生。
彼女たちはあえて生徒のすぐそばには寄らず常に少し離れた場所
を保っていた。

 「ケイトさん、私、サディストかしらね」
 堀内先生が、突然、ケイト先生に尋ねる。

 自分たちは内輪の話と思って話していても、子どもの声という
のは自然と大きくなってしまうもの。ひそひそ話のつもりでも、
二人の話す声が風に乗って先生たちの耳にも届いていたのだ。

 「注意してまいりましょうか?」
 ケイト先生は先輩に気を使うが……
 「いいのよ、そんなことは……」
 おばあちゃん先生は笑顔で答える。

 「でも、ひょっとして、これみよがしに私たちに聞かせようと
して話しているのかもしれませんから……」
 再度、助言するケイト先生だが……

 「だったら、なおのこと聞いてあげなければならないわ。……
心遣いは嬉しいけど、生徒の私たちに対する評価や本音を聞く事
も教師としての大事な仕事だもの。ぴたっとくっついていたら、
彼女たち何も話さなくなってしまうもの……そうでしょう」

 「はい、先生」

 「私たちは、一般の学校では持て余すような子どもたちを沢山
抱えてるから、多くの場面で専制的になってしまうけど、それは
あくまで秩序を維持するため。神様になったつもりで、あれこれ
微細なことまで指示してはいけないわ。お仕置きだってそうよ。
正義を楯に何でもこれに頼ってると、そのうち子どもたちだって
こちらに向かって本音を語らなくなるの。お仕置きは、あくまで
子どもたちの為にやることで、こちらの都合は関係ないわ。……
『やられたからやり返すんだ』なんてのはお仕置きの理由として
は論外よ」

 堀内先生はベテラン先生らしく自説を力説するが、同時に裸で
走る少女たちを見ても、それがやりすぎだとは言わなかった。
 彼女にしてみても、今、ここで行われているお仕置きは許容の
範囲だと信じていたのである。


(美香の回想)

 その会場は東屋とは違って広い場所にありました。
 まるで野外ステージのような立派なドーム型の舞台があって、
それを見物するための客席も150席以上あります。

 『何なの、これ。……まるで劇場じゃない。……これじゃあ、
まるでショーだわ』
 私は野外ステージの一番後ろから全体を見渡してそう思います。

 実際、私の感想はそう大きく的を外れていませんでした。

 「あっ、もう始まってるじゃないの。急いで急いで」
 キャシーが私をせかせます。

 私たちが到着した時にはすでに舞台が始まっていて、客席では
50人ほどの観客がすでに事の成り行きを見守っていました。
 見渡せば、先生や生徒だけでなくこの村で働いている職員の人
たちの顔も見えます。

 「あっ、もう……何ぼ~っとしてるのよ。早く早く、いい席が
なくなっちゃうわ。こんなの後ろで見たって楽しくないんだから」
 再び、キャシーがはしゃぐように私をせき立てます。

 そして、観客席の前の方へ前の方へと行こうとしますから……
私……
 「いいわ、私、一番後ろ見てるから」
 と言ったのですが……

 「何言ってるのよ、そんな処じゃ肝心な物が見えないじゃない」
 キャシーは面倒とばかり私の手を引き、無理やり前の席を目指
します。

 「ここ、空いてますか?」
 目ざとく空席を見つけたキャシーが、品のよさそういご婦人に
声を掛けますと……
 「ええ、いいですけど……あなた、あの舞台の子とお友だち
なの?」
 と、席に置いていた荷物を取り片付けながら問い返してきます。

 するとキャシー。間髪をいれず、きっぱりと…
 「はい、そうです」
 と、答えたのでした。

 でも、これ嘘なんです。キャシーと舞台の子との間にはそんな
親しい関係なんてありませんでした。
 彼女、一番前の席で見たいばっかりに嘘を言ったのでした。

 というわけで、私たちは目の前が舞台という特等席で事の成り
行きを見学する事になります。

 私は、『こんな前で、恥ずかしい』と思いましたが仕方があり
ませんでした。


 その舞台では、中央に椅子とテーブルが出ていて、すでに二人
の規則違反者に対する尋問が始まっていました。

 テーブルの右側には、問題の女生徒とこちらの規律担当の樺島
先生。左側は夜這いに来たとされる男の子とやはりその規律担当
の梶先生が、それぞれ対峙しています。

 実はその男の子と女の子なんですが、二人とも頭からすっぽり
と大きな袋を被せられていましたから顔は分かりません。
 もちろん、罪を犯した子たちのプライバシーを尊重して、そう
しているわけですが……人間勝手なもので隠されると中が見たく
なります。

 あっちこっち見る角度を変えて袋の中の顔が見えないかと思い
ましたが、結局、見えませんでした。
 そこで……

 「ねえ東屋の時もそうだったけどさあ、あんな袋を被せられて、
あれって、苦しくないの?」
 私は小声でキャシーにこう尋ねてみました。

 すると……
 「大丈夫よ、私も何回か被ってるけど全然苦しくないわ。帽子
と同じ感覚よ。それに、あれ、荒い生地で出来てるから、こちら
からはその顔が見えないけど、被ってる方は外の景色や人の表情
が割とはっきり分かるの。……あなただってそのうち被らされる
でしょうから、その時わかるわ」

 キャシーが最後にドキッとするようなことを言うので……私は
思わず……
 「馬鹿なこと言わないでよ」
 と大声になってしまい……

 「お静かに……」
 と、さきほどの婦人から注意されてしまいます。


 そうこうするうち、舞台では逢引していた二人に対する尋問が
まだ続いてはいましたが、どうやら話はあらかた煮詰まってきた
ようでした。

 「そう、それでは、あなたは先月開かれた男女交流会の時に、
この子を見初めて言い寄ったけど相手にされなかったからここへ
夜這いに来て、それも相手にされなかったから、彼女を無理やり
炭焼き小屋へ連れ込んだ。…………こういう事でいいのかしら?」
 樺島先生は調書のようなものをとっていました。

 「はい、先生」

 「それで、あなた、深夜の炭焼き小屋で何をするつもりだった
のかしら?」

 「それは……」
 男の子の口が重くなります。

 「そんなこと聞くだけヤボかしらね。……ま、いいわ。でも、
こちらも心配だったから、この子の身体は調べたの」

 樺山先生はそう言って袋の中の男の子の瞳を見つめました。
 このくらいの近さなら、あるいはその子の瞳も見えていたかも
しれません。

 「……(ごくっ)……」
 一方、見つめられた男の子は唾を飲み込んだのがここからでも
わかりました。喉仏のあたりがしきりに動いていましたから。
 それって男の子にとっては緊張の一瞬だったんでしょうね。

 「……幸い、何事もないことがわかったわ」

 「……(ふう)」
 樺山先生に言われて、男の子がほっと肩を落とします。
 身に覚えなんかなくても、そこは気になるみたいでした。

 「ただね、これだけは覚えておいてほしいの。女の子ってね、
身の潔白を証明するだけでも心が傷つくのよ。だから、あなたも
これからは取り扱いには注意してね」

 樺山先生の言葉に相手方の規律委員、梶先生の口元も緩みます。
 実は樺山先生、この男の子のことを評価していました。
 というのも、彼が男の子らしく一人で罪を被る気でいるからで
した。

 『僕が恵子ちゃんを勝手に好きになって、無理やり炭焼き小屋
の鍵を持ってくるように迫ったんです』
 彼は最初からそう言ったそうです。全ての罪は自分にあります
と言いたかったのでしょう。
 でも、その潔さが、樺山先生には嬉しかったみたいでした。

 結果……
 樺山先生と梶先生が話し合い、夜這いについてのお仕置きが決
まります。

 「峰岸君。あなたには、鞭36回をケインで受けてもらいます
けど……いいですか」

 先生方の決めたことですから、今さら男の子が反対するはずも
ありませんが……ただ……

 「この袋、脱いでもいいですか?」
 と尋ねました。

 「いいけど、あなた、顔がわかってもいいの?」
 樺山先生が心配しますが……

 「いいんです。これ被ってると、熱いですから……」
 その時はまだ袋を被っていて、彼の表情を窺い知ることはでき
ませんでしたが、その時、袋の中の彼は何だか笑ってるみたいで
した。

 それで、彼、被り物を取ったのですが……
 そのルックスを見たとたん、私、震い付きたくなりました。

 「……(綺麗~~ここにこんな子いたの)……」
 その瞬間はきっとだらしなく口を開けて見ていたんじゃないか
と思います。

 立ち上がった峰岸君は細身で足が長く、被り物を取ると尖った
顎や切れ長の目がのぞきます。彫が深く整った顔は、まるで青春
映画のスターがそこにいるみたいでした。

 そんな彼が、手ぐしで前髪を書き上げた瞬間、私は自分の髪を
同じように撫でつけます。
 それって、彼のオーラが、今、私の頭にもふりかかったんじゃ
ないか……そんな妄想からだったのです。

 なるほど、こんな先輩に声を掛けられたら夢中にならないはず
はないでしょう。

 でも、最初はそうでも、その後は恵子ちゃんが、自分の方から
峰岸君にアタックをかけたに違いありません。ここへ呼び出した
のも彼女なら、炭焼き小屋の鍵を盗んできたもの彼女に違いない
と、私の女の勘はピピンと反応したのでした。

 そんな裏事情、女の先輩である樺山先生だって知らないはずが
ありません。
 ですが、ここは、せっかく恵子ちゃんを気遣ってくれた峰岸君
の顔を立ててあげることにしたみたいでした。


 ところで、峰岸君、彼が脱いだのは頭を覆っていた袋だけでは
ありませんでした。

 「それでは、準備して……」
 黒縁眼鏡、タイトスカート姿の樺山先生の顔が引き締まります。

 そこで峰岸君、こちらにお尻を向けてテーブルにうつ伏せにな
ったのですが、その際、自らズボンまで下ろそうとしたので……

 「あっ、いいわ。それは必要な時に私がやってあげるから」
 せっかく引き締まった樺山先生の顔がほころんで手が止まりま
した。

 ちなみに、男の子の場合は、女の子のようにたくさんの種類の
お仕置きを心配する必要がありません。男の子にとってお仕置き
といえば、大半が鞭でのお尻叩きと相場が決まっていたのでした。

 彼も、普段通りやることはやっておこうとズボンを脱ぎ始めた
のでした。


 「ねえ、キャシー。先生の持ってるの、あれケインじゃない?
……彼、大丈夫かしら」
 樺山先生が空なりさせている鞭を見て、私は心配になります。

 ケインは私たち女の子の学校では一番強いメッセージですから、
滅多に使われることがありませんでした。おまけにそれで36回
もだなんて絶句してしまいます。私にはそのこと自体信じられま
せんでした。

 ところが、キャシーはそうでもないみたいで……
 「大丈夫よ。彼、男だもん。私たちとは違うわ。それに慣れて
るはずだしね……ズボンの上からなら、どうってことないはずよ」
 「そんなあ、どうってことあるわよ」

 私には苦い経験がありました。
 私たちの学校では、新入生に、悪さをしたり怠けていたりする
とこれからどんな罰を受けるかを実際に体験させる行事があって、
私はケインを経験させられたのですが、他の子が見ているという
プレッシャーに押しつぶされたのか、そこでお漏らしを……

 入学早々赤っ恥なんてものじゃありません。
 以来、ケインを見るたびにオシッコに行きたくなってしまうの
でした。

 「ピシッ!!!」
 やがて、樺島先生の最初の鞭が峰岸さんのお尻に炸裂します。

 「きゃあ!」
 私が驚いてキャシーの二の腕にしがみ付くと……
 「よしよし、嫌だった見なけりゃいいの。目をつぶってなよ」
 まるで幼い子をあやすように言われてしまいます。

 再び…
 「ピシッ!!!」

 「きゃあ」
 青空に突き抜けるような甲高い鞭音だけで、思わず小さな悲鳴
をあげてしまいます。
 まるで、私がぶたれているみたいでした。

 「ピシッ!!!」

 当然ですが、鞭音はやみません。
 私はうっすらと目を開けて、その様子を確認しましたが、樺山
先生の鞭は、とても大きく振りかぶっていてから振り下ろします。
それって、私が過去に受けたものとは、同じ一撃でも質が違って
いました。

 「ピシッ!!!」

 『あんなの受けたら、私、一発で昇天するんじゃないかしら』
 そんなことさえ思いました。

 ただ、私のそんな思いは別にして、峰岸さんは悲鳴はもちろん、
足元さえも震えてはいませんでした。

 「ピシッ!!!」

 「すごいわ、やっぱり男の子って凄いのよ。いくらズボンの上
からでも、あんなに何回もやられて平気なんですもの」

 私の言葉は独り言のような呟きでしたが……キャシーがそれを
拾ってくれます。

 「だから言ってるでしょう。彼、この鞭に慣れてるのよ。……
それに樺島先生って、私たちにとっては恐い先生でも女性だもの。
……これが梶先生だったら、こうはいかないはずよ」

 「梶先生って誰?……ああ、向こうの規律担当の先生のこと?」

 「そうよ。あの先生がぶったらあんなに平然とはしてられない
はずよ」

 「だってあの先生、もう腰が曲がりそうなおじいさんじゃない。
いくらなんでも、あのおじいさんに比べたら樺島先生の方がまだ
ましよ。……若いし、力があると思うけどなあ」

 「そう思うでしょう。ところが、そうでもないの」

 私は半信半疑でしたが、やがて、キャシーの言ってる事実が、
目の前で起きます。


***************(5)**********

コメント

コメントの投稿

コメント

管理者にだけ表示を許可する

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR