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<あったかピューピューさんとの出会い>

H無縁の雑文です。今回は童話風?

<あったかピューピューさんとの出会い>

 健ちゃんはまだ赤ちゃんです。
 ハイハイはできますが、まだ歩けません。
 最近ようやく何かに掴まれば立てるようになりました。

 その時はお母さんだけじゃなく、お父さんも、おばあちゃんも、
おじちゃんも、そのお部屋にいたみんなみんなが大喜びました。

 みんなの拍手に嬉しくなった健ちゃんが笑うと、拍手はさらに
大きくなります。
 お母さんが抱っこして笑顔ですから、健ちゃんはきっと良い事
をしたのでしょう。

 お母さんの首の辺りの匂いが健ちゃんに『よかった、よかった』
と言っています。
 抱っこされた時の感触や匂いで健ちゃんはお母さんのご機嫌が
わかるのでした。

 健ちゃんはご機嫌なお母さんにおねだりします。
 言葉はまだ話せませんから、おねだりの時は欲しいものに手を
伸ばして知らせます。
 普段はそれでガラガラが来たり、おしゃぶりが来たり、お気に
入りのふかふかタオルが来たりするのですが、今回それはやって
来ませんでした。

 「あら、健ちゃん、何が欲しいの?」
 健ちゃんを見てお母さんは尋ねます。

 抱っこされた身体いっぱい伸び上がって何か取ろうとしている、
お母さんにそれはわかるのですが……

 「どうしたの?お外なの?」

 健ちゃんの小さな指の先に窓があります。
 そのさらに先にはお庭がありました。
 木枯らしがピューピューと音をたて、ガタガタと窓を揺らして
います。
 でも、そこまで健ちゃんの手は届きませんでした。

 「あら、オンモ行きたいの?……でも、オンモはまだ寒いわよ。
北風さんがね、ピューピュー吹くから……ああ、わかったわ。でも、
ちょっとだけよ」

 お母さんが健ちゃんをお外へ案内してくれるみたいでした。

 お気に入りのタオルケットとふかふかの毛布に包まれて、毛糸
の帽子と耳あてを着けていざ出陣です。

 健ちゃん大喜びでしたが、この部屋にいる誰一人、健ちゃんが
なぜ大喜びしているのか知りませんでした。

 でも、ここにいるみんなはそんなことどうでもよかったんです。
 健ちゃんが嬉しそうにしていれば……幸せそうにしていれば、
それでみんな十分幸せでしたから、お母さんだけのはずが、気が
つけばみんな健ちゃんに着いて行きます。

 「わあ、やっぱり寒いわね」
 おばあちゃんが言います。

 お庭は、やっぱり木枯らしピューピューでしたが、健ちゃんは
幸せです。
 だって健ちゃんが話せる数少ない言葉『ピュー、ピュー』さん
に会えたんですから。

 「ピュー、ピュー、ピュー」
 健ちゃんはそう言って何度もピューピューさんと交信を試みま
す。

 そのうち、お母さんがピューピューさんをお口の中で捕まえて
くれました。
 そして、健ちゃんのほっぺにそうっと流してくれたのです。

 お母さんのお口フィルターを通した暖かいピューピューさんが、
健ちゃんのほっぺをくすぐります。

 健ちゃんは両手両足をパタパタ。
 望みの物が手に入ってとっても幸せというサインです。

 これを見たお父さんもピュー。
 おばあさんもピュー。
 おじいさんだってピュー。

 健ちゃんはピューピューさんってとっても暖かいと思いました。

 「よかったわね、健ちゃん」

 でも、お母さんのピューピューさんは一年中同じ暖かさ。
 それはまだ知らない健ちゃんだったのです。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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