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<神山村の三人娘>

今のところHなしの小説です。

<神山村の三人娘>

ヨーコとジュリ、それにタマミの三人は幼馴染で大の仲良し。
幼稚園、小学校、中学校と一緒の三人はご近所さんだから遊びも
一緒、学校の宿題も誰かの家に集まっていつも一緒にやっていた。

 ま、そうは言っても実際にやっているのは5分程度で、大半は
おしゃべりの時間なのだが、小学生の頃とは異なり、中学生にも
なっていつもいつも「遊びに行って来る」では親が承知しなから
大義名分として「勉強に……」ということにしていたのである。

 そんな三人組、今日も今日とて退屈な勉強時間を過ごしていた。

 彼女たちが暮らしていたのは田舎も田舎、大田舎。お店といえ
ば、雑貨屋さんが一軒、ポツンとあるくらいで、喫茶店は勿論、
理髪店や美容室に行く時でさえ、二時間に一本のディーゼル列車
で少し大きな町まで行かなければならない。

 ということはどういうことか。
 つまり彼女たち、娯楽に飢えていたのである。

 「ねえ、あたしさあ、これ、見てみたいんだよね。一緒に行か
ない」
 マシュマロカット、オカッパ頭のタマミがその頭をかきながら、
突然、映画雑誌を二人の前で広げて見せる。

 そこには『エマニエル夫人』『O嬢の物語』のスチール写真が
……

 「やだあ~~すごい、あんた、こんなHなのが好きなの?……
いやらしいんだあ~~」
 ショートヘアのジュリが少し軽蔑したような声を出す。
 ソバカス顔の彼女は、その髪型もあってまるで男の子のように
見えた。

 「でも、綺麗ね。この人」
 ヨーコはまんざらでもない様子。
 もっとも、映画の中身は彼女も全然分からなかった。

 大人の女性の完成された身体とその華やかな衣装がヨーコには
魅力的だったのである。

 そして、それは他の二人も同じだった。
 実は少女たちにとって映画の筋はどうでもよいのだ。いわゆる
大人が見る映画を自分たちも見てみたかったのだ。

 「ねえ、大港(隣町)まで行く汽車賃と映画代でいくらかかる
かしら」
 ポツリとタマミが言い出したのが次のきっかけだった。

 真ん中で長い髪を分けたヨーコが新聞を取り出し……
 「たしか大港までが380円でしょう。往復で760円。新興
キネマ(映画館)が……そうそう、ここに書いてある、700円
だって……」

 「あんた、行く気なの?」
 ヨーコが心配する。
 少女たちの住む神山村はものすごく保守的な処、中三の少女が
こんな怪しい映画を見に行きたいだなんて親にねだったところで
許可が下りるはずがないからだ。

 「だから、行けたらいいなあって思ってるだけよ」
 タマミはこう言ったが、それは淡い願望と言うよりすでに心に
決めたことだと、他の二人にはわかっていた。

 「ふ~~ん、でもとあ、もし窓口で『18未満はダメ』なんて
言われたらどうするの?」
 ジュリはタマミの大きくなり始めた胸の谷間を覗き込むような
目で見ながら尋ねる。
 こんな時は、たいてい自分にもその気がある時だ。

 「大丈夫、姉ちゃんの生徒手帳あるから……あれ、写真貼って
ないし……」

 「あんたって、おとなしい顔して、やることは結構図太いのね」
 ヨーコが笑った。そしてジュリが……
 「あたし、付き合ってあげてもいいわよ」

 ジュリのせっかくの申し出だが、今度はタマミが浮かない顔で
 「でもね、わたし、今月ピンチなのよ。お小遣い足りるかなあ」
 って心配する。

 「大丈夫よ。そんなの気にすることないわ。……あんたさあ、
お母さんのへそくりの在りか知ってるって言ってたじゃない。…
…ちょっと借りちゃえば……黙って」

 「えっ!」
 タマミは驚いた。別に悪いことをそそのかされたからではない。
自分もそう思っていたからだ。

 「実は私もそうしようと思ってたの。へそくりなんて言わない
くても映画見に行くくらい財布の中から借りちゃえばいいのよ」
 ジュリもそうやって参加するつもりだったのだ。

 「仕方ないでしょう。大丈夫よ。バレやしないわ……誰だって
財布の中身なんていちいち覚えてなんかいないもの……感づきゃ
しないって………だけど、タマミは言いだしっぺだから、お金は
あんたが用意してね」

 「えっ!」

 「そりゃあそうよ。私たちはあくまであんたのお付き合いなん
だもん」

 「え~~だったらいいわよ。わたし独りで行くから……」
 タマミがすねると……

 「何よ、あんた、気が小さいのね。そんな時は、親には遊びに
行くなんて言わず『学校で必要な参考書を買いに行くから』って
言えばいいのよ。そうすれば交通費も出るでしょう」

 「そっか……」

 「あたしは、あんたに全部持ってなんて言ってないわ。でも、
交通費とお菓子代くらいは出しなさいよ。それをお母さんの財布
からちょちょっと借りてくればいいのよ」

 「わかった、やってみるわ」
 タマミに笑顔が戻った。
 人間、条件が緩むととても得したように感じられるのだ。

 この三人、まだ中学三年生。それもこんな田舎に住んでいては
大港までの汽車賃だってバカにならない。映画代とあわせると、
その額は自分たちのお小遣いではちょっと足りなかった。

 そこで……
 交通費は親に出してもらい映画代やお菓子代は箪笥にしまった
親の財布から……帰りの電車賃だってキセルで浮かす魂胆だった
のである。

****************************

 事はことの他うまくいった。

 少女たちは三人とも親から同意無しの資金援助をしてもらい、
まずはディーゼルで大港まで出かける。

 駅前の本屋に立ち寄った時、ジュリが参考書は買わずにお菓子
代にまわそうと提案したが、さすがに手ぶらでは親を説得しにく
いと考えた他の二人から却下された。

 そこで、おのおのが必要もなさそうな参考書を一応買ってから
映画館へと向かったのである。

 実はこの映画、18歳未満お断りの映画で、三年前封切りられ
た時は男子中学生が隠れて見ようとして補導されている。

 ただ、その時は大人たちの間で話題になった映画も、今は忘れ
去られていた。ましてや、今、上映しているのは場末の映画館だ。

 こんな処はたいてい二本立てか三本立てで入場料も安いから、
一人でも多くのお客さんを呼び込まなければ黒字にならない。
 そこで映画館側も見るからに小学生というのならいざ知らず、
ある程度の年齢に見えるならフリーパスだった。

 チケット売り場のおばちゃんも商売柄三人が窓口に現れた時、
一発で中学生とわかったが、そのルールにのっとって何も言わな
い。

 「大人三人なんて言わなくてもいいよ。どうせ大人しか見ない
映画なんだから」
 と、イヤミを言っただけだった。

 おかげで三人は心臓ドキドキでチケットを買ったが、せっかく
苦労して用意していきた身分証も、その提示を求められることは
なかったのである。

 ただ、映画そのものが面白かったかというと……それはやはり
歳相応というか、彼女達にはまだ早かったようだ。

 特に『O嬢の物語』はいわゆるSM。初めて見る異様な世界に
最初は大興奮だった三人も、しかし、それがどこか自分の身近に
あるような気がして切ない気分になってしまった。

 日本では鞭でぶたれるなんてこと珍しいが、神山村ではそれが
珍しくなかったのである。

 「出ようか」

 誰誘うともなくいったんは映画館を出ようとした三人だったが
……出口付近で降り出した外の雨を見てしまう。

 「帰りの列車まだ2時間もあるよ」
 「町、見て回る?」
 「いい、このあいだ来たから」

 三人はウインドウショッピングも考えたが田舎の街では2時間
も暇つぶしできるほどお店の数がないのだ。

 そこで仕方なく最後まで『O嬢』を見て映画館を出たのだった。

 「………………」
 映画館を出る時は、珍しく無言だった三人。

 「何なのかなあ」
 ヨーコがそう言っただけだった。

 ところが暇つぶしの暇つぶしで見た映画も見終わってしまうと、
三人の心の奥底にはそれまでとは違う感情が芽生えていた。
 それはうまく口では説明できないから、すぐそばの友だちに、
「あれ、よかったね」とは言えないたぐいのものだが、三者三様、
それぞれに甘い蜜のようなものがドロリと心の中に湧いて出くる。

 『なんだろうこれ?』
 不思議な思いを胸に三人は生まれて初めて成人映画を鑑賞して
映画館を出る。
 それが人生のどんな位置づけだったはこれからのことにしても
貴重な経験に変わりはなかった。

 「やだあ~あんた、そんなとこ見てたの?」
 「どこ見てたっていいじゃない、私の勝手じゃないのさあ」
 「いやらしいんだ」
 「そんなことないよ~~」

 O嬢はともかく、三人は列車の中でもおしゃべりに夢中。
 同じこの列車に誰が知り合いが乗っているなんて気にも留めて
いなかった。

 その甲高いおしゃべりは、彼女たちが列車を下りるまで延々と
続いたのだが帰りの列車は行きの列車よりそれが少し早く終わる。
 というのも、帰りは一つ前の駅で降りたからだった。

 もちろん、行きは村に一番近い駅から乗ったのだが……帰りは
その駅を利用したくなかったのである。

 理由は簡単。村に一番近い駅には駅員さんがいるからだった。

 都会の人には分からないだろうが、田舎には無人駅が多い。
 そんな無人の駅では、降車する時は車掌さんが切符を回収する
のが本来だが、発車直前に下りられると、それもしないで列車は
出て行く。

 あとは簡単。無人の改札口にポツンと置かれた切符回収箱を無
視して外に出ればよかった。

 無人駅にはほとんど乗降客がいないから誰かに見られる心配も
ない。最短距離の切符を買って乗れば、かなり遠くの駅までただ
乗りができたのである。

 ただし一つ手前の駅で降りるということは一駅分歩かなければ
ならない。三人は30分ほど余計な運動をして、それぞれの家に
辿り着いたのだった。

 と、まあここまでなら、めでたしめでたしだったのだが……

***************************

 数日後、三人は担任の千倉先生に呼び出された。
 お話は短く「今日の放課後増田神父様のところへ寄って頂戴」
というものだった。

 これ、よその人には何のことだか分からないと思うが、三人娘
にしたら、これって一大事だったのである。

 彼女たちが住む神山村は外観だけはごく普通の農村に見えるが、
他の村々とはちょっと変わった歴史を持っていた。
 実はここ、昔は隠れキリシタンが住む隠れ里だったのだ。

 弾圧を逃れ結束して信仰を守り抜いた彼らは明治維新後晴れて
自由の身となったが、それでもよその村からは白い目で見られ、
村々の交流は進まなかった。

 そんな中、義務教育がスタート。神山村の子供たちも近所の村
に出来た小学校へ通うことになる。ところが、そんな状態だから
神山村の子供たちは他の村の子供たちから虐めにあってしまう。

 そこで、見かねた親たちが資金を出し合って自分たちのための
学校、つまり私立小学校を作り国から認可してもらったのだった。
 その小中学校は戦後も受け継がれ、三人娘もそこに通っていた
のである。

 この学校、当然その成り立ちからいって教育はキリスト教式な
わけだが、それが当然ローマカソリックの傘下かというと、そう
いうわけでもなかった。

 ここでの教育は、むしろ彼ら独自のもの。長い禁教鎖国時代に
培った彼らなりの教義で親や教師は子供たちを教えている。
 つまり、村全体がキリスト教系の新興宗教団体というわけだ。

 だからこの学校、あくまで建前としては教会とは別に運営され
ているのだが、実際は教会の一部。下部組織みたいなものだから、
生徒にとって聖職者は校長先生より偉くて、神父様に呼ばれると
なれば、その先はどのみちろくでもない事と相場が決まっていた
のである。

 「どうする?」
 「どうするって、行くしかないんじゃない」
 「ねえ、原因やっぱりあれかなあ?」
 「あれって?」
 「大港に映画見に行ったの……」

 「でも、まだ叱られるって決まったわけじゃないでしょう」
 「そりゃあそうだけど、だったら、何か褒められることした?」
 「それは……」
 「ほらごらんなさい。やっぱり、あれがばれたのよ」

 「そうかあ~……やっぱりあれしかないかあ……いやだなあ~
……あ~あ、逃げ出したいなあ~」
 「えっ!逃げ出すつもりなの?」
 「バカ、声が大きい。そんなことするはずないでしょう。……
どうせ掴まるし……」

 「私、素っ裸にされて半日も中庭に立たされるなんてまっぴら
だからね」
 「そんなの誰だってそうよ」
 「そういえばカナちゃん、その前に100回も叩かれてたっけ
……お尻真っ赤にして中庭に引き出されたんだもんね」

 「とにかく残酷よね。うちは女の子に……」
 「うちは男の子より女の子の方がお仕置きが厳しいんだもん。
どうかしてるわわ」

 三人はぼやきながらも牧師館の前までやってきた。

 牧師館というのは牧師さんの私邸。必要最小限の小さな家だが
常にお世話する人がいて、いつも綺麗に取り片づけられていた。

 その家の玄関先で、三人は目の前にあるチャイムを鳴らそうと
するのだが……

 「あなたやりなさいよ」
 「いやよ、あなた学級委員でしょう」
 「関係ないじゃない。元はといえばあなたが言い出したんじゃ
ない。映画に行こうって……」
 「そんなの牧師様に会ってみなきゃわからないじゃない」
 「だったら、あなたでもいいじゃない関係ないなら」

 すったもんだ5分がすぎて、結局は小さなボタンを三人掛かり
で押すことになったのだ。

 「やあ、待ってたよ。お入りなさい」
 牧師さんは40代半ば。長身でなかなかのイケメンなのだが、
生徒たちの間での評判しイマイチだった。

 「こんにちわ」「お邪魔します」「失礼します」
 三人は口々に挨拶して中へ入る。

 実はこの牧師さんの評判が悪いのには理由があった。
 というのも、彼、女の子をお仕置きする権限を親や教師から認
められていたから子供たちにとってはありがたくない存在だった
のである。

 結束の固い元隠れキリシタンの村では秩序を乱す子のお仕置き
は当然のこと、女の子だって容赦はなかった。
 いつもいつも何かされるというわけではないが、さっき女の子
たちが話していたように、お尻を100回も叩いてから、全裸に
して中庭に立たせておくなんてことも……この人の場合は可能な
だったのである。

 「さあ、入って」
 牧師さんは三人を書斎へと招きいれた。

 多くの宗教関係の蔵書に囲まれた8畳ほどの書斎は老シスター
のカナさんによっていつも清潔に片付けられていた。

 「カナさん、三人にココアを出してあげてください」
 牧師さんはこの村では一番と言ってよいほど偉い人だったが、
普段は温厚で腰が低く誰に対しても丁寧な言葉で話す紳士だから
大人たちの評判はすこぶるよかったのである。

 牧師さんは三人に椅子を勧めると、自分はライティングデスク
の椅子に腰を下ろす。これからが本題だった。

 「さてと、君たちをここへ呼んだのはね。ちょっと聞きたい事
があったからなんだ。君たち、先週の土曜日は大港まで参考書を
買いに行ったんだって……」

 思わず、三人は互いの顔を見合わせる。

 「君たち、大港へはそれだけの為に行ったの?」
 牧師さんはファイルに挟んであったレポート用紙を取り出して
見ている。

 『あれって、お父さんが書いたのかしら』
 三人娘の誰もがそう思った。

 この村では親が牧師様に息子や娘のお仕置きを依頼することが
珍しくない。そんな時は、事前に子どもたちの罪状を書いた紙を
神父様に渡しておくのだ。

 三人の顔色がすうっと青くなる。悪い予感が的中してしまったのだった。

***************************

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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