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小暮男爵 << §9 >>

小暮男爵

***<< §9 >>****

 
 私とヒロ君は桃源郷の入口付近まで戻ってきます。
 すると破れた金網の処に園長先生が独りで立っていました。

 気になってその辺りを観察すると、私たちがこっそり利用した
はずの金網が大きく捲れ上がっていて、今なら苦労せずにこちら
の世界へ行けそうです。
 いえいえ、そもそもそんなことしなくても、園長先生が立って
いる土手沿いに設けてある正規の入口がこの時は開いていました。

 こっそり近寄ると、園長先生は心配そうな顔をしています。

 「ごきげんよう、園長先生」
 私はいつもの習慣で声を掛けます。

 きっと、私たちがあまりに近くにいますから、先生もびっくり
なさったのでしょう。
 振り返った瞬間、園長先生は目を丸くしておいででした。

 でも、その顔はほんの一瞬でしたから私の後ろにいたヒロ君は
その顔を見逃したみたいです。
 園長先生はすぐにいつもの笑顔に戻ります。

 園長先生は言わずと知れたうちの学校では一番偉い方ですが、
いつもニコニコしていて、もしこれが担任の先生だったら、三日
くらい体の震えが止まらないような大失態を犯しても「大丈夫よ、
あなたはいい子だもの。次は頑張りましょう」とか、担任の先生
からお仕置きされて泣いてる子を見つけると、「大丈夫、大丈夫、
泣かなくていいのよ。もう先生怒ってないから。一緒に先生の処
へ行って謝りましょう」なんておっしゃいます。

 もちろん、園長先生自身が子どもたちをお仕置きするなんて、
まずありませんでした。ですから、こちらも気楽に声が掛けられ
たんだと思います。

 ここを卒業後、大学生のときでしたか、同窓会の席で私が……
 「園長先生はなぜいつも子供たちにやさしいかったんですか?
他の先生たちみたいに怒ったこと一度もありませんでしたよね」
 って尋ねたら……

 「だって、私が怒ったらあなたたちの逃げ込む場所がなくなる
でしょう。先生方はあなたたちを叱るのがお仕事だから、それは
それで仕方がないけど、その子がどんな事をしたにせよ逃げ込む
場所は残しておかないと、その子の心がいつまでも癒えないわ。
そんなの誰だって嫌でしょう?」

 「はい」

 「世の中に救われないお仕置きというのはないの。愛されてる
からお仕置きで、憎しみからなら虐待。私の仕事は子どもたちに
『学校はこれからもあなたを必要としてますよ。愛してますよ』
って伝える事だから……だからいつも笑顔なのよ」

 「でも、私の在校中に一度だけ、園長室の前を通ったら、会田
先生のこと、大声で叱ってらっしゃったのを覚えてますよ」

 「あら、まあ、そんなことがあったの。それはまずかったわね。
そんなこと生徒に聞かせちゃいけないわね。私もついつい大声に
なっちゃって……でも、それも私の仕事なの。私が叱るのは生徒
じゃなくて先生の方よ」

 私は園長先生とのこんな会話をずっと覚えていまして、それを
管理職になってからは、『なるほど』って思い返すんです。

 そんなわけですから、この時も、その第一声は笑顔と共に……
 「あら、スケッチしてきたの?楽しかった?上手に描けた?」
 というものでした。

 まるで、周囲の大人たちが二人の為にバタバタ働いているのを
知らないみたいな穏やかな笑顔です。

 「楽しかったです。ヒロ君と一緒に向こうの谷まで行ってきて
描いたの。私、パステル落としちゃったからヒロ君のパステルで
一緒に描いたんだけど、そこってまるで西洋の風景画みたいなの」

 「そう、じゃあそれを見せてちょうだい」

 園長先生に求められるまま、私が画板を差し出しますと……
 「……あら~~なかなかよく描けてるじゃない。……特にこの
木の枝ぶりがいいわね」
 ヒロ君が勝手に書き込んだおせっかいな大木だけを先生が褒め
るので私はちょっぴりショックでした。

 「ねえ、園長先生はここで何してるの」
 私はついに禁断の質問をしてしまいます。

 「ああ、私のことね……実はね、高梨先生が幼い女の子の悲鳴
を聞いたので心配してここへやって来ると、ここの金網が破れて
て、どうやら、ここから誰かが外に出たみたいなの」

 「!!!」
 私はハッとします。
 『ヤバイ、ばれてたんだ』
 というわけです。

 「それでね、もしやと思ってここに立ってみると………ほら、
斜面の土が削れてるでしょう。コレ、恐らく誰かが滑った跡よね。
先生、慌てて下りて行くと駐車場にはパステルが散乱してるし、
ひょっとして誰かが崖から落ちたんじゃないかって……そこまで
心配なさったそうよ」

 園長先生は画板を私に返しながら私の顔を覗き込みます。
 もちろん、その時だって園長先生のお顔は笑顔でしたが、私は
生きた心地がしませんでした。遅ればせながらやっと事の重大性
に気づいたのです。

 事の重大性……
 重い言葉ですが、子供にとって事の重大性というのは自分の事
だけです。要するに……
 『これがいったいどのくらい厳しいお仕置きになるんだろう?』
 と、頭の中そればかりでした。

 「幸い、駐車場に倒れてる子はいなくてホッとなさったけど、
今度は学校に戻ってクラスの子を確認すると、これが、一人じゃ
なくて二人もいなくなってることがわかって、それでまた大慌て。
ほかの先生方の協力も求められて、見当たらない子をみんなして
探しましょうということになったの」

 園長先生はもちろんご存知です。私とヒロ君がその話題の主だ
ということを。でも、先生は決して私に向けた笑顔を崩しません
でした。

 「でもね、私、迷子さんって、やっぱり出て行った処に戻って
来る気がするのよ。だから、あちこち探すより、ここに立って、
迷子さんが帰って来るのを待ってた方がいいんじゃないかなあと
思って……」

 私はどうしようか迷います。でも、今さら園長先生に嘘をつい
ても高梨先生の処へ戻ればすぐにバレることですから隠しようが
ありません。

 「ごめんなさい。それ、私たちです」
 私が白状すると……

 「そう、迷子ってあなたたちだったのね。でも、よかったわ、
無事に戻れて……どこまで行ってきたの?……そうだ広志君の絵
みせて」
 園長先生は、今度はヒロ君の画板を求めます。

 「……あら~この絵を見ると、鷲尾の谷まで行ったみたいね。
でも、あそこは危ないのよ。……そうだ……あなたたち、まさか
蛇に噛まれたりはしてないわよね。もし、そんなことがあったら
叱らないから言ってちょうだい」
 園長先生の顔が少し厳しくなりました。

 「へび?」

 「そう、あそこにはマムシがいるの。昔、噛まれた子がいたの。
それだけじゃないわ。大きな蜂が巣を作ってるし落石もあるしで、
子供たちには危険な場所だから、それで立ち入れないようにした
のよ。……そうだ、広志君は、そのことよくご存知よね」

 「えっ!」
 ヒロ君は、突然振られて困った顔になります。

 「だって、あなたは常習犯だもの」
 それが園長先生の答えでした。

 「常習犯?」
 私が再び広志君の顔を見ると、その顔は今度は真っ赤でした。

 ちょうどその時です。
 小宮先生が園長先生へのご報告の為でしょうか、やってきます。

 「園長先生、…………」
 そう呼びかけただけで言葉が止まり。
 私たちを見るなり目を丸くして大きなため息を一つ。

 「広志君、あなた、今日は美咲ちゃんまでお誘いしたの?」

 「そんなんじゃないよ。こいつが勝手に……」
 呆れ顔の小宮先生に広志君は反論しようとしましたが、そこで
言葉が途切れてしまいました。

 「まあ、いいわ……でも、今日はお母様までお見えになってる
から、それはそれなりに覚悟しておくことね」

 「えっ……」
 ヒロ君は絶句。唇が震えているのがわかります。
 『背筋も凍る』そんな感じだったんでしょうか。
 ヒロ君の瞳が潤んで見えました。

 広志君の場合、私たちのお父様にあたる人がそのお母様でした。
私が見ている限り、その人はとても美しくて、親子の仲もよくて、
円満そうに見えますが、クラスの評判では『広志君のお母さんは
とても厳しい人』ということでした。

 その理由の一つがお灸。当時は珍しいお仕置きではありません
が、妹さんからの情報によれば、広志君、何かあるたびごとに、
お母様に家で据えられているというのです。

 そこで、夏のプールで海パン姿になった広志君をじっくり観察
しましたが、その痕跡は発見できませんでした。
 それでも諦めきれない女の子たちは額を寄せ合って噂します。

 『きっとお尻に据えられてるのよ』
 『お臍の下じゃない』
 『ひっとして……オチンチンだったりして』
 『やだあ~~~そんなことしたら死んじゃってるわよ』
 『どうして?私、あそこに据えられたけど死ななかったわよ』

 女の子が下ネタで盛り上がるなんておかしいですか?

 そんなことありませんよ。女の子だって、Hな話は大好きです。
女の子同士が下ネタで盛り上がるなんて私たちの間でもごく普通
のことでした。
 実際、秘密のあそこに据えられた子もいましたから。


 さて、私たち二人の身柄は小宮先生に引き取られます。
 「さあ、ついてらっしゃい。まずはその汚れた服を着替える事
からよ」

 もちろんそれって仕方のない事でしょうが、先生の後を着いて
行く二人はまるで囚人のように首をうな垂れていました。

 途中、迷子の捜索に参加した高梨先生を始め、同級生や六年生、
四年生なんかとも出会います。

 「ミーミ、探したよ、どこ行ってたの?」
 理沙ちゃんがいきなり抱きつきます。ミーミは私のことです。
 「ちょっと、散歩よ。散歩」

 「大丈夫だったミーミ。ヒロと鷲尾の谷まで行ったんでしょう。
怪我してない?」
 「真美ちゃん、ごめんね心配かけて。大丈夫よ私、蛇になんか
噛まれてないから」
 「えっ?蛇って?」
 どうやら園長先生の話は一般的じゃなかったみたいです。

 「いやだあミーミ。生きてんじゃない。残念だなあ~~。私、
さっき誰かに崖から落ちて死んだって聞いからお葬式いつだろう
って思ってたのに~~」
 遥お姉さまに会ってしまいました。お姉さまは、普段から人の
嫌がることばかり言う皮肉屋さんですが本当は心の優しい子です。

 「うるさいわね、そんなに簡単には死にませんよ~~だ。特に
あなたより先にだけは絶対に死なないんだから」
 「わかった、わかった、いい子いい子」
 お姉さまはまるで幼い子みたいに私をなだめて抱きしめます。

 『バカにするなあ~~~!!』
 ってなもんですが、私は遥お姉さまがあまりに強く抱きしめる
ものですから突き放すことができずそのまま抱かれてしまいます。

 こうして、お友だちと出会うたびに私たちは再会を喜びあい、
抱き合います。
 こんな時は親友もライバルの子も関係ありません。とにかく、
お友だちを見つけたらお互い抱き合って喜び合う。
 これが女の子の仁義でした。

 というわけで『私たちが見つかった』という情報は、たちまち
校内中に広まります。
 でも、ならば私たち二人がすぐに教室へ戻れたかというと……
そこがそうはいきませんでした。

 「ここで待ってなさい」
 小宮先生にそう命じられたのは、下駄箱のある土間をそのまま
通り抜けた先にある校舎の中庭。テニスコート一面くらいの広さ
だったでしょうか、そこは四方に建つ校舎のおかげで風も穏やか、
冬でも陽だまりがとてもあったかい場所でした。

 そんな条件を生かして中庭には沢山の草花が植えられています。
 クラスごとに花壇が割り振られ、どのクラスも競争するように
手入れを惜しみませんでしてたから四季折々の草花が絶えること
がありませんでした。

 やがて、そこへぞろぞろと色んな人たちがやってきます。生徒
や先生、高梨先生や私たちの家庭教師河合先生、広志君のお母様。
 私はその数の多さに圧倒されます。

 『どういうことかしら?』

 実は、このメンバー。私たちの捜索に参加した人たちでした。

 生徒はクラスメイトだけでなく四年生や六年生も参加していま
したし学校の先生は絵画担当の高梨先生やクラス担任の小宮先生、
音楽や体育の先生まで借り出されていました。これに、我が家の
家庭教師河合先生や広志君のお母様までが加わっていたという訳
です。

 「さあ、それではお二人さん、まずはお着替えしましょうか。
そんな泥だらけの服ではみっともないわ」

 小宮先生はまず私たちに着替えを命じます。実際、学校には、
不慮の事故を想定して予備の制服や下着が用意してありました。
 それを小宮先生が運んできたのです。

 ですから、私……
 「わかりました。更衣室へ行ってきます」
 そう言って小宮先生からその服をもらおうとしたのですが……

 「あらあら、何、その手は?だめよ。これはだめ。渡せないわ。
学校の規則を破るような子は、お仕置きを受けてからでなければ
神聖な校舎に入ることができないの。あなたたちのお着替えは、
ここでやりましょう」

 小宮先生の言葉はまだ幼い身体の私にとっても衝撃的でした。
 広志君はまだ男の子だからいいでしょうけど、私は女の子です。
こんな大勢の人が見ている前でお着替えなんて嫌に決まってます。

 「…………」
 私は言葉にできない分を顔で表現して小宮先生に訴えますが、
先生はわずかに微笑んでそれを無視。

 その代わり、集まった生徒たちに私たちを取り囲むようにして
大きな輪を作らせると、そのまま回れ右させます。
 つまり外を向かせたわけです。

 これで私は、同年代の生徒からだけは着替えの様子を見られる
心配がなくなります。
 でも、こうやって私の周りを子供たちが取り囲んでも、子供の
身長は低く、その外側にいる大人の人たちからはこちらが丸見え
です。

 『あの~う、大人の人からはまだ見えてるんですけど……』
 私の心の声は続きますが、それは考慮してもらえそうにありま
せんでした。

 「いいこと広志君、美咲ちゃん。今日はあなたたちのわがまま
のせいでこれだけ大勢の人にご迷惑をおかけしたの。あなた方は
それをじっくり反省しなければならないわ。そして、あなた方の
為にこれだけ多くのお友だちが力になってくれる幸せを噛み締め
てほしいの。……わかった?」

 小宮先生、言葉は穏やかですが鼻息荒く私たちにお説教です。

 私たちも……
 「はい、わかりました」
 「先生、ごめんなさい」
 こう言うしかありませんでした。

 「……わかったのなら、こうした場合、私たち学校では自分で
お着替えできないのも知ってるわよね」

 「えっ!」
 私は一瞬驚いて顔をあげましたが、すぐに俯きます。
 「はい、先生」
 やはり、こう言うしかありません。

 今朝の朱音お姉さまがそうだったように、私たちが子供時代を
すごしたこの世界では規則を守らない子や歳相応の責任が果たせ
ないような子は、小学生でもその地位を剥奪されて幼児の時代へ
戻されます。もっとひどい時は赤ん坊にまで逆戻りです。

 ですから、この場合、私や広志君にはこの先何が起こるのか、
容易に想像がつくのでした。

 「高梨先生、お手伝いいただけますか」
 小宮先生が高梨先生を呼びます。
 それは私の身体を硬直させる言葉でした。

 高梨先生は、先生と呼ばれていますが、実は私のお父様と同じ
ここの生徒の父兄なのです。
 私達の学校では主要四教科と呼ばれる国語、算数、社会、理科、
以外の教科は生徒のお父様が先生役を買ってでられる方が多くて、
図工だけでなく音楽や体育、教科でなくても自由研究という形で
何人もの方がご自分の得意分野を子どもたちに教えてくださって
いました。

 高梨先生もそんなお一人だったのですが、これが私にとっては
大問題でした。というのも高梨先生が男性だったからなのです。
 当たり前の事ですが、男性の前で裸になるなんてたとえ小学生
だって嫌に決まってます。

 でも……
 『高梨先生は男の先生だから嫌です』
 とは、うちの学校では言えませんでした。

 なぜって、今の私は規則を破ったいけない子なんです。そんな
いけない子はお仕置きが済むまで小学生の地位を剥奪されて幼児
とみなされます。
 そして、幼児にされると、どんなに恥ずかしいと私が訴えても
大人たちがそれを認めてくれませんので、お着替えの最中、私は
高梨先生の前で自分の裸を晒すことになるのでした。

ショックな映像が頭を駆け巡り放心状態でいるなか、小宮先生
は私の様子を冷静に観察されていました。

 『最初は、広志君と一緒にお着替えさせてやろうかと思ってた
けど……だいぶ、応えてるみたいだから……まあ、いいでしょう』
 先生のこの判断で最悪の事態は回避されます。

 結局、私と広志君の間には河合先生と広志君のお母さんが持つ
幕が張られ、広志君は高梨先生が、私は小宮先生が担当すること
になったのでした。

 朝のお風呂の時と同じです。こういう時、私は大人のやってる
ことに何一つ手出しができませんでした。
 勝手に制服のジャンパースカートが剥ぎ取られシャツもパンツ
も靴下も身につけていたものとは全部全部おさらばです。

 これが恥ずかしくないわけがありません。とにかく、今の私、
お外でみんなの前で全裸なのですから。

 輪になったお友だちは外を向いて小宮先生から指示された通り
休み時間に入って教室から出てきた下級生たちに「あっち行って
なさい」「中を見ちゃだめ」「通り過ぎてちょうだい」なんていう
声をかけて防いでくれています。
 でも、背の高い大人たちなら輪を作る子供たちの頭越しに私の
姿は丸見えです。

 もちろん、ここにいる人たちはみなさんが良識のある人たち。
11歳の女の子の裸なんて、できるだけ見ないようにはしてくだ
さっているのですが、小宮先生の作業はとてもゆっくりしていて、
 『さあ、どうぞ、どうぞ、この子の裸を見てやってください』
 とでも言いたげでした。

 小宮先生は丸裸にした私のお尻を濡れタオルで拭きあげながら
お説教します。

 「いいこと、あなたは、あなたのお父様や、あなたのご兄弟や、
先生方、お友だち、みんなに守られてここにいるの。その感謝を
忘れてはいけないわ。見てごらんなさい。お友だちがああやって
手を繋いであなたの裸の身体が見えないようにしてくれてるから、
あなたのお着替えは下級生から見られずにすんでるの。お友だち
に感謝しなくちゃね」

 「でも、上から大人の人たちが覗いたら見えるじゃないですか」

 「そりゃあ、そうだけど、だったらお友達の親切はいらない?
何もないお庭の真ん中で下級生からはやし立てられて指を指され
ながらお着替えする方がいいの」

 「それは……」

 「誰を頼るにしても、その人が、何から何まで完璧にあなたを
フォローなんてしてくれないの。足りない分は別の人のお世話に
なるか、あなた自身が頑張ってうめていかなければならないわ。
あなたは大人の人なら見えると言ったけど、大人の人で、私たち
以外に誰かあなたを見てる人がいるかしら?」

 「…………」
 私は辺りを見回しましたが、その時は誰も私を見ていませんで
した。

 「誰も見てないでしょう。それはあなたがここにいるみんなに
愛されてるから。誰もあなたを悲しませたくないからそんな事は
なさらないの。その人の為になることしかなさらない。それが、
『愛してる』『愛されてる』ってことなの。あなたはご家庭でも
この学校でも愛に囲まれて暮らしてる幸せな王女様なのよ」

 「…………」
 幼い私にその実感はありませんでした。
 この不幸な状態と愛されてるという言葉がどうして同じなのか
がまったく分からず小首を傾げます。

 すると、小宮先生は微笑まれて……
 「そうね、あなたは外の世界を知らないから、仕方がないわね。
きっと『お外にはもっとすばらしい世界が広がってる』と思って
るのかもしれないわね。でも、青い鳥と同じ。本当の幸せはここ
にあるの。身も心も裸になれるここにあるのよ」

 「はい、先生」
 私は小宮先生のお説教は理解不能でしたがこんな時はともかく
『はい、先生』と言わなければならないとだけわかっていました。
ですから、蚊のなくような小さな声で答えたんです。

 それでも小宮先生。私の『はい、先生』で満足なされたみたい
でした。

 「はい、それじゃあまずパンツを穿きましょう。あんよ上げて」
 小宮先生、やっと私に新しいパンツを穿かせてくれます。

 でも、これでお仕置きが終了したわけではありません。
 実際、こうしたお着替えだけでも、私たちには立派な辱しめの
お仕置きなのですが、本当のお仕置きはまだまだこれからだった
のです。

 着替えた服はあつらえたみたいにサイズがぴったりです。
 下着もサイズはぴったりでしたが、誰かが着たかもしれないと
思うといい気持はしませんでした。

 一段落したところで小宮先生が私の耳元で囁きます。それは、
悪魔の囁きでした。
 「今日はここでお仕置きします。覚悟しておいてね。みんなの
愛を裏切って勝手な行動をとったわけですから、仕方ないわね」

 『やっぱり、お着替えだけじゃないんだ』
 と思いました。
 そして、黙っていると……

 「いいですね」
 と、小宮先生に念を押されます。

 「はい、先生」
 もちろん、私はこう言うしかありませんでした。

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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