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小暮男爵 << §12 >>

小暮男爵

***<< §12 >>****

 私たちの学校でのお昼はその為だけに作られた食堂で頂きます。

 体育館の半分ほどの広さに丸い窓がアクセントのその部屋には
ペルシャ絨毯が敷き詰められクラスごとの大きなテーブルが置か
れていました。

 テーブルに並ぶ食器もちょっぴり値の張る陶器や磁器、銀製品。
子供用のプラスチックやアルミの食器などでは真の躾はできない
とお父様方が揃えられたのでした。そのため、ここは子どもさえ
いなければここはまるでホテルの宴会場のようも見えます。

 子供にはちょっと贅沢すぎる空間ですが、父兄の来校が自由な
この学校では家庭と学校の区別が明確でなくて家庭教師や身分の
あるお父様お母様が食事をなさるスペースも確保しておかなけれ
ばなりません。
 そういった意味でも埃たつ教室に招いてプラスチックの食器で
食事をさせるというわけにはいきませんでした。

 そんな食堂に最初にやってくるのは上級生のお姉さんが親しみ
を込めてチビちゃんと呼ぶ小学一年生から三年生の小学校下級生
の子たちです。
 時間割の都合上このチビちゃんたちがたいてい一番のりでした。

 彼らはまず中庭で摘んできた草花を各テーブルに置かれた一輪
挿しの花瓶に生けて回ります。
 それが済むとお姉さま方のテーブルを回って、お皿やナイフ、
フォーク、スプーン、箸箱といったものを並べていきます。
 身長がちょっぴり足りませんからそのための専用の踏み台まで
用意されていました。

 もちろん私もチビちゃんと呼ばれていた頃はこれをやっていま
した。
 でも、このお仕事、なぜか自分たちが食べる分の食器について
はやらないのです。

 チビちゃんたちが食べる分を持ってくるのは少し遅れて食堂に
入って来る上級生のお姉さまたち。

 まず厨房入った中学生のお姉さまグループがチビちゃんたちの
ための料理を盛り付け、小学四年生から六年生の上級生グループ
が配膳台でそれを受け取って、お腹をすかせたチビちゃんたちの
テーブルへ運びます。
 要するに小学校高学年グループは、ウェートレスさんの仕事を
することになるのでした。

 配膳台から出てくるチビちゃんたちの料理は色んな料理が一つ
のお皿に盛られたワンプレートスタイル。一見すると社員食堂や
学食などで提供される定食のようにも見えますが、アレルギーや
どうしてもその食材に手を着けられない子の為に個別の盛り付け
が細かく指示されていました。

 そのため、お料理の取り違えが起こらないようにボールやお皿、
グラスにまでその子の好きな花が家紋代わりに描かれていますし、
箸も箸箱もその子専用。スプーンやフォークなどの食器には一つ
一つ名前が掘り込まれています。もちろん料理を運ぶトレイにも
ちゃんとその子の名前が貼り付けてありました。

 つまりここの給食は一応決まった献立はあるのですが、その子
の事情に応じて料理も食器もすべてがオーダーメイドなのです。
ですから、給仕役の私たちもそれを間違えるわけにはいきません
でした。

 食器と料理を慎重に確認してからトレイに乗せチビちゃんたち
の待つテーブルを回ります。
 その子の前に来ても「愛子ちゃんのお皿、チューリップだった
わよね」って確認を取ります。

 『何で上級生の私たちがチビちゃんたちの給仕役をやられるの』
という不満もないことはないのですが、それを先生に言うと……
 「あなたたちは女の子なんだから当たり前です」
 の一言で片付けられてしまいます。

 実際、戦前は華族様専用の学校でしたから、当然こんな仕事も
ありませんでしたが、戦後お父様が学校を買い取られてからは、
『これからは何事も平民の流儀に習って…』と大きく方向転換を
されたんだそうです。
 園長先生がおっしゃるには昔の名残りがあるのは胤子先生への
一礼と『ごきげんよう』というご挨拶だけなんだそうです。

 私としては、料理をテーブルに運んで行くとチビちゃんたちが
必ず……
 「ありがとうございます。お姉さま」
 と笑顔で迎えてくれるのが励みでした。

 これに対して料理を運んだ上級生は……
 「午後も先生お友だちに囲まれて幸せが続きますように」
 と返すのが一般的です。
 その子の手を取って、ハンドキスをして別れます。
 これは西洋の習慣ではなく、いつの頃からか始まったこの学校
独自のしきたりのようなものでした。

 その後、私たちは同席される先生のために料理を運び中学生の
お姉様たちのテーブルも回ります。
 そして最後が私たちのテーブルです。

 文字通り小学校高学年組は給食の給仕役をやらされる訳ですが、
私自身はそれがそんなに苦痛ではありませんでした。
 だって、そのことでみんな笑顔になってくれますから、人の役
に立っているという実感がありました。
 
 大事な事はみんなで助け合って食事の準備をすること。他の人
にやっていただいたことには感謝すること。うちの学校にあって
は給食はそんな常識を学ぶ場だったのです。

 さて、そうやって苦労のあげくいただく料理なんですが、実は
部屋の内装に比べるとそんなに豪華版じゃありません。

 この日のメニューは、トマトシチューにサラダ、黒パン、牛乳、
ちょっぴりのフルーツといったところでしょうか。
 シチューやサラダ、それにフルーツといったものはチビちゃん
たちとは違ってあえて個別にせずクラスごとに置かれた大きな鉢
にいれてあります。それを担任の小宮先生から分けてもらうこと
になっていました。

 例外は月に一度だけ。外からシェフが来て本格的なコース料理
が振舞われます。

 ただ、この日の料理は豪華ですが、テーブルマナーを学ぶのが
本来の目的ですから、お行儀よくしなければなりませんし、慣れ
ないフォークやナイフと格闘しなければなりません。おかげで、
お料理そのものをそんなに美味しいと感じる余裕はありませんで
した。

 実は、さっき名前の彫られたフォークやナイフがあるって言い
ましたけど、実際は、あれ、お飾りなんです。

 当時の私たちが日常的に使っていたのは、あくまで自分の箸箱
から取り出すマイ箸。チビちゃんたちはその方が食べやすいので
スプーンやフォークを使いますが、私たちの年齢になると大半が
箸を使って食べます。食卓には練習用にと毎回フォークやナイフ
が並べられますが、一度も料理に触れることなく下げられること
がほとんどでした。

 そんなことより、女の子たちにとって一番のご馳走は気の置け
ないお友だちとのおしゃべり。これが何よりのご馳走なんです。

 ですから、私たちは席に着くなりおしゃべり。園長先生が手を
叩いて一瞬場内が静まりますが、それが続くのは全員が唱和する
「いただきます」の瞬間まで。すぐにさっきの続きが始まります。
 そんなおしゃべりを楽しむ大事な時間に慣れない洋食器は邪魔
な存在でしかありませんでした。

 「ねえ、ねえ、お尻、痛かった?赤くなってるの?私のところ
からだと、前の子が邪魔になってはっきり見えなかったのよ」
 お下げ髪の恵子ちゃんがあけすけに尋ねます。

 『えっ、また……』
 私はうんざり。そして、返事に困ります。

 実はお仕置きが終わって図画教室に行く時も、授業が終わって
この食堂へ来る時もお友だちの話題はこればっかり。
 私はお友だちからしつこく同じ質問を受けてます。

 でも、その時は……
 「私、慣れてるから」
 なんて半笑いで応えていたのですが、父兄も同席しているこの
テーブルで言われるとさすがにカチンときます。

 正直、『あなたさあ、他のお友だちの話、聞いてなかったの!』
って怒鳴りたい気分でした。
 でもそれをやっちゃうと恥の上塗りにもなりますから、あえて
黙っていたのです。

 「ダメよ、恵子ちゃん。場所柄をわきまえなさい。お食事中に
するお話じゃないでしょう」
 さっそく、恵子の家庭教師、町田先生がたしなめます。

 付き添いの家庭教師さんたちは授業中は教え子の様子を黙って
見守るだけですが、休み時間になると今の授業で分からなさそう
にしていた箇所をアドバイスを送りにやってきます。
 そしてお昼にはこうして学校の先生のような顔をして教え子の
隣りに席を取り私たちと同じメニューの昼食をいただくのでした。

 入学したての頃は右も左もわかりませんから学校まで着いきて
くれる華族同然の家庭教師の存在を頼もしく思っていましたが、
上級生ともなると、いつも監視される生活は逆にうっとうしいと
感じられることが多くなっていました。
 ただ、こんな時は助かります。

 今にして思うと、家庭教師がそばにいたから授業で分からない
処も即座にフォローされますし、お友だちから仲間はずれにされ
たり、虐められたりすることもありません。それに、うっかり、
今日の宿題を忘れてたとしても、家庭教師も一緒に聞いています
から家に帰ってからやり忘れるなんてこともありません。

 それに何より一番大きな利点は、学校で落ち込むようなこと、
例えば今回のようなお仕置きなんかがあっても、家庭教師という
身内がその胸を貸してくれること、甘えさせてくれることでした。

 「ねえ、広志君、鷲尾の谷ってどんな処なの?」
 今度は美鈴ちゃんが広志君に尋ねています。

 すると広志君は最初困った顔をしましたが、すぐに持ってきた
自分の絵を見せます。そして、ぶっきらぼうに……
 「こういう処さ」

 「わあ~~~」
 「すご~~い」
 「綺~~~麗」
 たちまち、女の子たちが立ち上がり美鈴ちゃんの席は人だかり
ができます。

 「ほらほら、食事中ですよ」
 小宮先生の声も耳に入らないほどの人気だったのです。

 「まわりの黒いふち何?」

 「それ、洞穴だよ。そこから描いたんだ」

 「ねえねえ、上から下がってるこの蔓は?」
 「山葡萄」
 「じゃあ、この岩の間に咲いてる花は?」
 「山百合」
 広志君は女の子の質問にそっけなく答えます。

 「ねえ、この棒は何なの?」
 「棒じゃないよ。雲の間から陽が差しているんだ」
 「ねえ、こんなもくもくの雲なんて本当に湧くの?」
 「湧くよ。榎田先生に聞いたけど、あの辺は気流の関係で黒く
て厚い雲が湧きやすいんだって……学校は高い処にあるからこの
雲は見えないんだ」

 広志君の絵は小学生としてはとても細密で遠くの町の様子まで
細かく描きわけてあります。
 こんな細かな絵ですから、図画授業の時間内ではまだ完成して
いませんでしたが、その未完成の絵を見たいという希望者は子供
だけではなかったのです。

 「ほらほら、席へ戻りなさい」
 小宮先生がそう言って美鈴ちゃんから絵を取上げると、今度は
家庭教師の人たちがその絵を一目見ようと席を立ちます。
 
 「わあ、こんな表現、小学生がするのね。しかも様になってる
ところが凄いわ」
 「本当。神秘的ね。この光の帯から本当に天使が降りてきそう
だもの」
 「ねえ、この百合よく描けてると思わない。まさに谷間に咲く
白百合って感じかしら」
 「私はこの街のシルエットがたまらないわ。よくこんなに精密
に描けるもんね」

 小宮先生は群がる家庭教師軍団に呆れ顔。これでは叱ったはず
の生徒に示しがつきませんでした。
 でも、それほどまでに広志君の絵は上手だったのです。

 一方、その頃、当の広志君はというと、自分の絵が評価されて
いることにはまったく興味がない様子で、隣のテーブルにばかり
視線を走らせています。

 『?』
 視線の先を追うとそこは六年生のテーブル。そしてそこに何が
あったかというと、大きな鏡でした。

 前にも説明したように、鏡というのは私たちの隠語で、実際は
磨かれた鉄板です。その鉄板を座面に敷いて女の子が一人、食堂
の椅子に腰を下ろしています。

 『あれかあ』
 女の子はスカートを目一杯広げて何とか鉄の座布団を隠そうと
していますが、鏡の角が飛び出して光っています。

 当然、光の奥はノーパン。
 広志君はそれを見ていたのでした。

 『まったく、男の子ってどうしてああなんだろう』
 私は広志君に軽蔑の眼差しを送りましたが、当の広志君は……
もう夢中で、私の事など気づく様子がありません。

 実は、昼食の最中は授業ではありませんから、ちょっとぐらい
の粗相では罰は受けないものなのです。
 それがこうして昼食の最中も鏡を敷かされてるわけですから、
瑞穂お姉様ったら前の授業でよほど担任の先生を怒らせたに違い
ありませんでした。

 「ねえ、ジロジロ見てたらみっともないわよ」
 私が広志君に注意すると……
 「いいじゃないか、お仕置きなんだもん。僕らだってたっぷり
見られたんだし……自業自得だよ」

 「だって、可哀想でしょう」

 「そんなことないよ。僕たちの方がよっぽど可哀想だよ。お尻
までみんなに見られたんだよ」

 「そりゃそうだけど、笑わなくてもいいでしょう……」

 「別に笑ってなんかいないよ。でも、お昼の時間まで鏡の上に
座らされてるんだもん。これからきっと厳しいお仕置きがあると
思うよ。それを想像してると何だか楽しくなっちゃうんだよね。
美咲ちゃんはそんなの思わないの?」

 「思いません!」
 急に声が大きくなってしまいました。

 「まったく、男の子って悪趣味ね。よその子の不幸を利用して
楽しむなんて……そっとしておいてあげればいいじゃないの」

 「いいじゃないか、思うだけなんだから……誰にも迷惑かけて
ないもん」
 広志君口を尖らせます。

 「…………」私は呆れたという顔をします。
 でも、そう言ってる私だって、表向きはともかく、心の中では
思わず、瑞穂お姉さまが鏡の上に座っている原因をあれこれ想像
してしまうのでした。

 『ほんと、瑞穂お姉様どうしたのかしら?単元テストの成績が
ものすごく悪かったとか……』
 単元テストというのは一学期に十回ほどある業者テストのこと
で、復習を兼ねて行われます。九十点と言いたいところですが、
女の子の場合は八十点を越えていればお咎めなしでした。

 『違うなあ、あのテストはたとえ六十点でも、やらされるのは
たいてい担任の先生との居残り特訓だけだもの』

 『カンニング!?……もしそうなら、そりゃあ怖いことになる
かもしれないけど、まさかね。瑞穂お姉さまは頭がいいんだもの。
そんな必要ないわ』

 『それとも、先生に悪戯?……お姉様、わりと好きなのよね。
ブウブウクッションを先生の椅子に仕込むとか、蛇や蛙の玩具を
引き出しに入れておくとか。……ん~~でも瑞穂お姉様が今さら
そんな子供じみたことするはずないか……』

 『先生にたてついた?……ちょっと癇癪持ちだけど、栗山先生
とは仲がいいもんね、学級委員やらされてるくらいだから、ない
よね………廊下を走った?……そんな事ぐらいじゃこんな罰受け
ないか………お友だちとの喧嘩した?……たしかにあれで男の子
みたいな処もあるけど……』

 いくら考えても答えなんて出てくるはずがありません。
 もちろん、直接、本人に確かめるのが手っ取り早いでしょうが、
それって嫌われちゃう可能性もありますから、女の子としては、
そんなリスクを犯してまで尋ねてみたいとは思いませんでした。

 ところが……
 その答えは、意外に早くやってきます。

 話題のテーブルから、六年生の担任、栗山先生がお鍋を抱えて
こちらのテーブルへやって来たのでした。
 栗山先生は私たちの小宮先生に尋ねます。

 「ねえ、シチュー残っちゃってるけど、食べない?」
「どうしたの?いつも足らないって言ってるくせに……」
 「今日は全員食欲がないみたいなのよ」
 当初の用件はコレだったのですが……

 「原因は、あれ?」
 小宮先生は瑞穂お姉様に視線を送ります。
 「察しがいいわね。そういうことよ」
 「ねえ、ミホ(瑞穂)、どうしたの?」
 小宮先生が私に代わって尋ねてくださったのでした。

 「前の時間、時間が中途半端になっちゃったから自習にしてた
んだけど……あの子たち、自習時間の最中に二階から飛び降りて
遊んでたのよ」

 「二階から!?」

 「ほら、私の教室の窓の下に伐採した枝や葉っぱが集められて
て小山になってるところがあるでしょう。あそこに向かって飛び
降りる遊びを始めちゃったってわけ」

 「危ないことするわね。一歩間違えれば大怪我じゃないの。…
…で、それをミホ(瑞穂)が?」

 「そうなのよ。あの子、他人に乗せられやすいのよ。友だちに
囃し立てられられるとつい悪ふざけしちゃって、どうやら三回も
窓の庇から飛んだらしいわ」

 「帰りは?」

 「正々堂々、玄関からご帰還よ。……何度も何度も同じ生徒が
廊下を通るんでおかしいと思って窓の外に身を乗り出してみたら、
女の子が傘を差してスカートを翻して二階の窓から飛び降りるの
を発見したってわけ」

 「で、誰に見つかったの?」

 「梅津先生」

 「おや、おや、一番まずいのに見つかっちゃったわけだ」

 「こうなったら、私だって叱らないわけにはいかないでしょう。
瑞穂と囃し立ててた数人を運動場に連れて行って、全員を肋木に
縛りつけてお尻叩き」

 「パンツ下ろして?」

 「そこまではしないけど、スカートは上げて革のスリッパよ」

 「どおりでポンポンと小気味のいい音が運動場から聞こえると
思ったわ。それって、私がこの子たちをお仕置きしたせいよね。
ごめんなさい。とんだ肉体労働させちゃったわね」

 「違うわよ。そういう事言ってるんじゃないの。だってそんな
ことはお互い様ですもの。そうじゃなくて、この子たちも、もう
六年生だし、お鞭の味も少しは覚えさせておこうかと思って…」

 「それで、食事も喉を通らないってわけね」

 「瑞穂さすがに応えたみたいで、お尻叩きの後も泣いてたから
お仕置きも兼ねてお尻を冷やさせてるのよ」

 先生二人はひそひそ話でしたが、私は聞き耳をたててすべてを
知りつくします。

 『瑞穂お姉さま、この分じゃお家に帰ってからもお仕置きね』
 私は思わずお灸を据えられて悲鳴を上げている瑞穂お姉さまを
想像してしまいます。

 それって、悲劇でも同情でも何でもありませんでした。
 邪まな思いが私の心を喜ばせ、いつしか口元が緩みます。
 ここまで来ると、私に広志君のことをとやかく言う資格なんて
ありませんでした。

 そして、それはいつしか瑞穂お姉さまではなく私自身がお父様
からお仕置きを受けている映像へと変化していきます。

 誰にも気取られないように平静を装ってはいましたが、心の中
ではどす黒い雲が幾重にも渦を捲いて神様から頂いた清らかな光
を閉じ込めています。
 甘い蜜がが身体の中心線を痺れさせ子宮を絞ります。
 吐息が漏れ呼吸が速くなります。

 『私も、鏡を敷いて震えてみたい。お父様からお仕置きされて
みたい。身体が木っ端微塵になるほどお尻を叩かれたい。そして、
最後はお父様の胸の中で愛されるの。幸せだろうなあ』

 邪悪な願望が心の中で渦巻いて、糸巻き車の針に指を刺すよう
迫ってきます。
 最もして欲しくないことなのに、本当にそうなったら逃げ回る
くせに、私の心は悲劇を渇望してさ迷います。

 その悲劇の先にはなぜか悦楽の都があるような気がして……
 こんな不思議な気持って、恐らく私が生まれて初めて経験する
気持でした。

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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