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小暮男爵 ***<< §15 >>****

<これまでの登場人物>
 
   (学校を創った六つのお家)
小暮 進藤 真鍋 佐々木 高梨 中条

 (小暮男爵家)
 小暮美咲<小5>~私~    
 小暮遥 <小6>        
 河合先生   
 <小学生担当の家庭教師>
小暮 隆明<高3>
小暮 小百合<高2>    
小暮 健治<中3> 
 小暮 楓<中2>
 小暮 朱音(あかね)<中1>

(学校の先生方)
小宮先生<5年生担当>
ショートヘアでボーイッシュ小柄
栗山先生<6年生担当>
ロングヘアで長身
高梨先生<図画/一般人>
創設六家の出身。自らも画家

(6年生のクラス)
 小暮 遥
 進藤 瑞穂
 佐々木 友理奈
 真鍋 明

(5年生のクラス)
中条 由美子
高梨 里香

*******************

小暮男爵

***<< §15 >>****

 『お股にお灸ですって~ひど~い、残酷すぎるよ』
 私は思いました。

 いえ、私が思ったぐらいですから、当事者はもっとショックな
はずです。

 瑞穂お姉様が進藤のお父様に訴えます。
 「ひどいよ。だって、私、もう先生からお尻叩かれてるのよ。
もう、お仕置き済んでるのに……」

 でも……
 「だめだ。これはお父さんたちみんなで話し合って決めたこと
だからね、可愛いお前の頼みでも変更はできないんだ」

 「そんなの勝手に決めないでよ。私お嫁に行けなくなっちゃう
じゃないの」

 「大仰だなあ。もう、お嫁入りの心配してるのかい?」

 「もうって……私だって女の子だもん」

 「大丈夫だよ。そんな場所、誰も覗かないもの」

 「だってえ~~」

 瑞穂お姉様は両手でお父様の襟を掴みながら食い下がります。
 でもそれって、お父様に懇願しているというよりどっか甘えて
いるように見えます。

 「それに、これはお前たちだけの特別なお仕置きじゃないんだ。
紫苑お姉ちゃまも、満知子お姉ちゃまも、そのまた先の先輩も、
みんなみんな一度はお股にお灸を据えられて卒業しているから、
言ってみればここの伝統みたいなものなんだよ」

 「うそ……何なの、伝統って……」
 瑞穂お姉様は絶句します。

 『うそ、瑞穂お姉様、お股へのお灸のこと知らないんだ。……
そんなのみんな知ってるよ。』
 私はつぶやきます。
 自慢になりませんが、実は私、この恥ずかしいお仕置きを一足
早く体験済みでした。

 あれは四年生の終わり頃だったかな、春休みで宿題もないから
毎日が日曜日。遥お姉様と訳もなく家中を走り回ってたら、廊下
に飾ってあった花瓶を割っちゃって…お父様に『勉強もしないで
浮かれてるからだ!』って、正座でお説教されたあとお仕置き。
仏間に引っ張って行かれて、二人並べて素っ裸。お手伝いに来た
河合先生にとりなしを頼んだんだけどダメで、二人とも仰向けに
寝かされたあと、両足を高く上げるあの恥ずかしいポーズのまま
河合先生に体を押さえつけられて、お父様に恥ずかしい処を全部
覗かれながら、「ひぃ~~」って感じのお灸を据えられたことが
あったの。
 だから、遥お姉様だってこれはもう経験済みよ。

 そりゃあ今と比べたら私は幼かったけど、信じられないくらい
恥ずかったし、死ぬほど熱かったしで二人とも頭はパニック状態。
気が狂ったみたいに泣き叫んだから、その時のことは家中の人が
知ってるはずよ。

 ただ、その時の私は反抗期というか、お父様と一緒にやってた
お勉強は逃げてばかり、逆に悪さは毎日のようにやってたから、
今にして思うと『そんなお仕置きをされても、仕方がないかあ』
なんて思わなくもないんです。

 でも、お姉様たちの場合は『こんなことぐらいでどうして?』
と思っちゃいます。

 そう言えば、あの時はもの凄く熱かったので、きっと火傷の痕
が今も残っていると思いますが、その後、お灸の痕をあえて確認
することはしませんでした。

 どうして?心配じゃなかったのか?……

 もし酷いことになっていたら、私はお父様を恨んでしまいそう
で、それが怖かったのです。

 で、その後、お父様とはどうなったか?……

 いえ、別にどうにもなりませんよ。今までの生活と何一つ変わ
りありませんでした。

 お父様を見つけると、いつも抱っこをおねだりして背中に抱き
つきますし我儘言ってはお父様を困らせます。
 私はそんなお父様の困ったお顔を見るのが大好きでしたから。

 私の場合は、お股にお灸を据えられた前も後も甘えん坊さんで
悪い子だったんです。それに実年齢以上に赤ちゃんだったかな?

 お風呂上りは、裸ん坊さんのまんまタオルケットに包まれて、
お父様に抱っこされたままベッドイン。包まれたタオルケットで
汗を拭いてもらって、ついでに全身マッサージ。ほっぺやお乳に
乳液をスリスリしてもらったら、最後は下着を着けずにパジャマ
を着るのが習慣で……。

 お父様に甘えすぎかもしれないけど、赤ちゃん時代から続けて
きた習慣がそのまんまって続いてたの。
 ベッドでお股を広げていても相手がお父様ならあえて隠すなん
てことはしなかったわ。
 だって、お父様からならお仕置き以外何をされても楽しいんだ
もの。『楽しいことしてえ~~』って感じだったわ。

 それに、お灸の痕はつまり火傷の痕なわけだから、しばらくは
歩くとそこが微妙に摺れて『あっ、ここ、ここ。据えられたんだ』
ってわかるんだけど、それって私の体をお父様がつねに見守って
くれてるみたいで、逆に嬉しかったの。

こんな言葉、子供の私が使っちゃいけないかもしれないけど、
お股へのお灸って、お父様に手込めにされた気分なの。
 それって、お灸を据えられた時は確かに死ぬ思いだったけど、
終わってみると、お父様の愛を自分だけが独り占めできたような、
妙な高揚感が残ったの。

 これを正直にお父様に話したら……
 「『手込め』ねえ……美咲ちゃん難しい言葉を知ってるんだ。
……でも、そうかも知れないな。……だったら最後まで面倒みて
あげなきゃね……」

 お父様、突然お顔がほころんで……
 「でも、嬉しいよ。お前のことだから、こんな厳しいお仕置き
もきっと受け入れてくれるだろうとは思ってたけど、ちょっぴり
心配もしてたんだ。幼いお前がネガティブになっていないなら、
それが何よりだ。…………ほ~~~ら、お父さんだよ~~~」

 よっぽど嬉しかったんでしょうね、お父様は目よりも高く私を
持ち上げると、何度も何度も頬ずりして、なかなか床に下ろして
くれませんでした。

 「でも、熱かったよ!ホントに据えるんだもん」
 私はお父様のご機嫌が直ってから、あらためて愚痴を言います。

 これは私に限らないと思いますが、愛されて育った子どもって、
厳しいお仕置きを言い渡されても『今は怒ってるけど、そのうち
許してくれるんじゃないかしら』って、心ひそかに期待している
ものなんです。
 それが最後までいっちゃったものだから、そこが私にとっての
不満だったのでした。

 今度の事だって、お姉様たちの心の中はその暗い表情ほどには
深刻じゃないと思うんですが……ただ、そうは言ってもお姉様達
の様子が気になりますから、私はその後も、目を皿のようにして
隣の部屋の様子を窺っていました。

 すると、お父様たちどうやら本気みたいで、お仕置きの衣装で
ある体操服をご自身で娘に着せていきます。

 『あっ、ずるい!私の時は素っ裸だったのよ!素っ裸にしろ!』
 私って妙なところに意固地なんで困りものです。

 私は心の奥底から湧き起こる怒りで思わず目の前のガラス窓を
叩いてしまいました。

 が……
 それ以外は私の時と同じでした。

 まず、お父様とその娘がお互い正座して向き合います。

 すると、娘が両手を畳に着けてご挨拶。
 「お父様、お仕置きお願いします」

 なかなか子どもの側から言いにくい言葉ですが、言わなければ
お仕置きは始まりません。始まらなければ終わらないわけで……
この言葉は絶対に言わなければならない言葉でした。

 ご挨拶が終わると、その場で仰向けに寝かされて、お父様から
ブルマーとショーツを剥ぎ取られます。

 その瞬間、大切な谷間が現れ、やがて両足も持ち上げられます
から、本来なら女の子として悲鳴の一つも上げたいところですが、
お仕置きの間は極力声を出してはいけませんでした。

 各家々の家庭教師が、仰向けになったお姉様方の両肩を両膝で
踏んで押さえ、高く上がった両足の太股をしっかりと鷲づかみに
して支えます。

 女の子にとってはこれ以上ないほどの恥ずかしいポーズ。私も
同じ姿勢になったけど、お股の中をスースー風が通って、屈辱的
というか、風邪をひきそうでした。

 『ざまあみろ』
 なんて、ガラス窓を隔てた向こう側からわけもなく思っちゃい
ます。それが何なのか、子どものうちはわかりませんでしたが、
大人になるとそれが嫉妬だと気づきます。
 私はお仕置きを受けるお姉様方に嫉妬していたのでした。
 ですから、私は天使にはなれないと思います。

 ただ、こうしてお姉様たちの痴態を眺めていても、私には何の
興味も湧きませんでした。
 だって、女の子にしてみたらあんなグロテスクでばっちいもの、
鑑賞するものじゃありませんから。

 ただ、明君に視線が移ると、それは別でした。
 『見ちゃいけない』と思いつつも私は男の子のアレを見ちゃい
ます。

 『へえ~、男の子のって、あんな感じなんだ。真ん中にまるで
縫ったみたいに筋が入ってる』
 声には出さないけど滅多に見られない映像に私の心は興奮状態
です。いつしか小さなガラス窓に思いっきり顔を押し付けて明君
のアソコを見ていました。

 そうしたら、突然、明君が大胆にも私に向かってピースサイン
を送ります。
 どうやら、私と目が合ったみたいでした。

 男の子って、恥ずかしいって言葉を知らないんでしょうか?

 「?」
 それに気づいた明君のお母様がこちらを振り返ります。

 さらに、つられる様にして他のお父様たちもこちらを振り返り
ましたから……

 『あっ!!ヤバイ』
 私は思わず身を隠そうとしたのです。

 ところが、あまりに突然だったので、踏み台にしていた小さな
椅子の角で足を滑らせてしまい、真っ逆さま……

 「ガラガラ、ガッシャーン」

 場内に大きな音が木霊して、私はお尻をしたたか打ってしまい
すぐには起き上がれないでいました。

 『やばい、逃げなきゃ』
 そうは思いましたが、お尻が痛くて痛くてなかなか立てません。
 出来たのはその場によろよろと立ち上がるところまででした。

 「何だ、美咲じゃないか……大丈夫だったか?」

 真っ先に駆けつけた小暮のお父様が私を抱き起こしてくれます。
 気がつくと、明君のお母様も瑞穂ちゃんのお父様も様子を見に
きていました。

 「へへへへへ」
 こういう場合って、もう笑ってごまかすしかありませんでした。

 「あれあれ、美咲ちゃんだったのかあ。くぐり戸開いてた?」

 「はい」
 小さな声で答えると……
 「鍵を誰かさんが掛け忘れちゃったみたいだね」

 瑞穂お姉さまのお父さん、進藤先生が笑えば、明くんのお母様
真鍋の御前様も続きます。

 「あらあら、これはとんだところを見られちゃったみたいね。
……あなた、男の子の物なんて初めて?そんなことないわよね。
うちの明とも一緒にお風呂入ってるから……」

 「えっ……まあ」

 「でも、驚いたでしょう」

 二人はにこやかで私を叱るという雰囲気ではありませんでした
が、お父様は……

 「大丈夫ですよ。この子はすでに経験済みですから」
 あっさり私の過去をばらしてしまいます。

 「経験済みって?……まさか、この子に、なさったんですか?」

 「ええ、今年の三月に……」

 「それは、また……手回しのよろしいことで……」

 「ま、いずれ六年生になったら同級生たちと一緒に改めてやら
せるつもりではいますが、何しろこの子はお転婆で、そのくらい
しないと効果がないんですよ。この子に限って言えば予行演習と
いうところです」

 「そりゃまた、とんだ災難だったわけだ」
 進藤先生は私の頭を鷲づかみにします。

 こんなこと、今だったら笑いことではすまないでしょうけど、
当時の親たちにとってお仕置きはあくまで教育の一部。
 お灸も躾としてやってるわけですから、親たちもそんなに深刻
には受け止めていませんでした。

 「まあ、見ていたんなら仕方がない。その代わりお前も手伝い
なさい」
 
 お父様はそれがさも当然とでも言わんばかりに私の手を引いて
六年生がお仕置きを受けている隣りの大広間へ、私を連れて行き
ます。

 するとその大広間の入口でいきなり河合先生に組み伏せられて
いる遥お姉様と目があってしまいます。
 それって、さすがお互いばつが悪い思いでした。

 六年生六人に対するお灸のお仕置きは畳の上で行われます。

 たくさんの、それこそ必要以上に沢山の蝋燭とお線香が周囲で
たかれるなか、天井から照らしていた蛍光灯の明かりが消えて、
あたりは揺らめくローソクの明かりだけに……

 お線香の香りが辺りに漂い揺らめく蝋燭の明かりだけが頼りと
いうお部屋はまるで怪談話でも聞くような不気味な舞台設定です
が、お父様たちは大真面目に部屋中に照明用の蝋燭を灯しお線香
をこれでもかというほど炊いて準備を進めていきます。

 もし怒りに任せてお灸をすえるだけなら、こんな仰々しい舞台
装置は必要ありません。でも、そうではないのです。
 六人のお父様方が相談して、愛する子供たちの為、将来を真剣
に考えて、これが一番よい方法だという結論になったのでした。

 大切なことは、クラスのみんなが一緒に罰を受ける場を持つ事。
そして、その思い出をこれから先も決して忘れないでほしいから、
罰も子どもが一番嫌がるお股へのお灸と決め、ロケーションにも
凝ったのでした。

 お父様曰く……
 子供時代に味わった恥ずかしい思い出や辛い思い出も、大人に
なれば楽しい思い出に変わる。でも、その辛い時代を共有した人
との絆はその後も切れることはない。

 小暮のお父様だけでなく他のお父様たちも同じ考えのようです。
六人のお父様たちはご自身の戦争体験を通して誰もがそう考えて
いたみたいでした。

 これって、今なら当然異論があるでしょうが、私たちはそんな
戦争帰りの人たちから教育を受けた世代なのです。
 ですから、時として、今では考えられないようなお仕置きまで
美化されてしまう傾向になるのでした。

 さて家庭教師の先生方はというと、子どもたちの両足を開ける
だけ開かせ、且つその体が微動だにしないよう厳重に押さえ込み
ます。

 場所はとっても狭い場所にピンポイント。もし、驚いて両足を
閉じたりしたら他の箇所が火傷しかねません。そこで先生たちも
真剣でした。

 私も何回かこの窮屈な姿勢でお灸をすえられた経験があります
が、これってたんに熱いというだけでなく、女の子にとっては、
泣くに泣けないくらい恥ずかしいお仕置きだったのでした。

 家庭教師の「こちら準備できました」という声に合せ、その子
のお父様が舞台装置のセッティングを終えて一人また一人と一段
高くなかった十二畳のスペースに上がり込んできます。

 『ついに来た~』といった感じで子どもたちの顔にも緊張感が
走ります。

 お父様といえど大人が怖いのはどの子もみんな同じなのですが、
ただ、その受け止め方は人様々で、努めて平静を装っている子が
いる一方で、すでに全身を震わせプレッシーに押し潰されそうな
子もいます。

 ですから、こんな時には不足の事態が起きることも……

 「おやおや、やっちゃったねえ」
 友理奈ちゃんのお父様は目の前で噴出した噴水に笑いが押さえ
られませんでした。

 たちまち他の家庭教師やお父様たちも気がついて、雑巾バケツ
やらボロ布などが用意され、友理奈ちゃんは隣の部屋に隔離され
てしまいます。

 お姉様たちも、せっかく脱いだパンツ、せっかく上げた両足で
したが、いったん元に戻されて正座しなおすことになります。

 畳に残る染みも、その時のお姉様たちにははっきり見えたはず。
誰が何を引き起きたかだってはっきり分かったはずでした。
 誰の目にも事実は明らかでしたが、それを言葉で指摘する子は
ここには誰もいませんでした。

 こうした事態が起こったとき、何をして何をしてはいけないか、
私たちは幼い頃から厳しく躾られています。家庭では家庭教師が、
学校では学校の先生が、もちろんお父様からも口をすっぱくして
注意を受けます。私たちは常に相手の立場や心情を思いやる子で
なければいけないと教えられてきたのです。

 もし、約束を破って友理奈ちゃんを笑ったりしたら、どの家の
子でも間違いなくお仕置きでしょう。

 お父様方が私たちに求めたのは、天才や秀才、スポーツマンや
芸術家といった一芸に秀でた子どもではなく、天使様のような、
純な心を持つ少女がお気に入りなのですから、不純な心の持ち主
ならいらないということになります。

 ですから私たちの場合『お友だちと仲良く』と言われていても、
いじめや仲間はずれ、取っ組み合いの喧嘩さえしなければいいと
いう水準ではありません。家庭でも、学校でも、常に相手を敬う
ベストな友だち付き合いが求められていたのでした。
 もちろん幼い身で現実には難しいですけど努力は必要でした。

 今回のお仕置きの理由が『お友だちと仲良く出来なかった』と
いうは、お父様たちの気持を反映したものだったのです。

 当然、『お漏らしをした子を笑っちゃいけない』ぐらいの事は
全員がわかっていました。


 しばらくすると、友理奈ちゃんが佐々木のお父様や家庭教師の
先生に連れられて隣りの部屋から戻って来ます。
 「みなさん、ごめんなさい」
 小さな声で謝ってから再び畳敷きのステージへと上がります。

 この歳でお漏らしするなんて、そりゃあ恥ずかしいに決まって
ます。もちろんそれをみんなに見られたことも分かっています。
それでいて誰も何も言わないのは、友理奈お姉様には、かえって
辛いことだったんじゃないでしょうか。

 友理奈お姉様は、お友だちの視線を避けるように俯いたまま、
お父様の処へ。

 すると、佐々木のお父様が両手を広げて……
 「おいで、友理奈。しばらくここで休もう」

 友理奈ちゃんは畳の上に正座した佐々木のお父様のお膝にお尻
をおろします。

 お膝の上に抱っこなんてこの歳ではちょっぴり恥ずかしいけど、
誰もその事を笑ったりしません。勿論『どんな時でもお友だちを
笑ってはいけない』という約束事はありますが、実は、これって
ここではごく自然な光景でした。

 幼い頃からことあるごとに抱かれ続けてきた私たちにとって、
お父様のお膝はお椅子と同じ。『お座りなさい』と言われれば、
素直に座ります。家庭教師の先生でも、学校の先生でも、いえ、
見知らぬ人のお膝にだってごく自然に腰を下ろしますが、自分の
お父様のお膝はやはり誰にとっても格別でした。
 座り慣れてるせいか他の誰よりもお尻が優しくてフィットして
心が落着きます。

 お灸のお仕置きに限りませんが、子供にとって辛いお仕置きを
受けなければならない時は、そのショックが少しでも軽減される
ようにと、こういう形で待たされることが多いようでした。

 お仕置きは見知らぬ人からの闇討ちではありません。沢山沢山
その子を愛してきた人がその子の危険を察知して発する危険信号
みたいなものですから、他の人からやられたら悲鳴のあがるよう
な辛い体験も「静かになさい」という一言だけで、その子は歯を
喰いしばって我慢できるのでした。

 お仕置き前の緊張感のなか、お父様方が畳の上で車座になって
雑談されていますが、正座されているその膝の上にはそれぞれの
お子さんたち、つまり六年生のお姉様方が腰を下ろして頭を撫で
てもらっています。

 私はおじゃま虫なわけですが、お父様の背中に張り付くことは
許されていました。

 しばしの休憩の後、最初に口火を切ったのは、進藤のお父様。
つまり瑞穂お姉様のお父様でした。

 「それでは、よろしいでしょうか。当初は一斉にお灸をと考え
ておりましたが友理奈ちゃんの落ち着く時間も必要でしょうから
今回は一人ずつやっていきたいと思います。まずは瑞穂からやら
せていただきますけど、よろしいでしょうか」

 瑞穂お姉様が初陣を飾ることに他のお父様たちも異議はなく、
二人は車座の中心へと進みます。
 そこが、言わば子供たちの刑場というわけです。

 もうこうなったら覚悟を決めるしかありませんでした。


 瑞穂お姉様と進藤のお父様は、まずお互いが向かい合って正座
します。すると……

 「お父様、お仕置きをお願いします」
 瑞穂お姉様は畳に両手を着いてご自分のお父様ご挨拶。

 お仕置きを受ける相手に『お願いします』は変かもしれません
が、虐待されるわけじゃありません。愛を受けるわけですから、
これは必要なご挨拶なんだよ、とお父様から教えられていました。
 もちろん小暮家だけではありません。他の五つの家でもこれは
共通の作法でした。

 「それでは始める。みなさんの見ている前だからね、みっとも
ない声は出さないように……いいね」

 「はい、お父様」
 瑞穂お姉様は健気に答えます。
 でも、心の中は震えていたはずです。女の子がこんなにも沢山
の人たちの前でお股を晒してお灸を据えられるなんて、五年生の
私が想像しただけでも恐ろしいことですから、六年生なら、なお
さらだったに違いありません。

 『私の時は河合先生とお父様だけだったからまだよかったけど』
 私がそう思って辺りを見回すと、それまで車座になって座って
いた親子が、みんな瑞穂お姉様のお股がよく見える場所へと移動。
みんなが特等席に陣取っていました。

 今なら当然虐待でしょうけど……でも、お父様たちは大真面目
でした。

**********************

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Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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