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小暮男爵/<第二章> §2 おじ様たちのお仕置き②

小暮男爵/<第二章>

****<§3>****/おじ様たちのお仕置き②/****

 「朱音ちゃん、今度はおじさんの処へいらっしゃい」

 高梨のおじ様も中条のおじ様と同じように膝を叩きますが……
ちょっとした事情があって、私、そこは素直に行けませんでした。

 高梨のおじ様は高梨庄治とおっしゃって、お父様のお話では、
南米にいくつもコーヒーやオレンヂの大農園を所有している超の
つくお金持ちなんだそうだけど、私にとってはそんな事どうでも
いいことなの。……問題は頭なのよ。

 おじ様には頭には髪の毛が一本もなんだもん。そのくせ顎鬚は
あるんだから……不気味でしょう、そんな姿って。
 男の人の中には髪の毛のない人もいるみたいだけど、女の子は
みんなそれが自慢だもん。もしそれがない子がいたら、それって
手や足がないくらいショックだと思うのよ。

 だから、このおじ様だけはなるだけ近寄らないようにしてきた
んだけど……

 「どうした、朱音、行きなさい。高梨のおじ様に失礼だよ」
 お父様にもこう言われたんだど……

 私、たまらず、お父様のソファへ戻っちゃった。

 「ねえ、高梨のおじ様だけはスルーさせてよ」
 私、お父様の耳元でそっと囁いてみた。

 「どうしてだ……」
 お父様はつれない返事で……

 「だってえ~~」
 私もね、人を差別するようなことはしてはいけないとわかって
るから、そこははっきりとは言いにくいのよ。
 だけど、このおじ様だけは生理的に受け付けないんだもん。
 前に握手したら、身体じゅうに電気が走ったわ。

 でも、お父様は男性でしょう。そんなことお構いなしなのよ。

 「どうしてだめなんだ?……ん?……まさか、高梨のおじ様が
スキンヘッドだからだなんて言うんじゃないだろうな」

 「えっ……」
 本当はそうなんだけど、『そうです』とは言いにくかった。

 「お父さんがお前に命じてるのはおじ様方からのお仕置きだよ。
そんな事許されると思ってるのか?」
 お父様、怖い顔で睨むもんだから、私、思わず口を尖らしたら
……

 「そんな聞き分けのない子にはもっと厳しい罰が必要だな」
 なんて、言い出すの。

 幼い頃だったら、お父様に抱きついて、『あたし、絶対に嫌。
絶対、絶対、嫌、嫌、嫌』って駄々をこねるんだけど、さすがに
中学生になっちゃうとそれもやりにくくて……。

 「いいかい、朱音、女の子は自分に与えられたところで生きて
いかなければならないんだ。好き勝手を言ってあれこれえり好み
してみても決して幸せにはならないんだよ。高梨のおじ様が禿げ
てるから嫌だなんて、お前が決して言ってはいけないことだ」

 「そんなこと言ったって女の子には生理的にどうにもならない
ものもあるのよ」

 「何が『生理的に』だ。そんなの付き合う前から毛嫌いしてる
だけじゃないか」


 親子でぶつくさ言いあってると、少し離れた処から声がしたの。

 「もめてるみたいですね。私も娘がいますから、それはわかり
ます。佳苗も私にウイッグを着けろってうるさいですから……」
 高梨のおじ様は自慢のスキンヘッドを撫でた。

 「普段は持ち歩いてるんですが今日は必要ないだろうと思って、
うっかり家に置き忘れて出てきました。私は、パスしましょう。
お嬢さんを困らせてもいけないでしょうから」

 高梨のおじ様がせっかくこう言ってくれたのに、お父様むきに
なっちゃって……

 「とんでもない。いやはや躾のできていない娘でお恥ずかしい。
……ほら、こっちへ来るんだ。とんだところで恥をかいた」
 お父様、そう言うと私の手をぐいぐい引っ張って行って高梨の
おじ様が座るソファの前へ連れて行ったの。

 「ほら、突っ立てないで、ちゃんと膝まづいてお願いしないか」

 もう、この後は、有無も言わさず全て強制。

 「何をぼ~っとしてるんだ。高梨のおじ様に『お仕置きをお願
いします』だろう」
 お父様は上から目線で膝まづいた私の顔を睨みます。

 「お仕置きをお願いします」
 私、不満で不安で嫌だったけど、とにかく宣誓したの。
 私は女の子、それもまだ13なんだもん。お父様に睨まれたら
どうにもならなかったわ。

 ところが、事はそれで終わらなかったのよ。


 「いいですからパンツも脱がしてください。中学にもなって、
この程度の分別もつかないのなら、扱いは小学生並で十分です」

 『え~~~~いやよ、そんなあ~~~このおじ様に触れられる
だけでも電気なのにさあ~~』

 そう思ったけど、もうどうにもならなかった。

 「じゃあ、お父様のご要望もあることだし、いらっしゃい」
 高梨のおじ様に呼ばれて私はお膝の上にうつ伏せになったわ。
 だってここはノンストップで走ってる客車の中なのよ。今さら
どこにも逃げ出せないわ。


 おじ様の膝の上にうつ伏せなったら、もう、まな板の鯉の心境。

 「では、いくよ」

 高梨のおじ様がこう言った直後だったわ。
 いきなりスカートが捲り上げられ、ショーツまで下ろされたの。

 「いやあ、エッチ。だめ~~」
 思わず声が出た。
 
 でも、振り返ると、それは高梨のおじ様の手じゃなかった。

 『お父様!』

 私のパンツを脱がしたのはおじ様じゃなくてお父様だったの。

 「ほら、どこ向いてるんだ。ちゃんと前を向いて……」
 たちまち雷です。

 そして、私の顔が再び前を向き直すと……
 「手加減はいりません。まだまだ不束な娘ですが、それなりに
鍛えてありますので、そこは大丈夫ですから」

 『鍛えてあるって、どういうことよ。それだけ私がお父様から
お尻を叩かれてたってことなの』
 そんなことを思っているうちに最初の一撃がやってきた。

 「ピシッ」
 「ひぃ~~~~~」
 最初から痛みが脳天まで届くんだもんびっくりしちゃった。

 『最初はやさしく入ってよ』
 そんなこと思ってると……
 「ほら、どうした、お礼の言葉は……」
 お父様に言われて、やっと喉からお礼の言葉が出てきた。

 「ひとつ、お仕置きありがとうございます」

 『二つ目は、もういい』
 と思ったけど……

 「ピシッ」
 「いやあ~~~~~」
 たった二つでもう恐怖だった。

 「ふたつ、お仕置きありがとうございます」

 「ピシッ」
 「ううううううう」
 おじ様の手は大きくてお尻全体が痛いんだもん。

 『お尻ぶたれてて、どうして内臓が痛いのさあ』
 衝撃がお尻を突き抜けて内蔵まで圧迫する。ずとんという感じ
の鈍痛だった。

 「みっつ、ありがとうございます」

 「お仕置きありがとうございますだろう。言いなおしなさい」
 お父様がいつになく厳しい。

 「みっつ、お仕置きありがとうございます」

 「ねえ、もうやめてよ。子宮が押しつぶされちゃうよ」
 泣きべそかいても……

 「これくらいのことでだらしのないこと言わない。ほらほら、
あんよ、押さえててあげるから……」

 『え~~~そんな余計なことしなくていいよ』
 と思ってるうち、次のが来た。

 「ピシッ」
 「いいいいいいいい」

 『目の玉飛び出した。口から内臓だって飛び出しそう』
 足をバタバタ、上半身をモソモソ。お父様があんよを押さえて
くれてなかったらおじ様のお膝から逃げ出してたかも……

 もう、恥ずかしいなんて言ってられないくらい痛いさなの。
 こんなの初めて。痛い方に気を取られて恥ずかしいの忘れてる。

 「よっつ、お仕置きありがとうございます」
 本当はぶたれたらすぐにこれを言わなきゃいけないんだけど、
もう、この時はそれどころじゃなくなってた。
 
 『とにかく、終わって、終わって、お願い終わって……』

 「ピシッ」
 「いやあ~~~死んじゃう~~~」

 「大仰に騒ぐな。みっともない。中学生がこのくらいのことで」

 「だって、痛いもん」

 「痛いの仕方がないじゃないか、お仕置きなんだよ。ほらほら
またお礼の言葉を忘れてる」

 「いつつ、お仕置きありがとうございます」
 最初から気持なんてこもってないけど、この辺までくるともう
義務感だけでお礼の言葉を口にすることになるの。
 それでもお父様は残酷なことを言うんだから……

 「ちゃんとすらすら言えるじゃないか、だったらまだ大丈夫だ。
お前のはそもそもまだ我慢が足りないだけだ。……ほらラスト。
ちゃんと歯を喰いしばって」

 「ピシッ」
 「ひぃぃぃぃぃ」
 あまりの痛さに身体が浮き上がった!

 「……はあ、はあ、はあ、はあ、……やっと終わったあ」

 「何がやっと終わっただ、高梨のおじ様に失礼だぞ」

 「だってえ~」
 甘えてみたけど……

 「お礼の言葉!」
 ぴしゃっと言われてしまう。

 「は~~い。むっつ、お仕置きありがとうございました」

 『もう、息も絶え絶え。お尻をぶたれてるだけなのにどうして
こんなに息が苦しいんだろう』

 「よし、よくがんばった」
 お父様はこう言ってパンツを元の位置に戻してくれたけど、私
はしばらく高梨のおじ様の膝から起き上がれなかった。

 たった六つの平手打ちで大仰って思うかもしれないけど、その
くらいおじ様の平手は痛かったの。

 「ほら、いつまで高梨のおじ様の膝にお邪魔してるつもりだ。
重たいだろうが……あらためて、感謝申し上げないか」

 お父様に注意されてやっと起き上がることはできたんだけど、
私たちのお仕置き、これで終わりじゃないのよ。

 おじ様のお膝を下りた私は再び床に膝まづいて胸の前で両手を
組んで……そう、例のあのポーズをとってお礼の言葉を言ったの。

 「高梨のおじ様、今日はお仕置きありがとうございました」

 「はい、よく頑張ったね。ショーツまで取られちゃったから、
恥ずかしかったでしょう」

 『当たり前でしょう。死にたいくらい恥ずかしかったんだから。
ショーツ脱がしたのお父様じゃなかったら、あんたに噛み付いて
るところなんだったんだから……』
 きっと興奮してたんでしょうね。その瞬間、私、過激なことを
思ってた。もちろん本当に噛み付いたりしないと思うけど、でも、
そのくらい恥ずかしかったのは事実よ。

 そんな私の気持をお父様が察したのね。こんなこと言うのよ。
 「何て顔してるんだ。お前はいつまでたっても子どもだなあ。
そんなことだからまだまだパンツを脱がすお仕置きが必要になる
んだ。いいかい、高梨さんに限らず、ここにいらっしゃるおじ様
たちは、どなたもお前がこれからお世話になるかもしれない方々
ばかり。ひょっとしたら、この先お前が『お父様』と呼ぶことに
なるかもしれない人たちなんだぞ。もっと心を込めて感謝を伝え
ないか」

 「え~~~」
 私は口を尖らせます。

 『お仕置きされてお礼だなんて、お父様だって嫌なのに……』
 ぶつくさぶつくさ心の中で思っています。そのあたり、確かに
まだ私は子どもでした。
 すると、高梨のおじ様が……

 「まだ、中学の1年生。そんな取り繕ったマネなんかできなく
ても、十分が気持は伝わりましたから……」
 お父様にこう言ったあと、今度は私に向かって……

 「今日は良く頑張ったから君にこれをあげておこう。おじさん
の気持だから受け取ってくれるかな」
 そう言って、おじ様は何やら小さな紙切れを手渡したのです。

 『何?これ?』
 それは何の変哲もない名刺のように見えました。

 「ひょっとしたら、将来、君の役に立つかもしれないからね」

 『?????』
 不思議がる私の手元をお父様も覗きにきます。
 そして、慌てたように……

 「高梨さん、これはいけない。この子には過分すぎます」
 と、お父様は私がせっかくもらった名刺を取上げたのですが、
高梨のおじ様は……

 「大丈夫、私の気持ですから……このようなものが役立たない
人生の方が女の子は幸せだけど、お守りとして取っておきなさい」

 大人たちは何やら騒いでいましたが、私にしてみたら、それは
綺麗な花柄の名刺にしか見えませんでした。

 よもやこんな名刺一枚で、びっくりするような大金が銀行から
借りられてしまうなんて、その時は夢にも思わないことだったの
です。

 結局、最後はお父様の方が折れて……
 「朱音、おじ様からのご好意だから大事にしまっておきなさい」
 となったのでした。


 実は、高梨のおじ様とお父様が私をお仕置きしている間、他の
おじ様たちは、バーカウンターでお酒を召し上がったりタバコを
燻らせたりして小さな声で雑談しておいででした。

 もちろん、私の裸のお尻を見たからといって、私の悲鳴に笑顔
でこたえたからといって、それを非難する人などおりませんが、
そのようなことはなさらないのが紳士のたしなみだったのです。

 そのバーカウンターに向けてお父様が声をかけます。

 「大臣。お願いできますか?」

 こう呼ばれて顔をこちらに向けたのは佐々木のおじ様でした。
 おじ様はこのサロンカーのオーナー。鉄道会社や駅前デパート、
不動産業などで財を成したあと、政界にも進出されて、大臣まで
つとめられた経験がおありなので、六家のお友だちからは親しみ
を込めて『大臣』と呼ばれていたのでした。

 そんな偉いおじ様なんですが、私、おじ様と目があった瞬間、
思わず顔を背けてしまいます。
 だって、これまでのことで十分お尻は痛いですし、何より普段
ぶたれたことのないおじ様にオモチャにされているわけですから、
『またか……』という思いがあったのはたしかでした。

 そんな小娘の胸のうちなんかとうにお見通しのおじ様は、私に
近づくと、おじ様の方が床に膝まづいて私の両手を取ってこんな
ことを言います。

 「もう、嫌だ?でも、子どもの君はそれを受けなきゃいけない
立場にあるんだよ。それも、やっかいなことにイヤイヤをしたり
悲鳴をあげたりしないで、おとなしく罰を受けなければならない。
それが良家に生まれた娘の義務なんだ」

 「だって、私は孤児で、お嬢様じゃないわ」
 こう言うとおじ様は笑って……

 「たしかにそうだけど、私たちは君たちを孤児だなんて思って
育てていないもの。君たちは私たちの娘として育てられているん
だよ。可哀想なみなし児にご飯を食べさせてるだけじゃないんだ。
君たちは世間を知らないから、ここでの暮らしがごく当たり前の
ものだと思っているかもしれないけど、実はここの暮らしぶりは
かなり特殊で、どこのお嬢様にもひけを取らないくらい恵まれて
るんだ」

 「そうなの?」

 「そうだよ。こんなに恵まれた生活を約束された孤児なんて、
日本国中どこにもいないよ。だから君は小暮お父様のこのご恩に
報いなければならない。世間では、お金持ちの娘はいつも贅沢な
暮らしをして良いことずくしだと思われがちだけど、実際は……
お勉強、立ち居振る舞い、習い事……大変なことは沢山あるんだ。
お仕置きもそう。その家の娘らしくその家の品格を失わないよう
に罰を受けなければならない。どんなに痛くても恥ずかしくても
簡単に泣き叫んじゃいけないんだ。…………私の言ってること、
わかるよね?」

 「はい」

 「よし、ではね。今回のお尻叩きのお仕置きは私でおしまいに
しよう。実は、進藤のおじ様は、あまりお尻叩きをやりたくない
みたいなんだ」

 「ふう」
 私、その言葉を聞いたとたん思わず肩の力が抜けて息をついた
んだけど、これって良いことばかりじゃありませんでした。

 「その代わり、二人分ということで、これを使うよ」

 佐々木のおじ様が取り出したのは学校でもよく使われるゴムの
パドル。ケインのような切り裂くような痛みこそありませんが、
平手より痛いのは確かです。

 「……(ごくん)」
 私は生唾を飲んだだけ。答えたのはお父様でした。

 「結構です。朱音も中学生ですし、そのくらいは覚悟してるで
しょう」

 「してない。してない。だってそれ、学校で使う時は女の先生
なんだもん」
 私は確かにこう言ったんですがお父様も佐々木のおじ様も子供
の意見などは無視。大人たちだけで話を進めてしまいます。

 「大丈夫です。私も自宅で何度かこの子に使ったことあります。
他に何かありますか」
 お父様は、ご自分がお仕置きを受けるわけではありませんから、
まったくの笑顔です。

 すると、今度は進藤のおじ様が……
 「私はスパンキングの方は無調法なんでご遠慮したいんですが、
ただ、朱音ちゃんの様子をスケッチしてみたくて……よろしいで
しょうか?それで……」

 「……えっ……」
 私、思わず息が詰まったけど、『嫌』って言えなかった。
 すると、お父様がここでも……

 「本当ですか?それは楽しみだ。この子では素材不足かもしれ
ませんが、どうかお願いします」

 私、怖くなってお父様の袖を引きましたが……

 「『師匠』は実業家でもあるけどクリエーティブな仕事を沢山
なさってる芸術家肌だから、絵も素人画家の手慰みの域ではない
んだ。展覧会での入選作もたくさんあるしね。こんな高名な先生
の絵のモデルになれるなんて、とっても名誉なことじゃないか」

 「やめてよ~~そんな恥ずかしいこと嫌よ」
 私が困惑した表情を見せると、さらに……

 「いいかね朱音。前にも話したけど、ここにいるおじ様たちは
日本のなかでもトップクラスの名士の方々ばかりなんだ。たとえ
それがお仕置きであっても、本来、お前なんかが望んで触れ合う
ことのできる人たちではないんだよ。『袖すり合うも他生の縁』
といってね、女の子はどんなに些細なご縁でもそれを大事にしな
きゃ。何より、間違ってもお前の側に損になることは何一つない
んだから、安心しておじ様たちに任せたらいいのさ……」

 「えっ……う、うん」
 お父様はこうおっしゃいますが、これまでだって二人のおじ様
たちから散々甚振られている私としては『私、今でもお尻が痛い
の。これのいったいどこが損のないことなのよ!』ってツッコミ
たい気分でした。

 でも、事情はともかく、私はこうした大人たちの中にあっては
何の力もない中一の娘でしかありません。私が佐々木のおじ様の
膝の上でパドルを受け、その様子を進藤のおじ様がスケッチする
という事実だけは動かせないみたいでした。


 佐々木のおじ様の膝上に乗った私は、フリルのスカートを自ら
まくり上げ、白い綿のショーツを晒します。
 それは小学生時代と違いお仕置きをしてくださる大人の人たち
に余計な手間をかけさせない。ハレンチなことをさせないという
女性としての気配りで、学校で習ったお仕置きの作法でした。

 さっそく最初の一撃がお尻を襲います。

 「パン」
 「うっっっっっっ」
 鈍い音が室内に響くと、ズドンというような重い感じの痛みが
お尻全体を包み込みます。

 「ひとつ、お仕置きありがとうございます」
 こう言うしかありませんでした。

 「パン」
 「ひぃぃぃぃぃぃ」
 画鋲を踏んで一瞬で飛び上がるような、そんな痛みじゃありま
せん。子宮を揉まれているような鈍い鈍い痛みなんです。

 「ふたつ、お仕置きありがとうございます」

 「パン」
 「あっっっっっっっ」
 悲鳴はあげませんけど、たった三発で脂汗が噴出します。
 「みっつ、お仕置きありがとうございます」

 「パン」
 「やっっっっっっっ」
 これで四発目。まだ四発なんだけど、私はもう逃げ出したくて、
逃げ出したくて仕方がありません。

 『もう、勘弁してえ~~~』
 平手の時の方がお尻に当たった瞬間は痛いけど、パドルの方が
苦しいんです。ですから、お礼の言葉を言うまで時間がかかって
しまうのでした。

 「よっつ、お仕置きありがとうございました」

 そして、次のパドルがお尻にやって来そうになると……
 「……!!!……」
 思わず身体が固くなります。

 そうしたことは、お尻叩きのお仕置きを繰り返しているお父様
やお父様たちはよ~く御存知です。
 たとえ子供が悲鳴は上げなくても、ご自身の膝の感触だけで、
お尻叩きの効果が上がってるかどうかを判断なさるのでした。

 「痛いかい?」
 身体を固くした私に佐々木のおじ様が尋ねます。

 「……」
 でも、私は首をふりました。
 もちろん、お尻は痛くてたまらないわけですが、それよりも、
このお膝を早く下りたい。そのためには痛くても頑張らなくちゃ。
そう思っていたのでした。

 ところが、おじ様はここで休憩を取ってしまいます。
 それは、先ほどからデッサンしている進藤のおじ様に絵を描く
時間をプレゼントするため。
 私は佐々木のおじ様が休憩をとっている間、ずっと大人たちの
視線を感じながら晒し者になっていなければならないのでした。

 それだけじゃありません。佐々木のおじ様がドキッとするよう
なことを小暮のお父様におっしゃるのです。

 「中学生といっても、まだ一年生なので六回にしたんですが、
少し少なかったかもしれませんね。よく躾がきいてらっしゃる」

 「この子は、姉妹の中でもお転婆で……こういうことに慣れて
るんですよ。大丈夫です。カンニングのお仕置きは自宅に帰って
からじっくりやりますから」
 と、お父様。

 もう、それを聞いただけでも、私、卒倒しそうでした。

 「さあ、それでは終わらせてしまおうか」
 佐々木のおじ様は小休止の間燻らし続けたシガーを灰皿で消し
終えると再び動き出します。

 「パン」
 「あっっっっっっ」

 私、この時、悲鳴は漏らしませんでしたが、もっと別なものを
漏らしてしまったのです。

 「……(あっ!)……」
 パンツにちょびっとですけど、お漏らし。

 ショーツからオシッコが漏れ出ていないことを肌で感じてから
お礼の言葉を口にします。
 「いつつ、お仕置きありがとうございます」

 でもね、次はそうはいきませんでした。

 「さあ、最後はとっても痛いからしっかり頑張るんだよ」
 佐々木のおじ様は注意してくださったのですが……

 「パン!!!」
 予想以上の衝撃がお尻を打ち据えます。

 「……(あっ!?)……」
 と思った時はもう太股をオシッコの雫が駆け下りていました。

 こんな時、男の子はとめられるみたいですけど、女の子はもう
いったん堰を切ったらどうにもなりません。

 『やったあ』
 私はその瞬間から放心状態になってしまいます。

 「あ~~あ、しょうのない子だ」
 というお父様の声。

 「大丈夫です。こんなことに驚いていたら子供のお仕置きなん
てできませんよ」
 と、佐々木のおじ様の声も聞こえます。

 でも、私はと言うと、どうしていいのか分からず、おじ様の膝
から下ろされると、ただただ立ちすくんでいました。

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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