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駿と由梨絵の物語

駿由梨絵物語

 < 第 6 話 >

 由梨絵の部屋は八畳間。

 昔のことで床はフローリングではなく畳敷き。その畳に大きな
ペルシャ絨緞が敷き詰められているのは先ほどまでいた居間と
同じ。昔はこんな部屋の造りが多かった。

 壁一面を覆うガラス戸付の本棚や勉強机、ベッドなどはすべて
木製でマホガニー。いずれも子供が使うにしては大振りだから、
多分、伯爵から譲り受けたものだろう。いずれも、まだ物の価値
が分からない子供が使うには贅沢過ぎる家具ばかりだ。

 これでもし、犬のぬいぐるみやピンク色のスタンド式ハンガー
ラックに可愛い制服が掛かっていなければ、『なるほど、ここが
伯爵の書斎か』と、誰もが思うに違いなかった。

 ただ、それはあくまで大人の場合で、駿君の興味は、そこには
ない。

 「へえ~講談社の『少年少女文学全集』がある。こちらの方が
学校の図書館にあるのより新しい版だね。……あっ、ブリタニカ
……少年朝日年鑑も毎年揃ってる。……凄いなあ~……これって、
おじさんが揃えてくれたの?学校の図書室と同じじゃないか」

 駿ちゃんは部屋に入るなり、天上まで届くような大きな本棚を
見上げると、その場で釘付けになっている。

 そんな羨望の眼差しを向ける駿ちゃんとは対照的に、由梨絵は
あっさりしたもので……
 「なんだ駿ちゃん、そんなご本に興味があるんだ。いいわよ、
見たきゃ見ても……」

 「いいの?」

 「だって、どうせ、私はその中にある本は読まないから」

 「どうして?」

 「だって、学校のお勉強にそんなの必要じゃないし……私には
教科書と参考書とマンガがあれば十分。だいいち、私、そんなの
見てる暇がないもの」

 「そんなに忙しいの?」

 「忙しいなんてもんじゃないわ。殺人的なスケジュールなんだ
から……」

 「殺人的?オーバーだなあ」
 駿君の目が泳ぎ、少し笑ったようにも見える。

 「オーバーじゃないわよ。ねえ、私、いくつ習い事抱えてると
思ってるの?」

 「いくつって……学校でやってるあのピアノだけじゃないの?」

 「違うわ。バカいわないでよ。あれは学校でのことでしょう。
それだけじゃないんだから……お琴、いけばな、日舞、英会話、
書道、水泳、……あっ、絵画教室も……」

 「す……凄い……それ、全部一人でやってるの?」

 「そう、一日二つ掛け持ちしてるところだってあるんだから。
一週間で習い事のないのは今日だけ。土曜日の午後だけなの」

 「へえ~~そんなに……」
 駿君は驚いたあと、続ける。
 「でも、やりたいことがそんなにたくさんあるなんて、君って
欲張りなんだね」

 「何言ってるの。あんた、バカじゃないの!」
 由梨絵はベッドに飛び乗ると、ポンポンとその場でジャンプ。
駿君の顔を呆れ顔で見下ろす。
 それを数回やってから自分もベッドに腰を下ろした。

 「変なこと言わないでよ。一つや二つならともかく、そんなに
沢山のこと、いっぺんにやりたいわけないでしょう……あ~あ、
駿ちゃんって何にも知らないのね。」

 「やりたいわけないって……じゃあ、なんでやってるのさ」

 「だから、おじ様に言わせると、この家で暮らす以上それなり
の素養や教養が必要なんだって」

 「お父さんにやらされてるんだ」

 「ま、そういうことね。……でもお父さんじゃなくてオジサン」

 「それなのに、君、給費生なの?」

 「そうよ、いけない?」

 「だって、給費生っていうのは、家が貧しくて学費が払えない
子がなるんじゃないの?……君んち、そんなに貧しいの?」
 駿君は由梨絵の部屋を見回す。

 でも、部屋のどこを見ても、そんな感じは微塵もなかった。
 ここは見るからにお嬢様って感じの部屋だからだ。

 「さあ、どうかな。実のところおじ様がどれくらいお金持ちで、
どれほど貧乏か、なんてこと、私には分からないの。おじ様は、
『私も戦争で多くの物を失ったが、まだまだお前を育てるだけの
お金は残ってるから安心しなさい』って言ってるわ……」

 「ふ~~~ん」

 由梨絵は、また自分のベッドをトランポリン代わりにして飛び
跳ねている。この時、俊君の目に由梨絵の白いパンツがチラッと
見えた。
 自宅にいる気楽さからだろうかベッドに腰を下ろす時も立膝だ。

 もちろんパンツが見えたと言ってもほんの一瞬、偶然の出来事
なのだが、その瞬間、駿君の顔が思わず笑顔になる。
 駿君だって男の子ってことだ。

 さて、話を戻そう。
 今も昔もそうだろうが、親の経済状況を細かく知ってる子ども
なんて、実はそう多くはないのだ。

 「……でもさあ、変だよね、こんな大きなお家に住んでるのに
わざわざ給費生だなんて……」
 駿君が不思議がると……

 「みたいね……でも、うちの場合そうなの……おじ様からは、
『もし、おまえが給費生でなくなったら、学校はやめさせて施設
に入れる』って言われてるの」

 「ふ~ん、厳しいんだ。……で、もし、学校をやめさせられて、
……それから、どうなるの?……施設に行くの?」

 「さあ、知らないわ、そんなこと……考えたくないもの。……
今は、おじ様に気に入られるように頑張るだけよ」
 由梨絵は両手を頭の後ろで組むとベッドに仰向けに倒れこみ、
焦点の定まらない目で天井を眺める。

 『そうか、由梨絵ちゃんって、こんな立派なお屋敷に住んでて
も、そんなにパッピーじゃないんだ』
 駿君は口に出さなかったが由梨絵ちゃんに思わず共感していた。

 思えば、駿君も由梨絵ちゃんも同じ孤児。舎監のおばちゃんや
シスター先生、みんなから優しくしてもらってるから寄宿舎での
生活にもそんなに不満はないけど、もし本当はやりたくないこと
を先生達から『どうしてもこれをやりなさい』って命じられたら
……『僕、そんなの嫌です』って、きっぱり言えるだろうか……

 そこは駿君にしても自信がなかった。

 もしこれが本当の親なら、……少しぐらい我がまま言っても、
命じられたことに膨れっ面しても、親子の絆が断ち切られること
ないって信じられるんだろうけど、どんなに親切にしてもらって
いてもこれが他人となると、心が勝手にブレーキをかけてしまう。

 駿君だって、寄宿舎で知らず知らず大人たちに気を使っている
自分の姿が分かっていた。

 そんな実の親に育てられていない者同士。俊君は由梨絵ちゃん
に普段からシンパシーを抱いていて、この日も彼女がお仕置きを
受けると聞き、園長室の近くで様子を窺っていたのだ。

 「ねえ、由梨絵ちゃんはおじさんからお仕置きってされたこと
ってあるの?」

 「えっ、!?」
 突然尋ねられて、由梨絵は困惑する。

 『ない』と言えば嘘だけど、『ある』とは言いたくなかった。
 当時は、親や教師が体罰で子ども正しい道へ導くことは当然の
躾と考えられていたから、由梨絵だってそこは例外ではなかった
のだ。

 ましてや二人が通っていた学校は、その教義で子供への体罰を
是認するキリスト系の私立学校。一つの過ちが、学校でぶたれ、
家でぶたれ、あげく日曜日のミサの席でもぶたれる、なんてこと
まである世界だった。

 お仕置きが、人を代え場所を代えて一度や二度ではすまないと
いう現実を二人は共有していたのだ。

 しかし、それでも女の子は、自分の恥ずかしいことを他人の…
それも男の子になんか絶対に口にしなかった。

 だから、どう答えてよいものか、迷いながら黙っていると……
二人とは関係ない場所から声がする。

 「俊君、女の子ってのは聞分けが良いからね、滅多にお仕置き
なんて受けないんだ。由梨絵だってそれは同じさ」

 それは今まさに駿君のために机を運んできた伯爵の口から出た
言葉だった。

 「よし、これでいいだろう」
  伯爵は間に合わせにしては立派すぎる机と椅子を由梨絵の机
の脇にデーンと備え付ける。

 二人仲良く勉強しなさいというわけだ。

 「さあ、駿君、君はこの机で宿題をやってごらん」

 机を二つ並べて、二人は学校から出された課題をこなし始める。
 伯爵はその様子を口に出さず後ろでただじっと見てつめいたが、
二人の力の差は歴然だった。

 例えば算数のドリル。
 一応、一時間が規定時間だが、由梨絵はそれを30分もあれば
解けるだろう。これだってクラスの中では早い方かもしれない。
ただ、同じ問題を、俊君にかかれば鼻歌交じりで僅か12分だ。

 『やれやれ、もう終わったみたいだな。ほとんど解くスピード
が大人なみだ。これじゃ由梨絵がかなうわけがない』

 伯爵が俊君のスピードに驚きつつ、由梨絵の様子も気になって
しばしそれを見ていたのだが……

 『おや?……あいつ、どこへ行った?』
 気がつくと、駿君が席についていない。

 彼は、ドリルを仕上げると、さっさと席を立って本棚の方へと
移動。勝手にガラス戸を開くと、ブリタニカや少年朝日年鑑など
を手当たり次第に物色して床に置き、彼が腰を下ろした床には、
すでに置けるだけの本が積み上げていたのである。

 伯爵が再び視界に捕らえた駿君は、まるでウォークマンを聞い
てるように身体全体が小気味よく揺れている。聞いたことのない
メロディを口ずさみ、顔は笑っている。彼を見ていると、まるで
マンガでも読んでるかのように楽しげだ。

 『なるほど、これが一人漫才というやつか。確かに楽しそうに
見えるが、目だけは食いつきそうな勢いで本を読んでる。今にも
獲物に飛び掛ろうとしている、ヒョウかライオンってところだ。
彼にとっては世にある知識がエサ。今は新しい知識が次から次に
頭の中に入って来てるから、ご機嫌って顔だな』

 伯爵は、本来、由梨絵の為に買ってやった本を駿君がむさぼり
読んでいる姿を見ても不快感はまったくなかった。むしろそれを
微笑ましく感じていたのである。

 ところが……
 次の瞬間、俊君はそれまでとはまったく別の種類の本に手を出す。

 『あっ、駿ちゃん、それは違うぞ』
 思わず、伯爵は声を出しそうになったが……

 『ま、いいか』
 と、次の瞬間は苦笑してそれを許してしまう。

 駿ちゃんが手にしたのは、由梨絵がつけていた……というか、
つけさせられていた日記。
 表紙が革張りで立派そうに見えるがこれはそもそも本ではない。

 このノートは由梨絵がまだ幼稚園の頃、文章を書く習慣を身に
つけさそうと伯爵が強制的につけさせてきたもの。
 よって内容は陳腐、文章も稚拙、俊君の知的好奇心を刺激する
ようなものではなかった。

 だからだろう、伯爵は駿君がそんなものすぐに厭きると思って
いたのだ。

 『???』

 ところが、伯爵のその思惑は外れる。
 俊君がその本をなかなか手放さないのだ。いや、それどころか、
気がつけば俊君はその本を読み返している。それはもう熟読して
いると言ってよかった。

 と、ここで、由梨絵があたりの異変に気づく。

 彼女は机を並べていた俊君がいないことに、今の今、気づいた
みたいで、あたりを見回し、彼を見つけて、その危険に恐怖した
のである。

 「ちょっと、何するのよ!!!」
 由梨絵は血相変えて俊君に襲い掛かった。

 「何、勝手に人のもの見てるのよ!!」
 捨てゼリフを残して日記帳を取上げる。

 「……ごめん……」
 駿君も、一応、謝りはしたものの、どうやら、解きすでに遅し
の感だった。

 駿君は計算だけが早いのではない。文字を読むのもそれを理解
するのも人並み外れて早いのだ。
 だから、由梨絵が日記帳を取り戻した時には、すでに俊君の頭
の中には、その日記の内容が完全にインプットされていたに違い
なかった。

 日記は取り戻せても、その記憶までも取り返すことはできない
わけだから由梨絵にしても万事休すだ。

 昔の恥ずかしい記憶が、これからずっと劫駿君の頭の中に残る
のかと思うと由梨絵は全身鳥肌が立つ思いだったのである。

 ところが、そんな由梨絵に対して伯爵は冷たい一言を言い放つ。

 「由梨絵、まだドリルが終わってないんだろう?」

 「えっ!?……あ、はい、そうです」

 「だったら、机に戻りなさい。俊君はもう終わったから他の事
始めたんだよ」

 「はい、おじ様」
 由梨絵は日記を抱いて素直に引き下がるしかない。
 このあたり、良家の子女は決して悪あがきをしなかった。

 すると、由梨絵がドリルの宿題に戻ったのを確認してから……
伯爵は駿君に対して手招きをする。

 そして、そばまで来た駿君の肩を抱くと、何も言わずに部屋の
外へ……

 廊下を少し歩き、普段は使われていない部屋へと案内する。

 そこは床の間のある部屋ではあったが、中に置いてあるのは、
古ぼけた家具や大きな花瓶、埃をかぶった掛け軸や鳥の剥製など、
どうやら納戸として使われている部屋のようだった。

 二人は雑然と置いてある古道具の数々をよけながら窓辺の方へ
と進んで行く。

 「ここまでくれば、由梨絵にも二人の声は聞こえないからね。
………いいから、そこへ座りなさい」
 先に座った伯爵の勧めに応じ、駿君も窓辺に置いてある、これ
また埃を被った古ぼけたソファに腰をおろす。

 どうやら、伯爵は駿君と男同士の話し合いが持てる場を作りた
かったみたいだった。

 「ねえ、駿君。あの本は由梨絵が幼い頃に書いてた日記なんだ」

 「みたいですね。きっと幼稚園の頃ですよね。文章がとっても
上手だったから驚きました。僕は、幼稚園の頃、あんなに上手な
文章は書けなかったからビックリしました」

 「ああ、あの日記の文章かい。あれは、私が考えたものだよ。
由梨絵には、私の言う通り書きなさいって、命令しただけなんだ。
その方が書き方の練習にもなっていいだろうと考えてね。だから
原稿は私、書いたのはあの子ってわけ」

 「じゃあ、あれって本当のことじゃないんですか?」

 「あれって?」

 「幼稚園の帰り道。峠道で車を止めさせて、崖の傍まで行って
オシッコしたって書いてあったから……」

 「ああ、それね。もちろん本当だよ。あの子は、幼稚園時代、
はお腹をこわすことが多くて、ある日の帰り道、家までもとても
我慢できないって言うから、仕方なく人気のない崖の近くに車を
止めて用を足させたんだが、どうやら景色の良い崖の上でお尻を
捲るのが気持ちよかったらしくて、その後は、峠道に差し掛かる
たびに『オシッコしたい』と言うようになってしまってね……」

 「女の子がですか?」

 「女の子と言っても、まだ赤ちゃんみたいな時期だからあまり
恥ずかしいとは感じてなかったんだよ。私の方は『こんな処でも
誰かに見られるかもしれないからやめなさい』って叱ったんだが、
あの子もいったん言い出すときかなくて、往生したよ」

 「そのほかにも、色々書いてありましたけど……」

 「みんな読んだのかい?あんな短い時間で……」
 伯爵は笑うしかなかった。

 「ええ、まあ、……ざあっとですけど……」
 駿君は伯爵の苦笑に、一瞬まずかったのかなあとも思ったが、
今さらどうすることも出来なかった。

 「凄いな……君は……」
 伯爵は開いた口が塞がらないとでも言いたげに首を横に振る。

 「ま、読んだのなら仕方がない。だったら、分かると思うけど、
あの日記の最後は、たいてい、その日どんなお仕置きを受けたか、
が書いてあっただろう?」

 「ええ、まあ……」

 「あの日記は、私があいつをお仕置きした時に、反省の意味も
込めて、ことの顛末を日記として書かせたものなんだ。私がまず
子供らしい語り口の文章を考え、それを由梨絵が清書させたんだ。
だから由梨絵のやつ、あの日記を他の人に見られたくないんだ。
……それはわかるだろう?」

 「…………」
 駿君は何も答えなかったが、ちょっとビックリした。

 だって、あの日記にはとっても厳しいお仕置きがこれでもかと
いうくらいたくさん書かれてあったからなのだ。

 『こんなに優しそうな伯爵様なのにあんな厳しいことするんだ』
 駿君は思った。

 給費生の駿君にしてみたら、由梨絵ちゃんというのはお姫様。
 そのお姫様が、あんなことやこんなことまでお仕置きでされて
……そんなこと、にわかには信じられなかったのである。

 「そこでだ、知れてしまったことは仕方ないとして、あの日記
の中身は誰にも言わないで欲しいんだ。……由梨絵も恥ずかしい
だろうから」

 「……はい、大丈夫です。誰にも話しませんから……」
 駿君は唾を一口飲んだが、それが終わると二つ返事で答える。

 駿君があまりにあっさりし承諾したのでちょっと拍子抜けして
しまった伯爵だったが、やがて、笑みを浮かべながらこう言うの
だった。

 「ありがとう、君はまだ11歳だというのに、もう立派な紳士
なんだな。どこでそんな素養を身につけたのか……羨ましいよ。
うちの由梨絵なんかそれに比べたらまだ山猿だな」

 「…………」
 伯爵は謙虚にそう言っただけだが、この時、駿君の顔は真っ赤
になっていた。

 伯爵の言った由梨絵と山猿、二つの言葉が頭の中でリンクして、
駿君、由梨絵ちゃんの裸を連想していたのである。

 「目を開けてしゃべっている時はそれでも子供とわかるんだが、
目を閉じてしまうと、まるで大人と話しているような落ち着きが
あるから感心するよ」

 伯爵の褒め言葉に、駿君は、一瞬、戸惑った顔になったものの
……

 「…………ありがとうございます」
 結局は、お礼を言うことにした。

 すると、今度は……

 「そんな大人びた君にこんな事を頼んだら、君がどう思うか、
ちょっぴり心配なんだが……」

 「?????」
 伯爵の思わせぶった前振りに駿君はきょとんとした顔になる。

 「私の膝にこないか……君を抱っこしてみたいんだ」

 伯爵は古びたソファーにあらためて腰を下ろすと、手招きして
駿君を待ち構える。

 「………………」
 その瞬間、言い知れぬ不安が駿君の心を縛る。

 「なんだ、ダメかい?」
 決心がつかないまま、伯爵の言葉を聞く。

 これがもう少し幼い頃なら、駿君だって何も考えずにその膝に
飛び乗ったかもしれない。しかし早熟の彼には分別がありすぎた。

 『伯爵は悪い人には見えないけど……』
 駿君は思う。
 伯爵は今日であったばかりの一人の大人。つまり他人なのだと。

 ただ、その一方で、
『お世話になった伯爵の望みはきいてあげなければ…』とも思う
わけで、彼なりの葛藤がそこにはあったのである。

 そしてこれはあくまで理性の判断。駿ちゃんは恐る恐る伯爵に
近寄っていくと、ゆっくり回れ右。そうっと、自分のお尻を伯爵
の膝に下ろしてみるのだった。

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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