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〘 第11回 〙 ピロリーの二人

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第11回 〙 お仕置きのあとは……
***************************

<主な登場人物>


私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的には僕のママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

****************************
****<11>********************

 お姉様は学校へ出かける間際、女中さんからメンタム(メント
ールの入った傷薬)をお股に塗ってもらいます。これは私も何度
かお世話になりましたが、塗られた直後は何でもありませんが、
すぐに全身をかきむしりたくなるようなもの凄い衝撃が走ります。
ま、二三分もすれば落ち着きますが、30分くらいはメントール
特有のすうすうする感じが残って、『今はまだ謹慎中なんだ』と
思い知らされることになるのでした。

 お姉様は謹慎中の一週間こんな薬を一日六回も女の子の大事な
処に塗らなければなりませんでした。もちろんこれを自分で塗る
ことなんて許されていませんから、誰かしら大人の人の前でお尻
バンザイをしなければならないことになります。

 お姉様だってその時は『今はまだ謹慎中なんだ』という思いが
強くしているはずです。
 そんな思いを胸にお姉様は私の手を引いて登校するのでした。

 一方私はというと当時11歳。手を引いてもらわなくても十分
登校できる歳になっていましたがそんな事とは関係なくお姉様は
姉として、弟である私の面倒を見なければならなかったのです。
ですから、もし登校途中に私に何かあるとお姉様の責任になりま
す。

 それを知った私はお姉様を困らしてやろうと、わざとお姉様の
手を振りきり、塀をよじ登ったり高い崖のふちへ行っておどけた
りしてみましたが、さすがにそんな時はお姉様も怒ってしまって、
捕まると平手のスパンキングが待っていました。

 お姉様は私の半ズボンを脱がすと、あたり構わずお尻をピシャ
ピシャ叩き始めます。時にはクラスメートのいる前でもやるもの
ですから、さすがに私の方が観念してしまいました。

 学校では二人とも学年が違いますから別の教室で勉強していて
互いの様子は分かりません。ですが、真面目に授業を受けていた
と思います。とにかく厳しい学校で、授業中の私語はもちろん、
わき見やあくびですら見つかると助教師がそばにやって来て、手
の甲を軽く叩きます。こうなったら求めに応じて叩かれた右手を
そこへ差し出すしかありませんでした。

 すると、助教師は持っていた蝋燭を傾けてその手の甲に蝋涙を
垂らします。

 「…………」

 本来なら『熱いじゃないか!』と言ってやりたいところですが、
亀山の学校でそんなことを言ったら、今度は起立を求められ、教室
から連れ出されて教務の先生の処へ連れて行かれます。そこで待ち
受ける厳しいお仕置きのことを考えると、ここはやせ我慢して黙っ
ているほかありませんでした。

 特にお姉様の場合は謹慎中の身の上ですからね、普段だったら
お手々が白くお化粧するだけで済んだものが、いきなりお仕置き
部屋へ直行なんてこともありえます。あげく教務の先生から痛い
お土産をもらって教室へ戻ってくると、クラスメートが失笑する
中を通って自分の席へ戻らなければなりませんでした。

 月曜、火曜とそんなことがなかったみたいなので、お姉さまも
きっと緊張していたのでしょう。

 ところが人間慣れてきた頃が怖いというのは本当で、このまま
何事も起こらないみたいだな思っていた矢先、僕はお姉様を校庭
の裏庭で見かけてしまいます。

 彼女、しょうこにもなくピロリーに捕まっていました。しかも、
お義母様がせっかく免除してくださったオムツまで着けて。

 この時お姉様は一応制服を着ていましたが、スカートはすでに
捲り上げられていました。そこに飴色のオムツカバーに包まれた
お尻を発見したというわけです。

 「何々『この生徒、休み時間にお友だちととっくみあいの喧嘩
を始めたため、ここに晒し置くものなり』か」

 私は今日の登校時、お姉様からズボンもパンツも脱がされて、
お尻叩きされていたので、意趣返しとばかりわざと大人のような
抑揚をつけて、大きな声を張り上げて立て看板に書かれた罪状を
読み上げます。

 当然、お姉様は渋い顔でした。

 「しっ、しっ……帰れ。帰りなさいよ」

 私を追い払おうとしますが、あちらはあまり大きな声を出せま
せんから、それももどかしい様子でした。

 私はわざと大仰な身振りで辺りをうかがいます。というのも、
こうした場合は事故がないようお目付役の先生がそばにいるのが
普通だったのです。

 幸いその時は5メートルほど離れた処にお姉様の喧嘩相手の子
が晒されているのですが、先生はそちらに手を取られていました
から小さい声ならまだ出せましたが、私がなかなか離れてくれま
せんので、つい声が大きくなって…

 「だから、帰れって言ってるでしょう!」
 とうとうその声が先生に届いてしまったようでした。

 「由美子さん、なんて大声だしてるの。………あら、啓治君が
来てたのね」
 森脇先生が駆けつけます。

 「啓ちゃん、お姉様、もう少しここでご用があるから向こうへ
行っていなさい。ね」
 先生にこう言われたら引き下がるより仕方がありません。本当
は罪状の書かれた看板に引っ掛けてあるトォーズでお姉様のお尻
をビシャとやりたかったのですが、それは新たな姉弟(きょうだ
い)喧嘩のもとになると思って先生が私を遠ざけたようでした。

 えっ、そんなことができるのか?(^_^;)

 ええ、これができるんです。ピロリーに捕まった罪人のお尻は
先生の許可があれば生徒でもトォーズでピシャッとやれたんです。
僕もごく幼い頃はよくやっていました。

 でも小学校も高学年になると力もついてきますし色気もでてき
ますからね、先生たちが敬遠することが多くて……先ほど話した
公開処刑はむしろ例外で、10歳を越えた女の子が裸になってお
仕置きを受ける場合、男の子は閉め出される事がほとんどでした。

 この時も僕は鶏を追うように庭の外へと誘導されます。

 庭の入口にある木戸を出ると錠を下ろされてしまいましたから
これで万事休すって感じに見えますが、実は数々の探検の成果と
してこの裏庭を覗き見できる場所をすでに確保していましたから
早速そちらへ直行します。

 場所は時計台の最上部にある屋根裏部屋。時計台を登る階段は
子供が乗っても今にも抜け落ちそうだし、辺り一面埃だらけで、
蜘蛛の巣をいくつもかき分けなければならない困難な行程ですが、
すでに色気づいていた僕は興味津々、その程度の困難は大した事
ではありませんでした。

 「よし、ばっちり」

 壊れた板壁の隙間から二本のピロリーが見えた時は狂喜乱舞。
ただし、たどり着いた時は制服が真っ黒になっていました。

 かなり遠い距離からでしたから、何もかも鮮明に見えるわけで
はありませんが、意外にも下界からの声は聞こえてきますから、
それで十分楽しめます。

 腹這いになった私の股間はすでに半ズボン越しに床板を『窮屈』
『窮屈』と言いながら押し続けています。こんな事ほんの半年前
まではないことでした。

 えっ、この間の公開処刑の時だって同じじゃないか?(^_^;)
 確かにそうなんです。あの方が過激でしたし色々なものを見る
ことができたんですけど、あれはお義父様たちのお祭りのような
ものでお義父様たち大人は楽しめたでしょうけど、僕たち子供は
あの中で大人と一緒になっては楽しむことなんてできません。

 それに比べて今回は、独りでのぞき見というハレンチな方法で
すから、それだけでもググッと感じるものがあります。

 本当はこの時間、私にはピアノのレッスンがありますからさぼ
ればお仕置きなのですが、それにも増してこのショーは見たいと
思ったのでした。

 最初に目に飛び込んできたのは由美子お姉様のママ。そう森下
先生です。

 『えっ、先生、いつの間に来たんだろう?』
 僕の目はまずお姉様のピロリーに釘付けになります。

 「まったく、いつまでたっても世話をかける子ね。あなたは、
今、謹慎中の身なのよ」

 「わかってる」お姉様はちょっとふてくされたような小さな声。

 「よく言うわ。わかってないからこんな騒ぎを起こすんでしょ
うが……私は今、とっても忙しいの。これ以上、私の仕事を増や
さないで欲しいもんだわ」

 ママはそう言いながらもお姉様が挟まれている大きな厚い板を
一旦外します。

 「ごめんなさい」
 お姉様はほっと一息、ひょっとしたらこれで許されたと思った
のかもしれません。しかし、それは早合点でした。

 「ごめんですむなら警察はいらないわ」
 ママはこう言いながらお姉様のオムツを取り外し始めます。

 「…………」
 お姉様はこれで、自分がまだ許されていない事を知ったようで
した。

 それにしても、お姉様としては唯一身につけているものを剥ぎ
取られているわけですから本来なら『やめて!』とか何とか叫び
そうなものですが、お姉様はまるでそうなることが約束されてい
たかのように静かにしていました。

 「さあ、この台の上に乗りなさい」
 ママの指示で低い跳び箱ほどの高さの台に乗るとお姉様は再び
大きな厚い板に首と両手首を挟まれるのでした。そして、今度は
その台に乗った分、相対的に頭が下がりお尻が上がることになり
ます。

 その窮屈そうポーズのまま…
 「足を開いて………もっと………もっとよ………まったく、…
…何ちまちまやってるの。私は両方の足を開きなさいって言って
いるのよ。聞こえた?」

 「はい、ママ」

 「ママじゃなくて先生。学校では私はあなたのママじゃなくて
先生でしょう。幼い子に言って聞かせるようなことを今さら言わ
せないの」

 「ごめんなさい。森下先生」

 ママが手伝ってお姉様の足がようやく60度くらい開きました。
 こちらは遠く高い位置から見ていますから、細かなところまで
見えませんが、向こうに回り込めば女の子自身が丸見えになって
いるはずでした。

 「本当は我慢を教えなきゃいけないから、お浣腸の方がいいん
でしょうけど、今週はすでに公開処刑でやってるし、森脇先生が
彰子ちゃんの処で使ってらっしゃるから、こちらは鞭にします。
12回しっかり心に刻むんですよ」

 「え~~~12回も~~~」
 お姉様が不満そうに言うと…

 「あっ、そう。12回で不足なら倍の24回にします」
 「そんなあ~~~」
 お姉様は悲劇のヒロインみたいに見えますが、その声はどこか
甘えて聞こえました。お姉様にとってここにいる女性は、やはり
『森下先生』なんて呼ぶ人ではなくママそのもの。そばにいると
赤ちゃんの時代から慣れ親しんだ匂いがします。その胸を見ると
今でも抱きつきたくなります。
 そのためでしょうか…

 「ピシ~ッ!」
 「ひぃ~」

 公開処刑の時よりお尻に当たる鞭の音が高く大きく響きます。
お尻に巻き付くトォーズの痛みはお尻だけじゃなくて身体全体に
圧迫感を与えます。だから「ひぃ~」という悲鳴もことさらでは
なく自然に口をついて出てしまうのでした。

 「ピシ~ッ!」
 「ひぃ~」

 「ピシ~ッ!」
 「ひぃ~」
 「まったくうるさいわね、このくらい黙って受けられないの!」
 ママは腰に手をやってお姉様を睨みます。

 「ごめんなさい」
 「あんまりだらしのない態度だと本当に24回にするからね」

 「ピシ~ッ!」
 「……ぃ~」

 お姉様が頑張れたのは次の一回だけ。また…
 「ピシ~ッ!」
 「ひぃ~」

 「ピシ~ッ!」
 「ひぃ~いやあ~~~」
 「何がいや~よ。こっちがよっぽどいや~だわ」

 「ピシ~ッ!」
 「ひぃ~」
 鞭の音は高くママはカンカンですが、これはお姉様にとっては
それほど不幸なことではありませんでした。鞭の音が高いので、
よほど堪えるようにぶってるはずだと端からは見えますが、事実
は逆で相手が堪えるようにぶつ時の方が音はむしろ低くなります。

 そんな時は猿轡までして不慮の事故にそなえますが、この場合
は必要がなかったみたいでした。

 つまりこれは森下ママが娘に意地悪している訳ではありません。
むしろわざと高い音を響かせて、『娘をこんなにも厳しく仕付け
ています』というパフォーマンスをしているだけでした。

 そして、そんなことは暗黙の了解事項として娘も知っています
から、こちらもいつもよりちょっぴりオーバーリアクションです。

 とはいえ、これはお姉様が鞭に慣れているからのこうなるだけ
のことで慣れていない人が受ければどのみち痛さに耐えかねて、
思わず首や手首を縮めては挟まれている板にこすりつけることに
なります。地団駄を踏んで、顔を歪めて、腰をひねって、そりゃ
あ端で見ていられないほど惨めです。

 恐らくその当時の私がその鞭を受けていたら、そうなっていた
はずです。でも、お姉様の場合は僕より身体も大きいし、二年も
経験豊富ですから鞭に対する胆力が十分についています。それを
考えると、お姉様にママが本気で罰を与えるつもりはないようで
した。

 もっともこれはあとで冷静になってから感じたことで、時計台
の屋根裏部屋で見ていた時は、その高い音が響くたびに、大興奮
して、しきりに腰を床に打ち付けていました。(^^ゞ

 一方、彰子ちゃんの方はというと、森脇先生がお浣腸の準備を
していました。これはお薬の入った容器を高い処に吊り下げてお
き、そこから伸びるカテーテルという管をお尻の穴に差し入れて
その高低差を利用してお薬をお腹の中へと入れるという高圧浣腸
です。

 公開処刑の対象にならなかった彼女は今週まだ浣腸のお仕置き
を受けていません。児童の体に負担をかけるからという理由で、
亀山ではお仕置き浣腸は一週間に一度だけと決められていました。
ですからお姉様は免れましたが彰子お姉様は当然のごとくお浣腸
の罰を受けなければならなかったのでした。

 私はそんな彰子お姉様を不憫だとは思いつつも凝視してはいま
せんでした。やっぱりそれってばっちいですからね、子供の私に
お浣腸は興奮の対象ではありませんでしたから。

 とはいえその様子はやはり気になるのです。そのあたりは微妙
な心理の綾でした。

 お浣腸が100㏄ほど入り苦悶する彰子お姉様の様子は、遠く
からでも容易にうかがい知れます。特に、時間が経過してお腹が
苦しくなると、腰を振り始め地団駄を踏みダメだと分かっていて
も挟まれた首や手首を激しく動かして枷から逃れようとします。

 その時、ぎーぎーというその音がここまで上がってきますが、
それはと殺場に向かう牛の泣き声にも似て悲しい姿です。いえ、
現に僕だって同じ立場に立ったことがあるんですからお姉様への
同情は禁じ得ません。

 なのに、なのに、こんな時、僕の心は悪魔が支配します。

 『ふふふふふふ、もうすぐ爆発するぞ、楽しみ、楽しみ。バス
ケットにみんなぶちまけちゃえ。…でも、やった後、彰子お姉様
ってどんな顔をするのかなあ。こりゃあ見物(みもの)じゃあ~』

 僕は彰子お姉様の苦しむ姿を見つめながら、内心…いえ、内心
だけじゃありません、にやけきった顔を羽目板にこすりつけ床を
叩いて二人の様子を笑っていたのでした。

 「あっ、やったあ~~」

 お姉様は僕の予想した通り足下にある大きなバスケットにお腹
の中の物をすべてぶちまけます。ピローでのお仕置きはこうした
場合を想定して足下には盥(たらい)ほどもある大きなバスケッ
トにボロ布を幾重にも敷き詰め急な粗相に備えることにしていま
した。

 「もういいの、もういいのよ、泣かないの。今さらどうしよう
もないでしょう。……これはお仕置きなんだから仕方がないの。
それより、もう、まだお腹にあるんなら出しちゃいなさい。着替
えた後に教室なんかでまた粗相すると、それこそみんなの笑い者
になっちゃうわよ」

 森脇先生は彰子お姉様をなだめながらも、その粗相を手際よく
処理します。

 そんな先生の姿を見ていて、僕は一つ不思議なことに気が付き
ました。だってこれって僕だったらとっても嫌な仕事のはずです。
誰だってそのはずです。なのに先生は嫌そうな顔を見せません。
むしろ楽しんでいるかのようのです。それが子供の僕には不思議
で仕方がありませんでした。

 そんな私も子供ができてやっとその理由がわかりました。森脇
先生は彰子お姉様にとってママですが、お姉様もまた、森脇先生
にとっては我が子なんです。それに気づけば理由は簡単なことで
した。

 最近は自分の産んだ子供の戻したものも食べられない親が多い
と聞きましたがそんな人たちにはこの気持は分からないかもしれ
ません。(^_^;)

 いずれにしてもその時の僕は有頂天、周りに気を配ることなど
ありませんでした。
 そんな私がいきなり襟首を持たれて張り付いた床から引き剥が
されます。

 「えっ!」

 驚いたなんてもんじゃありません。本当に心臓が止まるんじゃ
ないかと思いました。

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〘 第 12 回 〙 お仕置きのあとは……

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第 12 回 〙 お仕置きのあとは……
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<主な登場人物>


私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的には僕のママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

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****<12>********************

 「ん?坊主、何してる」

 私を抱き上げ自分の懐の中に収めたのは玄さんという時計守の
おじさんでした。
 髭もじゃらで厳つい顔をしていますが、心根のやさしい人で、
この時計台にはよく連れて来てくれました。

 ここからさらに階段を登って屋根裏部屋まで行くと、そこは、
亀山の中でも一番高い処ですからかなり遠くまで見渡せます。

 遠くを走る汽車やはるか彼方にぼんやりと見える町並みを見て
いると、そのどこかに本当のお母さんがいるようで感傷的になる
こともしばしばでした。ですから…

 「どうした?こんな処で…今日はてっぺんまで登らないのか?」

 玄さんはこう言いましたが、どうやらすぐに僕の目的がわかっ
たようでした。

 「何だ、…お前、あれを見てたのか?なるほど、てっぺんまで
登ると女の子がかえって遠くなるというわけか」
 玄さんは恥ずかしそうにしている私の頭をなでます。私は照れ
くさくて玄さんの胸に顔を隠しましたが……

 「お前も一丁前に女の子の裸が見たくなったか?」
 と追求されると、それには…
 「違うよ、たまたま見えただけだから…」
 と応じたのですが、通じるはずもありません。

 「いいんだぞ、男の子なんだから自然なことだ」
 こう言ってもう一度頭を撫でます。
 普通は11歳ともなればこんなこと嫌がる子が多いのかもしれ
ませんが、ここでは大人のこうした愛撫を嫌がってはいけないと
繰り返し教わってきましたから、この時もあえて抵抗はしません
でした。

 すると、玄さんはこの窮屈なスペースであぐらをかきその中に
私をいれて頬ずりまでします。愛おしくて仕方がないそんな様子
で抱きしめるのでした。

 玄さんはあれで10分も僕をもてあそんだでしょうか、でも、
それがここで女の子の裸を見ていたことを他言しない条件だった
のです。

 「いいか、服の汚れをできるだけ落として帰るんだぞ。ママが
心配するからな。そして、どうして服が汚れているのかって尋ね
られたら、玄さんと一緒に時計の修理をしてたって言えばいい。
間違ってもお姉ちゃんたちがここでされてた事を他所で口にした
らいかんぞ。おまえ、また虐められるからな」

 「わかった。分かったから、家まで肩車で送ってよ」
 僕がおねだりすると…

 「しょうがない奴だなあ。だいたいお前はもう重過ぎるんだ。
こんな重いやつを肩に乗っけたらこっちの首の骨が折ちまうよ」
 なんて言いつつも、結局は肩に乗せてくれます。

 前にも言いましたが、この街に住む人で子供が嫌いな人なんて
誰一人いませんでした。子供を見れば愛撫したくてたまらない。
そんな無類の子ども好きだけがこの亀山に住むことを許されてい
たからなんです。

 ここでは誰もが通りすがりの子供を自由に抱いてあやせますし、
抱かれた子供もそれを嫌がりません。大人に抱かれて嫌がれば、
ママや先生たちからお仕置きが待っているからそうするのですが、
おかげで子供たちの方にも免疫ができてしまって、見ず知らずの
人にいきなり抱かれても怖がるような子は誰もいませんでした。
大人の人になされるがまま笑顔で抱かれ続けます。それがまた、
大人を喜ばせ次はもっと愛されることになります。

 そんなハッピーな環境は、何よりお義父様たちの願いであり、
そんな環境が用意されているからこそ、お義父様たちはわざわざ
ここへ移り住むのでした。

 そんな私たちの事を無菌室で育てられた実験動物みたいに言う
人もいます。確かに当たらずとも遠からずでしょうけど、でも、
少なくとも不幸は感じていませんでした。
 そうなんです。あんなにも厳しいお仕置きに毎日のようにさら
されていても、大人のように大きくなった身体をもてあそばれ、
赤ん坊扱いされていても『少年(少女)時代は不幸でしたか?』
と問われれば、おそらくここの子供たち全員、答えはNoだと思
います。

 大人を百%信頼してそこで甘えて暮らすという生き方は巷では
できにくい特殊な環境かもしれませんが、決して不幸じゃありま
せんでした。現にお仕置きを受けた後は大人たちはいつも以上に
優しいですし、そうやって優しくされることで子供たちもその人
の気持を理解できるようになりますから。

 『雨降って地固まる』っていうことでしょうか。
 ママにお仕置きされるとそれまで以上にママと一緒にいたいと
いう思いが逆に強まるんです。本当ですよ。σ(^◇^;)

 そんなこんなで、亀山では、お仕置きでその人との人間関係が
ぎくしゃくしたり、心が傷ついたということはありませんでした。
 偉そうなこと言っちゃったけど、本当かなあ。(^_^;)
 でも、僕はそう思ってます。(^◇^;)


 さて、その日の夕食。僕たちお泊まり組はお義父様やお義母様
のお隣に席を取ります。それ自体は自然な習慣だったのですが、
ここに特注の幼児椅子が登場するやいなや、他の子供たちの顔が
ほころび始めます。それはこの椅子が何を意味するか、みんなが
知っているからでした。

 「由美子お姉様、お仕置きされたのよ」
 「ほら、彰子お姉様もよ」
 「何されたのかしら?」
 「鞭じゃない」
 「そうじゃないわ、ちらっと見たけど、裏庭のピロリーにこの
二人捕まってたみたいなの」
 「えっ、そうなの。じゃ、お浣腸?」
 「彰子お姉様はね。でも、由美子お姉様は、この間公開処刑で
今週分のお浣腸はすんでるから、きっとお鞭のはずよ」
 「二人ともやめなさいよ。お食事の席でお浣腸の話なんか」

 こんな会話が交わされている食堂で、二人は用意された特注の
幼児椅子に予定通り座ります。
 ファミレスなんかに用意されてる幼児用の椅子。勿論サイズ的
には少し大きく作ってありますが、あれに中学生が座るわけです
から、傍から見ればもうそれだけで滑稽です。

 由美子お姉様がお義父様の右脇、彰子お姉様はお義母様の左脇
でした。でもって空いているお義父様の左脇には私が、お義母様
の右脇は由香ちゃんという九才の可愛い妹が席を占めまています。

 お仕置きに関係ない私と妹は座面の高さを調整しただけの普通
の椅子でしたが、お二人が腰を下ろした椅子には前に小さなテー
ブルが付いていまして、この椅子に座ると、前のテーブルが邪魔
して料理にまで手が届きません。つまりお姉様二人は自分で手を
伸ばして好きな料理を食べられないというわけなんです。

 『じゃあ、絶食!』(◎-◎;)
 いえいえ、そんなことはありません。何かとお仕置きの厳しい
亀山ではありますが『食事抜き』『おやつ抜き』というお仕置き
だけはありませんでした。

 考えてみてください。子供が大好きという大人が二人も、すぐ
そばに寄り添ってるんですよ。どうするかわかるでしょう。
(^0^;)

 『!』(◎-◎;)

 「ピンポーン!」当たりです。(^◇^;)この二人の親は、
自分の食事もそっちのけで両脇を囲む子供たちに食事をさせます。

 特に自分では食事ができない可哀想な子(?)にはスプーンに
料理を乗せて口元まで運んでくれるんです。
 そう、まるで離乳食をもらう赤ちゃんみたいにです。
 親切でしょう。(^^ゞ

 ま、女の子たちにしてみると、この儀式は屈辱的で、そのこと
自体がお仕置きじゃないか、なんて勝手にほざいてましたけど、
本心は違うんじゃないかと僕はみています。

 『おまえはやられたことがあるのか?』(◎-◎;)

 当たり前田のクラッカー。(う~ん、あまりに古すぎた)
 ここに住んでる子供たちでお義父様お義母様のスプーンで食事
をしなかった子なんて誰もいませんよ。

 もっとも僕はスプーンパクリの食事のことを別に何とも思って
いませんでしたけどね。
 だって、楽じゃないですか。何もしないのに料理の方が勝手に
口の中に入って来るんですから。(^^ゞ

 それだけじゃありませんよ。僕なんて、わざと赤ちゃん言葉で
話しかけてお義母様のご機嫌を取ると拘束椅子から出してもらい
お義母様の膝の上で食事をしたことだって何度もありました。

 ええ、亀山ってところは偉そうにしてるより、甘え上手な子が
得をするように出来ているんです。

 ごく幼い頃ですけどね、お義母様に抱かれている時に、本物の
おっぱいが目の前に現れたのには、さすがに面食らいましたけど、
でも、据え膳食わぬは男の恥とか言いますから、ありがたくいた
だきました。(^^ゞ

 『これって、愛なの?お仕置きなの?』(◎-◎;)

 だからさっきから言ってるでしょう。お仕置きって、愛の一部
なんだって。

 これだってもともとはお仕置きされた子をねぎらうために始め
たみたいなんですけどね。なかには『嫌なことをされてる』って
思う子だっているでしょうから、その場合はお仕置きの延長って
ことになります。

 実際、自尊心の強い子の中には耐えられない子がいて、あまり
にいやいやがキツいもんだから、とうとう下はすっぽんぽんで、
コーナータイムさせられたなんてケースがありましたけど……

 それは特殊なケース。大半の子は営業用の笑顔を全面に出して
お義父様やお義母様子のお小言を聞き流しながら口元まで届いた
スプーンをぱくりとやって食事します。(≡^∇^≡)

 「いいこと、二度とこんなおいたをしてはいけませんよ。もし、
これから一週間の間いい子でいたら、あなたが欲しがってたGI
ジョーのお人形を買って上げますからね」
 なんて言われながら食事をするんです。

 うまく立ち回ると色々得することも多いので、『焼け太りだ』
なんてお仕置きされなかった子からひがまれることも……。

 この二人のお姉様たちもそこは女の子ですからね。ちゃっかり
しています。この赤ちゃん食事会で日頃欲しいと思っていた物を
色々買ってもらう約束を取り付けたみたいでした。

 『お仕置きに関係ない子は何ももらえないのか?』(◎-◎;)
 もちろんそんなことはありません。お泊まりの日はクリスマス
や誕生日と同じで、お義父様サンタさんから沢山のプレゼントが
届きます。

 ただ、昼間お仕置きがあった子には……
 『それでもお前たちをを愛されてるんだよ』
 という実感を与えてから寝かしたいというお義父様お義母様の
配慮なんです。

 だから、子供の方も普段以上に赤ちゃんとして振る舞うことが
求められるのでした。
 食事もそうですし、寝る時もお泊まりする他の子の見ている前
で、わざとオムツを穿かされます。もちろん、それを嫌がったり
悲鳴を上げたりしてはいけませんでした。

 「キューピットはいつも裸だよ。だけど恥ずかしがらないだろ
う」
 お義父様は夜のオムツ換えでお尻バンザイをしている子が恥ず
かしがると、いつもこんな事を言っていました。

 そうは言っても、こっちだって生身の人間ですからね、10歳
を越えたらそりゃあ恥ずかしいです。でも、それが僕たち子供の
仕事だと思って割り切るしかありませんでした。

 『割り切れない子もいるの?』

 いますね。これだけ甘々の環境で育ってるのにプライドが高い
というか、自尊心が強いというか……それは、巷でなら当たり前
なのかもしれないけど、順応性のない子は不幸になりますね。

 ただ……
 そんな子はどうしてもお仕置きが多くなるから、その時は……
 『またやられてる。可哀想に……』
 って思ってたけど……でも、今、思い返してみると、そんな子
はそんな子なりに大人たちのお仕置きで遊んでたんじゃないかっ
て思えちゃうんですよ。

 『???』

 だって、そんな子だってここでは見捨てられるわけじゃなく、
お仕置きの後はやっぱり他の子と同じように可愛がってもらえて
たし、厳しいお仕置きを受ければ受けるほどその後のべたべたも
濃厚になるから、私たち以上にその子は赤ちゃんにされてたとも
言えるわけで……

 何より、大人になったその子たちって、僕たち以上に亀山を愛
しているし、社会に出てからも何かと亀山のこと気にかけてて、
奉仕してるもの。

 『奉仕?』

 そう、ここのOBやOGは社会で成功すると何かにつけて後輩
たちを援助してくれるんです。

 学校の校舎や修道院なんてここ出身の土建業者が建てたものが
ほとんどだし、学校の制服も毎年新しいデザインの物がアパレル
関係のOGから送られてきます。肉や野菜は専属契約を結ぶ近く
の農家からやってくるけどそれ以外の食料品や学用品、電化製品
なんかも、みんなみんなここの出身者が提供しているです。

 ついでに言うと、近くにある総合病院の医療スタッフなんて、
半分以上がここの出身者だから仮病なんか使ってばれちゃうと、
この病院に送り込まれてハレンチな検査でヒーヒーいわされちゃ
うんだ。みんな恐れて『魔の病院』って呼んでるくらいだもん。

 もちろんママ(先生)の中にもここの出身の人は少なくなくて
……『恐怖のお仕置き連鎖』なんだ。(>_<")

 彼女たちにしてみればここがふる里。ここがお家。どんなにお
仕置きが厳しかったとしても、それを含めて生活習慣を変更して
欲しくないって思うようなんですよ。

 『一大勢力?』(◎-◎;)

 ま、そうなのかもしれませんけど、最近はちょっとでも厳しく
お仕置きすると「虐待だあ」なんて言われてしまいますからね、
あまり世間には知られないようにしてるんです。

 『あなたもお仕置きは支持?』

 そうですねえ。それで子供が不幸になってるなんて思えません
から。要は愛されている人から受けるかどうかじゃないですか。
愛されていないと感じる人からは髪に触れられただけでも虐待と
感じますよ。


***************************

〘 第 13 回 〙中華屋さんでの思い出

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第13回〙 中華屋さんでの思い出
***************************

<主な登場人物>

私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的にはママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

****************************
****<13>********************

 話を元に戻すけど、二人のお姉様たちはベッドインする時には
下の毛をすっかり綺麗にされてから、オムツだけを穿かされて、
寝かされるんだ。

 『最後のお仕置き(◎-◎;)!』

 そうじゃないよ。オムツだけでも身につけてさせてくれるのは
お義父様の配慮なんだ。だって当番でお泊まりする子はすっぽん
ぽんだもん。(^^ゞ

 『(◎-◎;)!』

 そう、パジャマも下着も何にもなし。全裸でベッドインだから、
お義父様もお義母様も添い寝した子供たちには触り放題という訳
です。(^_^;)

 『おちんちんも触られた?』(◎-◎;)

 はい。お義父様からもお義母様からも(^◇^;)

 お尻の穴に太い指が入ってきたり、鼻の頭や顎の先、ほっぺた
なんかを舐められたなんてしょっちゅうです。ちなみに、指先は
特にお気に入りみたいで、普段お膝の上にいる時にもよくしゃぶ
られました。(^0^;)

 でも、卑猥な感じってのはありませんでしたよ。相手の心の中
までは知りませんけど、こちらはそれで変な気持になったことは
ありません。

 何と言っても私たちは天使ですからね。そんなことで騒ぎ立て
たりはしないんです。σ(^◇^;)

 このあたりがきっと世間から『あいつらは子供妾だ!』なんて
陰口をたたかれる所以なんでしょうけど、今では『それが何か、
問題でも?』と開き直ってます。

 そんなふうに訓練されて育てられたせいなのかもしれませんが、
それでお義父様やお義母様が満足されるなら、私に不満なんてあり
ませんもの。

 ママとの間もそうですけど、濃厚な愛に身を委ねている時って
とっても気持がいいんです。本当に身体がとろけてしまうんじゃ
ないかって思えるほどのエクスタシーが、射精とは無関係に存在
するんです。本当ですよ。(*^_^*)

 そんなシチュエーションに性的な色が付くのは、実は、亀山を
離れてからなんです。

 お話がまたあさってにの方向に行きかけているので戻しますが、
この日の夜、お仕置きでお泊まりした由美子お姉様をお義父様は
ゴルフを誘います。

 公開処刑の時も誘いましたからこれで二度目です。大人なら、
『これは何かあるな』とにらむところでしょうが、お姉様には、
その意図がわかりませんでした。

 「ええ、ではお供します」

 お姉様自身は、最初それほど乗り気ではありませんでしたが、
結局お付き合いする事になりました。というのも、ゴルフはとも
かく亀山の子供たちにとって亀山を下りて外の空気を吸えるチャ
ンスはそれほど多くないのです。

 『ピクニックと思えばいいから』という軽い気持で受けたみた
いでした。

 亀山のゴルフというはゴルフ場を一日貸し切って行います。
 みなさん有名人ですから見かけない子供と一緒の処を文屋さん
にスクープされないようにという配慮でした。

 いえ、ゴルフ場だけではありませんよ。子連れでお出かけする
場所はデパートであろうと、遊園地であろうと、劇場、避暑地、
その他何でも目的地は貸し切りでした。

 『え、そんなに簡単に貸し切りってできるのか?』

 大丈夫なんですよ。(*^^)v
 それはすべてどちらかの家のお義父様の持ち物か関係先なんで
すから。

 私達はお義父様の財産に直接手をつけることはできませんが、
進学、就職、独立、何をやるにもお義父様から援助を受けていま
した。

 その日のゴルフは安西家との対抗戦でした。といっても、この
ゴルフは競技ではありません。一つのボールをその家の子供たち
が順番に打っていって少ない打数で入れた家が勝ちというもの。
 家族で楽しむお遊びです。

 とりわけチビちゃんが登場すると、クラブを握る可愛らしい手
をお義父様が包み込むように握ってスイング。実際上はお義父様
が打ってしまいます。

 そのホールごと勝った方は負けた方に何かおねだりできますが、
賞品といってもお義父様のポケットマネーでどうにでもなる程度
の物しか出ません。
 子供たちが持ち回りで賞品を得ていき、片方に賞品が偏るよう
なら、そちらのお義父様がボールをわざとあさっての方へ打って
ハンデを作るといったことまでなさいます。
 そういった意味では八百長試合でもあったわけです。

 親睦が目的ですし、気晴らしができたらそれでよかったのです。
ですからプレー中は無礼講。お姉様たちはファッションを決め、
おすまししてクラブを振っていましたが、男の子やチビちゃん達
は短いパターでチャンバラなんか始めちゃいます。
 でも、今日ばかりはちょっとやそっとのことではお仕置きされ
る心配がありませんでしたから心の休養にはなったみたいでした。

 ちなみに、安西さんの処でも子供たちの中に厳しいお仕置きを
受けたばかりの子がいて、そのあたりの事情はうちと似通ってい
ます。
 どちらのお義父様も子供たちに苦いお薬を飲ませた後、口直し
にと甘い飴をなめさせようとしたのでしょう。これはそんな飴の
役割を果たす行事だったのです。

 そんなこんなで無事、親睦ゴルフは終了。9ホールだけ三時間
くらいかけて回りました。

 そして、そのお昼。安西のお義父様は知り合いのレストランへ
私たちを誘ってくださったのですが、なぜか、お義父様がそれを
丁寧にお断りになります。

 実は、ゴルフは外出するための大義名分。これからが行く処が
どうやら本当の目的の場所だったようでした。

 ベンツが丘陵地にあるゴルフ場を出て向かったのは横浜の市街。
それも下町の一角でした。

 ポンコツの国産車ばかりが並ぶ駐車場に、ベンツとワーゲンを
止めて合沢家の人たちが入ったのは風采の上がらない店主が経営
する薄汚れた中華屋。普段こうした催し物の時にお義父様が利用
するレストランとは比べるべくもありません。

 「いらっしゃい」

 店主の無愛想な声に一同は店の中へ入りますが、中も外観同様、
一目で安物とわかる椅子やテーブルに囲まれています。おまけに
そのぐらつくテーブルには、女中部屋にさえこんな物は掛かって
いないだろうとという薄汚れたビニールのテーブルクロスが……
 幼い僕でさえ、そこは違和感のある場所でした。

 ただ、ここもお約束通り貸し切りです。

 総勢12名がおのおの好きな処に陣取ると、さほど広くない店
の中は合沢家の一族だけで満席になります。

 そんななか、お義父様が由美子お姉様にだけは自分の隣に座る
よう命じます。

 「ぼくも……」
 さっそくそう言って甘えてみたのですがですが……
 「今日はだめだ」
 つれなく拒否されてしまいます。

 お父様の隣りを射止めたのは、由美子お姉様だけ。今日だけは
誰もお義父様のお膝を許されませんでした。

 「何にいたしましょうか?」

 恐る恐る中年のウェートレスが注文を取りに来ます。
 そりゃあ、これだけの大所帯。しかもお義父様はイギリス紳士
然としていて明らかに場違いな雰囲気です。
 そんなことからでしょうか、メモを持つ手はすでに震えていま
した。いえ、それだけではありません。すでに額も汗でびっしょり。
 ただでさえ、薄汚れた店内なのに、食欲がなくなります。

 「何を食べたい?」

 お義父様は由美子お姉様に尋ねますが、どうやらその表情は、
僕と同じで『こんな場末の中華屋では食べたくない』という様子
でした。

 「私、このお店のお料理のことはよく分かりませんから、お義
父様と同じものをいただきます」
 お姉様が素っ気なく答えるので…

 「メニューも見ないでそんなことを言うのはこのお店にも失礼
だぞ。いいからメニューを開きなさい」
 お義父様にこう言われてはお姉様もそうせざるを得ません。

 そこでお姉様が渋々メニューを開くと、今度は…
 「酢豚と書かれている処を指してごらん」
 こう言われますからお姉様は不審そうな目をしつつもその通り
にします。

 このあたりからお姉様はどうも様子がおかしいと思っていたの
かもしれません。
 お姉様が酢豚と書かれたメニューを指さすと、注文を取りに来
た中年ウェートレスがその皺くちゃの顔をメニューに近づけてい
きます。

 「(この人、目が悪いのかなあ)」
 と思いました。何しろその顔はお姉様の指に触れるんじゃない
かという処まで接近しましたから。

 その光景は明らかに異常でした。

 驚いたお姉様が指を引っ込めると、今度はお義父様が…
 「それじゃ分からないだろう。もう一度指してあげなさい」
 と言うのです。

 口で言えばすむはずのやりとりをなぜこんなことしているのか
私にはまったく理解できませんでした。

 おまけに、お義父様は落ち着かない様子のウェートレスを自分
のすぐそばに引き寄せると、自らその手をいきなり取ってお姉様
の指の上に無理矢理乗せてしまいます。

 「これだそうだ。酢豚」
 お義父様が注文すると…

 「……あっ、は、はい」
 ウェートレスは一拍おいて小さな声で答えます。

 ほんの一瞬の奇妙な出来事。ひょっとしたら一秒もなかったか
もしれません。でも、その婦人にとっては瞬時にして永遠の感触、
神の手に触れたのも同じショックだったに違いありませんでした。

 「………………」
 お姉様は、当初動揺したように見え、少し時間がたつと不機嫌
そうな様子でメニューを覗き込みます。
 そして、それで顔を隠しながら私に尋ねるのです。

 「他の子は?…啓治、あなた何が食べたいの?」

 私だったら見過ごすようなこと。でも、そこはさすがに女の子。
こんな事だけでお義父様の意図を感じ取ったみたいでした。

 お姉様は、それ以降も中年のウェートレスを追い求めるような
視線の動きは見せませんでしたが、ただ、いつも以上におすまし
して食べていました。こんな食堂で……

 帰りしな、お義父様はその中年ウェートレスから赤いセーター
を託されます。しかしそれはお義父様が受け取ることのできない
ものだったのです。

 何度か押し問答の末、お義父様は一旦それを受け取りましたが、
赤いセーターは、次の報告の日に他の物と一緒に彼女のロッカー
に入れてあったそうです。

 亀山に我が子を預けた実の母親はおばば様によって全身にお灸
をすえた後、鍵を一つ与えられるのですが、これは、以後半年に
一度だけ、我が子の成長記録と沢山の写真を収めた報告書を受け
取るための私書箱の鍵でした。

 その荷物が届くのが報告の日なのです。

 ただし、これは亀山からの一方的なもので、母親の方から手紙
や品物をここに入れても我が子には届きません。
 そして何より、この報告を二回連続受け取らない時はもう報告
はやってこないことになっていました。

 幸い由美子お姉様の母親は毎回この報告を受けていましたから
娘が今どんな顔をしているか、どんな身体つきなのかも知ってい
ました。ですから、お店に入ってきたとたん、それが我が子だと
分かったはずです。

 一方、お義父様も事前に人を頼んでロッカーから報告書を持ち
帰る婦人を付けさせていました。こちらも彼女が由美子お姉様の
母親だと知っていたはずでした。

 ただし、子供たちが18歳になる前に実の母親に会わせる事は
お義父様といえどできません。ですから、あくまで偶然を装い、
この店に立ち寄ることにしたのです。

 その後、お姉様が一度だけお義父様に事の真相を尋ねてみた事
があったそうですが、その時も…

 「あれは偶然あそこに入っただけ。ウェートレスがどんな人か
私は覚えていないよ」
 とそっけなかったそうです。

 ですが、由美子お姉様にとっては、これが公開処刑やその後の
厳しいお仕置きに対する一番の癒しとなったのは確かでした。

 その後、お姉様の部屋には、とある中年婦人の肖像画が小さく
掲げられましたが、それは、あの時のウェートレスを思いだして
描いたものに違いありませんでした。

 亀山の孤児たちは、仲間内では、よく実の母親のことを興味の
ない存在のように言います。今お世話になっているママやお義父
様がすべてだと……。
 ですが、それは強がっているだけ。そう思っていないとここで
は暮らす気力が湧いてこないからそう言っているだけの事なの
です。
 本気でそう思っている子なんて一人もいませんよ。

 母親なんて、ごく自然に得られた人にとっては『そんなもんか』
という程度のものでしょうけど、得られなかった者にとっては、
どこまでも『永遠のマドンナ』であり、『永遠の憧れ』なんです。

 お義父様やお義母様、もちろんママは大好きですが、どんなに
親切にしてもらっていても、やっぱり実の母親に会いたいという
思いは生涯心のどこかに持ち続けているもの。

 母への思いは神様と同じように手の届かないものなのですが、
その幻影は神様より遙かに身近で感じるものだったのです。


(追伸)
 あの赤いセーターは確かに次の報告日にロッカーに入れられて
返されましたが、後日、まったく同じように作られたセーターを
お姉様が着て写真に収まっていたのを見たことがあります。

 きっとお義父様がまったく同じに作らせたんでしょうね。由美
子お姉様はそんな器用な人ではありませんから。(∩.∩)

            
***************** <終> *** 

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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