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§6 <天使の庭で>

§6 <天使の庭で>

 私は学校の中庭をよく利用する。ここはお父様たち専用の庭、
子どもたちは立ち入れない。そもそもここは同じ敷地に建つ修道院
の一部なのだ。丹精された草花に囲まれて木陰のベンチに腰を下ろ
すと天使たちが群れ遊ぶ噴水からオゾンの風が吹いてくる。子ども
たちの学校とは腰の低いバラの生垣が結界となっていた。オフホワ
イトのマリア様も穏やかに微笑んで、ここは疲れた心と身体を癒し
てくれる最高の場所だったのである。
 ま、それだけでも十分なのだが、好事家たちにとってはお楽しみ
はこれだけではないようで、ここでは、他ではではちょっとお目に
かかれない種類の催し物が連日のように繰り広げられるのだ。
 実際お父様たちの中にはこの催しもの見たさに足しげく通う人も
珍しくなかった。
 「よくお目にかかりますね」
 「ええ、根がスケベなもので…」
 東亜自動車の元会長は隠しようのないほどの大きな身体で、少し
照れながらつぶやく。それでも屈託のない笑顔だった。
 「ただ、今日は娘が出て来やしないとそれが気がかりなんですが
……」
 「大丈夫でしょう。聞くところによるとお嬢さんは優等生だそう
じゃないですか」
 「いやぁ、だといいんですが、こればかりはわかりませんよ」
 二人は雑談や読書で時間を繋いだ。それはいつ始まるのかわから
ないからだ。たいていはのどかな昼下がりなのだが……いずれにし
ても突然、噴水先の舞台(一階テラス)に役者が表れることになる。
 そして、この日も……それは突然に表れたのである。
 「さあ、いらっしゃい。あなた何度言ったらわかるの」
 甲高い女性教諭の声がしたかと思うと、彼女は女の子の腕を引っ
張り建物から出て来た。
 右手を強く引っ張られているのは11歳位だろうか、困惑した顔
が何とも可愛い。腰が引け、さも嫌々ながらというのが、遠くから
でもよくわかった。先生が小さな手を強く引っ張るたびに少女の肩
まで伸びたストレートの髪がなびき、やがて舞台の中央へと引き寄
せられる。
 『あれ?あれは?』
 私がまだ少女を確認しないうちに会長が席をたった。
 「……?……!」
 それでかわかったのだ。
 「それでは、私はこれで…」
 軽く会釈すると、彼はその場を去る。
 そう、今まさに出て来たのは不幸にして彼が抱える里子の一人、
茜ちゃんだった。
 亀山では自分の預かった子どもを自らお仕置きしてはならない。
こうした場合もその場には立ち合わないのが暗黙の了解事項だった。
 数人の大人たちが少し遠くで見守る中、茜ちゃんは先生のお膝の
上でスパンキングを受け始める。
 何が原因なのかはわからないが、こんな場合、男たちにとっては
その理由などはどうでもよかった。ただただ少女の赤くなっていく
お尻と堪えられずあげる悲鳴だけがお目当てだったのである。
 安藤先生もおっしゃっていたが、『男は女性に二つの事を期待して
いる。一つは美しく気高い姿。もう一つはこれ以上ないほどのあら
れもない姿。どちらが欠けても男はその女を愛さない』
 しかし、亀山にはその二つがものの見事に同居しているのだ。
 無論、東亜自動車の元会長にしたところで、当初は私たちと同じ
火事場見物(?)を目論んでいたのかもしれない。それが自分の娘
(里子)とわかって目算が狂った様子だった。
 亀山のお父様は、寄るべなき身の上の孤児たちにとっては最後の
砦いわば救い主(神様)なのだ。だからその存在はママにも増して
絶対的。お父様はその子が自分の抱える子どもかどうか問わず亀山
に住む全ての子ども達への愛の供給者でなければならなかった。
 だからこそ家長としての権威も絶対的で、子供たちはどんな些細
な事でも滅多に逆らうことはない。しかし、そんな私たちへの絶対
的な服従も、実は、ママの「おじ様も私と同じように敬いなさい」
というお言いつけあっての話なのである。亀山の親子はあくまで仮
の親子だが、その心根は巷の親子と何ら変わらないのだ。
 それに、こう言っては何だが、お父様が御自分の娘の痴態を見た
いと願うならそれは何も中庭などに出向く必要はない。ママにその
希望をそれとなく伝える、というより匂わすだけでよいのだ。
 数時間後、彼は自宅にいながらにして娘の裸を思う存分に楽しむ
事ができたのである。

§7 <天使の庭で>

§7 <天使の庭で>

 「いったい何度言ったらわかるのかしら。ママはね、鮎美ちゃん
のお世話で忙しいの。あなたはもう大きいんだから宿題くらい自分
でやらなきゃ。ママがいなくてもそのくらいできるはずよ」
 両手を掴まれ、ママに睨まれると茜ちゃんは何も言えませんで
した。
 「だいたい、昨夜はどこへ行ってたの?あなたが、由実ちゃんの
処でやるって言うから許したのに、あとで行ってみたら由実ちゃん
のママからは『いえ、こちらには来てません』ってご返事だった
わ。これってどういう事かしら?」
 「……………」
 茜ちゃんは何も答えませんでしたが答えはすでに出ているようで
……
 「まったくあなたって子は……またお父様の処へ行って一緒に
テレビを見てたのね。私、もう知りませんよ。大竹先生が、今度、
茜ちゃんが宿題やってこなかったら、トリプルのあと市中引き回し
にするそうよ」
 「…………ひきまわしって?………ねえ、お馬さんで?(¨;)」
 「知りません。(-_-#)……でも、あなたみたいな子はその方がいい
かもしれないわね。ママはあなたみたいな子、かばってあげません
からね」
 「えっ!、そんな~」
 「何が、『えっ!』よ。仕方ないでしょう。あなたが悪いんだから
………今日はお勉強の前にあなたの怠け心にもしっかり効くように
……ようく効くおまじないをしてみましょうね」
 こう言われて、思わず茜ちゃんの手に力が入ります。いえ、これ
までもママの戒めから自由になろうとちょくちょく抵抗はしていた
のですが今回はその何倍もの力で、全身全霊で拘束されている自分
の両方の手首を引き抜こうとしたのでした。
 「いやあ」
 掛け声と共に目一杯の力で自分の両手を引き寄せてみたんですが
……
 「あっ……あっ……」
 という吐息だけでびくともしません。そこは大人と子供。腕力に
差がありますからどうにもなりません。そこへ……
 「ほら、何してるの!?お仕置きが増えるわよ」
 ママに一喝されるると茜ちゃんは急に怯えた表情で身を縮めます。
抵抗する力が急に抜けてしまったようでした。さらにママは青い顔
の茜ちゃんを見下ろして……
 「あなた、先週お父様の前で私に誓ったわよね?」
 「えっ?何が??」
 「今度、怠けたらどんなお仕置きでもお受けしますって……」
 獲物を狙う蛇のような陰険な目付きが茜ちゃんの今置かれている
不幸をさらに際だたたせますから周囲で見ていたお父様たちは内心
大喜び。
 女性の場合はこんな時でも不幸な少女のために『まあ、可哀想
だわ』なんて顔を作ってくれるかもしれませんが、男というのは、
心の内が正直に顔に出てしまいます。
 「ああ、いや、だめえ、やめてえ~~」
 籐椅子に座ったママの膝の上で裸になったお尻が可愛らしく跳ね
回ります。
 「ほら、暴れないの!せっかくの痛みがお尻の中へ入らず外へ逃
げてしまうでしょう。そんな我慢を知らない子にはお尻から血が出
るまでぶち続けますからね」
 茜ちゃんとしてもママの要望には副(そ)いたいところですが、
すぐに痛みに耐えかねて足をバタバタさせてしまいます。
 「いやあ~~ごめんなさ~~い」
 ひとつぶたれるたびに大声が上がり、そのたびにまだ小さなプッ
シーが太股の隙間から覗き見えて(本当は離れていてよく見えませ
んが……)ベンチに座った男達の目を楽しませます。
 不謹慎と言われようが悪趣味と言われようがそれが亀山のルール。
子供たちは自分のお仕置きを大人たちから隠すことはできませんで
した。
 一方大人たちにしてみると、ここでは心の奥底に沈む暗部をあえ
て隠す必要はありません。本性のおもむくままに子供たちの痴態を
観察し若返りの秘薬を一日中浴び続けることのできる。それがこの
場所、亀山だったのでした。

§8 <天使の庭で>

§8 <天使の庭で>

 5mも離れた場所ですから、何もかもが見えたわけではありま
せん。でも、ママは私たちが出来る限り見やすいように茜ちゃんの
お尻をこちらへ向けて叩いていますし、時折そのお尻の割れ目その
ものを押し広げたりもしてくれましますから目の保養には充分で
した。
 ただ、茜ちゃんにとってのお仕置きはこれだけではありません。
 スパンキングが終わると、自ら素っ裸になって、マリア様の像の
前に膝ま付き胸の前で両手を組んで懺悔します。
 乙女の祈りと呼ばれるこのポーズは亀山の少女たちが今の純潔を
示す大事な儀式。ちょっとでも不遜な態度が見られれば、再びママ
の膝の上に戻らなければなりませんから顔も自然と真剣になります。
 まずはママに……
「私は、昨日、宿題をサボったので朝のテストで落第点を取ってし
まいました。これからは決して怠けませんから、どうぞお仕置きを
お願いします」
 と懺悔して……でも、それで終わりではありません。茜ちゃんは
噴水脇の木戸をママに開けてもらうと、それまで何食わぬ顔でベン
チに腰を下ろしていた私たちの処へとやって来るのでした。
 「私は、昨日、宿題をサボったので朝のテストで落第点を取って
しまいました。これからは決して怠けませんから、どうぞお仕置き
をお願いします」
 茜ちゃんはさっそく最も近くにいたおじ様の足元に膝まづくと
振り絞るような声で懺悔をしてからトォーズを両手で頭の上に捧げ
ます。
 もちろん、これが茜ちゃんの真心というわけはありませんが、
ママがすぐ後ろに立って監視していますからどの道茜ちゃんに逃げ
道はありません。この難儀を逃れるためにはママに言われた通り
やるしかありませんでした。
 時代かがった形式美、型どおりの懺悔。でも大人たちにはすべて
を飲み込んでもなお、嬉しいものなのです。
 まだ小さく幼い顔が小刻みに震えているのがわかると思わず抱き
しめたくなります。そんな思いはどのおじ様たちもみなさん同じで
した。
 自らの足元で子犬のように震える茜ちゃんを見たおじ様は、……
いえ、この場合はあえて『お父様』と言った方がいいかもしれま
せん……茜ちゃんに怖い顔などしません。
 「おや、おや、これでぶつのかい?」
 両手でうやうやしく差し出されたトォーズを笑顔で取上げたお父
様は懺悔のポーズのままに固まっている茜ちゃんの両脇に手を入れ
て持ち上げると、お互い顔が見合わせる形で抱っこします。
 もちろん、茜ちゃんだってこれが初めての経験ではありません
から、おじ様はぶたないだろうとは思っているのですが、子どもに
とって大人はみんなキングコングのような大男。こんな大きな顔を
間近に見て恐怖しない子はいませんでした。その唇は青ざめ、唇と
言わず顔と言わず、その全身が小刻みに震えているのが分かります。
 でも、こんなにも恐怖におののく少女の顔を見て、さらに何か意
地悪でも…なんて考える冷血人間は亀山にはいません。むしろ、
こんなにも可哀想な少女を今こうして抱いてやれるのがお父様たち
にとっては無性に嬉しかったのでした。
 「お尻はまだ、痛いか?」
 「は、はい、ちょっと……」
 「大丈夫だ、すぐに治るよ。ママはそんなに強く叩いてないもの
…」
 「あれで?」
 「そう、あれでだ。もし中学生のお姉ちゃまと同じようにぶった
ら、お尻が痛くて私のお膝ににこうして穏やかに座ってお話なんか
できないぞ」
 高遠(たかとう)のお父様は悪戯っぽく茜ちゃんのお尻にご自分
の右手を滑り込ませます。
 「ふうん」
 「茜ちゃんは、まだまだ、赤ちゃんだからね、そんなに強いお尻
叩きなんて…されることはないんだ」
 高遠のお父様は滑り込ませた右手で茜ちゃんのお尻を少し揉んで
いるようでしたが、茜ちゃんが声を上げることはありませんでした。
 「そんなことないよ。おじ様はママのお仕置きを受けたことない
から分からないのよ。もの凄く痛くて泣いちゃうんだから」
 「はははは(^◇^)…それは仕方がないよ。だって、お仕置きだ
もの。笑ってすませられたらお仕置きじゃないだろう」
 「そりゃそうだけど……」
 「そんなお仕置きを受けない為にも次はちゃんと課題をこなして
から学校に行かなきゃだめだよ。茜ちゃん一人がやってこないだけ
でもみんなが迷惑するからね」
 「どうして?」
 「だって、一人でも分からない子がいたら先生は次の単元に行け
ないじゃないか。茜ちゃん一人の為に他の子も同じお勉強しなきゃ
いけなくなっちゃうだろう。そんなことが続いたら、みんなきっと
待ちくたびれちゃうよ。みんなと一緒にお勉強できないと仲間はず
れになっちゃうよ。仲間はずれになっちゃったら、茜ちゃんだって
楽しくないだろう」
 「そうかあ~~」
 「おそらく、昨夜はやってみたら一回だけ満点だったんだろう。
でも、テストでうかるためには少なくとも三回続けて満点が取れる
ようにしておかないと翌日は忘れてしまうからね。ママだってこれ
まではそうしてたはずだよ」
 「そう、三回じゃないよ。五回も続けて満点じゃないとOKして
くれないんだから。寝かしてくれなかったの」
 「おおかたそんなことだろうと思った。そんな大事な約束を破っ
て、このくらいやっておけばいいだろうって勝手に決めちゃうから
叱られちゃうのさ」
 「そうかあ~~」
 「ほら、わかったらお尻をぶってあげるからしっかり我慢するん
だぞ」
 高遠さんはそう言うと、茜ちゃんをご自分の膝の上にうつ伏せに
して、短いスカートを巻く利上げ、パンツの上から短めのトォーズ
で三回ほど叩いた。
 すでに温まったお尻だから優しく軽く叩いてもそれなりに衝撃は
あったはずだが……
 「ありがとうございました」
 茜ちゃんはお礼を言うと次のベンチへと向かう。
 事情はどこでも同じ。膝の上に抱き上げてもらい、お説教と言う
か、雑談をして、最後はお膝にうつ伏せになってトォーズ三回のお
仕置き。もちろん、強く叩く人など誰もいなかった。というのも、
これはそもそもぶつことが目的なのではなく、おじ様たちのお膝の
上でパンツ丸出しになる屈辱がお仕置きだったから。
 一方、おじ様たちにすれば、ものの数分、茜ちゃんを膝の上に抱
き、赤いほっぺを頬ずりしたり、肩まである髪を撫でたり、お尻を
よしよし、背中をトントン、両手の指を揉み揉みして心ゆくまで
11歳の少女を愛撫できる……それが幸せだった。
 もちろん、一口におじ様といっても親密度はそれぞれに違うわけ
で、あまり親しくない人の場合は緊張するだろうが、亀山の子は
よく仕付けられていて誰に抱かれても嫌な素振りは決して見せない。
 だから以前から親しくしているおじ様に出会うと茜ちゃんは膝の
上でまるで甘えているようにみえた。
 そして、そんな親しいおじ様に限って、茜ちゃんはほんのちょっ
ぴりだがほかのおじ様たちよりより強い形でトォーズの痛みをもら
うことになるのである。
 こんなことだから、お仕置きにも結構な時間がかかるのだが亀山
では授業といわずこのお仕置きといわず学校があまり時間の観念に
縛られていなかった。
 朝の八時半に登校してから午後四時にお風呂や夕食で家に帰るま
で、決められているのは国語と算数と昼食ぐらいなもので、あとは
その時の気分しだい。理科や社会が写生大会になったり映画鑑賞会
になったり家庭科がドッヂボールになったりなんてのは日常茶飯事
で、逆においたをしたり怠けたり、先生に注意されても反省しない
子がいると、お仕置きも一日をかけてやられたりする。
 ここではすべての時間がゆったりと流れている感じなのだ。
 『こんなことしていて大丈夫なのか?』
 当初は本気で心配してしまうような学校生活だった。
 ただ14歳になってからは生活がガラリと一変する。自由な雰囲
気が勉強中心の生活になっていくのだ。特に、山を下りて寮で過ご
す高校の三年間は、男女別個の缶詰状態で恋もできない。可哀想な
青春時代だ。ただ、その分学力はの方は一気に伸びていくから特に
男の子などはそこそこ名のある大学へ次々と受かってしまうので
ある。
 そして18歳になると彼らは念願の実母に会うことができる。
 もちろん、色んな事情から会いにこない母親もいるし、亡くなっ
た親だっているから全員が生みの母に会えるわけではないのだが、
多くはこのタイミングで実の親と会うことになるのだ。
 ただ、再会した親が子どもを引き取るケースは少なく、親の事情
もあるだろうが、子どもの方も物心つく前からの亀山暮らし、突然
現れた肉親より親しみのある義兄弟との生活を選ぶことの方が多かっ
た。
 話が急にそれてしまったが、茜ちゃんはどのおじ様たちともたっ
ぷり時間をかけて親しげに会話しては最後に形ばかりの鞭をもらっ
て次から次へと大人たちを渡り歩いている。
 そして、ついに私の処へもやってきたのだが私は困ってしまった。
 「すみません、先生。私、どんなこと話たらいいでしょうか?
実は、私、この子と初対面なもので……」
 私は恥を忍んで茜ちゃんの後ろに立つ先生(ママ)に尋ねてみた。
 すると先生が……
 「いいんですよ。どんなお話でも、そんなことに何の制約もあり
ませんわ」
 そこで、とりあえず膝の上に上げてみると……
 茜ちゃんは他のおじ様たち同様、私にも屈託のない笑顔を息が掛
かるほど間近で見せてくれるのである。そして……
 「ねえ、おじ様、連立方程式ってわかる?」
 と、いきなり妙な質問をしてきたのである。
 「えっ?……まあ、簡単なものなら……」
 予想だにしない質問にどぎまぎしていると……
 「だったら、教えて」
 とさらに満面の笑み。
 「いいけど、ここにはノートも鉛筆もないよ」
 私がこう言うと、茜ちゃんは一瞬で私の膝の上から飛び降り…
 「じゃあ、持ってくる」
 こう言って脱兎のごとく学校の建物の中へと消えていったので
ある。

§9 <天使の庭で>

§9 <天使の庭で>

 「いかがですか、ここの暮らしは?」
 茜ちゃんがこの場を去ると、彼女のママ、秋山先生が私に話しか
けてきた。
 「快適です。まだ慣れない事も多いのですが来てみて想像以上で
した」
 「それはよかった。私たちもそう言って頂けると張り合いがあり
ます。(’-’*)♪ここはなんと言ってもお父様方のお力で成り立っ
ておりますもの」
 「いやいやそれを言うなら先生方のご尽力の賜物ですよ。それに
してもどの子もあまりによい子ばかりなんで驚きました。私も一応
子育てはしてみましたけど、うちの子はこんなに素直じゃなかった。
こういう言い方は問題あるかもしれませんが、なさぬ仲の子を、
どうしたらこんないい子が育てることができるのか不思議なくらい
です。私は当時お金も教養もありませんでしたからそれは仕方の
ないことかもしれませんけど……」
 「そんなことありませんわ。簡単なことですのよ」
 「えっ!?」
 「余計な情報を入れず、過度な期待を持たず、常に愛情深く育て
ればそれだけでいいんです。『あなたはママの赤ちゃん。お父様の
赤ちゃん。司祭様も女王様も先生方も全ての大人の人たちはあなた
を愛していますよ』って語りかけ続け抱き続ければ、みんなみんな
良い子に育ちます。お金や教養は関係ありません。全てはよりよき
暗示ですわ」
 先生はゆっくりとした口調ながらも自身ありげにおっしゃいます
から、こちらはちょっと拍子抜けしてしまいました。でも、確かに
言われてみれば、子育てなんてそれだけの事なのかもしれません。
ただそんな事ができるのは日本広しといえどここだけ、亀山でしか
出来ない芸当のようでした。
 「私たちはお父様方が天使のように汚れのないお子さんをお望み
なので、そのように教育しているだけですわ」
 「茜ちゃんは快活なよい子ですからきっと人気者なんでしょうね」
 「打てば響くタイプなのでお父様だけじゃなく他のおじ様方にも
人気がありますのよ。おかげでお仕置きされる事も多いですけど
……。ただ、あの子ならそれも乗り越えられるでしょうから心配は
していませんのよ」
 「なるほど。でも同じように育てていても、やはり個性は人それ
ぞれ、中には優等生タイプというかお仕置きに縁のない子もいたり
するんじゃないですか…」
 「ええ、理屈はそうですが……そもそもお仕置きに縁のない子
なんて実は一人もおりませんのよ。お仕置きを受けるのは神様の
思し召しでもありますからね、私たちとしてはどの子にも平等に
光が当たるように育てるだけですわ」
 先生は茜ちゃんが戻ってくるはずの校舎の入り口を気にしながら
こう続ける。
 「誤解があるといけませんが、お仕置きに縁のない子だからその
子は優秀という事ではないんです。むしろ、そうした子は恥をかき
たくないあまり、何に対しても消極的になってる子が多いですから
ね。むしろ、好ましくないんです」
 「打っても響かないタイプ?」
 「そうした子は何かと言うと自分の殻にこもってしまいますから
……私たちにとってはむしろ困った子なんです」
 「いけませんか?そんな優等生タイプの子は?」
 「恥をかくというのは女性にとっては辛い事です。心を痛める
出来事です。でも、それを嫌がっていては肝心な時にも目を背けて
チャンスを潰したり、困難を恐れて小さな傷口をかえって大きく
してしまい、揚句の果てに、取り返しのつかない事にもなりかねま
せん」
 「度胸をつけさせるってことでしょうかねえ?」
 「ええ、そう言う事でもあります。よく男は度胸なんて言います
けど本当に度胸が必要なのは力のない女の方なんです」
 「で、ここならハレンチなお仕置きも安全ということで訓練して
いるってことですか?」
 「もともとこうしたことは親子のような親しい関係があって成り
立つものなんです。お仕置きってもともと家庭内の出来事ですから
……ただ、ここは特別なんです」
 「特別?」
 「ここの場合、子どもたちにとっての『お家』は『お父様の住ま
い』ということではありません。亀山にあってはこの山そのものが
天使たちの家であり揺り篭なんです」
 「なるほど、そんな理由があったんですね。私はてっきりお父様
の要望に応えるためかと……(≡^∇^≡)……とんだげすの勘繰りで
したね」
 「いえ、もちろんそれもありますよ。お父様に満足していただく
のは子供たちや私たちの義務ですから。ただそれが子供たちのため
にならないなら、もちろんやりません」
 「ということは、恥ずかしいお仕置きは効果があると…
(≡^∇^≡)」
 「ええ、女王様はそういうお考えですし、私も無意味だとは思っ
ていないんです…ま、子供の頃はなんてハレンチな事するんだろう
って思ってましたけど……(≡^∇^≡)」
 「ん?『思ってました』?…ってことは先生もここのご出身?」
 「ええ、子供の頃は裸のお尻を晒すたびにママや先生方を恨みま
した。ですが、それが良いか悪いかをいう前にこれは必要なんだっ
て実社会へ出てからわかったんです」
 「裸にならなきゃならない事態になったんですか?」
 「まさか」
 先生が笑う。
 「そうじゃなくて、私たちって……世間知らずで社会に出て行く
でしょう。それって箱入り娘さんと同じなんです。そんなお嬢様
たちとお知り合いになれたのでお話をうかがっていると、実は育て
られ方もよく似ていて…彼女たちもお家で恥ずかしいお仕置きを
たくさん受けたそうなんです。もちろんお嬢様たちの場合は、
お父様お母様の他は古くから仕えている女中さんだけの密室でした
けど、でも、これが一人二人なんかじゃなくてわりとどの家庭でも
行われていたみたいで……それで、私たちだけが変なことをされて
たわけじゃないんだってわかると、考え方も少しずつ変わってきた
んです」
 「でも、中にはなかなか隙を見せない子もいるんじゃないです
か?」
 「ええ、優等生タイプにはそういう子が多いんですが……でも
そこは子供の事、なんとかなります。理由はなんとでも見つける事
ができますから……」
 「たとえ、こじつけでも…」
 「ええ、そのような事をした事もあります。大事なことは、みん
なと同じようにちゃんとお仕置きを受けさせること。ちゃんと恥を
かかせることなんです」
 「でも、大丈夫なんですか?そんな事をして…」
 「どうしてですか?むしろその方がお友だちともうまくいきます
わ」
 「お友だちと?」
 「女は妬み嫉みの強い生き物ですからね、『一人のお友だちが自分
たちとは違ってお仕置きを受けなかった』となると……それを許さ
ない子が多いんですよ」
 「でも、それはその子が大人たちの意向に副って生活してきた
結果で……その子の責任ではないでしょう」
 「はははは(^◇^)」先生は意外なほど高らかに笑いました。
 そして………
 「それは男性の考えですわ。女の子の社会はそうはならないん
です。お友達や仲間の子たちとは理屈抜きに同じ事をしていたいん
です」
 「なるほど、運命共同体って事ですか」(≡^∇^≡)
 「これって女性にとってはとっても大事なことなんですよ。『いつ
までもみんなとお友達でいたいけど、一緒になってお仕置きは受け
る勇気はない。でも仲間はずれにもなりたくない』こんな気持が心
の中で渦巻いているんです。ですから優等生の子を無理やりにでも
お仕置きしてやると、むしろいい顔になるんです」
 「いい顔?……ですか?」
 「ええ、何と言ったらいいか…そうですね…憑き物が落ちたという
か、…ほっとしたというか」
 「不思議ですね。そんなことしたら嫌われて口もきかなくなるみ
たいに思えますけど」
 「その反対のケースがほとんどですわ。口にはだしませんけど、
私、女ですから、その子の気持がわかるんです」
 「どういうことですか?」
 「女の子というのはお友だちの中で一人浮いてしまうのが嫌なん
です。『不正をしたわけじゃないんだし私が優秀だったからお仕置き
受けないだけでしょう!』なんて言ってみても虚しい言い訳でしか
ないんです。女の子の世界ではみんなと同じ事ことをするのに理由
なんか必要ないんです。『一人だけ抜け駆けしてずるい。あんな子、
許せない』女の子の理屈はこれだけです。それだけで、陰口をたた
かれたり、仲間外れにされたりしますから」
 「え!?だって…」
 私はそこまで言って思わず絶句してしまった。
 「だから女の子って、一人でお仕置きを受ける時はこの世の終わ
りみたいに泣き叫ぶくせに、みんな並んですっぽんぽんにすると、
その時はわりと平気な顔してる子が多いんです。……どうしてだか
わかります?」
 「いいえ」
 「女の子は、みんなと一緒にいるという安心感が気持をとっても
楽にしてくれるんです。これはどんな精神安定剤より効きますのよ」
 「ほう……」
 「実は、女の子にとって一番辛い罰というは、ぶったり叩いたり
することでも恥をかかせることでもないんです。…長い時間一人に
すること。孤独の中に置くこと。これが女の子にとっては極刑なん
です」
 「そんな罰がここにもあるんですか?」
 「えっ?」先生は一瞬戸惑った様子だったが、すぐに笑って……
 「ありませんわ。だからやらないんです。子どもたちに与える体罰
は、どんなに厳しいものでも、愛の中で行われなければ何の意味も
ありませんもの」
 「なるほど」
 私が気のない返事を返すと、そこへ茜ちゃんがようやく戻って
きた。

§10 <天使の庭で>

§10 <天使の庭で>

 茜ちゃんは二三冊の本を大事そうに抱えてやってくるとベンチに
腰をおろした私の前でペコリとしてから、そのまま勢いよく私の膝
の上に飛び上がる。
 あっという間もあればこそ、ドスンという重みが膝にかかる。
 『おいおい』
 と言ってみたかったが、彼女の屈託ない笑顔に負けて頭を撫でて
しまった。
 「ねえ、これよ、この式、これってどうやって解くの?」
 彼女はそそくさと栞(しおり)を頼りに本のページを捲ると単刀直入
に尋ねる。
 「ほらほら、慌てないの。解き方がわかっても数式のたてかたが
分からないと意味がないだろう」
 私は入れ込むじゃじゃ馬を落ち着かせるようにさらに抱き寄せる。
 そして、ほっぺたのうぶ毛が私の息でそよぐ光景を楽しみにいく
つかの設問に数式のたて方や解法を教えてやったのである。
 解法は一度教わると二度と私の手を煩わせることがなかった。
 「解法は誰かに習ったの?」
 「最初はちょこっとお姉様。でも、あんまり丁寧に教えてくれな
かったからしつこく聞いたら…こんなのは中学生になってからやれ
ばいいのとか言っちゃって……意地悪言うから、あとは自分で本を
見て覚えたの」
 「そうかあ、独学なんだ。そりゃ凄い!今なら中学生のお姉様た
ちにだって負けない力があるよ」
 「ホント!?やったあ!」
 「でも、鶴亀算の方はまだ完璧にはいかないんだろう?」
 野太い声にはっとしてあたりを見回すと高遠のおじ様だ。彼だけ
ではない、いつの間にか周囲におじ様達が集まっていて私たちの
様子を羨ましげに覗き込んでいた。
 「いいのよ、あれは…問題解決」
 「どうして?」
 「だって連立方程式で解けば……こちらの方が簡単だもの」
 「なんだ、それで方程式を教えて欲しいって言ったのかあ。……
でも、鶴亀算は算数としての考え方を身につけるのには大事な訓練
になるからね、おろそかにしてはいけないんだよ」
 「答えが合えばいいんじゃないの?」
 「今は良くても、これから学年が進んで高い次元の数式に取り組
まなければならなくなると、どうやって答えを導きだしたかが大切
になってくるんだ」
 (((((((・・;)そ~~と覗いてみる
 「ふ~ん」
 気のない返事だが、それは今、問題を解いている最中だからだろ
うと好意的に解釈した。
 「先生、この子は女の子には珍しく算数が好きみたいですね」
 「特に算数が、というのではなく何に対しても好奇心旺盛ってと
ころでしょうね」
 「お父様は?この道?」
 「さあ┐('~`;)┌私にはまだ何も…でも、お気に入りみたいです
から、この子が望めば、あるいは男の子たちの進学クラスに入る
かもしれませんわ」
 「すると、四年生の大学へ行って、末は博士か大臣か……」
 「さあ、それはどうでしょう。女の子は何かにつけて飽きやすい
ですから……」
 私は茜ちゃんを膝の上に乗せて30分も頑張った。亀山では日頃
から膝を鍛えておかないと楽しみが半減します。(^-^)
 「さあ、もういいでしょう。他のおじ様のところへも行かなけれ
ばならないわ」先生はその時そうおっしゃったが、気がつけば私た
ちの周囲を取り囲んだおじ様たち輪がぐんと狭まっている。
 待ちかねたおじ様たちの中には茜ちゃんの頭を撫でたり、進んで
方程式の解法をレクチャーする人までいた。
 そう、すでにこの時、茜ちゃんはここにいるおじ様たちのアイド
ルになっていたのである。
 「さあ、おじ様にお仕置きをお願いしなさい」
 「え~~もう少しいいでしょう!」
 「だめです。桐山のおじ様には特にお世話になったんだからパン
ツを脱がしていただいた方がいいかもしれないわね」
 「嫌よ、どうしてそうなるのよ」
 「だって、その方が今習った事を忘れないでしょう」
 「嘘よ、そんなの」
 真に受ける顔が何とも可愛い。
 「おいで」
 そう言って彼女を裏返しにするとその顔がさらにひきつる。
私は茜の短いスカートを捲るとおもむろにショーツに手を掛けて
みた。すると、今度は観念したような顔になる。その可愛いことと
言ったら…
……でも、こちらもそう時間を引き延ばせない。
 「ほら、いくよ」
 そこで、ショーツの上から二つ三つどやしつけてやる。本当は
もっとあやしていたいところだが…
 「ほら、終わったよ」
 こう言って開放するしかなかった。
 すると、膝を降りるなりまたペコリと頭を下げて次のおじ様の
処へ。
 我々おじ様たちができるのはこれだけ。これで不満なら今のお父
様から茜ちゃんをもらい受け、自分の子どもにするしかない。ただ、
私はこれで満足。今の今まで茜ちゃんが座っていた暖かい重みが私
の心の奥底をしばらくは揺さぶり続けてくれるからそれで十分だ
った。
 どんな高級ワインも豊潤なブランデーも彼女の笑顔にはかなわな
かったのである。
 この後、茜ちゃんは二三人のおじ様のお膝で可愛がられると、
最後はお父様の胸に収まった。一旦は席を立ったお父様が、頃合を
見計らって公園の隅で彼女を待っていたのだ。
 すると、当然と言えばそれまでの事だがお父様への対応は私たち
とはまったく違っている。いきなり首っ玉にしがみつくと、膝の上
にでは『この子はこんなにも小さかったか?』と思わせるほど身体
を小さく縮めてお父様の小さな胸の中に納まろうとするのだ。
 言葉だって……、
 『これじゃあまるっきり赤ちゃんじゃないか』
 私は二人の会話を聞いていて呆れてしまった。
 「あ~ちゃんね、今日、ママからおちおき受けたの。とっても痛
かったんだから。それに、おぢちゃまたちが見てるところでなんだ
から……とっても恥ずかしかったんだから……ママに、あ~ちゃん
はもう大きな赤ちゃんなんだから、大人の人の見ている処ではパン
ツを脱がさないでくださいってお願いしてよ~~」
 「しょうか、しょうか、それは災難だったったねえ。でもね、
先生もあ~ちゃんを立派にしようってお仕事だからね、お仕置きは
仕方ないんだよ」
 「仕方なくないよ。あれって、とっても恥ずかしいんだから…」
 「しょうか、嫌か……でも、嫌な事をするのがお仕置きだから
なあ」
 茜ちゃんはそれから先もお父様のお膝の上で15分も甘え続けた
のである。

                                 <了>

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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