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真理子のお仕置き(下) ~ ある夜の出来事 ~


      真理子のお仕置き(下)
                 ~ ある夜の出来事 ~

 絶体絶命の真理子ちゃん。こうなったら、お兄ちゃんの前でも
脱ぐしかありませんでした。

 「ほら、ぐずぐすしないの!」
 佳苗お姉さんにまた叱られます。

 当時の五年生というのは今の子のように成長が早くないので、
大きな体の変化はまだこれからなんです。
 ただ真理子ちゃんは女の子。気持だけは生まれた時からずっと
女の子でしたから、男の子のように潔くとはいきませんでした。

 「ほら、ほら、もたもたしないの」
 最後は佳苗お姉ちゃんが手伝って脱がせていきます。
 真理子ちゃん、その最中に「私、自分でやるから」と言ったん
ですが、それも許してもらえませんでした。

 しかもこの罰、ただ裸になればよいというわけではありません。
 この地獄から抜け出すためには、罪を認め、反省の言葉を口に
しなければなりません。

 それもまた真理子ちゃんにとってプライドの傷つくことでした。

 まず、佳苗お姉さんがその台詞を教えます。
 「私は、ミミや健太をそそのかして、哲哉お兄さんのお布団で
オシッコをしました」

 こう言うと、真理子ちゃんは反論します。
 「だって、私、やってないもん」

 でも、それは通らなかったのです。
 「だから、前にも言ったでしょう。あなたが直接やらなくても
年端も行かない子をそそのかしてやらせたら、それは、あなたが
やったのと同じなの。……むしろ、まだ善悪の区別もつかない子
にやらせたあなたの方が罪は重いくらいよ。このくらいの罰は、
当然なの。……わかった!!」

 姉の大きな声、厳しい態度に真理子ちゃんはたじろぎます。
 思わずオシッコ漏らしそうになりました。
 ですから不満はありましたが、『仕方ないお付き合いしなきゃ』
と思うのでした。

 「さあ、わかったら私の言う通り懺悔するの。いいわね!!」

 「はい」

 「私はミミや健太をそそのかして……」
 「……私はミミや健太をそそのかして」

 「哲哉お兄さんのお布団で……」
 「……哲哉お兄さんのお布団で」

 「オシッコをしました」
 「オシッコをしました」

 「私の邪まな心を治すために……」
 「……私の邪まな心を治すために」

 「厳しいお仕置きをお願いします」
 「厳しいお仕置きをお願いします」

 もちろん、本心ではないでしょうが、でもこれを言わない限り
真理子ちゃんは次のステージへ進めません。
 このままずっと裸でいるわけにもいきませんから、それは仕方
がありませんでした。

 「はい、よくできました。……それじゃあ、あなたの望み通り
厳しいお仕置きをしてあげるから、覚悟しなさい」
 佳苗お姉ちゃんは素っ裸で膝まづく真理子ちゃんに宣言します。

 とっても理不尽な懺悔ですが、でも、これ、お母さんがいつも
やっていることでした。つまり、お姉ちゃんがやっているのは、
お母さんが普段やってるお仕置きを真似しているのです。

 ですから、佳苗お姉ちゃんだって幼い頃はお母さんにこの懺悔
を散々やられています。亡くなったお父さんの前で裸にされて、
お母さんが耳元で囁く台詞を棒読みにするのです。
 その後、お父さんから鞭でぶたれたことも一度や二度ではあり
ませんでした。

 佳苗お姉ちゃんにしてみれば我が家伝統のお仕置きを踏襲した
にすぎなかったのです。
 ですから、その後の鞭も、当然、伝統に則って行われます。

 「さあ、ここに仰向けになりなさい」

 佳苗お姉ちゃんは、真理子ちゃんの勉強机の上を片付けると、
広くなったテーブルを叩きます。

 「はい」
 真理子ちゃん、これからどんなことが起こるか承知していても、
もうそこへ行くしかありませんでした。

 この鞭はテーブルの上に仰向けに寝かされ、両足を高く上げた
姿勢で行われます。赤ちゃんのオムツ換えでよく見られるポーズ
です。
 女の子はすべてをさらけ出し、お尻の山を硬質ゴムのパドルで
叩かれます。

 その痛いの、恥ずかしいの……
 二つの苦痛がいっぺんに来るお仕置きだったのです。

 しかも、佳苗お姉ちゃんのときは、相手がお父さんでしたから
まだいくらか救いもありましたが、真理子ちゃんの場合は相手が
つい最近まで赤の他人だった哲哉お兄ちゃんです。

 そのお兄ちゃんが高く上げた両足を持ち、そこから自分の恥ず
かしい場所を間近で見ています。
 その恥ずかしさは半端じゃありませんでした。

 落ち着かない様子であちこち眺めている真理子ちゃん。
 どうやらパドル打ちは佳苗お姉ちゃんのようです。

 「さあ、いつものように数を数えなさい。声が小さいようだと
カウントしませんからね」

 お姉ちゃんはそう言うと、最初の一撃を振りおろしました。

 「ピシッ」
 「ひと~つ」
 たった一つですが、真理子ちゃん、もう涙声だったのです。

 「はい、もう一つ……」
 「ピシッ」
 「ふ…ふたあ~つ」

 「ほら、声が小さいわよ」
 「ピシッ」
 「みっつ」

 と、その時でした。
 予期せぬ出来事が……

 「何してるの?」

 襖が開いて、健太が顔を出します。
 寝ぼけ眼の少年に佳苗お姉さんも哲哉お兄さんもびっくりです。

 「何でもないわ。健太、トイレなの?」
 佳苗お姉ちゃんがとりなして、健太君をトイレへ誘導します。
 こんなところはすでに本当のお母さんみたいでした。

 すると、この瞬間、部屋には哲哉お兄ちゃんと真理子ちゃんの
二人だけ。

 真理子ちゃんは、今さっき健太君に恥ずかしい処を見られたん
じゃないかと思って気がかりです。そして、今まさらながら哲哉
お兄さんに恥ずかしい場所を見られているという思いで居たたま
れなくなるのでした。

 「どえうしたの。恥ずかしい?佳苗お姉ちゃんも言ってたけど、
恥ずかしいのもお仕置きだから、我慢しなくちゃね」

 哲哉お兄ちゃん、真理子ちゃんの絶望的な顔色に気づいたので
しょう。高く上がった両足を握ったままでしたが、近くにあった
タオルで真理子ちゃんのお股を隠してくれます。

 でも、それがまた恥ずかしくて、真理子ちゃんの涙は止まりま
せんでした。

 「小さい子のしたことだからね、僕は、健太君やミミちゃんの
ことは何とも思ってないよ。……でも、君はお姉さんだから……
まだ世の中の事がよく分かってない子をけしかけちゃいけないな」

 お兄ちゃんの優しさが真理子ちゃんには心にしみます。
 不思議なもので、こんな時は、何をしてもすぐに感情的になる
実の兄弟より、少し離れた場所にいる人の意見の方が心に届くの
でした。

 健太君をトイレへ送っていった佳苗お姉ちゃんが帰ってくると
お仕置きが再開されます。

 「さあ、歯を喰いしばって……いくわよ」
 「ピシッ」
 「四つ」
 お尻はすでに真っ赤でしたが、真理子ちゃんの声がほんの少し
だけ元気になったみたいでした。

 「恥ずかしい?」
 佳苗お姉ちゃんの問いかけに真理子ちゃんが小さく頷きます。

 「……だったら、ようく今日のことは覚えとくことね」
 すると……
 「はい」
 という素直な声が返ってきましたから、むしろ佳苗お姉ちゃん
の方が面食らってしまいました。

 「ピシッ」
 「五つ」

 最後の六つ目を振り下ろす時、佳苗お姉さんは……
 「私の分はこれが最後よ。あと半分は、哲哉お兄さんにやって
もらいますからね」
 佳苗お姉さんにこう言われた時も、真理子ちゃんは素直に頷き
ます。

 むしろこの言葉を聞いて面食らったのは哲哉お兄ちゃんの方で
した。
 『えっ!僕?』
 驚いてるうちに六つ目の鞭が飛んで……

 「ピシッ」
 「六つ」

 「よし、これで選手交代ね」
 佳苗お姉ちゃんはこう言って哲哉お兄ちゃんの胸に使い慣れた
パドルを押し付けます。

 『えっ、僕が?……ちょっと待ってよ』
 まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてパドルを受け取った
哲哉お兄ちゃんでしたが、それを眺めているうち、考えが変わり
ます。

 『そうか、僕が長兄。僕が当事者だもんね』
 自分はこの家では腹違いとはいえ長兄ですし、事件の当事者で
もあるわけで、拒否もしにくいと思うようになったのでした。

 『ん…………』
 それと真理子ちゃんはすでにこれ以上隠しようがないほど自分
をさらけ出していますから、これから先、自分が真理子ちゃんに
対してさらに残酷な辱めをするわけでもありません。

 そんなこんなを一通り頭の中で整理した結果……
 『お尻を叩くことぐらいなら仕方がないか』
 と決断したのでした。

 もちろん、そこでは十分に手加減するつもりだったのです。
 ところが……

 「さあ、いくよ。歯を喰いしばって……」
 「ピシッ」

 「いやあ~~~痛い~~~~助けてえ~~~~」
 最初の一撃を受けた瞬間、真理子ちゃんがこれまで以上のもの
凄い悲鳴を上げたのです。
 当然、哲哉お兄ちゃんはビックリです。

 「そんなに痛かったかい?ごめん、ごめん」
 哲哉お兄ちゃんは慌てて謝りますが……
 それを見ていた佳苗お姉ちゃんも即座に動き出します。

 妹の高く上がった足を拘束する役に回っていた佳苗お姉ちゃん
は、いったんその役を離れ、哲哉さんから無言でパドルを取上げ
ます。

 『あっ!』
 哲哉お兄ちゃんは、その瞬間、てっきり自分が叱られるのかと
思いました。

 でも、パドルを受け取ったお姉ちゃんはUターン。

 仰向けで学習机の上に寝ている真理子ちゃんにのしかかるよう
にして自分の顔を近づけると……哲哉お兄ちゃんから受け取った
パドルで鼻先でちらつかせながら……

 「真理、いいかげんになさい。ここはあんたが甘える場所じゃ
ないの。これはお仕置きなのよ。あんたがそんなことするのなら、
もう六回、パドルを増やしてもいいのよ」

 「…………」
 真理子ちゃんは耐えられず、佳苗お姉ちゃんが覗き込んだ方向
とは反対の方向に顔を向けますが、お姉ちゃんはさらに追い討ち
をかけます。

 「それともあなた……最近、お灸のお仕置きがごぶさたしてる
みたいだから恋しいんじゃないの?…あれ、やってあげましょう
か?」
 と、囁きます。もちろん、明らかな威しでした。

 「…………」
 哲哉お兄ちゃんの気を引こうとした真理子ちゃん、一言もあり
ませんでした。

 男の子の世界では分からないことも女同士ならわかるという事
がよくあるみたいです。これはその一つだったのかもしれません。
 佳苗お姉ちゃんは妹の微妙な変化を見逃さなかったのです。

 「哲哉さん、ビシビシやって構わないわよ。女はなまじ手加減
するとすぐに甘えが出るから厳しくやった方がいいの」

 「でも……」

 「大丈夫。どんなに強く叩いても、お尻は壊れたりしないから
……何なら、両足をもっと開かせましょうか?……この子だって、
今さら隠す処なんてないはずだから……」

 佳苗お姉ちゃんは、哲哉お兄ちゃんにパドルを返す時、発破を
かけます。

 でも、それだけではありませんでした。

 「あっ、ちょっと待ってて……今、お兄さんがやりやすいよう
にしてあげるから……」

 佳苗お姉ちゃんは両親がこんな日の為に用意している救急箱の
ような箱を真理子ちゃんの本棚から持ち出します。

 それは、この家の子供部屋には必ず置かれている『お仕置き箱』
 中には、艾やお線香、イチジク浣腸やグリセリンの入った茶色
の薬壜、ピストン式のガラス製浣腸器などが入っていました。

 佳苗お姉ちゃんはここからお線香とお線香立てだけを取り出す
と、火を点けて真理子ちゃんの枕元に置きます。
 たちまちお線香特有の香りが部屋中に広がりました。

 『もし素直にお仕置きを受けないなら、本当にお灸を据えるよ』
 という合図です。

 艾を出しませんでしたから、真理子ちゃんに対して本当にお灸
を据えるつもりはなかったんでしょうが、真理子ちゃんはかつて
両親から実際にお灸を据えられた経験がありますから、お線香の
香りを嗅いだだけでも相当なプレッシャーになるのでした。

 「これでいいわ。これで真理子もおとなしくなるはずよ」
 佳苗お姉ちゃんは自信満々に宣言します。

 これって『妹を厳しく躾けなきゃ』という姉の優しさではある
んでしょうが……ひょっとすると、妹が哲哉お兄ちゃんに寄せる
思慕を鋭く感じ取って、嫉妬していたのかもしれません。

 いずれにしても、真理子ちゃんは最後の最後まで恥ずかしくて、
恐くて、痛いお仕置きを受け続けなければならなくなるでした。

 「ほら、この際だから、あなたの全部をお兄さんに全部見せて
あげなさいな。……ほら、もっと足を開いて……」
 佳苗お姉ちゃんは暴走します。

 「いやよ、恥ずかしいもん」
 真理子ちゃんも抵抗したのですが……

 「何言ってるの、あなたのこんなところ、赤ちゃんのときから
まだ何も変わってないじゃないの。さあ、いいから開けて!!」

 佳苗お姉ちゃんは妹の穴という穴を全部さらけ出させてから、
哲哉お兄ちゃんにお尻をぶたせたのでした。

 「ピシッ」
 「一つ」

 「ピシッ」
 「二つ」

 「ピシッ」
 「三つ」
 「ほら、また声が小さくなった。もっと大きな声を出して……」

 「三つ!」
 真理子ちゃんのやけくその声が部屋じゅうに響きます。

 「大丈夫だよ、僕は聞こえてるから……」
 哲哉お兄さんは優しいのですが……

 「だめよ、今のはノーカウント。……そうね、あんたの場合は
それじゃ反省が足りないわね。……そうだわ、数を数えたあと、
『もう、二度と悪さはいたしません』って言うの。わかった!!」

 佳苗お姉ちゃんに脅されると、真理子ちゃんは素直に従います。
 長年の習慣でしょうか。真理子ちゃんは哲哉お兄さんより佳苗
お姉ちゃんの指示に従うのでした。

 「ピシッ」
 「三つ、もう二度と悪さはいたしません」

 真理子ちゃんが自分の指示通りに懺悔すると佳苗お姉ちゃんは
満足そうに……
 「次も、そう言いなさい」
 と再び指示をだします。

 「ピシッ」
 「四つ、もう二度と悪さはしません」

 「ほら、また足を閉じようとした。ダメだと言ってるでしょう」
 「ごめんなさい」
 「そら……もう一つ」

 佳苗お姉ちゃんは、ついには哲哉お兄ちゃんまでも顎で使って
いるみたいでした。

 「ピシッ」
 「五つ、もう二度と悪さはしません」

 「次に悪さをしたら、お灸でもかまいません」
 「えっ!?」
 「えっじゃないでしょう。お兄ちゃんの鞭の後にそう言うの。
言ってごらん!!」

 真理子ちゃん、もう、何も抵抗できなくなっていました。

 「ピシッ」
 「六つ、次に悪さをしたら、お灸でもかまいません」

 「よし、それでいいわ。お仕置きは素直に受けるのが何よりよ」

 結局、真理子ちゃんは佳苗お姉ちゃんから六回。役割を代えて、
哲哉お兄ちゃんからも六回。いえ、七回ですか。恥ずかしい姿勢
のままパドルでお尻をぶたれてから開放されます。

 ただ勉強机の上から開放されたあとも最後はやっぱり裸のまま
床に正座して頭を下げます。

 「お姉ちゃん、お仕置きありがとうございました」
 「お兄ちゃん、お仕置きありがとうございました」
 真理子ちゃん、お仕置きをしてくれた二人に向かって、お礼の
言葉もしっかり言わなければならないのでした。


 えっ!こんなことされたんだから、真理子ちゃん、さぞや哲哉
お兄ちゃんや佳苗お姉ちゃんのことが嫌いになっただろうって?
…………
 ところがね、そこが女心は不思議なところなんですよ。


***********(下)*************

真理子のお仕置き(中) ~ ある夕方の出来事 ~

      真理子のお仕置き(中)
                 ~ ある夕方の出来事 ~

 午後3時半、真理子はルンルン気分で家に帰ってきます。

 『そうか、お仕置き、許されたんだ』
 もし、そう思った方がいたら、大変な勘違いです。

 彼女がルンルンなのは単純に学校が楽しかったから。
 朝のお仕置きの話なんてその頃にはすっかり忘れていました。

 そもそも小学生というのは、そんなネガティブな情報を長い間
覚えている能力がありません。学校の授業、友達とのおしゃべり、
給食、体育……ちょっとでも楽しいことがあれば、そちらに気を
取られて自分の都合の悪いことなんてすぐに忘れてしまいます。
 とても幸せな人生なんです。

 ですから、帰宅してすぐ、ランドセルを放り出してまた遊びに
出かけたとしても、その際、哲哉お兄ちゃんが「佳苗お姉ちゃん
がお部屋で待ってなさいって言ってたよ」と伝言したとしても、
聞いてるはずがありませんでした。

 結局、真理子ちゃんは夕方遅く、いつものようにもうそろそろ
夕飯ができてる頃だという時間になって帰って来ます。

 「お姉ちゃん、ただいま~~~おう、やったあカレーじゃん」
 真理子ちゃんは台所へ顔を出すと、すでに帰宅していた佳苗お
姉ちゃんともまるで何事もなかったかのように挨拶をします。
 もちろんその顔は何か心配事を抱えているようではありません
でした。

 また、お姉ちゃんの方も……
 「真理、先に健太と一緒にお風呂にに入っちゃって……」
 「いやだ……」
 「どうして?」
 「だって、健太の奴、私の身体ジロジロ見るんだもん。恥ずか
しくて……」
 「何言ってるの、二人ともまだ子どものくせに……いいこと、
あんたがお姉ちゃんなんだから、お風呂で健太の身体もちゃんと
洗ってあげるのよ」

 そんなお姉ちゃんとのやり取りはごく自然な日常会話。
 真理子ちゃんとしては佳苗お姉ちゃんが朝の出来事をまだ引き
ずっていようとは夢にも思っていませんでした。


 やがて、夕食。
 ここでもミミは哲哉が自分の膝の上に乗せて食事をさせますが、
健太と真理子は佳苗お姉ちゃんの作ったカレーを頬張ります。
 そして、お皿にカレーが無くなると、自分でごはんをよそいに
行き、大なべで煮込まれたカレーをかけて戻ってきす。
 これもごく自然な日常の風景でした。

 ただ、その夕食が終わったあとが、普段の日とは違っていたの
です。

 「ごちそうさま~」
 真理子ちゃんはそう言って席を立ったのですが……

 「真理子、ちょっと待って」
 「……ん?……何?」
 「あなた、何か忘れてない?」
 「何かって?」
 「私、あなたに、朝、お仕置きするって言わなかった?」

 「えっ!」
 真理子ちゃんはここでやっと朝の出来事を思い出したのでした。

 ただ、それって小学生にとってはあまりに古い情報でしたから
……
 「何だ、そのことか。お姉ちゃん、そんなことまだ根に持って
たの」
 と、笑って返したのです。

 「『根に持ってる』って何よ。それじゃ、まるで私が悪いみた
いじゃないの」

 「そういう訳じゃないけど……だって、あれは朝の話だから」
 真理子ちゃんのような小学生にとって朝と夕方は大人の感じる
半日ではありません。大人なら一週間くらいの長さになります。

 ですから、真理子ちゃんにしてみたらそれってすっかり過去の
出来事だったのでした。

 でも、高校生になった佳苗お姉ちゃんは大人に近いですから、
そうはいきません。
 朝の出来事は夕方にだって当然有効ですし、真理子の言動は、
お仕置きを逃げようとして誤魔化してるとしか映りませんでした。

 そこで……
 「真理、宿題がすんだら、私の部屋へいらっしゃい。ぐずぐす
してると、8時を過ぎたら私の方からあなたの部屋行くからそれ
までに済ましちゃいなさいよ」

 「えっ、そんなのないよ~~」
 急に真理子の泣きが入りますが……
 「何言ってるの!朝、お仕置きだって言ったでしょう。忘れた
の?」

 「だって……」
 真理子は不満そうでしたが……
 「あなたもお母さんと約束したわよね。お母さんがいない時は
私の指示に従います。お仕置きも受けますって……」

 「そりゃあ、そうだけど……宿題、たくさんあるし……」
 真理子が歯切れ悪そうに弁明しても、事態はよくなりませんで
した。

 「そんなの関係ないわ。だったら学校から帰って友だちと遊び
に出なければいいでしょう。こっちはそんなこと知らないわ。…
…とにかく、8時までに私の部屋に来ない時はこっちから出向き
ます。いいですね!!」
 佳苗おねえちゃんに強い調子で宣言されちゃいましたからね、
真理子ちゃんとしても、もうどうにもなりませんでした。


 「真理、宿題終わった?……たとえ終わって無くても、すでに
タイムアップよ」
 健太君とミミちゃんを寝かしつけたあと、佳苗お姉ちゃんが、
そう言って自分の部屋へと入ってきます。

 「どうなの?宿題は終わったの?」
 「まだ……」
 「そう、それは残念ね。でも、それは明日、学校でお仕置きを
受ければいいわ。今日の事は今日済ましちゃいましょう」

 「そんなあ~無茶言わないでよ」
 真理子ちゃんは泣き出しそうな顔をしますが……
 「真理、あんたわかってないみたいね。今日は、あんたの宿題
よりこっちの方が大事なの」
 佳苗お姉ちゃんはゆずりません。

 『ヤバっ!お姉ちゃん怒ってる』
 真理子ちゃんは、ベッド上に腰を下ろして膝を叩いてみせる姉
に殺気のようなものを感じてたじろぎます。お互い姉妹ですから、
そのあたりは敏感に感じ取ることができるのでした。

 これって死刑執行の時間ということでしょうか……

 もちろん、そんなの嫌に決まってます。でも、真理子ちゃんは
魅入られたように姉の膝までやってきます。
 幼い時から親代わりだった姉ですからそこに理屈はありません
でした。

 「さあ、おいで!」
 佳苗お姉ちゃんが今まで以上に強く膝を叩くと、それに驚いた
ように真理子ちゃんがうつぶせになります。

 スカートが捲られ、白い綿のショーツが顔を出すと……まずは
それを標的にして平手が飛びます。

 もちろん、ミミちゃんや健太君と同じ様に手加減はしています。
していますが、真理子ちゃんはその子達より年長ですから歳相応
の強さです。

 「いやあ、痛い、もっとやさしくやってよ」
 いきなり愚痴がでます。

 「何言ってるの、痛くないお仕置きがありますか!それじゃあ
お仕置きにならないでしょう!」
 佳苗お姉ちゃんはそう言うと、手首のスナップを効かせ、一層
強く真理子ちゃんのお尻を跳ね上げます。

 「ピシッ」
 「いやあ~~」

 佳苗お姉ちゃんの平手の音と真理子ちゃんの悲鳴が静かな家の
中に木霊しました。もし、健太君やミミちゃんが起きていたら、
きっと聞こえていたことでしょう。

 ただ、それを聞いた人がいました。
 その瞬間、玄関に立っていた哲哉お兄ちゃんです。

 哲哉お兄ちゃんは大学のゼミを終えてちょうど帰宅したところ
だったのです。

 一発だけじゃありません。続けざまに……

 「ピシッ」
 「いやあ、だめえ~~やめて~~~」

 「何言ってるの、コレくらいのことで……」
 「ピシッ」
 「だから、もっとやさしくって言ってるでしょう」

 「できません。そんなこと……」
 「ピシッ」
 「いやあ~~人殺し~~~」

 「やあね、この子。変なこと言わないでよ。ご近所に聞かれた
らどうするの。大きな身体して堪え性がないんだから……」
 「ピシッ」
 「どうもしないわよ。人殺し~~って叫ぶだけなんだから……
みんなに聞こえてもいいもん」

 「口の減らない子ね。だったら、黙らせてあげる」
 佳苗お姉ちゃんはそう言うと、それまでとは比べ物にならない
くらい強いやつを一発お見舞いします。
 「ピシッ!!!」
 「ぁぁぁぁぁぁ」

 確かにそれまでとは違って真理子ちゃんの悲鳴が上がりません
でした。
 今のは、とっても強くて、痛くて、痛みを堪えるだけで精一杯
だったのです。

 と、そこへ哲哉兄さんの声がしました。

 「ただいま」
 彼の声は襖の向こう側から聞こえます。

 「あっ、お帰りなさい」
 佳苗お姉さんはそれに反応して挨拶しますが、真理子ちゃんは
黙ったままでした。

 もちろんこんな格好見られたくありませんからね、心の中では、
『シッシ、シッシ、あっち行って』と叫んでいました。

 ですから、哲哉お兄ちゃんが気を利かせて……
 「僕、自分の部屋にいるから」
 と言った時は、ほっと胸をなでおろしたのです。

 でも、佳苗お姉ちゃんは膝に乗せた妹の心の変化を鋭く見抜き
ます。
 ちょうど『ここはもう少し厳しいお仕置きでないとダメね』と
思っていたところですから、この期を逃しません。

 「ちょうどよかった。お兄さんも入って来て」
 佳苗お姉ちゃんは部屋の外に声をかけます。

 もちろん、そんなこと真理子ちゃんにしてみたらとんでもない
ことですから、膝の上でジタバタし始めます。
 でも、佳苗お姉ちゃんは、そんな悪い子を膝の上から逃がしや
しませんでした。

 「ほら、今さらジタバタしないの。あんた、私の膝から逃げた
ら、今度はお灸だからね」
 この言葉が効果的だったみたいで、真理子ちゃんの抵抗はその
言葉と共に一瞬で止んでしまいます。

 もちろん、佳苗お姉ちゃんがお灸をすえることはないでしょう
が、たとえ威しと分かっていても一度でも据えられた経験のある
小学生にとってそれは恐怖以外の何ものでもありませんでした。

 ただ、部屋の中のジタバタは廊下にいても分かりますから……
 「取り込んでるみたいだから、またにするよ」

 哲哉が去ろうとすると、佳苗がそれを襖越しに呼び止めます。
 「そうじゃなくて、哲哉さん、こっちを手伝って欲しいのよ」

 『手伝って欲しい』
 この言葉は有効でした。ちょっと二の足を踏む事態でも頼まれ
たのなら仕方がないということになります。
 ですから……

 「じゃあ、いいんだね。本当に入るよ」
 哲哉は佳苗に再度断りを入れますが……

 「大丈夫です。お願いします」
 もちろん答えはOKでした。

 そこで、哲哉が襖を開けると……

 「!!!」

 目に飛び込んできたのは、真理子ちゃんの生のお尻でした。
 佳苗お姉ちゃんが襖の開くのに合せて真理子のショーツを引き
下ろしたのです。

 ですから、哲哉はもちろんですが、当の真理子ちゃんだって、
その瞬間は…
 「!!!」
 時間が止まったように身体が固まってしまいます。

 でも真理子ちゃんはその後も大声を出したり身体をよじったり
はしませんでした。
 まだ10年ちょっとの人生経験でも、それが恥の上塗りになる
ことぐらいは理解できたからでした。

 真理子ちゃんはできる限り静かに振る舞い、両足をしっかりと
閉じて間違っても中身が見えないように心がけます。

 ですが、佳苗お姉ちゃんは妹がこっそりやった行動を見逃しま
せん。そして、冷たく言い放ちます。
 「あら、あんたにも恥ずかしいだなんて思うときがあるんだ。
……でも、お仕置きは恥ずかしいことをさせるからお仕置きなの。
……ほら、足を開いて」

 佳苗お姉さんは自分の右手を強引に両方の太股が重なる場所へ
ねじいれましたが、真理子ちゃんの必死の抵抗にあいます。
 すると、ここでも伝家の宝刀を出して脅します。

 「往生際が悪いわね。ほら、いちいち抵抗しないの!これ以上
逆らうと本当にお灸をすえるからね」

 やはりこんな時でも『お灸』は効果覿面でした。
 真理子ちゃんの開かずの扉がたった一言で緩みます。

 「世話焼かせないの!」
 妹のお尻をポンと一つ叩くと、あとは一気呵成。
 佳苗お姉ちゃんはそこに右手を入れて大きく広げたかと思うと、
これも面倒とばかりショーツを足首から外します。

 幼い少女のストリップ。
 観客は哲哉お兄さん一人でしたが真理子ちゃんにはそれで十分
でした。

 真理子ちゃんは消え入りそうなくらい恥ずかしい思いで佳苗お
姉ちゃんの膝にしがみ付きます。
 今は、それくらいしかできませんでした。

 「いやあ!許してえ!もうしません!ごめんなさい!いやいや
いや……やめて~~早くやめて~~お願い、お願い、お願い」
 真理子ちゃんは佳苗お姉ちゃんの振り下ろす平手に絶叫します。

 それは生のお尻になってショーツぶんの衝撃が加わったという
単純なものじゃなくて、男の人から自分の大事な処を見られてる
というショックがそうさせるのでした。

 そして……
 「いやあ~~もうしないもうしない……ごめんなさい、ごめん
なさい……」
 泣き声と共に両足が跳ね回ります。

 すると、絶対に隠しておこうと思っているはずの大事な場所が
何度も何度も哲哉お兄さんの目に触れます。

 佳苗お姉さんだって、激しく抵抗する妹を押さえつけながらの
スパンキングですから厳しさ一杯でした。
 「ほら、生意気に恥ずかしがらないの……あなたはまだ子ども
なんだから……隠す処なんてどこにもないでしょう。恥ずかしい
なんて10年早いわよ」

 そうやって何度もスナップの効いた平手をお見舞いします。

 「だめだめ、やめて、ごめんなさい、だめえ~~壊れるから~」

 真理子ちゃんが絶叫するなか、見かねた哲哉お兄さんが彼女の
両手を押さえにかかります。

 どうしようもないほどの屈辱の中で、真理子ちゃんは、自分の
お尻が腫上がっていくのを我慢し続けなければならないのでした。


 あれで30回もぶたれたでしょうか。
 真理子ちゃんは佳苗お姉さんの膝の上から一旦解放されます。
 でも、これでお仕置きが終わったわけではありませんでした。

 床に転がされた真理子ちゃんは、恥ずかしいのも忘れて必死に
お尻をさすりますが、いくらさすってもお尻のヒリヒリが取れる
ことはありませんでした。

 そのうち、佳苗お姉さんから次の指示が出ます。
 「真理、裸になりなさい」

 「そんなあ~」
 真理子ちゃんは甘えた声を出しますが……

 「何がそんなよ。いつもお仕置きでやってることを今日もやる
だけじゃない」

 いつもやっていることというのは、佳苗お姉さんの前で全裸に
なって膝まづき、両手を背中に回して腰の辺りで組むこと。
 その姿勢まま許可が出るまでじっとしていなければなりません
でした。

 普段は佳苗お姉さんだけですから、たとえ割れ目が丸見えでも、
『これはお仕置きだから仕方がない』で済ませていましたが……
今回、哲哉お兄さんも見ているとなると、そりゃあ真理子ちゃん
の気持は複雑です。

 でも……
 「さあ、早くなさい。それとも、お灸の方がいいの。どっちに
しても哲哉お兄さんは帰らないわよ」

 佳苗お姉ちゃんはまたしてもお灸をちらつかせます。
 すると……

 「いや、お灸はいや」
 小さく真理子ちゃんがつぶやきます。

 「だったら脱ぎなさい。あんたみたいな子供の裸、誰も何とも
思っちゃいないわ」
 
 『そんなこと言っても……』
 真理子ちゃんは困った顔です。

 ですから、哲哉お兄さんも気を利かせて……
 「僕、出ていようか。その方がいいだろう」
 と言ってくれたのですが……

 「それは困ります」
 佳苗お姉さんはきっぱりと断言します。
 「これは、この子のお仕置きだから、ここにいてもらわないと
困るんです。お兄さんも協力してください」
 その口調はお母さんそっくりでした。

 「……」
 哲哉お兄さんもその勢いに押されて黙ってしまいます。

 「とにかく、今日は悪ふざけが過ぎてるし、何よりその原因は
この子にあるんですから……このくらいの辱めは当然なんです。
嫌じゃなかったら、ここにいてください。お願いします」

 佳苗お姉さんから真摯に頼まれると、哲哉お兄さんだって『嫌』
とは言えませんでした。


***********(中)*************

真理子のお仕置き(上) ~ ある朝の出来事 ~

      真理子のお仕置き(上)
                 ~ ある朝の出来事 ~


 哲哉は兄弟の中で最後まで寝ていた。
 論文の執筆に時間を取られ寝たのが明け方だったのだ。
 その彼が周囲の喧騒で仕方なく目を開けると……

 『ん?何だこりゃ?』
 寝ぼけ眼に奇妙な人影らしきものが見える。
 誰かが寝ている自分の目の前に立っているみたいだ。
 焦点も合わないまましばしそれを見ていると……

 『わっ、やめろ、バカ』
 いきなり生暖かい水をかけられた。

 『わあっ、何するんだお前!!』
 こりゃあ、温厚な哲哉でなくても怒るかもしれない。
 だって、哲哉の頭を挟みつけるように立つ全裸のその子は彼が
目覚めたことを確認するや、いきなり放尿してきたのだ。

 起きた早々異常事態だった。
 慌てた哲哉はすぐさま三歳のミミの両脇を鷲づかみにして起き
上がる。

 「ミミ、ここはトイレじゃないんだぞ!!」
 哲哉が恐い顔を作って叱ったが、ミミは笑顔のまま。
 「知ってる」
 そう答えた顔も悪びれてる様子はなかった。

 「じゃあ、どうしてこんなことするんだ?」

 「だって、健太兄ちゃんもやってる」

 そう言われて気がついたのだが、6歳の健太までが立ったまま
パジャマから小さいのを出しては自分の腰の辺りへ放物線を描い
ている。

 「こら、健太!!!」

 さすがに大声が恐かったのか健太の放物線は一瞬で引っ込んだ
が、こちらも顔は笑顔、悪びれている様子など微塵もなかった。
 きっと彼らにしたら、こんなことは目覚まし代わりのちょっと
した悪戯ということのようだ。

 哲哉の大声に異変を感じたのだろう。台所から高校生の佳苗が
顔を出す。

 「……?……」
 彼女、しばし部屋の様子を観察していたが……

 「哲哉、いい歳して、おねしょなんて恥ずかしいわよ」
 と、こちらも笑顔で語りかけた。

 「何言ってるんだ!!お前、一番上の姉ちゃんだろう。何とか
しろよ!!」
 哲哉は大声を上げたが……
 「最後まで寝てる方が悪いのよ。私はチビたちのお弁当作りで
忙しいの。自分でやった不始末は自分で処理しなさいってのが、
亡くなった父ちゃんの言いつけなのよ。……ごめんね~~」

 佳苗は薄情にも台所へ戻っていく。
 「お前のところでは、いったいどんな仕付けしてるんだよ!」
 哲哉は憤懣やる方ない様子で台所へ帰る佳苗に罵声を浴びせた
が……確かにこの場合、相手が幼い子供たち、どうしようもない。

 実は、同じ屋根の下で暮らす兄弟と言っても、哲哉を除く四人
の子供たちは彼の父が再婚した相手、富子の連れ子だった。
 それでも普段ならまだ富子がいるから幼い子の暴走ににらみを
きかすこともできるのだが、ここ数日は、大人二人がハネムーン
に出ていて留守なのだ。

 その間は、大学生の哲哉と高校生の佳苗がボスとなって小さな
子供達をまとめていかなければならなかった。

 「いいかいミミ。お前は女の子なんだから、あんなことしちゃ
だめだよ」

 「あんなことって?」

 「寝てる人の顔にオシッコなんか掛けちゃいけないってこと。
あんなことすると、大事な処が全部丸見えになっちゃうぞ」

 「大事な処?」

 「そう、大事な処だ」
 哲哉はそう言いながら、ミミのお股をタオルで綺麗にしてやる。

 「お兄ちゃん、見たいの?」
 「見たくありません!」
 「だって、真理子お姉ちゃんが、男の子はみんな女の子のお股
が見たいって……」

 『やっぱり、黒幕はあいつか』
 哲哉は殺気を感じて僅かに開けられた襖に目をやる。
 すると、そこにはこの部屋を覗く人影が……

 『ヤバイ』
 と思ったのだろう、人影はさっとその場を離れるが、哲哉にし
ても佳苗にしても、今回の首謀者が誰かは分かっていた。

 真理子、11歳。
 肩まで伸ばしたワンレンのストレートヘアが自慢で、ことある
ごとに弟の健太や妹のミミをそそのかしては悪戯を仕掛けてくる。
もちろん、そのことは長女の佳苗も知っていたから、哲哉が寝床
て大声を上げたときも、黒幕は誰かすぐに分かっていたが、朝は
彼女にとっても忙しい時だから、あえて相手にしなかったのだ。

 その後、哲哉と佳苗は、自分たちのお父さんやお母さんと同じ
仕事をする。

 哲哉は素っ裸でいるミミに幼稚園の通園服を着せ、顔を洗い、
朝食の席では膝に抱いて一緒に食事をする。
 佳苗も食事のあとは健太や真理子のランドセルの中身を確認、
忘れ物がないかチェックしたり、妹や弟たちの身なりを整えたり
とこちらもお父さんお母さんの代わりだから双方朝は忙しいのだ。

 しかし、二人にとってお父さんお母さん代わりなのはこれだけ
でなかった。

 準備が整った健太が先に「行って来ます」と言って佳苗の目の
前を通過したその瞬間だった……

 「お待ち!」
 佳苗が機敏な動作で逃げようとする健太のランドセルを上から
鷲づかみにして引っぱる。

 「わあ!」
 健太は簡単に尻餅をついた。
 ランドセルを背負ってると、これがウイークポイントだ。

 「何するんだよ。学校行かないと遅刻しちゃうだろう」
 転んだ健太は不満を口にしたが、佳苗だって、もちろん戯れで
こんなことはしない。

 「あんた、何か忘れてない?」

 「何かって……?」

 「あんた、哲哉お兄ちゃまのお布団にオシッコして、それで、
何もしないでこの家を出られるとでも思ってるの?」

 「えっ!?」
 健太は青くなる。ことの良し悪しは別にしても佳苗姉ちゃんが
怒っているという現実は、たとえ一年坊主だってわかるのだ。

 「だって、あれは……真理子姉ちゃんが『哲哉兄ちゃんにこの
家で大きな顔されないように、最初に何かぎゃふんと言わせた方
がいい』って言うから……」
 もじもじとした様子で健太は事情を話した。

 実は、健太。このことは他言しないと、真理子姉ちゃんと固く
約束していたはずだったのだが、佳苗お姉ちゃんに凄まれると、
あっさり口を割ってしまう。

 「あっ、そう……あなたたち……哲哉お兄ちゃんをぎゃふんと
言わせたかったんだ」
 健太のおかげで、厳しい視線が次は真理子に向くことになった。

 「真理、……あなた、哲哉お兄ちゃんが嫌いなの?」

 「……そういうわけじゃあ……」
 真理子は下を向き、ぼそぼそと申し訳なさそうに答える。

 「まあ、いいわ。……」
 佳苗姉ちゃんは一つため息をつくと、視線を再び健太へ……

 「あんた……いくら一年生でも……哲哉お兄ちゃんのお布団に
オシッコすることがいけないことだってことぐらいは分かるわよ
ね」

 「…………」
 あらためて佳苗姉ちゃんに凄まれると健太はもう答えない。

 正直に答えてしまうと、そんなに悪い事とは思っていないのだ。
だって兄弟みんなのために真理子姉ちゃんがやろうと言ったこと
なんだから……

 ただ、普段は早口の佳苗お姉ちゃんが、それを封印して噛んで
含めるように自分に話していることで『これはまずいことなんだ』
と分かったみたいだった。
 だから、弱々しく「はい」とだけ答えたのである。

 「こんなこと放っておけないもの。お義父様に申し訳ないし…
…お母さんに知れたら、お灸ものよ」

 「エッ!!」
 健太はお灸という言葉に思わず顔をあげて驚く。

 「それが嫌だったら、学校に行く前に私からのお仕置きを受け
てもらうからね」

 「えっ、姉ちゃんから……」

 「そうよ、どうする?このままじゃ、あんたお母さんからまた
チンチン焼かれるよ。……その方がいいの?」

 小一の健太から見れば佳苗お姉ちゃんは大人も同じ。
 そのお姉ちゃんの威しだから効果がないわけがなかった。

 「ごめんなさい」
 健太は謝っただけだが、これが佳苗お姉ちゃんからのお仕置き
を承諾した証しだったのである。

 「分かったんなら、そこの鏡台の椅子に両手を着きなさい」
 佳苗姉ちゃんは凛とした態度で命じる。

 いや、佳苗お姉ちゃんだってほんの数年前までは、同じ姿勢で
お母さんからお尻をピシピシやられていた身なのだが、ここでは、
そんな弱さは微塵も見せなかった。

 かえって、いつからそこにいたのか、哲哉兄ちゃんが割り込ん
で来て……
 「いいよ。僕のことだったら……もう、何とも思ってないから」
 と、とりなしてくれたのである。

 ただ、それにも……
 「いいの。これは、うちの問題だから……厳しくする時はしと
かないと、示しがつかないわ」

 佳苗お姉ちゃんはこれも拒否したのである。

 「さあ、真理!ぼさっとしてないで、あなたも手伝いなさいよ。
健太の両手を押さえるの」

 佳苗お姉ちゃんは、もう完全にお母さんの代わりを務めていた。

 「……!……」
 背もたれのない鏡台用の椅子に両手を着いた健太の半ズボンと
パンツを一緒に脱がせると、お母さん愛用の三尺物差しを持って
構える。

 「しっかり、数を数えるの。……わかった?」
 佳苗お姉ちゃんは我が家の流儀に従ってそう命じる。
 そして、自分だって散々お世話になったそれで、「ピシャ」と
最初の一打を繰り出したのだ。

 「ひとつ」
 健太の声がすでに震えている。
 もちろん佳苗お姉ちゃんは十分に手加減しているのだが、痛さ
より恐さが先に立って健太は震えていたのである。

 「ピシャ」
 「ふたあつ」

 「ピシャ」
 「みっつ……」
 たった三つで健太の数を数える声は泣き声になっていた。

 でも、お仕置きはこれからだ。

 「ピシャ」
 「よっつ……」

 「ピシャ」
 「いつつ……」

 溢れ出た涙が頬を伝い、少しだけ赤くなったお尻の反対側では
可愛いおチンチンが一緒になって震えている。

 「ピシャ」
 「むっつ……」

 「ピシャ」
 「ななつ……」

 お尻がほどよいピンク色に染まり鳥肌がたっているのがわかる。
 端から見れば可哀想な姿だが、佳苗お姉ちゃんは心を鬼にして
こう叫ぶのだ。

 「ほら、声が小さくて聞こえない。もう一度、七つからよ」

 「ピシッ」
 「ななつ……」

 「ピシッ」
 「やっつ……」

 嗚咽が止まらなくなった健太は真理子姉ちゃんに両手を押さえ
られているため、涙を拭くこともできなかった。

 「鞭の一つ一つを『ごめんなさい』っていう気持で受けるの。
……わかった?」

 「はい」

 「声が小さい!もっと大きな声で!」

 「はい、わかりました」

 「よし、じゃあしっかり構えて……」

 「ピシッ」
 「ここのつ……」

 「ピシッ」
 「とう……」

 「いいこと、あんたのやったことは本来ならお灸にあたいする
の。このくらいじゃ足りないのよ。わかってる!」

 「はい」

 「よし、じゃあ最後はしっかり歯を食いしばって……いくわよ」

 「ピシッ!」
 「痛い!!ごめんなさい、もうしません。あああああ……」
 健太はこのお仕置き一番の鞭を受けて泣き叫び地団太を踏む。
 そして、それが終わってから思い出したように……
 「じゅういち」
 と数をかぞえるのだ。

 「ピシッ!」
 「いやあ~~もうしないで~~ごめんなさい。……じゅうに」

 十二も十一と同じ。でも、これで許されたのである。

 佳苗お姉ちゃんは健太の身なりを整えると涙を拭き鼻をかんで
学校に送り出す。
 当然、真理子だって健太と同じ小学校なのだから一緒にに家を
出ようとしたのだが……

 「あなたはまだ家を出ちゃだめよ。ミミを通園バスに乗せたら、
あらためてお話があります」
 と、佳苗お姉ちゃんに宣言されてしまったのだ。

 実は、この佳苗お姉ちゃん、お母さんが再婚する前から、妹や
弟たちが悪さをした時のために日頃から懲罰権を与えられていた
のである。

 それがどんなに恐いかを知っていた真理子は逃げられなかった。
もし、佳苗お姉ちゃんに逆らうと、それをお母さんに告げ口され、
今度はお母さんと二人がかりでのお仕置きを食うことに……
 それはさすがに彼女としても避けたかったのだ。

 自分の部屋で正座して待っていると、佳苗お姉ちゃんがやって
来た。

 「あんた、相変わらずね」
 「何が?」
 「何がじゃないでしょう。健太やミミをたきつけてあんなこと
させて……」
 「あたし、やってないよ」
 「だから、そこがいけないんでしょう。自分は手を汚さないで
人を使って悪ささせて……ま、あんたのことだから……二人に、
『哲哉さんのお布団でオシッコしたら哲哉さんが自分でやったと
勘違いして大慌てするわよ』ぐらいのこと言ったんでしょう?」

 「…………」
 真理子は答えなかったが、その時、彼女の顔色が変わったので
有罪が確定する。女の子の裁判では顔色だって立派な証拠、物証
はいらなかった。

 「ほら、ごらんなさい、やっぱり黒幕はあなたなんだから……
あなたのやってることは、哲哉お兄様やお義父様だけでじゃない、
何よりお母さんに恥をかかせてるのよ」

 「ごめんなさい」

 真理子はペコリと頭を下げて謝りはしたものの佳苗お姉ちゃん
にしてみれば、下げた頭より尖った口の方が気になるのだ。

 「まったく反省してないみたいね」

 「え~そんなことないよ」
 真理子は口を尖らせたまま反論したが……

 「あんたの顔は反省してるって顔じゃないわね。そんな顔で、
いくら『反省してます』なんて言っても誰も信じないわよ。……
仕方ないね、反省できないんじゃあ……こういう時は、お仕置き
しかないわね」

 「え~~やだあ~~~」

 「イヤじゃないでしょう。あんたが悪いんだから……頭で覚え
られない子はお尻で覚えるしかないじゃない」

 「いやよ。だって、ここには哲哉兄さんもいるのよ」

 「そうよ、だからいいんじゃない。『うちは、昔からこんなに
厳しく仕付けてます』というのを見てもらわないと、山猿ばかり
四人も連れて来たなんてお義父様に言われたら、お母さんだって
立つ瀬がないわ」

 「えっ……だって……」
 真理子は不承知でしたが、佳苗お姉ちゃんの厳とした物言いに
反論できません。結局……

 「さあ、もういいから、学校行きなさい」
 と、今度は家を追い出されてしまったのでした。


***********(上)*************

おねしょ ~エッセイ~

  おねしょ

 僕のおねしょ最終日は小2の時。
 それ以前にも記憶がないから恐らく物心ついて以来最初で最後
のおねしょ。

 てっきり叱られるかと思ったら、意外にも連れて行かれたのは
お仕置き部屋ではなく、大学病院。
 あちこち調べられたけど、結局、悪いところはどこもなかった。
 いまだにその時のおねしょの原因はわかっていない。

 僕んちの親は心配性だからこうだったけど……
 多くの家では、おねしょなんかすると、お仕置きされることも
多かった時代なんだ。

 「こいつ、そもそも起きる気がないんだ!」
 とか言われてね……早い話が根性論。
 おねしょは病気と言うより怠け癖の一つと考えられていたんだ。

 『怠ける子には、お仕置き』
 というのが常識で、おねしょの場合は圧倒的にお灸が多かった。
 実は、これには男女差があまりなくて、女の子もけっこう被害者
だったんだ。

 大義名分は『治療』ということになってたけど、お母さん達が
聞きかじりの知識で施術してたから、どこまでツボを知ってたか
も疑問で、早い話が折檻なんだろうけど……これが、公開処刑に
なる場合も多くて……幼い日の僕が見学できたのも、一人や二人
じゃなかったんだ。

 被害者は、下は幼稚園児から上は中1のお姉さんまで色々。
 小説に書くような危ない部位はなかったみたいだけど、みんな
幼い子を連れたお母さんたちの見ているなかで晒し者にされて、
そりゃあ可哀想だった。

 家の中で父親がする折檻はあんまり他人には見せないんだけど、
母親が我が子にするお仕置きの場合は、井戸端会議みたいに近所
のおかみさん連中をわざわざ呼び集めて、さながら公開処刑みた
いになることも少なくないんだ。

 中1のお姉さんの時は、さすがに背中だったけど、それでも、
すでに胸は大きくなりかけてるわけだし……幼稚園くらいのチビ
ちゃんなら、お尻もビーナス丘も全然お構いなしだった。

 その時の僕は性欲なんてまだないから、単に『可哀想』だった
けど、これが僕のお仕置き小説の原点になってるのは確かだ。

 今さらながら、良い時代だったなあって思うよ。

***********************

見沼教育ビレッジ(番外編1)~おまけ③-2~

*** 見沼教育ビレッジ(番外編1)~おまけ③-2~***

******<登場人物>**********
 新井真治/家の主人
 秋絵さん/お手伝いさん
 子供たち/高坂知美(中2)
      河合春花・森野美里(小4)
      真里菜ちゃんと明日香ちゃん(小1)
 園長先生/子供たちの小中学校の校長先生
***********************

 「ピシッー」

 「ひぃ~~」
 最初の一撃がお尻に振り下ろされた瞬間、知美は机にうつ伏せ
になっていたにも関わらず、まるで腰が抜けたような感覚に襲わ
れます。

 『何なの!?これは……』
 たった一撃で、腰から下の感覚がなくなってしまったのでした。
 もちろん、こんなこと園長先生の鞭ではありえないことでした。

 しかも、これが園長先生なら、さっき真治氏に向かってやって
しまったように振り返って甘えた泣き顔をみせることだってでき
ます。もちろん、それで鞭をまけてもらえるわけではありません
が、親しい園長先生の顔を見るだけでも知美の心は落ち着けるの
でした。

 とびきり痛い鞭。そのうえ次の鞭が振り下ろされるまでの間も
ひたすら机を眺め続けていなければならないなんて……知美には
辛すぎる罰だったのです。

 そして、二つ目……

 「ピシッー」
 「ひぃ~~」
 やはり、死ぬかと思うようなのがやってきます。

 でも、その瞬間、感じたのです。
 自分の手を握ってくれている人の存在を……

 「…………」
 知美は顔をあげてその人を間近に見ます。
 不思議な気がしました。

 だって、鞭でのお仕置きの時、園長先生はこれまで常に彼女の
お尻の方にいたのですから……
 それが、今は自分の目の前で穏やかに笑っている。
 こんなこと、初めての経験でした。

 そして、三つ目……

 「ピシッー」
 「ひぃ~~」
 体中に電気が走ります。手の指先、足の指先、そして子宮にも
……
 その走った電気に驚いて思わず腰が浮き上がりました。

 知美は、そのとき『ほんのちょっと腰を振っただけ』と思って
いたのですが、実は、とても激しく腰を動かしていたのです。
 おかげで、彼女、自分の落し物にも気づきませんでした。

 もし、これ園長先生だったら大変なことになっています。

 だって、彼女の落し物は、ショーツの中に仕込んだタオル地の
ハンカチ。これで鞭の痛みを少しでも緩和しようとしたのですか
ら……。

 園長先生はこんなインチキがとても嫌いな人でしたから、こん
なことが分かると、鞭のお仕置きは一時中断、さらなるお仕置き
が言い渡されることになります。

 ただ真治氏はこのハンカチを拾ってテーブルの上に乗せただけ。
ハンカチの事には何も触れませんでした。

 そして、四つ目……
 「ピシッー」
 「ひぃ~~」
 
 『死ぬ~~』
 身体はほんの少し慣れましたが、心細い少女の心はまだ悲痛な
叫び声を上げ続けています。
 それでも、まだ三分の一。
 目を開けているはずなのにすでに目の前が真っ暗でした。

 五つ目……
 「ピシッー」
 「ひぃ~~」
 
 もう、この頃になると、意識が希薄になります。
 『痛い』『辛い』『恥ずかしい』
 薄れていく意識の中ではそのすべてがどうでもよくなっていき
ます。

 六つ目……
 「ピシッー」
 「いやぁ~~~」
 目がかすみ、知美の荒い息からよだれがテーブルに落ちます。

 七つ目……
 「ピシッー」
 「いやぁ~~~やめてえ~~~」
 それまでの遠慮がちの悲鳴とは明らかに違う大声でした。
 知美のこんな悲鳴を聞いたことは園長先生でさえもありません
でした。

 八つ目……
 「ピシッー」
 「いやぁ~~~やめてえ~~~」
 幾分悲鳴は小さくなりましたが、荒い息は相変わらずです。
 いえ、そちらはもっとひどくなったかもしれません。

 九つ目……
 「ピシッー」
 「いやぁ~~~」
 随分と悲鳴が小さくなり息も整って一時の狂乱は収まったよう
にも見えますが、長年こうしたお仕置きをしてきた園長先生には
これがどういうことかわかっていました。
 もちろん、真治氏もそれは承知しています。承知しているから
こそ、八ッ目以降は鞭の威力を落としたのです。

 でも、途中で休憩を入れることはしません。もちろんお仕置き
を中止することなんて考えてもいませんでした。
 途中に休憩を入れれば再開した時のショックがキツイですし、
中止すればそれは挫折したことと同じですから何より本人の為に
なりません。
 どこまでも知美のためにそれはしなかったのでした。

 鞭はいよいよ十回目に入ります。

 「ピシッー」
 「ぁぁぁ~~~」
 知美の悲鳴は小さくくぐもった声です。

 十一回目。
 「ピシッー」
 「ぁぁぁ~~~」
 知美の顔にほんの僅かですか、安堵の表情が浮かびます。
 これは、単にハッピーという意味ではありません。
 むしろ、『諦めた』『悟った』という表情だったのです。

 それが何を意味するか、当然、園長先生はよくご存知です。
 知っているからこそなんでしょうが、先生は知美の後ろに回る
と、彼女のショーツを足首まで下ろします。

 すでにぐっしょりでした。

 最後の十二回目は、むき出しのお尻に飛んで来ます。

 十二回目。
 「ピシッー」
 「ぁぁぁ~~~」
 ほとんど放心状態の知美にそれは感じられなかったのかもしれ
ませんが、その衝撃を受けて彼女は放尿します。
 まるで馬がオシッコをするように、まだこんなにも残っていた
のかと周りが驚くほどに、足首まで下ろされた自分のショーツを
叩きつけます。

 「さあ、もういいよ」
 真治氏の許可を受けてぼんやりと上体を起こす知美でしたが、
ほとんど放心状態の彼女は自分が何をしたのか理解できず辺りを
見回します。

 自分の足元を濡らす水も、最初はそれが自分の仕業だとは理解
できない様子で、秋絵さんと園長先生がやっている床掃除をただ
ぼんやり見ています。

 もちろん真治氏は……
 「先生、やめてください。法衣が汚れます。そんなことはうち
のお手伝いがしますから、先生はどうぞご心配なく」
 と声を掛けたのですが……

 「大丈夫です。ご心配いりません。これも娘のしたこと。私の
仕事ですから……」
 という答えが返ってくるのでした。

 知美はまるで一刻を争うかのようにして床を拭いている先生を
ぼんやりと見下ろしながら……やがて、自分のしでかした粗相に
気づいたみたいでした。

 知美は遅ればせながら先生を手伝います。

 そして、それが終わると、二人は真治氏に断りを言って別室へ。


 戻ってきた時、二人は着替えが済んでいました。

 知美は水玉のワンピース、園長先生もトレードマークの法衣を
脱ぎ捨て、薄い紫のブラウスと捲きスカート姿。
 いずれもラフな格好でした。

 「さあ、ご挨拶なさい」
 先生に背中を押されて知美がまず真治氏の前へとやってきます。

 彼女はソファでくつろぐ真治氏の足元に膝まづくと、両手を胸
の前で組んで……
 「お仕置きありがとうございました」
 とお礼の言葉を口にします。

 もちろん本心は別でしょうが、ご挨拶は良家の子女のたしなみ。
大人達から何かしてもらったら、とにかく感謝の言葉を口にする
のが当たり前と躾けられています。
 お仕置きだってやっていただいたことに変わりありませんから
やはり同じことでした。

 「痛かったでしょう」
 真治氏は優しく微笑みます。
 でも、相手から好意的な顔は期待していませんでした。
 そりゃそうです。あれだけ厳しく打ち据えたんですから。

 「君はよく我慢したよ。あんなに痛い鞭でも取り乱さなかった
んだから、たいしたものだ」

 『…………』
 真治氏に褒められ和美の顔が険しくなります。
 というのも、和美は真治氏が皮肉を言ったものと思ったからで
した。
 だって、お漏らしをしてしまったのに取り乱さなかったなんて
変ですから。

 でも、真治氏はべつに皮肉を言ったのではありません。本当に、
感心していたのです。
 あれだけ強い鞭をいきなり受けたら男の子だって半狂乱になる
子はいます。それがないだけでも十分賞賛に値すると彼は言いた
かったのでした。

 「じゃあ、仕上げといこうか」
 真治氏はそう言ってソファに座った自分の膝を叩きます。

 『えっ!!』
 和美の目が思わず大きく丸くなります。
 もう、お仕置きはすんだものだと思っていた彼女にそれは悪夢
の再来だったに違いありません。

 当然ですが『はい、承知しました』と言って身体は動きません
でした。思わず膝まづいた姿勢のまま後ろを振り返り園長先生の
顔を窺います。
 普段は恐い先生ですが、この時ばかりは彼女にすがるしかあり
ませんでした。

 そして、まるで幼い子がそうするように園長先生の懐へと逃げ
帰ったのでした。

 園長先生は知美を受け入れて抱きしめます。

 でも、少し心が落ち着いてから顔をあげてみると、頼みの先生
も顔を横に振るだけ。

 恐々前を向くと真治氏も笑っていました。

 「もう、終わりだと思ったのかい?」
 慌てふためく和美の様子を見て、真治氏は納得したように一度
だけ首を縦に振るのでした。
 こちらへいらっしゃいということでしょうか。

 「悪魔の館にいったん迷い込むとね、出るまでが大変なんだよ。
……今日はもう楽しいことは諦めて、私に付き合いなさい。……
さあ」
 真治氏は再び膝を叩きます。

 和美に逃げ場はありませんでした。

 あらためて真治氏の足元に膝まづと、両手を胸の前で組み……
 「おじさま、お仕置きお願いします」
 屈辱のご挨拶。

 その後は再びのスパンキングでした。
 今度は、幼い頃やられていたように大人の膝の上にうつ伏せに
なって行われます。

 「あっ!」
 覚悟はしていましたが……着替えたばかりのワンピースの裾が
捲り上げられ、白いコットンショーツもすべて払い除けられて、
お尻が再び丸出しに……

 すると、真治氏の膝の上で急にお腹が差し込みました。
 「(いやよ、やめて、またお漏らしなんて)」
 知美は心配しましたが、原因はそちらではなく子宮でした。

 もちろん、鞭打ちのときだってお尻は丸出しだったのですが、
今は真治氏との距離がとっても近くて、男の人の顔が自分のお尻
の間近に迫っています。しかも、これから赤く熟れた林檎を彼の
ガサガサした大きな手が冒涜しようというのですから、これって、
お尻の痛みとはべつに和美の子宮を激しく収縮させるのに十分な
理由づけになるのでした。

 そんな最中、最初の一撃がやってきます。

 「ピシャ」
 「いやあ~~!!!」
 真治氏は決して強くは叩きませんでしたが、心の動揺が大声を
出させます。

 続けてもう一つ。
 「ピシャ」
 「いやあ、やめて~」
 
 「嫌かい?だろうね、だって君が嫌がることをわざとやってる
んだから……でもね……」
 「ピシャ」
 「痛い」
 
 「子供は耐えるしかないんじゃないかな。……君はこうやって
お仕置きを受けてるんだから」
 「ピシャ」
 「あっ……」

 「さっき、キツイ鞭のお仕置きを耐え抜いたあとだから、なお
さら痛いんだ。そんなこと百も承知でおじさんやってるんだよ。
身体に堪えないお仕置きなんて意味ないもの。中学生の君が耐え
られる程度のお仕置きをしてるんだ」

 「ピシャ」
 「うっ……」

 「少し落ち着いたみたいだね。また、身体が痛みに慣れだした
んだろう。だったら、もう少し強くしてあげようかね」

 「ピシャ!」
 「いやあっ!」

 「よし、よし、そんなもんだ。このくらい神経を集中させてる
時の方が人の言葉ってよく頭に入るんだ」

 「ピシャ!」
 「ひゃぁっ!だめえ~」

 知美は恥ずかしいのと痛いいので反射的に悲鳴をあげますが、
その声を園長先生がたしなめます。
 「嫌じゃないでしょう。お願いしますでしょう」

 園長先生は鞭のときと同じように知美の頭の方へ回り込んで、
中腰の姿勢で知美を見つめその手を取ります。

 「はい、先生、いい子になります」
 知美は意外にも素直でした。

 もしこれが学校で園長先生にぶたれていたら園長先生に対して
こうまで素直にはなれなかったでしょう。
 ですが、真治氏は見ず知らずと言ってよい男性です。力が強く、
鞭にしろ、平手にしろ、すでにお尻は痛くて痛くて、身体がバラ
バラになりそうでした。
 そんな苦境からみれば園長先生の顔だってマリア様に見えます。
誰に従うべきか、結果はあきらか……ということでした。

 「いいかい、君の家は教会なんだ。君がそれを不満思っても、
嘆いても何も変わりはしないよ。……君はその教会から逃げたん
だって?……感心しないな」

 「ピシャ!」
 「あっ!……あっ……はい……おじさま」
 真治氏はそれまでより少し強く叩きましたから、知美のお尻は
今まで以上にショックを受けたはずでしたが、じっと堪えて挨拶
します。

 「お父さん、お母さんを探しに行ったのかい?」
 「ピシャ!」
 「あっ、痛い……いえ、そうじゃなくて……何となく……」

 「『何となく』ねえ……感心しないな、何となくの家出なんて
……『教会なんかよりもっと自由で楽しい場所が世の中にはたく
さんあるはずだ』と思ったのかな?」

 「ピシャ!」
 「あっ、……だって、教会は窮屈だしお仕置きだって多いから」

 「でも、君は物心ついてからずっとこの教会で暮らしてきたん
だろう?」
 「ピシャ!」
 「……はい……それは……そうですけど……」

 「隣りの芝は青く見えるからね……でも、青い鳥は家の外には
いないものなんだ。……わかるかい?」

 「ピシャ!」
 「……はい……ごめんなさい、おじさま……」

 「僕に謝っても仕方がないよ。君を心配してくれる教会の人達
全員に謝らなきゃ」
 「ピシャ!」
 「はい……ごめんなさい、おじさま……」

 「君はまだ幼くて世間を知らないから、この世のどこかに自分
を受け入れてくれるパラダイスがあると信じたいんだろうけど、
中学も卒業していない君を優しく受け入れてくれる場所なんて、
日本はおろか世界のどこにもありゃしないよ」
 「ピシャ!」
 「ぁぁっ!……はい、おじさま」

 知美は、一回一回律儀に悲鳴をあげます。本当は、悲鳴なんか
あげずに、ただ『はい、おじさま』とだけ言いたかったのです。
ただ、それをさせてくれないほど、真治氏の平手は強烈でした。

 「わかったかい?」
 「ピシャ!」
 「ひゃぁぁっ!……はい、おじさま」

 一方、園長先生はというと、普段はあまり見せない柔和な顔を
見ながら必死に真治氏の平手打ちに耐える知美を見つめています。
 実は、知美は痛みに耐えることで精一杯でしたから、真治氏の
問いかけにもいい加減に答えていたのです。

 だったら、真治氏がどんなお説教をしても無駄なのかというと
そこはそうではありませんでした。
 こうした場合、不思議なもので、真治氏のお説教は園長先生の
言葉として知美の心に刻まれていくのでした。

 「君は他の世界を知らないから、園長先生や他の先生方にぶた
れると、継子いじめされたみたいに感じるのかもしれないけど、
それは逆なんだ。ぶっても後に問題が残らないほど絆が強いから
お仕置きだってできるってことさ」

 「ピシャ!」
 「いたいっ!……はい、おじさま………………………………」
 いつものようにそう言った後、しばらくして知美が珍しく口を
開きます。
 「じゃあ、おじさまと私は?」

 「私?(ははは)私は余計なおせっかいを焼いてる部外者さ。
だから私のことは忘れていいんだよ。さっきから言ってるだろう。
今日のことは、運悪く悪魔の館に入り込んだと思って諦めなさい
ってね」

 「ピシャ!」
 「ぁぁっ!……はい、おじさま」

 「ただし、もし教会を脱走して、本当の悪魔の館に入り込んだ
ら……君の青春はそこで終わってしまうかもしれない。……それ
だけは、しっかり覚えておきなさい。……そしてそのことを……」

 「ピシャ!」
 「いゃ痛い!!!…………」
 「この痛い痛いお尻にしっかり覚え込ませるんだ。……いいね」

 「ピシャ!」
 「ぎゃぁぁっ!!!!……はい、おじさま」
 最後は真治氏も加減せずに叩きましたから、飛び切り痛かった
みたいでした。


 やっとのことで、知美のお仕置きが終わり、彼女は別室で園長
先生から痛んだお尻へお薬を塗ってもらいます。

 「先生、あの人、絶対変態です。……もの凄い力で私のお尻を
ぶったんですから……」
 ベッドにうつ伏せになった知美は涙ながらに園長先生訴えます
が……

 「何言ってるの。痛くないお仕置きってのがありますか………
新井のおじさまは立派な紳士よ」

 「どうして分かるんですか?」

 「今日はお見えにならなかったけど、あの娘さんたちを見れば
新井のおじさまが、どれだけ娘さんたちを可愛がってらっしゃる
かわかるわ。だからね、あなたにもその愛のおすそ分けをお願い
してみたの」

 「ということは、お仕置きはこちらからお願いしたんですか?」

 「そりゃそうよ、でなきゃ、新井のおじさまがあんなことする
わけないでしょう。あなたへのお仕置きは私の方からお頼みして
やっていただいたの。……だから、新井のおじさまには何の責任
もないわ」

 「わあ~ショック。私にはあんな人、変態にしか見えないけど
なあ~~」

 「あなたにかかると、お仕置きしていただく方は全員変態ね」

 「だって、私、もう中学生なのに平気でパンツ脱がすんだもの。
そんなこと変態以外しないことだわ」

 「さあ、それはどうかしらね。私は高校生でもパンツを脱がす
ことがあるわよ」

 「だって、それは女同士だから……」

 「……そもそも、お仕置きなんだもの、仕方がないでしょう」

 「だってえ~~」
 知美は甘えた声を出しますが……

 「これは新井のおじさまもおっしゃってたけど、お仕置きして
くれる人がいるうちがよほど幸せだって……お尻を叩かれるだけ
ですべてが決着するならこんなに楽なことはないってよ……」

 「馬鹿馬鹿しい、こんなにお尻叩かれてどこが幸せなのよ」

 「あなたはまだ子供で大人の孤独は分からないでしょうけど、
どんなにお金や権力があってもそれを全部自分で差配しなければ
ならない気苦労は計り知れないものなのよ」

 「全然わかんない。お金と権力さえあったらこんなにハッピー
なことないじゃない」

 「あなたの年齢じゃあ、そんな答えよね。だから、子供なんで
しょうけど……仕方がないわね。空気と同じで、あって当たり前
のものほど気づきにくいって言うから……じゃあ、ちょっぴり、
あなたにも気づかせてあげますか……」
 先生はその言うと、目の前のお尻に強烈な平手を一撃。

 「痛~~~い!!!!」
 知美の大声が屋敷中響き渡ったのでした。


       *)番外編1~おまけ~はここまでです。
*** 見沼教育ビレッジ(番外編1)~おまけ③-2~***

Appendix

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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