2ntブログ

Entries

僕にとっての保育園

*)Hでも何でもない雑文です。

<僕にとっての保育園>

 僕は『保育園』という処へは行ったことがない。三歳になって
幼稚園へあがるまではずっと母のもとで過ごしていた。
 ただ、生まれてその日までずっと家の中にいたのかというと、
そうでもない。『公園デビュー』ならぬ『お店デビュー』という
のがあった。


 僕の母はいわゆる体育会系の人だから頭は大したことないのだ
が、とにかく頑張り屋さんだった。働かない父に代わって家業を
切り盛りしていたうえに子育てまでしなければならなかったから
大変だったと思う。

 特に僕が赤ん坊の頃は、僕を負ぶって出張販売までしていた。
子守はいたが、僕が彼女になつかなかったから仕方なくそうして
いたらしい。

 出張販売というのは、各種の催し物会場の一角を借りて流通品
(中古品や質流れ品)を売りさばく商売のことで、大半は建物の
中に場所を借りて期間限定で商売を始めるのだが、中にはお祭り
の露天商さんみたいに『青空マーケット』というのもあった。

 いずれにしても、そこは本来、子連れで商売ができるような処
ではない。ましてや赤ん坊を連れてくるなんて論外だったに違い
ないのだが……ところが彼女、同業者からの批判何するものぞ、
そのブースの中で、正々堂々、僕にミルクを与えながらオムツを
替えながら接客していたのである。

 家から持ってきた濡れタオルで僕のお尻を拭いてから接客する
もんだから、待たされたお客の困惑はいかばかりか……
 まったくもって無茶苦茶な話だが母は平気だった。その明るさ
と社交術でその無茶を乗り越えて商売していたのだ。

 「あんた、男だったらよかったのに……女にはもったいないよ」
 なんてね、隣りで商売していたご主人が、母にお世辞を使って
いたのを覚えている。

 僕はそんな場所で人生の産声を上げた。
 だから、ここが僕にとっては保育園というわけだ。

 周囲みな大人ばかりの世界で言葉も覚えた。当然、言葉遣いも
周囲の大人たちの会話から覚えていくので、話し言葉も当初から
大人仕様。
 母の話だと、僕は世間一般の子供たちが話すいわゆる幼児語と
いうやつを一切話さなかったらしい。

 慣用句をやたら使いまくるへんてこな幼児で……
 『こんなガキに理路整然とものを言われるのは気色悪い』とか
『可愛げがない』なんてよく言われていた。

 でも、僕自身はというと、こんな環境が決して嫌ではなかった。

 よちよち歩きができるようになるとご近所のブースにも出かけ、
お菓子なんかもらって帰って来る。見知らぬ人に抱かれても滅多
に泣かないから大人の方でも扱いよかったのかもしれない。
 お客さんたちも僕を見て微笑むことはあってもいやな顔になる
人は少なかった。

 僕自身は決して可愛くはなかったが、それでも、『赤ん坊』と
いうわけだ。

 だから『大人は恐い』という幼児の常識は僕には通用しない。
逆に『大人は誰でも自分に優しい』と単純に信じ込んでいたので
ある。

 変な話に聞こえるかもしれないが、こうした仕事場で出会う人
の中で最も恐いのは母だった。仕事中の母に触る時は、そうっと
後ろに回って、そうっと服の端を掴んでから甘えなければならな
かった。

 母はやたらまとわりつく僕が面倒くさくて、よくおんぶもして
くれたが……そもそもデパートの一角で赤ん坊をおんぶしながら
接客している売り子なんて周囲どこにもいなかったのである。

 やがて言葉がしゃべれるようになった僕は周囲にいる大人たち
の会話から色んな言葉を覚えていったが、なかには覚えてはいけ
ないものもあったようで……。

 ある日のこと……見事に太ったおばさんが真珠のネックレスを
買ってくれたのだが……その時、僕はそのおばさんを前に……
 「ねえ、お母さん。こういうのを『豚に真珠』って言うんだよ
ね」
 と、言ってしまったのだ。

 もちろん、お母さんは冷や汗がタラ~リだったが、相手は大人。
一瞬、顔色が変わったものの幼児相手に怒った顔は見せない。
 「あら、坊や。小さいのに難しい言葉知ってるのね」
 と、ニコニコ顔で褒めてくれた。

 だから、こちらも単純に嬉しくて……
 「おばちゃん、また来てね」
 とバイバイして見送る。

 つまり、僕とそのおばちゃんとは良好な人間関係だったのだ。

 ま、こうした失敗談はいくつもある。
 ブースの前を通り過ぎようとする人の袖を引いて、
 「ねえ、おじさん、買いなよ。今、五割引だよ」
 なんて、生鮮品を扱っているおじさんの真似をして自分勝手に
商品を値引きして呼び込みをかけたもんだから、母が慌てて取り
押さえたなんてこともあった。

 世間知らずの子供に振り回されて、母にしてみたらさぞや邪魔
な存在だっただろうが……それでも、僕を見つめるその顔は……
『作っちゃったから仕方がないか』と諦めてるみたいだった。

 あっ、ちなみに弟は僕と違い性格がよかったので、子守さんで
間に合ったみたい。そもそも彼の方が可愛かったからマスコット
として使うなら適任だと思うのだが母がこうした出張営業に彼を
連れ出すことはほとんどなかった。

 これについては、純粋な赤ん坊時代を除き、よくしゃべる僕の
方が母にとって退屈しのぎのラジオ代わりになるという説もある。

 実際この仕事は催し物の合間合間を利用しての商売というのも
多くて、その場合は幕間だけが商売の時間。結構暇な時間もある
から、そんな時は母から絵本を読んでもらって過ごしていた。


 ま、いずれにしてもその日の夕方は母の背に負われながら帰宅。
商品の搬入搬出が最初の頃はリヤカーだったのもよく覚えている。
 (今なら、当然それは自動車なんだろうけど、これはそれほど
大昔のお話ということです)

 「あんたは何の役にも立たないんだから静かにしてなさいって
言ってるでしょう。どうして言う事がきけないの」
 「また余計なことばかりして……お母さん赤っ恥かいたわ」
 「もう絶対におまえなんか連れて来ないからね」
 母の背中に抱きつく僕は母から散々に言われながら帰るのだが、
家につく頃にはたいていその背中で寝ていた。

 ならば、僕を連れて出なければよさそうなものだが、それでも
次の催し物の日がやって来ると……
 「どうしようかあ、この子………あんた一人、家に置いておく
のも心配だし………いいわ、おいで」
 ということになるのだった。

 一方、そう言われて母に抱かれた僕はというと……
 その催し物会場がどんな処であれ、そこではいつもお母さんと
一緒にいられるわけだから、こちらもそれはそれで十分だったの
である。

**********************

見沼教育ビレッジ <第2章> (2)

***** 見沼教育ビレッジ <第2章> (2) *****


******<主な登場人物>************

 新井美香……中学二年。肩まで届くような長い髪の先に小さく
       カールをかけている。目鼻立ちの整った美少女。
       ただ本人は自分の顔に不満があって整形したいと
       思っている。
 キャシー……ふだんから襟足を刈り上げたオカッパ頭で、短い
       フリルのスカートを穿いている。お転婆で快活な
       少女。ケイト先生は元の指導教官で、離れた今も
       会えばまるで仲のよい親子ようにじゃれあう関係。
 堀内先生……普段は温厚なおばあさん先生だが、武道の達人で
       たいていの子がかなわない。美香が卒業するまで
       ケイト先生からキャシーを預かっている。
 ケイト先生…白人女性だが日本生まれの日本育ちで英語が苦手
       という変な外人先生。サマーキャンプでは美香の
       指導教官なのだが、童顔が災いしてかよく生徒と
       間違われる。彼女はすでに美香の両親から体罰の
       承諾を得ており、お仕置きはかなり厳しい。
若杉先生……小学生の男の子たちを指導するイケメン先生。

**************************

***** 見沼教育ビレッジ <第2章> (2) *****

 キャシーは美香の手を取って走り出します。
 それにつられて美香も走ります。

 中学二年の子の全力疾走。
 こんなのに意味なんてありません。
 『衝動的に走りたくなった』ということでしょうか。
 おばさん先生二人がすぐに追いつけるはずがありませんから、
二人が追いついて来る、その僅かな間だけでも自由な時間が欲し
かったということなのかもしれません。

 いくらここの規則だといっても、二十四時間張り付かれたら、
そりゃあうっとうしいに決まっていますから……

 そうやって二人が辿り着いたのは蔦の絡まるレンガ造りの洋館
でした。

 「へえ~立派な建物ね」
 美香が感心していると……

 「ここはね、理事長先生の趣味の館なの」
 「趣味?どんな?」
 「絵画や骨董品の収集。でも、みんな悪趣味って言ってるわ」
 ケイトは先生方を振り切ってこれが言いたかったのかもしれま
せん。

 「さあ、入るわよ」
 「いいの?勝手に入って?先生たち待った方がよくない?」
 「平気、平気、別に入場料は取らないから大丈夫よ」

 二人は追ってきた先生方の到着を待たずに中へ入ります。

 広いエントランスは照明が絞られて暗い感じですが、その壁を
取り囲むように掲げられた大きな油彩画にだけは十分なライトが
当たっていました。

 「あら、珍しい!キャシー。久しぶりね」
 中年の婦人がさっそく声を掛けてきます。

 「(へへへへへ)おぼえてたんだ、先生」
 とたんにキャシーは照れ笑い。

 「そりゃあ覚えてるわよ。事もあろうに、この絵の前でお漏ら
しした子だもの。忘れるはずないわ」

 「昔のことじゃない。いつまでもそんなこと覚えてないでよ。
あの時はまだ小学生だったから、ちょっとビックリしただけよ」

 「(えっ!……何なの、これ……)」
 美香は二人の会話を小耳に挟みながらも、一枚の絵に釘付けに
なります。
 それは美香の身長より大きな額縁に描かれたスパンキングの絵
でした。

 銀行員風の真面目そうな父親が、幼い女の子をテーブルの上で
四つん這いにさせてお尻を叩いています。

 きっと画力のあるプロの絵描きさんが描いたのでしょう。少し
無理な構図にも関わらず、絵の大きさともあいまって『なるほど』
と息を飲む迫力です。
 特にその父親の顔に威厳のあること。赤いお尻の子供の表情が
リアルで、今にも悲鳴が聞こえてきそうです。

 『なるほどね、こんな絵を幼い子が見たら、びびるかもね』
 手を伸ばせば掴めそうなくらいの緊迫感に釘付けになった美香
を見てキャシーが声を掛けます。

 「さあ、さあ、そればかり見てないで……ここにはこんな絵が
他にもたくさんあるんだから……この周りの壁一面どれもこれも
スパンキングだらけよ。よくもまあ、こんなくだらない絵を飾る
気になると思うわ」

 キャシーの言う通りでした。
 たまたま目に止まったその絵ばかりではありません。この広い
エントランスの壁一面を飾る油彩画は、そのテーマがどれも同じ
だったのです。

 ここにあるのは、可愛らしい子どもたちが親や教師やシスター
たちからスパンキングや鞭打ちを受けているものばかり。そんな
微笑ましくも残酷な様子を描いた油彩画が大きく立派な額と共に
ドーム型の壁から美香を見つめています。

 確かに幼い子がオシッコをチビっても不思議のない迫力でした。

 「こっち、こっち」
 キャシーは美香がエントランスの絵を一通り見終わる間も与え
ず、隣りの部屋の入口へ行って手を振ります。

 「えっ、何なの?」
 美香が少し不満そうにその入口に向かうと……

 『家庭での折檻』
 入口にそう書かれたプレートが掛かっています。

 「この部屋に飾られている絵はね、偽善はびこるビクトリア朝
時代、貴族社会やブルジョア家庭で繰り広げられたゲームのよう
な子供へのお仕置きをリアルに描いたものなの」
 キャシーが得意げに説明を買って出ます。

 たしかに、正面中央の壁に掛かる絵は大作でした。

 この絵のメインテーマは、古めかしい衣装を身にまとった父親
から鞭の洗礼を受けて震えあがる幼い男の子の姿なのですが……
 この絵はそれだけではありませんでした。よく見ると、主人公
たちの両脇にも、召使によってお浣腸される子供の様子や木馬に
よる見せしめ、部屋の片隅で壁の方を向いて立たせている子ども
など、ありとあらゆるお仕置きが克明に描かれています。

 「ねえ、こんな気味の悪い絵を見に来る人なんているの?」
 美香が尋ねると……

 「自主的にはいないかもね。でも、小学生にはあまり強い折檻
ができないでしょう。その分、悪さをするとよくここへ連れて来
られたわ」

 「へえ~~これって、つまりはお仕置き用なんだ」

 「そうよ、今はだいぶ大人になったから大丈夫だけど、幼い頃
はここにある絵を一枚一枚丁寧に見せられてから、『今日はどの
お仕置きがいいかしらねえ。あなた、どれをやって欲しいの?』
なんて聞かれたものよ。当時はそれだけで結構びびったんだから
……」

 「そうかあ。そうかもしれないわね。……だって、これ、結構
迫力あるもの。……それで、あなた、お漏らししたのね」

 「やめてよ。それは言わないで……あれは、陰険な先生の罠に
引っかかっただけなんだから……あの時は目隠しをされてここに
連れてこられて、いきなりあの絵の前で目隠しが外されたから、
びっくりしただけよ……ほんと、陰険なんだから……」

 キャシーが口を尖らせてそう言うと、入口の方から声がした。

 「誰が陰険なの?……」
 キャシーが振り返るところにケイト先生が……

 「あっ、先生」

 「あっ先生じゃないわよ。……あなたを一人にしておくと何を
言い出すか分からないわね。そうじゃないでしょう。本当はお尻
叩きだったのを、まだここに来たばかりで慣れてないから可哀想
だと思って、絵を見るだけにしてあげたんじゃない。そうしたら、
それも恐くて泣き出したんでしょうが……あの頃はあなたも随分
と可憐な少女だったけど……今は随分図太くなったみたいね」

 「え、そうだったっけ……」
 キャシーが赤い舌をぺロリと出しますから、ケイト先生も思わ
ずため息です。

 「あのう……キャシーっていつからここにいるんですか?」
 まるで痴話げんかのような会話を聞いて、美香がケイト先生に
尋ねます。

 「いつからって……小学校の四年生からよ。それより幼い子は
ここでは預からないから。キャシーは、言わばここの主みたいな
ものなの」

 「そんなに昔から……」

 「そんなに悪い子じゃないんだけど、色々と事情があってね、
ずっとここで預かってるのよ」

 ケイト先生は露骨な言葉を使わなかったが、キャシーは両親が
育児放棄をしたため、そもそも帰る家がない可哀想な子なのだ。
幸い(?)両親にはまとまったお金があったため、こうした施設
を渡り歩き、小4からはずっとここで預かり続けているのだった。

 以来、今回のような短期の中断はあってもおおむねケイト先生
が担任。キャシーにしてみたら、彼女は先生というより育ての親
みたいな存在だったのである。

 「ねえ、さっき見かけた男の子たちって、よくここへ来るの?」

 美香はキャシーに問いかけたのだが、ケイト先生が答えた。
 「中学生以上の子がここへ来ることは稀だけど、小学生の場合
はまだまだ人畜無害ということで、ここもよく使われるわ。……
お仕置きで……」

 「オ・シ・オ・キ」
 お仕置きと聞いて美香は目をぱちくり。
 もちろん、それって意外だったからだが、その心の奥底には、
『ト・キ・メ・キ』という言葉も隠されていたのである。

 『ボーイソプラノの悲鳴』『未熟なオチンチン』をほんの一瞬、
美香は想像してしまったのだ。

 そこで、恐る恐るケイト先生に尋ねてみる。
 「あのう~~、お仕置きってどんなことするんですか?」

 すると……
 「どんなって……彼らの場合は、私たちとそんなに変わらない
わよ。男の子は中学になると罰のほとんどがお尻への鞭打ちなん
だけど、小学生まではお仕置きも男女でそんなに変わらないの。
……そうねえ……だいたい、ここに描かれている絵の内容は……
何でもされると思って間違いないわね」
 ケイト先生は絵画全体をあらためて見回します。

 「小学生って、男の子も、女の子も一緒なんだ」

 美香のつぶやきに、今度はキャシーが入って来た。
 「私もよくやられたけど、これってゲームみたいなの。目隠し
をされたまま、ここにある絵の前に連れてこられてね……目隠し
を取った時に、目の前に現れた絵が、自分が受けるお仕置きって
わけ」

 楽しそうに答えるキャシーに背を向け、美香は、ケイト先生に
尋ねる。

 「随分、手の込んだことをするんですね。何だか、心臓によく
ないみたいだけど……」

 「幼い子の場合は、身体にあまりキツイこともできないから、
なるべく劇的効果で心を揺さぶって改心を迫るの。あなたたちは
もう大きいから、こんなことぐらいでおたおたすることもないで
しょうけど……お漏らしってね、実はキャシーだけじゃないのよ。
……これもね、逆ギレして暴れる子もいたりして、けっこう大変
なんだから…」

 「暴れる子はもっとお仕置きがきつくなるんですか?」

 「仕方ないわ。お仕置きでは耐えることって大事なことだもの」
 ケイト先生は軽く受け流します。

 そして……
 「男の子たち、今頃は博物館に行ってお仕置きの真っ最中かも
しれないわよ」

 「博物館?お仕置きの真っ最中?」
 美香の頭の中に、他人には見せられないよからぬ映像が……

 「ここは美術館だから展示は絵画が中心だけど、中庭を挟んで
向こう側にある建物は博物館になってるの。あそこには、中世の
拷問用具がたくさん展示してあるわ」

 「レプリカも沢山あるから、色々試せるようになってるのよ」
 ケイト先生の言葉を遮るようにキャシーが再び入ってきた。

 「きっと今頃は授業の真っ最中じゃないかなあ?」

 「授業って……何の?」

 「『何の』はないでしょう。ここに来たら、あいつらやること
は一つよ」

 「ん?」

 「何、変な顔して……お仕置きの授業に決まってるじゃない。
……そうだあ、ついでだもん、見学に行きましょうよ」

 キャシーの明るい声が響きますが、美香は尻込みします。
 その美香をからかうように……
 「可愛いわよ。男の子のオチンチン。……中学生になるとさあ、
ちょっと、ちょっとだけど……あいつら、まだチビちゃんだもの。
可愛いもんだわ」

 ケイト先生はしばらく美香の顔色を見ていましたが、そのうち
彼女がまんざらでないことを見抜きます。

 そこで……
 「そうね、行きましょうか」
 と言って誘うと……
 「それがいいわ。何事も経験して損になることはありませんよ」
 という声。
 それは、遅れてやってきた堀内先生の声でした。

 「えっ!……まあ……」
 こうなると、美香だって嫌も応もありませんでした。


 再び合流した四人は数々の晒し台や拷問具がまるで児童公園の
遊具のように並ぶ中庭を横切って、奥の建物へと入っていきます。
 すると、すでに高い天井に反響して鈍い音が木霊していました。

 『何の音だろう?』
 美香の疑問はすぐに解消します。

 開け放たれた広間は、その入口に立っただけでその部屋全体が
見渡せるのですが……

 『あっ!』

 その部屋の奥。ここでは『木馬』と呼ばれているお尻叩き専用
の机に11歳くらいの男の子がしがみ付いているのが見えます。

 ズボンもパンツも脱がされ、今まさに男の先生からゴムパドル
でお尻をぶたれている最中でした。

 まさにいきなり修羅場に遭遇したわけですが……ただ、そこは
女の子世界のような悲壮感というかドロドロとしたものはあまり
感じられませんでした。

 というのも、その子の後ろにはすでに沢山のお友だちがすでに
並んでいます。中には心配そうな顔の子もいますが、笑ってる子
が大半だったのです。

 それって……まるで体育の授業で、跳び箱の順番を待っている
みたいでした。

 「ピシッ……ピシッ……ピシッ」

 どうやら一人三発というのがお約束みたいでした。
 三発だけお尻に鞭を受けると……男の子たちは先生からパンツ
だけを上げてもらって選手交代です。

 『大きな音だけど……きっと、そんなに痛くはないんだわ』
 美香は思いました。
 というのも、男の子たち、先生の鞭がお尻に当たるたびに顔は
しかめますが、泣き出す子はいませんでしたから。

 と、そのうち……

 「あれっ、堀内先生。ご見学ですか?」
 鞭を振るっていた男の先生が入口で見ていたの女性陣に気づき
ます。

 こちらを振り返った男の先生は、30過ぎ位。身長が高くて、
ウェーブのかかった髪をかきあげると、堀の深い顔がのぞきます。
 これがなかなかのイケメンでした。

 「あれ、若杉先生よ。どう?なかなかハンサムでしょう。……
わたし、あの先生の追っかけしたことがあって、ケイト先生から
イヤッてほどお尻叩かれたことがあるの」
 キャシーが美香に耳打ちします。

 「(えっ!)…………」
 美香は、その瞬間、何一言も言わず顔色だって変えません。

 ですが……
 『私も……あの先生にだったら男の子みたいに、お尻をぶたれ
てみたいなあ……』
 なんて、ついつい思ってしまうのでした。

 女の子だって人間ですからね、思春期の頭の中は、実は男の子
とそんなに違いがないんです。思春期の女の子は男の子と同じで
Hな妄想が大好きなんです。

 ただ、女の子というのは、他人に自分がどう見られているかを
第一に考えて行動する人たちですから、どんなにおしゃべりな子
でも、自分が不利になるようなことは決しておしゃべりしません。

 そこで、そんな取澄ました様子を見ていた男の子たちの間に、
『女の子というのは性に関心がないんだ』などという美しい誤解
が生じるのでした。

 『……そうか、男の子たちって強いものね。お尻をぶたれても、
きっと痛くないんだわ』
 美香は入れ替わり立ち代りお仕置き台にうつ伏せになってお尻
をぶたれていく男の子を見ていてそう思います。

 でも、これは女の子の方の誤解でした。男の子だって人間です
からね、お尻をぶたれて痛くないはずがありません。女の子より
脂肪が薄い分、かえって痛いかもしれません。
 男の子は決してスーパーマンではないんです。

 ただ、男の子っていうのは、やせ我慢が大好きでした。理由は
みんなの同情を引きくようなみっともない声を上げたくないから。
お仕置きが終わったあとも、『大変だった』なんて愚痴を言って
いると、ただ一人『あんなの大したことじゃないよ』なんてね、
虚勢を張りたいんですよ。
 つまり、女の子とは違う処で見栄っ張りなんです。

 ですから、これもまた、女の子の側に『男の子って、やっぱり
強いんだ。きっと私たちがぶったくらいじゃこの子たち堪えない
わ……』なんていう誤解が生まれるのでした。

 そんなことを美香が思っていると……
 「どうかしら、少し、お手伝いしましょうか?」
 堀内先生が冗談めかした様子で若杉先生に提案します。

 すると、若杉先生。美香の予想に反して、『いえいえそれには
およびませんよ』という返事をしませんでした。

 「そうですか。……では、そこのお嬢さん方にも、お手伝い、
お願いしてみようかな」
 若杉先生の返事はこうでした。

 『えっ!?悪い冗談』
 美香は思います。
 でも、それって冗談ではありませんでした。

 「やったあ、やらしてくれるの。わたし、やりたい」
 キャシーが無邪気に叫んで、男の子たちのもとへ……

 「いいよ。でも、平手のスパンキングだけだよ。それでもやっ
てくれるかい?」
 キャシーを迎えた若杉先生に何のためらいもありませんでした。

 「もちろんOKよ」
 キャシーはすっかり乗り気で、腕が鳴ると言わんばかりです。

 『バカ言わないでよ。私は嫌よ。知らない男の子のお尻を叩く
なんて……』
 美香は、とんとん拍子に話が進んでいくのを、ただただ驚いて
見ていましたが……

 「あなたも、混ぜてもらいなさいよ。面白いわよ」
 部屋の入口付近に残っていたケイト先生までが美香の肩を抱き
抱えて部屋の中央へ寄っていきます。

 『えっ!わたしも……』
 美香は、もう、ビックリでした。

 もちろん先生たちの会話を聞いていた男の子たちだってそこは
……
 「え~~~~~~~~~~~やだあ~~~~~」
 だったわけですが……

 美香は、あらためて近くで見る少年達の顔が、真剣に嫌がって
いる顔とはちょっぴり違っていると感じます。
 彼ら、これから私たちの膝の上でお尻を叩かれるはずなのに、
それにどこか余裕があるというのか、気のせいかむしろ楽しいと
言わんばかりの顔に、美香には見えるのでした。

 それって、美香にしてみたら、むしろ不気味に感じられます。

 「じゃあ、キャシー。ここに座って……」
 若杉先生はキャシーの為に折りたたみ椅子を用意してくれます。

 「一人、六発ずつと決めてるから、たとえ失敗しても回数を増
やしちゃいけないよ。それと、ズボンはいいけど、パンツは脱が
さないようにね」

 「分かってるよ」
 若杉先生の注意に余裕綽々のキャシー。どうやら彼女、以前に
もこうした経験があるみたいでした。


 というわけで、生贄になった男の子が一人やってきます。

 「お願いします」
 キャシーの前で一礼すると、椅子に腰を下ろしたキャシー膝の
上にうつ伏せになります。

 とっても可愛くて、とっても礼儀正しい子でした。
 その可愛らしい子の半ズボンにキャシーは手をかけます。

 真っ白なブリーフが現れて……
 「痛いけど、我慢してね」
 キャシーはその子のお尻をなでなで……

 そして、最初の一撃を……
 「ピシッ」
 乾いた音が高い天井に届きます。

 男の子は思わず背中を反りますから、痛いと感じていないわけ
がありませんが、男の子の横顔はなぜか笑顔でした。

 キャシーは再び男の子のお尻をなでなですると……
 「次、いくよ」
 一声かけてから、また次の一撃を……

 「ピシッ」
 その甲高い音は広い部屋中どこででも聞こえます。

 男の子の背中が反り上がって……でも、今度はちょっぴり痛い
という顔をしました。

 「ピシッ」
 「あっ……」
 今度は明らかに痛そうな顔になります。

 「ピシッ」
 「いっ……」
 四回目で初めて歯を食いしばります。
 でも、痛みはすぐに逃げてしまうらしく、『ピシッ』と叩かれ
ても時間をおかずすぐにまた笑顔に戻ります。

 美香はそれを見ていて思います。
 『この子たち、私たちより年下だけど泣かないのね。やっぱり
男の子は強いんだわ』

 そして、こうも思うのでした。
 『こんなに強いんだもの。私が思いっきりひっぱたいても多分
大丈夫だわね』

 「ピシッ」
 「ひぃ……」

 「ピシッ」
 「ああああ」
 六回目で初めて男の子の口から悲鳴らしい声が漏れます。
 それに笑顔に戻る時間も少し長くなったみたいでした。

 「痛い?……痛かったら言ってね。緩くしてあげるから……」
 キャシーは自分の膝の上で寝そべる少年に声をかけますが……

 「大丈夫です」
 幼い声が聞こえました。

 「あと半分だから……頑張ってね」
 キャシーは男の子が相手だと、とたんに優しいお姉さんになる
のでした。

 「それ、もう一つ」
 「ピシッ」
 「あっ…痛い」
 男の子は初めて痛いと言いましたが、その直後、顔を激しく横
に振ります。

 「さあ、次よ。歯を喰いしばってね」
 「ピシッ」
 「いやあ~」
 男の子の口から初めて泣き言が漏れます。
 そして、もうそれからは笑顔に戻ることはありませんでした。

 「ピシッ」
 「ぁぁぁ……」
 九回目。声は立てませんが、その表情からかなり痛そうにして
いるのが分かります。
 ただ、それでも男の子は泣きません。

 頑張って、頑張って、頑張って……とにかく、必死に泣かない
ように頑張ってる姿が、美香にはいじらしく感じられます。
 そして、なぜかそんないじらしい姿を見ているうちに……
 『私もやってみよう』と思うのでした。

 「ピシッ」
 「あっっっっっ」
 それまで遠慮がちにキャシーの膝にうつ伏せなっていた男の子
が、この時初めてキャシーの膝にしがみ付きます。

 キャシーとっては待ちに待ったものが来て、内心歓喜していま
した。
 自分の膝に必死になってにしがみ付く年下の少年。
 それは、女の子にしか分からない悦楽だったのです。

 「ピシッ!!」
 「ひぃ~~~」
 キャシーはさっきより強く男の子のお尻を叩きつけ、男の子も
さっきより強くキャシーの膝をその下半身で締め上げます。
 
 『あああ、いいわあ~~~』
 キャシーの悦楽ははさらに高まります。
 許されるなら、このまま、女の子の気持を全開させてその祠を
濡らしてみたいとさえ思うのでした。

 『あ~あ、これで最後か。もったいないなあ。もうちょっと、
やらせてくれたらいいのね』
 キャシーの心はすでに欲望の渦。

 でも、もう少し、もう少しと思うところでやめておくのがいい
のかもしれません。

 キャシーは諦めて、最後の一撃を男の子に見舞います。
 「ピシッ」
 「ぁぁぁぁぁぁ」

 それは、キャシーがこの子に放った一番強い平手打ち。まるで
自分の未練をこれで断ち切るかのような極め付きの一撃だったの
でした。


 「さあ、今度は君の番だ。……大丈夫さ、噛み付いたりしない
から……恐がらずにやってごらん。何事も経験だよ」
 若杉先生は物怖じする美香を励まします。

 今度は、美香の番です。
 美香は、女の子らしく怖気づいたような顔をしていましたが、
でも、それは『はい、わたしやります』と言って手を上げるのが
恥ずかしかったから。
 本当のところ、腹は決まっていたのでした。

 ドキドキで座る初めての椅子。その膝に乗るゴツゴツした感じ
のお尻。そして、彼女もまたキャシーと同じ経験をするのでした。

 男の子の下半身で自分の膝を締め上げられるという、不思議な
快感。それは、美香が生まれてこの方一度も経験したことのない
悦楽。

 12回が終わったあと……
 キャシーがそう望んだように美香もまた『もう一人』と心の中
でねだってしまうのでした。


***** 見沼教育ビレッジ <第2章> (2) *****

お灸ブームの火付け役 ~昔話~

お灸ブームの火付け役

 僕の家の近所に豆腐屋のお婆さんがいた。
 豆腐屋さんと言っても豆腐を製造販売しているわけではなく、
お店から商品を預かってリアカーで売り歩く委託販売だから日々
の稼ぎはしれたものだろうけど、このお婆さん、なぜかご近所の
おかみさん連中からはけっこう人気があった。

 気がつけば商売そっちのけで近所のおかみ連中と話し込んでる
なんてことも多々あった人なのだ。

 私の母なども、「あの人は、昔、遣り手だったから、やっぱり
話がうまいわ」などとよく感心していた。
 そこで僕は『このお婆さんがきっと商売上手なんだ』とばかり
思っていたのだが……

 これは僕の大いなる勘違いで、このお婆さん、決して豆腐屋の
商売に熱心ではなかった。そっちは老人一人、何とか食べていけ
ればそれでよかったのである。

 そもそもこの婆さん、はじめから豆腐屋だったわけではない。
私が生まれた頃は売春防止法施行前でご近所にあった遊郭も合法。
お婆さんはそこの『遣り手ばばあ』だったのだ。

 この『遣り手ばばあ』、道行く人の袖を引いては店の女の子を
紹介するのが仕事。今の言葉で言うならポン引きというところか。
もともとお女郎さんだった人が店に残って商売替えするケースが
多かったようだ。

 このお婆さん、うちの質店でも常連さんで……
 『店に上がりたいが軍資金が…』などと言って渋るお客さんの
コートなり腕時計なりを剥ぎ取るように持ってきてはお金にかえ
ていったそうだ。
 まさにお客の軍資金調達係りというわけだ。

 その遣り手の仕事は、何もお客さんを連れて来る営業だけでは
ない。
 昼間は店の掃除からお女郎さんの労務管理まで任されていて、
病気のケアや堕胎の手配、はては逃げ出したお女郎さんの折檻も
お婆さんの仕事だった。

 この時の折檻に、実はお灸も使われていて、このお婆さん、
いつの間にか、お仕置きとしてのお灸のオーソリティーになって
いたらしい。そして、『やり手』引退後はしきりにそれを近所の
おかみさん連中に吹聴していたのだ。

 すると、そんなお婆さんの経験談を聞いていたおかみさんたち
の間で、子供のお仕置きにお灸が一大ブームになったというわけ。
 つまり、私たちは大いに迷惑をしたというわけです。

 だから、昭和三十年代は日本国中でお灸のお仕置きが行われて
いて、みんな親からお灸を据えられていたなんて言ったらそれは
嘘です。その当時でも、お灸のお仕置きを受けた人はごく一部で
しょう。

 ただ、今に比べたらはるかにポピュラーなお仕置きだったのも
事実です。
 それまで何もなかった白い太股にある日突然お灸による火傷の
痕を見つけた時はびっくりしました。当時は、女の子だから絶対
にないとまでは言えないお仕置きだったのです。

************************

見沼教育ビレッジ <第2章> (2)

***** 見沼教育ビレッジ <第2章> (2) *****

******<主な登場人物>************

 新井美香……中学二年。肩まで届くような長い髪の先に小さく
       カールをかけている。目鼻立ちの整った美少女。
       ただ本人は自分の顔に不満があって整形したいと
       思っている。
 キャシー……ふだんから襟足を刈り上げたオカッパ頭で、短い
       フリルのスカートを穿いている。お転婆で快活な
       少女。ケイト先生は元の指導教官で、離れた今も
       会えばまるで仲のよい親子ようにじゃれあう関係。
 堀内先生……普段は温厚なおばあさん先生だが、武道の達人で
       たいていの子がかなわない。美香が卒業するまで
       ケイト先生からキャシーを預かっている。
 ケイト先生…白人女性だが日本生まれの日本育ちで英語が苦手
       という変な外人先生。サマーキャンプでは美香の
       指導教官なのだが、童顔が災いしてかよく生徒と
       間違われる。彼女はすでに美香の両親から体罰の
       承諾を得ており、お仕置きはかなり厳しい。

**************************

 二週間後に再び四人で訪れた公園はやはりそれなりに賑わって
いた。

 広い公園内のあちこちに先生と生徒のペアがいる。
 どのペアも強い絆で結ばれた師弟だ。

 この師弟、出会いは偶然だし、二人がいつもそばにいるのは、
そういう規則だから仕方がなく……とも言えるのだが、長い時間
寝食をともにしていると、たとえ最初は敬遠したい人物であって
も時間の経過とともに人間関係はしだいに密になっていく。
 お互いの絆だって強くなっていくというわけだ。

 そんな師弟ペアがここでは立場上二種類に分かれていた。
 罰を受けるグループとその罰を見学するグループだ。

 そんな立場の違いは、普段の学校や家でなら決定的なものかも
しれない。
 ところが、こうして深い森の木々の中に囲まれて行われると、
不思議なことにそれは大した問題ではないように思われるのだ。

 遠足先で受けた先生からのお仕置きという感じだろうか。
 こうした自然の懐に抱かれていると、せわしない日常がどこか
に置いてけ堀をくらっていて、たとえ痛い思いや恥ずかしい思い
をしてもそれが日常のお仕置きに比べ憂鬱でなかったりする。

 ここはそんな異空間だった。

 「ねえ、キャシーはこの二週間、体罰ってあったの?」
 美香は公園の中をキャシーと並んで歩きながら尋ねてみた。
 すぐ後ろを、ケイト先生と堀内先生がペアで歩いているから、
小さな声だ。

 「ないわけないじゃない。……でも、新たな厳しいお仕置きは
なかったから、私にとっては平穏な日々だったわね。あなたは?」

 「……(へへへへ)」
 美香はキャシーに見つめられ、俯きながら照れ笑い。
 「私も同じよ。毎日、ケイト先生にお尻ぶたれてたもん……」

 「でも、もう慣れたでしょう?」

 「まあね……最初は三つぶたれただけでも痛くて飛び上がって
たけど……」

 「慣れたお仕置きをそのままずっと続けてくれるのは、あなた
が立派に課題をこなしてるからよ。もし『これはまずいな』って
思われたら、たいてい別のお仕置きが用意されてるの」

 ケイト先生が後ろから解説するとそれを聞いて美香が振り返る。
 「別のお仕置きって?」

 「あなた、これまで、痛いお仕置きというのは受けたでしょう
けど、恥ずかしいお仕置きというのはないんじゃない?」

 「あるりますよ、わたしだって……」

 「ほんとに?」

 「だって、わたし、毎朝、親の前で浣腸させられてるのよ!」
 美香は思わず大声になり、その自分の声が恥ずかしくて、また
声が小さくなった。
 「……あれ、恥ずかしいなんてものじゃなかったわ」

 「なんだ、そんなことか……」

 キャシーがつまらなさそうに言ってのけるから……
 「『なんだ』はないでしょう。毎朝、死ぬほど恥ずかしいんだ
から……」
 と抗議すると……

 「そんなのみんなやってることだもん、恥ずかしいうちに入ら
ないわ」

 「どうしてよ?」

 「だって見られたと言っても相手は親でしょう……親ってのは
ねえ、たいていあなたのオムツを換えてるから、娘のアソコは、
誰だって知ってるの。別にそれで驚きゃしないわ」

 「そんなこと言ったって……」

 「恥ずかしい罰って言うのは……そういうんじゃないのよ……
例えば……」
 キャシーはそう言うと、あたりを見回し始めます。
 すると、お誂え向きにむこう木陰から乳母車がやって来ます。

 「いらっしゃい。見せてあげる」
 キャシーは喜び勇んで美香の手を引くと、さっそくその乳母車
の方へ……

 「わあ、大きい……」
 美香が思わずつぶやきます。

 実際、この乳母車は遠くからではよく分かりませんが、近くに
寄ると通常のものに比べかなり大きいものだとわかります。

 「先生、赤ちゃん、見せてもらってもいい?」
 キャシーはこの大きな乳母車を押していた先生にさっそく尋ね
ました。

 「いいわよ」
 先生の許可が下り、キャシーが乳母車を覗き込むので、美香も
一緒になって覗いてみると……

 「えっ!?」

 そこに寝ていたのは、赤ちゃんとは名ばかり、美香と比べても
さして年恰好の違わない少女がベビー服を着せられ真っ赤な顔を
して乳母車の中で横たわっていたのでした。

 なるほど、こんなに大きな赤ちゃんを寝かせて運ぼうとすれば
そりゃあこんなに大きな乳母車だって必要なわけです。

 「ねえ先生、この子、そろそろオムツを取り替えた方がいいん
じゃないですか?」
 訳知り顔のキャシーが禁断の言葉を……

 「ええ、そうなんだけど……この子強情で……頑張ってるのよ」

 「なるほどね、往生際が悪いんだ。それでこんな顔してるのね」
 キャシーは、最初乳母車を押す先生に向かって話していました
が、やがて、その悪戯っぽい笑顔を揺りかごの少女のへ移します。

 意味ありげなキャシーの流し目に耐え切れず少女は思わず逃げ
場を探しますが、こんな狭い室内で逃げる場所はどこにもありま
せんでした。

 しかも、いきなり身体を動かしたのがいけなかったのか、強烈
な大波が少女を襲います。
 その大波が去るまでは、顔をしかめ、身体を小さく丸め込んで
とにかく揺りかごの中でじっとしているしかありませんでした。

 そんな取り込み中のところへ、今度は、生徒二人を追ってきた
ケイト先生と堀内先生までもが乳母車の中を覗き込みます。

 「そうね、だいぶ頑張ったみたいだし、……この際、楽にして
あげた方がいいかもしれないわね」
 とケイト先生。

 堀内先生も乳母車を押していた大谷先生に向かって…
 「お手伝いしましょうか?」
 と協力を申しでます。

 大谷先生も……
 「それじゃあ、お願いできますか」
 となって……どうやら、この子の進退は窮まったみたいでした。

 「さあ、雛子ちゃん、もうゲームは終わりよ」
 大谷先生は笑顔で雛子ちゃんに引導を渡します。

 「いや、だめ、いや、絶対いや、ここじゃいや、お家に帰る」
 雛子ちゃんはそれでも最後の抵抗を試みますが……

 「いやあ~~やめて~~お願~~い、そんなことしちゃだめえ」

 大谷先生が雛子ちゃんのお願いを無視して、お臍の辺りを強く
押すと……

 「…ррррр…ррррр…ррррр」
 やむを得ないことが起きました。

 グリセリンの混じったたっぷりの石鹸水が雛子ちゃんの穿いた
大きなオムツの中で大爆発を起こします。
 雛子ちゃん、もうその時点で放心状態でした。

 「………………」
 言葉はありません。悲鳴もありません。ただ流れ落ちる涙だけ。
 その瞬間は誰も何もできませんでした。

 ただ、いつまでもこうして眺めているわけにはいきませんから、
一拍おいて堀内先生が雛子ちゃんをなぐさめます。
 「よしよし、よく頑張ったわよ」

 でも、今の雛子ちゃんにしてみたら、そんな取って付けた様な
慰め何の足しにもなりません。ただ、お浣腸のお仕置きの時は、
どの先生も必ずそう言って子どもたちを慰めるのでした。

 「さあ、いつまでもこうしてはいられないでしょう。早いとこ
取り替えてしまいましょうね」

 堀内先生の言葉は穏やかですが、それがが終わるやいなや大人
たちが寄ってたかって後処理を始めます。
 そこに情け容赦はありませんでした。

 たちまち雛子ちゃんの下半身は丸裸にされて、手際よく汚物が
取り除かれます。
 こんなこと、先生方は毎日のようにやっていますから、それは
それは手馴れたものでした。
 すると、ここで突然……

 「ほら、あなたたちも手伝いなさい」
 というケイト先生の声。

 堀内先生も手招きして、キャシーも美香もお手伝いを命じられ
ます。

 とばっちりを受けないようにと乳母車から少し離れた処にいた
二人ですが、見つかってしまいます。

 『えっ!私たちもやるの!そんなの嫌よ。私、ばっちいこと
嫌いだもん!』
 たちまち、そんな素直な気持が顔に出ます。

 いえ、小学生の頃なら無条件でその場から逃げ去っていたかも
……ただ、二人はすでに分別が働く歳になっていました。
 『逃げることがタブーだ』と分かっていたのです。
 ですから、仕方なく乳母車に戻ります。

 それは人手が足りないということではありませんでした。大人
が三人もいれば人手はむしろ余っています。
 それでもあえて二人を呼んだのは、これが抵抗した雛子ちゃん
への新たなるお仕置きになると考えたからでした。それと、二人
の傍観者にとっても、これがよい教訓になると思ったのでした。

 まずケイト先生が美香に命じて雛子ちゃんの両足を思いっきり
開かせます。

 「さあ、これで綺麗にしてあげなさい」
 狭い車内でこれでもかというほど開かれたその場所をぼんやり
見ていたキャシーに堀内先生が固く絞った濡れタオルを渡します。

 すでに汚物は先生方によってあらかた処理された後でしたから
それは問題ないのですが……たとえ汚れていなくても同性のお股
なんてぞっとしません。

 「えっ、私が……」
 思わず本音が口をついて出ますが、でも、やるしかありません
でした。

 「そうよ、丁寧にやってあげなさい。……あなたたちだって、
いつ逆の立場になるかわからなくてよ」
 堀内先生の言葉はあながち威しだけとは言えませんでした。

 「さあ、早くなさい。雛子ちゃんが風邪をひいちゃうわ。……
いいことキャシー、今はあなたより雛子の方がよっぽど辛いのよ」
 そう、たしかにそれはそうでした。

 キャシーは覚悟を決めてお友だちのお股の中を綺麗にしていき
ます。
 誰だってそうでしょうけど、こんな場合、たとえ汚い仕事でも
サービスしてあげる方がまだ気が楽だったのです。

 「よしキャシー、それくらいでいいでしょう。今度は選手交代。
美香ちゃん、こっちへ来て代わって頂戴」

 堀内先生はキャシーと美香の役割を入れ替えます。今度は美香
が雛子ちゃんのお股を拭く番でした。

 「えっ!私も……」
 美香だって思わず本音が……
 もちろんこちらも拒否はできませんでした。

 もし、これが男の子だったら……きっと女の子とは別の感情が
湧くのかもしれません。……ですが、女の子にとって同性のお股
というのは、ただただばっちいものでしかありません。
 ですから、キャシーにしても美香にしても、それは純粋に苦痛
な作業でしかありませんでした。

 ただ、それよりもっと苦痛だったのは……もちろん雛子ちゃん
だったわけです。

 親にも見せた事のないような自分の恥ずかしい場所をこんなに
もたくさんの人の前で、こんなにも長い時間晒してしまうなんて
……
 その時は自分という存在が溶けてなくなりそうなくらい恥ずか
しかったのでした。


 苦役から開放されたキャシーがさっそく美香の腕を引っ張って
耳打ちしたのもそのことでした。
 「大変だったけどさあ、雛子のあそこ見たら笑っちゃったわ」

 「どうして?」

 「だって、あの子の…変な形してるんだもん」

 「あなただって同じでしょう?」

 「私、違うわよ。私のは図鑑に載ってたのと同じ形だもん」

 「見たことあるの」

 「あるわよ。鏡で……あなた?ないの?」

 「ええ、まあ……」

 「今度、機会があったら私に見せて?」

 「バカ言わないでよ!」

 「あっ、怒った。やっぱり恥ずかしいんだ」

 「当たり前じゃないの!」

 「そうかなあ。でも、私は平気よ。好きな人なら見せてあげて
もいいわ」

 「えっ!?あの乳母車に乗りたいの?」

 「そうじゃないわよ!……あんなのはやっぱり嫌だわ。今回は
やってあげる方だから、まだよかったけど、晒し者にだけはなり
なくないもの」

 「相変わらず大胆ね、あなたって……」
 美香はため息。あまりにもタブーを軽々と超えていくキャシー
に美香はついていけなかった。

 ただ、美香だって、秘め事としての情事は経験済み。そこは、
キャシーにも負けていなかったのである。

 「ねえ、これからどこへ行く?……また、東屋へ行ってみる?」

 「私、それはいいわ。……しばらくは女の子のお尻なんて見た
くないから……」

 「あっ、そう……じゃあ、男の子ならいいんだ」

 「バカ言わないでよ。別にそういうわけじゃあ……」
 キャシーの意味深な笑いに、美香は恥ずかしくなる。

 「ここにも小学生でよかったら男の子が来るわよ。見に行って
みる?」

 「男の子がいるの?」

 「ほら……」
 キャシーの流し目に美香が視線を会わせると、その視線の先に、
今、話題にしたばかりの男の子たちがいた。

 「ねえ、キャシー……あれって、小学生よね。……あの子たち、
どこへ行くの?」
 美香がキャシーに尋ねる。

 すると……
 「ああ、あれ……あれはたぶん社会科見学ね」

 「社会科見学?」

 「あそこに赤いレンガの建物があるでしょう。……あの中に、
博物館とか美術館なんかがあるの」

 「ミュージアム?」

 「ま、そんなものだわ………そうだ、私たちも行ってみない」

 「どんなものがあるの?わたし、堅苦しいところは苦手よ」

 「大丈夫、そんなところじゃないわ。ただ、私たちにとっては
ちょっと恐いだけ」

 「恐いって?」

 「ま、いいから、行きましょう。とにかく、行けばわかるわ」

 キャシーはそう言って美香の手を引っ張るのだった。


***** 見沼教育ビレッジ <第2章> (2) *****

見沼教育ビレッジ < 第2章 > (1)

見沼教育ビレッジ < 第2章 >

******<主な登場人物>************

 新井美香……中学二年。肩まで届くような長い髪の先に小さく
       カールをかけている。目鼻立ちの整った美少女。
       ただ本人は自分の顔に不満があって整形したいと
       思っている。
 新井真治……振興鉄鋼㈱の社長。普段から忙しくしているが、
       今回、娘の為に1週間の休暇をとった。
 新井澄江……専業主婦。小さな事にまで気のつくまめな人だが、
       それがかえって仇になり娘と衝突することが多い。
 新井香織……小学5年生で美香の妹。やんちゃでおしゃべり、
       まだまだ甘えん坊で好奇心も強い。
 キャシー……ふだんから襟足を刈り上げたオカッパ頭で、短い
       フリルのスカートを穿いている。お転婆で快活な
       少女。ケイト先生は元の指導教官で、離れた今も
       会えばまるで仲のよい親子ようにじゃれあう関係。
 堀内先生……普段は温厚なおばあさん先生だが、武道の達人で
       たいていの子がかなわない。美香が卒業するまで
       ケイト先生からキャシーを預かっている。
 ケイト先生…白人女性だが日本生まれの日本育ちで英語が苦手
       という変な外人先生。サマーキャンプでは美香の
       指導教官なのだが、童顔が災いしてかよく生徒と
       間違われる。彼女はすでに美香の両親から体罰の
       承諾を得ており、お仕置きはかなり厳しい。
 

**************************

***** 見沼教育ビレッジ <第2章> (1) *****

 父親の真治が仕事のためビレッジを離れると、彼がやっていた
施設での仕事はケイト先生に引き継がれた。

 美香にしてみると、自分の恥ずかしい姿を父親に見られる屈辱
だけは一応回避された格好だが、それ以外は何も変わらなかった。

 息を抜けない厳しい勉強時間とその後繰り返されるお尻叩きの
お仕置き。もちろん朝の浣腸という忌まわしい行事もそのままだ。

 一日必死になって過ごしても、何の楽しみも得られない日々は
さぞや苦痛の日々かと思いきや、二週目に入ると少しだけ楽に。
生活スタイルへの慣れが、彼女に少しずつ自由時間をもたらして
いくのだ。

 最初の頃は、各教科の終わりは必ずケイト先生からのお尻叩き
と決まっていたのに、それが必ずしもワンセットではなくなって
きて……さらには、ここへ来た当初は夕食すら満足に取れない位
忙しかったのに、それもいつの間にか昼食や夕食に1時間程度の
余裕ができるようになり寝る前にも妹の勉強をみてやれるように
なる。

 それは追い詰められた美香が勉強のやり方を日々工夫した賜物
なのだが、誰にやらせてもこうなるわけではない。素地のない子
にこれはできない。

 ケイト先生は花園女学園での情報収集から美香にはすでにその
能力が備わっていると確信していたのである。


 「明日は土曜日だけど、どこか行きたい処あるかしら……」

 ケイト先生にこう言われて美香はきょとんとした顔になった。
 これまであまりにも忙しすぎて曜日をいちいち頭の中に入れて
いる余裕がなかったのだ。

 「あっ、そうか……土曜日の午後ってお休みが取れるんだ」

 「誰もが休めるわけじゃないのよ。だけど、あなたは頑張り屋
さんだから、勉強の方も順調だし、問題ないわ」

 「でも、どのみちフェンスの外へは出られないんしょう?」

 「……そりゃあそうだけど、ここには映画館もテニスコートも
ゲームセンターも図書館もあるわるわよ。公園で生き抜きっての
もあるわよ」

 「そうよね、あそこは他の子のお仕置きも見学できるしね」

 美香の悪戯っぽい声に今度はケイト先生の方がきょとんとした
顔になった。ケイト先生が言ったのは誰でもが利用できる公園の
こと。初日に見たお仕置きとして連れ込まれる公園の事ではでは
なかった。

 「いいわよ、……あなたが、また、あの公園に行きたいのなら
……」

 「冗談よ」
 言葉遣いに慎重になるケイト先生を見ながら美香は笑った。

 ただ笑顔でそうは言ったものの、その心の奥底には、あながち
冗談とは言えない思いが隠されていたのである。


~~~~~~(美香の回想)~~~~~~

 私が12歳で全寮制の花園女学院に入学した時は、気分は子供
のまま。
 両親から引き離されたばかりの子羊は今日から誰一人知るべの
ないこんな大きな建物のなかで暮らさなければならない。
 そう思うと、もうそれだけで気も狂わんばかりの恐怖でした。

 エントランスに集められた新入生たちは、全員、私と同じ心境
だったと思います。

 両親が詰めてくれた大きなトランクは旅行用。普段の旅行なら
それは親の仕事、あるいはチップを渡してボーイさんの仕事です。
 ですが、今は、その重い荷物をやっとの思いでここまで引きず
ってきたところでした。

 落ち着きなくあたりを見回す新入生たち。
 私も彼女達と一緒の境遇でした。

 そんな時です。

 「!」

 私は気づきます。そんな私たちの様子を二階の手摺ごしに見下
ろす人たちがいることを……。

 彼女たちは、しきりに私たちを指差しながら何かおしゃべりを
していましたが、何を話していたかその時は分かりませんでした。

 当初は、『きっと新入りが珍しくて、はしゃいでいるのだろう』
ぐらいに思っていましたが……

 でも、彼女たちは全員高等部の新二年生。
 私たち中等部の生徒とは学校も違いますし、何より、まだ目も
開かないようなひよこたちから見れば雲の上の存在のお姉さん達
です。

 古株のお姉さんたちはこれまでも四月ごとに新入生を目にして
きたはずで、むやみにはしゃぐ必要はないように思ったのですが
……

 実は彼女達、私たちを単に見下ろしていただけではありません
でした。
 何やら楽しそうに品定めしています。

 耳を澄ませば…あの子の父親は元男爵だとか、あの子は家柄は
ともかく正妻の子じゃないとか……そんな言葉が途切れ途切れに
耳に入ります。

 すると、私だって気になりますから、上を見上げる回数が増え
ます。

 そんな時でした。そんな上級生の一人と、私は目が合います。

 背がすらりとしていて、面長で白い肌、切れ長の目、しなやか
なワンレンの髪からは理知的な顔が覗きます。
 その人は他の先輩方から見てもひときわ身長が高く、落ち着き
はらった様子から他の先輩たちに比べても大人に見えました。

 『あの人、先生じゃないわよね。……そうか、他のお姉様達と
同じ制服着てるもん、そんなわけないか……でも、ふけてるなあ』
 これが、有森先輩を見た私の第一印象だったのです。

 一方、先輩の方は私をどのように見ていたのでしょうか。
 その事を後で尋ねると、先輩はいつも「たまたまあなたが目に
入っただけ。……誰でもよかったのよ」とそっけなく答えますが、
あの時の有森先輩は私を食い入るように見ていましたから……
 『私、このお姉さまに何か失礼なことしたかなあ』
 と思って心配したくらいでした。

 いずれにしても、この有森朱音先輩が、私を指名してくれたの
です。

 実は、私たち新入生は最初の1年間、高等部二年の先輩と同室
にさせられます。その間に、学校の規則やしきたりや生活習慣を
同室の先輩から実地に学ぶことになっていました。

 もちろん、その指名は先輩の方から……。
 私の場合は他に手を上げるお姉さまがいなかったのですんなり
決まりましたが、かち合えば抽選となります。まるでプロ野球の
ドラフト会議みたいにクジで同室の先輩が決まっていくのでした。

 というわけで、新入生の私は有森朱音先輩と同室になります。

 この先輩、顔だけ見ると、何だか能面みたいで、とっつきにく
そうにも見えますが、そんなことはありません。私にとっては、
とても優しくて頼りになるお姉さまでした。

 朱音お姉さまは、学校の細か過ぎる規則やしたしきたりをおっ
ちょこちょいの私に一から丁寧に教えてくださいました。

 先生や上級生への日頃の挨拶はもちろん、図書室で席次や本の
読み方、毎日出される課題をどのように処理したら先生に喜ばれ
るか、レポートの書き方や食堂での自分の好きなものを注文する
方法なんてのも……中間や期末のテスト時期になると習っている
先生の癖から試験に出そうな処をピックアップして模擬問題まで
作ってくださいます。

 それだけじゃありません。私が寄宿舎の規則を破って、舎監の
樺島先生からお仕置きを受けそうになった時も……
 『この子は私の責任で』
 とおっしゃって、私を貰い受けてくださったのでした。

 そんな事が続くうち、私はまるで朱音お姉さまのことを本当の
お姉様かお母さんみたいに思って甘えるようになります。
 他の人が『まるで能面のようにのっぺりした顔』というその顔
だって愛されてる私にはまるで観音様のように見えるのでした。

 逆にそんなお姉さまが『こうしなさい』と言えば、私は嫌とは
言えなくなっていました。

 お姉さまが私を樺島先生から貰い受けて下さった時も、実は、
そのあと、部屋に帰ってからお姉さまのお膝の上で嫌というほど
お尻を叩かれたんです。
 でも、それが原因でお姉さまが嫌いになることはありませんで
した。

 朱音お姉さまは、そのお仕置きのあと、私を抱いてくださった
のです。

 学校では禁じられているベッドでの秘め事です。
 でも、私は抵抗しませんでした。

 「なぜ、私があなたを選んだか、ですって……そんなの可愛い
からに決まってるじゃない。可愛いからあなたは私に抱かれてる
のよ。……どう?…嬉しい?……嬉しかったら嬉しいって言って
ごらんなさい」

 「嬉しいです。……お姉さま」
 私はお姉さまの言葉を素直に信じます。

 私のショーツの中で、お姉さまの細くしなやかな指先がまるで
ピアノを弾くように遊びます。

 「……あっ……あっ……ぁぁぁぃゃ」
 クリトリスが立ち上がっていくのがわかりますが、恥ずかしく
てもそれを隠そうとする私の右手をお姉さまは許してくださいま
せんでした。

 自分の指以外で小さな芽を立ち上がらせたのはこれが初めてで
す。

 赤くただれたお尻を触られた時など、本当は痛みで悲鳴を上げ
そうなくらいなのに……
 「黙って」と言われると……
 それからは、ただじっと我慢してしまいます。

 そして、それがやがて絵も言われぬほど心地よくなるのでした。

 「あっ~~~ああ~~~~いや~いい…いい、いい、ああ」
 胸を揉み上げられ、首筋や耳たぶに息を吹きかけられて、私の
理性は壊れていきます。

 その時はまだ幼い身体でしたが、恥ずかしいしたたりが身体の
奥底でぴちゃぴちゃ音を立てているのが分かります。
 こんなに濡れたのは生まれて初めてです。

 手の指、足の指が痺れはじめ、甘い蜜を搾り取るように身体が
しなります。そして、ついには堰を切ったように血液が子宮へと
逆流して……

 「あっぁぁぁぁ……」
 私は歓喜の声は抑えることができませんでした。

 すべては、お姉さまの思うがまま。
 私はお姉さまのお人形に徹します。
 何をされても抵抗しないママゴト遊びのお人形。でも、こんな
幸せなお人形は生まれて初めてでした。

 『幸せ……世の中にこんなにも楽しい遊びがあるなんて……』
 私は、自分の乳頭をお姉さまがその唇でぷるんと摘んでくれる
ことに歓喜してさらに蜜が溢れます。

 ショーツを脱がされ、その恥ずかしい奥宮を舐められた時には
……
 「あっ、それは汚いから……だめ……」
 と、小声でつぶやきましたが、それ以上の抵抗はできないまま
私は快楽の深井戸へと落ちて行き……やがてお姉さまの胸の中で
眠りに着くのでした。

 ただ、これは全て朱音お姉さまから私へのサービス。ご自分が
楽しまれた訳ではありません。……でも、もしこれが何でもない
時にやられていたら……私はそれを拒否して、お姉さまを嫌って
いたかもしれません。

 すべては真っ赤に熟れたお尻が、こんな愛され方を私に教えて
くれたのです。
 
 味を占めた私は、その後それとなくお姉さまにあの夜の出来事
をおねだりしました。
 そう、わざとしくじりををして……オイタをして……お姉さま
にお尻叩きとその後の愛を求めたのです。

 でも……
 「だめよ、美香ちゃん。こうした事は、癖になるからね……」
 朱音お姉さまはこう言ってなかなか応じてくださいません。

 でも、私にストレスがたまったときは、やはり歯の浮くような
強いお尻叩きと飛び切り優しい愛撫で私を励ましたくれたのです。

**************************

 『有森先輩のお仕置きって愛だったんだろうか?……まさか、
……まるで反対のことしてるのに……でも……でも、あれ、幸せ
だった。幸せだったから、また新たな出会いを求めたんだわ』

 白昼夢から醒め、自問自答するうち、美香はその時の切なくも
狂おしい思いが、あの公園でなら蘇ると感じたのだった。
 激しい日常が一段落して訪れた心のエアポケット。

 「キャシーに会えるかな?」
 美香がつぶやくと……

 「へえ~あなた、あの子がいいんだ」
 というケイト先生の少し意外な表情が返ってきた。
 先生の感覚では同じようにここで暮らしているといっても二人
は育ちが違うと思ったのだ。

 「いけませんか?」

 「いいえ、そんなことないわよ」

 「だって、私、ここでは他に友だちもいないから……」

 「そうか、そりゃそうね。……わかった。とにかく相手がOK
すれば問題ないことよ。……連絡とってあげるわね」
 ケイト先生は、そんな美香の下心を知ってか知らずか、喜んで
キャシーに連絡を取るのだった。

 結果は二つ返事。
 30分もすると、キャシーが堀内先生を伴ってやってくる。

 「ヤッホー!美香、元気だった?」
 キャシーがいきなり美香に飛びついた。

 すると、美香もキャシーを身体を抱き抱えて……
 「キャシー、あなたこそ元気だった?お仕置き続きで泣いてた
んじゃない?」

 「それはお互い様でしょう。ここで1日過ごしてお尻を叩かれ
ない子は一人もいないわ」

 「そりゃあ、そうだ」

 まるで古くから親友が再会したみたいな挨拶だが……この二人、
二週間前にたった一度、ひょんなことから半日連れだって公園を
歩いただけなのだ。
 それでも、こうして抱き合えるのは気の合う証拠。お互い生ま
れ育ちは違っていても、どこか分かり合える部分があったのだ。

 「また、例の公園に行きたいんだって……あんたも好きね~~
……今日は男の子なんていないわよ。いいの?」

 「いいの、そんなことは……女の子の裸だって十分美しいわ」

 「おやおや、あなたも相当、ここにきてるわね」
 キャシーはそう言って、美香の頭を人指し指でつつく。

 でも、美香もそれには悪びれる様子がなかった。

 「きてるわよ。……きてます。きてます」
 美香は両手を前に出してテレビで見た魔術師のマネをする。

 そして……
 「それって悪いことなの?…だって、他人の悲鳴くらい楽しい
ものはないわ。こんな楽しいショーは他じゃ見られないもの」

 「わあ~~、そこまで言う?」
 キャシーがおどけても美香は動じない。
 「言うわよ。いけない?」

 「わあ~~美香って変態なんだ」

 「変態よ。私、変態なの。生まれた時から変態。悪いかしら?
……だったら、あなたはどうなの?」

 「……(フフフフフ)変態よ。私も同じ。……自分がやられる
のは勘弁だけど、他人がやられてるのは、やっぱり大好きだもの」

 「ほらごらんなさい。建前は別にあっても、本音はみんな同じ
なのよ」

 美香がそう言い張ると、道々後ろで聞いていた堀内先生が……
 「美香さん、もう少し声のトーンを落とした方がいいわね。…
…後ろに聞こえてますよ」

 美香はその声を聞いたとたん顔が真っ赤になるのだった。


***** 見沼教育ビレッジ <第2章> (1) *****

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR