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3/14 今では嘘にしか思えないでしょうが……
3/14 今では嘘にしか思えないでしょうが……
私の家にも実は子守さんというのがいて、服飾関係の専門学校
に通いながらうちで子守の仕事をしていたのですが、短気な母に
責められて、お灸すえられたこともありました。
「私はあなたの親代わりなんだから……」
というのがその理由だったみたいですが……
ほんと、今なら傷害罪で訴えられてます。
私の家は個人経営の商店に過ぎませんが、それでもご飯炊きの
おばあちゃんとこの子守さんぐらいは雇っていました。
当時、女の人のお給料というのはとても安くて、この若い子守
のお姉ちゃんにいたっては、貰えるお給金はお小遣い程度だった
と思います。
その代わり、学費や衣食住はただですから、辛抱すれば卒業後
は何とかやっていけるという希望はあったみたいです。
口減らしなんて言葉は快くありませんが、その子の親にそんな
気持がなかったとは言えないでしょう。
それだけに、入った家で無理を強いられ泣いてた娘も多かった
はずです。
昭和30年代って、もちろん戦後の憲法下なんですけど、封建
社会の名残みたいなものも、まだあちこちに残っていた時代で、
『三丁目の夕日』のような世界は確かにその時代の一つの真実で
はありますけど、美しくない真実だって沢山あるんです。
僕の小説が、『お仕置き』と称しておきながらSM並みに過激
なのは、ベースとなっているお仕置き体験そのものが今日以上に
過激だったからで、それをさらに脚色してしまうからなのです。
***************************
私の家にも実は子守さんというのがいて、服飾関係の専門学校
に通いながらうちで子守の仕事をしていたのですが、短気な母に
責められて、お灸すえられたこともありました。
「私はあなたの親代わりなんだから……」
というのがその理由だったみたいですが……
ほんと、今なら傷害罪で訴えられてます。
私の家は個人経営の商店に過ぎませんが、それでもご飯炊きの
おばあちゃんとこの子守さんぐらいは雇っていました。
当時、女の人のお給料というのはとても安くて、この若い子守
のお姉ちゃんにいたっては、貰えるお給金はお小遣い程度だった
と思います。
その代わり、学費や衣食住はただですから、辛抱すれば卒業後
は何とかやっていけるという希望はあったみたいです。
口減らしなんて言葉は快くありませんが、その子の親にそんな
気持がなかったとは言えないでしょう。
それだけに、入った家で無理を強いられ泣いてた娘も多かった
はずです。
昭和30年代って、もちろん戦後の憲法下なんですけど、封建
社会の名残みたいなものも、まだあちこちに残っていた時代で、
『三丁目の夕日』のような世界は確かにその時代の一つの真実で
はありますけど、美しくない真実だって沢山あるんです。
僕の小説が、『お仕置き』と称しておきながらSM並みに過激
なのは、ベースとなっているお仕置き体験そのものが今日以上に
過激だったからで、それをさらに脚色してしまうからなのです。
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3/13 子守っ子、敬子の性春(特別読みきり)
3/13 子守っ子、敬子の性春
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*)お灸のお仕置きを待っていますというコメントをいただきま
したので、駄作ながら一本書いてみました。純粋にお灸だけじゃ
ありませんし、まだ草稿なので、誤字脱字つじつまの合わない処
などがあるかもしれません。ご容赦ください。
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私が奉公と称して角田の家へ預けられたのは10歳の時。
いきなり母親から切り離され、右も左も分からない他人の家で
暮らし始めた私は、何をしても寂しさが募って毎日泣いてばかり
いました。
もちろん、母の元へ一刻も早く帰りたかったのですが、貧しい
家に帰ったところでそこに私の居場所はありません。
幼いなりにそれは分かっていました。
私の仕事は主に子守。
赤ん坊を負ぶってあやして、オムツが濡れればそれを取り替え
るのも私の仕事でした。
最初は赤ん坊が泣いてもどうやってあやしていいのか分からず、
オムツのウンチを触るのだってイヤでイヤで仕方がありませんで
した。
そんな私を支えてくれたのは、家の若奥さんでした。
着る服、食べるもの、学校で必要な学用品にいたるまで何でも
与えてくれましたから、学校へ行っても『あの子、きっと角田の
遠縁なのよ』なんて声が聞こえたほどだったのです。
ですから、私はたちまち若奥さんのしもべになります。
若奥さんの頼みは何でもきいて、精一杯愛想よくして気に入ら
れようと務めたのでした。
すると、そんな私がお気にめしたのでしょう。今度は膝の上に
抱いて勉強まで教えてくださるようになったのでした。
そして、それが終わると、そのままお床へ……
世間常識からして、それがおかしいことは大人ならわかるので
しょうが、10や11の小娘にそれは分かりません。
命じられるままに一緒の布団に入ると……
「!!!!!!!」
私の身体はその隅々まで若奥様の手で揉み解されることになり
ます。
手の指、足の指、頭、ほほ、あご、おっぱい、お臍、お尻……
いえ、その中にまで、若奥様の指先は入っていきました。
「(いやあん、くすぐったい、やめてえ、もうここから出る)」
心の中ではそう叫んでも、身体が動きません。
『もし、若奥様をしくじったら、この家でも私の居場所はなく
なる』
そんな思いが私を布団から出さなかったのでした。
幼いからだはそれほど敏感ではありませんが、若奥様は丁寧に
丁寧に私の身体を開いていきます。
私の穴という穴が全て敏感になり、その口がいつしか若奥様の
乳首を求めるようになると、それまで、起立したことのない私の
小さな芽がいきりたつのです。
後は、ひたすら幼児が母の乳房へ甘えるように身体を擦り寄ら
せて若奥様のお情けを求め続けます。
あまりに幸せすぎて、涙が出てきました。
すると、今度は、若奥様が被っていた布団を跳ね上げ、裸の私
にのしかかります。
もう、この時は若奥様の口臭さえも心地よい媚薬に思えるほど
私の身体はとろけていたのでした。
当然、行き着くところへ行き着きます。
手の指、足の指、頭も顎もオッパイも、全ての末梢神経が子宮
に向けて引っ張られ、腰が弓なりになってお臍の下がヒクヒク。
よだれで布団が汚れても気になりませんでした。
『何て幸せなんだろう』
こんな気分、もちろん生まれて初めてだったのです。
その後も、若奥様は私の身体を愛撫してくださり、私は絶頂を
長く維持して幸せをかみ締めます。
「どう、楽しかった?」
若奥様に耳元で囁かれた私は素直に頷いたのでした。
でも、良い事ばかりではありません。
ご主人からこれだけのことをしてもらったのです。
お返しをしないというわけにはいきませんでした。
私は若奥様にやり方を習ってクニングスで御奉仕をします。
もちろん、これだってオムツ替え同様ばっちいことに違いあり
ませんが……
「ああ、いいい、いいわ~、あなた上手よ」
若奥様にこう言ってもらうと本当に嬉しくて、赤ん坊のオムツ
替えなんかよりこちらの方がはるかに楽しい仕事になっていった
のでした。
ところが、こうして若奥様から特殊な仕事(?)をいただいて
楽しくやっていたにも関わらず、三月後、私はとんでもない失敗
をしでかすことになるのでした。
その日、角田の家の近くにある映画館には少し前話題になった
映画、『禁じられた遊び』がかかっていました。もともとここは
名画座で上映されるものはいずれも古いものばかりです。でも、
入場料が安く子守の小遣いでも入ることができましたから、たび
たび利用していました。
ただ、その時は、若奥様の次男で今年3歳になる明雄ちゃんの
子守を言い付かっていました。つまり、仕事中だったわけです。
とはいえ、子守なんてその子を連れて歩けば何かするわけじゃ
ありませんし、何よりおとなしい子だったのでこちらもつい気を
許してしまって、ついふらふらと映画館の中へ入っていきました。
閑散とした館内で二人並んで映画を観るうち、明雄ちゃん寝て
しまいます。そこで、私はトイレに立ったんです。
ところが、席に戻ってみると肝心の明雄ちゃんがいません。
もう、真っ青でした。
もぎりのおばちゃんに聞いても知らないと言いますし、あれで
1時間くらい館内を探したでしょうか。外へ出て、映画館付近を
また1時間。でも、結局見つかりませんでした。
『人攫いにつれていかれちゃったんじゃないか』
そんな不安でいっぱいになります。
ところが、どうしようもなくなって角田の家に戻ってみると、
明雄ちゃんが店先でお爺ちゃんに抱かれています。
どうやら、私がトイレに立った間に目を覚ました明雄ちゃんが
人知れず映画館を出て、外で泣いてたところを偶然通りかかった
近所の人に保護されてたみたいでした。
当時は近所中その子がどこの子か知っていましたから、すぐに
連れて来てくれたのです。その意味では街は今より安全でした。
そんなわけで、角田の家の人たちは事なきを得たわけですが、
使用人の私はそうはいきませんでした。
たちまち、ご家族のいる居間へと呼び出されます。
もちろん、土下座して平謝りだったんですが……
「まったく話しにならないわ。あなたは大恩あるこの家に泥を
塗ったのよ。何が映画ですか。こんな大きな図体して子守ひとつ
まともにできないようなら、ここに置いておくわけにはいかない
わね。お母さんの処へ帰りなさいな。うちはね、遊び半分で仕事
をするような小娘を置いとく義理はないんですからね」
他の方々はそれほど多く口を開きませんでしたが、若奥様だけ
はカンカンだったのです。
「まあ、まあ、そう大声でまくし立てなくてもいいじゃないか。
この子だってまだ子供なんだし映画ぐらい観たいさ。明雄も無事
だったことだし、大騒ぎすることじゃないよ」
旦那様(若奥様のご主人)はとりなしてくださったのですが…
「そうはまいりません。こうした事はその時その時でしっかり
ケジメをつけておかないと、後々間違いのもとですから……」
若奥様の怒りは収まりそうにありませんでした。
しかも旦那様が……
「せっかくの映画、見損なったみたいだね。ほら、これでもう
一度観て来なさい」
そう言って映画代を私に渡そうとしますから、慌ててその手を
押しとどめます。
「冗談じゃありません。そうやってあなたがこの子を甘やかす
からつけあがるんです」
若奥様はこう言うと、私の方を怖い顔で振り返って……
「敬子、女中部屋へ戻って正座して待ってなさい」
こう命じます。私にそれを嫌がる理由などありませんからすぐ
に立ち上がりますが、それと揆機を一にして大奥様も同じように
立ち上がり、いつもの関西弁でこうおっしゃるのでした。
「若い女中たちの躾はあんたに任せてるさかい、そこはあんた
の判断でやってくれたらええんやけど……ただ、あんまり厳しく
せんといてな。私の部屋にまで小娘の金切り声が届くようなら、
こっちも、あまりいい気持はしませんよってに……」
「承知しました」
若奥様は畳の縁に顔を擦り付けるようにして部屋を出る大奥様
を見送ります。
今だってそうでしょうが、当時は今以上に家の中で上下関係が
はっきりしていました。若奥様といえど大奥様の前では『ご無理
ごもっとも』なのです。
もちろん、そんな中でも私は一番下の身分。この家の中では、
誰に何をされても何も言えませんでした。
そんな私の部屋へ若奥様がいらっしゃいます。
私の部屋は、売れ残りの古着などをしまっておく二階倉庫へと
通じる大階段の下にあります。三畳ほどしかない狭くて暗い部屋
には窓もありませんから昼間でも電気をつけなければ何も見えま
せん。ところが、その電気もをつけていいのは着替えなどの必要
最小限だけ。部屋にいるからといって無条件に電気を点けていい
わけではありませんでした。
当然その時も、私は正座して電気も点けず待っていました。
そこへ、パッと電気が点いて……
「!!!!」
私は驚きます。
というのは、部屋の白熱電球を点けたのは確かに若奥様でした
が、その後ろには女中のハツさんが控えているのです。
しかも、その手には見覚えのある大きな漆の箱が……
『お灸だわ』
それは、これから何が始まるかを私に告げています。
かつて、手癖の悪い子やおねしょの治らない子がこの箱の餌食
になって嬌声を上げているのを何度も目撃していましたから間違
いありません。
本当はこの場から今すぐ裸足で逃げ出したいくらいでしたが、
今、ここを出ても行く所がありません。
冷めていてもお腹一杯のご飯が食べられて、外の寒さをしのげ
るお布団があるのは世界でここだけですから……
若奥様に対しては素直にこう言うしかありません。
「申し訳ございません。私が悪うございました。お、お仕置き
を…お願いします」
頭を畳に擦り付けてもどれほど効果があるのかわかりませんが、
何の力もない女の子はとにかくこうするしかありませんでした。
ところが……
「ま、いいわ、頭を上げなさい」
それは、時間が経って冷静になったからでしょうか。若奥様の
第一声は、さきほどの居間で興奮気味に私をなじっていた時とは
大きく違っていました。
「待った?……こんな火の気のない処じゃ、寒かったでしょう。
……でも、自分で蒔いた種だから、仕方がないわね。………首が
繋がっただけでも大奥様に感謝しなきゃ」
若奥様の声はどこか弾んでいました。
当時、子供だった私に大人の世界の駆け引きなど分かりません。
『さっきはあんなに怒っていたのに、今は、なぜこんなに機嫌
よくしてるんだろう』
と思っていました。
実はあの時、一番怒っておられたのは大奥様で、そのまま私を
辞めさすおつもりだったのです。それを若奥様がもの凄い剣幕で
叱りつけることで大奥様のお怒りを代弁し、『お前は首』という
大奥様の口を封じてくださったのでした。
もちろん、私をかばった若奥様の方にもそれはそれなりの理由
がありました。
若奥様は普段着姿の私をしばらく眺めてからこう言います。
「あんた、制服の方がいいな。学校の制服に着替えなさい」
こう命じられたのでした。
事情は分かりませんが、私の方は嫌も応もありません。
すぐに中学の制服に着替えます。
すると、若奥様は女中のハツさんが持ってきた大きな箱を開け
て中の物をあらため始めます。
着替えながら、チラ、チラっと視界に入るそれはやはりお灸の
セットでした。
『やっぱり……』
心の中でため息がでますが、でもこれはいわば想定の範囲内。
ここまでならまだよかったのです。
ところが……
「あっ、ハツ。もし粗相なんかしたらつまらないからお浣腸も
一緒にやりましょう。その方がこの子も辛くないはずよ」
『えっ、!!!』
私の全身に衝撃と悪寒が走ります。
でも、それは逃れられないことでした。
「でも若奥様、今日はこれから踊りのお稽古もございますので
あまり長い時間は……」
ハツさんはこう言いますが……
「それは、今日はお休みにするわ。先生には体調がすぐれない
ので今週はお休みさせてくださいって、すでにお断りしてあるの」
「さようでしたか、それは準備のおよろしいことで……」
ハツさんが悪戯っぽく笑いますと……
「なあに、その目は…相変わらず、子供だって言いたいの?」
「いいえ、決してそのような」
ハツさんは否定しましたが、若奥様自身、ご自分が子供じみた
ことをしているのは承知しているみたいでした。
若奥様は、殿方によく見られるロリコンの気がおありでした。
女性には珍しいのですが、幼い男の子や女の子にも深いご興味が
おありだったのです。
「おいで……」
若奥様は正座なさった膝を叩いて、着替えの済んだ私をお呼び
になります。
「はい」
何をされるかは分かっていましたが、ほぼ無抵抗でした。
若奥様は、ハツさんがお浣腸を準備する僅かな時間を惜しんで
私を求められます。
私のほとんど膨らみのない胸、わずかに大きくなった乳首を、
若奥様の右手が支配してくすぐったく……
「あっ……いや……いや……だめ……だめ……あっ……いい…」
私の隠しておきたい場所にも左手がやってきます。
「あっ、恥ずかしい……いや……いや……そこは汚いから……
だめ……だめ……あっ……いい…痛~……あっ、だめ、離しちゃ」
それは、私がここへお世話になった頃からの習慣。いまはもう、
こうして寸暇を惜しんで私を求めてくださることが嬉しかったの
でした。
そして、こうして抱かれていると、それが何だか母に抱かれて
いるような気分になるのでした。
20分ほどして……
「ガシャ、ガシャ、」
入口の留め金を揺する音がして二人の睦みごとは終了します。
「あっ、ご苦労さん」
若奥様がハツさんを迎え入れる時は、私も身なりを整えて正座
していました。
見ると、大きな洗面器を抱えてハツさんが部屋へ入ってきます。
大判のタオルを乗せてありますが、その脇からガラス製の浣腸器
やらグリセリンの入った茶色い薬壜などが顔を出しています。
持ってきたものはそれだけではありませんでした。
ハツさんが自ら固形石鹸を溶かして作った石鹸水が大きな牛乳
ビンの中で波打っていますし、浴衣地を裂いたオムツの当て布や
新聞紙も必要以上に運び込まれます。
すべて私の為だけに用意されたものでした。
まだ、12や13の少女にとってこんな沢山の貢物はプレッシ
ャー以外の何ものでもありません。
今さらながら、私は逃げようとして腰を浮かしたのですが……
「ほら、始めますよ」
たちまち若奥様に肩をつかまれて浮きかけた腰が踵の上に戻り
ます。
後はなされるままでした。
その場に仰向けになって押し倒されると、畳に倒れた顔のすぐ
そばで、大人たちが私の為にお仕置きの準備を始めます。
「お薬は一割ほど混ぜましょうか」
左に顔を向けると、ハツさんが大きな洗面器に牛乳瓶の石鹸水
を入れています。ハツさんはこの洗面器に何割ほどグリセリンを
いれましょうかと尋ねたのでした。
「一割ねえ……この子も大きくなってるしそれじゃ物足りない
でしょうから……そうね、三割でいいわ」
一方、右に顔を倒すと、若奥様が艾を解きほぐし円錐形にして
お盆の上に並べ始めています。
右も左も、どちらも見たくない映像でした。
ですから、まっすぐな姿勢で天井を向き、目を閉じたのですが、
まだ残っていた耳の中へとんでもない情報が入ってきます。
「奥様、お仕置きはお浣腸のあと、お灸ということでよろしい
ですね」
ハツさんが尋ねると……
「そうじゃないわ、今回は一緒にやってあげようと思うの」
『えっ!!!一緒にって……そんなことしたら……』
私の脳裏に恐ろしい未来予想図が浮かびます。
お灸を据えられながらのウンチお漏らし……
『どうして、そんなことするのよ。……そんなの耐えられる訳
ないじゃない。若奥様は始めから私を笑い者にするつもりだった
のね』
絶望が涙となって畳の目に吸い込まれます。私は惨めな自分を
想像しただけで気が遠くなりそうでした。
だから何も考えないように目を閉じてしまいます。
しかし、大人たちの予定は何も変わりませんでした。
「!!!!!」
私はいきなりスカートが捲られるのを感じて目を開けます。
そして慌てて何かしようとしました。大声をだすなり、身体を
よじるなり……
でも、何もできませんでした。
ただ、大人たちが私のショーツを脱がして、その両足を高々と
持ち上げて、私が誰に対しても…いえ、自分に対してさえ隠して
いるその場所が外の風に吹かれているのを……私は、ぼんやりと
天井を眺めて何もしないでいたのでした。
「まあ、可愛い。……まだ、可愛いものね」
「ほんと、ほんと、まだ赤ん坊と同じ色で……これならお灸が
似合いますね」
その瞬間、私の大事な処をハツさんが触ります。
「!!!!(いやあ~~~~)」
私の身体は痙攣したように細かく震え、棒のように硬直します。
私は大声を出すつもりでした。でも、出なかったのです。
『怖いから……』『あとのたたりを恐れて……』
いいえ、そんな理性的な話じゃありません。単に生理的に声が
出なかったのでした。
そうしているうちに……
「!!!!!!!」
私のお尻の穴へ例のガラス器が突き刺さります。
生ぬるい、本当に気持悪い水にお腹の底が満たされていきます。
「あ~~~いや~~~~これいや~~~~~」
あれでどのくらい入れられたのでしょう。正確な量はわかりま
せんが、ピストンを押し込んで、なくなるたびにづき足されて、
三回、私はガラスの突起が自分のお尻の穴に入って来るのを我慢
しなければなりませんでした。
『ああ、お腹が重い』
お浣腸が終わるまで、ずっとこう思っていました。
「しっかり、ガーゼで栓をしといてね。お灸の方は私がします
から……」
若奥様の囁くような声が聞こえます。
「許して……許してください」
やっと出た小さな声でした。
でも……
「大丈夫、心配しなくても、あなたならきっと我慢できるわ」
若奥様はやさしい笑顔で私の頭を撫でると、高く上がっていた
私の両足を静かに下ろします。
捲られたプリーツスカート。足首まで行ってしまったショーツ。
私の前はその時がら空きなのです。
でも、不思議と恥ずかしいという思いはありませんでした。
度胸がついたんでしょうか。
いえいえ、そうではありません。今さっきやられたお浣腸が、
どうなるか、かつてお浣腸だけのお仕置きを受けたことのある私
はそのことが気になって、それどころではありませんでした。
「まずは……こんな飾りいらないわね」
若奥様は、私の柔らかくまだ生え揃わない下草の上に、水気を
含んだタオルを押し付けてから剃刀で剃りあげていきます。
慌てたハツさんが……
「奥様、そのような不浄なことは私が……」
と止めたのですが……
「大丈夫よ、相手は子供じゃないの。汚くなんかないわ。……
私だって三人の子持ちよ。オムツだって取り替えたじゃない」
若奥様は明るく笑いますが、こちらはそれどころではありませ
んでした。お尻の具合が差し迫っているのです。
その切迫した顔は、当然、若奥様にも通じてて……
「あら、もうウンチしたくなったの。でも、今日は我慢してね。
お灸の事は気にしなくていいから、あなたはウンチを漏らさない
ことだけ心配してなさい。……いいわね」
若奥様は青ざめた私の顔を見て優しく微笑んみ頭を撫でてくれ
ましたが、私の方はというと、それにどんな顔をしていいか分か
りません。本心を言うと……
『この、鬼、死んじまえ』
なんて思っていました。
若奥様は下草の処理が済むと、そこに艾を置きます。
大き目の物が、三つ、四つ、五つ……
若奥様はそれを一つずつご自分の唾で濡らして貼り付けていき
ます。
「ここは、どのみち陰毛が生えて隠れる処だから艾も大きいの。
覚悟なさいね。……あら、どうしたの?イヤなの?……仕方ない
でしょう、あなたが悪いんだから……」
若奥様はそう言って、お線香の火を艾へ移したのでした。
「あらあら女の子がそんな不満そうな顔をするもんじゃないわ。
……お仕置きはあなたの為にやってるんですもの。……あなたも
もう幼い子供じゃないんだし、礼儀を学ぶ必要があるわね。……
いいわ、今度暇があったら、お灸とお浣腸でお仕置きを頂く時の
お顔、訓練してみましょう」
『あっ、いやあ、熱い、熱い、熱い、だめえ~~どけて~~~』
ビーナスの丘に火が回りました。まさに、身体が火事です。
私は声こそ出しませんが、荒い息遣いをして、思いっきり顔を
ゆがめ、身体をねじります。
今までも実母からそこにお灸を据えられた経験があったのです
が、これは別物でした。
「ほら、またそんな顔をして……私も母には『あんたは本当に
堪え性のない子だ』ってよく言われたものだけど……さすがに、
中学生になってからはそんな顔はしなかったわよ。あなた、もう
中学生なんだからこのくらい耐えなきゃ」
若奥様は『呆れてものが言えない』といった感じで、私の苦難
を見下ろします。
「私は5年生の時、母から心棒を通してもらったの。それから
は少しぐらい大きな艾を乗せられても耐えられるようになったわ」
若奥様は据えられていたお灸の残り火を指で押さえ込んでもみ
消すと、やにわに私の両足を引き上げます。
「いやあ!!」
それは反射的に出た言葉でした。
「あなた、まだ心棒が通っていないわね」
若奥様は私の女である部分をなぞりながらこうおっしゃいます。
「……あなたがうちに来たの、確か、小学4年の時だったわね。
あなたのお母様もそのくらいじゃまだ可哀想だと思われたのね。
……そうだわ、今日はちょうどいい機会だから、あなたにも私が
心棒を通してあげましょう」
若奥様はさも楽しそうにおっしゃいますが、私はすでに全身が
脂汗にまみれていながら悪寒がするという不思議な状態になって
いました。
目には汗と涙が入り前が見えませんし、何より時々襲う強烈な
下痢で、若奥様のおっしゃってることも半分以上は理解できない
ままになっていたのでした。
ですから……
「じゃあ、いいのね」
と言われた時も、何の抵抗もなくあごを引いて頷く始末でした。
当然、若奥様はためらいなどしません。
ビーナス丘に乗せたのと同じ位の艾を私の狭い場所に乗せます。
私は慌てて激しく首を横に振って、『いや、いや、だめ、だめ』
という意思表示をしましたが手遅れでした。
「いやあ~~~いやあ~~~いやあ~~~いやあ~~~いやあ」
『火のついたように』というのは、こういうことなんでしょう。
まるで赤ん坊が泣き叫ぶようにして、私は硬直した身体をさらに
硬直させて必死に耐えたのです。
ところが、心棒のお灸が終わって、息も絶え絶えになっている
私に向って、若奥様は不思議なことをおっしゃるのでした。
「どう?…そんなに熱くなかったでしょう。多くの人はお浣腸
しながらお灸なんて残酷だって思ってるみたいだけど、こうする
と、ウンチを我慢する方に気をとられるからお灸はかえって熱く
ないの。お浣腸が麻酔の役目をはたすのね。……ね、どう?……
熱くなかったでしょう?」
若奥様は優しい眼差しで私の顔に近寄ります。
でも、それに対する私の反応はありませんでした。
いくら市販の浣腸液より濃度が薄いといっても、それは時間の
経過と共に勢いを増していきますから、この時は、もう爆発寸前
だったのです。
でも、お灸はこれで終わりではありませんでした。
「さあ、今度は裏返し。うつ伏せなってお尻を高くするのよ」
若奥様はおっしゃいますが、この時は、すでにその姿勢になる
にも自分の力では無理だったのです。
『絶対に恥をかきたくない』
女の子の意地だけが、暴発をかろうじて回避していたのでした。
私はハツさんの手を借りてゆっくりうつ伏せになります。
もちろん、スカートが捲られてお尻があらわになりますが、今
はもうそんなことはどうでもよかったのです。
『おトイレ、おトイレ、おトイレ』
頭の中にはそれしかありませんでした。ですから、お灸のこと
だって……
『早くして、早く、早く、早く』
今はお灸の熱さより一刻も早くお仕置きが終わって解放される
ことを願っていたのでした。
ですから……
「今度のお灸はお尻の始まる処、尾てい骨の処にすえるけど、
ここはお股の中よりさらに熱いですからね、しっかりオシッコの
出口に力を入れて我慢してるのよ」
若奥様の忠告も何気なく聞き流していたのでした。
そして、今まで同様、ハツさんが艾をセットして若奥様が香り
のよいお線香で艾に火をつけます。
私は、今度もお腹に力を入れて頑張れば何とか…と思っいてた
のです。
ところが……
「ひぃ~~~~~~~」
その衝撃は言葉になりませんでした。
尾てい骨に噛み付いた火は一瞬にして背骨を駆け上がり後頭部
を殴りつけます。それは頭の内側を金槌で思いっきり殴られた様
でした。
と同時にその衝撃は、本当はこのままうずくまっているつもり
だった私の身体を持ち上げます。そう、まるで猫が喧嘩をする時
に自分の体を持ち上げて威嚇するように、あんなおぞましい感じ
で私も畳に爪を立て立ち上がったのでした。
もちろん悪寒が全身に走り、体中が震えます。その凄まじさは
私の全身の毛穴から狼の毛が生えるんじゃないか、そんな妄想を
呼び起こすほどの凄まじさだったのです。
ですから、その先は仕方のないことでした。
「あらあら、だから言ったじゃないの。オシッコの出口をしっ
かり閉めときなさいって……」
若奥様に言われて、私はようやく自分の股間がぬれている事に
気づきます。慌てて腰を浮かすと、そこはすでに私が作った湖が
……
『よくもこんなに出たものだわ』
こうなると自分でも呆れて逆に笑みがこぼれます。
それほどの大量失禁でした。
「もう、いいわ、ここにオマルがあるからここで済ましてしま
いなさい」
若奥様の命令で、私はオマルにしゃがみます。
もちろん、本当はお便所がよかったのですが、もう今はそんな
贅沢は言ってられません。跨ると、すぐに出してしまおうとしま
した。
ところが……
「えっ!」
お尻の穴には、しっかりとした栓がしてあって、私がちょっと
力んだくらいではでないようにしてあったのです。
ですからお尻の穴に関する限り少しぐらい力を緩めたところで
最初から暴発なんてしなかったわけですが、当時の私にそんな事
を考える余裕はありませんでした。
ハツさんに身体の隅々まで綺麗にしてもらってから、私は再び
若奥様の処へ行きます。
若奥様の前に立つと……
「いいわ、あなたにはやっぱりセーラー服が似合うわね。こう
して見ると、清楚で気品があって、とても田舎の百姓娘には見え
ないわよ」
と最初は褒めていただけだったのですが……
「でも、今日は全裸におなりなさい。そう、服を全部脱ぐの。
下着も、靴下も全部脱ぐのよ」
若奥様が命じます。実はこんなに据えられてもまだ据えられる
処が残っていたのでした。
今さら恥ずかしいなんて意味ありませんから、私に心の葛藤は
ありませんでした。まるでお風呂にでも入るように私は服を脱ぎ
捨てます。
すると、今度は……
「ここへいらっしゃい」
若奥様は正座した膝を叩いて、裸の私をその膝の上へ呼びつけ
ます。
恐る恐る近づき、どうなるのかと思っていると、いきなり私の
腕を取って膝の上に……
尻餅をついたかと思うと若奥様と同じ方向を向いて羽交い絞め
にされます。
そこで見たものは、またもやお灸でした。
ハツさんが艾を並べたお盆やお仏壇から持ってきた線香立てを
傍らに置いて微笑んでいます。
『何よ、今度はどこに据えるのよ』
私は怖い顔でハツさんを睨んでいたみたいですが、頭の中は、
恐怖と悲観と諦めがない交ぜになって、今でも泣きそうでした。
「今度のは小さいからチクッとするだけよ」
若奥様の慰めにも私は反応しませんでした。今さら逃げもでき
ませんし、何より迫り来るハツさんが怖かったのです。
「さあ、お譲ちゃん、じっとしててね」
私のオッパイを舐めることができるまでに近づいたハツさんは、
そこで、幼い子に言って聞かすように諭します。
「あっ……いや……熱い……あっ……だめ……いや……イヤ」
灸点は、ほんの少しだけ大きくなった私の乳首の周り。ピンク
色と肌色の境に小さく三つずつ。
確かに、小さな艾でしたから時間にすれば一瞬のはずでしたが、
なぜかこれがとても熱く感じられたのでした。
すると、そんな私の心を見透かしたように……
「どう?……熱いでしょう。それが本当のお灸の熱さなのよ。
さっきはお浣腸の最中で、そっちに気をとられてるもんだから、
あまり熱さを感じずにすんだけど、今は気にすることが何もない
から、逆にとっても熱く感じるのよ」
と、おっしゃいます。
そして、熱いお灸は乳首だけでなくお臍の中にも飛び火します。
「いやあ~~そんなところやらないで~~~」
私はお仕置き覚悟で叫びましたが、無駄でした。
「あつい~~~~~~」
据えられた瞬間は駄々っ子のように両足をバタつかせます。
お浣腸という呪縛がとれてお灸に専念できるぶん、恐怖もひと
しお、熱さもひとしおでした。
これでようやく私へのお仕置きは終了。
若奥様は全裸の私を立たせると、まるで芸術作品でも鑑賞する
ようにその灸痕を丹念に見て回ります。
最後はお股の中まで調べますから、私は寝そべって両足を高く
上げ、その両足は自分で持っていなければなりません。
やはりこれが一番屈辱的でした。
「いいわね、このくらい色がついていれば大奥様も納得される
でしょう」
そして、その検査が終わると、私という名の作品は大奥様にも
饗されます。
「いいわ、そんなもの」
最初、大奥様は不機嫌そうにそうおっしゃいましたが、結局は
ご覧になったのです。
若奥様と同じようにそのすべてを……最後の私が高く上がった
自分の両足を支える中での、あのお股の中までも……
「そうですか。こんなにしてまったら、今さらこの子を親元へ
は帰せませんね。でも、その責任はあなたにとってもらいますよ」
大奥様は若奥様に向って何だか全てを見通しておいでのような
笑顔でこうおっしゃたのでした。
私はこの時まだ子供でしたから、若奥様が、なぜこんなことを
なさったのか理解できずにいましたが、すべては若奥様の計らい
だったのです。
私が、できるだけお仕置きを軽くすませ、この先もこのお店で
ずっと長く働けるようにしてやろうという配慮だったのです。
今では主人が従業員にお灸なんかすえたら傷害罪で訴えられる
ことでしょうが、私の子ども時代(昭和30年代)には封建的な
常識がまだまだ生きていて……
『子どもを預けた親に代わって躾をするのも店主の親心』
なんて考えがまかり通っていました。
しかも、私の場合は……
この若奥様の親心が、実は、本当の親心だったと気づくことに
なります。ただ、それはずっと先のお話。
そのことは、また日を改めてお話することといたしましょう。
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*)お灸のお仕置きを待っていますというコメントをいただきま
したので、駄作ながら一本書いてみました。純粋にお灸だけじゃ
ありませんし、まだ草稿なので、誤字脱字つじつまの合わない処
などがあるかもしれません。ご容赦ください。
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私が奉公と称して角田の家へ預けられたのは10歳の時。
いきなり母親から切り離され、右も左も分からない他人の家で
暮らし始めた私は、何をしても寂しさが募って毎日泣いてばかり
いました。
もちろん、母の元へ一刻も早く帰りたかったのですが、貧しい
家に帰ったところでそこに私の居場所はありません。
幼いなりにそれは分かっていました。
私の仕事は主に子守。
赤ん坊を負ぶってあやして、オムツが濡れればそれを取り替え
るのも私の仕事でした。
最初は赤ん坊が泣いてもどうやってあやしていいのか分からず、
オムツのウンチを触るのだってイヤでイヤで仕方がありませんで
した。
そんな私を支えてくれたのは、家の若奥さんでした。
着る服、食べるもの、学校で必要な学用品にいたるまで何でも
与えてくれましたから、学校へ行っても『あの子、きっと角田の
遠縁なのよ』なんて声が聞こえたほどだったのです。
ですから、私はたちまち若奥さんのしもべになります。
若奥さんの頼みは何でもきいて、精一杯愛想よくして気に入ら
れようと務めたのでした。
すると、そんな私がお気にめしたのでしょう。今度は膝の上に
抱いて勉強まで教えてくださるようになったのでした。
そして、それが終わると、そのままお床へ……
世間常識からして、それがおかしいことは大人ならわかるので
しょうが、10や11の小娘にそれは分かりません。
命じられるままに一緒の布団に入ると……
「!!!!!!!」
私の身体はその隅々まで若奥様の手で揉み解されることになり
ます。
手の指、足の指、頭、ほほ、あご、おっぱい、お臍、お尻……
いえ、その中にまで、若奥様の指先は入っていきました。
「(いやあん、くすぐったい、やめてえ、もうここから出る)」
心の中ではそう叫んでも、身体が動きません。
『もし、若奥様をしくじったら、この家でも私の居場所はなく
なる』
そんな思いが私を布団から出さなかったのでした。
幼いからだはそれほど敏感ではありませんが、若奥様は丁寧に
丁寧に私の身体を開いていきます。
私の穴という穴が全て敏感になり、その口がいつしか若奥様の
乳首を求めるようになると、それまで、起立したことのない私の
小さな芽がいきりたつのです。
後は、ひたすら幼児が母の乳房へ甘えるように身体を擦り寄ら
せて若奥様のお情けを求め続けます。
あまりに幸せすぎて、涙が出てきました。
すると、今度は、若奥様が被っていた布団を跳ね上げ、裸の私
にのしかかります。
もう、この時は若奥様の口臭さえも心地よい媚薬に思えるほど
私の身体はとろけていたのでした。
当然、行き着くところへ行き着きます。
手の指、足の指、頭も顎もオッパイも、全ての末梢神経が子宮
に向けて引っ張られ、腰が弓なりになってお臍の下がヒクヒク。
よだれで布団が汚れても気になりませんでした。
『何て幸せなんだろう』
こんな気分、もちろん生まれて初めてだったのです。
その後も、若奥様は私の身体を愛撫してくださり、私は絶頂を
長く維持して幸せをかみ締めます。
「どう、楽しかった?」
若奥様に耳元で囁かれた私は素直に頷いたのでした。
でも、良い事ばかりではありません。
ご主人からこれだけのことをしてもらったのです。
お返しをしないというわけにはいきませんでした。
私は若奥様にやり方を習ってクニングスで御奉仕をします。
もちろん、これだってオムツ替え同様ばっちいことに違いあり
ませんが……
「ああ、いいい、いいわ~、あなた上手よ」
若奥様にこう言ってもらうと本当に嬉しくて、赤ん坊のオムツ
替えなんかよりこちらの方がはるかに楽しい仕事になっていった
のでした。
ところが、こうして若奥様から特殊な仕事(?)をいただいて
楽しくやっていたにも関わらず、三月後、私はとんでもない失敗
をしでかすことになるのでした。
その日、角田の家の近くにある映画館には少し前話題になった
映画、『禁じられた遊び』がかかっていました。もともとここは
名画座で上映されるものはいずれも古いものばかりです。でも、
入場料が安く子守の小遣いでも入ることができましたから、たび
たび利用していました。
ただ、その時は、若奥様の次男で今年3歳になる明雄ちゃんの
子守を言い付かっていました。つまり、仕事中だったわけです。
とはいえ、子守なんてその子を連れて歩けば何かするわけじゃ
ありませんし、何よりおとなしい子だったのでこちらもつい気を
許してしまって、ついふらふらと映画館の中へ入っていきました。
閑散とした館内で二人並んで映画を観るうち、明雄ちゃん寝て
しまいます。そこで、私はトイレに立ったんです。
ところが、席に戻ってみると肝心の明雄ちゃんがいません。
もう、真っ青でした。
もぎりのおばちゃんに聞いても知らないと言いますし、あれで
1時間くらい館内を探したでしょうか。外へ出て、映画館付近を
また1時間。でも、結局見つかりませんでした。
『人攫いにつれていかれちゃったんじゃないか』
そんな不安でいっぱいになります。
ところが、どうしようもなくなって角田の家に戻ってみると、
明雄ちゃんが店先でお爺ちゃんに抱かれています。
どうやら、私がトイレに立った間に目を覚ました明雄ちゃんが
人知れず映画館を出て、外で泣いてたところを偶然通りかかった
近所の人に保護されてたみたいでした。
当時は近所中その子がどこの子か知っていましたから、すぐに
連れて来てくれたのです。その意味では街は今より安全でした。
そんなわけで、角田の家の人たちは事なきを得たわけですが、
使用人の私はそうはいきませんでした。
たちまち、ご家族のいる居間へと呼び出されます。
もちろん、土下座して平謝りだったんですが……
「まったく話しにならないわ。あなたは大恩あるこの家に泥を
塗ったのよ。何が映画ですか。こんな大きな図体して子守ひとつ
まともにできないようなら、ここに置いておくわけにはいかない
わね。お母さんの処へ帰りなさいな。うちはね、遊び半分で仕事
をするような小娘を置いとく義理はないんですからね」
他の方々はそれほど多く口を開きませんでしたが、若奥様だけ
はカンカンだったのです。
「まあ、まあ、そう大声でまくし立てなくてもいいじゃないか。
この子だってまだ子供なんだし映画ぐらい観たいさ。明雄も無事
だったことだし、大騒ぎすることじゃないよ」
旦那様(若奥様のご主人)はとりなしてくださったのですが…
「そうはまいりません。こうした事はその時その時でしっかり
ケジメをつけておかないと、後々間違いのもとですから……」
若奥様の怒りは収まりそうにありませんでした。
しかも旦那様が……
「せっかくの映画、見損なったみたいだね。ほら、これでもう
一度観て来なさい」
そう言って映画代を私に渡そうとしますから、慌ててその手を
押しとどめます。
「冗談じゃありません。そうやってあなたがこの子を甘やかす
からつけあがるんです」
若奥様はこう言うと、私の方を怖い顔で振り返って……
「敬子、女中部屋へ戻って正座して待ってなさい」
こう命じます。私にそれを嫌がる理由などありませんからすぐ
に立ち上がりますが、それと揆機を一にして大奥様も同じように
立ち上がり、いつもの関西弁でこうおっしゃるのでした。
「若い女中たちの躾はあんたに任せてるさかい、そこはあんた
の判断でやってくれたらええんやけど……ただ、あんまり厳しく
せんといてな。私の部屋にまで小娘の金切り声が届くようなら、
こっちも、あまりいい気持はしませんよってに……」
「承知しました」
若奥様は畳の縁に顔を擦り付けるようにして部屋を出る大奥様
を見送ります。
今だってそうでしょうが、当時は今以上に家の中で上下関係が
はっきりしていました。若奥様といえど大奥様の前では『ご無理
ごもっとも』なのです。
もちろん、そんな中でも私は一番下の身分。この家の中では、
誰に何をされても何も言えませんでした。
そんな私の部屋へ若奥様がいらっしゃいます。
私の部屋は、売れ残りの古着などをしまっておく二階倉庫へと
通じる大階段の下にあります。三畳ほどしかない狭くて暗い部屋
には窓もありませんから昼間でも電気をつけなければ何も見えま
せん。ところが、その電気もをつけていいのは着替えなどの必要
最小限だけ。部屋にいるからといって無条件に電気を点けていい
わけではありませんでした。
当然その時も、私は正座して電気も点けず待っていました。
そこへ、パッと電気が点いて……
「!!!!」
私は驚きます。
というのは、部屋の白熱電球を点けたのは確かに若奥様でした
が、その後ろには女中のハツさんが控えているのです。
しかも、その手には見覚えのある大きな漆の箱が……
『お灸だわ』
それは、これから何が始まるかを私に告げています。
かつて、手癖の悪い子やおねしょの治らない子がこの箱の餌食
になって嬌声を上げているのを何度も目撃していましたから間違
いありません。
本当はこの場から今すぐ裸足で逃げ出したいくらいでしたが、
今、ここを出ても行く所がありません。
冷めていてもお腹一杯のご飯が食べられて、外の寒さをしのげ
るお布団があるのは世界でここだけですから……
若奥様に対しては素直にこう言うしかありません。
「申し訳ございません。私が悪うございました。お、お仕置き
を…お願いします」
頭を畳に擦り付けてもどれほど効果があるのかわかりませんが、
何の力もない女の子はとにかくこうするしかありませんでした。
ところが……
「ま、いいわ、頭を上げなさい」
それは、時間が経って冷静になったからでしょうか。若奥様の
第一声は、さきほどの居間で興奮気味に私をなじっていた時とは
大きく違っていました。
「待った?……こんな火の気のない処じゃ、寒かったでしょう。
……でも、自分で蒔いた種だから、仕方がないわね。………首が
繋がっただけでも大奥様に感謝しなきゃ」
若奥様の声はどこか弾んでいました。
当時、子供だった私に大人の世界の駆け引きなど分かりません。
『さっきはあんなに怒っていたのに、今は、なぜこんなに機嫌
よくしてるんだろう』
と思っていました。
実はあの時、一番怒っておられたのは大奥様で、そのまま私を
辞めさすおつもりだったのです。それを若奥様がもの凄い剣幕で
叱りつけることで大奥様のお怒りを代弁し、『お前は首』という
大奥様の口を封じてくださったのでした。
もちろん、私をかばった若奥様の方にもそれはそれなりの理由
がありました。
若奥様は普段着姿の私をしばらく眺めてからこう言います。
「あんた、制服の方がいいな。学校の制服に着替えなさい」
こう命じられたのでした。
事情は分かりませんが、私の方は嫌も応もありません。
すぐに中学の制服に着替えます。
すると、若奥様は女中のハツさんが持ってきた大きな箱を開け
て中の物をあらため始めます。
着替えながら、チラ、チラっと視界に入るそれはやはりお灸の
セットでした。
『やっぱり……』
心の中でため息がでますが、でもこれはいわば想定の範囲内。
ここまでならまだよかったのです。
ところが……
「あっ、ハツ。もし粗相なんかしたらつまらないからお浣腸も
一緒にやりましょう。その方がこの子も辛くないはずよ」
『えっ、!!!』
私の全身に衝撃と悪寒が走ります。
でも、それは逃れられないことでした。
「でも若奥様、今日はこれから踊りのお稽古もございますので
あまり長い時間は……」
ハツさんはこう言いますが……
「それは、今日はお休みにするわ。先生には体調がすぐれない
ので今週はお休みさせてくださいって、すでにお断りしてあるの」
「さようでしたか、それは準備のおよろしいことで……」
ハツさんが悪戯っぽく笑いますと……
「なあに、その目は…相変わらず、子供だって言いたいの?」
「いいえ、決してそのような」
ハツさんは否定しましたが、若奥様自身、ご自分が子供じみた
ことをしているのは承知しているみたいでした。
若奥様は、殿方によく見られるロリコンの気がおありでした。
女性には珍しいのですが、幼い男の子や女の子にも深いご興味が
おありだったのです。
「おいで……」
若奥様は正座なさった膝を叩いて、着替えの済んだ私をお呼び
になります。
「はい」
何をされるかは分かっていましたが、ほぼ無抵抗でした。
若奥様は、ハツさんがお浣腸を準備する僅かな時間を惜しんで
私を求められます。
私のほとんど膨らみのない胸、わずかに大きくなった乳首を、
若奥様の右手が支配してくすぐったく……
「あっ……いや……いや……だめ……だめ……あっ……いい…」
私の隠しておきたい場所にも左手がやってきます。
「あっ、恥ずかしい……いや……いや……そこは汚いから……
だめ……だめ……あっ……いい…痛~……あっ、だめ、離しちゃ」
それは、私がここへお世話になった頃からの習慣。いまはもう、
こうして寸暇を惜しんで私を求めてくださることが嬉しかったの
でした。
そして、こうして抱かれていると、それが何だか母に抱かれて
いるような気分になるのでした。
20分ほどして……
「ガシャ、ガシャ、」
入口の留め金を揺する音がして二人の睦みごとは終了します。
「あっ、ご苦労さん」
若奥様がハツさんを迎え入れる時は、私も身なりを整えて正座
していました。
見ると、大きな洗面器を抱えてハツさんが部屋へ入ってきます。
大判のタオルを乗せてありますが、その脇からガラス製の浣腸器
やらグリセリンの入った茶色い薬壜などが顔を出しています。
持ってきたものはそれだけではありませんでした。
ハツさんが自ら固形石鹸を溶かして作った石鹸水が大きな牛乳
ビンの中で波打っていますし、浴衣地を裂いたオムツの当て布や
新聞紙も必要以上に運び込まれます。
すべて私の為だけに用意されたものでした。
まだ、12や13の少女にとってこんな沢山の貢物はプレッシ
ャー以外の何ものでもありません。
今さらながら、私は逃げようとして腰を浮かしたのですが……
「ほら、始めますよ」
たちまち若奥様に肩をつかまれて浮きかけた腰が踵の上に戻り
ます。
後はなされるままでした。
その場に仰向けになって押し倒されると、畳に倒れた顔のすぐ
そばで、大人たちが私の為にお仕置きの準備を始めます。
「お薬は一割ほど混ぜましょうか」
左に顔を向けると、ハツさんが大きな洗面器に牛乳瓶の石鹸水
を入れています。ハツさんはこの洗面器に何割ほどグリセリンを
いれましょうかと尋ねたのでした。
「一割ねえ……この子も大きくなってるしそれじゃ物足りない
でしょうから……そうね、三割でいいわ」
一方、右に顔を倒すと、若奥様が艾を解きほぐし円錐形にして
お盆の上に並べ始めています。
右も左も、どちらも見たくない映像でした。
ですから、まっすぐな姿勢で天井を向き、目を閉じたのですが、
まだ残っていた耳の中へとんでもない情報が入ってきます。
「奥様、お仕置きはお浣腸のあと、お灸ということでよろしい
ですね」
ハツさんが尋ねると……
「そうじゃないわ、今回は一緒にやってあげようと思うの」
『えっ!!!一緒にって……そんなことしたら……』
私の脳裏に恐ろしい未来予想図が浮かびます。
お灸を据えられながらのウンチお漏らし……
『どうして、そんなことするのよ。……そんなの耐えられる訳
ないじゃない。若奥様は始めから私を笑い者にするつもりだった
のね』
絶望が涙となって畳の目に吸い込まれます。私は惨めな自分を
想像しただけで気が遠くなりそうでした。
だから何も考えないように目を閉じてしまいます。
しかし、大人たちの予定は何も変わりませんでした。
「!!!!!」
私はいきなりスカートが捲られるのを感じて目を開けます。
そして慌てて何かしようとしました。大声をだすなり、身体を
よじるなり……
でも、何もできませんでした。
ただ、大人たちが私のショーツを脱がして、その両足を高々と
持ち上げて、私が誰に対しても…いえ、自分に対してさえ隠して
いるその場所が外の風に吹かれているのを……私は、ぼんやりと
天井を眺めて何もしないでいたのでした。
「まあ、可愛い。……まだ、可愛いものね」
「ほんと、ほんと、まだ赤ん坊と同じ色で……これならお灸が
似合いますね」
その瞬間、私の大事な処をハツさんが触ります。
「!!!!(いやあ~~~~)」
私の身体は痙攣したように細かく震え、棒のように硬直します。
私は大声を出すつもりでした。でも、出なかったのです。
『怖いから……』『あとのたたりを恐れて……』
いいえ、そんな理性的な話じゃありません。単に生理的に声が
出なかったのでした。
そうしているうちに……
「!!!!!!!」
私のお尻の穴へ例のガラス器が突き刺さります。
生ぬるい、本当に気持悪い水にお腹の底が満たされていきます。
「あ~~~いや~~~~これいや~~~~~」
あれでどのくらい入れられたのでしょう。正確な量はわかりま
せんが、ピストンを押し込んで、なくなるたびにづき足されて、
三回、私はガラスの突起が自分のお尻の穴に入って来るのを我慢
しなければなりませんでした。
『ああ、お腹が重い』
お浣腸が終わるまで、ずっとこう思っていました。
「しっかり、ガーゼで栓をしといてね。お灸の方は私がします
から……」
若奥様の囁くような声が聞こえます。
「許して……許してください」
やっと出た小さな声でした。
でも……
「大丈夫、心配しなくても、あなたならきっと我慢できるわ」
若奥様はやさしい笑顔で私の頭を撫でると、高く上がっていた
私の両足を静かに下ろします。
捲られたプリーツスカート。足首まで行ってしまったショーツ。
私の前はその時がら空きなのです。
でも、不思議と恥ずかしいという思いはありませんでした。
度胸がついたんでしょうか。
いえいえ、そうではありません。今さっきやられたお浣腸が、
どうなるか、かつてお浣腸だけのお仕置きを受けたことのある私
はそのことが気になって、それどころではありませんでした。
「まずは……こんな飾りいらないわね」
若奥様は、私の柔らかくまだ生え揃わない下草の上に、水気を
含んだタオルを押し付けてから剃刀で剃りあげていきます。
慌てたハツさんが……
「奥様、そのような不浄なことは私が……」
と止めたのですが……
「大丈夫よ、相手は子供じゃないの。汚くなんかないわ。……
私だって三人の子持ちよ。オムツだって取り替えたじゃない」
若奥様は明るく笑いますが、こちらはそれどころではありませ
んでした。お尻の具合が差し迫っているのです。
その切迫した顔は、当然、若奥様にも通じてて……
「あら、もうウンチしたくなったの。でも、今日は我慢してね。
お灸の事は気にしなくていいから、あなたはウンチを漏らさない
ことだけ心配してなさい。……いいわね」
若奥様は青ざめた私の顔を見て優しく微笑んみ頭を撫でてくれ
ましたが、私の方はというと、それにどんな顔をしていいか分か
りません。本心を言うと……
『この、鬼、死んじまえ』
なんて思っていました。
若奥様は下草の処理が済むと、そこに艾を置きます。
大き目の物が、三つ、四つ、五つ……
若奥様はそれを一つずつご自分の唾で濡らして貼り付けていき
ます。
「ここは、どのみち陰毛が生えて隠れる処だから艾も大きいの。
覚悟なさいね。……あら、どうしたの?イヤなの?……仕方ない
でしょう、あなたが悪いんだから……」
若奥様はそう言って、お線香の火を艾へ移したのでした。
「あらあら女の子がそんな不満そうな顔をするもんじゃないわ。
……お仕置きはあなたの為にやってるんですもの。……あなたも
もう幼い子供じゃないんだし、礼儀を学ぶ必要があるわね。……
いいわ、今度暇があったら、お灸とお浣腸でお仕置きを頂く時の
お顔、訓練してみましょう」
『あっ、いやあ、熱い、熱い、熱い、だめえ~~どけて~~~』
ビーナスの丘に火が回りました。まさに、身体が火事です。
私は声こそ出しませんが、荒い息遣いをして、思いっきり顔を
ゆがめ、身体をねじります。
今までも実母からそこにお灸を据えられた経験があったのです
が、これは別物でした。
「ほら、またそんな顔をして……私も母には『あんたは本当に
堪え性のない子だ』ってよく言われたものだけど……さすがに、
中学生になってからはそんな顔はしなかったわよ。あなた、もう
中学生なんだからこのくらい耐えなきゃ」
若奥様は『呆れてものが言えない』といった感じで、私の苦難
を見下ろします。
「私は5年生の時、母から心棒を通してもらったの。それから
は少しぐらい大きな艾を乗せられても耐えられるようになったわ」
若奥様は据えられていたお灸の残り火を指で押さえ込んでもみ
消すと、やにわに私の両足を引き上げます。
「いやあ!!」
それは反射的に出た言葉でした。
「あなた、まだ心棒が通っていないわね」
若奥様は私の女である部分をなぞりながらこうおっしゃいます。
「……あなたがうちに来たの、確か、小学4年の時だったわね。
あなたのお母様もそのくらいじゃまだ可哀想だと思われたのね。
……そうだわ、今日はちょうどいい機会だから、あなたにも私が
心棒を通してあげましょう」
若奥様はさも楽しそうにおっしゃいますが、私はすでに全身が
脂汗にまみれていながら悪寒がするという不思議な状態になって
いました。
目には汗と涙が入り前が見えませんし、何より時々襲う強烈な
下痢で、若奥様のおっしゃってることも半分以上は理解できない
ままになっていたのでした。
ですから……
「じゃあ、いいのね」
と言われた時も、何の抵抗もなくあごを引いて頷く始末でした。
当然、若奥様はためらいなどしません。
ビーナス丘に乗せたのと同じ位の艾を私の狭い場所に乗せます。
私は慌てて激しく首を横に振って、『いや、いや、だめ、だめ』
という意思表示をしましたが手遅れでした。
「いやあ~~~いやあ~~~いやあ~~~いやあ~~~いやあ」
『火のついたように』というのは、こういうことなんでしょう。
まるで赤ん坊が泣き叫ぶようにして、私は硬直した身体をさらに
硬直させて必死に耐えたのです。
ところが、心棒のお灸が終わって、息も絶え絶えになっている
私に向って、若奥様は不思議なことをおっしゃるのでした。
「どう?…そんなに熱くなかったでしょう。多くの人はお浣腸
しながらお灸なんて残酷だって思ってるみたいだけど、こうする
と、ウンチを我慢する方に気をとられるからお灸はかえって熱く
ないの。お浣腸が麻酔の役目をはたすのね。……ね、どう?……
熱くなかったでしょう?」
若奥様は優しい眼差しで私の顔に近寄ります。
でも、それに対する私の反応はありませんでした。
いくら市販の浣腸液より濃度が薄いといっても、それは時間の
経過と共に勢いを増していきますから、この時は、もう爆発寸前
だったのです。
でも、お灸はこれで終わりではありませんでした。
「さあ、今度は裏返し。うつ伏せなってお尻を高くするのよ」
若奥様はおっしゃいますが、この時は、すでにその姿勢になる
にも自分の力では無理だったのです。
『絶対に恥をかきたくない』
女の子の意地だけが、暴発をかろうじて回避していたのでした。
私はハツさんの手を借りてゆっくりうつ伏せになります。
もちろん、スカートが捲られてお尻があらわになりますが、今
はもうそんなことはどうでもよかったのです。
『おトイレ、おトイレ、おトイレ』
頭の中にはそれしかありませんでした。ですから、お灸のこと
だって……
『早くして、早く、早く、早く』
今はお灸の熱さより一刻も早くお仕置きが終わって解放される
ことを願っていたのでした。
ですから……
「今度のお灸はお尻の始まる処、尾てい骨の処にすえるけど、
ここはお股の中よりさらに熱いですからね、しっかりオシッコの
出口に力を入れて我慢してるのよ」
若奥様の忠告も何気なく聞き流していたのでした。
そして、今まで同様、ハツさんが艾をセットして若奥様が香り
のよいお線香で艾に火をつけます。
私は、今度もお腹に力を入れて頑張れば何とか…と思っいてた
のです。
ところが……
「ひぃ~~~~~~~」
その衝撃は言葉になりませんでした。
尾てい骨に噛み付いた火は一瞬にして背骨を駆け上がり後頭部
を殴りつけます。それは頭の内側を金槌で思いっきり殴られた様
でした。
と同時にその衝撃は、本当はこのままうずくまっているつもり
だった私の身体を持ち上げます。そう、まるで猫が喧嘩をする時
に自分の体を持ち上げて威嚇するように、あんなおぞましい感じ
で私も畳に爪を立て立ち上がったのでした。
もちろん悪寒が全身に走り、体中が震えます。その凄まじさは
私の全身の毛穴から狼の毛が生えるんじゃないか、そんな妄想を
呼び起こすほどの凄まじさだったのです。
ですから、その先は仕方のないことでした。
「あらあら、だから言ったじゃないの。オシッコの出口をしっ
かり閉めときなさいって……」
若奥様に言われて、私はようやく自分の股間がぬれている事に
気づきます。慌てて腰を浮かすと、そこはすでに私が作った湖が
……
『よくもこんなに出たものだわ』
こうなると自分でも呆れて逆に笑みがこぼれます。
それほどの大量失禁でした。
「もう、いいわ、ここにオマルがあるからここで済ましてしま
いなさい」
若奥様の命令で、私はオマルにしゃがみます。
もちろん、本当はお便所がよかったのですが、もう今はそんな
贅沢は言ってられません。跨ると、すぐに出してしまおうとしま
した。
ところが……
「えっ!」
お尻の穴には、しっかりとした栓がしてあって、私がちょっと
力んだくらいではでないようにしてあったのです。
ですからお尻の穴に関する限り少しぐらい力を緩めたところで
最初から暴発なんてしなかったわけですが、当時の私にそんな事
を考える余裕はありませんでした。
ハツさんに身体の隅々まで綺麗にしてもらってから、私は再び
若奥様の処へ行きます。
若奥様の前に立つと……
「いいわ、あなたにはやっぱりセーラー服が似合うわね。こう
して見ると、清楚で気品があって、とても田舎の百姓娘には見え
ないわよ」
と最初は褒めていただけだったのですが……
「でも、今日は全裸におなりなさい。そう、服を全部脱ぐの。
下着も、靴下も全部脱ぐのよ」
若奥様が命じます。実はこんなに据えられてもまだ据えられる
処が残っていたのでした。
今さら恥ずかしいなんて意味ありませんから、私に心の葛藤は
ありませんでした。まるでお風呂にでも入るように私は服を脱ぎ
捨てます。
すると、今度は……
「ここへいらっしゃい」
若奥様は正座した膝を叩いて、裸の私をその膝の上へ呼びつけ
ます。
恐る恐る近づき、どうなるのかと思っていると、いきなり私の
腕を取って膝の上に……
尻餅をついたかと思うと若奥様と同じ方向を向いて羽交い絞め
にされます。
そこで見たものは、またもやお灸でした。
ハツさんが艾を並べたお盆やお仏壇から持ってきた線香立てを
傍らに置いて微笑んでいます。
『何よ、今度はどこに据えるのよ』
私は怖い顔でハツさんを睨んでいたみたいですが、頭の中は、
恐怖と悲観と諦めがない交ぜになって、今でも泣きそうでした。
「今度のは小さいからチクッとするだけよ」
若奥様の慰めにも私は反応しませんでした。今さら逃げもでき
ませんし、何より迫り来るハツさんが怖かったのです。
「さあ、お譲ちゃん、じっとしててね」
私のオッパイを舐めることができるまでに近づいたハツさんは、
そこで、幼い子に言って聞かすように諭します。
「あっ……いや……熱い……あっ……だめ……いや……イヤ」
灸点は、ほんの少しだけ大きくなった私の乳首の周り。ピンク
色と肌色の境に小さく三つずつ。
確かに、小さな艾でしたから時間にすれば一瞬のはずでしたが、
なぜかこれがとても熱く感じられたのでした。
すると、そんな私の心を見透かしたように……
「どう?……熱いでしょう。それが本当のお灸の熱さなのよ。
さっきはお浣腸の最中で、そっちに気をとられてるもんだから、
あまり熱さを感じずにすんだけど、今は気にすることが何もない
から、逆にとっても熱く感じるのよ」
と、おっしゃいます。
そして、熱いお灸は乳首だけでなくお臍の中にも飛び火します。
「いやあ~~そんなところやらないで~~~」
私はお仕置き覚悟で叫びましたが、無駄でした。
「あつい~~~~~~」
据えられた瞬間は駄々っ子のように両足をバタつかせます。
お浣腸という呪縛がとれてお灸に専念できるぶん、恐怖もひと
しお、熱さもひとしおでした。
これでようやく私へのお仕置きは終了。
若奥様は全裸の私を立たせると、まるで芸術作品でも鑑賞する
ようにその灸痕を丹念に見て回ります。
最後はお股の中まで調べますから、私は寝そべって両足を高く
上げ、その両足は自分で持っていなければなりません。
やはりこれが一番屈辱的でした。
「いいわね、このくらい色がついていれば大奥様も納得される
でしょう」
そして、その検査が終わると、私という名の作品は大奥様にも
饗されます。
「いいわ、そんなもの」
最初、大奥様は不機嫌そうにそうおっしゃいましたが、結局は
ご覧になったのです。
若奥様と同じようにそのすべてを……最後の私が高く上がった
自分の両足を支える中での、あのお股の中までも……
「そうですか。こんなにしてまったら、今さらこの子を親元へ
は帰せませんね。でも、その責任はあなたにとってもらいますよ」
大奥様は若奥様に向って何だか全てを見通しておいでのような
笑顔でこうおっしゃたのでした。
私はこの時まだ子供でしたから、若奥様が、なぜこんなことを
なさったのか理解できずにいましたが、すべては若奥様の計らい
だったのです。
私が、できるだけお仕置きを軽くすませ、この先もこのお店で
ずっと長く働けるようにしてやろうという配慮だったのです。
今では主人が従業員にお灸なんかすえたら傷害罪で訴えられる
ことでしょうが、私の子ども時代(昭和30年代)には封建的な
常識がまだまだ生きていて……
『子どもを預けた親に代わって躾をするのも店主の親心』
なんて考えがまかり通っていました。
しかも、私の場合は……
この若奥様の親心が、実は、本当の親心だったと気づくことに
なります。ただ、それはずっと先のお話。
そのことは、また日を改めてお話することといたしましょう。
***************************
3/9 サマースクール(午前中~2~)
3/9 サマースクール(午前中~2~)
*)僕の好きなプリズンもの。でも、Hはちょっぴりです。
私はもたもたしているオマルを尻目にピアノへ向います。
さっきの授業中、思いついたメロディーを忘れないうちに五線
紙に書き留めなければなりませんでした。
「まあまあ、今日はお二人でいらしたのね。それならもう一つ
カップが必要ね」
いつも上品な身なりのおばさん、つまり、おじちゃんの奥さん
がオマルを気遣ってそんなことを言ったみたいですが、こちらは
それどころではありません。
今度は、授業中に思い浮かんだ詩のフレーズをメモ用紙に書き
留めます。
お茶はそれからでした。
でも、それだけやると、今度は次の授業の為に教室へ戻らなけ
ればなません。
実にせわしない休み時間です。
こんなことを夏休みになるたびにここへ来て繰り返していた訳
です。
でも、このせわしなさが私には逆に心地よかったのでした。
「あんたって、変わってるわね」
教室に戻る道々オマルが尋ねますが……
「そうなの?…私、なまじ立派な勉強部屋で、時間がたっぷり
あって、『さあどうぞ』って言われると、何も浮かばないのよ。
何か別の事をしているついでの方が面白いものができるわ」
「ここの先生たち、このこと知ってるの?」
「もし、知らなかったら、馬鹿ね」
「しっ!聞こえるわよ」
オマルが慌てて私の口を押さえてくれましたが……
「大丈夫よ。真面目にやってるGの子たちに申し訳ないけど、
私も規則にしたがってやってるだけだから……今は問題ないわ」
「『今は……』っことは昔は叱られたの?」
「小学生の頃はね。……みんなの前でパンツの上からお尻叩か
れた。……『伯爵様のおうちに勝手に入り込んではいけません』
ってね」
「それでも、やめなかったんだ」
「だって、最初に『お入りなさい』って言ってくれたの伯爵様
だもん。……だから伯爵様に泣きついたら、とりなしてくれて…
…いったん家に帰されて、お父さんからこっぴどく叱られたけど
……最後は、『学校の規則内で行動するなら』という条件付きで
今のサボテンハウスに出入りすることを許してもらったの」
「じゃあ、チッチは特別扱いなんだ」
「特別扱いというより黙認ってことじゃないかな。今日の様子
じゃ斉田先生はまだ私がなぜGにいるのか、わかってないみたい
だし……」
「それじゃあ、差し止められることだってあるんじゃないの?」
「そうかなあ……でも、たぶん大丈夫よ。……ここの先生方は
みんなやさしい人ばっかりだもん」
「それって、先生が優しいんじゃなくて、あなたが優しくして
しまうのよ」
「えっ、それどういうこと?」
「そうよ、絶対そう。……あなたって、そんな不思議な魔力を
持ってるもの」
「魔力?」
「魔力よ。女の魔力。だって、まったく同じことをしてるのに、
私はこっぴどく叱られて、あなたには『今度から気をつけなさい』
って笑って注意する先生が何人もいたもの」
「馬鹿ねえ、そんなの偶然よ」
私は思いっきりオマルの肩を叩きます。
「偶然じゃないわよ。差別よ。差別。可愛い子差別だわ」
「何、急にひがんでるのよ?」
「悪いかしら?ええ、ひがんでるわ。ひがんで当然でしょう。
こんなお話、聞かされたら、馬鹿馬鹿しくて、私みたいなブスは
やってられないわよ」
「そうかなあ……」
「そうよ、絶対にそう……」
ここで2時限目が始まりました。
**************************
2時限目のテスト。
今度はお互い競争です。
9時34分30秒。
答案を書き上げます。
9時35分00秒。
答案を提出して教室を出ます。
9時35分30秒
校舎を出て、そこからは猛ダッシュ。
9時37分30秒
サボテンハウス到着
一人でやっている時もそんな感じでしたが……二人になると、
なおさら運動会のゲームのようです。
最後は窓から入るところまで競争になっていました。
「楽しい」
「今度は負けないからね」
二人は荒い息をつきながらソファーに腰を下ろします。
「あっ、忘れた」
「何を?」
「教室で浮かんだメロディー。あんたと競争したおかげて忘れ
ちゃったじゃない」
「やったあ~勝った勝った。じゃあ、今度は私が弾いてあげる
からね、聞いときなさいよ」
オマルは得意げにピアノに向かいました。
『何て楽しいんでしょう。やっぱり友だちがいるっていい事ね』
こんなに心が浮き浮きしたのは久しぶりでした。
2時限目の休み時間は、おばちゃんが入れたお茶をいただいて
おじちゃんともおしゃべりしながらゆっくり過ごします。
本当は『おじちゃん』とか『おばちゃん』なんて言っちゃいけ
ない人たちです。何しろ世が世なら伯爵に伯爵夫人なんですから。
でも、小4の私が物欲しそうに窓辺から中の様子を窺っている
とおじちゃんが抱っこして部屋の中へいれてくれました。
その時よんだ『おじちゃん』『おばちゃん』の呼び名が今でも
続いていたのです。
私だって、そうそう子供じゃありませんから、途中で気づいて
『伯爵様』だなんて呼んでみたこともありましたが……
「伯爵なんて戦前までの話さ。今はおじちゃんでいいんだよ」
って優しく頭を撫でてくれました。
おじちゃんにとって大事なことは呼び名じゃなくて、子供たち
をこうして膝の上に抱き上げてあやすことだったんです。私との
関係が続いたのも、私がそうしたことを嫌がらないからでした。
おじちゃんは知る人ぞ知るロリコンコレクター。昔は青髭伯爵
だなんて呼ばれていたそうです。
ですから、奥のコレクションルームには今でも子供たちの絵や
写真が山のようあります。
もし、そのことを知ったら、今までは無関心でいてくれたパパ
も、この学校から私を連れ戻してしまったかもしれません。
でも、私はおじちゃんが好きです。小4の時から抱かれ続けて
きたからでしょうか。ちょっぴりHなことをされても、今でも、
そのお膝に乗ることに何のためらいもありません。むしろ、おじ
ちゃんの膝の上にいると心が安らぐのです。
おじちゃんの膝の上にいると、何だか幼い日に戻った気がして、
あくびなんかしちゃいます。たとえその手が私のスカートの中を
這いずり回っていたとしても、全然OKでした。
私はこの時もおじちゃんのお膝の上を狙っていましたが、さす
がに今は高校生、オマルがそばにいたので諦めました。
そのオマルが、突然、素っ頓狂な声を上げます。
「『千賀文庫』??…何よこれ、あなた、自分専用の書棚まで
あるじゃないの」
「ああ、それのことね。おじちゃんが読め読めって毎年買って
くるから増えちゃったのよ」
「ふうん……どんな本読んでるの?」
彼女は本棚を物色し始めます。
「ライ麦(ライ麦畑で捕まえて)、ノン束(アルジャーノンに
花束を)、草の葉…ホイットマンか………マンガもあるじゃない。
萩尾、竹宮、山岸……これって、あなたの趣味?」
「おじちゃんの趣味よ。おじちゃんが私をお膝に乗せて読んで
くれるの」
こう言うと、オマルは一瞬考え、変な顔をしてこちらを振り向
きましたが、私は真実を述べたまで……でも、笑って答えます。
「さあ、もう帰らなきゃ。3時限目が始まるわ」
***************************
3次限目のテストも、二人とも五分を切るタイムで仕上げると
教室の外へ。さすがに三回目は、斉田先生の「あなた方、見直さ
なくていいの?」という声もなくなったみたいでした。
呆れてはいましたが……
いずれにしろ、私たちは伯爵様のサボテンハウスに直行です。
すると、そこには可愛い先客が来ていました。
8歳の男の子、伯爵様のお孫さんにあたる譲治君です。
「お姉ちゃん」
彼は、私が身をかがめて窓から顔を出すなり私の顔に抱きつき
ます。
「こらこら、悪戯しないの。お姉ちゃんの頭はボールじゃない
のよ」
私がここへ最初にやってきた時はまだ完全に赤ちゃんでしたが、
物心がつくと、私になつき、いつもピアノをせがみます。
仕方がないので、膝の上に乗せて童謡を中心に弾いてあげると
とっても喜ぶので、私もいつしか本当の弟のような気分で可愛が
っていました。
今日は真由美も一緒なので、彼女にもピアノをせがみました。
夏休みだけの、それもせわしないお付き合いですが楽しい時間
でした。こんなアットホームなひとときなんて、実家に帰っても
どのみち得られませんから……
私とオマルがアニメソングを一曲ずつ弾いたあと、私の膝の上
で興奮気味に跳ね回っていた譲治君が……
「ぼくも……」
と言って弾き始めます。
流れた曲は『主よ、人の望みの喜びよ』
それが、意外なほど美しかったのでオマルが……
パッヘルベルの『カノン』をサービスします。
すると、譲治君がオマルに……
「お姉ちゃん、上手だね」
なんて、おべんちゃらを言いますから、思わずライバル心に火
がついてしまって、私も……
『きらきら星変奏曲』を……
でも、これがいけませんでした。
部屋の鳩時計が11時を知らせようと『ピッポウ』『ピッポウ』
って顔を出したのです。
「!」
「!」
二人は、一瞬顔を見合わせ……
そして、脱兎のごとく窓の外へ……
「やばい、やばい」
「あんたが調子に乗るからでしょう」
二人はいつもよりさらに全力で舞い戻ったのですが……
間に合うはずがありませんでした。
教室の入口にはすでに鍵が掛けられ……窓から覗くと、すでに
授業が始まっています。
『やばいなあ』
って思っていると、それに気づいた初老のシスターが入口の鍵
を開いて顔を出します。
ばつの悪そうな二人。
でも、シスターは冷静でした。
「いらっしゃい」
低い声で私たちを廊下の突き当たりにある部屋へと連行します。
私は、もう先が読めていますから何も言いませんが、オマルは
ここのしきたりを知りませんから、尋ねてきます。
「ねえ、どこへ行くの?」
「お仕置き部屋よ」
「お仕置き部屋?そんなのここにもあるの?」
「あるわよ、ここはその為の学校なんだもん。ここのはうちの
お仕置き部屋より凄いんだから………授業に遅れたり、授業中に
おしゃべりしたり、友だちと喧嘩なんかすると、シスターに連れ
て行かれるの」
「で、どうなるの?」
「どうなるって、お仕置きされるに決まってるじゃない」
「どんな?」
「知らないわよ」
と、ここまでは許してくれていたのですが……
「二人ともうるさいわよ」
シスターが振り返って、怖い顔をしますから、二人共しゅんと
なって俯いてしまいます。
実際、私も、お仕置き部屋へ連れて行かれることは分かります
が、どんな罰になるかは分かりませんでした。
突き当たりの部屋は、二重になったぶ厚い扉の先にありました。
中の鞭音や女の子の悲鳴が外に漏れないためです。
最初の扉を開けると、そこは六畳ほどの小部屋で薄暗く、明か
りはロウソクだけ。その炎に照らされてマリア様の像が高い場所
から微笑んでいます。
子供たちはそれが小学生であれ、高校生であれ、この像の前で
膝まづいて、ある誓いを立てなければなりませんでした。
「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」
「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」
桃園学園の生徒でいると、このくらいの言葉は誰でもすらっと
でてきます。というのも桃園の生徒は穢れた心を持たずピュアで
いることが勉強ができることより大事なことだったからです。
そんなピュアな心を持ち続ける為に、お仕置きされるかどうか
は別にして、どんな細かな過ちもすべて親や教師に報告して懺悔
しなければなりません。
懺悔は通知表に載らない必須科目みたいなものでした。
ベテランシスターが二つ目の扉を押し開いて二人を奥の部屋へ
招き入れます。
ここからが本当のお仕置き場、二人にとっては足のすくむ場所
でした。
***************************
*)僕の好きなプリズンもの。でも、Hはちょっぴりです。
私はもたもたしているオマルを尻目にピアノへ向います。
さっきの授業中、思いついたメロディーを忘れないうちに五線
紙に書き留めなければなりませんでした。
「まあまあ、今日はお二人でいらしたのね。それならもう一つ
カップが必要ね」
いつも上品な身なりのおばさん、つまり、おじちゃんの奥さん
がオマルを気遣ってそんなことを言ったみたいですが、こちらは
それどころではありません。
今度は、授業中に思い浮かんだ詩のフレーズをメモ用紙に書き
留めます。
お茶はそれからでした。
でも、それだけやると、今度は次の授業の為に教室へ戻らなけ
ればなません。
実にせわしない休み時間です。
こんなことを夏休みになるたびにここへ来て繰り返していた訳
です。
でも、このせわしなさが私には逆に心地よかったのでした。
「あんたって、変わってるわね」
教室に戻る道々オマルが尋ねますが……
「そうなの?…私、なまじ立派な勉強部屋で、時間がたっぷり
あって、『さあどうぞ』って言われると、何も浮かばないのよ。
何か別の事をしているついでの方が面白いものができるわ」
「ここの先生たち、このこと知ってるの?」
「もし、知らなかったら、馬鹿ね」
「しっ!聞こえるわよ」
オマルが慌てて私の口を押さえてくれましたが……
「大丈夫よ。真面目にやってるGの子たちに申し訳ないけど、
私も規則にしたがってやってるだけだから……今は問題ないわ」
「『今は……』っことは昔は叱られたの?」
「小学生の頃はね。……みんなの前でパンツの上からお尻叩か
れた。……『伯爵様のおうちに勝手に入り込んではいけません』
ってね」
「それでも、やめなかったんだ」
「だって、最初に『お入りなさい』って言ってくれたの伯爵様
だもん。……だから伯爵様に泣きついたら、とりなしてくれて…
…いったん家に帰されて、お父さんからこっぴどく叱られたけど
……最後は、『学校の規則内で行動するなら』という条件付きで
今のサボテンハウスに出入りすることを許してもらったの」
「じゃあ、チッチは特別扱いなんだ」
「特別扱いというより黙認ってことじゃないかな。今日の様子
じゃ斉田先生はまだ私がなぜGにいるのか、わかってないみたい
だし……」
「それじゃあ、差し止められることだってあるんじゃないの?」
「そうかなあ……でも、たぶん大丈夫よ。……ここの先生方は
みんなやさしい人ばっかりだもん」
「それって、先生が優しいんじゃなくて、あなたが優しくして
しまうのよ」
「えっ、それどういうこと?」
「そうよ、絶対そう。……あなたって、そんな不思議な魔力を
持ってるもの」
「魔力?」
「魔力よ。女の魔力。だって、まったく同じことをしてるのに、
私はこっぴどく叱られて、あなたには『今度から気をつけなさい』
って笑って注意する先生が何人もいたもの」
「馬鹿ねえ、そんなの偶然よ」
私は思いっきりオマルの肩を叩きます。
「偶然じゃないわよ。差別よ。差別。可愛い子差別だわ」
「何、急にひがんでるのよ?」
「悪いかしら?ええ、ひがんでるわ。ひがんで当然でしょう。
こんなお話、聞かされたら、馬鹿馬鹿しくて、私みたいなブスは
やってられないわよ」
「そうかなあ……」
「そうよ、絶対にそう……」
ここで2時限目が始まりました。
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2時限目のテスト。
今度はお互い競争です。
9時34分30秒。
答案を書き上げます。
9時35分00秒。
答案を提出して教室を出ます。
9時35分30秒
校舎を出て、そこからは猛ダッシュ。
9時37分30秒
サボテンハウス到着
一人でやっている時もそんな感じでしたが……二人になると、
なおさら運動会のゲームのようです。
最後は窓から入るところまで競争になっていました。
「楽しい」
「今度は負けないからね」
二人は荒い息をつきながらソファーに腰を下ろします。
「あっ、忘れた」
「何を?」
「教室で浮かんだメロディー。あんたと競争したおかげて忘れ
ちゃったじゃない」
「やったあ~勝った勝った。じゃあ、今度は私が弾いてあげる
からね、聞いときなさいよ」
オマルは得意げにピアノに向かいました。
『何て楽しいんでしょう。やっぱり友だちがいるっていい事ね』
こんなに心が浮き浮きしたのは久しぶりでした。
2時限目の休み時間は、おばちゃんが入れたお茶をいただいて
おじちゃんともおしゃべりしながらゆっくり過ごします。
本当は『おじちゃん』とか『おばちゃん』なんて言っちゃいけ
ない人たちです。何しろ世が世なら伯爵に伯爵夫人なんですから。
でも、小4の私が物欲しそうに窓辺から中の様子を窺っている
とおじちゃんが抱っこして部屋の中へいれてくれました。
その時よんだ『おじちゃん』『おばちゃん』の呼び名が今でも
続いていたのです。
私だって、そうそう子供じゃありませんから、途中で気づいて
『伯爵様』だなんて呼んでみたこともありましたが……
「伯爵なんて戦前までの話さ。今はおじちゃんでいいんだよ」
って優しく頭を撫でてくれました。
おじちゃんにとって大事なことは呼び名じゃなくて、子供たち
をこうして膝の上に抱き上げてあやすことだったんです。私との
関係が続いたのも、私がそうしたことを嫌がらないからでした。
おじちゃんは知る人ぞ知るロリコンコレクター。昔は青髭伯爵
だなんて呼ばれていたそうです。
ですから、奥のコレクションルームには今でも子供たちの絵や
写真が山のようあります。
もし、そのことを知ったら、今までは無関心でいてくれたパパ
も、この学校から私を連れ戻してしまったかもしれません。
でも、私はおじちゃんが好きです。小4の時から抱かれ続けて
きたからでしょうか。ちょっぴりHなことをされても、今でも、
そのお膝に乗ることに何のためらいもありません。むしろ、おじ
ちゃんの膝の上にいると心が安らぐのです。
おじちゃんの膝の上にいると、何だか幼い日に戻った気がして、
あくびなんかしちゃいます。たとえその手が私のスカートの中を
這いずり回っていたとしても、全然OKでした。
私はこの時もおじちゃんのお膝の上を狙っていましたが、さす
がに今は高校生、オマルがそばにいたので諦めました。
そのオマルが、突然、素っ頓狂な声を上げます。
「『千賀文庫』??…何よこれ、あなた、自分専用の書棚まで
あるじゃないの」
「ああ、それのことね。おじちゃんが読め読めって毎年買って
くるから増えちゃったのよ」
「ふうん……どんな本読んでるの?」
彼女は本棚を物色し始めます。
「ライ麦(ライ麦畑で捕まえて)、ノン束(アルジャーノンに
花束を)、草の葉…ホイットマンか………マンガもあるじゃない。
萩尾、竹宮、山岸……これって、あなたの趣味?」
「おじちゃんの趣味よ。おじちゃんが私をお膝に乗せて読んで
くれるの」
こう言うと、オマルは一瞬考え、変な顔をしてこちらを振り向
きましたが、私は真実を述べたまで……でも、笑って答えます。
「さあ、もう帰らなきゃ。3時限目が始まるわ」
***************************
3次限目のテストも、二人とも五分を切るタイムで仕上げると
教室の外へ。さすがに三回目は、斉田先生の「あなた方、見直さ
なくていいの?」という声もなくなったみたいでした。
呆れてはいましたが……
いずれにしろ、私たちは伯爵様のサボテンハウスに直行です。
すると、そこには可愛い先客が来ていました。
8歳の男の子、伯爵様のお孫さんにあたる譲治君です。
「お姉ちゃん」
彼は、私が身をかがめて窓から顔を出すなり私の顔に抱きつき
ます。
「こらこら、悪戯しないの。お姉ちゃんの頭はボールじゃない
のよ」
私がここへ最初にやってきた時はまだ完全に赤ちゃんでしたが、
物心がつくと、私になつき、いつもピアノをせがみます。
仕方がないので、膝の上に乗せて童謡を中心に弾いてあげると
とっても喜ぶので、私もいつしか本当の弟のような気分で可愛が
っていました。
今日は真由美も一緒なので、彼女にもピアノをせがみました。
夏休みだけの、それもせわしないお付き合いですが楽しい時間
でした。こんなアットホームなひとときなんて、実家に帰っても
どのみち得られませんから……
私とオマルがアニメソングを一曲ずつ弾いたあと、私の膝の上
で興奮気味に跳ね回っていた譲治君が……
「ぼくも……」
と言って弾き始めます。
流れた曲は『主よ、人の望みの喜びよ』
それが、意外なほど美しかったのでオマルが……
パッヘルベルの『カノン』をサービスします。
すると、譲治君がオマルに……
「お姉ちゃん、上手だね」
なんて、おべんちゃらを言いますから、思わずライバル心に火
がついてしまって、私も……
『きらきら星変奏曲』を……
でも、これがいけませんでした。
部屋の鳩時計が11時を知らせようと『ピッポウ』『ピッポウ』
って顔を出したのです。
「!」
「!」
二人は、一瞬顔を見合わせ……
そして、脱兎のごとく窓の外へ……
「やばい、やばい」
「あんたが調子に乗るからでしょう」
二人はいつもよりさらに全力で舞い戻ったのですが……
間に合うはずがありませんでした。
教室の入口にはすでに鍵が掛けられ……窓から覗くと、すでに
授業が始まっています。
『やばいなあ』
って思っていると、それに気づいた初老のシスターが入口の鍵
を開いて顔を出します。
ばつの悪そうな二人。
でも、シスターは冷静でした。
「いらっしゃい」
低い声で私たちを廊下の突き当たりにある部屋へと連行します。
私は、もう先が読めていますから何も言いませんが、オマルは
ここのしきたりを知りませんから、尋ねてきます。
「ねえ、どこへ行くの?」
「お仕置き部屋よ」
「お仕置き部屋?そんなのここにもあるの?」
「あるわよ、ここはその為の学校なんだもん。ここのはうちの
お仕置き部屋より凄いんだから………授業に遅れたり、授業中に
おしゃべりしたり、友だちと喧嘩なんかすると、シスターに連れ
て行かれるの」
「で、どうなるの?」
「どうなるって、お仕置きされるに決まってるじゃない」
「どんな?」
「知らないわよ」
と、ここまでは許してくれていたのですが……
「二人ともうるさいわよ」
シスターが振り返って、怖い顔をしますから、二人共しゅんと
なって俯いてしまいます。
実際、私も、お仕置き部屋へ連れて行かれることは分かります
が、どんな罰になるかは分かりませんでした。
突き当たりの部屋は、二重になったぶ厚い扉の先にありました。
中の鞭音や女の子の悲鳴が外に漏れないためです。
最初の扉を開けると、そこは六畳ほどの小部屋で薄暗く、明か
りはロウソクだけ。その炎に照らされてマリア様の像が高い場所
から微笑んでいます。
子供たちはそれが小学生であれ、高校生であれ、この像の前で
膝まづいて、ある誓いを立てなければなりませんでした。
「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」
「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」
桃園学園の生徒でいると、このくらいの言葉は誰でもすらっと
でてきます。というのも桃園の生徒は穢れた心を持たずピュアで
いることが勉強ができることより大事なことだったからです。
そんなピュアな心を持ち続ける為に、お仕置きされるかどうか
は別にして、どんな細かな過ちもすべて親や教師に報告して懺悔
しなければなりません。
懺悔は通知表に載らない必須科目みたいなものでした。
ベテランシスターが二つ目の扉を押し開いて二人を奥の部屋へ
招き入れます。
ここからが本当のお仕置き場、二人にとっては足のすくむ場所
でした。
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3/8 初めてのお酒
3/8 初めてのお酒
*)思い出話
その日は、父と一緒に質屋組合の寄り合いに参加していました。
寄り合いと言っても中身は日帰りの親睦会で、当時まだ幼稚園児
だった私もおまけで参加していました。
温泉旅館に着くと、さっそく大きなお風呂で泳いで、長い廊下
を走り回って、お土産を売っているガラスケースに乗っかったり
とやりたい放題です。
でも、そんな探検旅行が一段落すると、レジャーランドのよう
に遊具がありませんから、やることがなくなります。
仕方なく元いた広間に戻ると、今度は一緒にバスでやってきた
はずの大人たちがいませんから、独り残っていたおじさんに……
「お父さんは?」
って、尋ねたら近くの名所をみんなで見に行ったとのこと。
仕方なく、独りでお銚子を傾けているそのおじさんのおそばに
いることにしたのです。
スルメや裂きイカなんかもらって、お酌なんかしながら……
すると、そのうちそのおじさんがこんな事を言うのです。
「坊や、お前も一杯やるか」
ってね。
もちろん、ぼくはそれまでお酒なんか一滴も飲んだことがあり
ませんでしたが、父が飲んでいるのは目にしていましたから興味
はあったんです。
そこで……
「うん」
と言うと、おじさんが盃にほんのちょびっと注いでくれます。
それは時間が経つと自然に乾いてしまうほどちょびっとだった
んですが、飲んでみました。
『美味しい』
正直、そう思いました。
そしてそれまで知らないおじさんと二人きりだった部屋が急に
楽しい場所に思えるようになったのです。
すると、そんなぼくの変化におじさんも気づいたんでしょうね。
「おまえ、なかなかいける口じゃないか。よしもう一杯いくか」
って、僕を膝の上に抱くと二杯目を注いでくれるんです。
前の一杯が美味しかったぼくは二杯目もグイッとやってみます。
『わあ~~~こんなに楽しい気分は初めてだ』
盃二杯、それもほんのちょびっとの量だったんですが、何しろ
幼稚園児で小さな身体でしたからね、完全に酔っ払ってしまった
のでした。
そして、三杯目、四杯目、……
『わあ~~~天井が回ってる』
ぼくはおじさんの膝に座ることさえできず、その場に倒れこみ
ます。
天井は回っていますが、とてもいい気分でした。
そうやって倒れてる私は、やがて、座敷に帰ってきた父に発見
されます。
すると、こちらは気分がよく寝ていても、私を見つめる父の顔
は恐ろしく怖いものでした。
『やばい、お酒飲んだから怒ってるんだ』
すぐに、そう思いましたが、何しろ足腰が立ちませんからどう
にもなりません。
ぼくはお仕置きを覚悟したんですが……
父が僕にしたのは、温泉場へ連れて行って、頭を水で冷やして
脱衣場の畳の上に寝かせただけでした。
その後のことは母から聞いたのですが、父は私にお酒を飲ませ
たおじさんの胸倉を掴んで……
「どうして家の息子に酒なんか飲ませた。お前、俺に恨みでも
あるのか。もし死んだらどうするつもりだ」
って怒鳴り散らしたそうです。
一触即発、周りにいたみんなが止めなかったらきっと殴り合い
の喧嘩になっていたみたいです。
喧嘩っ早い人ならともかく、普段とっても大人しい父ですから、
周囲の人たちが一様に『あの時は驚いた』って言ってました。
それで、その旅行はその後父の懐に入れられて無事帰ってきた
わけですが、これには後日談がありまして……
数日後、今度は父が私に……
「お前もやってみるか?」
って盃を勧めたんです。
もちろん、量はほんのちょびっと。一杯だけですが……
でも、やっぱり美味しかったです。
おじさんと喧嘩までしたそんな事を、今になってなぜ僕に求め
たのかは謎ですが、父もまたおじさん同様、盃を飲み干す僕を懐
に抱いて満足そうでした。
*********************
*)思い出話
その日は、父と一緒に質屋組合の寄り合いに参加していました。
寄り合いと言っても中身は日帰りの親睦会で、当時まだ幼稚園児
だった私もおまけで参加していました。
温泉旅館に着くと、さっそく大きなお風呂で泳いで、長い廊下
を走り回って、お土産を売っているガラスケースに乗っかったり
とやりたい放題です。
でも、そんな探検旅行が一段落すると、レジャーランドのよう
に遊具がありませんから、やることがなくなります。
仕方なく元いた広間に戻ると、今度は一緒にバスでやってきた
はずの大人たちがいませんから、独り残っていたおじさんに……
「お父さんは?」
って、尋ねたら近くの名所をみんなで見に行ったとのこと。
仕方なく、独りでお銚子を傾けているそのおじさんのおそばに
いることにしたのです。
スルメや裂きイカなんかもらって、お酌なんかしながら……
すると、そのうちそのおじさんがこんな事を言うのです。
「坊や、お前も一杯やるか」
ってね。
もちろん、ぼくはそれまでお酒なんか一滴も飲んだことがあり
ませんでしたが、父が飲んでいるのは目にしていましたから興味
はあったんです。
そこで……
「うん」
と言うと、おじさんが盃にほんのちょびっと注いでくれます。
それは時間が経つと自然に乾いてしまうほどちょびっとだった
んですが、飲んでみました。
『美味しい』
正直、そう思いました。
そしてそれまで知らないおじさんと二人きりだった部屋が急に
楽しい場所に思えるようになったのです。
すると、そんなぼくの変化におじさんも気づいたんでしょうね。
「おまえ、なかなかいける口じゃないか。よしもう一杯いくか」
って、僕を膝の上に抱くと二杯目を注いでくれるんです。
前の一杯が美味しかったぼくは二杯目もグイッとやってみます。
『わあ~~~こんなに楽しい気分は初めてだ』
盃二杯、それもほんのちょびっとの量だったんですが、何しろ
幼稚園児で小さな身体でしたからね、完全に酔っ払ってしまった
のでした。
そして、三杯目、四杯目、……
『わあ~~~天井が回ってる』
ぼくはおじさんの膝に座ることさえできず、その場に倒れこみ
ます。
天井は回っていますが、とてもいい気分でした。
そうやって倒れてる私は、やがて、座敷に帰ってきた父に発見
されます。
すると、こちらは気分がよく寝ていても、私を見つめる父の顔
は恐ろしく怖いものでした。
『やばい、お酒飲んだから怒ってるんだ』
すぐに、そう思いましたが、何しろ足腰が立ちませんからどう
にもなりません。
ぼくはお仕置きを覚悟したんですが……
父が僕にしたのは、温泉場へ連れて行って、頭を水で冷やして
脱衣場の畳の上に寝かせただけでした。
その後のことは母から聞いたのですが、父は私にお酒を飲ませ
たおじさんの胸倉を掴んで……
「どうして家の息子に酒なんか飲ませた。お前、俺に恨みでも
あるのか。もし死んだらどうするつもりだ」
って怒鳴り散らしたそうです。
一触即発、周りにいたみんなが止めなかったらきっと殴り合い
の喧嘩になっていたみたいです。
喧嘩っ早い人ならともかく、普段とっても大人しい父ですから、
周囲の人たちが一様に『あの時は驚いた』って言ってました。
それで、その旅行はその後父の懐に入れられて無事帰ってきた
わけですが、これには後日談がありまして……
数日後、今度は父が私に……
「お前もやってみるか?」
って盃を勧めたんです。
もちろん、量はほんのちょびっと。一杯だけですが……
でも、やっぱり美味しかったです。
おじさんと喧嘩までしたそんな事を、今になってなぜ僕に求め
たのかは謎ですが、父もまたおじさん同様、盃を飲み干す僕を懐
に抱いて満足そうでした。
*********************
2/25 サマースクール(午前中)
2/25 サマースクール(午前中)
*)僕の好きなプリズンものですが、Hはごくわずかです。
午前中はどこも授業です。8時から12時まで、全国の系列校
から選りすぐられた劣等生達は、さらにその能力に応じてクラス
分けされて、そこでびっちり絞られます。
私のクラスはGクラス。
桃園学園は伝統的に成績がABCでつけられていて、Aは優秀
な生徒。Bがまあまあ。Cは一応合格という程度。
もちろんこのABCの子はこんな合宿関係ありません。
D以下が落第なんですが、その落第点にも種類があって、Dは
もう少しがんばりましょう…Eが努力が必要…Fが先生に相談。
このEFあたりからが怪しくなります。
でも、その先に、さらにGという評価もあって、これなんかは
箸にも棒にも掛からない生徒という意味でした。
私は、いつも期末テストを白紙で出すようにしてましたから、
割り当てられる教室はいつもGクラス。でも、これは予定通りで
した。
もともと避暑が目的の私は、なまじEやFのクラスよりこの方
が逆に気が楽だったのです。
Gクラスは高校の授業にさえついていけない子が大半ですから、
授業の内容も中学レベル。頭の中を空っぽにして白河夜船で授業
を聞いていても、脳細胞を2%ほど活動させてアイドリングして
さえいればそれで十分でしたから私的には助かります。
ただ、私はともかく他の多くのクラスメイトたちは授業を聞い
ていると、それが子守唄のように聞こえて条件反射的に眠くなる
人たちですから、教室にはいくつもの眠気覚ましが用意されてい
ました。
例えば、手蜀のローソク。こっくりこっくり居眠りを始めた子
を見回り役のシスターが起こして回るのに使います。
シスターから肩を叩かれた子はアウトです。
でも効果は覿面で、手の甲に数滴垂らせばそれで十分でした。
それでも睡魔の誘いに負けそうな子にはパンツを脱いでもらい、
お尻をじかに座面にくっ付けて座り直してもらいます。
あとは、その子が眠くなるたびに先生が教壇にあるスイッチを
入れてあげれば、その愛がたちどころにその子のお尻に伝わって
生徒の背筋がピンと伸びる仕掛けでした。
通称、電気椅子。物騒なネーミングですが、もちろん、いくら
気持いいからといっても天国まで行くことはありませんのでそこ
は安心でした。
ただ、それでもダメな場合もあります。
その場合は仕方がありません。
教壇の脇にある小机にうつ伏せになって、先生のもっと直接的
な愛をお尻に受ける事になります。
小学生のチビちゃんたちならスリッパ。中学生には幅広の革鞭。
高校生になるとケイン(籐鞭)が一般的でした。
年齢に応じて鞭の種類は違いますが、「ピシッ!」という衝撃
と共に全身の毛穴が開いて、頭の天辺から電気が抜けて行く効果
は一緒でした。
この他にも、まだ幼い子の場合には熱いタオルや冷たいタオル
で見回りのシスターたちがお顔を拭いてくれるなんてサービスも
ありました。
とかく劣等生というのは長時間椅子に座っているのが苦手です
から、まずはその訓練からです。先生も生徒を寝かさないように
色んな工夫をしているようでした。
えっ!、私ですか?
ええ、一応全部経験済みです。
さて、こうして30分の授業が終わると、次は今やった単元の
テストが20分あって、これがここの一時限なんです。
テスト結果は、悪いお点でも特別な罰はありませんが、合格点
に届かない子には午後の自由時間はありませんでした。
Gクラスくらいになると、普段、学校で先生にあまりかまって
もらえない寂しさからなんでしょうか。自由時間をつぶしては、
先生と仲良くなる子が沢山いました。
私も先生と仲良くなろうと、補習の補習にもよく参加しました
が、あまりやりすぎると……
「わかってるのに、分からないふりをするような子には特別な
お仕置きが必要ね」
なんて怖い顔で睨まれたことも……
でも、それはあくまで例外。普段の先生方はとても優しくて、
私がなぜここに来ているのかを知ったうえで、快く抱いていただ
きました。
幼い日の私は家庭で満たされない分をここでまとめて抱かれる
ことで、次の学期への英気を養っていたのです。
さて、話を戻しましょう。
朝の食堂で、ぎりぎりまでサリーとおしゃべりしていた私たち
でしたが彼女はEクラスですからここで別れなければなりません。
「お昼、また一緒に食べようね」
名残惜しい気持を振り払って私はGクラスへと向います。
Gなんて特殊なクラスですから、例年人数がそんなに多くあり
ませんでした。生徒は五、六人といったところでしょうか。でも、
一番手の掛かる生徒たちでもありますから、授業先生を受け持つ
先生以外にも助教としてシスターが二人もついています。
当然、ここで同じ学校の生徒に会うなんて滅多にありませんで
した。でも、この日は……
教室に一歩足を踏み入れた瞬間、私の全身が凍りつきます。
『どういうことよ!』
おどおどと落ち着きのない生徒たちに混じって、一人だけ背筋
をピンと伸ばして、黒板をまっすぐに見つめている孤高の少女が
……。
「あら、チッチ。偶然ね、あなたもこのお教室なの?」
その子が私に気づいて微笑みました。
「オマル!あなた、何やってるのよ。こんな処で……」
私が驚くと……
「何やってるはないでしょう。私も授業を受けに来たのよ」
涼しい顔で言いますから、開いた口が塞がりません。
彼女の名前は小川真由美。あだ名のオマルは本来名前から来て
いましたが、『便器みたいでイヤ』って本人が言うのでかえって
友達からはそう呼ばれるようになっていました。軽い虐めです。
それはともかく……
「どうして、あなたがここにいるわけ?」
私の驚きに彼女は涼しい顔で……
「それはこっちのセリフよ。どうしてこんな素敵な場所がある
のに教えてくれなかったのよ。私たち、友だちでしょう」
「素敵な場所って……あなた、正気なの?……ここは劣等生の
溜まり場なのよ」
「知ってるわよ、そんなこと。さすがに朝の浣腸にはちょっと
ビビッたけど……でも、ほかの子も同じことされてたから、別に
私一人じゃないみたいだし、あれはあれで楽しかったわ」
「相変わらず能天気ね。楽しかったって、あなたってどういう
感性してるのかしら」
「だから、そこはあなたと同じでしょうよ。……あなたこそ、
どうしてこんな処にいるわけ?」
「それは……」
私は言葉に詰まります。
「私ね、あなたが普段『夏はいつも避暑地の別荘で過ごすの』
なんてキザなこと言うもんから『それっていったいどこだろう』
って、ずっと、思ってたのよ。それで、真理絵をとっちめたら、
チッチは毎年ここだって言うじゃない」
「何だ、真理絵が裏切ったのか」
「あの子、責めないでよ。あたし、ヤクザの親分に恨まれたく
ないから……」
オマルが悪戯っぽく笑います。実際、真理絵のお父さんは全国
に名をとどろかす有名なヤクザの親分でした。
「最初は、私も目が点になったけど……でも、考えてみれば、
あなたが毎年ここに来るってことは、そんなに居心地が悪かろう
はずがないわけだし……何より、何かしら魅力があるはずよね。
……だから、ま、風変わりな別荘だけど、私も参加してみよう
と思ったの。……あら?変な顔して……いけなかったかしら?」
「別にいけなくはないけど……あなたってヒマね。世間の子は
今頃受験勉強で必死だっていうのに……こんなところで油売って
ていいのかしら?そんなことじゃろくな大学にいけないわよ」
「うちの親と同じで嫌なこと言うはね、あなたって……でも、
そのあたりもあなたと同じなの」
「どういうこと?」
「私も受験に興味なんてないもの。大学はいける処でいいって
最初から決めてるの。…それに、夏休みだからって実家に帰って
みたところで、行く処行く処付き添いが着いて回るような家なの
よ。恋愛どころか、映画一本自由に観られないわ。…小学生じゃ
ないつうの。…だから、それならいっそ…ね、良い考えでしょう」
最後は甘えるように私を見つめます。
「よくないわよ!」
大声を出してしまいましたが、こうなっては仕方がありません。
私の秘密基地はこうして悪友オマルに知られてしまったのでした。
**************************
Gクラスの数学を担当するのは今年から斉田先生。でも授業の
やり方は同じでした。もともと端にも棒にもという生徒相手です
から、授業も難しいことには一切手をつけません。最初は中学の
教科書のそれも基礎的な内容を、猿でもわかるように懇切丁寧に
講義してくださいます。
もちろん、それって他の子たちにはしてみたら、有意義なこと
ありがたいことなんでしょうけど、私やオマルにしてみると……
それって退屈で、退屈で……
『あ~~あ』
欠伸を押さえるのに必死にならなければならない拷問でした。
手の甲に蝋涙が落ちると熱いですし……パンツを脱いで椅子に
座ると冷たいですし……もちろん、みんなの前でお尻をぶたれた
ら、そりゃあ恥ずかしいですから……
そこでこんな時はインナートリップ(私の造語)に限ります。
どういう事かといいますと……
『さも授業を聞いているようなふりをしながら、実は、頭の中
では別のことを考えて楽しんでいる。一応、指された時の用心に
頭の2%だけは教室に残しておきますが、あとは夢の世界で遊ぶ
んです。成果物は色々。詩作、作曲、物語……中にはHな妄想も
含まれていました』
私だけじゃありません。おそらくオマルだって授業中、意識は
この教室にはないと思いますよ。
そうやって、どうにかこうにか30分の授業をしのぎきると…
次はその授業がちゃんと理解できたかを試す確認テストに移る
わけですが、ここからはとたんに忙しくなります。
20分あるテスト時間を惜しんで5分で仕上げます。
とにかく早ければ早いほど次の授業までの休み時間が増えます
から、必死で解いていきます。
私はいつもの通りやっているだけですが、どうやらオマルの奴
も私の異変に気づいたらしく、彼女も解答スピードを上げて私に
ついてきていました。
結局……
「先生、できました」
私がそう言って席を立ったとき、オマルもすでに最後の問題に
取り掛かっていました。
「……あら、千賀さん。もう出来たの?もっとゆっくりと考え
た方がよくなくて……見直しも必要よ。ケアレスミスがあるかも
しれないでしょう」
斉田先生が、答案を提出して教室の外に出たがっている私に、
嫌味なことをおっしゃいますから……
「ちょっと貸して!」
私は、今出来上がったばかりのオマルの答案を持ち上げます。
そして、私と彼女の二つの答案をしっかり見比べてから……
「大丈夫ですよ先生。間違ってる処は一つもありませんから」
と、言ったのです。
すると、さらにしつこく……
「どうして、間違ってないって分かるの?」
なんて尋ねてきますから、思わず声が大きくなってしまって…
「だって、二人の答えが一緒なんですもの。間違ってるはずが
ないでしょう!」
私は、とっさに私にとっての正論を吐くと、二人分の答案用紙
を教卓の上に置き、オマルの手を引いてさっさと教室を退出して
しまったのでした。
「ねえ、あんなこと言っていいの。先生、教室出る時も何だか
苦笑い浮かべてたわよ。あたし、あとでお仕置きなんてイヤよ」
教室を出てオマルが心配そうに言いますから……
「たぶん大丈夫よ」
「たぶんって……」
「仕方ないでしょう。次の授業まで時間がないんだもの。あそ
こで油を売ってる暇はないわ」
「どういうことよ」
「いいから、いらっしゃいよ。どうせ、あなた、私が、ここで
何をしてるのか知りたくて来たんでしょう?」
私はオマルの手を引き、小走りで学校の中庭の垣根を越えて、
お隣りのお庭へと入っていきます。
「ねえ、ここは学校じゃないの?」
「そうよ、伯爵様のお屋敷」
「大丈夫なの?」
「もち、大丈夫よ」
いつものように小道を通って庭の片隅。六角形の形をした離れ
が一軒、団扇サボテンに囲まれて建っていました。
「コンコンコン」
窓を叩いて中の老人に私が来たことを知らせます。
「おう、智香ちゃん。お入りなさい」
ロッキングチェアに揺られる老人が許可を出す前から私は窓を
開けて部屋の中へと身を乗り出していました。
「やめなさいよ。窓からなんて、お行儀わるいわよ」
オマルが私の上着の裾を持って止めますが……
「いいの、いいの、おじちゃんの図書室にはここから入るのが
一番いいんだから。表になんて回ってたら時間がもったいないの
よ。どうせ20分でまた戻らなきゃならないんだもん」
「相変わらず、せわしないのう。先生に言って、午前中だけで
もここにいられるようにしてあげようか?」
優しい気遣いでしたが……
「気持は嬉しいけど、いいわ、そんなこと気にしなくても……
私、補習でここに来てるんだもん。やることはやらないと他の子
に悪いでしょう」
「律儀じゃのう……それはそうと、窓の外はお友だちかな?」
おじちゃんに指摘されて、私はまだオマルが部屋の中へ入って
いない事に気づきます。
「何やってるよ。大丈夫だから入ってらっしゃいよ。体育音痴
のあなたでも、そのくらい乗り越えられるはずよ」
オマルは私にそそのかされてやっと窓からこの部屋へ進入する
決心がついたようでした。
***************************
*)僕の好きなプリズンものですが、Hはごくわずかです。
午前中はどこも授業です。8時から12時まで、全国の系列校
から選りすぐられた劣等生達は、さらにその能力に応じてクラス
分けされて、そこでびっちり絞られます。
私のクラスはGクラス。
桃園学園は伝統的に成績がABCでつけられていて、Aは優秀
な生徒。Bがまあまあ。Cは一応合格という程度。
もちろんこのABCの子はこんな合宿関係ありません。
D以下が落第なんですが、その落第点にも種類があって、Dは
もう少しがんばりましょう…Eが努力が必要…Fが先生に相談。
このEFあたりからが怪しくなります。
でも、その先に、さらにGという評価もあって、これなんかは
箸にも棒にも掛からない生徒という意味でした。
私は、いつも期末テストを白紙で出すようにしてましたから、
割り当てられる教室はいつもGクラス。でも、これは予定通りで
した。
もともと避暑が目的の私は、なまじEやFのクラスよりこの方
が逆に気が楽だったのです。
Gクラスは高校の授業にさえついていけない子が大半ですから、
授業の内容も中学レベル。頭の中を空っぽにして白河夜船で授業
を聞いていても、脳細胞を2%ほど活動させてアイドリングして
さえいればそれで十分でしたから私的には助かります。
ただ、私はともかく他の多くのクラスメイトたちは授業を聞い
ていると、それが子守唄のように聞こえて条件反射的に眠くなる
人たちですから、教室にはいくつもの眠気覚ましが用意されてい
ました。
例えば、手蜀のローソク。こっくりこっくり居眠りを始めた子
を見回り役のシスターが起こして回るのに使います。
シスターから肩を叩かれた子はアウトです。
でも効果は覿面で、手の甲に数滴垂らせばそれで十分でした。
それでも睡魔の誘いに負けそうな子にはパンツを脱いでもらい、
お尻をじかに座面にくっ付けて座り直してもらいます。
あとは、その子が眠くなるたびに先生が教壇にあるスイッチを
入れてあげれば、その愛がたちどころにその子のお尻に伝わって
生徒の背筋がピンと伸びる仕掛けでした。
通称、電気椅子。物騒なネーミングですが、もちろん、いくら
気持いいからといっても天国まで行くことはありませんのでそこ
は安心でした。
ただ、それでもダメな場合もあります。
その場合は仕方がありません。
教壇の脇にある小机にうつ伏せになって、先生のもっと直接的
な愛をお尻に受ける事になります。
小学生のチビちゃんたちならスリッパ。中学生には幅広の革鞭。
高校生になるとケイン(籐鞭)が一般的でした。
年齢に応じて鞭の種類は違いますが、「ピシッ!」という衝撃
と共に全身の毛穴が開いて、頭の天辺から電気が抜けて行く効果
は一緒でした。
この他にも、まだ幼い子の場合には熱いタオルや冷たいタオル
で見回りのシスターたちがお顔を拭いてくれるなんてサービスも
ありました。
とかく劣等生というのは長時間椅子に座っているのが苦手です
から、まずはその訓練からです。先生も生徒を寝かさないように
色んな工夫をしているようでした。
えっ!、私ですか?
ええ、一応全部経験済みです。
さて、こうして30分の授業が終わると、次は今やった単元の
テストが20分あって、これがここの一時限なんです。
テスト結果は、悪いお点でも特別な罰はありませんが、合格点
に届かない子には午後の自由時間はありませんでした。
Gクラスくらいになると、普段、学校で先生にあまりかまって
もらえない寂しさからなんでしょうか。自由時間をつぶしては、
先生と仲良くなる子が沢山いました。
私も先生と仲良くなろうと、補習の補習にもよく参加しました
が、あまりやりすぎると……
「わかってるのに、分からないふりをするような子には特別な
お仕置きが必要ね」
なんて怖い顔で睨まれたことも……
でも、それはあくまで例外。普段の先生方はとても優しくて、
私がなぜここに来ているのかを知ったうえで、快く抱いていただ
きました。
幼い日の私は家庭で満たされない分をここでまとめて抱かれる
ことで、次の学期への英気を養っていたのです。
さて、話を戻しましょう。
朝の食堂で、ぎりぎりまでサリーとおしゃべりしていた私たち
でしたが彼女はEクラスですからここで別れなければなりません。
「お昼、また一緒に食べようね」
名残惜しい気持を振り払って私はGクラスへと向います。
Gなんて特殊なクラスですから、例年人数がそんなに多くあり
ませんでした。生徒は五、六人といったところでしょうか。でも、
一番手の掛かる生徒たちでもありますから、授業先生を受け持つ
先生以外にも助教としてシスターが二人もついています。
当然、ここで同じ学校の生徒に会うなんて滅多にありませんで
した。でも、この日は……
教室に一歩足を踏み入れた瞬間、私の全身が凍りつきます。
『どういうことよ!』
おどおどと落ち着きのない生徒たちに混じって、一人だけ背筋
をピンと伸ばして、黒板をまっすぐに見つめている孤高の少女が
……。
「あら、チッチ。偶然ね、あなたもこのお教室なの?」
その子が私に気づいて微笑みました。
「オマル!あなた、何やってるのよ。こんな処で……」
私が驚くと……
「何やってるはないでしょう。私も授業を受けに来たのよ」
涼しい顔で言いますから、開いた口が塞がりません。
彼女の名前は小川真由美。あだ名のオマルは本来名前から来て
いましたが、『便器みたいでイヤ』って本人が言うのでかえって
友達からはそう呼ばれるようになっていました。軽い虐めです。
それはともかく……
「どうして、あなたがここにいるわけ?」
私の驚きに彼女は涼しい顔で……
「それはこっちのセリフよ。どうしてこんな素敵な場所がある
のに教えてくれなかったのよ。私たち、友だちでしょう」
「素敵な場所って……あなた、正気なの?……ここは劣等生の
溜まり場なのよ」
「知ってるわよ、そんなこと。さすがに朝の浣腸にはちょっと
ビビッたけど……でも、ほかの子も同じことされてたから、別に
私一人じゃないみたいだし、あれはあれで楽しかったわ」
「相変わらず能天気ね。楽しかったって、あなたってどういう
感性してるのかしら」
「だから、そこはあなたと同じでしょうよ。……あなたこそ、
どうしてこんな処にいるわけ?」
「それは……」
私は言葉に詰まります。
「私ね、あなたが普段『夏はいつも避暑地の別荘で過ごすの』
なんてキザなこと言うもんから『それっていったいどこだろう』
って、ずっと、思ってたのよ。それで、真理絵をとっちめたら、
チッチは毎年ここだって言うじゃない」
「何だ、真理絵が裏切ったのか」
「あの子、責めないでよ。あたし、ヤクザの親分に恨まれたく
ないから……」
オマルが悪戯っぽく笑います。実際、真理絵のお父さんは全国
に名をとどろかす有名なヤクザの親分でした。
「最初は、私も目が点になったけど……でも、考えてみれば、
あなたが毎年ここに来るってことは、そんなに居心地が悪かろう
はずがないわけだし……何より、何かしら魅力があるはずよね。
……だから、ま、風変わりな別荘だけど、私も参加してみよう
と思ったの。……あら?変な顔して……いけなかったかしら?」
「別にいけなくはないけど……あなたってヒマね。世間の子は
今頃受験勉強で必死だっていうのに……こんなところで油売って
ていいのかしら?そんなことじゃろくな大学にいけないわよ」
「うちの親と同じで嫌なこと言うはね、あなたって……でも、
そのあたりもあなたと同じなの」
「どういうこと?」
「私も受験に興味なんてないもの。大学はいける処でいいって
最初から決めてるの。…それに、夏休みだからって実家に帰って
みたところで、行く処行く処付き添いが着いて回るような家なの
よ。恋愛どころか、映画一本自由に観られないわ。…小学生じゃ
ないつうの。…だから、それならいっそ…ね、良い考えでしょう」
最後は甘えるように私を見つめます。
「よくないわよ!」
大声を出してしまいましたが、こうなっては仕方がありません。
私の秘密基地はこうして悪友オマルに知られてしまったのでした。
**************************
Gクラスの数学を担当するのは今年から斉田先生。でも授業の
やり方は同じでした。もともと端にも棒にもという生徒相手です
から、授業も難しいことには一切手をつけません。最初は中学の
教科書のそれも基礎的な内容を、猿でもわかるように懇切丁寧に
講義してくださいます。
もちろん、それって他の子たちにはしてみたら、有意義なこと
ありがたいことなんでしょうけど、私やオマルにしてみると……
それって退屈で、退屈で……
『あ~~あ』
欠伸を押さえるのに必死にならなければならない拷問でした。
手の甲に蝋涙が落ちると熱いですし……パンツを脱いで椅子に
座ると冷たいですし……もちろん、みんなの前でお尻をぶたれた
ら、そりゃあ恥ずかしいですから……
そこでこんな時はインナートリップ(私の造語)に限ります。
どういう事かといいますと……
『さも授業を聞いているようなふりをしながら、実は、頭の中
では別のことを考えて楽しんでいる。一応、指された時の用心に
頭の2%だけは教室に残しておきますが、あとは夢の世界で遊ぶ
んです。成果物は色々。詩作、作曲、物語……中にはHな妄想も
含まれていました』
私だけじゃありません。おそらくオマルだって授業中、意識は
この教室にはないと思いますよ。
そうやって、どうにかこうにか30分の授業をしのぎきると…
次はその授業がちゃんと理解できたかを試す確認テストに移る
わけですが、ここからはとたんに忙しくなります。
20分あるテスト時間を惜しんで5分で仕上げます。
とにかく早ければ早いほど次の授業までの休み時間が増えます
から、必死で解いていきます。
私はいつもの通りやっているだけですが、どうやらオマルの奴
も私の異変に気づいたらしく、彼女も解答スピードを上げて私に
ついてきていました。
結局……
「先生、できました」
私がそう言って席を立ったとき、オマルもすでに最後の問題に
取り掛かっていました。
「……あら、千賀さん。もう出来たの?もっとゆっくりと考え
た方がよくなくて……見直しも必要よ。ケアレスミスがあるかも
しれないでしょう」
斉田先生が、答案を提出して教室の外に出たがっている私に、
嫌味なことをおっしゃいますから……
「ちょっと貸して!」
私は、今出来上がったばかりのオマルの答案を持ち上げます。
そして、私と彼女の二つの答案をしっかり見比べてから……
「大丈夫ですよ先生。間違ってる処は一つもありませんから」
と、言ったのです。
すると、さらにしつこく……
「どうして、間違ってないって分かるの?」
なんて尋ねてきますから、思わず声が大きくなってしまって…
「だって、二人の答えが一緒なんですもの。間違ってるはずが
ないでしょう!」
私は、とっさに私にとっての正論を吐くと、二人分の答案用紙
を教卓の上に置き、オマルの手を引いてさっさと教室を退出して
しまったのでした。
「ねえ、あんなこと言っていいの。先生、教室出る時も何だか
苦笑い浮かべてたわよ。あたし、あとでお仕置きなんてイヤよ」
教室を出てオマルが心配そうに言いますから……
「たぶん大丈夫よ」
「たぶんって……」
「仕方ないでしょう。次の授業まで時間がないんだもの。あそ
こで油を売ってる暇はないわ」
「どういうことよ」
「いいから、いらっしゃいよ。どうせ、あなた、私が、ここで
何をしてるのか知りたくて来たんでしょう?」
私はオマルの手を引き、小走りで学校の中庭の垣根を越えて、
お隣りのお庭へと入っていきます。
「ねえ、ここは学校じゃないの?」
「そうよ、伯爵様のお屋敷」
「大丈夫なの?」
「もち、大丈夫よ」
いつものように小道を通って庭の片隅。六角形の形をした離れ
が一軒、団扇サボテンに囲まれて建っていました。
「コンコンコン」
窓を叩いて中の老人に私が来たことを知らせます。
「おう、智香ちゃん。お入りなさい」
ロッキングチェアに揺られる老人が許可を出す前から私は窓を
開けて部屋の中へと身を乗り出していました。
「やめなさいよ。窓からなんて、お行儀わるいわよ」
オマルが私の上着の裾を持って止めますが……
「いいの、いいの、おじちゃんの図書室にはここから入るのが
一番いいんだから。表になんて回ってたら時間がもったいないの
よ。どうせ20分でまた戻らなきゃならないんだもん」
「相変わらず、せわしないのう。先生に言って、午前中だけで
もここにいられるようにしてあげようか?」
優しい気遣いでしたが……
「気持は嬉しいけど、いいわ、そんなこと気にしなくても……
私、補習でここに来てるんだもん。やることはやらないと他の子
に悪いでしょう」
「律儀じゃのう……それはそうと、窓の外はお友だちかな?」
おじちゃんに指摘されて、私はまだオマルが部屋の中へ入って
いない事に気づきます。
「何やってるよ。大丈夫だから入ってらっしゃいよ。体育音痴
のあなたでも、そのくらい乗り越えられるはずよ」
オマルは私にそそのかされてやっと窓からこの部屋へ進入する
決心がついたようでした。
***************************