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3/31 子守っ子、敬子の性春 ~3~
3/31 子守っ子、敬子の性春 ~3~
お話は多少前後しますが、私がお義母様から二度目のキツイお
仕置きをもらう少し前のことです。
夏休みの間も私はお義母様からずっと勉強させられていました
が、最後の1週間だけは、遅い薮入りのお休みをもらって実家に
帰ることができました。
角田の家から実家までは近くの電停から電車に乗って20分。
終点で降りて徒歩でさらに山道を30分歩かなければなりません。
ただ、道中全部あせても一時間とかかりませんから、実家までは
そんなに遠い距離ではありませんでした。……ただ、ならば週末
ごとに実家に帰れるのかというと、そうはいきませんでした。
そもそも私のように奉公してる者には世間の人が思い描くよう
な土曜日や日曜日といった日がないのです。
むしろ世間とは逆で、学校に行かせてもらっている子守っ子は、
学校がお休みの土曜の午後や日曜に、ここぞとばかり家の人から
御用を言いつかります。ですから、土曜日や日曜日というのは、
むしろ忙しい曜日だったのです。
もともと奉公人のお休みは薮入りと言って1月と7月の年二回、
それもそれぞれたった一日だけが公休日ですから、ほぼ一年中が
勤務時間でした。
もっとも、私が育った頃になりますと、さすがに363日働き
づめはオーバーで、年に二回、一週間くらいのお休みを取る事が
できました。
その日は若奥様にあつらえて貰った着物を着て、新しい下駄を
履いて帰ります。それと懐には多少まとまったお金が、お小遣い
として入っていました。
しかも、こうした恩恵は何も働いている私だけじゃありません。
私が実家に着くと、すでに若奥様が送った大きな柳行李が開け
られていて、家族全員が戦利品を分配しています。
妹はすでにワンピースを着て独りファッションショーをやって
いましたし、兄は学生服に誇らしげに万年筆が刺さっています。
もちろん母には帯止め、父は大吟醸を茶碗に注いですでに赤い
顔をしていました。
7人の兄弟、父母、そして祖父母にいたるまで、薮入りになる
と、若奥様は私の家族全員分のお土産を用意して送ってくださる
のです。
1日だけの昔とは違い、奉公人が一週間も実家で暮らせば、誰
だって里心がついてしまいます。実家にいる気安さから、お店や
主人の悪口だって飛び出します。そんな時、休暇明け、奉公人の
家族が奉公人を再び安心してお店へ送り出してくれるためには、
お店側も奉公人がお店で大事にされていることを家族にアピール
しなければなりません。
そんなこともあって、若奥様は奉公人に何かと付け届けをして
くださっていましたが、他の商家なら子守っ子にこんな事までは
しません。
年二回お店から送られる家族へのプレゼントは、お小遣い程度
の私のお給金より高価でしたから、家に戻った私の株はその瞬間
だけ上がります。若奥様は良い人だということになります。
そんな、みんなが喜んでいる席で私が、『奉公先をやめたい』
などと切り出して、はたして家族が賛同してくれるでしょうか?
その辺りは若奥様も計算ずくでプレゼント攻勢をしかけている
のでした。
私は不利な状況のなか、夕食の時、両親の前で恐る恐る話しを
してみます。
「今さあ、あたし若奥様の命令で学校の勉強させられてるの。
私の頭が悪いの、若奥様だった知ってるはずなのに、家庭教師の
先生までつけて無理やり『勉強しろ』だもん。こんなのおかしい
よ。……しかも、ついていけないと、お仕置きでお灸まですえる
んだから……あたしさあ、うちに戻って、家の仕事を手伝うよ。
……ね、それでいいでしょう」
私は若奥様から特別な愛情を注がれている事までは話しません
でしたが、私なりに窮状を訴えます。
すると母も私が『お灸』という言葉を使ったので心配になった
のでしょう。隣の部屋に私を呼ぶと、裸にして丹念に灸痕を確認
します。
心棒はさすがに黙っていましたが、お尻のお山も尾てい骨も、
乳頭の周りやお臍、ビーナスの丘まで……相手が母親ですから、
ためらいはありませんでした。
「ね、ヒドイでしょう」
私は母に同意を求めます。
『これがきっかけで家へ帰れるかも…』なんて思ったりもしま
した。
ところが、母の反応は意外なほど冷静だったのです。
「要するに灸痕がついたのはお尻の割れ目とお臍の下だけじゃ
ろう。お前が大騒ぎするからよほど何かされたのかと思ったら…
…このくらいの事なら家にいたってばあちゃんに据えられるから
同じだよ」
「えっ……そんなあ……」
あてが外れた私はがっかりです。
確かに若奥様はお灸がとっても上手で、他の箇所は私が熱さを
感じるとすぐに火をもみ消してしまういわゆる寸止めですから、
灸痕は残っていませんでした。
「それだけじゃないの。あの人、私のお股の中にもすえたんだ
から……」
私は恥ずかしかったのですが、とうとう最後の手段に打って出
ます。
私は、これを見せたら母が角田のお店へ怒鳴り込むんじゃない
かって思って心配していましたが、いざという時は、母だけなら
その場所だって見せるつもりで心の準備をしていたのです。
ところが……
「……ふう~ん、お前、すでに心棒まで入れてもらったんだ。
……それは、やっぱり、奥様が自らなさったのかい?」
母は私を確かめもせず、こう聞いてきます。
私はここぞとばかり若奥様の悪口を言い立てました。
「だから、おかしいでしょう。それだけじゃないのよ。若奥様
は私を裸にして撫でたり擦ったりもするんだから……いいこと、
あの人がおかしいの、ちょっとやそっとの事じゃないわ。あの人、
きっと変態なのよ」
もちろんそれは、母が私を家に戻してくれることを期待しての
ことでした。
「そうかい…………」
母がその時考えていたのもきっとその事だと思ったのです。
『娘の為にどうやって父を説得しようか』って……
ところが、その時母が考えていたのは、まったく別の事でした。
「心棒ってのは、このあたりに昔からの習慣だけど、やるのは
たいてい良家のお嬢様だけ。うちらみたな貧乏人の家じゃ、まず
やらない。女中や子守になんか、お仕置きとしてたって、やられ
たなんて話、聞いたことがないよ。ましてや奥様がご自身で据え
てくださったなんて……お前、よほど若奥様から可愛がられてる
んだね」
「ええええっ……何言ってるのよ。そんなことないよ。だって、
あれはお仕置きなんだよ」
「だからさ、そんなこと、本来、奥様のお仕事じゃないもの。
女中や子守が何かしでかして折檻される時は、古株の女中がやる
ものなんだから。お前だって女なんだから、わかるだろう。女の
あんな処、誰だって触りたいなんて思やしないよ。それをやって
くださってるんだよ。お前の為に…………特別な思いがなきゃ、
ありえないよ」
「だって……」
「しかも、家庭教師までつけて勉強させてもらってるなんて。
お母さん、正直、若奥様の真意はわかないけど、そういう時は、
乗ってやってみて損はないと思うよ。それに、お前の口ぶりだと、
しゃべってる愚痴ほどには、どうしても今の生活が耐えられない
とは聞こえないもの」
「どうしてそんな事わかるのよ!こっちは本当に大変なのよ!」
「何だ?違ってるのかい?」
「えっ!」
「私はあんたを赤ん坊の時から負ぶって世話してるんだ。……
だから、あんたがどれくらい切羽詰ってるかぐらい分かるんだ。
……私はあんたの母親なんだよ!!……違ってるかい!?」
母は最期には語気を強めます。
「…………」
私は言葉を失いました。
というのも、家庭教師を付けられて勉強を始めた頃は、確かに
毎日毎日嫌で嫌で仕方がなかったのですが、少しずつ学校の勉強
が分かってくるようになると、それはそれで楽しみも出てきます。
それを母に見透かされたのがショックでした。
「ここで言えるだけの愚痴を言ったら、お店へお帰り。そして、
若奥様に必死に着いて行ってごらん。それが何よりおまえの為だ
から……」
「えええっ、だって、あそこはお灸が…………」
私は最後の抵抗を試みますが……
「お灸なんて、ここにいたって据えられるよ。お前は、そんな
事とは引き換えにならないくらい大きなチャンスを掴んでるんだ。
頑張ってごらん」
「ええええっ……」
私はすっかりあてが外れてしまってがっかりです。
でも、母の言う『どうしても今の生活が耐えられないという訳
じゃないんだろう』という言葉もまんざら嘘じゃありませんから
仕方がありませんでした。
私の家は元々水呑み百姓と呼ばれる小作の農家で、農地解放で
地主にはなりましたが、暮らし向きは決して楽ではありませんで
した。
楽ではないから私が子守にだされたのです。
そんな私が「帰りたい」なんてわがままを言っても両親が困る
のは分かっていました。だって、私が帰って農作業を手伝っても
それで私が自分の食い扶持を稼ぐことはできないのですから……
母と二人して居間へと戻ってくると、母が家族を前に重い口を
開きます。
それは『父が春先に怪我をして1ヶ月農作業に出られなかった
こと』や『すぐ上の兄が高校へ進学したいという話』でした。
それらはいずれも、『うちの経済事情が厳しいから、おまえは
中学を卒業するまでは今のお店で働いて欲しい』という意味です。
予想されていた展開とはいえ、私にとってはたびたびがっかり
です。
『幼い頃から慣れ親しんだ家で、家族と一緒に暮らしたい』
そんなささやかな幸せでさえ、この時はできませんでした。
でも、そんな私の姿を見て不憫に思ったのでしょう。意外にも、
大吟醸で出来上がっていた父が承知してくれたんです。
「お前がそんなに嫌なら仕方がないじゃないか。そこの主人に
お暇をいただけるよう、わしが手紙を書いてやるから安心しろ」
とまで約束してくれたのでした。
私はそんな父の口約束に一縷の望みを託していました。
ところが、そんなはかない夢も、この間お義母様からお仕置き
をいただいた時についえてしまいます。
父が、私の希望に反して『今後とも娘をよろしくお願いします』
と若奥様宛てに手紙を書いてよこしたのを見せられたからです。
後で知ったのですが、父はすぐ上の兄が高校へ行くための資金
を角田の家から借りたみたいでした。
実家での約束は父が酔っていましたから仕方がないとも言える
のですが、『裏切られた』という思いは残ります。
それはお義母様から据えられた心棒よりもずっと長い時間私の
心を苦しめたのでした。
*************************
二学期が始まると、とたんに三田村先生の予想が的中します。
夏休み明けの確認テスト。これは夏休み中も真面目に勉強して
いたかを確認するテストです。これで私の国語はクラストップの
成績でした。
普段、通知表が3だった子がいきなりクラスの最高点を出した
わけですから、当然、周囲は驚きます。
特に担任の先生は私がカンニングしたんじゃないかって疑った
くらいでした。
「あら、何だか気落ちしているみたいね。お勉強大変かしら?」
お義母様に言われたのでその事を話すと……
「大丈夫よ、あなたの力は本物ですもの。心配する事はないわ。
何度か試験を受ければそんな疑いすぐに晴れることじゃないの。
女は何かと目移りするけど、あれもこれもって追いかける人より、
与えられた場所で努力した人の方が幸せになるのよ。……あなた
に与えられたのは、この場所。そして、この私」
「…………」
「信じられる?」
「…………はい」
こう答えるしかありませんでした。
「だったら、付いてらっしゃい。幸せにしてあげるから……」
「はい」
お義母様の強い言葉につられるように、ほんの少し声が大きく
なります。
「その代わり、お仕置きも沢山よ。わかってる?」
「はい」
私はまた一歩、お義母様との中が近くなったみたいでした。
*************************
さて、こうやってお義母様との関係ばかり述べていると、さも、
私が角田家の一員になったかのようですが、そうではありません。
お義母様との関係は、あくまでお義母様と私が二人だけでいる
場合だけのことで、普段の私は相変わらず子守っ子のままでした。
私は相変わらずお義母様の子どもたち三人の面倒をみなければ
なりません。着替え、入浴、食事のお給仕……はては下の男の子
二人(双子)のトイレの世話だって私の仕事でした。
男の子は双子ですから共に4歳。お義母様がちゃんと仕付けて
らっしゃいますから身の回りのことは一通り何でもできるのです
が、私がそばにいると昔の習性で何でも甘えたがります。
着替えや入浴は立ってるだけですし食事は欲しいものを指差す
だけ。仕方なく私がスプーンに乗せて口元まで持っていってやる
と、喜んで椅子の上で跳ね回ります。まだまだ赤ちゃん気分です
からトイレでウンチをする時なども、赤ちゃんがするように私が
だき抱えてやらなければなりませんでした。
怖いお義母様が見ているとちゃんとしていますが……いない処
では二人とも私に甘え放題なんです。
お義母様は、そんな二人を見て「自分でやりなさい!」と叱り
つけますが、効果があるのはその時だけ。放っておくと何もしま
せんから、結局は私がやる事になります。
それは、子守っ子の悲しい宿命みたいなものでした。
その点、美咲ちゃんはすでに10歳ですし、何より女の子です
から、子守の世話は受けたくないとばかりに自分のことは何でも
自分でしたがります。
ま、それはいいのですが、彼女、大変なお転婆娘でした。
幼稚園の頃から札付きで、女の子よりむしろ男の子の友だちの
方が多く、男の子と一緒にチャンバラごっこやターザンごっこを
やって遊んでいました。
当然、喧嘩相手も大半が男の子ですし、顔はいつも日焼けして
真っ黒、年がら年中生傷が絶えませんでした。
ご主人(お父さん)がよく冗談めかしに……
「あいつ、そのうちオチンチンが生えるじゃないか」
なんて言っていたほどなんです。
今の言葉でなら『体育会系』ということになるのでしょうか。
学校の成績はビリから数えた方が早いですし、ピアノとか日舞と
いった習い事も続けてはいましたが、サボってばかりですから、
いっこうに上達しません。
お義母様にしてみると、それが頭痛の種だったみたいです。
そんな事情から、美咲ちゃんはお母さんからよくお小言をいた
だいていました。
いえ、お小言だけならまだしも、キツイ折檻(お仕置き)だって
日常茶飯事だったんです。
つまり美咲ちゃんとお義母様って似たもの親子だったんです。
そんなある日のこと、その美咲ちゃんに勉強を教えるように、
つまり家庭教師になるようにと、お義母様が私に命じるのです。
それは今までの経緯から、ある程度予想できたことなのですが、
いかんせん私にはハードルが高すぎます。
「無理です」
私ははっきりお断りしたのですが、お義母様は……
「いいから、やって……あなたへのフォローは何でもしてあげ
るから……もちろん、言うこと事きかないようならあなたの判断
でお仕置きしたってかまわないのよ」
「…………」
お義母様はそうおっしゃいますけど、私はまだ14歳、しかも
使用人の立場です。主人の娘さんをお仕置きするなんて、そんな
大それたことできるはずがありません。
でも、お義母様は聞き入れませんでした。
そして、敬子ちゃんを前にこう宣言します。
「あなただって、いつまでも山猿のままってわけにはいかない
でしょう。だから今度、敬子さんにあなたのお勉強をみてもらう
ことにしたの」
当然、美咲ちゃんは大むくれです。
だって、私は年長者といっても子守っ子ですからお嬢様である
美咲ちゃんは私の事を自分の下にいる人間だと思っていました。
それがいきなり自分の先生になるわけですから面白かろうはずが
ありません。
でも……
「いいわね」
お義母様に強く言われると……
「はあい」
あくびしたようにも見えますが、美咲ちゃんとしてはとにかく
こう答えるしかありませんでした。
しかも……
「敬子さんには、もし、あなたがサボるようならお仕置きして
かまわないって言ってあるから、そのつもりでいなさいね」
「えっ!?」
美咲ちゃんの顔色が変わります。
おまけに……
「それでは、ちゃんと正座して、先生によろしくお願いします
をしましょう」
最後はお義母様の指示で、私を前に両手を畳に着けてのご挨拶。
「先生、よろしくお願いします」
私の前で笑顔なんかありませんけど、笑顔のお母さんに押し切
られた格好でした。美咲ちゃんはこの時まだ10歳。お母さんに
言われたら嫌でも仕方がありませんでした。
そこで、美咲ちゃんの家庭教師を始めるには始めたんですが…
案の定、元は子守っ子だった私のレッスンなんかまともに受け
てくれませんでした。美咲ちゃんはたちまち膨れっ面になって、
ストライキです。
でも、これもまたお義母様は織り込み済みのようでした。
昭和30時代、このくらいの年齢の子がお母さんの言うことを
きかない時はどうなるか……
「いやあ~~お灸だめ~~ごめんなさい、ごめんなさい、……
勉強します、勉強します、だめえ~~お灸しないでしないで~」
突然、家中にもの凄い大音響が木霊します。
もう少し歳がいけば、女の子ですからね、自分の悲鳴がご近所
にも届いて、恥ずかしいという気持も起こるんでしょうが……
「いやあ~~人殺し~~鬼~~やめろ~~~死んじゃう~~」
いつも元気一杯の美咲ちゃんは、仏間に引きずられて行く時も
元気一杯でした。
「敬子ちゃん、あなたも手伝って」
お義母様はもの凄い形相で私を睨みつけると一緒に着いて来る
ように指示します。
まるで、私も美咲ちゃんの共犯みたいでした。
仏間に引っ立てられた美咲ちゃんは、さっそく畳の上に仰向け
に寝かされ、ショーツを剥ぎ取られると両足を高くされます。
「この子、押さえてて」
お義母様がこう言って、美咲ちゃんの両足を私に預けるまで、
あっという間でした。
「いや、お灸いや、ごめんなさい、もうしませんから、やめて」
美咲ちゃんは仏壇にお灸を取りに行ったお母さんに向って必死
に命乞いしますが、身体をよじろうとすると……
「お黙り!!」
ドスのきいた声で一喝されてしまいます。
すると、美咲ちゃんは本当に黙ってしまいました。
私だって経験があるから分かるのですが、美咲ちゃんは本当に
怖かったんだと思います。お母さんが怖くて怖くて、声が出ない
みたいでした。
こんな時、今のお母さんなら、まずお仕置きをするにあたって
事情を説明してくれるみたいですが、私の育った時代、私の育っ
た町ではこの位の子供をお仕置きするにあたっては親が何も説明
しない方がむしろ一般的でした。
おいた(罪)とお仕置き(罰)は、できるだけ時間を短くが基本
だったのです。
「お母さんはこんなに怒ってるのよ」
という怒りの感情を子供に伝えることが大事だったんです。
『もう、お仕置きは逃れられない。もし、これ以上お母さんを
怒らせたらどうなるか……』
その先を経験済みの美咲ちゃんは諦めるという道を選択したの
でした。
「やっと、おとなしくなったわね。……どうなの?少しは反省
した?」
お母さんは美咲ちゃんのお股から顔を覗かせて、しょげ返って
いる美咲ちゃんの顔を見ます。
「急におとなしくなったから、お漏らししたのかと思ったけど
……それはないみたいね」
お義母様はそうは言いつつも美咲ちゃんのお股をタオルで綺麗
に拭き取ります。
親子ですから、そのあたり何のてらいもありませんでした。
そして、おそらくは私が据えてもらった艾よりさらに大きな艾
をまだ小さな大陰唇の近くに乗せます。
「ほら、火をつけるよ。歯を喰いしばって!!」
お母さんが言ったのはそれだけ。
私より小さな身体の美咲ちゃんが私より大きな艾の味を噛み締
めます。
それは、私にとっても子宮がぐっとしぼむほどの衝撃でした。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
声にならない声が私にも伝わります。
それは両足を押さえている私にとっても辛い体験でした。
ただ、美咲ちゃんは仏間へ入って来た時とはうって変わって、
静かにお灸のお仕置きを受けています。
「よし、あなたも少しはお姉ちゃんらしくなったみたいね」
お母さんは満足そうに笑うと、美咲ちゃんの両足を下ろして、
ショーツを穿かせ、正座したご自分の膝に乗せます。
私が育った世界では『まずは、とりあえずビール』じゃなくて
『まずは、とりあえずお仕置き』
そして、ここからがお小言でした。
「どうして、学校で敬子先生のありもしない悪口なんか言うの。
敬子先生はあなたよりお姉さんで、成績も優秀。あなたに不足の
ない先生なのよ」
「だって、子守じゃない」
「そうよ、子守よ。だから、あなたたちお世話になったんじゃ
ない。それのどこが問題なの?学校の成績が優秀だから、今は、
あなたたちのお勉強もみてもらってる……それだけじゃないの。
それのどこが気に入らないの?」
「それは……」
「敬子ちゃんはね、子守をしながらお勉強してこんなに立派に
なったの。立派になったからあなたのお勉強をお願いしたのよ。
それに引きかえあなたはどうなの?何一つお家のお仕事をしない
ばかりか、何をやらしてもサボることばかり考えてるじゃない。…
…ん?敬子ちゃんとはえらい違いよね」
「…………」
美咲ちゃんは泣いているのでしょうか、お母さんの胸に顔を押
し当てます。
「あなたは何もしなくてもずっと私の娘でいられると思ってる
のかもしれないけど……私は傲慢な子や怠け者は嫌いなの。……
いいのよ、あなたなんかここにいなくても……跡取りは、すでに
二人もいるんだし……」
「えっ?」
「そう言えば、叔父さんがあなたを養女に欲しいっておっしゃ
ってたことがあったわ。あなた、そっちで暮らした方がよくない?
……うちは女の子が欲しかったら、敬子ちゃんを養女にするから
……」
「…………」
この時、美咲ちゃんの顔が真っ青になったのがわかりました。
それはあり得ないと思っても、お母さんと離れて暮らすなんて、
子どもは絶対に考えたくありません。ですから、お尻叩きより、
お浣腸より、お灸よりこれが一番キツイお仕置きだったのでした。
「どうやら、あなたはわかってないみたいね。敬子お姉ちゃま
からあなたが習わなければならないのはお勉強だけじゃないの。
見習わなければならないことがたくさんあるの。それをよ~~く
覚えておきなさい」
「はい」
美咲ちゃんは少し甘えた声を出しますが、お母さんのお仕置き
がこれで終わったわけではありませんでした。
「そう、良いご返事ね。それじゃあ、今日学んだことをお灸で
復習しましょう」
「はい」
美咲ちゃんの顔には明らかに不満な様子が窺えますが、養女に
出すとまで言われたら従うしかありません。
美咲ちゃんにとってはこれからが本番。これからがお仕置きの
メインイベントでした。
「敬子ちゃん、この子慣れてるからたぶん大丈夫だと思うけど、
一応、美咲の身体を押さえててね」
私はお義母様に頼まれましたが……
「そんなことしなくていい、大丈夫だよ。あんたは何もしない
で……」
美咲ちゃんが自分で服を脱ぎ捨てながら不満そうに言います。
当時、角田の家の子供たちがお灸のお仕置きを受ける時に許され
るのはパンツ一つ。女の子の美咲ちゃんもショーツ一枚でした。
美咲ちゃんの気持は分かります。他人の私が見ている前で裸に
なるのは嫌でしょうし、身体を押さえられるのはもっと嫌なんで
しょうけど……
「生意気言うんじゃありません!!あんたのそういう処がいけ
ないの!!」
お母さんに一喝されてしまいました。
確かに私が押さえてなくても美咲ちゃんは耐えられるかもしれ
ません。けれど、これはお仕置きのためのお灸ですから、誰かに
取り抑えられながらお灸を受けさせるという屈辱感みたいなもの
がお仕置きをする側にとっては大事な要素となるのでした。
腹ばいになった美咲ちゃんは、まずは首筋の少し下と腰の辺り
に背骨を挟んで二つずつ、仙骨の辺りに一つ、すでにある五箇所
の灸痕に新たな艾が乗せられます。
そうしておいて……
「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
「はい、先生の悪口は言いません」
美咲ちゃんがお母さんにご返事すると、首筋の下にある艾にお
線香の火が移されました。
「ひぃ~~~」
「しっかりお勉強しますね」
「はい、ちゃんと勉強します」
今度も同じ。美咲ちゃんがお母さんの期待するご返事が出来て
から、腰の辺りに乗せられた艾に火が移されるのでした。
「うっ~~~~」
「次にこんなことしたら、このお尻の穴に焼き鏝ですからね。
分かってますか?」
お母さんは、あえて美咲ちゃんの菊座に指を突き立てます。
こんなこと、もちろん本当の親子だからできることでした。
「はい、そんなことにならないように頑張ります」
最後は仙骨のあたりに……
「あっ、ああああああつ~~~」
思わず顔が歪み、引きつったような声が出ます。
慣れていても、やはり、ここが一番熱いようでした。
「さあ、次は仰向けよ」
仰向けにされた美咲ちゃんは、最後の砦である白いショーツも
剥ぎ取られて、その下、お臍の下に集中砲火を浴びます。
もちろんここでも、一火ごとにお母さんが質問を繰り返します
から美咲ちゃんはそれに丁寧に答えなければなりませんでした。
「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
「はい、先生の悪口は言いません」
お母さんはその答えを聞いてからお線香の火を艾に近づけます。
でも、もし美咲ちゃんがちょっとでもふて腐れた顔を見せたら
……
「あら、そう、まだ反省が足りないみたいね」
こうお母さんに宣告されて、やり直し。
また、熱いお灸を最初から我慢しなければなりませんでした。
もちろん、それは美咲ちゃんも十分に承知してはいるのですが、
いかんせんまだ幼い子供のことで、そういつまでもお芝居(?)は
続きません。
そこで……
「もう一度、最初からやり直します」
なんて言われたら、もう手遅れでした。
「いやあ~~~だめ~~~ごめんなさい、もうしません、もう
しませんぁぁぁ、熱い、いやあ~~もうしないで~~いや、いや、
いや、だめ、だめ、だめ、死んじゃう、死んじゃう」
お灸は二度目三度目は最初の時よりさらに熱いですから、美咲
ちゃんの顔も最初の一火から歪みます。
「おかあちゃま、何でも言うことききます、何でも言うことき
きますからもうしないで……」
美咲ちゃんはたまりかねて甘えた声を出しますが、お母さんは
決して許そうとはしませんでした。
むしろ……
「ほら、敬子ちゃん、もっとしっかり押さえてて、ここが肝心
なところなんだから……」
美咲ちゃんに向ったお義母様の怒りが、私の方へも跳ね返って
来ます。
家庭内のお仕置きって、親も子も体裁をまったく気にしません
から、そのぶん過激でハレンチ。それは戦場というか、修羅場で
した。
お義母様は艾を小さくして、何度も何度も据えます。
そして美咲ちゃんが泣き疲れて懺悔する声さえ出なくなるまで
それは続いたのでした。
一区切りがつくと、お義母様は美咲ちゃんを正座した膝の上に
抱き上げます。
そして、まるで幼子をあやすように抱きしめてから再びお小言
するのがお義母様のやり方でした。
「あなたは自分が角田家の娘だからここで働いている人は自分
より下の人間だぐらいに思ってるみたいだけど、それは違うのよ。
そもそも、今のあなたに何が出来るの?」
「…………」
「力仕事はもちろん、お裁縫もお料理も何もできないじゃない。
今のあなたは、私とお父様に食べさせてもらってるだけでしょう。
……違うかしら?」
「…………」
「そんなあなたが、ここで働いてる人たちを足蹴にするような
ことを言っていいはずがないわ。敬子ちゃんはたしかに子守よ。
でも、あなたなんかよりはるかに偉いの。誤解したらいけないわ。
そもそも、あの人たちを雇っているのは、お父様。そして、私。
あなたじゃないの。……いいこと、これだけは覚えておきなさい。
今のあなたは、この家ではまだ何の役にもたたないお人形でしか
ないの」
「……はい」
美咲ちゃんの口から小さな小さな声がやっとでました。
その美咲ちゃんにお母さんは追い討ちを掛けます。
「お人形は誰かにあげることができるわ。幸い、家には跡取り
もいることだし、あなたはもういらないの。叔父さんが子どもが
欲しいそうだから、あなた、そこで養女になった方がよくないか
しら?」
「いや、お母さんのところがいい」
今度はもっとはっきりした声がでます。
「そう、だったら仕方がないわね。ここにおいてあげるけど、
その代わり、敬子お姉ちゃんとしっかり勉強して頂戴。いいわね」
「……はい」
また声が小さくなりました。
「もう一度言います。敬子お姉ちゃんは山猿のあなたなんかに
比べたら、はるかに優秀なの。十分に家庭教師が務まるわ。もし、
今度お姉ちゃまを困らしたら、その時はお尻の穴に焼き鏝。……
いいわね」
「いや、いや……美咲どこへも行かないから……」
お母さんの厳命に美咲ちゃんの顔が震えます。そして、震えた
顔は、やがて震えたままお母さんの胸の中に収まるのでした。
****************************
お話は多少前後しますが、私がお義母様から二度目のキツイお
仕置きをもらう少し前のことです。
夏休みの間も私はお義母様からずっと勉強させられていました
が、最後の1週間だけは、遅い薮入りのお休みをもらって実家に
帰ることができました。
角田の家から実家までは近くの電停から電車に乗って20分。
終点で降りて徒歩でさらに山道を30分歩かなければなりません。
ただ、道中全部あせても一時間とかかりませんから、実家までは
そんなに遠い距離ではありませんでした。……ただ、ならば週末
ごとに実家に帰れるのかというと、そうはいきませんでした。
そもそも私のように奉公してる者には世間の人が思い描くよう
な土曜日や日曜日といった日がないのです。
むしろ世間とは逆で、学校に行かせてもらっている子守っ子は、
学校がお休みの土曜の午後や日曜に、ここぞとばかり家の人から
御用を言いつかります。ですから、土曜日や日曜日というのは、
むしろ忙しい曜日だったのです。
もともと奉公人のお休みは薮入りと言って1月と7月の年二回、
それもそれぞれたった一日だけが公休日ですから、ほぼ一年中が
勤務時間でした。
もっとも、私が育った頃になりますと、さすがに363日働き
づめはオーバーで、年に二回、一週間くらいのお休みを取る事が
できました。
その日は若奥様にあつらえて貰った着物を着て、新しい下駄を
履いて帰ります。それと懐には多少まとまったお金が、お小遣い
として入っていました。
しかも、こうした恩恵は何も働いている私だけじゃありません。
私が実家に着くと、すでに若奥様が送った大きな柳行李が開け
られていて、家族全員が戦利品を分配しています。
妹はすでにワンピースを着て独りファッションショーをやって
いましたし、兄は学生服に誇らしげに万年筆が刺さっています。
もちろん母には帯止め、父は大吟醸を茶碗に注いですでに赤い
顔をしていました。
7人の兄弟、父母、そして祖父母にいたるまで、薮入りになる
と、若奥様は私の家族全員分のお土産を用意して送ってくださる
のです。
1日だけの昔とは違い、奉公人が一週間も実家で暮らせば、誰
だって里心がついてしまいます。実家にいる気安さから、お店や
主人の悪口だって飛び出します。そんな時、休暇明け、奉公人の
家族が奉公人を再び安心してお店へ送り出してくれるためには、
お店側も奉公人がお店で大事にされていることを家族にアピール
しなければなりません。
そんなこともあって、若奥様は奉公人に何かと付け届けをして
くださっていましたが、他の商家なら子守っ子にこんな事までは
しません。
年二回お店から送られる家族へのプレゼントは、お小遣い程度
の私のお給金より高価でしたから、家に戻った私の株はその瞬間
だけ上がります。若奥様は良い人だということになります。
そんな、みんなが喜んでいる席で私が、『奉公先をやめたい』
などと切り出して、はたして家族が賛同してくれるでしょうか?
その辺りは若奥様も計算ずくでプレゼント攻勢をしかけている
のでした。
私は不利な状況のなか、夕食の時、両親の前で恐る恐る話しを
してみます。
「今さあ、あたし若奥様の命令で学校の勉強させられてるの。
私の頭が悪いの、若奥様だった知ってるはずなのに、家庭教師の
先生までつけて無理やり『勉強しろ』だもん。こんなのおかしい
よ。……しかも、ついていけないと、お仕置きでお灸まですえる
んだから……あたしさあ、うちに戻って、家の仕事を手伝うよ。
……ね、それでいいでしょう」
私は若奥様から特別な愛情を注がれている事までは話しません
でしたが、私なりに窮状を訴えます。
すると母も私が『お灸』という言葉を使ったので心配になった
のでしょう。隣の部屋に私を呼ぶと、裸にして丹念に灸痕を確認
します。
心棒はさすがに黙っていましたが、お尻のお山も尾てい骨も、
乳頭の周りやお臍、ビーナスの丘まで……相手が母親ですから、
ためらいはありませんでした。
「ね、ヒドイでしょう」
私は母に同意を求めます。
『これがきっかけで家へ帰れるかも…』なんて思ったりもしま
した。
ところが、母の反応は意外なほど冷静だったのです。
「要するに灸痕がついたのはお尻の割れ目とお臍の下だけじゃ
ろう。お前が大騒ぎするからよほど何かされたのかと思ったら…
…このくらいの事なら家にいたってばあちゃんに据えられるから
同じだよ」
「えっ……そんなあ……」
あてが外れた私はがっかりです。
確かに若奥様はお灸がとっても上手で、他の箇所は私が熱さを
感じるとすぐに火をもみ消してしまういわゆる寸止めですから、
灸痕は残っていませんでした。
「それだけじゃないの。あの人、私のお股の中にもすえたんだ
から……」
私は恥ずかしかったのですが、とうとう最後の手段に打って出
ます。
私は、これを見せたら母が角田のお店へ怒鳴り込むんじゃない
かって思って心配していましたが、いざという時は、母だけなら
その場所だって見せるつもりで心の準備をしていたのです。
ところが……
「……ふう~ん、お前、すでに心棒まで入れてもらったんだ。
……それは、やっぱり、奥様が自らなさったのかい?」
母は私を確かめもせず、こう聞いてきます。
私はここぞとばかり若奥様の悪口を言い立てました。
「だから、おかしいでしょう。それだけじゃないのよ。若奥様
は私を裸にして撫でたり擦ったりもするんだから……いいこと、
あの人がおかしいの、ちょっとやそっとの事じゃないわ。あの人、
きっと変態なのよ」
もちろんそれは、母が私を家に戻してくれることを期待しての
ことでした。
「そうかい…………」
母がその時考えていたのもきっとその事だと思ったのです。
『娘の為にどうやって父を説得しようか』って……
ところが、その時母が考えていたのは、まったく別の事でした。
「心棒ってのは、このあたりに昔からの習慣だけど、やるのは
たいてい良家のお嬢様だけ。うちらみたな貧乏人の家じゃ、まず
やらない。女中や子守になんか、お仕置きとしてたって、やられ
たなんて話、聞いたことがないよ。ましてや奥様がご自身で据え
てくださったなんて……お前、よほど若奥様から可愛がられてる
んだね」
「ええええっ……何言ってるのよ。そんなことないよ。だって、
あれはお仕置きなんだよ」
「だからさ、そんなこと、本来、奥様のお仕事じゃないもの。
女中や子守が何かしでかして折檻される時は、古株の女中がやる
ものなんだから。お前だって女なんだから、わかるだろう。女の
あんな処、誰だって触りたいなんて思やしないよ。それをやって
くださってるんだよ。お前の為に…………特別な思いがなきゃ、
ありえないよ」
「だって……」
「しかも、家庭教師までつけて勉強させてもらってるなんて。
お母さん、正直、若奥様の真意はわかないけど、そういう時は、
乗ってやってみて損はないと思うよ。それに、お前の口ぶりだと、
しゃべってる愚痴ほどには、どうしても今の生活が耐えられない
とは聞こえないもの」
「どうしてそんな事わかるのよ!こっちは本当に大変なのよ!」
「何だ?違ってるのかい?」
「えっ!」
「私はあんたを赤ん坊の時から負ぶって世話してるんだ。……
だから、あんたがどれくらい切羽詰ってるかぐらい分かるんだ。
……私はあんたの母親なんだよ!!……違ってるかい!?」
母は最期には語気を強めます。
「…………」
私は言葉を失いました。
というのも、家庭教師を付けられて勉強を始めた頃は、確かに
毎日毎日嫌で嫌で仕方がなかったのですが、少しずつ学校の勉強
が分かってくるようになると、それはそれで楽しみも出てきます。
それを母に見透かされたのがショックでした。
「ここで言えるだけの愚痴を言ったら、お店へお帰り。そして、
若奥様に必死に着いて行ってごらん。それが何よりおまえの為だ
から……」
「えええっ、だって、あそこはお灸が…………」
私は最後の抵抗を試みますが……
「お灸なんて、ここにいたって据えられるよ。お前は、そんな
事とは引き換えにならないくらい大きなチャンスを掴んでるんだ。
頑張ってごらん」
「ええええっ……」
私はすっかりあてが外れてしまってがっかりです。
でも、母の言う『どうしても今の生活が耐えられないという訳
じゃないんだろう』という言葉もまんざら嘘じゃありませんから
仕方がありませんでした。
私の家は元々水呑み百姓と呼ばれる小作の農家で、農地解放で
地主にはなりましたが、暮らし向きは決して楽ではありませんで
した。
楽ではないから私が子守にだされたのです。
そんな私が「帰りたい」なんてわがままを言っても両親が困る
のは分かっていました。だって、私が帰って農作業を手伝っても
それで私が自分の食い扶持を稼ぐことはできないのですから……
母と二人して居間へと戻ってくると、母が家族を前に重い口を
開きます。
それは『父が春先に怪我をして1ヶ月農作業に出られなかった
こと』や『すぐ上の兄が高校へ進学したいという話』でした。
それらはいずれも、『うちの経済事情が厳しいから、おまえは
中学を卒業するまでは今のお店で働いて欲しい』という意味です。
予想されていた展開とはいえ、私にとってはたびたびがっかり
です。
『幼い頃から慣れ親しんだ家で、家族と一緒に暮らしたい』
そんなささやかな幸せでさえ、この時はできませんでした。
でも、そんな私の姿を見て不憫に思ったのでしょう。意外にも、
大吟醸で出来上がっていた父が承知してくれたんです。
「お前がそんなに嫌なら仕方がないじゃないか。そこの主人に
お暇をいただけるよう、わしが手紙を書いてやるから安心しろ」
とまで約束してくれたのでした。
私はそんな父の口約束に一縷の望みを託していました。
ところが、そんなはかない夢も、この間お義母様からお仕置き
をいただいた時についえてしまいます。
父が、私の希望に反して『今後とも娘をよろしくお願いします』
と若奥様宛てに手紙を書いてよこしたのを見せられたからです。
後で知ったのですが、父はすぐ上の兄が高校へ行くための資金
を角田の家から借りたみたいでした。
実家での約束は父が酔っていましたから仕方がないとも言える
のですが、『裏切られた』という思いは残ります。
それはお義母様から据えられた心棒よりもずっと長い時間私の
心を苦しめたのでした。
*************************
二学期が始まると、とたんに三田村先生の予想が的中します。
夏休み明けの確認テスト。これは夏休み中も真面目に勉強して
いたかを確認するテストです。これで私の国語はクラストップの
成績でした。
普段、通知表が3だった子がいきなりクラスの最高点を出した
わけですから、当然、周囲は驚きます。
特に担任の先生は私がカンニングしたんじゃないかって疑った
くらいでした。
「あら、何だか気落ちしているみたいね。お勉強大変かしら?」
お義母様に言われたのでその事を話すと……
「大丈夫よ、あなたの力は本物ですもの。心配する事はないわ。
何度か試験を受ければそんな疑いすぐに晴れることじゃないの。
女は何かと目移りするけど、あれもこれもって追いかける人より、
与えられた場所で努力した人の方が幸せになるのよ。……あなた
に与えられたのは、この場所。そして、この私」
「…………」
「信じられる?」
「…………はい」
こう答えるしかありませんでした。
「だったら、付いてらっしゃい。幸せにしてあげるから……」
「はい」
お義母様の強い言葉につられるように、ほんの少し声が大きく
なります。
「その代わり、お仕置きも沢山よ。わかってる?」
「はい」
私はまた一歩、お義母様との中が近くなったみたいでした。
*************************
さて、こうやってお義母様との関係ばかり述べていると、さも、
私が角田家の一員になったかのようですが、そうではありません。
お義母様との関係は、あくまでお義母様と私が二人だけでいる
場合だけのことで、普段の私は相変わらず子守っ子のままでした。
私は相変わらずお義母様の子どもたち三人の面倒をみなければ
なりません。着替え、入浴、食事のお給仕……はては下の男の子
二人(双子)のトイレの世話だって私の仕事でした。
男の子は双子ですから共に4歳。お義母様がちゃんと仕付けて
らっしゃいますから身の回りのことは一通り何でもできるのです
が、私がそばにいると昔の習性で何でも甘えたがります。
着替えや入浴は立ってるだけですし食事は欲しいものを指差す
だけ。仕方なく私がスプーンに乗せて口元まで持っていってやる
と、喜んで椅子の上で跳ね回ります。まだまだ赤ちゃん気分です
からトイレでウンチをする時なども、赤ちゃんがするように私が
だき抱えてやらなければなりませんでした。
怖いお義母様が見ているとちゃんとしていますが……いない処
では二人とも私に甘え放題なんです。
お義母様は、そんな二人を見て「自分でやりなさい!」と叱り
つけますが、効果があるのはその時だけ。放っておくと何もしま
せんから、結局は私がやる事になります。
それは、子守っ子の悲しい宿命みたいなものでした。
その点、美咲ちゃんはすでに10歳ですし、何より女の子です
から、子守の世話は受けたくないとばかりに自分のことは何でも
自分でしたがります。
ま、それはいいのですが、彼女、大変なお転婆娘でした。
幼稚園の頃から札付きで、女の子よりむしろ男の子の友だちの
方が多く、男の子と一緒にチャンバラごっこやターザンごっこを
やって遊んでいました。
当然、喧嘩相手も大半が男の子ですし、顔はいつも日焼けして
真っ黒、年がら年中生傷が絶えませんでした。
ご主人(お父さん)がよく冗談めかしに……
「あいつ、そのうちオチンチンが生えるじゃないか」
なんて言っていたほどなんです。
今の言葉でなら『体育会系』ということになるのでしょうか。
学校の成績はビリから数えた方が早いですし、ピアノとか日舞と
いった習い事も続けてはいましたが、サボってばかりですから、
いっこうに上達しません。
お義母様にしてみると、それが頭痛の種だったみたいです。
そんな事情から、美咲ちゃんはお母さんからよくお小言をいた
だいていました。
いえ、お小言だけならまだしも、キツイ折檻(お仕置き)だって
日常茶飯事だったんです。
つまり美咲ちゃんとお義母様って似たもの親子だったんです。
そんなある日のこと、その美咲ちゃんに勉強を教えるように、
つまり家庭教師になるようにと、お義母様が私に命じるのです。
それは今までの経緯から、ある程度予想できたことなのですが、
いかんせん私にはハードルが高すぎます。
「無理です」
私ははっきりお断りしたのですが、お義母様は……
「いいから、やって……あなたへのフォローは何でもしてあげ
るから……もちろん、言うこと事きかないようならあなたの判断
でお仕置きしたってかまわないのよ」
「…………」
お義母様はそうおっしゃいますけど、私はまだ14歳、しかも
使用人の立場です。主人の娘さんをお仕置きするなんて、そんな
大それたことできるはずがありません。
でも、お義母様は聞き入れませんでした。
そして、敬子ちゃんを前にこう宣言します。
「あなただって、いつまでも山猿のままってわけにはいかない
でしょう。だから今度、敬子さんにあなたのお勉強をみてもらう
ことにしたの」
当然、美咲ちゃんは大むくれです。
だって、私は年長者といっても子守っ子ですからお嬢様である
美咲ちゃんは私の事を自分の下にいる人間だと思っていました。
それがいきなり自分の先生になるわけですから面白かろうはずが
ありません。
でも……
「いいわね」
お義母様に強く言われると……
「はあい」
あくびしたようにも見えますが、美咲ちゃんとしてはとにかく
こう答えるしかありませんでした。
しかも……
「敬子さんには、もし、あなたがサボるようならお仕置きして
かまわないって言ってあるから、そのつもりでいなさいね」
「えっ!?」
美咲ちゃんの顔色が変わります。
おまけに……
「それでは、ちゃんと正座して、先生によろしくお願いします
をしましょう」
最後はお義母様の指示で、私を前に両手を畳に着けてのご挨拶。
「先生、よろしくお願いします」
私の前で笑顔なんかありませんけど、笑顔のお母さんに押し切
られた格好でした。美咲ちゃんはこの時まだ10歳。お母さんに
言われたら嫌でも仕方がありませんでした。
そこで、美咲ちゃんの家庭教師を始めるには始めたんですが…
案の定、元は子守っ子だった私のレッスンなんかまともに受け
てくれませんでした。美咲ちゃんはたちまち膨れっ面になって、
ストライキです。
でも、これもまたお義母様は織り込み済みのようでした。
昭和30時代、このくらいの年齢の子がお母さんの言うことを
きかない時はどうなるか……
「いやあ~~お灸だめ~~ごめんなさい、ごめんなさい、……
勉強します、勉強します、だめえ~~お灸しないでしないで~」
突然、家中にもの凄い大音響が木霊します。
もう少し歳がいけば、女の子ですからね、自分の悲鳴がご近所
にも届いて、恥ずかしいという気持も起こるんでしょうが……
「いやあ~~人殺し~~鬼~~やめろ~~~死んじゃう~~」
いつも元気一杯の美咲ちゃんは、仏間に引きずられて行く時も
元気一杯でした。
「敬子ちゃん、あなたも手伝って」
お義母様はもの凄い形相で私を睨みつけると一緒に着いて来る
ように指示します。
まるで、私も美咲ちゃんの共犯みたいでした。
仏間に引っ立てられた美咲ちゃんは、さっそく畳の上に仰向け
に寝かされ、ショーツを剥ぎ取られると両足を高くされます。
「この子、押さえてて」
お義母様がこう言って、美咲ちゃんの両足を私に預けるまで、
あっという間でした。
「いや、お灸いや、ごめんなさい、もうしませんから、やめて」
美咲ちゃんは仏壇にお灸を取りに行ったお母さんに向って必死
に命乞いしますが、身体をよじろうとすると……
「お黙り!!」
ドスのきいた声で一喝されてしまいます。
すると、美咲ちゃんは本当に黙ってしまいました。
私だって経験があるから分かるのですが、美咲ちゃんは本当に
怖かったんだと思います。お母さんが怖くて怖くて、声が出ない
みたいでした。
こんな時、今のお母さんなら、まずお仕置きをするにあたって
事情を説明してくれるみたいですが、私の育った時代、私の育っ
た町ではこの位の子供をお仕置きするにあたっては親が何も説明
しない方がむしろ一般的でした。
おいた(罪)とお仕置き(罰)は、できるだけ時間を短くが基本
だったのです。
「お母さんはこんなに怒ってるのよ」
という怒りの感情を子供に伝えることが大事だったんです。
『もう、お仕置きは逃れられない。もし、これ以上お母さんを
怒らせたらどうなるか……』
その先を経験済みの美咲ちゃんは諦めるという道を選択したの
でした。
「やっと、おとなしくなったわね。……どうなの?少しは反省
した?」
お母さんは美咲ちゃんのお股から顔を覗かせて、しょげ返って
いる美咲ちゃんの顔を見ます。
「急におとなしくなったから、お漏らししたのかと思ったけど
……それはないみたいね」
お義母様はそうは言いつつも美咲ちゃんのお股をタオルで綺麗
に拭き取ります。
親子ですから、そのあたり何のてらいもありませんでした。
そして、おそらくは私が据えてもらった艾よりさらに大きな艾
をまだ小さな大陰唇の近くに乗せます。
「ほら、火をつけるよ。歯を喰いしばって!!」
お母さんが言ったのはそれだけ。
私より小さな身体の美咲ちゃんが私より大きな艾の味を噛み締
めます。
それは、私にとっても子宮がぐっとしぼむほどの衝撃でした。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
声にならない声が私にも伝わります。
それは両足を押さえている私にとっても辛い体験でした。
ただ、美咲ちゃんは仏間へ入って来た時とはうって変わって、
静かにお灸のお仕置きを受けています。
「よし、あなたも少しはお姉ちゃんらしくなったみたいね」
お母さんは満足そうに笑うと、美咲ちゃんの両足を下ろして、
ショーツを穿かせ、正座したご自分の膝に乗せます。
私が育った世界では『まずは、とりあえずビール』じゃなくて
『まずは、とりあえずお仕置き』
そして、ここからがお小言でした。
「どうして、学校で敬子先生のありもしない悪口なんか言うの。
敬子先生はあなたよりお姉さんで、成績も優秀。あなたに不足の
ない先生なのよ」
「だって、子守じゃない」
「そうよ、子守よ。だから、あなたたちお世話になったんじゃ
ない。それのどこが問題なの?学校の成績が優秀だから、今は、
あなたたちのお勉強もみてもらってる……それだけじゃないの。
それのどこが気に入らないの?」
「それは……」
「敬子ちゃんはね、子守をしながらお勉強してこんなに立派に
なったの。立派になったからあなたのお勉強をお願いしたのよ。
それに引きかえあなたはどうなの?何一つお家のお仕事をしない
ばかりか、何をやらしてもサボることばかり考えてるじゃない。…
…ん?敬子ちゃんとはえらい違いよね」
「…………」
美咲ちゃんは泣いているのでしょうか、お母さんの胸に顔を押
し当てます。
「あなたは何もしなくてもずっと私の娘でいられると思ってる
のかもしれないけど……私は傲慢な子や怠け者は嫌いなの。……
いいのよ、あなたなんかここにいなくても……跡取りは、すでに
二人もいるんだし……」
「えっ?」
「そう言えば、叔父さんがあなたを養女に欲しいっておっしゃ
ってたことがあったわ。あなた、そっちで暮らした方がよくない?
……うちは女の子が欲しかったら、敬子ちゃんを養女にするから
……」
「…………」
この時、美咲ちゃんの顔が真っ青になったのがわかりました。
それはあり得ないと思っても、お母さんと離れて暮らすなんて、
子どもは絶対に考えたくありません。ですから、お尻叩きより、
お浣腸より、お灸よりこれが一番キツイお仕置きだったのでした。
「どうやら、あなたはわかってないみたいね。敬子お姉ちゃま
からあなたが習わなければならないのはお勉強だけじゃないの。
見習わなければならないことがたくさんあるの。それをよ~~く
覚えておきなさい」
「はい」
美咲ちゃんは少し甘えた声を出しますが、お母さんのお仕置き
がこれで終わったわけではありませんでした。
「そう、良いご返事ね。それじゃあ、今日学んだことをお灸で
復習しましょう」
「はい」
美咲ちゃんの顔には明らかに不満な様子が窺えますが、養女に
出すとまで言われたら従うしかありません。
美咲ちゃんにとってはこれからが本番。これからがお仕置きの
メインイベントでした。
「敬子ちゃん、この子慣れてるからたぶん大丈夫だと思うけど、
一応、美咲の身体を押さえててね」
私はお義母様に頼まれましたが……
「そんなことしなくていい、大丈夫だよ。あんたは何もしない
で……」
美咲ちゃんが自分で服を脱ぎ捨てながら不満そうに言います。
当時、角田の家の子供たちがお灸のお仕置きを受ける時に許され
るのはパンツ一つ。女の子の美咲ちゃんもショーツ一枚でした。
美咲ちゃんの気持は分かります。他人の私が見ている前で裸に
なるのは嫌でしょうし、身体を押さえられるのはもっと嫌なんで
しょうけど……
「生意気言うんじゃありません!!あんたのそういう処がいけ
ないの!!」
お母さんに一喝されてしまいました。
確かに私が押さえてなくても美咲ちゃんは耐えられるかもしれ
ません。けれど、これはお仕置きのためのお灸ですから、誰かに
取り抑えられながらお灸を受けさせるという屈辱感みたいなもの
がお仕置きをする側にとっては大事な要素となるのでした。
腹ばいになった美咲ちゃんは、まずは首筋の少し下と腰の辺り
に背骨を挟んで二つずつ、仙骨の辺りに一つ、すでにある五箇所
の灸痕に新たな艾が乗せられます。
そうしておいて……
「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
「はい、先生の悪口は言いません」
美咲ちゃんがお母さんにご返事すると、首筋の下にある艾にお
線香の火が移されました。
「ひぃ~~~」
「しっかりお勉強しますね」
「はい、ちゃんと勉強します」
今度も同じ。美咲ちゃんがお母さんの期待するご返事が出来て
から、腰の辺りに乗せられた艾に火が移されるのでした。
「うっ~~~~」
「次にこんなことしたら、このお尻の穴に焼き鏝ですからね。
分かってますか?」
お母さんは、あえて美咲ちゃんの菊座に指を突き立てます。
こんなこと、もちろん本当の親子だからできることでした。
「はい、そんなことにならないように頑張ります」
最後は仙骨のあたりに……
「あっ、ああああああつ~~~」
思わず顔が歪み、引きつったような声が出ます。
慣れていても、やはり、ここが一番熱いようでした。
「さあ、次は仰向けよ」
仰向けにされた美咲ちゃんは、最後の砦である白いショーツも
剥ぎ取られて、その下、お臍の下に集中砲火を浴びます。
もちろんここでも、一火ごとにお母さんが質問を繰り返します
から美咲ちゃんはそれに丁寧に答えなければなりませんでした。
「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
「はい、先生の悪口は言いません」
お母さんはその答えを聞いてからお線香の火を艾に近づけます。
でも、もし美咲ちゃんがちょっとでもふて腐れた顔を見せたら
……
「あら、そう、まだ反省が足りないみたいね」
こうお母さんに宣告されて、やり直し。
また、熱いお灸を最初から我慢しなければなりませんでした。
もちろん、それは美咲ちゃんも十分に承知してはいるのですが、
いかんせんまだ幼い子供のことで、そういつまでもお芝居(?)は
続きません。
そこで……
「もう一度、最初からやり直します」
なんて言われたら、もう手遅れでした。
「いやあ~~~だめ~~~ごめんなさい、もうしません、もう
しませんぁぁぁ、熱い、いやあ~~もうしないで~~いや、いや、
いや、だめ、だめ、だめ、死んじゃう、死んじゃう」
お灸は二度目三度目は最初の時よりさらに熱いですから、美咲
ちゃんの顔も最初の一火から歪みます。
「おかあちゃま、何でも言うことききます、何でも言うことき
きますからもうしないで……」
美咲ちゃんはたまりかねて甘えた声を出しますが、お母さんは
決して許そうとはしませんでした。
むしろ……
「ほら、敬子ちゃん、もっとしっかり押さえてて、ここが肝心
なところなんだから……」
美咲ちゃんに向ったお義母様の怒りが、私の方へも跳ね返って
来ます。
家庭内のお仕置きって、親も子も体裁をまったく気にしません
から、そのぶん過激でハレンチ。それは戦場というか、修羅場で
した。
お義母様は艾を小さくして、何度も何度も据えます。
そして美咲ちゃんが泣き疲れて懺悔する声さえ出なくなるまで
それは続いたのでした。
一区切りがつくと、お義母様は美咲ちゃんを正座した膝の上に
抱き上げます。
そして、まるで幼子をあやすように抱きしめてから再びお小言
するのがお義母様のやり方でした。
「あなたは自分が角田家の娘だからここで働いている人は自分
より下の人間だぐらいに思ってるみたいだけど、それは違うのよ。
そもそも、今のあなたに何が出来るの?」
「…………」
「力仕事はもちろん、お裁縫もお料理も何もできないじゃない。
今のあなたは、私とお父様に食べさせてもらってるだけでしょう。
……違うかしら?」
「…………」
「そんなあなたが、ここで働いてる人たちを足蹴にするような
ことを言っていいはずがないわ。敬子ちゃんはたしかに子守よ。
でも、あなたなんかよりはるかに偉いの。誤解したらいけないわ。
そもそも、あの人たちを雇っているのは、お父様。そして、私。
あなたじゃないの。……いいこと、これだけは覚えておきなさい。
今のあなたは、この家ではまだ何の役にもたたないお人形でしか
ないの」
「……はい」
美咲ちゃんの口から小さな小さな声がやっとでました。
その美咲ちゃんにお母さんは追い討ちを掛けます。
「お人形は誰かにあげることができるわ。幸い、家には跡取り
もいることだし、あなたはもういらないの。叔父さんが子どもが
欲しいそうだから、あなた、そこで養女になった方がよくないか
しら?」
「いや、お母さんのところがいい」
今度はもっとはっきりした声がでます。
「そう、だったら仕方がないわね。ここにおいてあげるけど、
その代わり、敬子お姉ちゃんとしっかり勉強して頂戴。いいわね」
「……はい」
また声が小さくなりました。
「もう一度言います。敬子お姉ちゃんは山猿のあなたなんかに
比べたら、はるかに優秀なの。十分に家庭教師が務まるわ。もし、
今度お姉ちゃまを困らしたら、その時はお尻の穴に焼き鏝。……
いいわね」
「いや、いや……美咲どこへも行かないから……」
お母さんの厳命に美咲ちゃんの顔が震えます。そして、震えた
顔は、やがて震えたままお母さんの胸の中に収まるのでした。
****************************
4/4 僕のお嬢様
4/4 僕のお嬢様
僕のささやかな人生経験ですべてを断定的に決め付けてはいけ
ないとは思うんだけど、僕の育った時代、僕の周りにいたお嬢様
なる人物はとても腰が低かった。
誰と話しても丁寧な言葉で、僕なんか人間ができていないから
すぐに相手を見下したような態度になってしまうけど、どちらの
お嬢様もそれはまったくなかった。
家に遊びに行くと、そこの使用人さんにもちゃんと『誰々さん』
とさん付けで呼ぶし、何かものを頼む時だって『お願いします』
という言葉づかいだった。
よくマンガなんかで、お嬢様が家の使用人を呼び捨てにしたり、
あごで大人の人を使ったり、タバコなんかくわえてたりするのを
見ると、この人いったいどこのお嬢様だろうと思ったりしたもの
だ。
むしろ事実は逆で、格式のある家であればあるほど親は世間の
評判を恐れて娘たちを厳しく躾けており、くれぐれも後ろ指など
指されないよう最大限の注意をはらって教育していた。
もちろん、これは気品や知性、プライドといった事とは別で、
お嬢様というのは幼い頃から立ち居振る舞いを厳しく躾けられて
いたから、そこに立っているだけで、庶民の子には醸し出せない
『オーラ』のようなものを持っていたのだ。
だから、庶民出の僕には……
『このお嬢様って、いったいどんな教育を受けてるんだろう』
という素朴な疑問がわくし、そこから、よからぬ妄想だって生ま
れてくるのである。
ところが、最近は……
この『お嬢様』なる人物がとんと見当たらなくなってしまった。
もちろん、世の中にお金持ちは沢山いるし、その娘だって沢山
いるんだけど、この人たちは僕が昔出合ったお嬢様ではないよう
な気がする。
良きにつけ、悪しきにつけ国民みんなが同じ教育を受けるよう
になったということだろうか。
昔のようなお嬢様なんて必要ないということなんだろうか。
『お仕置き』が虐待と同意語になってしまったように『お嬢様』
もその意味が変質して古語になってしまうのかもしれない。
寂しい限りだ。
**********************
僕のささやかな人生経験ですべてを断定的に決め付けてはいけ
ないとは思うんだけど、僕の育った時代、僕の周りにいたお嬢様
なる人物はとても腰が低かった。
誰と話しても丁寧な言葉で、僕なんか人間ができていないから
すぐに相手を見下したような態度になってしまうけど、どちらの
お嬢様もそれはまったくなかった。
家に遊びに行くと、そこの使用人さんにもちゃんと『誰々さん』
とさん付けで呼ぶし、何かものを頼む時だって『お願いします』
という言葉づかいだった。
よくマンガなんかで、お嬢様が家の使用人を呼び捨てにしたり、
あごで大人の人を使ったり、タバコなんかくわえてたりするのを
見ると、この人いったいどこのお嬢様だろうと思ったりしたもの
だ。
むしろ事実は逆で、格式のある家であればあるほど親は世間の
評判を恐れて娘たちを厳しく躾けており、くれぐれも後ろ指など
指されないよう最大限の注意をはらって教育していた。
もちろん、これは気品や知性、プライドといった事とは別で、
お嬢様というのは幼い頃から立ち居振る舞いを厳しく躾けられて
いたから、そこに立っているだけで、庶民の子には醸し出せない
『オーラ』のようなものを持っていたのだ。
だから、庶民出の僕には……
『このお嬢様って、いったいどんな教育を受けてるんだろう』
という素朴な疑問がわくし、そこから、よからぬ妄想だって生ま
れてくるのである。
ところが、最近は……
この『お嬢様』なる人物がとんと見当たらなくなってしまった。
もちろん、世の中にお金持ちは沢山いるし、その娘だって沢山
いるんだけど、この人たちは僕が昔出合ったお嬢様ではないよう
な気がする。
良きにつけ、悪しきにつけ国民みんなが同じ教育を受けるよう
になったということだろうか。
昔のようなお嬢様なんて必要ないということなんだろうか。
『お仕置き』が虐待と同意語になってしまったように『お嬢様』
もその意味が変質して古語になってしまうのかもしれない。
寂しい限りだ。
**********************
3/26 子守っ子、敬子の性春 <2>
3/26 子守っ子、敬子の性春 <2>
*)お灸の記述あまりありません。ごめんなさい。
若奥様に沢山のお灸を据えられてしまったお仕置きから3月後、
私は中学二年になり、次男の明雄ちゃんが幼稚園に入園しました。
ということは本来なら私はここでお役ご免になるはずでした。
子守というのは、女中さんたちと違って、昼間、一日中仕事を
していたわけではありません。たいていが幼い娘で、自分も主人
の家から学校に通わせもらい、その空き時間を利用して赤ん坊の
面倒をみるのが仕事だったのです。
つまりは住み込みの新聞配達と同じようなアルバイト。
でも、その子が幼稚園に上り、大人たちの手も掛からなくなる
と、やがて子守としての仕事がなくなり、普通はお暇が出て親元
に帰されることになります。
つまり、首になるわけです。
ところが、そんな子守の身分でありながら私は角田の家に残さ
れていました。
若奥様が小間使いとして必要だからとお傍に置いてくださった
のでした。
この変化。厳密に言うと雇い主が大奥様から若奥様に代わった
ことにはなるのですが、私の生活そのものは今までと何ら変わり
ありませんでした。
依然として、私は若奥様の子供たち3人の面倒をみるのが仕事
でしたから、子供たちの着替えを手伝ったり、お風呂に入れたり、
食事をさせたり、玩具を片付けたりといった事が私の仕事でした
し、角田の家の中で一番身分が低いのもそのままでした。
ただ、変わったこともありました。
それは『学校の勉強』
もともと、私と若奥様は主人と使用人の関係。つまり、他人の
関係ですから、主人である若奥様は私を学校に通わせていれば、
それ以上の事は若奥様に責任なんてありません。私の学校の成績
がどんなであってもよいはずでした。
実際のところ、私の通知表には2と3しかなかったのです。
ところが、私が若奥様の小間使いとなさった頃から、若奥様は
私の勉強に関心をはらうようになります。
つまり、今までのような成績ではだめだと言い出すのでした。
おかしいでしょう。
私は、若奥様のおそばにお仕えするようになったといっても、
お子さんたちとは違うんです。角田家に雇われた使用人で、それ
も子守にすぎないのに、「勉強しろ」だなんて……
でも、これは若奥様の厳命でした。
そして、そのために家庭教師まで雇い入れたのです。
若奥様は、私が寝起きする部屋の二階、本来は古着などが仕舞
ってある古い蔵の一室を綺麗に取り片付けて勉強部屋にすると、
そこに家庭教師の先生(三田村先生)を招き入れ、私に勉強させ
るのでした。
期間は半年くらいでしたが、その間は学校から帰ると寝るまで
勉強、また勉強の日々です。
それまで、本格的に家で勉強なんてしたことのなかった私には
1時間だって机に向うのは苦痛です。毎日、家庭教師と2時間も
勉強するなんて最初は信じられませんでした。
しかも当時は勉強方法というのは今みたいに合理的じゃありま
せんから家庭教師だってスパルタです。ちょっとでも気の抜けた
態度をみせると授業の途中でも机にしがみついて先生が繰り出す
竹の物差しをお尻でしっかり受け止めなければなりませんでした。
問題はそれだけじゃありません。
時間の許す限り若奥様が私の様子を見に蔵へいらっしゃいます
から、こちらも気が抜けません。
もし、はかどりが悪いようなら、その晩は寝る前に必ずお灸の
お仕置きが待っています。
お尻の山に、ビーナスの丘に、尾てい骨……
若奥様のお灸は容赦がありませんでした。
いえ、いえ、まだあります。
日曜日は三田村先生がお休みだからなんでしょうけど、土曜の
夜は『反省会』と称して若奥様からその週の成果に応じて特別な
お仕置きが与えられることになっていました。
この時は、普段据えられているお尻のお山やビーナスの丘だけ
じゃありません。乳首の周りにも、お臍の中にも、そして若奥様
が『心棒』と呼ぶお股の中にも……
出来の悪い子は涙なしには日曜日を迎えられなかったのです。
『何で、子守の私が勉強しなきゃならないのよ!!おかしいで
しょう!!!』
『あ~あ、ここから逃げたい。こんな処から逃げ出したいなあ』
『そうだ、お父さん、お母さんの処へ帰ろう。事情を話せば、
きっと許してくれるよ』
学校から帰る時はいつもそう思いながら小石を蹴っていました。
でも、結局のところ一度も実家に戻った事はありませんでした。
これはとても不思議なことなんですが、歩いているうち、お股
に据えられた心棒が私の足を実家ではなく角田の家の方へと向け
てしまうのです。
実家へ戻ろうとした瞬間、お股が擦れて、『それはいけない事
なんだ』と感じるのです。
どういう事かというと……
お股に据えられた心棒は当然そこだけ火傷を負っていますから
歩くたびに微妙に擦れて感じるのです。痛いとか、痒いとかじゃ
ありません。普段は歩いても走ってもまったく気にならない程度
の感覚なのですが、『実家に帰ろう』と思い立った瞬間だけは、
火傷の痕が擦れると、『あ、ここにお灸!!』って感じてしまう
のでした。
『あっ、ここに据えられたんだ!』って思い出す一瞬の小さな
刺激が、私を実家ではなく、苦難の待つ角田の家へと向わせるの
でした。
****************************
あれは勉強を始めて四ヶ月目のとある土曜日の午後でした。
その週は何だか気乗りがしなくて、月曜日早々、若奥様の見て
いる前で三田村先生に居眠りを注意され鞭のお仕置きをもらって
しまいます。
その後も、学校の授業で欠伸は出るわ、返されたテストの成績
は悪いわ、今年10才になる長女の美咲ちゃんとは些細なことで
喧嘩をするわで、とにかく散々な一週間でした。
ですから土曜日の午後は三田村先生が帰った後に若奥様からの
お仕置きが確実だったんです。
『今日こそは実家に帰ろう』
朝、角田の家を出る時は本心からそう思っていたのに、帰り道
は、やっぱり、心棒が私の足を若奥様の方へと向けてしまいます。
それは理屈では説明できない不思議な霊力でした。
土曜の午後は学校から帰ると何時も2時から6時頃まで三田村
先生と一緒に勉強して、夕食のあとは、再び学校の宿題と三田村
先生からの課題をやらなければなりません。
その時の私は子守ではありませんでした。まるで受験生の生活
だったのです。
そんな私のもとへ、若奥様がハツさんを伴って階段を上がって
やってきます。
その足音がどんなに怖かったか。時々猫が悪戯して階段を駆け
上がりますが、そんな猫の足音だけでも私の心臓は引きちぎられ
そうだったのです。
もう何をやるかは、わかっていましたが、分かっていてなお、
正座した膝の震えが止まりませんでした。
「あら、今日のお勉強は終わったのかしら?」
「はい」
「そう、よかったわ。今日は土曜日だし、今週の反省会をしま
しょうか」
「はい……でも、あのう……一つうかがってもいいですか」
私は勇気を振り絞って声を出します。
「どうしたの?」
「どうして、私は勉強しなきゃいけないんですか?」
「どうしてって、勉強して悪いことなんて一つもないでしょう」
「でも、私は子守ですし……そんなに立派な教養は……」
「いらないって言うの?……随分もったいないこと言うのね。
……どうしたの?今日は?……勉強が嫌になったの?」
「そういうわけじゃあ……」
「じゃあ続けてちょうだい。三田村先生おっしゃってたわよ。
あなたのこと。『存外、頭のいい子だ』『あの子は掘り出し物だ』
って……『この分なら、もう一、二ヶ月もするとクラスの中でも
トップグループと肩を並べるだろう』って……もし、そうなって
くれたら私としても助かるわ」
「どうしてですか?」
「だって、これからあなたには、家の子たちの家庭教師もして
もらおうと思ってるからよ」
「えっ!!!!」
それはまさに青天の霹靂でした。
「できませんよ。だって、私は子守なんですから……」
「どうして?どうしてできないの。……できますよ。だって、
あなた子守なんでしょう。だったら、子供たちにお勉強を教える
のも子守の大事な仕事じゃなくて……」
「そんなあ~~~だって、そういうのはお父様とかお母様とか
家庭教師の先生とか……もっと、偉い人が……」
「そうじゃないわ、それとは別なの……あなたにはこれからも
色んな意味で『お姉さん』として家の子たちの面倒をみてほしい
のよ」
「お姉さん?……子守のわたしが?」
「そうよ、あなたに私の子供たちの模範になってもらいたいの。
……だって、あなたが一番の年長者でしょう」
「えっ、?!……それは……そうですけど……」
「あなたには、この間のことで、身体のあちこちにお灸をすえ
ちゃったでしょう……そのことでは大奥様も、ちゃんと責任とる
ようにっておっしゃられてたわ。だから、私、責任をとることに
したのよ。私が嫌い?」
「そんなこと……あれはもう過ぎたことですから」
「あらあら、あなた随分潔いのね。……でも、あのお灸の痕は
生涯消えないわよ」
「えっ!……」
私はその瞬間までそんな事も知りませんでした。
「それで……『あなたを成人する迄ここでお預かりしたい』と
申し出たら……今日、高井のお父様から正式に『お願いします』
というご返事を頂いたわ……これよ」
若奥様はその手紙を私の前に広げられます。
「……!!!……」
私は目が丸くなります。それは見覚えのある父の筆跡。正直、
全身が震えました。
『中学生にもなった子どもの意向を無視して、大人たちだけで、
そんな人生の大事を勝手に決めていいのでしょうか』
私は思いました。
でも、それがこの時代の常識であり現実でした。だって中学生
というは大人じゃありません。子供なんですから、どう育てるか
は親の自由だったのです。
まだ上の空でいる私の耳元で若奥様が言葉を続けます。
「ただ、あなたの場合……うちの子たちより年長には違いない
んだけど……今のままの成績じゃあ、ちょっと頼りないのよね。
だから、こうやってお勉強してもらってるの。……わかった?」
「………………」
あまりに無茶な話で、私は声がでませんでした。
ただ、この時になって初めて、私がなぜこの家に残されたのか、
なぜ自分がこうやって勉強させられているのかを知ったのでした。
でも、私に対する補償というだけなら他にも方法はあるはずで、
若奥様がなぜそんな手間とお金の掛かる道を選択したのかまでは
教えてくださいませんでした。
「さてと……それじゃあ、今週の反省会といきましましょうか
……今週はどんなことがあったかしら……」
若奥様が居住まいをただし、私の様子を細かく記した閻魔帳と
呼ばれるノートのページを捲り始めます。
これからが今夜の本題なのですが……
「……………………」
私は今聞いたお話のせいで若奥様が取上げる数々の罪状が耳に
入りませんでした。
だって、父にさえ見捨てられた気分になってる私にすれば……
『今夜はたっぷり絞られる』
それだけ分かっていれば十分だったのです。
実際、その夜、若奥様からいただくお仕置きは、明雄ちゃんと
映画館ではぐれてしまったあの日のお仕置きより、さらに厳しい
ものだったのです。
***************************
「どうしたの?今週は、随分と調子が悪かったみたいだけど、
何か心配事でもあったのかしら?」
「別にそういうわけじゃ…」
「ならいいんだけど。何かあるのなら、すぐ私に言って頂戴ね。
あなたは高井のお父様からお預かりしてる大事な娘さんですもの。
お返しするまでは、私がお父様お母様の代わりなの。何でも相談
して頂戴ね」
若奥様の言葉は、『それだけあなたの事を大事に思ってますよ』
という当時の挨拶言葉ですから本気にする人はいません。むしろ、
『お母様の代理として愛の鞭もありますよ』という脅し文句でも
あったのです。
「……えっと」
「ん?何かあるの?」
「いえ……水曜日の夕方……美咲ちゃんと……」
「あ~喧嘩になっちゃったあの事ね……でも、あれはあなたが
心配しなくてもいい事だわ。だって、あれはあの子が悪いんです
もの。あの子、最近生意気が過ぎるものだから……あの日新しく
心棒を据え直したの」
「えっ、また」
私は思わず声が出てしまいました。
私は美咲ちゃんが以前心棒を据えられたところを見てしまいま
したから……
「だから少々むくれてたのよ。そのうち収まるわ。気にしない
で……『今度そんな顔したら焼きごてですからね』って脅したら
さすがにおとなしくなったわ」
私は若奥様の『焼きごて』という言葉に反応してしまいます。
思わず両手で自分の二の腕を擦って寒そうな素振りをしますから
それが気になったのでしょう。
「どうしたの、怖い顔して?……ああ、焼きごてのこと?……
驚いたのね?……滅多にやらないけど、でも、こういう事もある
んだってのを教えておかないと子供はすぐにつけあがるから……
お灸が効かなくなったら親が次に使う手なのよ」
「…………」
さらに、私の顔が青くなっているのを一瞥してから……
「別に、あなたに試すつもりはないけど、見てみます?」
若奥様は私を目の前にしてイタズラっぽく笑うと、ハツさんが
持ち込んだお仕置き道具の中から目的のものを探し出します。
それは取っ手の付いた金属の棒のような物が二本でした。
一本にはループ状に編みこまれた弾力性のある細い針金が20
センチくらい取っ手の先端から伸びていますし……もう一本は、
お仏壇にあがっている蝋燭ほどの太さのものが15センチくらい
やはり取っ手に取り付けてあります。
いずれも見た目はハンダ鏝のような形をしていました。
「これを十分に焼いておいて、お尻の穴とおしっこの穴に入れ
るの。最初はガイドカバーが付いているから平気なんだけど……
ガイドを引き抜いた瞬間、ギャーってことになるわけ」
想像するだけで鳥肌、目が眩んで気絶しそうでした。
それでも、女の子ってのは仕様のないもので好奇心だけは沸き
ます。
「それって、やっぱり火傷させるんですよね?」
恐る恐る尋ねてみると……
「そうよ。理屈は心棒と同じ。火傷が完全に治るまではそこが
擦れて微妙に感じるから、罰を受けたことを簡単には忘れさせて
くれないの」
「じゃあ、ウンチのたびに……」
私は恥ずかしくなって途中でやめてしまいましたが、若奥様は
あっけらかんとして……
「そうよ。最初の一週間は毎日お医者様に自分の恥ずかしい処
を見せてお薬を塗ってもらわなきゃならないし、完全に治るまで
はウンチやオシッコをするたびに思い出すことになるわ。特に、
最初の数日はトイレに行くたび泣くほど痛いわよ」
若奥様は悪魔チックに笑います。
「私も一度だけ親にやられたけど、そのあまりの恐怖に暫くは
怖くて親のそばにも寄りつかなかったくらいだもの。……お互い
がよほど強い信頼関係で結ばれていないとやっちゃいけないこと
だわね」
「…………」
私はそんな話、どんな顔をして聞いていたんでしょうか。
ひょっとしたら、よだれを垂らしていたかもしれません。
女の子って自分に関係のない不幸な話が大好きな人種なんです
から。
「ただ良いこともあるのよ。場所が場所だけに傷が目立たない
でしょう。らそれだけは助かったわ」
「…………」
私はあまりのことに二の句がつげません。
と同時に、若奥様はどうしてこんな悲惨な思い出を明るく話せ
るんだろうと、自分の事は棚に上げて思うのでした。
すると、そんな私を見て、若奥様はこうも付け加えるのです。
「でもね、不思議なもので、私がこれによって父や母をずっと
拒否し続けたかと言うと、それがそうでもないの。3日後には、
もう以前と変わらない生活に戻ってたわ。親子ってね、そういう
ものなのよ。絆が強ければたいていの事は乗り越えてしまうもの
なの。あなたにはそこまでは求めないつもりだけど、これからは
私との関係を単にお給金をもらって働いているだけの関係だとは
思わないでね」
「はい、若奥様」
それは、『あなたは他の従業員とは違う特別な存在』いう褒め
言葉(お世辞)だと思ってあまり深く考えず頷いたのでした。
すると……
「若奥様ねえ…そんな他人行儀な呼び方はこの際やめましょう。
私と二人きりでいる時は、若奥様じゃなくて、『お母さん』って
呼んでほしいわ」
「(えっ!)」
それは別の意味で全身の毛穴が開く驚きでした。
「私はあなたを本当の娘だと思って育てたいの。そういうのは
嫌い?」
「……そういうわけでは……」
私は困惑します。正直、そんなの迷惑です。私には正規のお父
さんもお母さんがいるのですから。
でも、「イヤです」とも言えませんでした。若奥様の申し出を
むげに断ることが何だか自分の立場を悪くしてしまうな気がして
……うやむやのまま話は進んでいきます。
「もし、あなたがよければそうして頂戴。今、この家を取り仕
切ってるのは私だもの。私に着いてる方が何かと安心よ」
確かに大奥様が病気がちな今、奥向きの実権は若奥様が握って
いらっしゃるみたいでしたから、その権力に上手にすがるのが、
女の子としては正しい道なのかもしれません。
そんなことを漠然と考えていると、次には、またドキッとする
ような言葉がやってきます。
「……その代わり、うちの子と同じように、お勉強もちゃんと
やってもらうし、お仕置きだってちゃんと受けてもらいますから
ね。そこのところは覚悟しておいてね」
「はい」
私の小さな一言でどうやら話は決まったようでした。
そこで、素朴な疑問をぶつけてみます。
「どうして、私をそんなふうになさりたいんですか?」
私は恐る恐る尋ねてみました。
すると……
「どうしてって、あなたが好きだからよ。それじゃいけない?
あなたは、私好みの愛くるしい顔で、気立てもいいし、何より、
素直なところがいいわ。だから私の手元におきたいの。……それ
だけよ。他に何か理由が必要なのかしら?」
若奥様はしらっとしておっしゃいます。
私としてはそれを信じるしかありませんでした。
「さあ、無駄話はこれまで……決まりごとを片付けてしまいま
しょう」
「きまりごと」
私が小さくつぶやくと、若奥様…いえ、お義母様は笑って……
「あら、忘れちゃった?……土曜日の夜は何をするんだっけ?」
お義母様はすでに椅子に腰を下ろすと、その膝を広く空けて私
を待っています。
唾を一口飲み込んで……あとは、嫌も応もありませんでした。
すぐにその膝にうつ伏せになります。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
平手でスカートの上から軽やかにスパンキング。
「あなたは素直でやりやすいわ」
お尻を叩かれながら、お褒めの言葉を頂きました。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
次はスカートをあげて、ショーツの上から……
「美咲もあなたみたいだといいんだけど、あの子の時はこうは
いかないわ。あの子ったら、大して痛くもないくせに大仰に騒ぎ
立てるんだから……堪え性がないっていうか……女の子のくせに
みっともないって言葉を知らないのかしら」
「美咲ちゃんは、まだ小学生ですもの。お義母様に甘えてるん
です」
私は自分の立場もわきまえず思わず口が滑ります。
実際、私へのスパンキングは始まったばかり、お義母様の平手
の下にいても、私のお尻にはまだ余裕があったのでした。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
「そうかしら?」
お義母様は一旦否定しますが、思い直して……
「そうかもしれないわね。親子だから……とにかくそんな時は、
わざと最初からスナップを効かせて泣かせるの。……でも、その
点、あなたは偉かったわよ。ここに小4の時にやって来て、すぐ
に私がお仕置きしたけど、必死に堪えて泣かなかったもの。……
あれには感心したわ」
「そんなこと……その時は気が張ってたから……」
私はお義母様の褒め言葉に照れてしまいました。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
「同じ小4でもえらい違いね。……あなたを見習ってあの子も
奉公に出してみようかしら……」
お義母様から軽口も飛び出します。
でも、さすがにこの頃になると、私のお尻も悲鳴を上げ始めて
いました。
そして、そんな頃になって、最後の砦が取り払われます。
「ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ」
ショーツが取り払われ、お義母様の平手が素肌へじかに当たる
ようになると、お尻を叩く音も乾いた音へと変わり……。
「ピシッ」「あ~」
「少しは効いてきた?」
「ピシッ」「いっ~」
「それでこそ、こちらもやりがいがあるというものだわ」
「ピシッ」「ひぃ~」
「はいはい、わかりました。痛いのねえ。可哀想ねえ。でも、
あなたが悪いのよ」
お義母様はわざと幼児に語りかけるように私に話しかけます。
「ピシッ」「あああっ」
「ほら、もう少しだから我慢しなさい。ほらあ両手をバタバタ
させないのよ。……ハツさん、この子の両手押さえてやって……」
「ピシッ」「いたぁ~」
「痛い?堪えたかしら?…でも、だからこそのお仕置きなのよ。
堪えないお仕置きなんてやっても仕方がないでしょう」
「ピシッ」「ああああだめえ~~」
「だめえ~~って何がだめなの?…やらなきゃだめえ、なのよ。
……やらなきゃ、お仕置きは終わらないわ」
「ピシッ」「いやあ~~~」
「よし、よし、いいわよ。じゃあ、やめてあげる」
最後は両足をバタつかせ歯を喰いしばり、介添え役のハツさん
の両手をしっかりと握りしめて耐えている私に、やっとお許しが
出ました。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
ハンドスパンキングの嵐が収まってからも、私は荒い息をつき、
しばらくはそのままお義母様の膝の上で寝そべり続けます。
すると、その耳元でハツさんが……
「若奥様、お鞭は何にいたしましょう」
とたんに、頭の中がカアッとなりますが……
「いいわ、今日は……鞭はいいの。それはもっと重大な事でも
あればその時に使うことにするわ。……今日は、この子とは親子
でいたいの。肌を合せていたのよ。わかるでしょう」
「では、お浣腸とお灸の方も……」
「いえいえそれはそれでお願い。罪を犯した子を更生させたり
怠けてる子を励ましたりするのは母親の役目ですもの。それは、
たっぷりとこれからやってあげるつもりよ」
ともかくも、お尻叩きのお仕置きが終わり、お義母様は膝の上
に乗る痛んだ私のお尻を撫でながら、ハツさんと更なるお仕置き
について話をしています。
ところがそんなさなか、お義母様はふいに、さも今気づいたか
のようにして、こうおっしゃるのでした。
「あら、あなた、こんな処に蝶々の痣があるじゃないの」
お義母様は私の太股にある痣を見つけてこうおっしゃいます。
でも、これはおかしげなことでした。
だって、これまでだって何回となく私はお義母様の前で裸にな
っています。お仕置きで、お風呂で、ベッドで……
そんな時、私の痣にお義母様が気づかないはずがありません。
なのになぜ今になってこんな目立つ痣に初めて気づいたみたい
なことをおっしゃるのでしょうか。それが理解できませんでした。
「あなた、この痣は怪我かなんかでついたのかしら?それとも
生まれつき?」
「生まれつきです」
「そう、生まれつきなの……」
お義母様の手はいつしかお尻から太股の痣へと移っていました。
「あなた生年月日は?」
「昭和30年、9月15日です」
「そう、9月15日なの…………お父様、お母様は可愛がって
くださったの?」
「はい……でも、うちは兄弟が多いものですから……」
「そう、それでうちに来たの……まだ幼い頃から親元を離れて
他人の家で暮らすなんて大変なことだわ。……私でよければ甘え
てちょうだい。お仕置きの時だって我慢なんてしなくていいの。
もっともっと大きな声で泣いていいのよ。うちの美咲みたいに…」
お義母様はそこまで言うと、ショーツを上げスカートを直して
私を抱き起こします。
そして、お互いがにらめっこするように私を膝の上に乗せ直す
とこう続けるのでした。
「そんなこと急に言われたって、中学生には無理かしら?……
プライドが邪魔しちゃう?……」
お義母様は私の前髪をかきあげます。
「……でもね、子供は泣いたら泣いた分だけ『良い子、良い子』
って頭を撫でてもらえるの。なぜだかわかる?」
お義母様はそう言って私の頭を撫でました。
「…………」
「愛されてるからよ。……お仕置きされる子って無視されたり
虐められてる子とは立場が違うの。……あなたは、愛されてる子。
そんな愛されてるあなたが、愛してくださる人に、つまらない我
を張っては損だわ。その胸に飛び込んで、自分のすべてをさらけ
出さなきゃ。……そうでなきゃ、愛は得られないわ」
「…………」
私はどこかむきになったお義母様がおかしくて、思わず微笑み
ます。
「あら、今、笑ったわね、わかってくれたみたいね。そりゃあ、
今の私じゃ不満でしょうけど、私も、いずれはあなたのお父様や
お母様と同じ立場に立ちたいと思ってるの。……どんなに痛い目
にあっても、どんなに恥ずかしい事をされても、私に着いて来て
くれるようになって欲しいの」
「…………」
私はお義母様の言葉にポッと顔を赤らめました。こんな大きな
商店の奥様が私なんかを娘として扱ってくれるなんて……たとえ
言葉だけでも嬉しかったからでした。
「わかってくれたみたいね」
お義母様も満足げです。
子守っ子なんて学校が終わるとすぐに帰って仕事をしなければ
ならない身の上ですから、普通の中学生のように同年代の友達が
出来にくいのです。そんな中、若奥様は身分こそ違え私の唯一の
友だちだったのかもしれませんでした。
「さて、次はお浣腸……そこにハツさんが布団を敷いてくれた
から、寝てくれる」
お義母様の命令、この期に及んで逆らうつもりもありませんで
した。
「はい、お義母様」
白いシーツの掛かった薄い布団に仰向けになると、ハツさんが
すかさずスカートの中に手を入れてショーツを引きずり出します。
それを足首にぶら下げて、両足が高々と持ち上げられます。
「恥ずかしい?」
お義母様に尋ねられて、私は反射的に頷きます。
「…………」
でも、それは『女の子なんだからこんな反応しなきゃ』という
見栄なのです。
慣れたせいだからでしょうか、周りが女子だけだからでしょう
か、この時までは、こんな格好でいてもあまり恥ずかしいという
気持が起こりませんでした。
「今日は、お薬だけ140㏄。ちょっと大変だけど、それでも
10分だけは我慢よしてね」
お義母様はそう言いながらガラス製のピストン式浣腸器で私の
お尻を責め立てます。
50㏄浣腸器で三回。お薬を入れてる段階から、もうトイレに
行きたくなるほどでした。
「あっ…………」
声には出しませんが、オムツを当て取られている最中から顔は
歪みます。
それなのに、お義母様はこうおっしゃるのでした。
「この間はお尻に栓をしてあげたけど、今回は自分の力で頑張
ってね。そのくらい中学生なんだからできるでしょう」
「えっ!」
ショックが鳥肌を伝わって全身に行き渡ります。
「もちろん粗相してもいいのよ。お母さんが片付けてあげるわ。
でも、いきなり出しちゃったらお薬が効かないし、何より女の子
は恥ずかしいって思う気持を忘れたらいけないわ」
お義母様は優しい言葉でしたが、
「そんなことしません」
私は泣きそうな顔で答えました。
「そうそうその調子。女の子は我慢する事を忘れてはいけない
わ。……でも10分過ぎたら、はめてるオムツにそのまま出して
しまってね」
「えっ、……」
その瞬間、全身にもの凄い悪寒が走りました。
「どうしたの?遠慮しなくていいのよ。…どのみち私が着替え
させてあげるんだから……」
「えっ、おトイレは……」
甲斐のないことですが、訊いてみます。
でも……
「だから、構わないわ。せっかくあなたが私の子どもになって
くれたんですもの。最初はオムツぐらい替えてあげるわ。………
ん?……どうしたの?……イヤなの?…そうかもしれないわね、
女の子というのは痛い事より恥ずかしい事が大の苦手ですものね。
……でも、これは私の子どもとしての義務だから仕方がないわね」
「どういうことですか?」
「どういうことって?お母さんがこんなふうにお仕置きします
って言ってるのよ。娘が『イヤ』って言っちゃいけないでしょう。
お母さんの愛はしっかり受け止めなくちゃ……そうじゃなくて?」
愚問でした。でもその時から、それほどでもなかった気持が、
『とっても恥ずかしい』という気持になるのでした。
薄い布団の上でオムツが当てられると、私の体はすでにまった
なしの状態になっていました。
「さあ、いらっしゃい」
お義母様は私に膝の上へ来るように促しますが、すでにそれも
無理な状態でした。
「どうしたの?爆発しちゃうかしら?自分では起き上がれなく
なっちゃった?」
お義母様は仕方なく私を膝の上へ抱き上げ、私はすがるように
その身体に抱きつきます。
「あっ……あああん……いやあ……はあ、はあ、……苦しい…
…だめえ~~出る、出ちゃう……あああぁぁ……ごめんなさい」
全身に悪寒が走り、鳥肌がたって、唇が震えます。涙がこぼれ、
……目の前にいきなり現れたお義母様の乳首に噛み付きました。
理性のない身体。すがれるものは何でもすがりたかったのです。
「あぁぁ~~~いや~~~~苦しい~~~もう、だめえ~~」
『悶絶』ってこういう時のためにあるんだと思います。10分
という時間がこんなにも長く感じたことはありませんでした。
そして、お義母様からは……
「よく頑張ったわ。さすがに私の見込んだ子だけのことはある
わね。女の子は貞節が大事ですもの……さっ、でももういいわよ。
全部出しちゃいましょう」
「……(そんなこと言ったって)……」
私の耳にお母さんの言葉は届いていました。でも、だからって、
ここでお漏らしなんて……
私は残った力を振り絞って頑張り続けます。
すると、今度は……
「だめよ、女は貞節も大事だけど、諦めも大事なの。青い果実
でもがれたら『すっぱくて食べられない』って捨てられるけど、
だからといってあまりに熟しすぎると誰からも手を出してもらえ
ないわ。果実も女もそれはおんなじ。熟しきったところで捥いで
もらうのが一番よ。ほどよいところで諦めて、恥をかいて、次の
ステップに進まなきゃ」
私にお漏らしするように催促します。
でも、だからって、『そうですか』というわけにはいきません
でした。
しばらくは……
「そんなのいや、いや、だめ、恥ずかしい、だめ、だめ、……
トイレ行きたい、ごめんなさい、だめ、だめ、だめなんです」
と、お義母様にしがみついたまま必死に訴えましたが……
「しょうがないわね」
お義母様がこうおっしゃるので、おトイレを許してもらえるの
かと思いましたが……
私は再び薄い布団の上に寝かされます。もちろん元気な体なら
そのままトイレに立つところですが、この時はすでにそんな力も
残っていませんでした。何しろ、お尻以外にちょっとでもどこか
に力をいれたら爆発しそうだったんですから。
「さあ、うんちゃん、出てきてねえ……すっきりしましょうね」
妙ちきりんなおまじないの言葉をかけながら、お義母様が私の
下腹をさすり始めます。
すると、もう1分ともちませんでした。
「あああああああああ」
その瞬間、まるで高い崖から身を投げた時のような虚脱感が、
身体全体を包みます。
その変化は、お義母様だって分かりますから……
「大丈夫よ。大丈夫。泣かないで、あなたが悪いわけじゃない
んだから……」
気がつくと、びちょびちょのオムツを穿いて、私はお義母様の
膝の上にいました。
「寒い?……そうかもしれないわね、女の子の大事なプライド
が飛んでいっちゃったんですものね。……でも、私の前だけでは
身も心も裸でいて欲しいの」
「……どうしてですか?」
私は涙声でつぶやきます。
すると、一拍おいて、お義母様から強い言葉が返ってきました。
「それは、私があなたのお母さんだからよ」
「えっ!?」
私がまごついていると……
「大丈夫よ。これは私たち二人の秘密……外には漏れないわ」
お義母様は、ご自分の唇に人差し指を当てると微笑みます。
私はこの時初めて『この人、ひょっとして私の本当のお母さん
なのかしら』などと、馬鹿な事を思ってしまったのでした。
「さあ、キレイ、キレイしましょうね」
お義母様に翻弄され続けている私は、薄い布団の上で赤ちゃん
さながらにオムツを取り替えてもらいます。
すると、不思議なことが起こりました。最初は屈辱感で流して
いたはずの涙が、いつの間にか、喜びの涙に変わっていたのです。
「…………」
私は笑い出しそうになる自分を必死に抑えていました。
だって、こんな状況で気持がいいなんて顔をしていたら、変態
ですから。
でも……抑えても抑えても素直な喜びがこみ上げてきます。
とうとう抑えきれなくなった私の顔が、一瞬笑ってしまうと、
お義母様が目ざとく見つけて……
「あら、ご機嫌ね。赤ちゃんの時以来ですものね、こんな事は
……気持いいでしょう。女の子は、普段、厚い鎧を着てるから、
たまに脱いだ時はとても気持がいいものなのよ」
私の顔を間近に見ながら微笑返してくれるのでした。
お義母様は私の股間を何枚もの蒸しタオルでキレイにすると、
一枚の白いショーツを穿かしてくれました。
でも、それは短い時間私のお尻を保護してくれただけ。また、
すぐに脱がなければなりませんでした。
その後、幼児に返ってひとしきりお義母様のお膝で甘えていま
したが、やがて、私の耳元でお義母様が囁きます。
「さてと、それでは仕上げにかかりましょうか」
『仕上げ』それはもちろんお灸でした。
今は肌に灸痕が残るようなお仕置きをする家庭はほとんどない
かもしれませんが、私の子供時代、『お灸』は、どうにも言う事
をきかない悪童やお転婆への最終兵器として親の間で重宝されて
いましたから、身体検査の日など、お友だちの背中に新しい灸痕
を見つけることも、そう珍しい事ではありませんでした。
ですから、子守の私が、親代わりである若奥様にたとえお灸を
据えられたとしても、それは当時の基準でなら大騒ぎする事では
なかったのです。
ただ若奥様(お義母様)の場合は身体の色んな処に数多く据えら
れますから、据えられる側はたまったものではありません。
その熱さに耐えるのは、それはそれは大変なことでした。
当然、『お灸』と言われて私の顔にも緊張が走ります。
その緊張した顔に向って、お義母様は最初に……
「心棒の調子はどう?役に立ってるかしら?」
と、尋ねられたのでした。
「あっ……はい」
「それはよかったわ。人間、喉元過ぎれば熱さを忘れるものよ。
どんなに厳しいお仕置きで叱っても、今が何ともなければ、再び
過ちを犯してしまうものなの。女の子は特にそう。誘惑に流され
安いの。……でも、こうしておけば普段は感じないほんの微かな
抵抗感があなたの心にブレーキを掛けてくれるわ。……わかるで
しょう。火傷の皮膚が擦れるその感じって……」
「…………」
私は悔しいけど頷きます。
「しかも、それを感じているのはあなただけだから。誰からも
気取られる心配がない。それも良い事だわ」
「これ、ずっとこうなんですか?」
私は心配になって尋ねてみました。
すると……
「心配なの?………そうね、人にもよるけど、二、三年は歩く
たびに抵抗感が残るはずよ」
「そんなに……」
「仕方ないわ。だって、あなたは、その時はまだ子供でしょう。
戒めはまだまだ必要ですもの」
お義母様は笑います。
そして、私を安心させるように正座した膝の上で抱き直すと、
頭を撫でながらこうおっしゃるのでした。
「大丈夫よ。生涯、ずっとこのままじゃないから。たいては、
四、五年もたてばまったく感じなくなるものなの。あなたが大人
になる頃には抵抗感もなくなってるわ…………ん?どうしたの?
……あらあら、そんな深刻な顔しないで……大丈夫だって………
私は、大事な娘を片端になんかさせないわ」
私は、お義母様の胸の中に顔を埋めて、お義母様を信じるしか
ありませんでした。
「さあ、お尻からよ。準備して……」
私はお義母様の言葉に反応して、その膝にうつ伏せになって、
お尻を高く上げます。
今までなら準備はこれだけでした。
ところが……
「敬子さん。あなたも、もう中学生なんだし、小学生気分で、
何もしないで私の膝にふんぞり返ってるだけではいけないわね」
こう言われたのでした。
「????」
私は、どういう意味かを考えます。
そして、自分なりに出た結論に従って、お義母様の膝を下り、
お義母様の目の前で正座すると、三つ指をついて……
「お灸のお仕置きをお願いします」
と、頭を下げたのでした。
すると、お義母様はその時間を楽しむかのように私の顔を見て
微笑んでいらっしゃいましたが……やがて……
「やはり、あなたに目をかけたのは間違いじゃなかったみたい
ね。私は、だからあなたが好きなのよ。他人が、今自分に対して
何を望んでいるかを察知できることは、女の子にはとても大事な
資質なの。あなたはそれを持ってるもの」
どうやら私は褒められているみたいでしたが、だからといって
お仕置きが免除されたわけではありませんでした。
「さあ、いらっしゃい」
お義母様は正座したお膝の上を右手で叩きます。
「はい」
私は再びお義母様のお膝の上にうつ伏せになると、そこでお尻
を高くしますが、その際、自らスカートを捲り、ショーツを下げ
て、むき出しのお尻をお義母様に捧げたのでした。
すると、『では、お言葉に甘えて……』というわけではないの
でしょうが、沢山の艾がお尻一面に乗っかるのが分かります。
「えっ!?」
でも、驚いている暇はありませんでした。
「うっ……ああああああああああああああ」
艾に火がつけられたのと同時に私の身体は硬直します。
覚悟はしていましたが、それを、どう表現していいやら……
とにかく、艾が一面に乗ったお尻が、一気に火の手に包まれた
んですから、これはもう、かちかち山のタヌキです。
それは声にならない熱さでした。
私は何度も拳で床を叩き、炎熱地獄の苦しみを表現しましたが、
もちろん許してはもらえませんでした。
でも、このお灸、数こそ多いものの、全て寸止めだったのです。
火が回って、皮膚をほんのちょっぴり焼いた瞬間、お義母様が
火のついた艾を指の腹で押し付けて消してまわるのです。
おかげで、お仕置きの後に『きっともの凄いことになってる』
とばかり鏡で自分のお尻を見てみましたが……赤くはなっていた
ものの、そこに火傷の痕が残ることはありませんでした。
きっと、そこは大人になって目立つと可哀想だからという配慮
だったんでしょう。
ただ、どこもそうやって配慮してくれるわけではありません。
尾てい骨にはそんな情けはかけてもらえませんでした。
骨に近いその場所は火が回ると頭の天辺まで衝撃が走ります。
「ひぃ~~~~~~~~」
一度火をつけられたら、それが消えるまで、歯を喰いしばって
頑張るしかありません。
私は、またお漏らししないか、それが心配で仕方がありません
でした。
「大丈夫ね、今回は漏らしてないないわ」
お義母様の言葉に私の顔はカァーとして赤くなります。
でも、とにもかくにも第一関門突破でした。
さて次は、お義母様が私のブラウスを捲り上げ。両腕を羽交い
絞めにする中で、オッパイ(乳頭)の周りに小さい艾を五、六個
貼り付けてと、お臍の中にも据えられます。
これはハツさんの担当でした。
「あらあら、あんた、まだ男の子みたいだね」
お線香を片手に近づいてきたハツさんにそう言われても、私は
無表情でした。顔を赤らめたいところですが、今は、それどころ
ではありませんでした。
「でも、気にすることないよ。胸の小さい子の方が頭がいいっ
ていうからね」
ハツさんはそんな慰めを言いながら、私の乳首をいじります。
「あっ……いやあ……いや……あ~あ~……だめえ……うっ」
ハツさんの指は、私を興奮させるのに十分なほど執拗でしたが、
幼い私に、『やめてください』という勇気がありませんから、私は
長い時間その拷問に耐えなければなりませんでした。
もだえる身体を必死に押し殺して、頑張っていると……
「じゃあ、いくよ」
ハツさんの声がします。
そして、それはすぐでした。
「あっ!!!!」
胸のお灸は『小さな小さな艾が一瞬だけ燃えて消えた』という
だけのことでしたが……次の瞬間、私の顔色が変わります。
私の洞窟の中に雫が落ちているのが分かるのです。
「!!!!!」
大人になれば『なんだ、そんなことか』って思うことですが、
中学生の私にとって、それはとても恥ずかしいことでした。
今の子なら中二になれば当然ブラジャーをしていると思います
が、私の中学時代は総じて発育が遅かったせいか、クラスの全員
がブラをしているわけではありませんでした。特に私の場合は、
クラスの中でもペチャパイの方でしたから、日常生活では必要が
ありません。
でも、そのせいで乳首がシャツに擦れて、ちょくちょく不思議
な気持を感じることがありましたが、その大きな波が、今、ハツ
さんによってもたらされたものだったのです。
そして、お臍も……
ハツさんが、まず私のお臍の下にある小さな芽を悪戯します。
「あああああ、だめえ~~~~いやあ~~~そこいやあ~~」
私の声にならない恥ずかしい声が響くなか、今度はお臍の中に
大きな艾が……もちろんこんな場所ツボなんかじゃありません。
でも、お仕置きとしてのお灸は治療じゃありませんから、子供が
怖がる処、熱つがる処、痕が目立たない処が大人達の候補でした。
「あっ、熱い~~~~」
今度は、目の前に見える艾も大きくて燃えてる時間も長いです
から、そりゃあ怖いです。おかげで寸止めにも関わらず胸のお灸
以上にねっとりとした雫が私の洞窟の中に溢れ出てきたのがわか
ります。
「……(また……何なの、コレ、血?オリモノ?病気?)」
少し落ち着いた私は、自分の身体に起こった変化に困惑します。
でも、恥ずかしながら、その時はそれがどんなものなのか……
どうしてそうなったのか……まだ何も知りませんでした。
ポルノ雑誌など、猥雑な情報が子供の目に飛び込む機会が少な
かった当時、子供が性に関して知ってる事といえば、学校で習う
生理と病気の話だけ。
『女の子が感じるというのは、どういうことなのか』
そんなこと学校の教科書のどこにも書いてありませんし、友達
も知りませんでした。
今の人は信じられないでしょうけど、SEXって具体的にどう
するのかを知ったのは高校生になってからなんです。
ですから、親のお仕置きが、自分の性を目覚めさすきっかけに
なった子は多くて、その快感を求めてオナニーに走る子も男の子
だけでなく女の子だって決して少なくありませんでした。
「最後は、お臍の下ね。ここはお臍と違って目立ちませんから
ね。最後まで熱いのを我慢してもらいますよ」
お義母様は私を羽交い絞めにしたままで残酷に宣言します。
その後はハツさんが準備をしました。
そこは半年前にも据えられた場所。でも、すでに下草が新たに
はえ始めていましたから、再びハツさんに剃り上げてもらいます。
スカートが捲り上げられ、ショーツを下ろされて、黒こげのお
臍から下はすべて丸見えです。
でも、もうその頃になるとそうした恥ずかしさには慣れてしま
っていました。
そんな私の厚顔にお義母様は気づいたみたいでした。
ビーナスの丘に円錐形の艾が並べられても冷静な顔でいられる
私の様子は抱いているお義母様が何より一番よくわかっておいで
だったのです。
そこで……
ハツさんが九つ並んだ艾にお線香の火を近づけようとしますと
……
「あっ、待って……」
お義母様はハツさんの手を止めてしまいます。
そして……
「敬子ちゃん、あなたももう中学生なんだし、いつまでも大人
の手を煩わせていてはいけないわ。最後ぐらいご自分でなさいな」
「えっ、?」
鈍感な私は当初お義母様の言葉の意味がわかりませんでした。
それでも、ハツさんに火のついたお線香を手渡されれば、その
意味を理解します。
「えっ!!!」
私は二度びっくりです。最初は意味が分からなくて……そして、
意味がわかってまたびっくりでした。
「わかったかしら?……あなたは子供と言ってももうそんなに
幼くないの。自分の始末は自分でつけることを覚えてもいい頃よ」
お義母様は穏やかにおっしゃいますが、それって、私に自分で
目の前の艾に火をつけなさいとおっしゃっているわけで……
「…………」
私は思わず固まってしまいます。
もちろん、誰が艾に火をつけても肌に伝わる熱さに違いなんて
あるはずがありませんが、やはりその原因を自分が作るとなると、
話は別、お線香を持つ手が震えてきます。
そんな勇気のない私を見ていたお義母様がこうおっしゃるので
した。
「時間はあるわよ。私もハツさんも気は長い方だから……でも、
『このまま何もしなければ、そのうち諦めてくれるんじゃないか』
なんて思っちゃいけないわ。私たちはたとえ徹夜してもあなたの
勇気を待ってるんだから……」
私は進退が窮まってしまいました。
たしかに、これまでだって沢山のお仕置きを受けてきました。
お灸も沢山すえられてきましたが、それって、いつも大人たちが
勝手にやったきたことだったんです。
嫌がる私を押さえつけて、無慈悲に無理やり……
ですから、それって悲劇ではあっても、終われば……
『あれは大人たちが勝手にやったこと』
『私は哀れな被害者』
『悲劇のヒロインなんだから』
と、自分の心を慰めることができました。
自分のプライドを守る逃げ道があったんです。
でも、こうして自分で火をつけてしまうと、そんなささやかな
エクスキューズさえ奪われてしまうようで……
それは、とてつもなく悲しいことだったのです。
「………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………
……………………………………………………………」
長い沈黙が続きました。持っていたお線香に火の気が迫ると、
お義母様はまた新しいものを用意します。
そうやって、三本目のお線香が燃え尽きようとする時、私は、
ようやく決心して、九つある艾の一つに火を移します。
「!!!!」
当然、肌を焼くいつもの熱くて痛い瞬間が訪れます。
でも、それは一瞬でした。
まるで、示し合わせたようにハツさんが、私の肌に火が回った
瞬間、火のついた艾を消してしまうのです。
二つ目も……
三つ目も……
四つ目も……
そして、最後の九つ目だけ……
「熱い~~~~」
ハツさんはその火を消してくれませんでした。
お義母様とハツさんは何一言も打ち合わせをした様子がありま
せんでしたが、大人二人の間にはそれでいて何一つ問題がなかっ
たみたいでした。
「わかった?これが大人になるということなのよ」
お義母様はそう言うと、最後は黙って私を抱いてくださったの
でした。
**********************
*)お灸の記述あまりありません。ごめんなさい。
若奥様に沢山のお灸を据えられてしまったお仕置きから3月後、
私は中学二年になり、次男の明雄ちゃんが幼稚園に入園しました。
ということは本来なら私はここでお役ご免になるはずでした。
子守というのは、女中さんたちと違って、昼間、一日中仕事を
していたわけではありません。たいていが幼い娘で、自分も主人
の家から学校に通わせもらい、その空き時間を利用して赤ん坊の
面倒をみるのが仕事だったのです。
つまりは住み込みの新聞配達と同じようなアルバイト。
でも、その子が幼稚園に上り、大人たちの手も掛からなくなる
と、やがて子守としての仕事がなくなり、普通はお暇が出て親元
に帰されることになります。
つまり、首になるわけです。
ところが、そんな子守の身分でありながら私は角田の家に残さ
れていました。
若奥様が小間使いとして必要だからとお傍に置いてくださった
のでした。
この変化。厳密に言うと雇い主が大奥様から若奥様に代わった
ことにはなるのですが、私の生活そのものは今までと何ら変わり
ありませんでした。
依然として、私は若奥様の子供たち3人の面倒をみるのが仕事
でしたから、子供たちの着替えを手伝ったり、お風呂に入れたり、
食事をさせたり、玩具を片付けたりといった事が私の仕事でした
し、角田の家の中で一番身分が低いのもそのままでした。
ただ、変わったこともありました。
それは『学校の勉強』
もともと、私と若奥様は主人と使用人の関係。つまり、他人の
関係ですから、主人である若奥様は私を学校に通わせていれば、
それ以上の事は若奥様に責任なんてありません。私の学校の成績
がどんなであってもよいはずでした。
実際のところ、私の通知表には2と3しかなかったのです。
ところが、私が若奥様の小間使いとなさった頃から、若奥様は
私の勉強に関心をはらうようになります。
つまり、今までのような成績ではだめだと言い出すのでした。
おかしいでしょう。
私は、若奥様のおそばにお仕えするようになったといっても、
お子さんたちとは違うんです。角田家に雇われた使用人で、それ
も子守にすぎないのに、「勉強しろ」だなんて……
でも、これは若奥様の厳命でした。
そして、そのために家庭教師まで雇い入れたのです。
若奥様は、私が寝起きする部屋の二階、本来は古着などが仕舞
ってある古い蔵の一室を綺麗に取り片付けて勉強部屋にすると、
そこに家庭教師の先生(三田村先生)を招き入れ、私に勉強させ
るのでした。
期間は半年くらいでしたが、その間は学校から帰ると寝るまで
勉強、また勉強の日々です。
それまで、本格的に家で勉強なんてしたことのなかった私には
1時間だって机に向うのは苦痛です。毎日、家庭教師と2時間も
勉強するなんて最初は信じられませんでした。
しかも当時は勉強方法というのは今みたいに合理的じゃありま
せんから家庭教師だってスパルタです。ちょっとでも気の抜けた
態度をみせると授業の途中でも机にしがみついて先生が繰り出す
竹の物差しをお尻でしっかり受け止めなければなりませんでした。
問題はそれだけじゃありません。
時間の許す限り若奥様が私の様子を見に蔵へいらっしゃいます
から、こちらも気が抜けません。
もし、はかどりが悪いようなら、その晩は寝る前に必ずお灸の
お仕置きが待っています。
お尻の山に、ビーナスの丘に、尾てい骨……
若奥様のお灸は容赦がありませんでした。
いえ、いえ、まだあります。
日曜日は三田村先生がお休みだからなんでしょうけど、土曜の
夜は『反省会』と称して若奥様からその週の成果に応じて特別な
お仕置きが与えられることになっていました。
この時は、普段据えられているお尻のお山やビーナスの丘だけ
じゃありません。乳首の周りにも、お臍の中にも、そして若奥様
が『心棒』と呼ぶお股の中にも……
出来の悪い子は涙なしには日曜日を迎えられなかったのです。
『何で、子守の私が勉強しなきゃならないのよ!!おかしいで
しょう!!!』
『あ~あ、ここから逃げたい。こんな処から逃げ出したいなあ』
『そうだ、お父さん、お母さんの処へ帰ろう。事情を話せば、
きっと許してくれるよ』
学校から帰る時はいつもそう思いながら小石を蹴っていました。
でも、結局のところ一度も実家に戻った事はありませんでした。
これはとても不思議なことなんですが、歩いているうち、お股
に据えられた心棒が私の足を実家ではなく角田の家の方へと向け
てしまうのです。
実家へ戻ろうとした瞬間、お股が擦れて、『それはいけない事
なんだ』と感じるのです。
どういう事かというと……
お股に据えられた心棒は当然そこだけ火傷を負っていますから
歩くたびに微妙に擦れて感じるのです。痛いとか、痒いとかじゃ
ありません。普段は歩いても走ってもまったく気にならない程度
の感覚なのですが、『実家に帰ろう』と思い立った瞬間だけは、
火傷の痕が擦れると、『あ、ここにお灸!!』って感じてしまう
のでした。
『あっ、ここに据えられたんだ!』って思い出す一瞬の小さな
刺激が、私を実家ではなく、苦難の待つ角田の家へと向わせるの
でした。
****************************
あれは勉強を始めて四ヶ月目のとある土曜日の午後でした。
その週は何だか気乗りがしなくて、月曜日早々、若奥様の見て
いる前で三田村先生に居眠りを注意され鞭のお仕置きをもらって
しまいます。
その後も、学校の授業で欠伸は出るわ、返されたテストの成績
は悪いわ、今年10才になる長女の美咲ちゃんとは些細なことで
喧嘩をするわで、とにかく散々な一週間でした。
ですから土曜日の午後は三田村先生が帰った後に若奥様からの
お仕置きが確実だったんです。
『今日こそは実家に帰ろう』
朝、角田の家を出る時は本心からそう思っていたのに、帰り道
は、やっぱり、心棒が私の足を若奥様の方へと向けてしまいます。
それは理屈では説明できない不思議な霊力でした。
土曜の午後は学校から帰ると何時も2時から6時頃まで三田村
先生と一緒に勉強して、夕食のあとは、再び学校の宿題と三田村
先生からの課題をやらなければなりません。
その時の私は子守ではありませんでした。まるで受験生の生活
だったのです。
そんな私のもとへ、若奥様がハツさんを伴って階段を上がって
やってきます。
その足音がどんなに怖かったか。時々猫が悪戯して階段を駆け
上がりますが、そんな猫の足音だけでも私の心臓は引きちぎられ
そうだったのです。
もう何をやるかは、わかっていましたが、分かっていてなお、
正座した膝の震えが止まりませんでした。
「あら、今日のお勉強は終わったのかしら?」
「はい」
「そう、よかったわ。今日は土曜日だし、今週の反省会をしま
しょうか」
「はい……でも、あのう……一つうかがってもいいですか」
私は勇気を振り絞って声を出します。
「どうしたの?」
「どうして、私は勉強しなきゃいけないんですか?」
「どうしてって、勉強して悪いことなんて一つもないでしょう」
「でも、私は子守ですし……そんなに立派な教養は……」
「いらないって言うの?……随分もったいないこと言うのね。
……どうしたの?今日は?……勉強が嫌になったの?」
「そういうわけじゃあ……」
「じゃあ続けてちょうだい。三田村先生おっしゃってたわよ。
あなたのこと。『存外、頭のいい子だ』『あの子は掘り出し物だ』
って……『この分なら、もう一、二ヶ月もするとクラスの中でも
トップグループと肩を並べるだろう』って……もし、そうなって
くれたら私としても助かるわ」
「どうしてですか?」
「だって、これからあなたには、家の子たちの家庭教師もして
もらおうと思ってるからよ」
「えっ!!!!」
それはまさに青天の霹靂でした。
「できませんよ。だって、私は子守なんですから……」
「どうして?どうしてできないの。……できますよ。だって、
あなた子守なんでしょう。だったら、子供たちにお勉強を教える
のも子守の大事な仕事じゃなくて……」
「そんなあ~~~だって、そういうのはお父様とかお母様とか
家庭教師の先生とか……もっと、偉い人が……」
「そうじゃないわ、それとは別なの……あなたにはこれからも
色んな意味で『お姉さん』として家の子たちの面倒をみてほしい
のよ」
「お姉さん?……子守のわたしが?」
「そうよ、あなたに私の子供たちの模範になってもらいたいの。
……だって、あなたが一番の年長者でしょう」
「えっ、?!……それは……そうですけど……」
「あなたには、この間のことで、身体のあちこちにお灸をすえ
ちゃったでしょう……そのことでは大奥様も、ちゃんと責任とる
ようにっておっしゃられてたわ。だから、私、責任をとることに
したのよ。私が嫌い?」
「そんなこと……あれはもう過ぎたことですから」
「あらあら、あなた随分潔いのね。……でも、あのお灸の痕は
生涯消えないわよ」
「えっ!……」
私はその瞬間までそんな事も知りませんでした。
「それで……『あなたを成人する迄ここでお預かりしたい』と
申し出たら……今日、高井のお父様から正式に『お願いします』
というご返事を頂いたわ……これよ」
若奥様はその手紙を私の前に広げられます。
「……!!!……」
私は目が丸くなります。それは見覚えのある父の筆跡。正直、
全身が震えました。
『中学生にもなった子どもの意向を無視して、大人たちだけで、
そんな人生の大事を勝手に決めていいのでしょうか』
私は思いました。
でも、それがこの時代の常識であり現実でした。だって中学生
というは大人じゃありません。子供なんですから、どう育てるか
は親の自由だったのです。
まだ上の空でいる私の耳元で若奥様が言葉を続けます。
「ただ、あなたの場合……うちの子たちより年長には違いない
んだけど……今のままの成績じゃあ、ちょっと頼りないのよね。
だから、こうやってお勉強してもらってるの。……わかった?」
「………………」
あまりに無茶な話で、私は声がでませんでした。
ただ、この時になって初めて、私がなぜこの家に残されたのか、
なぜ自分がこうやって勉強させられているのかを知ったのでした。
でも、私に対する補償というだけなら他にも方法はあるはずで、
若奥様がなぜそんな手間とお金の掛かる道を選択したのかまでは
教えてくださいませんでした。
「さてと……それじゃあ、今週の反省会といきましましょうか
……今週はどんなことがあったかしら……」
若奥様が居住まいをただし、私の様子を細かく記した閻魔帳と
呼ばれるノートのページを捲り始めます。
これからが今夜の本題なのですが……
「……………………」
私は今聞いたお話のせいで若奥様が取上げる数々の罪状が耳に
入りませんでした。
だって、父にさえ見捨てられた気分になってる私にすれば……
『今夜はたっぷり絞られる』
それだけ分かっていれば十分だったのです。
実際、その夜、若奥様からいただくお仕置きは、明雄ちゃんと
映画館ではぐれてしまったあの日のお仕置きより、さらに厳しい
ものだったのです。
***************************
「どうしたの?今週は、随分と調子が悪かったみたいだけど、
何か心配事でもあったのかしら?」
「別にそういうわけじゃ…」
「ならいいんだけど。何かあるのなら、すぐ私に言って頂戴ね。
あなたは高井のお父様からお預かりしてる大事な娘さんですもの。
お返しするまでは、私がお父様お母様の代わりなの。何でも相談
して頂戴ね」
若奥様の言葉は、『それだけあなたの事を大事に思ってますよ』
という当時の挨拶言葉ですから本気にする人はいません。むしろ、
『お母様の代理として愛の鞭もありますよ』という脅し文句でも
あったのです。
「……えっと」
「ん?何かあるの?」
「いえ……水曜日の夕方……美咲ちゃんと……」
「あ~喧嘩になっちゃったあの事ね……でも、あれはあなたが
心配しなくてもいい事だわ。だって、あれはあの子が悪いんです
もの。あの子、最近生意気が過ぎるものだから……あの日新しく
心棒を据え直したの」
「えっ、また」
私は思わず声が出てしまいました。
私は美咲ちゃんが以前心棒を据えられたところを見てしまいま
したから……
「だから少々むくれてたのよ。そのうち収まるわ。気にしない
で……『今度そんな顔したら焼きごてですからね』って脅したら
さすがにおとなしくなったわ」
私は若奥様の『焼きごて』という言葉に反応してしまいます。
思わず両手で自分の二の腕を擦って寒そうな素振りをしますから
それが気になったのでしょう。
「どうしたの、怖い顔して?……ああ、焼きごてのこと?……
驚いたのね?……滅多にやらないけど、でも、こういう事もある
んだってのを教えておかないと子供はすぐにつけあがるから……
お灸が効かなくなったら親が次に使う手なのよ」
「…………」
さらに、私の顔が青くなっているのを一瞥してから……
「別に、あなたに試すつもりはないけど、見てみます?」
若奥様は私を目の前にしてイタズラっぽく笑うと、ハツさんが
持ち込んだお仕置き道具の中から目的のものを探し出します。
それは取っ手の付いた金属の棒のような物が二本でした。
一本にはループ状に編みこまれた弾力性のある細い針金が20
センチくらい取っ手の先端から伸びていますし……もう一本は、
お仏壇にあがっている蝋燭ほどの太さのものが15センチくらい
やはり取っ手に取り付けてあります。
いずれも見た目はハンダ鏝のような形をしていました。
「これを十分に焼いておいて、お尻の穴とおしっこの穴に入れ
るの。最初はガイドカバーが付いているから平気なんだけど……
ガイドを引き抜いた瞬間、ギャーってことになるわけ」
想像するだけで鳥肌、目が眩んで気絶しそうでした。
それでも、女の子ってのは仕様のないもので好奇心だけは沸き
ます。
「それって、やっぱり火傷させるんですよね?」
恐る恐る尋ねてみると……
「そうよ。理屈は心棒と同じ。火傷が完全に治るまではそこが
擦れて微妙に感じるから、罰を受けたことを簡単には忘れさせて
くれないの」
「じゃあ、ウンチのたびに……」
私は恥ずかしくなって途中でやめてしまいましたが、若奥様は
あっけらかんとして……
「そうよ。最初の一週間は毎日お医者様に自分の恥ずかしい処
を見せてお薬を塗ってもらわなきゃならないし、完全に治るまで
はウンチやオシッコをするたびに思い出すことになるわ。特に、
最初の数日はトイレに行くたび泣くほど痛いわよ」
若奥様は悪魔チックに笑います。
「私も一度だけ親にやられたけど、そのあまりの恐怖に暫くは
怖くて親のそばにも寄りつかなかったくらいだもの。……お互い
がよほど強い信頼関係で結ばれていないとやっちゃいけないこと
だわね」
「…………」
私はそんな話、どんな顔をして聞いていたんでしょうか。
ひょっとしたら、よだれを垂らしていたかもしれません。
女の子って自分に関係のない不幸な話が大好きな人種なんです
から。
「ただ良いこともあるのよ。場所が場所だけに傷が目立たない
でしょう。らそれだけは助かったわ」
「…………」
私はあまりのことに二の句がつげません。
と同時に、若奥様はどうしてこんな悲惨な思い出を明るく話せ
るんだろうと、自分の事は棚に上げて思うのでした。
すると、そんな私を見て、若奥様はこうも付け加えるのです。
「でもね、不思議なもので、私がこれによって父や母をずっと
拒否し続けたかと言うと、それがそうでもないの。3日後には、
もう以前と変わらない生活に戻ってたわ。親子ってね、そういう
ものなのよ。絆が強ければたいていの事は乗り越えてしまうもの
なの。あなたにはそこまでは求めないつもりだけど、これからは
私との関係を単にお給金をもらって働いているだけの関係だとは
思わないでね」
「はい、若奥様」
それは、『あなたは他の従業員とは違う特別な存在』いう褒め
言葉(お世辞)だと思ってあまり深く考えず頷いたのでした。
すると……
「若奥様ねえ…そんな他人行儀な呼び方はこの際やめましょう。
私と二人きりでいる時は、若奥様じゃなくて、『お母さん』って
呼んでほしいわ」
「(えっ!)」
それは別の意味で全身の毛穴が開く驚きでした。
「私はあなたを本当の娘だと思って育てたいの。そういうのは
嫌い?」
「……そういうわけでは……」
私は困惑します。正直、そんなの迷惑です。私には正規のお父
さんもお母さんがいるのですから。
でも、「イヤです」とも言えませんでした。若奥様の申し出を
むげに断ることが何だか自分の立場を悪くしてしまうな気がして
……うやむやのまま話は進んでいきます。
「もし、あなたがよければそうして頂戴。今、この家を取り仕
切ってるのは私だもの。私に着いてる方が何かと安心よ」
確かに大奥様が病気がちな今、奥向きの実権は若奥様が握って
いらっしゃるみたいでしたから、その権力に上手にすがるのが、
女の子としては正しい道なのかもしれません。
そんなことを漠然と考えていると、次には、またドキッとする
ような言葉がやってきます。
「……その代わり、うちの子と同じように、お勉強もちゃんと
やってもらうし、お仕置きだってちゃんと受けてもらいますから
ね。そこのところは覚悟しておいてね」
「はい」
私の小さな一言でどうやら話は決まったようでした。
そこで、素朴な疑問をぶつけてみます。
「どうして、私をそんなふうになさりたいんですか?」
私は恐る恐る尋ねてみました。
すると……
「どうしてって、あなたが好きだからよ。それじゃいけない?
あなたは、私好みの愛くるしい顔で、気立てもいいし、何より、
素直なところがいいわ。だから私の手元におきたいの。……それ
だけよ。他に何か理由が必要なのかしら?」
若奥様はしらっとしておっしゃいます。
私としてはそれを信じるしかありませんでした。
「さあ、無駄話はこれまで……決まりごとを片付けてしまいま
しょう」
「きまりごと」
私が小さくつぶやくと、若奥様…いえ、お義母様は笑って……
「あら、忘れちゃった?……土曜日の夜は何をするんだっけ?」
お義母様はすでに椅子に腰を下ろすと、その膝を広く空けて私
を待っています。
唾を一口飲み込んで……あとは、嫌も応もありませんでした。
すぐにその膝にうつ伏せになります。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
平手でスカートの上から軽やかにスパンキング。
「あなたは素直でやりやすいわ」
お尻を叩かれながら、お褒めの言葉を頂きました。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
次はスカートをあげて、ショーツの上から……
「美咲もあなたみたいだといいんだけど、あの子の時はこうは
いかないわ。あの子ったら、大して痛くもないくせに大仰に騒ぎ
立てるんだから……堪え性がないっていうか……女の子のくせに
みっともないって言葉を知らないのかしら」
「美咲ちゃんは、まだ小学生ですもの。お義母様に甘えてるん
です」
私は自分の立場もわきまえず思わず口が滑ります。
実際、私へのスパンキングは始まったばかり、お義母様の平手
の下にいても、私のお尻にはまだ余裕があったのでした。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
「そうかしら?」
お義母様は一旦否定しますが、思い直して……
「そうかもしれないわね。親子だから……とにかくそんな時は、
わざと最初からスナップを効かせて泣かせるの。……でも、その
点、あなたは偉かったわよ。ここに小4の時にやって来て、すぐ
に私がお仕置きしたけど、必死に堪えて泣かなかったもの。……
あれには感心したわ」
「そんなこと……その時は気が張ってたから……」
私はお義母様の褒め言葉に照れてしまいました。
「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
「同じ小4でもえらい違いね。……あなたを見習ってあの子も
奉公に出してみようかしら……」
お義母様から軽口も飛び出します。
でも、さすがにこの頃になると、私のお尻も悲鳴を上げ始めて
いました。
そして、そんな頃になって、最後の砦が取り払われます。
「ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ」
ショーツが取り払われ、お義母様の平手が素肌へじかに当たる
ようになると、お尻を叩く音も乾いた音へと変わり……。
「ピシッ」「あ~」
「少しは効いてきた?」
「ピシッ」「いっ~」
「それでこそ、こちらもやりがいがあるというものだわ」
「ピシッ」「ひぃ~」
「はいはい、わかりました。痛いのねえ。可哀想ねえ。でも、
あなたが悪いのよ」
お義母様はわざと幼児に語りかけるように私に話しかけます。
「ピシッ」「あああっ」
「ほら、もう少しだから我慢しなさい。ほらあ両手をバタバタ
させないのよ。……ハツさん、この子の両手押さえてやって……」
「ピシッ」「いたぁ~」
「痛い?堪えたかしら?…でも、だからこそのお仕置きなのよ。
堪えないお仕置きなんてやっても仕方がないでしょう」
「ピシッ」「ああああだめえ~~」
「だめえ~~って何がだめなの?…やらなきゃだめえ、なのよ。
……やらなきゃ、お仕置きは終わらないわ」
「ピシッ」「いやあ~~~」
「よし、よし、いいわよ。じゃあ、やめてあげる」
最後は両足をバタつかせ歯を喰いしばり、介添え役のハツさん
の両手をしっかりと握りしめて耐えている私に、やっとお許しが
出ました。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
ハンドスパンキングの嵐が収まってからも、私は荒い息をつき、
しばらくはそのままお義母様の膝の上で寝そべり続けます。
すると、その耳元でハツさんが……
「若奥様、お鞭は何にいたしましょう」
とたんに、頭の中がカアッとなりますが……
「いいわ、今日は……鞭はいいの。それはもっと重大な事でも
あればその時に使うことにするわ。……今日は、この子とは親子
でいたいの。肌を合せていたのよ。わかるでしょう」
「では、お浣腸とお灸の方も……」
「いえいえそれはそれでお願い。罪を犯した子を更生させたり
怠けてる子を励ましたりするのは母親の役目ですもの。それは、
たっぷりとこれからやってあげるつもりよ」
ともかくも、お尻叩きのお仕置きが終わり、お義母様は膝の上
に乗る痛んだ私のお尻を撫でながら、ハツさんと更なるお仕置き
について話をしています。
ところがそんなさなか、お義母様はふいに、さも今気づいたか
のようにして、こうおっしゃるのでした。
「あら、あなた、こんな処に蝶々の痣があるじゃないの」
お義母様は私の太股にある痣を見つけてこうおっしゃいます。
でも、これはおかしげなことでした。
だって、これまでだって何回となく私はお義母様の前で裸にな
っています。お仕置きで、お風呂で、ベッドで……
そんな時、私の痣にお義母様が気づかないはずがありません。
なのになぜ今になってこんな目立つ痣に初めて気づいたみたい
なことをおっしゃるのでしょうか。それが理解できませんでした。
「あなた、この痣は怪我かなんかでついたのかしら?それとも
生まれつき?」
「生まれつきです」
「そう、生まれつきなの……」
お義母様の手はいつしかお尻から太股の痣へと移っていました。
「あなた生年月日は?」
「昭和30年、9月15日です」
「そう、9月15日なの…………お父様、お母様は可愛がって
くださったの?」
「はい……でも、うちは兄弟が多いものですから……」
「そう、それでうちに来たの……まだ幼い頃から親元を離れて
他人の家で暮らすなんて大変なことだわ。……私でよければ甘え
てちょうだい。お仕置きの時だって我慢なんてしなくていいの。
もっともっと大きな声で泣いていいのよ。うちの美咲みたいに…」
お義母様はそこまで言うと、ショーツを上げスカートを直して
私を抱き起こします。
そして、お互いがにらめっこするように私を膝の上に乗せ直す
とこう続けるのでした。
「そんなこと急に言われたって、中学生には無理かしら?……
プライドが邪魔しちゃう?……」
お義母様は私の前髪をかきあげます。
「……でもね、子供は泣いたら泣いた分だけ『良い子、良い子』
って頭を撫でてもらえるの。なぜだかわかる?」
お義母様はそう言って私の頭を撫でました。
「…………」
「愛されてるからよ。……お仕置きされる子って無視されたり
虐められてる子とは立場が違うの。……あなたは、愛されてる子。
そんな愛されてるあなたが、愛してくださる人に、つまらない我
を張っては損だわ。その胸に飛び込んで、自分のすべてをさらけ
出さなきゃ。……そうでなきゃ、愛は得られないわ」
「…………」
私はどこかむきになったお義母様がおかしくて、思わず微笑み
ます。
「あら、今、笑ったわね、わかってくれたみたいね。そりゃあ、
今の私じゃ不満でしょうけど、私も、いずれはあなたのお父様や
お母様と同じ立場に立ちたいと思ってるの。……どんなに痛い目
にあっても、どんなに恥ずかしい事をされても、私に着いて来て
くれるようになって欲しいの」
「…………」
私はお義母様の言葉にポッと顔を赤らめました。こんな大きな
商店の奥様が私なんかを娘として扱ってくれるなんて……たとえ
言葉だけでも嬉しかったからでした。
「わかってくれたみたいね」
お義母様も満足げです。
子守っ子なんて学校が終わるとすぐに帰って仕事をしなければ
ならない身の上ですから、普通の中学生のように同年代の友達が
出来にくいのです。そんな中、若奥様は身分こそ違え私の唯一の
友だちだったのかもしれませんでした。
「さて、次はお浣腸……そこにハツさんが布団を敷いてくれた
から、寝てくれる」
お義母様の命令、この期に及んで逆らうつもりもありませんで
した。
「はい、お義母様」
白いシーツの掛かった薄い布団に仰向けになると、ハツさんが
すかさずスカートの中に手を入れてショーツを引きずり出します。
それを足首にぶら下げて、両足が高々と持ち上げられます。
「恥ずかしい?」
お義母様に尋ねられて、私は反射的に頷きます。
「…………」
でも、それは『女の子なんだからこんな反応しなきゃ』という
見栄なのです。
慣れたせいだからでしょうか、周りが女子だけだからでしょう
か、この時までは、こんな格好でいてもあまり恥ずかしいという
気持が起こりませんでした。
「今日は、お薬だけ140㏄。ちょっと大変だけど、それでも
10分だけは我慢よしてね」
お義母様はそう言いながらガラス製のピストン式浣腸器で私の
お尻を責め立てます。
50㏄浣腸器で三回。お薬を入れてる段階から、もうトイレに
行きたくなるほどでした。
「あっ…………」
声には出しませんが、オムツを当て取られている最中から顔は
歪みます。
それなのに、お義母様はこうおっしゃるのでした。
「この間はお尻に栓をしてあげたけど、今回は自分の力で頑張
ってね。そのくらい中学生なんだからできるでしょう」
「えっ!」
ショックが鳥肌を伝わって全身に行き渡ります。
「もちろん粗相してもいいのよ。お母さんが片付けてあげるわ。
でも、いきなり出しちゃったらお薬が効かないし、何より女の子
は恥ずかしいって思う気持を忘れたらいけないわ」
お義母様は優しい言葉でしたが、
「そんなことしません」
私は泣きそうな顔で答えました。
「そうそうその調子。女の子は我慢する事を忘れてはいけない
わ。……でも10分過ぎたら、はめてるオムツにそのまま出して
しまってね」
「えっ、……」
その瞬間、全身にもの凄い悪寒が走りました。
「どうしたの?遠慮しなくていいのよ。…どのみち私が着替え
させてあげるんだから……」
「えっ、おトイレは……」
甲斐のないことですが、訊いてみます。
でも……
「だから、構わないわ。せっかくあなたが私の子どもになって
くれたんですもの。最初はオムツぐらい替えてあげるわ。………
ん?……どうしたの?……イヤなの?…そうかもしれないわね、
女の子というのは痛い事より恥ずかしい事が大の苦手ですものね。
……でも、これは私の子どもとしての義務だから仕方がないわね」
「どういうことですか?」
「どういうことって?お母さんがこんなふうにお仕置きします
って言ってるのよ。娘が『イヤ』って言っちゃいけないでしょう。
お母さんの愛はしっかり受け止めなくちゃ……そうじゃなくて?」
愚問でした。でもその時から、それほどでもなかった気持が、
『とっても恥ずかしい』という気持になるのでした。
薄い布団の上でオムツが当てられると、私の体はすでにまった
なしの状態になっていました。
「さあ、いらっしゃい」
お義母様は私に膝の上へ来るように促しますが、すでにそれも
無理な状態でした。
「どうしたの?爆発しちゃうかしら?自分では起き上がれなく
なっちゃった?」
お義母様は仕方なく私を膝の上へ抱き上げ、私はすがるように
その身体に抱きつきます。
「あっ……あああん……いやあ……はあ、はあ、……苦しい…
…だめえ~~出る、出ちゃう……あああぁぁ……ごめんなさい」
全身に悪寒が走り、鳥肌がたって、唇が震えます。涙がこぼれ、
……目の前にいきなり現れたお義母様の乳首に噛み付きました。
理性のない身体。すがれるものは何でもすがりたかったのです。
「あぁぁ~~~いや~~~~苦しい~~~もう、だめえ~~」
『悶絶』ってこういう時のためにあるんだと思います。10分
という時間がこんなにも長く感じたことはありませんでした。
そして、お義母様からは……
「よく頑張ったわ。さすがに私の見込んだ子だけのことはある
わね。女の子は貞節が大事ですもの……さっ、でももういいわよ。
全部出しちゃいましょう」
「……(そんなこと言ったって)……」
私の耳にお母さんの言葉は届いていました。でも、だからって、
ここでお漏らしなんて……
私は残った力を振り絞って頑張り続けます。
すると、今度は……
「だめよ、女は貞節も大事だけど、諦めも大事なの。青い果実
でもがれたら『すっぱくて食べられない』って捨てられるけど、
だからといってあまりに熟しすぎると誰からも手を出してもらえ
ないわ。果実も女もそれはおんなじ。熟しきったところで捥いで
もらうのが一番よ。ほどよいところで諦めて、恥をかいて、次の
ステップに進まなきゃ」
私にお漏らしするように催促します。
でも、だからって、『そうですか』というわけにはいきません
でした。
しばらくは……
「そんなのいや、いや、だめ、恥ずかしい、だめ、だめ、……
トイレ行きたい、ごめんなさい、だめ、だめ、だめなんです」
と、お義母様にしがみついたまま必死に訴えましたが……
「しょうがないわね」
お義母様がこうおっしゃるので、おトイレを許してもらえるの
かと思いましたが……
私は再び薄い布団の上に寝かされます。もちろん元気な体なら
そのままトイレに立つところですが、この時はすでにそんな力も
残っていませんでした。何しろ、お尻以外にちょっとでもどこか
に力をいれたら爆発しそうだったんですから。
「さあ、うんちゃん、出てきてねえ……すっきりしましょうね」
妙ちきりんなおまじないの言葉をかけながら、お義母様が私の
下腹をさすり始めます。
すると、もう1分ともちませんでした。
「あああああああああ」
その瞬間、まるで高い崖から身を投げた時のような虚脱感が、
身体全体を包みます。
その変化は、お義母様だって分かりますから……
「大丈夫よ。大丈夫。泣かないで、あなたが悪いわけじゃない
んだから……」
気がつくと、びちょびちょのオムツを穿いて、私はお義母様の
膝の上にいました。
「寒い?……そうかもしれないわね、女の子の大事なプライド
が飛んでいっちゃったんですものね。……でも、私の前だけでは
身も心も裸でいて欲しいの」
「……どうしてですか?」
私は涙声でつぶやきます。
すると、一拍おいて、お義母様から強い言葉が返ってきました。
「それは、私があなたのお母さんだからよ」
「えっ!?」
私がまごついていると……
「大丈夫よ。これは私たち二人の秘密……外には漏れないわ」
お義母様は、ご自分の唇に人差し指を当てると微笑みます。
私はこの時初めて『この人、ひょっとして私の本当のお母さん
なのかしら』などと、馬鹿な事を思ってしまったのでした。
「さあ、キレイ、キレイしましょうね」
お義母様に翻弄され続けている私は、薄い布団の上で赤ちゃん
さながらにオムツを取り替えてもらいます。
すると、不思議なことが起こりました。最初は屈辱感で流して
いたはずの涙が、いつの間にか、喜びの涙に変わっていたのです。
「…………」
私は笑い出しそうになる自分を必死に抑えていました。
だって、こんな状況で気持がいいなんて顔をしていたら、変態
ですから。
でも……抑えても抑えても素直な喜びがこみ上げてきます。
とうとう抑えきれなくなった私の顔が、一瞬笑ってしまうと、
お義母様が目ざとく見つけて……
「あら、ご機嫌ね。赤ちゃんの時以来ですものね、こんな事は
……気持いいでしょう。女の子は、普段、厚い鎧を着てるから、
たまに脱いだ時はとても気持がいいものなのよ」
私の顔を間近に見ながら微笑返してくれるのでした。
お義母様は私の股間を何枚もの蒸しタオルでキレイにすると、
一枚の白いショーツを穿かしてくれました。
でも、それは短い時間私のお尻を保護してくれただけ。また、
すぐに脱がなければなりませんでした。
その後、幼児に返ってひとしきりお義母様のお膝で甘えていま
したが、やがて、私の耳元でお義母様が囁きます。
「さてと、それでは仕上げにかかりましょうか」
『仕上げ』それはもちろんお灸でした。
今は肌に灸痕が残るようなお仕置きをする家庭はほとんどない
かもしれませんが、私の子供時代、『お灸』は、どうにも言う事
をきかない悪童やお転婆への最終兵器として親の間で重宝されて
いましたから、身体検査の日など、お友だちの背中に新しい灸痕
を見つけることも、そう珍しい事ではありませんでした。
ですから、子守の私が、親代わりである若奥様にたとえお灸を
据えられたとしても、それは当時の基準でなら大騒ぎする事では
なかったのです。
ただ若奥様(お義母様)の場合は身体の色んな処に数多く据えら
れますから、据えられる側はたまったものではありません。
その熱さに耐えるのは、それはそれは大変なことでした。
当然、『お灸』と言われて私の顔にも緊張が走ります。
その緊張した顔に向って、お義母様は最初に……
「心棒の調子はどう?役に立ってるかしら?」
と、尋ねられたのでした。
「あっ……はい」
「それはよかったわ。人間、喉元過ぎれば熱さを忘れるものよ。
どんなに厳しいお仕置きで叱っても、今が何ともなければ、再び
過ちを犯してしまうものなの。女の子は特にそう。誘惑に流され
安いの。……でも、こうしておけば普段は感じないほんの微かな
抵抗感があなたの心にブレーキを掛けてくれるわ。……わかるで
しょう。火傷の皮膚が擦れるその感じって……」
「…………」
私は悔しいけど頷きます。
「しかも、それを感じているのはあなただけだから。誰からも
気取られる心配がない。それも良い事だわ」
「これ、ずっとこうなんですか?」
私は心配になって尋ねてみました。
すると……
「心配なの?………そうね、人にもよるけど、二、三年は歩く
たびに抵抗感が残るはずよ」
「そんなに……」
「仕方ないわ。だって、あなたは、その時はまだ子供でしょう。
戒めはまだまだ必要ですもの」
お義母様は笑います。
そして、私を安心させるように正座した膝の上で抱き直すと、
頭を撫でながらこうおっしゃるのでした。
「大丈夫よ。生涯、ずっとこのままじゃないから。たいては、
四、五年もたてばまったく感じなくなるものなの。あなたが大人
になる頃には抵抗感もなくなってるわ…………ん?どうしたの?
……あらあら、そんな深刻な顔しないで……大丈夫だって………
私は、大事な娘を片端になんかさせないわ」
私は、お義母様の胸の中に顔を埋めて、お義母様を信じるしか
ありませんでした。
「さあ、お尻からよ。準備して……」
私はお義母様の言葉に反応して、その膝にうつ伏せになって、
お尻を高く上げます。
今までなら準備はこれだけでした。
ところが……
「敬子さん。あなたも、もう中学生なんだし、小学生気分で、
何もしないで私の膝にふんぞり返ってるだけではいけないわね」
こう言われたのでした。
「????」
私は、どういう意味かを考えます。
そして、自分なりに出た結論に従って、お義母様の膝を下り、
お義母様の目の前で正座すると、三つ指をついて……
「お灸のお仕置きをお願いします」
と、頭を下げたのでした。
すると、お義母様はその時間を楽しむかのように私の顔を見て
微笑んでいらっしゃいましたが……やがて……
「やはり、あなたに目をかけたのは間違いじゃなかったみたい
ね。私は、だからあなたが好きなのよ。他人が、今自分に対して
何を望んでいるかを察知できることは、女の子にはとても大事な
資質なの。あなたはそれを持ってるもの」
どうやら私は褒められているみたいでしたが、だからといって
お仕置きが免除されたわけではありませんでした。
「さあ、いらっしゃい」
お義母様は正座したお膝の上を右手で叩きます。
「はい」
私は再びお義母様のお膝の上にうつ伏せになると、そこでお尻
を高くしますが、その際、自らスカートを捲り、ショーツを下げ
て、むき出しのお尻をお義母様に捧げたのでした。
すると、『では、お言葉に甘えて……』というわけではないの
でしょうが、沢山の艾がお尻一面に乗っかるのが分かります。
「えっ!?」
でも、驚いている暇はありませんでした。
「うっ……ああああああああああああああ」
艾に火がつけられたのと同時に私の身体は硬直します。
覚悟はしていましたが、それを、どう表現していいやら……
とにかく、艾が一面に乗ったお尻が、一気に火の手に包まれた
んですから、これはもう、かちかち山のタヌキです。
それは声にならない熱さでした。
私は何度も拳で床を叩き、炎熱地獄の苦しみを表現しましたが、
もちろん許してはもらえませんでした。
でも、このお灸、数こそ多いものの、全て寸止めだったのです。
火が回って、皮膚をほんのちょっぴり焼いた瞬間、お義母様が
火のついた艾を指の腹で押し付けて消してまわるのです。
おかげで、お仕置きの後に『きっともの凄いことになってる』
とばかり鏡で自分のお尻を見てみましたが……赤くはなっていた
ものの、そこに火傷の痕が残ることはありませんでした。
きっと、そこは大人になって目立つと可哀想だからという配慮
だったんでしょう。
ただ、どこもそうやって配慮してくれるわけではありません。
尾てい骨にはそんな情けはかけてもらえませんでした。
骨に近いその場所は火が回ると頭の天辺まで衝撃が走ります。
「ひぃ~~~~~~~~」
一度火をつけられたら、それが消えるまで、歯を喰いしばって
頑張るしかありません。
私は、またお漏らししないか、それが心配で仕方がありません
でした。
「大丈夫ね、今回は漏らしてないないわ」
お義母様の言葉に私の顔はカァーとして赤くなります。
でも、とにもかくにも第一関門突破でした。
さて次は、お義母様が私のブラウスを捲り上げ。両腕を羽交い
絞めにする中で、オッパイ(乳頭)の周りに小さい艾を五、六個
貼り付けてと、お臍の中にも据えられます。
これはハツさんの担当でした。
「あらあら、あんた、まだ男の子みたいだね」
お線香を片手に近づいてきたハツさんにそう言われても、私は
無表情でした。顔を赤らめたいところですが、今は、それどころ
ではありませんでした。
「でも、気にすることないよ。胸の小さい子の方が頭がいいっ
ていうからね」
ハツさんはそんな慰めを言いながら、私の乳首をいじります。
「あっ……いやあ……いや……あ~あ~……だめえ……うっ」
ハツさんの指は、私を興奮させるのに十分なほど執拗でしたが、
幼い私に、『やめてください』という勇気がありませんから、私は
長い時間その拷問に耐えなければなりませんでした。
もだえる身体を必死に押し殺して、頑張っていると……
「じゃあ、いくよ」
ハツさんの声がします。
そして、それはすぐでした。
「あっ!!!!」
胸のお灸は『小さな小さな艾が一瞬だけ燃えて消えた』という
だけのことでしたが……次の瞬間、私の顔色が変わります。
私の洞窟の中に雫が落ちているのが分かるのです。
「!!!!!」
大人になれば『なんだ、そんなことか』って思うことですが、
中学生の私にとって、それはとても恥ずかしいことでした。
今の子なら中二になれば当然ブラジャーをしていると思います
が、私の中学時代は総じて発育が遅かったせいか、クラスの全員
がブラをしているわけではありませんでした。特に私の場合は、
クラスの中でもペチャパイの方でしたから、日常生活では必要が
ありません。
でも、そのせいで乳首がシャツに擦れて、ちょくちょく不思議
な気持を感じることがありましたが、その大きな波が、今、ハツ
さんによってもたらされたものだったのです。
そして、お臍も……
ハツさんが、まず私のお臍の下にある小さな芽を悪戯します。
「あああああ、だめえ~~~~いやあ~~~そこいやあ~~」
私の声にならない恥ずかしい声が響くなか、今度はお臍の中に
大きな艾が……もちろんこんな場所ツボなんかじゃありません。
でも、お仕置きとしてのお灸は治療じゃありませんから、子供が
怖がる処、熱つがる処、痕が目立たない処が大人達の候補でした。
「あっ、熱い~~~~」
今度は、目の前に見える艾も大きくて燃えてる時間も長いです
から、そりゃあ怖いです。おかげで寸止めにも関わらず胸のお灸
以上にねっとりとした雫が私の洞窟の中に溢れ出てきたのがわか
ります。
「……(また……何なの、コレ、血?オリモノ?病気?)」
少し落ち着いた私は、自分の身体に起こった変化に困惑します。
でも、恥ずかしながら、その時はそれがどんなものなのか……
どうしてそうなったのか……まだ何も知りませんでした。
ポルノ雑誌など、猥雑な情報が子供の目に飛び込む機会が少な
かった当時、子供が性に関して知ってる事といえば、学校で習う
生理と病気の話だけ。
『女の子が感じるというのは、どういうことなのか』
そんなこと学校の教科書のどこにも書いてありませんし、友達
も知りませんでした。
今の人は信じられないでしょうけど、SEXって具体的にどう
するのかを知ったのは高校生になってからなんです。
ですから、親のお仕置きが、自分の性を目覚めさすきっかけに
なった子は多くて、その快感を求めてオナニーに走る子も男の子
だけでなく女の子だって決して少なくありませんでした。
「最後は、お臍の下ね。ここはお臍と違って目立ちませんから
ね。最後まで熱いのを我慢してもらいますよ」
お義母様は私を羽交い絞めにしたままで残酷に宣言します。
その後はハツさんが準備をしました。
そこは半年前にも据えられた場所。でも、すでに下草が新たに
はえ始めていましたから、再びハツさんに剃り上げてもらいます。
スカートが捲り上げられ、ショーツを下ろされて、黒こげのお
臍から下はすべて丸見えです。
でも、もうその頃になるとそうした恥ずかしさには慣れてしま
っていました。
そんな私の厚顔にお義母様は気づいたみたいでした。
ビーナスの丘に円錐形の艾が並べられても冷静な顔でいられる
私の様子は抱いているお義母様が何より一番よくわかっておいで
だったのです。
そこで……
ハツさんが九つ並んだ艾にお線香の火を近づけようとしますと
……
「あっ、待って……」
お義母様はハツさんの手を止めてしまいます。
そして……
「敬子ちゃん、あなたももう中学生なんだし、いつまでも大人
の手を煩わせていてはいけないわ。最後ぐらいご自分でなさいな」
「えっ、?」
鈍感な私は当初お義母様の言葉の意味がわかりませんでした。
それでも、ハツさんに火のついたお線香を手渡されれば、その
意味を理解します。
「えっ!!!」
私は二度びっくりです。最初は意味が分からなくて……そして、
意味がわかってまたびっくりでした。
「わかったかしら?……あなたは子供と言ってももうそんなに
幼くないの。自分の始末は自分でつけることを覚えてもいい頃よ」
お義母様は穏やかにおっしゃいますが、それって、私に自分で
目の前の艾に火をつけなさいとおっしゃっているわけで……
「…………」
私は思わず固まってしまいます。
もちろん、誰が艾に火をつけても肌に伝わる熱さに違いなんて
あるはずがありませんが、やはりその原因を自分が作るとなると、
話は別、お線香を持つ手が震えてきます。
そんな勇気のない私を見ていたお義母様がこうおっしゃるので
した。
「時間はあるわよ。私もハツさんも気は長い方だから……でも、
『このまま何もしなければ、そのうち諦めてくれるんじゃないか』
なんて思っちゃいけないわ。私たちはたとえ徹夜してもあなたの
勇気を待ってるんだから……」
私は進退が窮まってしまいました。
たしかに、これまでだって沢山のお仕置きを受けてきました。
お灸も沢山すえられてきましたが、それって、いつも大人たちが
勝手にやったきたことだったんです。
嫌がる私を押さえつけて、無慈悲に無理やり……
ですから、それって悲劇ではあっても、終われば……
『あれは大人たちが勝手にやったこと』
『私は哀れな被害者』
『悲劇のヒロインなんだから』
と、自分の心を慰めることができました。
自分のプライドを守る逃げ道があったんです。
でも、こうして自分で火をつけてしまうと、そんなささやかな
エクスキューズさえ奪われてしまうようで……
それは、とてつもなく悲しいことだったのです。
「………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………
……………………………………………………………」
長い沈黙が続きました。持っていたお線香に火の気が迫ると、
お義母様はまた新しいものを用意します。
そうやって、三本目のお線香が燃え尽きようとする時、私は、
ようやく決心して、九つある艾の一つに火を移します。
「!!!!」
当然、肌を焼くいつもの熱くて痛い瞬間が訪れます。
でも、それは一瞬でした。
まるで、示し合わせたようにハツさんが、私の肌に火が回った
瞬間、火のついた艾を消してしまうのです。
二つ目も……
三つ目も……
四つ目も……
そして、最後の九つ目だけ……
「熱い~~~~」
ハツさんはその火を消してくれませんでした。
お義母様とハツさんは何一言も打ち合わせをした様子がありま
せんでしたが、大人二人の間にはそれでいて何一つ問題がなかっ
たみたいでした。
「わかった?これが大人になるということなのよ」
お義母様はそう言うと、最後は黙って私を抱いてくださったの
でした。
**********************
3/16 サマースクール(午前中~4~)
3/16 サマースクール(午前中~4~)
「さてと……愛子さん、覚悟はできたかしら?」
春山先生は中2の少女に寄り添って語りかけます。
すると、その子は静かに頷いたのですが、オカッパ頭に隠れて
いた顔が持ち上がると、その瞳がすでに涙で濡れていました。
自分で蒔いた種ですからそれは仕方のないことなんでしょうが、
私たちも立場は同じ生徒の身ですから、その悲しげな顔には同情
を禁じえませんでした。
「じゃあ、いらっしゃい。まずは罪の清算をしてしまわないと。
……お勉強はそれからよ」
春山先生は愛子ちゃんの手を取ります。
少女の手は大きな顔の割りに細く、体つきも華奢な感じを受け
ます。椅子に座っていた時はさほど感じなかったのですが、立ち
上がってみると、その身体は実際の年齢より一つ二つ幼く感じら
れました。
そんな彼女の両肩を抱いて春山先生が向った先は、長い廊下の
先にある重い扉の部屋。もちろん、扉が重いのは中の悲鳴が外に
漏れないためなんですが……
「あなたたちもお手伝いしてくださるんでしょう」
それまで愛子ちゃんに付き添っていたシスターに尋ねられ……
「あっ、はい」
ドキンとして小さい声で答えます。
私もオマルも何一つこの件に関わっていませんが、私たちも、
何だか愛子ちゃんと一緒にお仕置きされに行く気分になっていま
した。
***************************
重い扉が開かれて5人が中に入ると、大きな衝立から別の先生
が顔をだします。さらに衝立の裏へ回ると、見慣れぬシスターの
姿も……
世間では学校の先生というのはとても忙しい仕事と聞きますが、
幸いな事に、ここでは大勢のシスターが献身的に働いてくれます
から人手には不自由していませんでした。
「木村愛子さんね。お待ちしてたわ。では、さっそくだけど、
これに着替えてね」
愛子ちゃんはここを管理する森野先生に、綺麗に畳まれた服を
一式手渡されます。
「あっ、はい」
呆然としてそれを受け取る愛子ちゃんでしたが……さっそく、
春山先生がやって来て着替えを手伝ってくれます。
「あなたたちも、この子の着替え手伝って」
私達にも声がかかり、さらに人手が増しますから、愛子ちゃん
はハッと我に返ったみたいでしたが、時すでに遅しでした。
「自分でやります」
小さな声は聞こえたものの、大勢のアシスタントに無視されて、
まるで着せ替え人形かマネキンのように着ていた服をすべて剥ぎ
取られ……愛子ちゃんはショーツ一枚の姿に……
そして、そこから、再び与えられた服を身につけ始めます。
『えっ、これって……』
出来上がった姿は私達の学園では珍しくもない小学部の通学服。
今は中2になった愛子ちゃんも、数年前まではこの制服を着て
いたことでしょう。
でも、これ、森野先生がうっかりミスではありません。
先生方がわざと愛子ちゃんに小学生の服を着せたのでした。
「………………」
何となく居心地が悪そうな愛子ちゃんに向って春山先生は理由
を説明してくださいました。
「あら、不思議かしら?中学生が小学生の服を着るの……それ
は、『あなたには、まだ中学生としての資格を与えられない』と
いうことなの。あなただってうちの小学部へ通ったから知ってる
でしょう。そこではどんなお仕置きがあったかしら?……思い出
してごらんなさい」
「………………」
こう言われて愛子ちゃんの顔が赤らんだり青ざめたりします。
それは小学校時代のお仕置きがいかにハレンチで厳しかったか
を物語っていました。
うちは、一応世間からはお嬢様学校だなんて呼ばれていますが、
学校生活の内実は、世間のイメージするものとは程遠くて、優雅
さや上品さとはまったく無縁のハレンチ学園なのです。
上級生や先生といった目上の人たちが繰り出す残酷極まりない
お仕置きが校内を跋扈し、それによって規律が保たれていました。
とりわけ小学部は厳しくて、『鉄は熱いうちに打て』とばかり
に幼児ポルノ張りの折檻が日常的もごく自然に行われていました
から、愛子ちゃんじゃなくても、あの時代のお仕置きをもう一度
受けたいだなんて思う人はまずいないと思います。
そのハレンチで厳しいお仕置きを中2になった今になってまた
やらされるだなんて、そりゃあ、心中穏やかな訳がありませんで
した。
「どうしたの、青い顔して……怖いのかしら?」
「………………」
春山先生の言葉に愛子ちゃんは意外にも素直に頷きます。
「仕方がないわね。私としても何とかしてあげたいけど、これ
ばかりはどうにもならないわ。あなたには、この先、試練を受け
て立ち直るしか、道は残ってないのよ。残酷なようだけど、ここ
まで来たら諦めが肝心だわね」
「………………」
愛子ちゃんの悲しそうな顔を見て春山先生は少女の頭をご自分
の懐にいれます。そして、こう励ますのでした。
「あなたはまだ若いからそこまで理解できないでしょうけど、
女の子にとって、諦めるってことは、決して終わりじゃないの。
だって女の子が諦めようとしているのは、たいていが自分の『我』
『エゴ』なんですもの」
「えっ?」
「罰を受ければ罪を浄化できるなんて大人の世界にはないわ。
こんなに楽な浄化は子ども時代だけの特権だもの。……あなたは
『お仕置きを受ける自分はなんて不幸なんだろう』って思ってる
でしょうけど、大人になって責任ある地位に就くようになると、
子供時代のお仕置きって、母の懐に抱かれていたのと同じくらい
懐かしい思い出になるわ」
春山先生は、愛子ちゃんの頭を懐から離すと、その肩を優しく
抱いて、広間に並んだ五つのドアのうち、一番右の扉、『浄化』
と書かれたドアへと入って行くのでした。
***************************
私とオマルも恐る恐る愛子ちゃんと春山先生のあとに続きます。
すると、ドアを開けた瞬間、強い光が私たちの顔をたたきつけ、
そこが明るい部屋だと分かりました。
強い光は人工の光ではありません。南側に大きな窓を持つその
部屋に差し込む太陽の光でした。
しかも、この部屋、床と言わず壁と言わず薄いブルーのタイル
で覆われていますからなおのこと室内が明るく感じられます。
私とオマルは、まるで銭湯のお風呂場にでも迷い込んだような
広く明るい場所ではしゃいでいましたが、愛子ちゃんはその間に
も黒いレザー張りの処置用ベッドに寝かされてしまいます。
「あなたは、今はもう中学生だけど、あなたのやったハレンチ
な行いを考えると、中学生としてお仕置きすることはできないの。
ここでのあなたは小学生。あくまで小学生としてお仕置きします。
いいですね」
「はい、先生」
春山先生の厳とした態度に、愛子ちゃんは小さな声で頷きます。
とにかく、桃園の生徒だったらそうするしかありません。そう、
諦めるしかありませんでした。
話が決まると、さっきまで愛子ちゃんを説得していたシスター
によって、短めのスカートの裾が捲り上げられ、ショーツがずり
下ろされます。
そこにはビーナスの丘に軟らかな陰毛がうっすらと生え始めて
いました。
しかし、春山先生はそのうぶ毛のような陰毛を指で触れながら
……
「こうした飾りは、まだ小学生のあなたには早いわね。綺麗に
してしまいましょう」
と、シスターに指示します。
すると、それからあっという間でした。
シスターが髭剃り用のT字剃刀で、わけなくツルツルに仕上げ
てしまいます。
「まあ、綺麗になったわ。やはり小学生はここがツルツルじゃ
なきゃ。ここに飾りがあってはいけないわね」
春山先生は綺麗になったビーナスの丘を愛おしく撫でまわしま
すが……愛子ちゃんはそれにはつとめて無表情を装っていました。
「それでは、まず身体の外側から洗いましょうか。愛子ちゃん
あの盥の中に身体を洗いましょう」
春山先生がこうおっしゃいますから、愛子ちゃんは素直にそれ
に従おうとしてベッドから起き上がったのですが……
「愛子さん。ちょっと待って……何か忘れてないかしら?」
「…………」
「分からない?他人から何かしてもらった時はね、お礼の言葉
を述べるものなのよ。そんな事、あなた小学校で習わなかった?」
「えっ……」
突然のことに戸惑う愛子ちゃん。
「女の子の世界では、お勉強ができる事より、お作法や礼儀、
ご挨拶といったことが大事なのよ」
「ごめんなさい。…………えっと、…………えっと、…………」
最初、愛子ちゃんは今の事をどう表現していいのか分からない
みたいで取り乱してしまいます。
……とりあえず……
「私のお股の毛を剃っていただきありがとうございました」
こう言うのが精一杯でした。
男性にはわかっていただけないかもしれませんが、年頃の女の
子にとっては、こんな事を口にすること自体、とても恥ずかしい
事だったのです。
おまけに……
「お礼のご挨拶をさぼった罰を与えます」
春山先生の一言で、愛子ちゃんの顔色が一層青ざめます。
春山先生の手にはすでにトォーズが握られていました。
「…そこのテーブルに両手を着きなさい」
突き出された可愛いお尻が、ここにいる誰からもようく見える
ように、シスターはスカートを背中にまで捲り上げ、ショーツも
足首まで下ろしてしまいます。
鞭のお仕置きをいただく時、中学生ならショーツを穿くことが
許されますが、小学生時代は裸のお尻が原則だったのです。
もちろん小学生だってお知り丸出しはそりゃあ恥ずかしいです
けど、その時代は、『それは先生にされることだから仕方がない』
と諦めていました。
でも、愛ちゃんはこの時中学生。心も体も色んなところで大人
へと変化してきています。恥ずかしさだって小学生時代とは比べ
ものになりません。
ですが、春山先生が妥協してくださらない以上、仕方がありま
せんでした。
「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」
立て続けにトォーズの鞭が六回。
愛子ちゃんの顔は歪み、思わず下唇を噛んで耐えます。
『先生の演技かな?』
私の脳裏に意地悪な想像が頭をよぎりました。
というのは、桃園の鞭の中には『花鞭』と呼ばれて、形だけの
鞭打ちもあるからなのです。けれど見る見るうちに愛子ちゃんの
お尻が真っ赤に変わっていきます。ですから、これは本当に痛か
ったみたいでした。
『やっぱり、最初が肝心だものね。先生だって最初から優しく
したんじゃ、なめられちゃうわよね』
私は勝手なもので、頭の中で変な納得をしてしまいます。
私の場合、そんな事されたら死んじゃうって思えるほどの罰を
言い渡されたことが何度かありましたが、でも、そのつど、途中
からは許してもらっていたのです。
桃園のお仕置きって、先生の匙加減一つでどうにでも緩くする
ことができますから、それを期待したのでした。
「愛子さん、これからは小さな粗相もすべて鞭で償ってもらい
ますから、気を引き締めてお仕置きを受けなさい。いいですね」
「はい、先生。お仕置きの鞭、ありがとうございました」
両手をゆっくりととテーブルから離した愛子ちゃんは向き直っ
て春山先生にお礼の言葉を述べます。
「よろしい、その調子よ。それでこそ桃園の生徒だわ……さあ、
次は盥で身体の外側を綺麗にしましょう」
春山先生の言葉にシスターが待ってましたとばかり愛子ちゃん
の服を脱がせ始めます。
愛子ちゃんはすでに先生やシスターの言いなり、お人形でした。
お湯をはった盥の中に裸で立たされた愛子ちゃんは、さすがに
恥ずかしそうに前を隠して中腰になりますが、でも、そんな女の
子らしいポーズもそう長くは続ける事ができませんでした。
シスターが盥の前へとやってくると……
愛子ちゃんは、さっそく気をつけの姿勢を取らされます。
要するに彼女、ここで沐浴するわけです。ですが、これって、
盥の住人にとっては決して楽な役回りではありませんでした。
というのも、この沐浴、自分で身体を洗うことは許されていま
せんでした。
ビーナス丘を綺麗にしてもらった時と同様、愛子ちゃんは大人
になされるまま身を任せなければなりません。その盥の中で必死
に立っていなければなりませんでした。
知らない人は『だって体を洗ってもらうだけなんだろう』って
簡単に考えてしまうかもしれませんが、実はこれ、体の隅々まで
硬いスポンジでゴシゴシとやられますからね、とっても痛いのです。
ましてや、それがお股の中にでも入ろうものなら、悲鳴を上げ
ないでいるのが精一杯だったのです。誰だって腰を引いてしまい
ますが、でも、それさえも……
「ほら、腰を引かないの。せっかくあなたの穢れた身体を浄化
しているのに、少しはじっとしてなさい。また、鞭でしゃきっと
してもらいたいの」
なんて、大人たちから叱られることになるのでした。
シスターたちによって身体の隅々まで綺麗に磨き上げられる頃
には、愛子ちゃんの身体は全身真っ赤かになっていました。
「さてと……これで身体の外側は綺麗になったけど……問題は
身体の中。……こちらも綺麗にしなければ意味がないわね」
春山先生は、直接『浣腸』という言葉を使いませんでしたが、
この場合、それ以外のことがなされる事なんてありませんから、
桃園の生徒なら『身体の中を洗う』って聞かされただけで覚悟を
決めることになります。
ごく普通に学んでる子でも一学期に一回位は先生方に呼ばれて
身体の中を洗ってもらうのが通例ですから、桃園学園のバッジを
付けている限り『浣腸』それ自体はそんなに驚くことではありま
せんが、ただ、問題はそのやり方でした。
最も穏当な方法は、保健室で石鹸浣腸を保健の先生にしていた
だくケース。これですと身体も楽ですし、オマルが与えられます。
恥ずかしい姿を見られるのも、保健の先生だけですみますから、
あまり問題はありませんでした。
ところが、先生のご機嫌を損ねてしまうと……
放課後、クラスメイトの見ている前で、赤ちゃんのオムツ替え
ポーズを取らされ、お薬をガラス製の浣腸器でお尻の穴から入れ
られ、散々我慢させられたあげく、最後はオムツにたれ流し……
なんて、悲惨な事になりかねません。
私も小学生の頃、オイタが過ぎて一度だけこの屈辱を味わいま
したが、お尻の穴を見られたことやウンチを見られたこともそう
ですが、私のオムツを取り替えるように命じられたクラスメイト
が、さも嫌そうにしているのを見るのが辛くてそれが一番傷つき
ました。
もちろん、こんなケース、そう多くはありませんが、それでも
小中高に限らず毎学期必ず一人や二人はこうしたことの犠牲者が
出るのも確かでした。
愛ちゃんは再び小学生時代の制服を着せられると、さっきお臍
の下を剃り上げてもらったあの黒革張りの処置用ベッドに再び横
たわるように命じられます。
愛ちゃんはおとなしくしたがっていましたから、そこは問題が
ないようにみえたのですが……
シスターによって、再びスカートが捲り上げられ、ショーツが
引き下ろされて愛子ちゃんの足首をすり抜けたその瞬間でした。
春山先生の声がします。
「あら、……それ見せてちょうだい」
先生は、今しがた脱がされたばかりのショーツをシスターから
受け取ると、その肌触りを検査します。
「愛子さん、これシルクよね」
愛子ちゃんは、思わず『しまった』という顔になりましたが、
手遅れでした。
桃園の生徒は年齢に関わらず身につける下着はすべて綿でなけ
ればなりません。発表会のような特別な場所での衣装以外、絹の
下着を身につけることは禁じられていたのです。
学生は華美に流れてはいけないという創立者の教えからでした。
私だって女の子ですから愛子ちゃんの気持ちはわかりますが、
これについては同情できませんでした。
私の心の中は……
『あ~ら、ら、あたし、知~らない』
だったのです。
***************************
「さてと……愛子さん、覚悟はできたかしら?」
春山先生は中2の少女に寄り添って語りかけます。
すると、その子は静かに頷いたのですが、オカッパ頭に隠れて
いた顔が持ち上がると、その瞳がすでに涙で濡れていました。
自分で蒔いた種ですからそれは仕方のないことなんでしょうが、
私たちも立場は同じ生徒の身ですから、その悲しげな顔には同情
を禁じえませんでした。
「じゃあ、いらっしゃい。まずは罪の清算をしてしまわないと。
……お勉強はそれからよ」
春山先生は愛子ちゃんの手を取ります。
少女の手は大きな顔の割りに細く、体つきも華奢な感じを受け
ます。椅子に座っていた時はさほど感じなかったのですが、立ち
上がってみると、その身体は実際の年齢より一つ二つ幼く感じら
れました。
そんな彼女の両肩を抱いて春山先生が向った先は、長い廊下の
先にある重い扉の部屋。もちろん、扉が重いのは中の悲鳴が外に
漏れないためなんですが……
「あなたたちもお手伝いしてくださるんでしょう」
それまで愛子ちゃんに付き添っていたシスターに尋ねられ……
「あっ、はい」
ドキンとして小さい声で答えます。
私もオマルも何一つこの件に関わっていませんが、私たちも、
何だか愛子ちゃんと一緒にお仕置きされに行く気分になっていま
した。
***************************
重い扉が開かれて5人が中に入ると、大きな衝立から別の先生
が顔をだします。さらに衝立の裏へ回ると、見慣れぬシスターの
姿も……
世間では学校の先生というのはとても忙しい仕事と聞きますが、
幸いな事に、ここでは大勢のシスターが献身的に働いてくれます
から人手には不自由していませんでした。
「木村愛子さんね。お待ちしてたわ。では、さっそくだけど、
これに着替えてね」
愛子ちゃんはここを管理する森野先生に、綺麗に畳まれた服を
一式手渡されます。
「あっ、はい」
呆然としてそれを受け取る愛子ちゃんでしたが……さっそく、
春山先生がやって来て着替えを手伝ってくれます。
「あなたたちも、この子の着替え手伝って」
私達にも声がかかり、さらに人手が増しますから、愛子ちゃん
はハッと我に返ったみたいでしたが、時すでに遅しでした。
「自分でやります」
小さな声は聞こえたものの、大勢のアシスタントに無視されて、
まるで着せ替え人形かマネキンのように着ていた服をすべて剥ぎ
取られ……愛子ちゃんはショーツ一枚の姿に……
そして、そこから、再び与えられた服を身につけ始めます。
『えっ、これって……』
出来上がった姿は私達の学園では珍しくもない小学部の通学服。
今は中2になった愛子ちゃんも、数年前まではこの制服を着て
いたことでしょう。
でも、これ、森野先生がうっかりミスではありません。
先生方がわざと愛子ちゃんに小学生の服を着せたのでした。
「………………」
何となく居心地が悪そうな愛子ちゃんに向って春山先生は理由
を説明してくださいました。
「あら、不思議かしら?中学生が小学生の服を着るの……それ
は、『あなたには、まだ中学生としての資格を与えられない』と
いうことなの。あなただってうちの小学部へ通ったから知ってる
でしょう。そこではどんなお仕置きがあったかしら?……思い出
してごらんなさい」
「………………」
こう言われて愛子ちゃんの顔が赤らんだり青ざめたりします。
それは小学校時代のお仕置きがいかにハレンチで厳しかったか
を物語っていました。
うちは、一応世間からはお嬢様学校だなんて呼ばれていますが、
学校生活の内実は、世間のイメージするものとは程遠くて、優雅
さや上品さとはまったく無縁のハレンチ学園なのです。
上級生や先生といった目上の人たちが繰り出す残酷極まりない
お仕置きが校内を跋扈し、それによって規律が保たれていました。
とりわけ小学部は厳しくて、『鉄は熱いうちに打て』とばかり
に幼児ポルノ張りの折檻が日常的もごく自然に行われていました
から、愛子ちゃんじゃなくても、あの時代のお仕置きをもう一度
受けたいだなんて思う人はまずいないと思います。
そのハレンチで厳しいお仕置きを中2になった今になってまた
やらされるだなんて、そりゃあ、心中穏やかな訳がありませんで
した。
「どうしたの、青い顔して……怖いのかしら?」
「………………」
春山先生の言葉に愛子ちゃんは意外にも素直に頷きます。
「仕方がないわね。私としても何とかしてあげたいけど、これ
ばかりはどうにもならないわ。あなたには、この先、試練を受け
て立ち直るしか、道は残ってないのよ。残酷なようだけど、ここ
まで来たら諦めが肝心だわね」
「………………」
愛子ちゃんの悲しそうな顔を見て春山先生は少女の頭をご自分
の懐にいれます。そして、こう励ますのでした。
「あなたはまだ若いからそこまで理解できないでしょうけど、
女の子にとって、諦めるってことは、決して終わりじゃないの。
だって女の子が諦めようとしているのは、たいていが自分の『我』
『エゴ』なんですもの」
「えっ?」
「罰を受ければ罪を浄化できるなんて大人の世界にはないわ。
こんなに楽な浄化は子ども時代だけの特権だもの。……あなたは
『お仕置きを受ける自分はなんて不幸なんだろう』って思ってる
でしょうけど、大人になって責任ある地位に就くようになると、
子供時代のお仕置きって、母の懐に抱かれていたのと同じくらい
懐かしい思い出になるわ」
春山先生は、愛子ちゃんの頭を懐から離すと、その肩を優しく
抱いて、広間に並んだ五つのドアのうち、一番右の扉、『浄化』
と書かれたドアへと入って行くのでした。
***************************
私とオマルも恐る恐る愛子ちゃんと春山先生のあとに続きます。
すると、ドアを開けた瞬間、強い光が私たちの顔をたたきつけ、
そこが明るい部屋だと分かりました。
強い光は人工の光ではありません。南側に大きな窓を持つその
部屋に差し込む太陽の光でした。
しかも、この部屋、床と言わず壁と言わず薄いブルーのタイル
で覆われていますからなおのこと室内が明るく感じられます。
私とオマルは、まるで銭湯のお風呂場にでも迷い込んだような
広く明るい場所ではしゃいでいましたが、愛子ちゃんはその間に
も黒いレザー張りの処置用ベッドに寝かされてしまいます。
「あなたは、今はもう中学生だけど、あなたのやったハレンチ
な行いを考えると、中学生としてお仕置きすることはできないの。
ここでのあなたは小学生。あくまで小学生としてお仕置きします。
いいですね」
「はい、先生」
春山先生の厳とした態度に、愛子ちゃんは小さな声で頷きます。
とにかく、桃園の生徒だったらそうするしかありません。そう、
諦めるしかありませんでした。
話が決まると、さっきまで愛子ちゃんを説得していたシスター
によって、短めのスカートの裾が捲り上げられ、ショーツがずり
下ろされます。
そこにはビーナスの丘に軟らかな陰毛がうっすらと生え始めて
いました。
しかし、春山先生はそのうぶ毛のような陰毛を指で触れながら
……
「こうした飾りは、まだ小学生のあなたには早いわね。綺麗に
してしまいましょう」
と、シスターに指示します。
すると、それからあっという間でした。
シスターが髭剃り用のT字剃刀で、わけなくツルツルに仕上げ
てしまいます。
「まあ、綺麗になったわ。やはり小学生はここがツルツルじゃ
なきゃ。ここに飾りがあってはいけないわね」
春山先生は綺麗になったビーナスの丘を愛おしく撫でまわしま
すが……愛子ちゃんはそれにはつとめて無表情を装っていました。
「それでは、まず身体の外側から洗いましょうか。愛子ちゃん
あの盥の中に身体を洗いましょう」
春山先生がこうおっしゃいますから、愛子ちゃんは素直にそれ
に従おうとしてベッドから起き上がったのですが……
「愛子さん。ちょっと待って……何か忘れてないかしら?」
「…………」
「分からない?他人から何かしてもらった時はね、お礼の言葉
を述べるものなのよ。そんな事、あなた小学校で習わなかった?」
「えっ……」
突然のことに戸惑う愛子ちゃん。
「女の子の世界では、お勉強ができる事より、お作法や礼儀、
ご挨拶といったことが大事なのよ」
「ごめんなさい。…………えっと、…………えっと、…………」
最初、愛子ちゃんは今の事をどう表現していいのか分からない
みたいで取り乱してしまいます。
……とりあえず……
「私のお股の毛を剃っていただきありがとうございました」
こう言うのが精一杯でした。
男性にはわかっていただけないかもしれませんが、年頃の女の
子にとっては、こんな事を口にすること自体、とても恥ずかしい
事だったのです。
おまけに……
「お礼のご挨拶をさぼった罰を与えます」
春山先生の一言で、愛子ちゃんの顔色が一層青ざめます。
春山先生の手にはすでにトォーズが握られていました。
「…そこのテーブルに両手を着きなさい」
突き出された可愛いお尻が、ここにいる誰からもようく見える
ように、シスターはスカートを背中にまで捲り上げ、ショーツも
足首まで下ろしてしまいます。
鞭のお仕置きをいただく時、中学生ならショーツを穿くことが
許されますが、小学生時代は裸のお尻が原則だったのです。
もちろん小学生だってお知り丸出しはそりゃあ恥ずかしいです
けど、その時代は、『それは先生にされることだから仕方がない』
と諦めていました。
でも、愛ちゃんはこの時中学生。心も体も色んなところで大人
へと変化してきています。恥ずかしさだって小学生時代とは比べ
ものになりません。
ですが、春山先生が妥協してくださらない以上、仕方がありま
せんでした。
「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」
立て続けにトォーズの鞭が六回。
愛子ちゃんの顔は歪み、思わず下唇を噛んで耐えます。
『先生の演技かな?』
私の脳裏に意地悪な想像が頭をよぎりました。
というのは、桃園の鞭の中には『花鞭』と呼ばれて、形だけの
鞭打ちもあるからなのです。けれど見る見るうちに愛子ちゃんの
お尻が真っ赤に変わっていきます。ですから、これは本当に痛か
ったみたいでした。
『やっぱり、最初が肝心だものね。先生だって最初から優しく
したんじゃ、なめられちゃうわよね』
私は勝手なもので、頭の中で変な納得をしてしまいます。
私の場合、そんな事されたら死んじゃうって思えるほどの罰を
言い渡されたことが何度かありましたが、でも、そのつど、途中
からは許してもらっていたのです。
桃園のお仕置きって、先生の匙加減一つでどうにでも緩くする
ことができますから、それを期待したのでした。
「愛子さん、これからは小さな粗相もすべて鞭で償ってもらい
ますから、気を引き締めてお仕置きを受けなさい。いいですね」
「はい、先生。お仕置きの鞭、ありがとうございました」
両手をゆっくりととテーブルから離した愛子ちゃんは向き直っ
て春山先生にお礼の言葉を述べます。
「よろしい、その調子よ。それでこそ桃園の生徒だわ……さあ、
次は盥で身体の外側を綺麗にしましょう」
春山先生の言葉にシスターが待ってましたとばかり愛子ちゃん
の服を脱がせ始めます。
愛子ちゃんはすでに先生やシスターの言いなり、お人形でした。
お湯をはった盥の中に裸で立たされた愛子ちゃんは、さすがに
恥ずかしそうに前を隠して中腰になりますが、でも、そんな女の
子らしいポーズもそう長くは続ける事ができませんでした。
シスターが盥の前へとやってくると……
愛子ちゃんは、さっそく気をつけの姿勢を取らされます。
要するに彼女、ここで沐浴するわけです。ですが、これって、
盥の住人にとっては決して楽な役回りではありませんでした。
というのも、この沐浴、自分で身体を洗うことは許されていま
せんでした。
ビーナス丘を綺麗にしてもらった時と同様、愛子ちゃんは大人
になされるまま身を任せなければなりません。その盥の中で必死
に立っていなければなりませんでした。
知らない人は『だって体を洗ってもらうだけなんだろう』って
簡単に考えてしまうかもしれませんが、実はこれ、体の隅々まで
硬いスポンジでゴシゴシとやられますからね、とっても痛いのです。
ましてや、それがお股の中にでも入ろうものなら、悲鳴を上げ
ないでいるのが精一杯だったのです。誰だって腰を引いてしまい
ますが、でも、それさえも……
「ほら、腰を引かないの。せっかくあなたの穢れた身体を浄化
しているのに、少しはじっとしてなさい。また、鞭でしゃきっと
してもらいたいの」
なんて、大人たちから叱られることになるのでした。
シスターたちによって身体の隅々まで綺麗に磨き上げられる頃
には、愛子ちゃんの身体は全身真っ赤かになっていました。
「さてと……これで身体の外側は綺麗になったけど……問題は
身体の中。……こちらも綺麗にしなければ意味がないわね」
春山先生は、直接『浣腸』という言葉を使いませんでしたが、
この場合、それ以外のことがなされる事なんてありませんから、
桃園の生徒なら『身体の中を洗う』って聞かされただけで覚悟を
決めることになります。
ごく普通に学んでる子でも一学期に一回位は先生方に呼ばれて
身体の中を洗ってもらうのが通例ですから、桃園学園のバッジを
付けている限り『浣腸』それ自体はそんなに驚くことではありま
せんが、ただ、問題はそのやり方でした。
最も穏当な方法は、保健室で石鹸浣腸を保健の先生にしていた
だくケース。これですと身体も楽ですし、オマルが与えられます。
恥ずかしい姿を見られるのも、保健の先生だけですみますから、
あまり問題はありませんでした。
ところが、先生のご機嫌を損ねてしまうと……
放課後、クラスメイトの見ている前で、赤ちゃんのオムツ替え
ポーズを取らされ、お薬をガラス製の浣腸器でお尻の穴から入れ
られ、散々我慢させられたあげく、最後はオムツにたれ流し……
なんて、悲惨な事になりかねません。
私も小学生の頃、オイタが過ぎて一度だけこの屈辱を味わいま
したが、お尻の穴を見られたことやウンチを見られたこともそう
ですが、私のオムツを取り替えるように命じられたクラスメイト
が、さも嫌そうにしているのを見るのが辛くてそれが一番傷つき
ました。
もちろん、こんなケース、そう多くはありませんが、それでも
小中高に限らず毎学期必ず一人や二人はこうしたことの犠牲者が
出るのも確かでした。
愛ちゃんは再び小学生時代の制服を着せられると、さっきお臍
の下を剃り上げてもらったあの黒革張りの処置用ベッドに再び横
たわるように命じられます。
愛ちゃんはおとなしくしたがっていましたから、そこは問題が
ないようにみえたのですが……
シスターによって、再びスカートが捲り上げられ、ショーツが
引き下ろされて愛子ちゃんの足首をすり抜けたその瞬間でした。
春山先生の声がします。
「あら、……それ見せてちょうだい」
先生は、今しがた脱がされたばかりのショーツをシスターから
受け取ると、その肌触りを検査します。
「愛子さん、これシルクよね」
愛子ちゃんは、思わず『しまった』という顔になりましたが、
手遅れでした。
桃園の生徒は年齢に関わらず身につける下着はすべて綿でなけ
ればなりません。発表会のような特別な場所での衣装以外、絹の
下着を身につけることは禁じられていたのです。
学生は華美に流れてはいけないという創立者の教えからでした。
私だって女の子ですから愛子ちゃんの気持ちはわかりますが、
これについては同情できませんでした。
私の心の中は……
『あ~ら、ら、あたし、知~らない』
だったのです。
***************************
3/15 サマースクール(午前中~3~)
3/15 サマースクール(午前中~3~)
*)また、自分の世界へ戻ってきました。(^-^)/
その部屋は12畳ほどの広さがありましたが、奥に大きな事務
机と書棚があって、それに壁際に荷物置きのような飾り気のない
テーブルと古いソファが一つ。その他には家具らしいものは何も
ありません。
広さの割にはガランとした部屋でした。
ただ、ここへ連れて来られた子供たちにしてみると、それ以外
のことが気になります。
一つは大きな事務机の後ろの壁に掛けられた大きな額。
そこに描かれている創立者の大西胤子女史の肖像画があまりに
凛々しくて、子供たちにしてみると、その絵を目の当たりにした
だけで何だか叱られたような気分になってしまいます。
それにもう一つ、事務机の脇にある傘たてに放り込まれたり、
その上の壁に掛けられた色んな種類の鞭の数々。
樺の小枝を束ねた鞭やケイン、黒光りするトォーズ(革紐鞭)、
や乗馬鞭、そして伸ばせば2mはあろうかという牛追い鞭まで、
多種多様な鞭がまるでコレクションのようにして飾られています。
これらは実際に使われることはありませんが、女の子を脅すに
は十分効果的でした。
そんな悪趣味な部屋へ、私とオマルは老シスターに肩を抱かれ
て連れてこられます。
「失礼いたします」
挨拶のあと、そのシスターが事務机からこちらをいぶかしげに
見ている学園長の耳元に二人の事を告げ口して、事は始まるので
した。
この時、事務机の主は、遠く九州の系列校から派遣されていた
春山先生。彼女がこのサマースクールを取り仕切っていました。
40歳前後でしょうか……ウェーブの掛かった長い髪を肩まで
たらしたそのお顔は柔和で、私にはパッと見、優しそうにも見え
ますが、もちろん、こちらは叱られる身、警戒を緩めたりはでき
ませんでした。
先生はシスターの報告を聞き終わると、まず、私たちに向って
右手を小さくパタパタさせます。
これは、『そこに敷物に膝まづきなさい』という合図でした。
私たち二人は、目の前にある敷物に膝をつけて、両手を胸の前
で組みます。これは桃園学園で生徒が先生に対して恭順をしめす
時にする伝統のポーズなのですが、これって、要するに……
『どんな言い訳もしません。どんなお仕置きも引き受けます』
という意味だったのです。
すると、春山先生は大きな事務机を回って、私たちの目の前へ。
そして、先生もまた、その敷物の前で膝まづかれたのでした。
『何かヤバイかな?』
息がかかるほどのとても近い距離でのお話。こちらはてっきり
事務机のその場所から私たちを見下ろして、お説教が始まるもの
とばかり思ってましたから、もうそれだけでどぎまぎです。
「伯爵様の処は楽しかったかしら?」
いきなり、返事に窮するような質問が飛んできます。
でも、答えないわけにもいきませんから……
「はい」
と、私が小さな声で答えると、オマルにも……
「小川さん、あなたは、ここ、初めてよね」
「はい」
「千賀さんに誘われたの?」
「いいえ、勝手に……チッチは関係ありません。私が勝手に、
彼女、毎年来てるみたいだし、どんな処か知りたくて……」
「そう、……それで、楽しいかしら?」
「…………それは」
「だって、もともとここはあなた方のような優等生が来る場所
じゃないもの。勉強嫌いの落ちこぼれさんたちの為に企画された
キャンプなのよ。そのことは知ってるわよね」
「は、はい……」
「だから、千賀さんが伯爵様の部屋へ出入りしていると最初に
分かった時は『とんでもないことだから、やめさせるべきです』
って、主張する先生もいたの……」
「…………」
「驚いた?……でも、むしろそう主張するほうが世間では正論
なのよ。……でも、ここでは多くの先生方の考えが違ってたの。
どう違ってたか、千賀さんわかるかしら?」
「それは……」
「勉強ができないのも、家に帰りたくないのも、それはそれで
どちらも心に傷があるからだからで、単に勉強を教える事だけが
教師の仕事じゃないんじゃないかってことになったの。幸い事情
をお話したら、千賀さんのお父様も伯爵様も快く受け入れてくだ
さったから、今日までこんな不思議な事が続いてるのよ」
「じゃあ、父もこのことは……」
「もちろん、ご存知よ。……あら、あなたお父様がご存じない
とでも思ってたの。だって、毎年期末テストを白紙で出す子が、
夏休みを終えると再びクラスのトップに返り咲くなんて、そんな
奇跡が毎回毎回続くはずないじゃない。誰だって、そんな馬鹿な
こと、まともに信じたりはしないわ」
「そりゃあ、そうですですけど……父は私に無関心ですから」
「そんなことないわ。あなたって成績の割りに心は子供なのね。
お父様はとてもあなたのことを気にかけておいでなのよ。常々、
あなたに関することはどんな些細なことも細大漏らさず報告する
ようにっておっしゃってるわ」
「だって、今まで何も言ってくれなかったし……特別扱いも、
これといってなかったみたいだから……」
私は顔を赤らめました。
「だって、あなたは勝手に白紙の答案をだしてここへ来たんで
すもの。こちらも、あなたを特別扱いしなければならない理由が
ないわ……そうでしょう?」
「…………ええ」
「あなたは、ここではみんなと同じ落第生。みんなと同じよう
に、ここでの規則を守って暮らさなければならない困ったちゃん
の一人だわ。だから今日だって、4時限目の授業に遅れたから、
ここにこうして呼ばれたんでしょう?」
「はい、ごめんなさい」
「よろしい、素直でなによりだわ」
先生は満足そうな笑顔で立ち上がります。
その直後でした。
奥の部屋で物音が……
「いやあ~だめえ~ごめんなさい」
女の子の悲鳴がほんの小さくですが、大きな事務机の後ろから
聞こえてきます。そこはこの部屋のさらにずっと奥の部屋。私も
一度覗いたことがありますが、そこは『折檻部屋』という名前が
ぴったりの場所でした。
その声がインターホンがオンにしてあった為に流れたのでした。
「まったく、みっともない声をあげて……」
春山先生は慌てて事務机にもどり首を振りながらインターホン
をオフにします。そして、私たちにこう付け加えました。
「一人、ここを脱走した中学生がいて、その子のお仕置きなの。
ああした子は堪え性がないから、勉強の前にまずはお仕置きして
我慢することを覚えさせてからでないと勉強もはかどらないわ」
先生のため息に私とオマルは思わず二人で顔を見合わせます。
お互い、相手の目はなんて大きいんだろうって思いました。
すると……
「あら、どうしたの?怖いの?…でも、そうかもしれないわね」
先生は素っ頓狂な顔の二人を見て苦笑いです。
「あなたたちみたいな優等生は滅多にお仕置きなんてされない
もの……そうだ、あなたたちに手伝ってもらいましょうか。……
あの子のお仕置き」
「!」
「!」
私たちは再び顔を見合わせます。
もちろん、そんなのイヤですが、イヤとは言えませんでした。
「あなたたちのお尻をぶつより、その方がよほどあなたたちの
為にもなるわ。……だって、同じ桃園の生徒といっても劣等生が
受ける厳しいお仕置きなんて、あなたたち見たことないでしょう。
これも一種の社会科見学よ。ついてらっしゃい」
私たちは春山先生の後に続きます。
今はそうするしかありませんでした。
***************************
お仕置き部屋への入口は、大きな事務机の右奥にある小さな扉
から入ります。そこはドアを全開にしても、身をかがめて中腰に
ならなければ通れません。おまけに、その先もトンネルになって
いて、洞窟の中を三人は中腰で進みます。
「まるで忍者屋敷ね。どうして、お仕置き部屋をこんな不便な
処に造ったのかしら?」
オマルがこぼすと春山先生が答えます。
「逃走防止のためよ。あなたたちみたいに聞き分けのいい子ば
かりなら問題ないんだけど、うちには何かというと脱走したがる
子が大勢いるの。ましてお仕置きなんてされてたら、なおさらで
しょう。……さあ、もうすぐよ。明かりが見えてきたわ」
窮屈な姿勢で20m。薄暗い穴の中を進むのは本当に骨が折れ
ました。
「ふう~やっと出た」
私は出口で大きく背伸びします。
と同時にその両目も大きく見開きます。
そこは広いサンテラスのような場所。目の前は深い崖ですが、
遠くまで緑の山々を見渡せて、さながら観光名所にでも迷い込ん
だ面持ちでした。
「ヤッホー」
オマルが思わず叫びますが、そのくらい美しい景色でした。
「素敵な場所でしょう。本当は、こちらに教室を作ろうという
意見もあったくらいなのよ。でも、胤子先生(創立者)が薄暗い
地下室なんかより、こんなすがすがしい場所の方がより多くの子
が改心するんじゃないかしらっておっしゃって、それで、ここが
子どもたちをお仕置きする場所に決まったの。……それに、ここ
なら、どんな大声をだしてもお友だちのいる教室までその悲鳴が
届かないでしょう。お仕置き部屋としてはうってつけだわ」
春山先生はにこやかでしたが、私たち二人はまたもや顔を見合
わせます。
いくら普段あまり厄介にならない場所といっても私たちは未だ
生徒の身、お仕置きの事を楽しげに語る春山先生には背筋が凍る
思いがしたのでした。
「こちらへ、いらっしゃい。あなた方にはお手伝いしてもらい
たことがあるの」
おじけづく二人に、春山先生がサンテラスから続くロッヂ風の
建物の扉を開けます。
今さら逃げ隠れ出来ない二人が恐る恐る踏み込んだ室内は……
『何よ、コレ!?』
『やだあ~~なつかしい~~』
と思う景色でした。
12畳ほどの明るい部屋に、円錐形の帽子を被って椅子に座る
子やわざと大きく作られた幼児用木馬に跨る子、椅子の座面に膝
まづいてその背もたれを抱くようにしている子など様々です。
そして、どの子の傍らにもシスターがいて子供たちに何やら話
かけています。
実はこれ、桃園学園の幼稚園に実際にあったのお仕置き部屋を
そのまま模したものだったのです。
桃園の幼稚園では、オイタを繰り返したり、お言い付けを守れ
ない子はこんな部屋に隔離されてしまいます。
そして、椅子や木馬や先生のお膝の上なんかで先生のお説教を
聴く訳ですが、これが女の子の世界ですからね、くどくどしくて
長いんです。
でも、それをちゃん聞いて『ごめんなさい』を言わないうちは
決して許してもらえませんでした。
泣いたり、笑ったり、怒ったり、あくびをしたり、なんてのは
ダメなんです。
真面目な顔で最後まで聞いて、『ごめんなさい』が言えないと、
たとえお母さんがお迎えに来ていても返してもらえませんでした。
幼稚園児が相手ですから、ぶったり叩いたりはありませんが、
先生たちも決して妥協はしませんでした。
「ねえ、あなた、お母さんをどのくらい待たせたことあるの?」
オマルが懐かしがって私に尋ねてきます。
「覚えてないけど、1時間くらいならあったと思うわ。最後は
泣きながら『ごめんなさい』の連呼だったけど……」
「優秀じゃないの。あたしなんか、母に手を引かれて幼稚園を
出た時は星がまたたいてたなんてことが何度もあったわ。『どう
してあなたはそんなに強情なの』ってよく母に叱られたけど……
『許してくれないんだから仕方がないじゃない』ってそこでまた
おおむくれよ」
「とにかく『心から反省してます』って態度になるまでは妥協
しない先生方だったけど、こっちも自分の気持をどう表現したら
いいのか分からなくて、最初から最後まで泣きっぱなしだったわ」
「言えてる。あの幼稚園泣けば許されるってもんじゃないから
辛いのよね」
二人が昔の話題で盛り上がってるところに春山先生が口を挟み
ます。
「それは、ここでも同じよ。このくらいの歳になると『うわべ
だけ反省してますって顔を作りさえすれば、それでごまかせる』
って思い込んでる輩が大勢いるけど、それではいつまでたっても
この部屋は出られないの」
「でも、そうすると、いつまでも先生とにらめっこすることに
なりませんか?」
「だから、そういう時は、そういう気持になりやすいように、
サポートしてあげるの」
春山先生の言葉に二人の背筋が反応します。
『サポートって……オシオキ』
『サポートって……オシオキ』
思い浮かぶことは二人とも同じでした。
その思いを見透かしたように春山先生が……
「あなた達だって、これまでに一回や二回は経験したでしょう。
幼稚園の頃ならいざ知らず、少しぐらい理屈が言えるようになる
と誰だって我を通したい時があるもの。……でも、そんな時って、
どうなったかしら?」
『やっぱり……オシオキ』
『やっぱり……オシオキ』
思い浮かぶことはやっぱり二人とも同じでした。
「中学生の頃ってね、自分の思い込みだけで正義や真理を語る
お年頃なの。とにかく自分だけが正しくて、他の人の意見が邪魔
で仕方がないよ。だから初めは聞く耳をもたないわ。……でも、
それでは、いくら説得しても無駄だから、そんな時は別の方法を
試す事になるんだけど……桃園では何をするか、二人ともご存知
よね?」
「お灸もやるんですか?」
思わず、オマルが口を滑らすと……
「ええ、やるわよ。……桃園の勲章みたいなものですものね。
あなたたちみたいに優秀な子でも、一度くらいは経験したことが
あるんじゃなくて?」
春山先生の悪戯っぽい笑顔に二人は思わず顔を見合わせます。
お互いの、そのえも言われぬ複雑な表情は、不本意ながら経験
済みということでした。
「ほら、あそこに、円錐形の帽子を被って丸い回転椅子に腰を
下ろしてる子がいるでしょう」
二人は春山先生の視線の先を見つめます。
そこでは、おかっぱ頭の少女が回転椅子をほんの少しだけ左右
に動かし、俯き加減に少し怒ったような表情で、シスターのお話
を聞いています。
少女はシスターのお話を無視しているわけでも、あからさまに
反抗的な態度をとっているわけではありません。世間的にみれば、
先生からお説教を聞く態度としてはこれで十分なのかもしれませ
んが、桃園の場合はさらに厳しいモラルを子どもたちに求めます
から、その基準に照らすと、これでは不十分でした。
「あのような反抗的な態度では、とても反省しているとは言え
ないわね」
春山先生の嘆きに二人は小さく頷きます。
幼稚園の頃『心から本当に申し訳ないという顔』ができるまで、
家に帰してもらえなかった二人としては、春山先生の評価だって
十分に頷けるのでした。
「あの子、何したんですか?」
私が尋ねると……
「脱走よ。大脱走。親に連れられて一旦はここの門をくぐった
んだけど、隙をみて逃げ出したの。手分けして探してもらったら、
近くの街のゲーセンで楽しんでたわ」
「それで……お仕置き……」
「人には色んな事情があるから『どんな場合もまず体罰』って
考えは持たないつもりでいるけど、事情を徹底的に訊いてみて、
それがその子の心の弱さから来る場合は、お仕置きも選択肢よ」
「…………」
「…………」
「あら、そんなに緊張しないで……何もあなたたちをお仕置き
しようというんじゃないんだから……ただね、心の弱い子という
のは、表向き『お仕置きはイヤだ!そんな事されたら死んじゃう』
なんてだだをこねていても、自分じゃ何もできない決められない
子たちだから、本心は誰かに背中を押してもらいたがってるの。
他人から強制されることで、『あれは仕方がない事だったんだ』
って自分の心を納得させて始めたいのよ。そうすればうまくいか
なかったとしても他人のせいにできるでしょう。……あなた達は
そんな経験ないかしら?」
『……言い訳?……責任転嫁?』
そんな言葉が頭の中をぐるぐる回ります。
私だって弱い人間ですからそんなことがないはずがありません
でした。
「うまくいかなかった時の保険をかけたいのよ。あなたたちの
中にもそれはあるでしょうけど……劣等生の場合は、それが極端
なの。……でも、ここでは失敗はさせないわ。むしろ、圧倒的に
恥ずかしいこと、辛いことをさせてから必ず成功させるの。成功
するってどういうことなのかを身体に叩き込んで覚えさせるのが
この学校の目的ですもの。ですから、あなたたちが幼稚園時代、
反省するまで家に帰してもらえなかったように、ここでは成果を
上げるまで、元いた自分たちの学校へは戻さないわ」
春山先生の言葉は今の私たちには直接関係ないかもしれません。
でも、私にしてもオマルにしても、この学園で長く生徒をやって
いればお仕置き以外にも辛いことは山ほど経験しています。です
から、春山先生の言葉は私達の背中だって凍らすのに十分だった
のでした。
***************************
*)また、自分の世界へ戻ってきました。(^-^)/
その部屋は12畳ほどの広さがありましたが、奥に大きな事務
机と書棚があって、それに壁際に荷物置きのような飾り気のない
テーブルと古いソファが一つ。その他には家具らしいものは何も
ありません。
広さの割にはガランとした部屋でした。
ただ、ここへ連れて来られた子供たちにしてみると、それ以外
のことが気になります。
一つは大きな事務机の後ろの壁に掛けられた大きな額。
そこに描かれている創立者の大西胤子女史の肖像画があまりに
凛々しくて、子供たちにしてみると、その絵を目の当たりにした
だけで何だか叱られたような気分になってしまいます。
それにもう一つ、事務机の脇にある傘たてに放り込まれたり、
その上の壁に掛けられた色んな種類の鞭の数々。
樺の小枝を束ねた鞭やケイン、黒光りするトォーズ(革紐鞭)、
や乗馬鞭、そして伸ばせば2mはあろうかという牛追い鞭まで、
多種多様な鞭がまるでコレクションのようにして飾られています。
これらは実際に使われることはありませんが、女の子を脅すに
は十分効果的でした。
そんな悪趣味な部屋へ、私とオマルは老シスターに肩を抱かれ
て連れてこられます。
「失礼いたします」
挨拶のあと、そのシスターが事務机からこちらをいぶかしげに
見ている学園長の耳元に二人の事を告げ口して、事は始まるので
した。
この時、事務机の主は、遠く九州の系列校から派遣されていた
春山先生。彼女がこのサマースクールを取り仕切っていました。
40歳前後でしょうか……ウェーブの掛かった長い髪を肩まで
たらしたそのお顔は柔和で、私にはパッと見、優しそうにも見え
ますが、もちろん、こちらは叱られる身、警戒を緩めたりはでき
ませんでした。
先生はシスターの報告を聞き終わると、まず、私たちに向って
右手を小さくパタパタさせます。
これは、『そこに敷物に膝まづきなさい』という合図でした。
私たち二人は、目の前にある敷物に膝をつけて、両手を胸の前
で組みます。これは桃園学園で生徒が先生に対して恭順をしめす
時にする伝統のポーズなのですが、これって、要するに……
『どんな言い訳もしません。どんなお仕置きも引き受けます』
という意味だったのです。
すると、春山先生は大きな事務机を回って、私たちの目の前へ。
そして、先生もまた、その敷物の前で膝まづかれたのでした。
『何かヤバイかな?』
息がかかるほどのとても近い距離でのお話。こちらはてっきり
事務机のその場所から私たちを見下ろして、お説教が始まるもの
とばかり思ってましたから、もうそれだけでどぎまぎです。
「伯爵様の処は楽しかったかしら?」
いきなり、返事に窮するような質問が飛んできます。
でも、答えないわけにもいきませんから……
「はい」
と、私が小さな声で答えると、オマルにも……
「小川さん、あなたは、ここ、初めてよね」
「はい」
「千賀さんに誘われたの?」
「いいえ、勝手に……チッチは関係ありません。私が勝手に、
彼女、毎年来てるみたいだし、どんな処か知りたくて……」
「そう、……それで、楽しいかしら?」
「…………それは」
「だって、もともとここはあなた方のような優等生が来る場所
じゃないもの。勉強嫌いの落ちこぼれさんたちの為に企画された
キャンプなのよ。そのことは知ってるわよね」
「は、はい……」
「だから、千賀さんが伯爵様の部屋へ出入りしていると最初に
分かった時は『とんでもないことだから、やめさせるべきです』
って、主張する先生もいたの……」
「…………」
「驚いた?……でも、むしろそう主張するほうが世間では正論
なのよ。……でも、ここでは多くの先生方の考えが違ってたの。
どう違ってたか、千賀さんわかるかしら?」
「それは……」
「勉強ができないのも、家に帰りたくないのも、それはそれで
どちらも心に傷があるからだからで、単に勉強を教える事だけが
教師の仕事じゃないんじゃないかってことになったの。幸い事情
をお話したら、千賀さんのお父様も伯爵様も快く受け入れてくだ
さったから、今日までこんな不思議な事が続いてるのよ」
「じゃあ、父もこのことは……」
「もちろん、ご存知よ。……あら、あなたお父様がご存じない
とでも思ってたの。だって、毎年期末テストを白紙で出す子が、
夏休みを終えると再びクラスのトップに返り咲くなんて、そんな
奇跡が毎回毎回続くはずないじゃない。誰だって、そんな馬鹿な
こと、まともに信じたりはしないわ」
「そりゃあ、そうですですけど……父は私に無関心ですから」
「そんなことないわ。あなたって成績の割りに心は子供なのね。
お父様はとてもあなたのことを気にかけておいでなのよ。常々、
あなたに関することはどんな些細なことも細大漏らさず報告する
ようにっておっしゃってるわ」
「だって、今まで何も言ってくれなかったし……特別扱いも、
これといってなかったみたいだから……」
私は顔を赤らめました。
「だって、あなたは勝手に白紙の答案をだしてここへ来たんで
すもの。こちらも、あなたを特別扱いしなければならない理由が
ないわ……そうでしょう?」
「…………ええ」
「あなたは、ここではみんなと同じ落第生。みんなと同じよう
に、ここでの規則を守って暮らさなければならない困ったちゃん
の一人だわ。だから今日だって、4時限目の授業に遅れたから、
ここにこうして呼ばれたんでしょう?」
「はい、ごめんなさい」
「よろしい、素直でなによりだわ」
先生は満足そうな笑顔で立ち上がります。
その直後でした。
奥の部屋で物音が……
「いやあ~だめえ~ごめんなさい」
女の子の悲鳴がほんの小さくですが、大きな事務机の後ろから
聞こえてきます。そこはこの部屋のさらにずっと奥の部屋。私も
一度覗いたことがありますが、そこは『折檻部屋』という名前が
ぴったりの場所でした。
その声がインターホンがオンにしてあった為に流れたのでした。
「まったく、みっともない声をあげて……」
春山先生は慌てて事務机にもどり首を振りながらインターホン
をオフにします。そして、私たちにこう付け加えました。
「一人、ここを脱走した中学生がいて、その子のお仕置きなの。
ああした子は堪え性がないから、勉強の前にまずはお仕置きして
我慢することを覚えさせてからでないと勉強もはかどらないわ」
先生のため息に私とオマルは思わず二人で顔を見合わせます。
お互い、相手の目はなんて大きいんだろうって思いました。
すると……
「あら、どうしたの?怖いの?…でも、そうかもしれないわね」
先生は素っ頓狂な顔の二人を見て苦笑いです。
「あなたたちみたいな優等生は滅多にお仕置きなんてされない
もの……そうだ、あなたたちに手伝ってもらいましょうか。……
あの子のお仕置き」
「!」
「!」
私たちは再び顔を見合わせます。
もちろん、そんなのイヤですが、イヤとは言えませんでした。
「あなたたちのお尻をぶつより、その方がよほどあなたたちの
為にもなるわ。……だって、同じ桃園の生徒といっても劣等生が
受ける厳しいお仕置きなんて、あなたたち見たことないでしょう。
これも一種の社会科見学よ。ついてらっしゃい」
私たちは春山先生の後に続きます。
今はそうするしかありませんでした。
***************************
お仕置き部屋への入口は、大きな事務机の右奥にある小さな扉
から入ります。そこはドアを全開にしても、身をかがめて中腰に
ならなければ通れません。おまけに、その先もトンネルになって
いて、洞窟の中を三人は中腰で進みます。
「まるで忍者屋敷ね。どうして、お仕置き部屋をこんな不便な
処に造ったのかしら?」
オマルがこぼすと春山先生が答えます。
「逃走防止のためよ。あなたたちみたいに聞き分けのいい子ば
かりなら問題ないんだけど、うちには何かというと脱走したがる
子が大勢いるの。ましてお仕置きなんてされてたら、なおさらで
しょう。……さあ、もうすぐよ。明かりが見えてきたわ」
窮屈な姿勢で20m。薄暗い穴の中を進むのは本当に骨が折れ
ました。
「ふう~やっと出た」
私は出口で大きく背伸びします。
と同時にその両目も大きく見開きます。
そこは広いサンテラスのような場所。目の前は深い崖ですが、
遠くまで緑の山々を見渡せて、さながら観光名所にでも迷い込ん
だ面持ちでした。
「ヤッホー」
オマルが思わず叫びますが、そのくらい美しい景色でした。
「素敵な場所でしょう。本当は、こちらに教室を作ろうという
意見もあったくらいなのよ。でも、胤子先生(創立者)が薄暗い
地下室なんかより、こんなすがすがしい場所の方がより多くの子
が改心するんじゃないかしらっておっしゃって、それで、ここが
子どもたちをお仕置きする場所に決まったの。……それに、ここ
なら、どんな大声をだしてもお友だちのいる教室までその悲鳴が
届かないでしょう。お仕置き部屋としてはうってつけだわ」
春山先生はにこやかでしたが、私たち二人はまたもや顔を見合
わせます。
いくら普段あまり厄介にならない場所といっても私たちは未だ
生徒の身、お仕置きの事を楽しげに語る春山先生には背筋が凍る
思いがしたのでした。
「こちらへ、いらっしゃい。あなた方にはお手伝いしてもらい
たことがあるの」
おじけづく二人に、春山先生がサンテラスから続くロッヂ風の
建物の扉を開けます。
今さら逃げ隠れ出来ない二人が恐る恐る踏み込んだ室内は……
『何よ、コレ!?』
『やだあ~~なつかしい~~』
と思う景色でした。
12畳ほどの明るい部屋に、円錐形の帽子を被って椅子に座る
子やわざと大きく作られた幼児用木馬に跨る子、椅子の座面に膝
まづいてその背もたれを抱くようにしている子など様々です。
そして、どの子の傍らにもシスターがいて子供たちに何やら話
かけています。
実はこれ、桃園学園の幼稚園に実際にあったのお仕置き部屋を
そのまま模したものだったのです。
桃園の幼稚園では、オイタを繰り返したり、お言い付けを守れ
ない子はこんな部屋に隔離されてしまいます。
そして、椅子や木馬や先生のお膝の上なんかで先生のお説教を
聴く訳ですが、これが女の子の世界ですからね、くどくどしくて
長いんです。
でも、それをちゃん聞いて『ごめんなさい』を言わないうちは
決して許してもらえませんでした。
泣いたり、笑ったり、怒ったり、あくびをしたり、なんてのは
ダメなんです。
真面目な顔で最後まで聞いて、『ごめんなさい』が言えないと、
たとえお母さんがお迎えに来ていても返してもらえませんでした。
幼稚園児が相手ですから、ぶったり叩いたりはありませんが、
先生たちも決して妥協はしませんでした。
「ねえ、あなた、お母さんをどのくらい待たせたことあるの?」
オマルが懐かしがって私に尋ねてきます。
「覚えてないけど、1時間くらいならあったと思うわ。最後は
泣きながら『ごめんなさい』の連呼だったけど……」
「優秀じゃないの。あたしなんか、母に手を引かれて幼稚園を
出た時は星がまたたいてたなんてことが何度もあったわ。『どう
してあなたはそんなに強情なの』ってよく母に叱られたけど……
『許してくれないんだから仕方がないじゃない』ってそこでまた
おおむくれよ」
「とにかく『心から反省してます』って態度になるまでは妥協
しない先生方だったけど、こっちも自分の気持をどう表現したら
いいのか分からなくて、最初から最後まで泣きっぱなしだったわ」
「言えてる。あの幼稚園泣けば許されるってもんじゃないから
辛いのよね」
二人が昔の話題で盛り上がってるところに春山先生が口を挟み
ます。
「それは、ここでも同じよ。このくらいの歳になると『うわべ
だけ反省してますって顔を作りさえすれば、それでごまかせる』
って思い込んでる輩が大勢いるけど、それではいつまでたっても
この部屋は出られないの」
「でも、そうすると、いつまでも先生とにらめっこすることに
なりませんか?」
「だから、そういう時は、そういう気持になりやすいように、
サポートしてあげるの」
春山先生の言葉に二人の背筋が反応します。
『サポートって……オシオキ』
『サポートって……オシオキ』
思い浮かぶことは二人とも同じでした。
その思いを見透かしたように春山先生が……
「あなた達だって、これまでに一回や二回は経験したでしょう。
幼稚園の頃ならいざ知らず、少しぐらい理屈が言えるようになる
と誰だって我を通したい時があるもの。……でも、そんな時って、
どうなったかしら?」
『やっぱり……オシオキ』
『やっぱり……オシオキ』
思い浮かぶことはやっぱり二人とも同じでした。
「中学生の頃ってね、自分の思い込みだけで正義や真理を語る
お年頃なの。とにかく自分だけが正しくて、他の人の意見が邪魔
で仕方がないよ。だから初めは聞く耳をもたないわ。……でも、
それでは、いくら説得しても無駄だから、そんな時は別の方法を
試す事になるんだけど……桃園では何をするか、二人ともご存知
よね?」
「お灸もやるんですか?」
思わず、オマルが口を滑らすと……
「ええ、やるわよ。……桃園の勲章みたいなものですものね。
あなたたちみたいに優秀な子でも、一度くらいは経験したことが
あるんじゃなくて?」
春山先生の悪戯っぽい笑顔に二人は思わず顔を見合わせます。
お互いの、そのえも言われぬ複雑な表情は、不本意ながら経験
済みということでした。
「ほら、あそこに、円錐形の帽子を被って丸い回転椅子に腰を
下ろしてる子がいるでしょう」
二人は春山先生の視線の先を見つめます。
そこでは、おかっぱ頭の少女が回転椅子をほんの少しだけ左右
に動かし、俯き加減に少し怒ったような表情で、シスターのお話
を聞いています。
少女はシスターのお話を無視しているわけでも、あからさまに
反抗的な態度をとっているわけではありません。世間的にみれば、
先生からお説教を聞く態度としてはこれで十分なのかもしれませ
んが、桃園の場合はさらに厳しいモラルを子どもたちに求めます
から、その基準に照らすと、これでは不十分でした。
「あのような反抗的な態度では、とても反省しているとは言え
ないわね」
春山先生の嘆きに二人は小さく頷きます。
幼稚園の頃『心から本当に申し訳ないという顔』ができるまで、
家に帰してもらえなかった二人としては、春山先生の評価だって
十分に頷けるのでした。
「あの子、何したんですか?」
私が尋ねると……
「脱走よ。大脱走。親に連れられて一旦はここの門をくぐった
んだけど、隙をみて逃げ出したの。手分けして探してもらったら、
近くの街のゲーセンで楽しんでたわ」
「それで……お仕置き……」
「人には色んな事情があるから『どんな場合もまず体罰』って
考えは持たないつもりでいるけど、事情を徹底的に訊いてみて、
それがその子の心の弱さから来る場合は、お仕置きも選択肢よ」
「…………」
「…………」
「あら、そんなに緊張しないで……何もあなたたちをお仕置き
しようというんじゃないんだから……ただね、心の弱い子という
のは、表向き『お仕置きはイヤだ!そんな事されたら死んじゃう』
なんてだだをこねていても、自分じゃ何もできない決められない
子たちだから、本心は誰かに背中を押してもらいたがってるの。
他人から強制されることで、『あれは仕方がない事だったんだ』
って自分の心を納得させて始めたいのよ。そうすればうまくいか
なかったとしても他人のせいにできるでしょう。……あなた達は
そんな経験ないかしら?」
『……言い訳?……責任転嫁?』
そんな言葉が頭の中をぐるぐる回ります。
私だって弱い人間ですからそんなことがないはずがありません
でした。
「うまくいかなかった時の保険をかけたいのよ。あなたたちの
中にもそれはあるでしょうけど……劣等生の場合は、それが極端
なの。……でも、ここでは失敗はさせないわ。むしろ、圧倒的に
恥ずかしいこと、辛いことをさせてから必ず成功させるの。成功
するってどういうことなのかを身体に叩き込んで覚えさせるのが
この学校の目的ですもの。ですから、あなたたちが幼稚園時代、
反省するまで家に帰してもらえなかったように、ここでは成果を
上げるまで、元いた自分たちの学校へは戻さないわ」
春山先生の言葉は今の私たちには直接関係ないかもしれません。
でも、私にしてもオマルにしても、この学園で長く生徒をやって
いればお仕置き以外にも辛いことは山ほど経験しています。です
から、春山先生の言葉は私達の背中だって凍らすのに十分だった
のでした。
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