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6/11 女の都 ~16~

6/11 女の都 ~16~

*)本日、体調不良で筆が進まなかった。
 つまらないので無視してください。次回、また頑張ります。


 ケイトにとって夜の読み聞かせは、オナニーを指摘されて仕方
なくやり始めたことでしたが、妹たちのたくましい想像力に触れ
るうち、ケイト自身も夜のベッドが楽しくなります。

 ナンシーやエリザベスは自ら描いたイラストをはめ込みますし、
マリアやポーラは自分で作曲したメロディーをBGMに使います。
エレーナやローラにいたっては、想像力がたくまし過ぎて原作は
題名と固有名詞以外何も残っていませんでした。

 それでも楽しかったのは妹たちの感性が豊かだったから……

 『この子たちって、お勉強だけじゃなくて、芸術的なセンスも
相当なものだわ。やっぱり頭の良い子って何やらしても非凡なの
ね』

 感心しきりで付き合ううちに、ケイトはキーウッド先生が指摘
する男の子らしい受け止め方という意味が少しずつ分かってくる
のでした。

 「私、あの子たち見ていて思うんです。『この子たちって単純
に悲劇が嫌いなんじゃなくて、自分の力ではどうすることもでき
ない現実に耐えられないんじゃいか』って……女の子って色んな
ことに感情移入しますけど、それってあくまで『私』っていう殻
の中から見ているだけで、その問題に本気で同化なんてしません
もの。私は私、あなたはあなた、そんなこと当たり前なはずなの
に、あの子たちときたら、どんな些細な事にもその気持がすぐに
同化してしまうみたいで……だから悲しいお話に耐えられないん
じゃないかって思うんです」

 それをキーウッド先生にぶつけてみますと……

 「それがわかれば立派なものだわ。あなた明日から教師になれ
るわよ」

 「茶化さないでくださいよ」

 「茶化してなんかいないわよ。中学生とは思えない洞察力だわ。
……要するに男の子ってね、自分とは何の関係もないことにまで
純粋に自分の事として置き換えてしまうの。心がうぶなのよ」

 「だって、それは誰だって……」
 ケイトが思わず口走ると……

 「本当に?」
 キーウッド先生は疑わしそうにケイトの顔を覗く込みます。

 「えっ!?」

 「だってあなたが言ったのよ。女の子は自分の殻を破って同化
なんかしないって……」

 「あっ、それは……今はそうというだけで……幼い頃は……」
 ケイトは言葉に詰まります。

 「私たちは外からの情報と自分をはっきり分けて考える習慣が
ついてるけど、男の子ってね、年齢がいってもそれがあいまいな
子が多いの。常に自分が矢面に立ってるって気持でいるのかな。
だから、どんな事にも『自分が、自分が』ってことにこだわるで
しょう」

 「ええ、それは感じます。たとえそれが偶然でも、他人が助け
てくれたにしても、とにかくうまく事が運べば、めでたし、めで
たしでいいじゃないですか。みんなで『よかったね』って喜べば
いいと思うんですけど…それが、あの子たち駄目みたいなんです。
お友だちがせっかく解決策を教えてあげてるのに、とたんに真っ
赤な顔して怒り出すんです。……おかしいです。……そのあたり
ちょっと、変わってます」

 すると、キーウッド先生は笑い出します。
 ケイトにとってはそれってとっても意外な反応でした。

 「私、おかしなこと言いましたか?」

 「いいえ、あなたは女の子なんだし、それは真っ当な考えよ。
でも、男の子は違うの」

 「えっ?どういうことですか?」

 「『自分はこれができる。これができた』ってこと。それが、
あの子たちの値打ち。プライドなんですもの。女の子の場合は、
逆でしょう。たとえ、自分でそれができるにしても『人がやって
くれた。やってもらった』ってことが嬉しくないかしら……」

 「えっ!?……(それはそうですけど)でも、結果が同じって
ことは、それって単なる自己満足にすぎないってことじゃあ?」

 「そう、自己満足よ。大いなる自己満足。でも、それが私たち
には欠けてるの」

 「どういうことですか?」

 「人間の歴史は、いわば馬鹿げた自己満足が沢山集まって発展
してきたようなものなのよ。一つ一つは愚かな行為でもそれが山
と集まった中に未来の発展を約束するダイヤモンドが隠れている
ものなの。他人に同情してもパーフォーマンスだけで、自ら手を
差し伸べない。何をやるにしてもすべて他人がやってくれる事を
期待するというのでは社会は発展していかないわ」

 「……????それって……ひょっとしてオニオン星への批判
でしょうか?」

 「そう捉えてもらっても結構よ。この500年間オニオン星は
実質的に女だけでやってきた。それはそれで穏やかで平和な社会
だったかもしれないけど……でも、それでは進歩は止まったまま。
周りの星からも、置いてけぼりをくってるのが現実なの。だから、
もう一度、今、男の血を入れようとしているのよ」

 「男性が社会にいないと進歩しないってことですか?そんなの
おかしいです。この500年間、この星からだって色んな発明や
発見が出てますよ」

 「確かに小さな改良はいくつもあるけど、でも、他の星々にも
自慢できるような大きな発明や発見があったかしら?」

 「そういうのは……他の星から特許を買って……」
 ケイトの言葉は途中から弱々しくなってしまいます。

 「それってジリ貧ってことよね。決して良いことではないわ。
この星にも研究者はいるのよ。頭のよい子もたくさんいるわよ。
でも、何かにつけ人の目が気になる女の子たちにとって、結果や
成果は二の次になりがち。おざなりな意欲では競争に勝てないわ。
人の目を無視して、どうあってでも自分の夢を叶える、自分の力
で成功させるという強い信念は、やはり男性に比べれば、女性は
弱いものなの。だから、そうした風土を変えていく為にも、社会
の中で男性をもっと増やさなきゃって……上層部も思い始めてる
わけ」

 「そうした特性をあの子たちが持っているってことなんですね」

 「そういうこと。あの子たちは私たちの祖先が持っていた男の
血を受け継ぐ女の子なの。……いえ、偉そうな事を言ってるけど、
私もあの子たちを育てていくなかで、『へえ~、男の子ってこう
なんだ』って驚かされたことが沢山あったわ。あなたが驚くのは
当然よ。……でも、どの子も普段は優しい女の子。それもわかる
わよね」

 「はい、先生。……つまり、男の子と女の子では、何に対して
プライドを持っているかが違うってことなんですね」

 「そういうこと。そのプライドを上手くくすぐってやるとね、
あの子たち、純粋な分だけ扱いやすいのよ。……何しろ、女の子
みたい自分という殻が強くないから、おだてに乗りやすいの」

 キーウッド先生は片目をつぶって、子供たちの秘密をケイトに
伝授したのでした。


***************************


 <寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

6/9 女の都 ~15~

6/9 女の都 ~15~

*)完全にノーマルな話なになっちゃいました。ごめんなさいね。


 ケイトはその日の夜、ポーラとエリザベスを担当して天蓋付き
の立派なベッドへ入ります。
 そこは子供たちのベッドとは比べ物にならないくらいふかふか
で広々としています。

 そこに本来二人の生徒が添い寝当番として先生の左右に就いて
眠るのですが、それでもまだ十分すぎるほどの余裕があります。

 「先生、こんなに広いと子供たち全員を呼べそうですね」

 ケイトが驚きのあまりこう言うと、先生の答えは簡単でした。
 「そういう時もあるのよ。雷が鳴ってる時は子どもたち全員が
このベッドで寝るの。…みんなお気に入りのぬいぐるみを持って
くるわ。でも、それ以外は独りで寝る習慣もつけないといけない
から……それで当番制なの」

 「私は何を……」

 「ポーラとエリザベスがそれぞれ読んでほしいお気に入りの本
を持ってくるから、それを読んであげればいいわ」

 「そうなんですか。でも、私、あまり難しい本は……」
 ケイトは学校での妹たちの実力を知っていますから不安になり
ます。でも先生は笑って……

 「大丈夫よ、心配しなくても……あの子たち、難しい本なんて
このベッドに持ち込んでこないもの。たいてい絵本だから……」

 「絵本って幼児が読む絵本ですか?」

 「そうよ、あの子たちの昼と夜は劇的に違うの。難しいことは
何も言わないから安心していいわ」

 ケイトは朝もキーウッド先生にそう言われたのですが、そこが
彼女にはわかりませんでした。
 自分より学業が優秀な彼女たちが今さら絵本なんか読みたがる
はずがないと考えていたのです。

 ところが……

 「ねえ、ご本読んでね」
 ケイトの袖を引くポーラの手には『エデンの花園』という絵本
が握られています。
 その後ろに立つエリザベスが握っているのも『二人の天使』と
いう女の都ではよく読まれている絵本でした。

 『高分子化学の基礎』なんて持ってこられたらどうしようなん
て怯えていたケイトは拍子抜けしてしまいます。
 正直、この二人が自分のことを馬鹿にしてわざとやっているの
かとさえ思いました。

 でも、それも違っていたのです。

 今日当番のナンシーもエレーナも先生に読んでもらおうと持っ
てきた本は『森のお姫様』と『水車小屋の小人たち』。いずれも
幼児たちには人気の絵本でした。

 『この子たち、こんな本を読んでもらって面白いのかしら……
そんな時代はとうに卒業してると思うんだけど……』
 ケイトはいぶかります。

 でも、ベッドに入った二人はケイトにぴったり寄り添うと絵本
を食い入るように見、ケイトの声に耳を傾けます。
 その仕草は幼児と何ら変わりありませんでした。

 『この子たちの頭の中ってどうなってるんだろう』
 そんな事を思いながら読み進めていくと、ケイトは不思議な事
に気づきました。

 『えっ!?この本、メーテルが死ぬシーンがないわ』

 一般の本では、主人公ナターシャの親友で花妖精のメーテルが
亡くなるシーンがあるはずなのですが、それがこの本にはないの
です。

 でも、その時は……
 『きっと街ではこんな展開の本も出てるのね』
 と軽い気持でした。

 ところが『二人の天使』を読み始めるとさらにその違いが際立
ちます。

 『何なの、これ!?』

 『二人の天使』は、本来神様の怒りに触れた二人の天使が苦労
に苦労を重ねて再びエデンで暮らせるようになるまでのお話なの
です。
 なのに、ケイトが今こうして読んでる本には、そんな苦労話が
一つも載っていません。

 エデンを追放されたはずの二人が落ち込むシーンなんてどこに
もなくて……むしろ、二人の天使は窮屈なエデンから解放されて
パッピーとばかりに世界旅行を楽しんでエデンに戻って来るので
す。話の筋が最初から最後までとてもハッピーなものに書き換え
られていたのでした。

 『これじゃあ、面白くないでしょう』

 ケイトは思うのですが、見れば二人はケイトに寄りかかるよう
にして、すやすやと寝てしまっています。
 その笑顔は幼児と同じ。幸せそのものの笑顔でした。


***********************

 ケイトは次の日の朝、食事の席でキーウッド先生に尋ねてみま
した。

 「昨夜読んだ絵本、随分と脚色してあったみたいなんですけど、
あれ、先生がなさったんですか?」

 「私が手を入れたのもあるけど、大半はこの子たちの希望なの。
この子たち心は半分男の子だから、女の子が大好きな不幸なお話
は苦手なのよ」

 「男の子って不幸なお話はだめなんですか?」

 「私も王子様たちを教育したことがあるからわかるんだけど、
男の子って、女の子のように不幸を楽しんだりしないの。男の子
ってね、何でも自分の力でやって最後は必ず成功させる。いつも
そんな夢ばかり追ってるの。『不幸だったけど偶然幸せになった』
『誰かが幸せにしてくれた』なんて物語は、男の子の心の中には
ないの。荒唐無稽でもいいから自分の力で無理やり幸せにしちゃ
わないと気がすまないのよ」

 「それで、ご都合主義というか、どんな不幸な状況もたちまち
幸せなお話になっちゃうんですね」

 「この先色んな困難を体験すれば、あの子たちが創るお話にも
深みが出てくるんでしょうけど、今は日常生活でも、やれば必ず
成功するように私たちも仕向けてる最中だから、なおのことなの。
この子たちにとっては、どんな不幸だってたちどころにパッピー
にならないと承知しないのよ」

 「…………」

 ケイトは女の子なので男の子の生理について詳しくはわかりま
せんが、男の子という生き物がお昼にみせる力強さと夜に見せる
繊細さの二面性を持っていることだけは何となく理解できたので
した。


*************************

 天蓋ベッド二日目。
 ケイトの担当はグロリアとローラでした。

 ケイトは昨晩と同じように物語を語り始めます。すると、最初
はおとなしく聞いていたローラでしたが、突然、ケイトから絵本
を奪い取ったのです。

 『えっ、何!?』 

 驚くケイトを尻目に、ローラが始めたのは物語の変更でした。

 彼女は奪い取った絵本を自分の好きなように変更します。
 文章を代え、イラストを差し替えます。
 電子絵本と呼ばれるこの種の本型タブレットならそんなことは
造作のないことだったのです。

 『これだったのね。どうりでどの本もオリジナルが大きく変更
されてると思ったわ』
 ケイトは苦笑いです。

 もちろんこのタブレット、巷でも使われていましたが、ただ、
世間の母親たちは娘がオリジナル版を勝手に修正することを認め
ていませんでした。
 物語の文章をいじったり挿絵を変更したりするのは親の権限。
子供にそんな勝手な真似はさせていなかったのです。

 それがここでは自由だったことにケイトは初めて気づいたので
した。

 ケイトはローラが物語りをどのように変化させるのか興味津々
で見ていました。

 すると、彼女……

 『えっ?…………』
 ケイトは困惑します。

 ローラが修正したのは、ハッピーなはずの主人公の家庭生活。
それが、厳しい母の態度によってお仕置きだらけの生活へと変更
されてしまったのでした。

 しかもそのお仕置きは常軌を逸しているほど厳しくて、まるで
SMです。
 これにはケイトも眉をひそめるしかありませんでした。

 「ねえ、ローラ、どうしてこんなふうにしちゃったの?もとの
ように幸せに暮らしましたでいいじゃない」

 ケイトが言うと普段はおとなしいローラが怒ります。

 「いいじゃないのさあ。ほっといてよ!私はこの方が好きなん
だから!あなたは私の気に入るように読めばいいのよ」

 その大声に、心配したキーウッド先生が、大きなベッドを這う
ようにやってきます。

 「どうしたの?そんな大声だして……」

 「あっ、先生、ローラが絵本を修正したんですが、それが…」
 ケイトはローラからからタブレットを取上げてキーウッド先生
に見せます。

 すると、先生はそれを一読……
 
 でも、慌てず騒がず……
 「随分過激になっちゃったわね。でも、いいわ。ローラちゃん
にはこの方がドキドキして楽しいんでしょうから……これはこれ
で素敵な作品よ。ケイトさん、あなたはグロリアを連れて向こう
で読み聞かせしてあげてて……私はここでせっかく書いたこの子
のご本を読んで聞かせるから……」

 こうして選手交代。
 ケイトはその夜グロリアを含む三人の子供のお母さんをしなけ
ればなりませんでした。


**************************

 翌朝、ケイトは子供たちが食事の席を立ったあと、再び先生に
尋ねます。

 「先生、昨日のローラ、おかしかったですよね」

 でも、キーウッド先生は笑っていました。
 「そうねえ………普段はおとなしそうにみえるあの子にだって
男の子の血は流れてるわけだし……あれはあれで仕方がないわ」

 「どういうことですか?」

 「男の子って、時々意味もなく形あるものを壊したくなる動物
なのよ。女の子はどんな悲劇的な物語を語っても、現実の生活が
幸せならそれを破壊したいなんて思わないけど、男の子は違うの。
たとえ今がどんなに幸せでも、それに満足しないの。今あるもの
を壊してでももっといいもの面白いもの作りたいのよ」

 「ん?????……」
 ケイトは女の子、先生の言っていることがまったく理解できま
せんでした。そこで……
 「その事と、ローラがあんな過激なお仕置きを書いた事と何か
関係あるんですか?」

 「ま、あなたの歳でこれを理解するのは難しいかもしれないわ
ね。でも、あるの。大ありよ。……あの子はね、今の自分を破壊
したがってるのよ。『おとなしくて、素直で、みんなに愛されて
る…とっても良い子』ってのが嫌なのよ」

 「えっ??どうして??」

 「女の子ならそれで十分かもしれないけど、男の子の血をひく
彼女はそれでは満足しないの。グロリアみたいに、毎日のように
お尻を叩かれてでも、自分も友だちの先頭でいたいのよ。でも、
今はまだ、何をやっていいのかわからないから、まずはめでたし
めでたしで終わる絵本の世界を崩してみて、そのヒントを得たか
ったんじゃないかしら」

 「じゃあ、グロリアなんか、あんなのお気に入りの世界なんで
しょうね」

 ケイトが得意げに言うとキーウッド先生はいぶかしげに彼女の
顔を覗き込みます。そして、首を振ってこう答えるのでした。

 「そうじゃないわ、グロリアみたいな子は実生活がSMみたい
なものだもの。そんな子の夜は予定調和の絵本でないといけない
の。あんなもの読み聞かせたら、とたんに気分を悪くするはずよ。
怒ってローラのお話をめちゃくちゃにしてしまうかもしれないわ」

 「えっ!そうなんですか?」

 「だから、グロリアには席を外させたの。人間は、夢の世界で
は普段の自分にはないものを求めたがるものなのよ」

 「ローラもいつかはグロリアみたいになるんでしょうか?」

 「それはわからないけど…昨日、あの子のクリトリスをそっと
触ってみたの。そしたら、びっくりするほど大きくなってたわ。
だから男の子らしく生きたいと強く願っていることだけは間違い
ないみたいね」

 「そんなことまで……」

 「ん?クリトリスのこと??だって、私はあの子のお母さん。
そんな事、何でもないわ。ただね、これまでの殻を破って生き方
を変えるというのは、夢を見るのとは比べものにならないくらい
大変なことですもの。もしローラが本気でそう思っているのなら、
グロリアみたいに少しお尻を叩いて応援してあげなきゃいけない
わね」

 「えっ!!……」
 ケイトは大きく目を見開きます。

 「だって、嵐の日には家の中で縫い物をして暮らす人もいれば、
あえて嵐の中に船出する人もいる。あの子がそれを望むのなら、
育て方も違うでしょう。それを援助してあげるのも母の勤めだわ。
何よりね、ああして物語の主人公に辛い体験をさせたがるのは、
自分もああいう風にされたいと思う裏返しでもあるのよ」

 「…………」
 過激な発言にケイトは言葉が詰まります。

 「あらあら、心配そうな顔?……でも、大丈夫よ。物語をいじ
ってるうちは何も起こらないから。人間、決意を行動に現す時は、
もう物語はいじらないの。……その時はその時で、また別の兆候
が現れるわ。エネルギーが物語に留まってる間は、まだまだ安心
なのよ」

 キーウッド先生はケイトにやさしく微笑むのでした。

***************************


 <寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

 

6/7 子ども妾(短編読みきり小説)

6/7 子ども妾(短編読みきり小説)

*)*)一応、小説という事でお願いします。
あまりににプライベートなHの楽しみですから、一般の人には
理解不能というか、『引く』と思います。私のブログはただ思い
ついたことを書き留める落書き帳みたいなものですから、コレと
という定まった分野はありません。こんなものもありなんです。


 今は子供の人権に世間がうるさいので、表立って幼い子を性の
対象として囲うなんてできなくなりましたが、かつては洋の東西
を問わず、子供もまた大人と同じように性の対象でした。

 もちろん、若く健康な人にとっては必要のないことでしょうが、
性的能力が衰えた老人や事故などで性的な機能が失われた人たち。
さらには、社会的制約がきつかったり親の躾が厳し過ぎたりして
ノーマルな形での性の開花が十分にできなかった人たちなども、
成人女性より子供の方に価値を見出してきたようです。
 そのような話は随所で聞きました。

 例えば、モーツアルトは聖歌隊時代、とある高貴な女性の欲望
から去勢されそうになったとか。封建社会の中国では何百人もの
子供を性的な興味の為だけに養う金満家がいたとか。日本におい
ても、江戸時代、いえ明治の世になっても10才に満たない子供
と結婚した老人の話がたくさん残っています。

 こうした逸話は過去のものですが、過去こうした楽しみを求め
ていた人がいるということは、それが現代にあっても不思議では
ないわけで、私たち姉弟を育ててくれた養父母もまさにそうした
特殊な欲望を持つ人たちでした。

 孤児として施設で生活していた三歳の私がこの両親に引き取ら
れたのは1960年。今でこそたいそう開けてしまいましたが、
当時は寂しい森の中の一軒家。ベンツで幼稚園から帰ったあとは
友だちもなく、寝るまでずっと両親と一緒の生活でした。

 大きな屋敷にはお手伝いや子守のお姉さんもいましたが両親が
私から目を離すことはなく、お風呂も、食事も、寝る前の絵本も、
すべて両親の膝の上。
 特に日曜日は二人が一日中私のそばを離れませんでした。

 『朝起きてから再び絵本を読んでもらいながらベッド眠るまで、
いったい何回床や地面に足を着けただろうか?』
 そんなことを考えてしまうほど、両親は私を溺愛していました。

 彼らはお金持ちでリタイア生活。両親と呼ぶには少し歳を重ね
すぎてる気もしますが、もう現役でないぶん、私を愛する時間は
たっぷりとあります。

 積み木に木馬にブランコ、滑り台、お馬さんに肩車……仕事を
していた頃の怖い父や母を知らない私は、何かにつけて「おとう
ちゃま」「おかあちゃま」と言ってこの二人に甘えていました。
 この頃の私はこの二人の他に甘える人がなく、またそれで十分
だったのです。

 いえ正確には両親の方が私を玩具にして遊んでいたと言うべき
かもしれません。そのためにあちこちの施設を回り、私たち姉弟
を引き取ったのでしょうから。

 ただ、そんな両親も、たまに怖い顔をする時もあれば軽くお尻
を叩くこともあります。私も怖い顔に泣いたことがありました。
まったく躾をしなかったわけじゃないんです。

 ただ、これは例外中の例外、普段の生活では私が何をやっても
両親は甘甘でれでれ。よく、『食べちゃいたいくらい可愛い』と
表現しますが私もその部類だったのでしょう、おかあちゃまが、
私の身体を舐めない日は一日としてありませんでした。

 おかあちゃまの美食はお風呂上り。
 よく洗ったからだがバスタオルの上に仰向けにされると、僕は
まずほっぺたをすりすりされます。

 「ん?ほら、きもちいい」
 おかあちゃまは必ず耳元でこう尋ねます。

 次はおっぱいのの先を舐め舐め。
 「はははははは」
 「ん?気持いい?」

 続いてあんよの裏をこちょこちょ。
 「きゃゃゃゃゃ」

 お臍の穴も舐め舐め。
 「あ~~ん痛い」

 脇の下をこちょこちょ。
 「いやいやいやいや」
 「あら、くすぐったいの。いやなの?」
 「いやじゃない」

 おかあちゃまにはいつも笑顔で答えます。
 もし、本当にイヤなら、おかさちゃまはやりませんでした。
 でも、僕はやって欲しかったんです。やさしいおかあちゃまの
やさしい愛撫を愛されてる子がいやがるはずがありません。
 それがたとえオチンチンでも、事情は同じでした。

 「わあ~~可愛いオチンチン食べちゃおうかな」
 おかあちゃまはそう言って袋ごとパクリ。

 「……(わあ、わあ)…………」
 オチンチンがまるごとおかあちゃまの口の中に納まってる時の
快感って、一般の人には分からないと思いますが、それはそれは
気持の良いものなんです。
あの気持のよさはは表現しにくいのですが、不思議な安心感と
快感が一体になったえも言われぬ心地です。

 おかあちゃまはいったんオチンチンを出すと今度はオチンチン
の裏側、オチンチン袋の裏側あたりをぺろぺろし始めます。
 勿論、不快なんかじゃありません。おかあちゃまの舌がぺロリ
ぺロリと触れるたびに、嬉しくって身体がのけぞります。

 『あああああっっ……この切ない感じが嬉しい。おかちゃまの
赤ちゃんでよかった』
 そう思う瞬間でした。

 もちろん、フェラチオなんて言葉、当時は知りません。でも、
そんなこと問題じゃありません。好きな人に、今、こうして全身
をくすぐられ、舐められてることが楽しくて楽しくて痺れること
なのです。

 「ああああ、くすぐったい」

 「くすぐったいの?じゃあ、もうやめる?」

 「いや、まだやりたい」
 僕はおかあちゃまにおねだりします。

 恥ずかしいけど楽しいひと時。ずっとずっと続いて欲しいひと
時でした。

 『あっ、またぼくのオチンチンがおかあちゃまのお口に入った。
食べられちゃった。……でも、おかあちゃまに食べられたいな。
食べられておかあちゃまと一体になるの。そんなのいいかもしれ
ない』
 はては凄い妄想まで飛び出します。

 『あっ、オチンチンの皮剝かないで……あっ、先ちょに唾つけ
た……そこ痛いから……あっ、いや、ばっちいから……』

 「あっ、痛い……」

 「何、いやなの?」

 「んんん」僕はここでも首を読みに振ります。
 「……痛いけどいいの……もう一度やって……」
 結局はまたおかあちゃまにおねだり。

 僕はさんざん支離滅裂な事を言っては、おかあちゃまの愛撫を
楽しみます。
 きっとその瞬間は、ドーパミンがこれでもかってくらい大量に
出ていたと思います。

 だって、子供ながらにも『これって最高!!!』でしたから。


****************************

6/5  女の都 ~14~

6/5  女の都 ~14~

*)この項にHな部分まったくありません(小説)

 ケイトにとっては何気ない朝が始まります。いつもと同じ日課、
いつもと同じ笑顔、自分としては何一つ変わらない一日でした。

 ただ一つ、ベッドの中でオナニーをしているという事を除いて
は……

 そんな日が3日目続いた朝のことです。いつものように子ども
たちが席を立って授業に向おうとしますから、ケイトも同じよう
に席を立とうとしますと、キーウッド先生が呼び止めました。

 「あっ、ちょっと待って……授業時間まではもう少しあるわ」

 「えっ……私に御用ですか?」

 「3日前、あなたに何があったのかやっと分かったの」

 「えっ?3日前……」
 ケイトはべつにとぼけたわけじゃありません。若い子にとって
3日も前の事なんて太古のお話ですから、急に言われても思い出
すのに骨が折れます。

 『えっ、まさか……』
 その日を思い出し、嫌な予感が頭をよぎりますが、そのまさか
でした。

 ケイトがあれこれ悩むうちに先生がお話を続けてくださいます。

 「あなた、王子様たちと遭遇したんですって…ラッキーだった
じゃない。なかなか会えるものじゃないのよ」

 『ああ、やっぱりそうなのね……でも、ということは……』
 ケイトの心に暗雲がたなびきます。

 「男の子を最初に見た感想は?どうだった?怖かった?」

 「ええ、少し……」

 「でも、今はもう別の感情が芽生えてるでしょう」

 「別の?」

 「あの方たちを受け入れたいと思う気持よ」

 「受け入れるだなんて……そんな大それたこと……」

 「もちろん、心の中での話よ。……単に『怖い、怖い』と思う
だけなら、オナニーはしないわ」

 「…………そ、そんなこと……」
 その瞬間、ケイトの顔が真っ赤になって俯きます。

 「あら、私が知らないとでも思ってたの……学校の椅子にさえ
ホルモンバランスを計る測定器が組み込まれるのに、寮のベッド
にそれがないわけないでしょう。毎日、チェックされてるわよ」

 「……(しまった)……」
 ケイトは当然そう思います。思いますから顔に出ます。

 「あら『しまった、今度からベッドはやめて床でやらなくちゃ』
って思った?……でも、すっぽんぽんの体だと床ではやりにくい
わね」
 キーウッド先生はケイトをからかいます。

 「それにね、そんな手間の掛かることしなくても、あのベッド
はそんな動きをするとカタカタと揺れるようになってるの。寝て
る子は忙しくてそんなこと気がつかないみたいだけど、天蓋付き
の私のベッドからでも、それははっきりわかるのよ」

 「……(えっ!)……」
 ケイトは自分の無知を恥じます。もう、顔は青ざめていました。

 「あらあら、驚ろかしちゃったみたいね。『私のプライバシー
は?!』って顔してるわね。でも、残念ながら修道院にはあなた
の望むようなプライバシーはないの。神の御前では、すべて包み
隠さずがテーゼだから。とりわけ、あなたのような子供の場合は
特にそうよ」

 「私、子供なんですか?」

 「あら、知らなかった、巷では14才になれば無条件で大人の
仲間入りができるみたいだけど、ここでは18才。それも試験に
通った者だけが一人前と認められるの。それまでは誰でもが子供
扱い」

 「……(そうだったわ、忘れてた)……」

 「子供のうちは、どんな手紙も開封されちゃうし、大人に反抗
的な態度をとったり嘘をつけたりすれば、即、お仕置き。便宜上
服は着てるけど、大人から『脱げ』と言われたらどこでも脱がな
きゃならない悲しい立場よ。オナニーだって、当然監視の対象。
そんな子供に、プライバシーなんてあるわけないでしょう」

 「はい、そうでした。忘れてました」
 ケイトは悲しそうに答えますが……

 「そんなに悲しそうな顔しないで、べつにあなたを困らすため
に呼んだんじゃないんだから……その代わりといったら何だけど、
あなたたちはこの大きな修道院という組織に守られてるの。ここ
で働くすべてのシスターに愛されてるの。何をやってもお仕置き
以外の責任をとらされることがないって、実は、とっても幸せな
ことなのよ」

 「そうなんですか」
 ケイトは気のない返事を返す。

 「今はまだ『大人たちからすべてを監視されてて、好き勝手に
振舞えないし、反抗するとお仕置きされて……これのどこが幸せ
なんだろう』って思うかもしれないけど、大人になると、それは
わかることなの」

 「…………」

 「ただ、誤解しないでね、私はあなたに一度や二度そんな事が
あってもそれは仕方がないことだと思ってるのよ。女の子だって
人間だもの、ストレスのはけ口は必要だわ。あなたが見た王子様
なんてね、1日に4回も5回もやってたんだから」

 「そっ…そんなに……できるんですかそんなにたくさん?」

 「男の子ってそういうものなの。衝動的というか直情的という
か、押さえがきかないのよ。でも、女の子はそうはいかないわ。
汚れた指が絡めば、ばい菌に感染することもあるし、伸びた爪で
怪我をすることもあるわ。ほら、一昨日、あなたに爪を切らせた
じゃない。あれはそのためなの」

 「……(あっ、あれ)……」
 ケイトは何気ない会話を思い出します。

 「女の子のオナニーってね、男の子と比べると感染のリスクが
高いのよ。それに何より女の子の場合はどうしてもやらなければ
納まらないというほどのものはないはずだし………二日に一度、
三日に一度くらいで我慢できないかしら」

 「…………」

 「そんな深刻な顔しなくても大丈夫。誰でもぶつかることだわ。
ただね、毎晩続けていると女の子の心と体は変化して、毎晩やら
なければ寝付けなくなってしまうの。そんな禁断症状が一番怖い
ことだわ。そうなると、貞操帯のお世話にならなくちゃいけなく
なっちゃうでしょう。さらに重症の子になると、貞操帯だけじゃ
すまなくて、しこたまお尻を鞭打って下の感覚を麻痺させてから
じゃないと眠れないなんて子もいるのよ」

 「毎日じゃなければ……」
 ケイトはつぶやきます。

 「そう、完全にやめてしまおうとするんじゃなくて、ストレス
の度合いに応じて自ら調整できるようになって欲しいのよ。それ
が大人になるってことだもの。できないあなたは、まだ子供って
ことよ」

 「…………」

 「いいわ、しばらくは私のベッドで寝てごらんなさい。まさか、
私のベッドの中で始めたりはしないでしょう。二日に一度か三日
に一度くらいあなたを私のベッドの添い寝当番にしてあげるから、
その時はチビちゃんたちに絵本でも読んで聞かせてあげて……」

 「絵本?」

 「そう、絵本。あの子たち、絵本の読み聞かせてやると喜ぶの
よ。前にも言ったけど、あの子たちって、知識はあるんだけど、
心は幼稚園児並なの。何かにつけて甘えたくて仕方がないのよ」

 「もし、それをしないと……?」

 「簡単よ。それを取上げると、とたんに強いストレスを感じて
勉強もしなくなるわ。彼らにとっての勉強は自分の為ではなく、
あくまで、私があの子たちへ注ぐ愛情の対価としてやってくれて
いるにすぎないんだから……」

 「…………」

 「どうしたの?そんな変な顔して……あなたに分からないのも
無理ないわ。私だってあの子たちの事はよく分からないんだもの。
何しろあの子たちはミューと呼ばれる新人類。どうやって育てる
かも分かってないの。それを今模索してる最中なのよ」

 ケイトは、こうしてその日の夜から、キーウッド先生の添い寝
当番をすることになるのでした。

**************************

 <寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

6/3 女の都 ~13~

6/3 女の都 ~13~

*)小説

 キーウッド先生の子供たちは食事が終わると、自分たちの教室
へと向います。その教室の空いたテーブルの一つに腰を下ろして
本人認証用のタブレットを指定の場所に差し立ててればそれで
OK、三面鏡になったディスプレイに先生が現れ教科書が映し出
されて授業が開始されます。

 持ち込んだタブレットにその子の全情報がインプットしてあり
ますから、教科書のようなものを持ち歩く必要はありません。
 子供たちが持ち歩くのは、自分で作成したA4サイズのノート
だけ。このノート、質感といい、簡単に鉛筆書きできるところと
いい、一見すると単なる紙のノートに見えますが、手でなぞれば
過去のどんなデータも浮かび上がらせることのできる便利な電子
手帳でした。

 図書室に置いてある本も大半がこの形式のノート。これを見れ
ば、その子の勉強の過程だって克明に知ることができますから、
教師にとっても優れもののアイテムでした。

 この日、ケイトは数学の授業についていけず、先生から1年前
の自分のノートを持ってくるように命じられます。先生としては、
そのあたりで何かを取り違えて覚えてしまったんじゃないか、と
疑ったからでした。

 そこで、ケイトは慌てて図書室に走りますが、図書室近くまで
来ると、部屋の中から耳慣れない声が聞こえていました。

 「何だよこれ、すっげえなあ」
 「ほんとにこんな事してたのか?」
 「俺もこんな時代に生まれたかったなあ?」

 『えっ?何なの?』
 それはまるでパイプオルガンが話しているように低い声でした。
女の子たちとは声のトーンが違うのです。

 訳が分からず、ケイトがドアをノックしますと……
 何やら慌てて何かを隠すような物音が……

 そして……
 「どうぞ」
 という声がしたので、ケイトは部屋の中へと入ってみました。

 すると、いきなり鼻につく匂いが彼女を襲います。
 『うっ!!何なの!?これ?』

 それは単なる人の体臭なのですが、ケイトにしてみると、それ
までに嗅いだことのない匂い。粗野で荒々しく動物を感じさせる
ものでした。

 『まるで熊の檻にいるみたいだわ。まさかこんな処に熊なんて
連れ込まないわよね』

 確かに熊はいませんでしたが、そこには三人の人間が……

 『えっ!!!?』

 出くわしたのはケイトより年上の若者三人。
 いえ、ケイトにしてみたらそれは『三人の人間』という言葉に
なるのかもしれません。
 だって彼女、この瞬間、生まれて初めて『男性』という生き物
を見たのですから……

 『何なの?この人たち?』
 ケイトは未知との遭遇に驚き、戸惑います。

 でも、それって単純に不快とか、不愉快というものではありま
せんでした。

 急に心臓が高鳴り始め、胸を締め付けられるような切ない想い
が体中を締め上げます。こんなことは初めて。顔が真っ赤に紅潮
していたこともこの時は自分ではわかりませんでした。

 『うそ……この人たちって……ひょっとして王子様たちなの?』

 ケイトはいずれも美形の顔立ちの青年たちを見て思います。
 というのも写真でなら彼らを見たことがあったからでした。

 「やあ、こんにちわ。……どうしたの?そんな変な顔して……
僕たち何か変かい?」
 一人の青年が声を掛けてきました。

 「いえ……」
 ケイトは答えますが……

 「フランク、変に決まってるじゃないか。ここは修道院、城の
中じゃないんだぜ」
 と、別の青年が……

 「そうか、この子、まだ中学生くらいだもんな、僕らを見るの
これが初めてってわけだ。よし、ならば僕からご挨拶を……」

 三人目の青年は最も積極的で、ケイトの足元まで歩いて来ると
そこに片膝をついて……
 「姫、どうかこの中から好きな者をお選びください」
 と挨拶します。

 『えっ!?』
 ケイトは意味が分からずまごつきます。何の戯言か彼女はまっ
たくわかりませんでした。

 でも、ケイトがこのまま成長し、20歳になったあかつきには
この三人のいずれかと初夜を迎えることになります。
 そうなった時には、あらかじめお見合いのパーティが催され、
ケイトは相手を選ばなければなりません。その時、彼女はきっと
こう言われることになるのでした。

 「姫、どうかこの中から好きな者をお選びください」
 と……

 オニオン星の女の子にとって王子様とお見合いは、一世一代の
晴れ姿。
 青年はその時の仕草を真似たのでしたが、それはケイトにとっ
てはまだ先の話、今のケイトは、いきなり現れた異性を前にその
ショックからまだ立ち直れないでいたのでした。

 「ねえ、君の名前は?」
 膝まづいていた男の子が立ち上がって尋ねます。

 「ケイトです」

 「いい名だね、聡明な女性に多い名前だ。僕はマイク……あの
にやけて笑ってる背の高いのがフランク……すまし顔で気取って
るのがケリーだ」

 「みなさん、男性なんですか?」
 ケイトが今さらながら素朴な疑問をぶつけてみますと……

 当然、答えは……
 「三人ともそうだよ。普段はお城に住んでるから王子様なんて
呼ばれてるけど……僕らのこと、知らない?」

 「えっ……」
 ケイトが言葉に詰まると、マイクの後ろから声が飛びます。

 「種馬って言ってやった方が、その子には分かりやすいかもな」

 その声を聞いて、マイクは自嘲的に笑いました。
 たしかに、王子様と言っても彼らの方が相手を選べるわけでは
ありません。求められた女性と子孫繁栄のために一夜を供にする
だけなのですから、種馬という表現も、まんざら間違ってはいま
せんでした。

 しかもこの種馬たち、いずれ劣らぬかなりの美形ときています
から、ケイトは彼ら三人が自分のそばにいるというだけで何だか
妊娠させられそうに感じてしまうのでした。

 「ねえ、君、知らないかなあ、ここに学校OBのノートがまだ
保管してあるって聞いたんだけど……」

 「えっ、王子様って、ここの卒業生なんですか?」

 「そうだよ、子供の頃はお城からここに通ってたんだ。周りが
女の子ばかりだろう、やれ挨拶がないの、靴が汚いの、シャツが
ズボンからはみ出てるの、廊下を走るな。とにかく規則ばっかり
うるさくて息が詰まりそうだったよ」

 「そうそう、やたら規則が多かった。でも、先生は優しかった
じゃないか。よく悪戯もしたけど、女の子みたいにあまりぶたれ
た。『男の子だから仕方がない』とか言われてね」

 「女の子の方がぶたれることが多かったんですか?」

 「そりゃそうさ。ここは本来女の子の世界だからね、良い意味
でも、悪い意味でも僕ら男の子は祭り上げられていたんだ」

 「今は、この学校に男の子はいませんよね?……見たことあり
ませんから」
 ケイトが尋ねると……

 「いないと思うよ。他の学校にはいるけど、ここにはいないん
じゃないかな」

 「男の子なんて学校にとっては邪魔な存在。迷惑だから持ち回
りにしてほしいって思ってるみたいだよ」

 「どうしてですか?」

 「だって先生がおっしゃってたけど、男の子がいると女の子は
勉強に身が入らなくなるし、オナニーも増えるからなんだってさ」

 「…………」
 ケイトは思わず心臓をえぐられる思いでした。
 彼女のオナニーは百合の世界。女の子だけで男の子は登場しま
せんが、それでもオナニーなんて言われると緊張してしまいます。

 「そうだ、君、本当に知らないかな、OBのノート。ケリーが
学校時代に書いた小説を見つけたいんだ」

 「小説って…そんなもの教科のノートに書いてたんですか?」

 「暇をみつけてちょくちょくね。その時は軽い気持だったから
まとまっていないんだけど、今度、同人誌をだすことになって、
その時のアイデアを入れてみたくなったんだ」

 「授業中に小説だなんて……そんなことしていいんですか?」

 「よくはないさ。でも、さっきも言ったろう。男の子ってね、
わりと自由なんだよ。悪戯やっても、オナニーがばれても、勉強
さえちゃんとやってたら、あとは大目に見てくれてたんだ」
 と、フランク。

 「もっとも、取材半分興味半分で女の子のお仕置きを覗こうと
して見つかった時は……あれは怖かったけどね」
 と、ケリー。

 マイクも…
 「あっ、シスターサンドラのことだろう。あの婆さん、怒り出
すと、前後の見境がなくなるもんなあ」
 と応じます。

 「顔、真っ赤にしてさあ、まさに烈火のごとくって感じだった
もの。で、結局、その時は鞭が36回。終わった時は、さすがに
お尻の形が元に戻らないんじゃないかって本気で心配したよ」

 「オーバーだなあ」

 「本当さあ。あの婆さん、子供相手にケイン振り回して本気で
ぶつんだから。児童虐待もいいとこさ。殺されるかと思った」
 
 「大丈夫、いくらケインでお尻ぶたれたって、死んだ奴なんて
いないから」

 「お前、やられたことないからわかないのさ」

 男の子たちの大きな身体からは声も自然と大きくなります。
 すると、その声に同調するように入口のドアが開きました。
 入って来たのはその噂の主、シスターサンドラでした。

 「随分と賑やかね。坊やたち、相変わらず元気だけはいいみた
いだけど、でも、ここは図書室なの。もっと静かになさい」

 「はい、先生」
 三人は苦笑いを浮かべながら恐縮します。
 三人はすでに青年。坊やなんて呼ばれる風貌ではありませんが、
ここに来れば少年の昔に戻れるみたいでした。

 「ケリー、あなたの小説見つかったわよ。昔、ノイマン先生が
抜書きしてまとめてくださってたみたいなの。面白かったって、
ご伝言いただいてるわ」

 喜ぶ男の子たちを見ながらケイトの未知との遭遇は終了します。

 「ケイト、御用が済んだらあなたは教室へ戻りなさい」
 シスターサンドラにこう言われてしまったからでした。

 でも、時間にして僅か10分足らずの出来事が、ケイトにして
みたら、映画10本分では足りない感動となって心に残ることに
なります。

 『あ~やだ、どうしたのかなあ、身体の芯が熱いわ』
 ケイトはそんな思いを胸に教室へと帰って行ったのでした。

**************************

 その日の夜から、ケイトはベッドの中で悶々とした時間を過ご
すことになります。

 昼間は忙しくて、夢を見る暇がありませんが、ベッドに入ると
不思議と三人の青年が大写しになって頭の中に浮かん出てくるの
です。

 でも、最初それは甘い恋物語なんかではありませんでした。

 熊のように大きな三人の青年が、自分の身体にのしかかろうと
するのを必死に振り払って逃げる映像ばかり。
 熊に襲われる恐怖のシーンばかりでした。

 そして、次の日の夜は、とうとう逃げ切れず自分が熊の餌食に
なってしまいます。

 『何なのよ、コレ!どうしてこんな夢見るの!』
 ケイトは嘆きます。

 でも、哀れな自分を嘆くうち、ケイトの心の中には新たな快感
が生まれるのでした。

 のしかかられる自分、食い尽くされる自分の身体が、死体では
なく火照って熱くそれが心地よいと感じられるのです。

 すると、いつしか自分を食い散らかしたはずの熊が自分のお腹
の中にいるのに気づきます。そこでうごめていているのです。
 それは今までに感じたことのない得体の知れない快感でした。

 『不思議、変な気持、麻薬ってこんな感じかなあ』
 切なさが、乳首を震わせ、あごを震わせ、両足の指を曲げさせ
ます。そして……

 『もう、一歩』
 そう思うとき、彼女の右手はお臍の下に滑り込んでいました。

 『ああ、だめ、もう我慢できない』
 その言葉を残してケイトの理性は消滅。

 若い体は小さな突起を立ち上がらせるのに時間なんてかかりま
せん。

 あとは百合の世界で遊んでいた時と同じ。
 エクソシストのようにベッドがカタカタと揺れ、行き着く処迄
行き着けば、後は睡魔がさらなる快楽へと彼女を運んでいきます。

 『あ~~私の王子様~~フランク、フランク、フランク、……
わたし、幸せよ~~』
 うわ言のような言葉で頭の中をフランクの顔で充満させます。

 彼女は枕に涙を落とし、その指の先に幸せを感じて、その夜は
ぐっすりと眠ることができたのでした。

***************************

<寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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