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4/23 亀山物語<外伝>~4~

4/23 亀山物語<外伝>~4~

*)これは一応小説の一部なんですがHシーンありません。

 「ほら、見て……」

 香澄さんが箪笥の引き出しを開けましたから、覗きこみますと
……

 「……(えっ!!!)……」
 声になりません。

 「驚いた?」
 香澄さんはビックリ箱を開けさせた相手を見る時のような悪戯
っぽい笑顔で私を見ています。
 でも、私、どう返事してよいかわかりませんでした。

 「松下先生は、こうしたものは巷の人たちにみせてはいけない
って言ってたけど……やっぱり驚いちゃった?」

 「…………えっ?まあ……」

 「私、そんなふうに驚いてくれる子、大好きなの。……ふふふ
でも、そうやって驚くってことは、これが何するものか知ってる
ってことよね」

 「えっ?……ええ、まあ」
 悪戯っぽく笑われて私の心臓は彼女に掴み取られたようでした。
たしかに、そのいくつかは我が家にもありましたから。

 「じゃあ、無駄なお話かもしれないけど、一応説明してあげる
ね。……この中に入っているのは、お義父様が私をお仕置きして
くださる時のお道具なの」

 香澄さんは一番手前にあるガラスケースを取り出します。外の
蓋には赤い十字のシールが貼ってありました。

 「この大きな注射器みたいなのは、ピストン式の浣腸器。お薬
を入れて使うけど、それは使う時だけ大人の人が持って来るの。
なぜだかわかる」

 「いいえ」

 「ここへ置いておくと、お仕置きされそうな子どもが先に自分
で使ってしまって、罰を軽くしてしまおうとするからなの。……
お浣腸って二度目はとっても楽なのよ……知ってた?」

 「…………」
 その事実は知っていましたが、香澄さんがあまりにあけっぴろ
げに話しますから声がでなかったのです。

 「あっ、その顔は知ってる顔よね」

 「ええ、まあ……」
 私はやっとの思いで生返事をします。実際、その手の浣腸器は
うちにもありました。当時は、子供がお腹を壊すと、お医者様に
行ってもまず浣腸で、お腹の物を全部出すことから治療が始まり
ますから、家庭でも浣腸器を用意するところが珍しくありません
でした。

 私も幼い頃母にされたことがありましたから、思い出は強烈に
残っています。お仕置きではありませんが、恥ずかしくて、辛い
思い出でした。

 「次はこれ……」
 香澄さんが取り出したのは、文箱くらいの大きさの木箱です。

 中を開けると、病院でもらう薬袋のような袋とお線香でした。

 「これ、知ってる?」

 「ええ」

 「やっぱりね、あなたなら知ってると思ったわ。さっき、私が
お灸の話をしたら、あなた、目を輝かせてたもの」

 「そんな、目を輝かせてただなんて……」

 「嘘ついてもだめよ。私たち幼い頃から色んなお仕置き受けて
育ってきたからわかるのよ。『あっ、この子、本当はお仕置きが
好きなんだ』『お灸が好きなんだ』ってね」

 「そんな事、わたしはありません」
 思わず気色ばんで声が出てしまいましたが……

 「そう、それならごめんなさいね」
 香澄さんは言葉の上で謝っていますが、私の目には、『お前の
了見はお見通しよ』と映ります。

 「………女の子ってね、自分の一番辛いこと、恥ずかしいこと
を好きな人に無理やりされるのが一番気持のいいことなの」

 「……(この人、変態?)……」
 そんな言葉も頭に浮びますが、それは私の頭の中が理性で満た
されているから。
 この時すでに、香澄さんの答えを私の下半身は受け止めていま
した。

 「これはトォーズと言ってお尻を叩く鞭。他にも、ケインとか
ヘアブラシとか、色々あるけど……普段はもっぱら平手が多いの。
女の子はやっぱり肌と肌が触れ合った方がいいもの。……ただね、
『これは本当にいけないことなんだぞ!』って叱られる時は……
これで鍛えられるの」

 香澄さんはトォーズを取り出すと一振りします。
 「やわに見えるけど、これって結構痛いのよ。あなた、試して
みる?」

 「………………」

 「あら、ちょっと刺激が強かったしら?でも、亀山にいたら、
まだまだこんなものじゃないのよ。だけど、お仕置きされたから
不幸って思ったことは一度もなかったの」

 「どうしてですか?」

 「だって、あそこはお仕置きが生活の一部なんだもん。あなた
は親に一度もお仕置きされた事がないの?」

 「そんなことは……」

 「その時、親を恨んだ?」

 「それは……」

 「女の子はみんなそうだけど、お仕置きってね、何をされたか
が問題じゃないの。誰にされたかが問題なの。その人は愛せる人
か、信頼できる人か、それがすべてじゃなくて……」

 心臓にグサッと突き刺さる言葉でした。
 『私はお父さんを信頼できなくなったんだろうか?』
 ふと、そんなことを思います。

 「香澄さんはお義父様が信頼できたんですね」

 「もちろんよ。……お義父様だけじゃないわ、お母さんも先生
も賄いのおばちゃんも掃除のおばちゃんもみんな信頼してたの。
亀山の子どもって、どんな大人より身分が低いんだけど、どんな
大人からも愛される身分なの。だから、街行く誰に抱きついても
すぐにハグしてくれてるし、抱き上げてくれるの」

 「みんな顔見知りなんですものね」

 「それもあるけど、街で暮らすみんながみんな子供好きなのよ。
働いている人も女王様が特に子供好きな人しか採用しないから、
街で出会う誰に抱きついても毛嫌いなんてされたことがないわ」

 「へえ、何だか羨ましい。おとぎの国みたい」

 「かもしれないわね。絵本で読んだ童話の世界がそんな夢物語
に感じられなくて、幼い頃はお友だちと一緒にシンデレラや白雪
姫のお城を探しに行ったものよ」

 「見つかりました?」

 「まさか、あるわけないじゃない。でもダイヤモンドパレスは
見つかったわ」

 「ダイヤモンドパレス?」

 「女王様の執務室。全面ガラス張りの建物で、いつもキラキラ
輝いてるからそう呼ばれてるの」

 「女王様ってどんな人なんですか?」

 「品のいいおばあちゃんよ。会いに行くと『今日は楽しかった?
明日は楽しくなりそうかしら?』って必ず尋ねるてくるわ。……
子供たちにとって女王様のお膝は駆け込み寺みたいな処だから、
お義父様やお母さん、先生方とうまくいってないようだと、担当
を代えてくれたりもするの」

 「孤児院といっても、至れり尽くせりって感じなのね」

 「そりゃあね、私たちプロだから」

 「プロ?」

 「私たちってお義父様を楽しませて養育費をもらってるような
ものだもの。口の悪い人は『子ども妾』って言う人もいるくらい
よ。お義父様はお酒が入ると私を抱き上げてよくおっしゃってた
わ。『これは本物のスコッチ。そしてこれが本物の笑顔だ』って
……お母さんも『そうまでしてお義父様方が本物の笑顔を求めて
くださるから、あなたたちは幸せに暮らせるのよ』って……そう
言われて私たちは育ったの」

 「本物の笑顔ねえ……じゃあ、本物の泣き顔はお仕置きで生ま
れるの?」
 私はからかい半分に言ったつもりでしたが……

 「ピンポン、大正解。お義父様が亀山に大金を出して移住まで
するのは、本物の笑顔と同時に本物の泣き顔が見たいからなの。
子役がお芝居するんじゃなくて、本当に恐怖におののいている子
どもを抱いて愛撫したいからなのよ」

 「だから、お仕置きが厳しいんだ」

 「そういうこと。私はまだ若いからそこらの事情は分からない
けど、お義父様がおっしゃるには、歳を取ると若い子や幼い子を
抱いているだけでご自分も若返った気持ちになれるんだそうよ。
医者がくれるどんなお薬より、これが一番の不老長寿の妙薬なん
ですって……」

 「へえ、つまりは、『お薬を育ててる』ってわけなんだ。……
変なの……」
 私は素直に笑います。

 「ま、そういうこともあってね、私たちってよく裸にされたの。
お風呂は当然お義父様と混浴だし、寝る時も当番制で月に何回か
お義父様と一緒のベッドよ」

 「わあ、危ない!犯されなかった?」

 大仰に驚いてみせると……
 「馬鹿言わないで、私一人じゃないわ、他の子も一緒に寝てる
のよ、そんな事できないわ。それにお義父様はそんな方じゃない
もの。そのあたりは入居前に女王様が厳しくチェックなさってる
から大丈夫なの」

 「なあんだ、そうなのか……」

 「つまらない想像しないで……そんなことしたら亀山の秩序は
一発で崩れちゃうわ」

 「ふうん、お義父様って紳士なんだ」

 「当然よ。こんな処で晩節を汚すようなことはなさらないわ。
だからお金があっても社会的な信用のない人はここのお義父様に
はなれないの。……あ、でも、お触りは別よ。私もそうだったん
だけど、一緒に寝てると、大半の子は穴と言う穴を全て触られる
ことになるわ」
 またまた、香澄さんはドキッとするようなことを言います。

 「えっ?悲鳴あげなかったの?」

 「あげないわよ。だって、お義父様がやってるんだもの。問題
ないわ」

 「信頼関係ってこと?」

 「信頼できない相手を愛するっておかしいでしょう」
 あっさり言われてしまいました。

 「亀山ではね、小学生の裸なんて街中で見られるから珍しくも
何ともないの。お仕置きで学校から全裸でおうちに帰されたり、
お母さんが癇癪起こして、全裸で廊下やお庭に放り出されたり、
プールも小学生の頃は水着なしで泳ぐんだから……」

 「それって、いくら小学生でも恥ずかしくないの?」

 「恥ずかしいのは恥ずかしいけど……ほかの子も裸なんだから
みんなでお風呂に入ってると思えば気は楽よ」

 「中学生になると水着OKなの?」

 「13歳まではだめ。……ただし、14歳で試験にパスすると
女の子も一人前に認めてもらえるから、そんなことはなくなるの」

 「14歳の試験?」

 「そう、試験というか、試練かな。これまでやってきた悪さを
一気に精算するための特別なお仕置き。……これに合格したら、
ハレンチなお仕置きからは開放されるわ」

 「それって、相当キツイの?」

 「正直、大変は、大変なんだけど……でもやらないと、プール
で水着も着たいし、大きくなったオッパイを街の人に見せながら
帰らなきゃならないでしょう。……みんな必死で頑張るわ」

 香澄さんは明るく笑うのでした。

 「その試練ってどんなことをするんですか?」

 私は事のついでに尋ねてみたのですが……
 その時、部屋の扉がノックされます。

 「あっ、いけない松下先生だわ。詩織さん、悪いけど、今日は
ここまでよ」

 香澄さんはこれからお勉強のようでした。

 その日は、そのまま桐山邸から車で送っていただきましたが、
その道中、私は後ろの座席で自分の身体の中が濡れていることに
気づきます。
 恥ずかしいことが起きていたのです。

 『でも、また、明日、香澄さんに会って話を聞きたい』
 私は心の中でほくそ笑みながらも、運転手さんにはそ知らぬ顔
でそう思うのでした。

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4/21 亀山物語<外伝>~3~

4/21 亀山物語<外伝>~3~

*)これは一応小説の一部なんですがHシーンありません。

 「お義父様、ご病気なんですか?」
 香澄さんの部屋へと帰る途中、廊下でそう尋ねてみると……

 「あまりよくないみたい。だから、亀山も引き払ってこちらへ
戻られたくらいだから……ただ、私だけはどうしても手放したく
ないとおっしゃられて、女王様に無理言って連れて来ちゃったの」

 「女王様?」

 「そう、亀山の女王陛下、絶対君主、…グレートマザーなんて
呼んでる人もいたわ。……亀山って、実質的には彼女が経営して
いるの」

 「じゃあ、あなたのお義父様は?」

 「そこのお客様。子供のパトロン。うちのお義父様に限らない
けど、お義父様ってレストランで食事をするお客様みたいなもの
なの。店主はできるだけ美味しいもの、お客様に喜ばれるものを
と思って料理を提供するけど、それがたとえ不味かったとしても
お客様が自ら厨房で料理を作ることはないでしょう。それと同じ」

 「?????」

 「わからない?……無理ないわね。亀山で暮らしたことのない
あなたには意味不明よね」
 香澄さんは私の当惑した顔をみて笑います。

 「ねえ、お義父様って桐山さん一人だけじゃないの?」

 「そうよ。亀山には45軒のお家があるから少なくとも45人
のお義父様がいらっしゃるはずよ」

 「そんなに!」

 「いずれも功成り名を遂げたご隠居さんって感じのおじいさん
ばかりなの」

 「それって孤児を育てるボランティアをやってらっしゃる方々
なの?」

 「違うわ。皆さん相当な大金を払ってるみたいだもの。見返り
なしにそこまではなさらないわ」

 「見返りって?」

 「あなた、私の部屋に行ったんでしょう」

 「ええ」

 「だったら、気づかなかった?」

 「えっ?……ああ、あのベビーベットのことかしら……」

 「お義父様たちが単にお金を寄付するだけじゃなく、わざわざ
移り住むのはその為なの」

 「ん?どういうこと?」

 「だから、お義父様たちにしてみたら、自分の思い通りになる
子どもが欲しいの。『裸になれ』と言えば喜んで服を脱ぐし……
『赤ちゃんのように』と願えば、哺乳瓶でミルクを飲むような、
そんな従順な子がお望みなのよ」

 「……それって……つまり……あなたも……そうなの?」
 私は恐々尋ねてみました。
 すると、意外にも明るい声が返ってきます。

 「そうよ、私も亀山の子だもの、それは同じよ。……あそこは、
孤児と言っても赤ん坊の時でないと引き取らないし18歳になる
までは実の親でも面会できないシステムだから、時間はたっぷり
あるでしょう。その間にお義父様やお母さん、先生……とにかく
目上の人には絶対服従の精神を子供たちは叩き込まれるってわけ」

 「じゃあ、今でも……そのう……あなた、赤ちゃんの格好する
ことあるの?」

 「お義父様が望めば、喜んでやるわよ。……おかしい?」

 「えっ!」
 私は心臓がドキンとしました。

 「もっとも、最近は私も身体が大きくなり過ぎちゃってるから、
お義父様もオムツの取替えまではご覧にならなくなったけど……」

 「えっ!……」
 私はあらぬことを想像してしまい、全身に鳥肌が走らせますが、
香澄さんはまるで意に介した様子がありませんでした。
 それどころか……

 「赤ちゃんもそうだけど、最近は、ご病気もあって昔のように
お仕置きしてくださらないが残念だわ」

 「オシオキ?」

 「そう、叱られることよ。あなた親にお尻叩かれたことない?」

 「そりゃあ……」

 「亀山は凄いのよ。男の子だろうと女の子だろうと、どんなに
幼い子でもハイティーでもお尻丸出しで叩かれるの」

 「あなたも……」

 「もちろん、私、お転婆だったから幼い頃は毎日のようにやら
れてたわ。亀山のお義父様たちってね、そういう子どもの泣き顔
や悲鳴が大好きなの。ぶつのはたいていお母さんや先生方だけど、
終わるとね、お義父様がお膝に抱いて優しくしてくださるのよ」

 香澄さんは屈託のない笑顔、まるでそれが楽しい思い出だった
かのようです。

 「へえ、厳しいんだ」

 「お尻叩きだけじゃないわよ。赤ちゃん姿でお浣腸されたり、
お灸をすえられたり、下半身丸出しで木馬に跨ったり廊下に立た
されたり……とにかく色々よ」

 「残酷なのね……」

 「そうかしら……そうでもないわ。だって悪いことしなければ
お仕置きなんてされないもの。……何もしないのにお仕置きだけ
やってるわけじゃないのよ。……それに何より、お義父様たちは
そんな子どもたちのハレンチな姿がお気に入りなのよ。だから、
お母さんも先生も、ご機嫌とってるところがあるの」

 「でも、それで、心が傷ついたりしなかった?」

 「全然」香澄さんは首を振ります。
 「私たち生れ落ちた処はそれぞれ別々でも、みんな一年以内に
亀山に引き取られてるから、もともとお義父様のもとで生まれた
ようなものなの。……気がついたらお義父様やおかあさんや先生
が周りにいて、そこが人生の始まり。……他の世界なんて知らな
いし、何より、お義父様も、先生も、お母さんも普段はとっても
優しかったから、どんなお仕置きがあっても、だから心が傷つく
ってことはなかったわ。……わたしはね」

 「…………」
 怪訝そうな私の顔をみながら香澄さんは続けます。
 「あなたは外の人だからわからないでしょうけど、亀山では、
子供がお仕置きされるって、あまりに当たり前すぎて、女の子に
『あなた、なぜスカートはくの?』って聞くようなものなのよ」

 「そうなの……」

 「今の私は、分別がつきすぎて悪さなんかしなくなったけど、
そうやって育ったせいか、時折お仕置きされて泣いてた頃の自分
が無性に懐かしくなることがあるわ。…だから、最近まで小さな
しくじりをしでかしてはお義父様からお仕置きを頂いてたの」

 「わざとってことよね……そのことは当然お義父様も感づいて
らっしゃるんでしょう」

 「もちろんよ。おままごとみたいなものだもの。……その時は
とっても優しくとっても厳しく叱ってくださったから、心の中が
とっても熱くなれたの。……でも、それも今は病気が重くなって
しまったから、それもできなくなっちゃって……」

 『だから、学校であんな憂鬱そうな顔をしてたんだ』
 私は、義理とはいえお義父様をそんなも慕える香澄さんが羨ま
しく思われました。
 私の場合、実の父とは顔を合せるたびに口喧嘩で、そんな関係
にはなれませんでしたから……

 ただ、私の心の奥底にも香澄さんと同じ思いが眠っている事は
自分でもうすうす感じていたのでした。

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 二人は香澄さんの部屋へと戻って来ました。
 すると、すでにドアの前に若いメイドが独り立っています。

 「お嬢様、お茶をお持ちしてよろしいでしょうか?」
 「ええ、お願いするわ。私はココアでいいわ。詩織さんは?」
 「じゃあ、コーヒーで……」
 「あら、ごめんなさい。うちは未成年にはコーヒーとコーラを
お出ししないのよ。お義父様が『あれは、子供には有害だ』とか
おっしゃってて……でも、それ以外なら、大抵何でもあるわよ」
 「じゃあ、私もココアを……」
 「かしこまりました。……あ、それから…松下先生がお友だち
との歓談が長引くとお勉強の時間が押してしまいますから早めに
切り上げるようにと、ご伝言を賜っております」
 「わかったわ、承知しましたとお伝えして……」

 こんな会話のあと、私と香澄さんは部屋の中へ……

 「何だかお勉強時間にお邪魔しちゃったみたいですね。……私、
帰りましょうか」
 「いいのよ、変に気を回さないで。あと30分くらいどうって
ことないから安心して。松下の婆さん、昔から心配性なのよ」

 「松下先生って……」

 「お義父様が私の事を心配して亀山から連れて来たの家庭教師。
昔からそうなんだけど、今でもできが悪いとパドルでお尻を叩か
れるわ。女同士だから、そこは遠慮がないの」

 「それじゃあ、やっぱり大変じゃないですか、私、帰ります」

 「だから、いいって……私、あなたにもうしばらくここにいて
欲しいの。だってあなたには他の生徒にはない何かを感じるもの。
お話していて面白いわ。お友だちになれそうだもの」

 「いいんですか?ほんとうに……」

 「ええ、大丈夫よ。……ほら、見て、これが私の揺りかごよ」
 香澄さんは、四方を柵で囲われたベッドを軽く押してみます。

 すると、どうでしょう。その大きなベッドがまるで揺りかごの
ように揺れるのでした。

 『これって、本当に揺りかごなんだ』
 先程も一度見ましたが、それは何度見ても不思議な代物でした。
 サイズだけが大きい世の中どこにでも転がっていそうなベビー
ベッドなんですが、そのそばに寄るだけで、まるで自分が赤ん坊
に戻ったような気分になるのでした。

 「特注品ってことですよね」

 「そうみたいね、これも亀山から持って来たの。向こうでは、
お仕置き用だったから最初はとっても寝にくかったわ」

 「お仕置き用?」

 「そう、亀山では、悪さを繰り返す子には赤ちゃん返りという
お仕置きをさせることがあるのよ」

 「赤ちゃん返り?」

 「一日赤ちゃんに戻されるお仕置きのことよ。朝、お浣腸され
てオムツをはめられたら、あとはずっと、ここに寝かされるの。
食事は哺乳瓶のミルクだけ。おなかはすくし寂しいし退屈だし…
もし、催してきたらそれこそ大変。必死で頑張ることになるわ。
時々見回りに来る先生にも気取られないようにしないといけない
しね……」

 「おトイレには行かせてくださいって言えないんですか?」

 「それがだめなの。そんなこと言っても『あなたオムツ穿いて
るでしょう。そこにしていいのよ』なんてイヤミを言われて泣く
ことになるわ。…もっと厳しい先生になると、あらためてお浣腸
されることだってあるんだから」

 「もし、漏らしちゃったら……」

 「もちろん、先生がオムツを取り替えてくれるわよ。……でも、
いくら女同士でもウンチ漏らしたオムツを取り替えられるなんて
恥ずかしいもの。みんな夜の九時まで必死に我慢することになる
わ」

 「凄いのね、亀山のお仕置きって……」

 「とにかくお義父様たちが喜びそうなことは何でもやらされる
の。お尻叩きでも、お浣腸でも、お灸でも……しかも恥ずかしい
なんて言っちゃいけないんだから……貞操なんて文字、亀山には
どこにもないわ」

 「お灸なんかもすえられるんですね」

 「ええ、お灸は多いわよ。これはスペシャリストがいるから…」

 「スペシャリスト?」

 「そう、おばば様って言ってね、亀山の主みたいな人よ。……
亀山の子供たちは大半が彼女に抱かれて最初街へとやってくるの」

 「どういうことですか?」

 「もし、母親が自分の生んだ子を亀山に預けたいと思ったら、
まず裏山の麓に住むこのおばば様の処を訪ねなきゃいけないの。
そこで、まず引き受け先となるお義父様を探してもらって、話が
まとまったら、その母親はおばば様から身体の七つの場所にお灸
をすえられることになるの」

 「どうしてそんなことするんですか?」

 「一番大きな理由は本人確認のためよ。昔はDNA鑑定みたい
なものがなかったから、母と子に同じ灸痕をつけて18歳で再会
する時にそれで証明にしたの。……それと、どんな理由があるに
せよ自分の生んだ子を他人に預けるんだからそれなりのお仕置き
は必要ってのがおばば様の考えだったわ」

 「へえ……でも、そのお灸って子供の方にもすえるんでしょう」

 「子どもの方も二歳になると、母と同じ処にお灸をすえられる
ことになるわ。もし、おばば様が亡くなっても判別がつくように
だって……」

 「二歳の子にお灸……」
 私は言葉に詰まりました。

 「残酷な話でしょう。でも仕方がないの。それが亀山のしきた
りだから。その代わり、その後は親切なお義父様が何かと面倒を
みてくださるわ。お灸は悪さをするようになった子供がおばば様
から据えられるケースがほとんどなの。大事な証拠を消さない為
にも色揚げは大事な儀式なんだって……私もよくやられたわ……
結局うちの親は18になっても娘の処へ会いにこなかったけどね」

 「えっ、じゃあ、そのあとは……」

 「私の場合は親が迎えにこなかったからお義父様に引き取って
くださったけど、大半の子は短大か四年制の大学に進学するわ。
そこまではお義父様が援助してくださるの。いずれにしても卒業
後は自分で稼ぐことになるけど……あっ、ただし結婚相手は別よ。
それはお義父様がご存命ならお相手を見つけてくださるケースが
多いわ」

 「自由恋愛とかはできないんですか?」

 「そんなことないわよ。ただ、私たちって物心つくころから、
お義父様絶対で生活してきたでしょう。お義父様が決めてくださ
った方でもそんなに拒否反応はないのよ。それにそうした方って
大半が……」

 香澄さんはそこでほんのちょっとためらいましたが思い切って
言ってしまいます。
 「私たちを厳しく指導してくださる方だから私たちも頼りがい
があるの。そうした方を一からみつけるより楽なのよ」

 それは今の香澄さんとお義父様の関係に同じということのよう
でした。

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4/20 亀山物語<外伝>~2~

4/20 亀山物語<外伝>~2~

*)これ一応小説の一部なんですがHシーンありません。

 香澄さんの話によれば、彼女が育ったのは、『聖母会』という
宗教団体が運営する孤児院だそうです。

 ただ、孤児院といっても街で見かけるようなものを想像しては
いけません。規模が違います。
 三つも四つもの山々や広い田畑がそのまま孤児院の敷地になっ
ていたそうです。

 「そうなの、その中の一つの山が亀山と言って、ここには学校
や教会、病院、劇場、……何よりお義父様と一緒に暮らすお家が
たくさんあったの。つまり私たち孤児が暮らす街があったのよ」

 「街?」

 「そう、ここでは一軒のお家に十二三人の兄弟と同居してるの」

 「兄弟と同居って……それみんな孤児なの?」

 「そうよ、もちろんみんな血の繋がりなんてまったくないけど、
ここでは、同じ家に住む子供たちは、みんなお義父様と同じ苗字
を名乗って、同じ兄弟として育てられるの」

 「兄弟?」

 「そう兄弟よ。だってみんな同じ家に住んでるってことは同じ
お義父様の庇護を受けてるんですもの。血は繋がらなくても全員
兄弟に違いないわ」
 香澄さんは屈託なく私に笑顔を見せた。

 「お母さんはいないの?」

 「もちろんいるわよ。普段はそのお母さんと一緒に兄弟三人で
敷地内のコテージで暮らしてるわ。私のお母さんは真理子だった
けど、他にも良子さんとか真由美さんとか、紀子さんとか、色々
いらっしゃったの」

 「同じお義父様の元で暮らしていても、お母さんが一緒の兄弟
と違う兄弟がいたんだ」

 「そういうこと。あなた、なかなか飲み込みが早いわね。……
ただ、お母さんと呼んでても実際はニーナというか家庭教師なの。
お義父様は、すでに社会をリタイヤしてここに移られてるから、
子育てなんて、そんな骨の折れることはなさらないわ。ひたすら
子どもを可愛がることだけがお仕事なの」

 「それで、いじめとか喧嘩なんてないの?」

 「まったくないってことじゃないんだけど、少なかったわ……
うちはそれがテーゼだから、そういったことは特にうるさかった
わ。いじめ、喧嘩は厳禁なの。とにかく、兄弟でもクラスメイト
でも、みんな仲良くしてないと大人たちはご機嫌が悪かったわ」

 「叱られるの?」

 「叱られるなんて生易しいものじゃないわ。もし兄弟喧嘩して
たり、妹や弟をいじめてたりすると、幼い頃でもお尻の皮が擦り
むけるほどぶたれたわ」

 「体罰ありだったんだ」

 「ありもあり大有り。それもあなたたちが体験しないような、
やたらハレンチなお仕置きがたくさんあったんだから」

 「ハレンチなお仕置き?どんな?」

 「ふふふふふふ」
 香澄さんは思わせぶった笑みを浮かべると……
 「どんなって言われるても困るけど……とにんく本を読んでも、
どこにも書いてないようなハレンチなお仕置き。お義父様ってね、
そんな子どもの泣き顔を見たり、泣き声を聞いたりするのがお好
きなの。だからお母さまたちもお義父様のご機嫌取りに、そんな
セッティングをしてたんだと思うわ」

 「それって、あなたもやられたことがあるってこと?」

 「もちろん、お仕置きを受けずに山を降りる子なんて誰もいな
いもの。どんなに慎み深く過ごしていても、一学期に一回や二回
は必ずお仕置きされたわ」

 「ふうん、聞きたい。それって、例えばどんなことされるの?」

 「聞きたい?」

 「じゃあ、話してあげるけど道端というわけにはいかないから
私のお部屋へ行きましょうか。今日はお暇ある?」

 「ええ、まあ……」

 「だったらそうしましょう」

 すると、まるで香澄さんと私の会話が聞こえていたかのように
黒塗りの高級車が私たちの脇へと止まります。

 「心配しないで、私の家の車だから……学校が乗用車での通学
を快く思ってないみたいだから、いつもここで待ち合わせてるの」

 香澄さんは私を乗せて自宅へと向います。
 私は声を掛けた初日から香澄さんの家へと招待されたのでした。

***************************

 香澄さんのお屋敷は車で30分ほど行った丘陵地の一角にあり
ました。
 年輪を重ねた槇や松の巨木が門柱の代わりに立っていて、そこ
をくぐると広い池や咲き乱れる花壇が出迎えてくれます。

 「まるでお金を払って入る公園みたい」

 思わずつぶやいた私の声は香澄さんに聞こえたかもしれません。
彼女、思わずくすっと笑ったようでした。

 10台、いえ20台は駐車が可能でしょうか。広い車寄せを右
に見て、私たちの車は建物の脇をすり抜けて裏へと回ります。

 こんな名家の場合、その家の表玄関はお客様専用。家族が普段
出入りするのは、たいてい裏に別の玄関が用意してありました。
 とはいえ、その裏玄関だって、私の表玄関より数段立派です。

 「お帰りなさいまし……」
 まるで温泉旅館の女将のように女中さんが広い玄関で三つ指を
着いてご挨拶します。

 「鼎さん、お友だちをお連れしたの。お義父様にご挨拶する間、
私の部屋でお待ち願ってて……」

 香澄さんは学校のかばんを鼎さんに預けると、さっさと廊下を
奥へと進み始めます。

 「こちらへどうぞ」
 私は鼎さんに案内されて一足早く香澄さんの部屋で待つことに
……

 『…………』
 こんな大邸宅です。香澄さんのお部屋もさぞや豪華で煌びやか
……と思いきや、案内されたお部屋を見て、私は目が丸くなりま
した。

 「しばらく、ここでお待ちください」
 女中の鼎さんはあっさり帰ってしまいます。
 「あっ……」
 私は慌てて振り返りましたが引き止める暇もありませんでした。

 『どういうこと?……ここって、本当に香澄さんの部屋なの?』

 怪訝な顔であたりを見回すと、確かに机の上の本棚には高校の
教科書や学習参考書などが並んではいます。
 たしかにそこだけ見ればそうですが、それ以外の場所には……

 『これってサイズは大きいけどベビーベッドよね。四方に柵が
あるし、メリーゴーランドも吊り下げられてるし、クマちゃんの
ぬいぐるみもある。……えっ、何これ!こんな大きな哺乳瓶見た
ことないわ』

 でも、驚きはそれだけじゃありませんでした。壁には聖母子の
油彩……衣装戸棚の上にはフランス人形……ガラス戸棚の中には
バービー人形……小机の上ではリカちゃん人形のままごとセット、
それも今まで遊んでいたかの様に置かれています。
 気がつけば、天井まで届くような大きな本棚の中もたくさんの
童話や絵本が幅を利かせて、高校生が読むような小説や雑誌類は
片隅に追いやられていたのでした。

 『歳の離れた妹さんがいるのかしら?』
 そんなことを思っていると……鼎さんが部屋に戻ってきます。

 「至急、主人がお会いしたいとのことです。ご案内いたします」

 「えっ?わたし?」

 驚きましたが、断れませんでした。私は香澄さんが消えた廊下
を鼎さんに案内されて進みます。

 曲がりくねった廊下は、右に見える中庭に気を取られていると、
いつの間にか屋根のついた渡り廊下へと変わり、やがてその終点
へとやってきます。

 そこはお屋敷の離れなんですが、庶民の家ならこれだけで充分
一軒分の建坪があります。

 「こちらへ」
 その三間ある建物の一番奥の部屋へ案内された私は香澄さんと
再会しました。

 20畳の座敷は畳の部屋ですが、そこに大きなダブルベッドが
置かれています。
 ご主人の影虎さんはそのベッドで横になって私を迎えてくれた
のでした。

 「君かね、香澄のお友だちというは?」

 「はい、藤川詩織といいます」

 「私がこの子の父だ。本来ならもっとちゃんとした格好で挨拶
するところだが、あいにく病気がちでね、こんな格好で失礼する
よ」
 影虎さんは、年の頃なら80歳くらいでしょうか、温厚そうな
顔だちの紳士ですが、たしかに体調はあまりよくない様子でした。

 「香澄、なかなか品の良さそうなお嬢さんじゃないか。よかっ
たね、お友だちができて……安心したよ。実は心配していたんだ
よ。亀山は特殊な里だからね。友だちがいなくて困ってるんじゃ
ないかと思って……」

 「大丈夫ですわ。私は、お義父様さえいていただければ、独り
でもやっていけますから……」
 香澄さんが枕元に膝まづきお父さんの手を包み込むようにして
握っています。

 「そうは、いかないよ。特に女の子は、孤独が一番よくない。
せっかくできたお友だちなんだから大事にしなくちゃ。…………
あなたも、よろしくお願いしますよ。この子はゆえあって世間の
常識の通用しない処で育ちましたから、何かと驚かれるかもしれ
ませんが、決して悪い子じゃありませんから、末永くお友だちで
いてください」

 「大丈夫です。私もみんなから変わり者だと言われてますから」

 私は自虐的にそういいましたが、香澄さんのそれは私のはみ出
しぶりとは桁違いでした。

***************************

4/18 亀山物語<外伝>

4/18 亀山物語<外伝>

 *)昔書いた外伝の導入部分を補正したものです。

 私が転校してきたばかりのその子と出会ったのは校内のパン屋
さんの前でした。
 昼時に店を出す業者に男子も女子も群がるなか、そうした喧騒
を避けて、独りたたずむ少女がいました。

 『見るからにいい身なりをしているわ。ただもんじゃないわね』

 生徒は全員制服を着ていますが、誰もが同じ値打ちの服を着て
いるわけではありません。
 同じデザインの制服でも、その生地なり、仕立てなりで価格は
大きく違うものなのです。彼女の場合は肩のライン背中のライン
が身体にぴったりフィットしていますから最高の生地を仕立て屋
が丹念に仕上げた物なのでしょう。

 それだけではありません。彼女、ただ立っているだけなのに、
その立ち姿に気品がありますし、隙がありません。ああした姿勢
は普段やりつけていない田舎の小娘に、「お前もやってみろ」と
言ったところですぐに真似のできるものではありませんでした。
 生徒の私からみてもお嬢様という形容がぴったりの子だったの
です。

 「ねえ、何見てるのよ?」
 ノン子に肩を叩かれました。

 「……ああ、あの子ね。ちょっと変わってるでしょう。何でも
毎日一万円だしてはアンパン一つ牛乳一個買うんだってよ。……
おばちゃんが、おつりがないって言ったら『カード使えますか?』
だってさ……カードでパンが買えるわけないじゃない。『どっか
頭おかしいんじゃないか』ってみんな言ってるわ」

 『カードってクレジットカードのことだろうか』

 この時代、まだカードというのは大人の社会ですら一般的では
ありませんでした。持ってる人は大人でもごく限られた人たち。
未成年でも親に信用があれば発行してくれますが、これまで、私
以外の高校生が、実際に持ってるところを見たことがありません。
そんなクレジットカードを彼女も持っているのでしょうか。

 そんなつまらないことで興味がわいてしまい、私は彼女に声を
かけてみます。
 自分で買ったアンパンと牛乳を持って……

 「あなたの分、買っておいたわよ」
 こう声を掛けると彼女は軽く会釈して微笑み、そして何のため
らいもなく
 「ありがとう」
 と言って受け取りました。

 そして、そのまま立ち去ろうとしますから、
 「あら、だめよ、一万円払って……」
 と言ってみると……

 「あら、ごめんなさい。忘れてました。どうぞ……」
 これまた何のためらいもなく私に新札を一枚渡してそれっきり
また立ち去ろうとします。

 『嘘でしょう、この子、高校生にもなって買い物したことない
のかしら』
 私は唖然としました。
 
 私も小学校の低学年頃までは、買い物にいつも家の人が着いて
きて、その人がお金を払いますから、親からお小遣いという物を
もらったことがありませんでしたが、それはあくまで幼い頃まで
の事。こんなに成長した子がお金と関わらない暮らしをしてきた
なんて信じられませんでした。

 面白くなってきた私は、この世間知らずのお嬢様に、再び声を
掛けてみます。

 「あなた、おつりをわすれてるわよ」
 私が、もらったばかりの一万円札を渡すと、これまた……
 「あら、これいいんですか?……今日はたくさんお金が戻って
こなくて助かります」
 渡した一万円を何の疑いもなくまたお財布の中に丁寧にしまお
うとしますから、さすがに二の句がつげませんでした。

 「あなた、計算はできるわよね」
 恐る恐る尋ねてみると……
 「ええ、まあ一応、……通知表の数学の欄には5のスタンプが
押してありますので……それなりの評価は頂いてます」
 ときた。

 つまり彼女の頭の中では買い物と数学の計算は別の次元の世界
で起こっているということなのかもしれません。

 益々、興味を引かれた私は、ついでとばかり、
 「ねえ、あなたカード持ってたら、それでもいいわよ」
 と言ってみましたら、これもあっさり……

 「あら、それは助かるわ。では、これでお願いね」

 そう言って私に差し出したのは黒いアメリカンエクスプレス。
 『何コレ!!?、あなた何様なの???何であなたみたいな子
がこんな田舎の高校にいるのよ???』
 私の目が丸くなります。
 当時のアメリカンエクスプレスカードは私が父に頼んで作って
もらったVISAなんかよりはるかに格上のカードでした。

 私は、彼女のカードを確認するうち、風変わりだけどこの子と
お友だちになってみたいと思ったのでした。

***************************

 本当はそんなことをすると遠回りなのですが、帰り道が一緒だ
からという口実で彼女に近づきます。
 こんなお嬢様ですから私にはハードルが高いかと思ったのです
が、話せば意外に気さくな子でした。

 彼女の名前は桐山香澄。なんと、地元桐山藩の17代目当主、
桐山影虎氏の娘さんなのです。

 ならば納得のお姫様と言いたいところですが、実は、私も偶然、
この子と同じ桐山家のお姫様を一人知っているのです。
 ただ、その人は一般常識人。決して世間ずれなどしていません。

 そこで気になったのでさらに聞いてみると……

 「私、最近、お父様の養女になったばかりなんです」
 と教えてくれました。

 本妻との間にすでに娘さんがいるのにあらためて養女を迎えた
というのです。もちろんそれだけでも十分面白いお話なのですが、
話はさらに続きます。

 彼女の生い立ち、育った環境がまるでおとぎ話なのです。私は、
彼女から子ども時代の話を聞くたびに、まるで小説でも読み聞か
されているように、興味津々で引き込まれていったのでした。

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4/17 初恋

4/17 初恋

*)思い出に基づく小説としてお願いします。

 僕の初恋っていつだろうって思ってみた。

 そりゃあ僕だって男の子、幼稚園時代から好みの女の子という
のはいたんだけど、それって、まだ恋というより『お友だち』と
いう感覚だったような気がする。

 僕が初めて異性の子を特別な思いで眺めたのは11歳のとき。

 だから、僕の初恋は小五のときだった。クラスメートにやたら
目鼻立ちのはっきりした子がいて、僕は『ハーフに違いない』と
勝手に思い込んでモーアタックをかけてみたが、わかったのは、
彼女のお父さんもお母さんも正真正銘の日本人だということ。

 ところが、その現実を受け入れられない僕の脳は……
 日本生まれ、日本語はベラベラで生活習慣も全て日本式な彼女
と会うたびに、何故か片言の日本語になっていた。

 彼女にしてみれば『不思議な子』と思われていたに違いない。

 そんな彼女とは、消しゴムの貸し借りから始まって、帰り道、
家族のことや学校のことなどを色々話するまでになっていたが、
その日はどうも話が弾まなかった。

 「ねえ、お腹痛いの?」
 無粋な少年はそんな尋ね方しかできないが『ひょっとして……』
という思いがあったのも確かだった。
 こうした嗅覚は、実は母の方がはるかに優れていたのだが、僕
も母の子として平均値以上のものを持ち合わせていた。

 だから口数の少ない彼女と家の近くで別れたあとも気になって
そっと彼女のあとを着いて行ったのである。

 何のことはない、第六感を頼りにストーカーをやらかした訳だ。

 美由紀ちゃんの家は新興住宅地の外れ。さすがに玄関先をうろ
つくのはまずいと思った僕は、当時竹やぶで崖になっていた家の
背後から彼女の家へと近づく。

 すると……詳しい会話は忘れてしまったが、家の外まで彼女の
お母さんが彼女を叱る声が聞こえるのだ。

 「おかあさん、もう、あなたをこれ以上許すつもりはないの。
嫌なら今すぐこの家を出て行きなさい」

 新興住宅地といっても、ここは他の家と少し距離があったから
おばさんとしても少しぐらい大きな声を出しても大丈夫だろうと
いう安心感があったのかもしれない。

 苦労して竹やぶを登ってきた僕はおばさんのいきなりの大声に
面食らってしまった。
 おまけに、見上げる二階の部屋からは……

 「いいから、持ってきなさい。やらなきゃ終わらないでしょう」
 なんて声も聞こえる。

 『何のことだろう?』
 と思っていると、しばらくしてから……バタバタっとトイレへ
駆け込む音が……。

 間髪をいれず土管の中を何かが落ちているような音がして……

 『そういえば、彼女の家、たしか二階にもトイレが……という
ことは……』
 と思った。

 さらに……
 「全部出してしまうのよ。お尻も綺麗にしてから出てきなさい
ね」
 というおばさんの声。

 小五のことで全てを見通せてた訳ではないだろうが、おおよそ
何が家の中で起きていたかはおばさんのおかげで想像できたので
ある。

 おまけに……
 「…パシっ、……パシっ……パシっ、……パシっ……パシっ、」
 という音と一緒に……
 「……ひとつ、……ふたつ、……みっつ……よっつ……いつつ」
 という美由紀ちゃんの声が……

 時折……
 「ほら、お尻を下げないの!」
 「ほら、手でかばうなら、やり直すよ」
 「ほら、黙ってないで……ごめんなさいはどうしたの!」
 なんていうおばさんの声も聞こえる。

 恥ずかしい話、僕の股間は思いっきりテントを張ってそのまま
になってしまった。

 『凄いや、だから、今日は僕とあまり話したくなかったんだ』
 僕は目を白黒させながらも、お仕置きの実況中継に聞き入って
しまう。

 もちろんこの話は美由紀ちゃんには内緒にしていたが……
 でも彼女の顔を見るたびにその日の情景が蘇って笑ってしまう
だった。

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Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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