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4/15 子守っ子、敬子の性春 ~4~

4/15 子守っ子、敬子の性春 ~4~

*)幼い男の子がオチンチンにお灸をすえられる話
なんですが、過激な内容はありません。


 お母さんから厳しいお仕置きを受けたあと、美咲ちゃんは私を
無視できなくなりました。何しろ私は怖いお母さんのお墨付きを
もらっていますから、あからさまに嫌々をするわけにはいきませ
ん。そんなことをしたら、今度はどんな目に合わされるかわかり
ませんから……

 仕方なく、私と一緒にお勉強します。

 最初の頃は自分でやらなければならない宿題を私に押し付けて
くる程度でしたが……それで信用を得ると、今度は、分からない
ことを尋ねるようになります。

 お母さんからのお仕置きで二人の関係が劇的に変わったという
わけではありませんが、それでも、美咲ちゃんは次第次第に私を
頼るようになっていきます。

 私の利用価値がわかってきたということかもしれません。

 宿題を見てもらい、学校で分からないことがあると私に尋ねる
ようになって、何だか私も家庭教師らしくなってきました。

 時には、「何よ、昔は子守のくせに!」なんて癇癪を起こす事
だってありましたが、私は気にしませんでした。

 そんな時は……
 「そんなこと、私はかまわないけど…お義母様の耳に入ったら、
また大変よ」

 こう言うと、とたんに大人しくなりました。
 きっと、あの日の思い出が蘇って怖かったんだと思います。

 お灸は子供にとっては極刑に近いお仕置きですから、一度やる
としばらくは……
 「そんなことしてると、またお灸だよ」
 という脅し文句だけで十分効果があります。

 実際、お義母様は、お嬢様風をふかせる美咲ちゃんに業を煮や
して、お線香に火をつけるところまでは何度かなさいましたが、
そのつど美咲ちゃんはお母さんに『ごめんなさい』をして許して
もらっていました。

 そして脅しだけのお仕置きが終わると、お母さんは美咲ちゃん
の身体を抱いてあやします。
 こうしてしばらく抱かれてから勉強机に戻された美咲ちゃんは、
何だか安心するのでしょうか、前にも増して一生懸命勉強するよ
うになるのでした。

 そんなこんなを繰り返しながら、美咲ちゃんは次第に私の存在
を認めるようになります。最初は冗談のつもりだったのでしょう
が、いつしか私のことをごく自然に「お姉ちゃん」と呼ぶように
なっていました。

 とはいえ私自身もまだ学んでる身の子供ですから、三田村先生
のように指導したからといって美咲ちゃんの成績が目立って上昇
するというものでもありません。ただ、お義母様は私の家庭教師
ぶりには満足されているみたいで、私が美咲ちゃんの成績が上が
らないことを恐縮すると……

 「いいのよ、学校の成績なんてまだ上がらなくても……今は、
勉強する習慣をつけさすことが大切だから……それに、あなたと
いう女の子が家の中にいるおかげで、あの子も少しずつ『女の子』
ってどんなものか分かってきたみたいで、私は嬉しいわ」

 「そういえば、近頃、少し大人しくなったみたいな気が……」

 「あなたもそう思うでしょう。私もよ……それがこちらの狙い
なの……あの子が生まれた頃は、商売が忙しくて、私も下のチビ
たちのようにあの子の面倒をみることができれなかったの。……
おかげで、気がついたら我が家に山猿が一匹迷い込んでたわ」

 お義母様は自嘲気味に笑います。でも、確かにそうでした。
 美咲ちゃんは男勝りのお転婆さんですが、下の男の子たちは、
お義母様が『心血を注いで育てた』なんて誇らしげにおっしゃる
ほどでしたから、ご近所から羨ましがられることはあっても後ろ
指を差される事はありませんでした。

 兄の高志君は、学者肌でしっかり者。弟の明雄君は、芸術家肌
で甘えん坊。二卵性ですからお互い顔も性格も違います。特に、
明雄君は端整な顔立ちもあって誰からも可愛がられていました。

 そんな弟たちに、美咲ちゃんは嫉妬やコンプレックスを抱いて
いたのかもしれません。それがお転婆にさらに拍車を掛けていた
のでしょう。

 そこへ、女の子の先輩(私程度のものですが)が現れたことで、
『ああ、こんなふうに生きていけばいいんだ』というお手本が手
に入ったのかもしれません。

 そんなお手本(?)に磨きをかけるためでしょう、お義母様は私
に美咲ちゃんと同じ日舞とピアノを習うように命じます。

 もちろん、そんなこと言われても……
 「もう、そんなに何でもできません」
 だったんですが……とうとうこれも断れませんでした。

 そもそも私、今でも子守ですからね、美咲ちゃんの家庭教師や
自分の勉強の他にも、下のチビちゃんたちをお風呂に入れたり、
食事させたり、着替えさせたり、子供部屋を片付けたり、なんて
いう子守本来の仕事があるんです。

 だから、学校の部活だってできないっていうのに、それでいて
この上習い事までできるわけがありません。
 ですから、断ってるのにお義母様は人使いが荒いと思いました。


 一年後……
 日常が分単位のスケジュールのなか、でも、気がつくとそれも
何とかこなせるようになっていました。そして何より驚いたのは
何時の間にか美咲ちゃんが女の子らしくなっていたことでした。
 忙しくしている私を身近に見ていて何か感じるところがあるの
かもしれません。

 お義母様に言われなくても家の仕事を手伝うようになりました
し、自分の下着は自分で洗いますし、私のことだって何のためら
いもなく素直に「お姉ちゃん」と呼ぶようになっていました。

 「あなたに感化されたのね。私の判断、間違ってなかったみた
いね」
 お義母様の誇らしげな顔を覚えています。

 でも、そうなると私は『御用済み』ということでしょうか。
 来年の三月にはいよいよ私も中学も卒業してしまいますから…

 すると、お義母様はここでも……
 「何言ってるの。今どき中卒じゃ将来困ることになるわよ。私
の処が嫌になったのなら仕方がないけど、そうじゃなかったら、
ずっとここにいなさい。県立の学費くらい出してあげるわ」

 ここでもあっさり私の将来が決まったのでした。


 さて、ここまでお話してくると、角田のお義母様って、何だか
女の子にばっかり厳しいように思われるかもしれませんが、そん
なことはありませんでした。

 たしかに、下の男の子は跡継ぎですから、そりゃあ大事に育て
られていました。まるで着せ替え人形のように、その場その場で
とっかえひっかえ着る服は、普段着にいたるまですべてオーダー
メイドですし、勉強部屋はお父さんと同じ重厚感のある机や本棚
がデンと並んで、オモチャ箱がなければとても子供部屋には見え
ません。
 その箱の中のオモチャもドイツ製ありアメリカ製ありで、まず
ご近所の子供たちが持っていそうにないものが沢山ありました。

 物だけじゃありません。お母さんは忙しい時間を割いて二人の
ためにありとあらゆる子供向けの本を読み聞かせていましたから、
この二人、とっても物知りだったのです。

 ただ、だからといって、何でも彼でも甘やかしていたという訳
ではありませんでした。

 二人の身にも雷は落ちます。つまり、厳しいお仕置きだって、
当然たくさんありました。
 ただ、そのお仕置き風景が、美咲ちゃんの時とはだいぶ違って
いたのでした。

 ある日、二人はおぼえたての自転車を乗り回して公園で遊んで
いました。当時はまだ物のない時代で、子供用自転車といっても
小学生を対象とした物しかありません。その下はいきなり三輪車。
その中間がありませんでした。
 四歳、五歳用の二輪自転車というものがまだなかったのです。

 そこで二人はお父さんから一番小さなサイズの自転車を買って
もらい、サドルを外してそこに座布団を敷いて練習していました。

 何とか漕いで走らすまでにはなったのですが、いかんせん足が
地面はおろか、一番下に下りたペダルにまでも着きませんから、
その段階ではまだ自分で自転車を止めることができませんでした。
 もし自転車を止めると転んでしまうから……

 危なっかしい二人は、自転車をお父さんと一緒に公園の中だけ
で乗るお約束をしたのでした。

 ところが、お父さんの身体がいつもあいているとは限りません。
私もお義母様から命じられたお勉強が忙しくなって、それまでの
ように四六時中二人に張り付いてるわけにはいきませんでした。

 そこである日、二人は自分たちだけで自転車を押して公園まで
やってきます。
 最初はおとなしく公園の中だけで遊んでいたので問題なかった
のですが、だいぶ自転車に慣れてきましたから、自信がついたの
でしょう、外の道を走ってみたくなったのでした。

 ところが、二人は自分たちだけでは自転車を止められない現実
をすっかり忘れていたのです。

 結果……

 「ガラガラガッシャン!!!」

 続けて……
 「ガラガラガッシャン!!!」

 お兄ちゃんが最初でした。続けて弟も、ガラス屋さんの店先に
突っ込みます。
 おかげでお店の商品が三つ四つ割れたみたいです。

 「あらあら、大丈夫?」
 さっそくお店のおばさんが出てきました。

 「ごめんなさい」
 高志君が言えば明雄君も……
 「ごめんなさい」

 この二人、双子ですから同じ日に生まれて立場は同じはずなの
ですが、高志君は日頃からお兄ちゃん風を吹かせていて、何かと
弟をかばいたがりますし、明雄君も明雄君で何かにつけて『お兄
ちゃん』『お兄ちゃん』って、金魚のウンチみたいに高志君の後
を着いてまわっていましたから、傍目には歳が離れた兄弟のよう
に思われていました。

 「二人とも怪我はなかった?」
 「ここはガラスが沢山あるからね、どこか切らなかったかい?」
 「さわっちゃだめだよ」
 おばさんは二人の怪我だけを心配してあちこち二人の体を調べ、
二人の身体と自転車についたガラス片も払い除けてくれました。

 もちろん怒った様子など微塵もありません。

 ですから、二人とも……
 「大丈夫だった」
 「ぼくも……」
 そう言って笑顔で答えます。

 すると……
 「お前たち、まだ危ないからここからは押して帰りなさい」
 途中から参加したおじさんが二人の自転車をお店の前へ出して
くれて、帰りしなそう言うので、二人は自分の自転車を押して家
へと帰ってきました。

 二人にしてみたら、ただそれだけのこと。一日の中で起こった
ささやかなエポックだったのです。
 ですから、それは親にどうしても話さなければならない事では
ないように思えたのでした。

 ところが、翌日、例のおばさんがお母さんに昨日の事を話して
しまいましたから門田の家は大変です。
 大人の世界は子どもの世界のようにはいかないのでした。

 さっそく、お父さんお母さんが揃って菓子折りをもって硝子屋
さんに謝りに行きます。
 幸い高価なものは壊れていませんでしたが、当然、お母さんの
怒りは二人の息子へも向くことになります。

 「あなたたち、昨日はどこで遊んでたの?」

 お母さんが正座して……その目の前で二人のチビちゃんたちも
正座しています。私もお手伝いで呼ばれていましたが、お母さん
の顔が厳しいですからね、もうそれだけで二人は神妙にしていま
した。

 「あなたたち、昨日は公園で遊ぶって言うから自転車で行く事
を許したのよ。『公園の中だけで自転車に乗ります。道路には出
ません』って、そういうお約束だったわよね」

 「……(ヤバイ)……」
 「……(ヤバイ)……」
 二人の顔から血の気がひきます。
 でも、もう手遅れでした。

 「あなたたち、二人してガラス屋さんのお店に自転車で突っ込
んだでしょう。……どうしてそうなるの?公園で乗ってた自転車
がいきなりガラス屋さんまで飛んでいったのかしら?」

 「………………」
 「………………」

 「二人とも黙ってたら分からないわ。どうなの、道路で乗って
たんでしょう!!」

 「はい」
 「はい」
 こういう時、最初に口を開くのはたいていお兄ちゃんで、明雄
君はそれに続くというのがいつものパターンでした。

 「やっぱり約束破って公園を出て道路で走らせてたのね。……
それで硝子屋さんに、ガシャンだったわけだ」

 「………………」
 高志君がうなづき、そして
 「………………」
 明雄君もうなづきました。

 「それで……どうして、そのことをお母さんに話してくれなか
ったのかしら?そんな大事なこと……叱られると思ったから?」

 「だって、おばさん怖くなかったよ。気をつけて帰るのよって
言ったもん」

 「……(ふう)」
 お母さんは一つため息をつくと……
 「いいこと、ターちゃん。そんなことがあったらまず真っ先に
お母さんに言わなきゃいけないの。……だって、お母さんたち、
あなたたちの不始末を硝子屋さんにお詫びに行かなきゃいけない
でしょう」

 「…う…うん……でも、おばさんに、ぼく、ごめんなさいした
よ」

 「それじゃ足りないの。お母さんたちが行ってちゃんと謝らな
きゃいけないの。今日硝子屋のおばさんからお話聞いてお母さん
とっても恥ずかしかったんだから……これからは誰かにご迷惑を
かけたら必ずお母さんに言ってちょうだい。いいわね」

 「はい」
 「はい」
 二人は少し身体を揺らしながらご返事します。それはちょっぴ
り不満のある時によくやる仕草でした。
 でも、次の言葉を聞いて、二人の揺れる身体がぴたりと止まり
ました。

 「今日は、そのことを忘れないためにこれからお仕置きします。
お灸のお仕置きよ……オチンチンに据えますから……いいですね」

 「………………」
 「………………」
 二人は顔面蒼白で声を失ってしまいました。

 そりゃあそうです。幼い子にとってお灸がどれほどのものか、
ましてそれをオチンチンにだって……それってやられた人でない
とわからないと思います。

 私は女の子なのでそこのことは分かりません。心棒だって性器
にじかではありませんから……

 でも、ここが美咲ちゃんとは違うんです。
 ジタバタしたり、大声を上げたり、……とにかく無駄な抵抗を
一切しませんでした。

 お灸を据えられるということになって、そりゃあ一大事のはず
なのにとってもおとなしいんです。
 そりゃあ悲しそうな顔はしてますけど、その顔だって、どこか
お母さんに甘えているようでした。

 「二人はここでおとなしく待ってなさい。………敬子ちゃん、
お手伝いしてね」
 お義母様に命じられて私は部屋を出ます。

 私の係りはバスタオル数枚と熱いお湯をはった洗面器、それに
二人分のオムツを持ってくることでした。

 このオムツの用意、実はお義母様の発案でメインのお仕置きが
終わったあと、この家の子どもたちがはめさせられる見せしめ刑
だったのです。

 お浣腸に限らず、お灸でも、お尻叩きでも、それが終わった後、
その日は寝るまでオムツ姿。夕食の時は、お父さんにまでそれを
見られますから、美咲ちゃんなんて夕食で呼ばれても、部屋から
なかなか出てこようとしませんでした。

 でも、結局はその姿をお父さんにも晒すことになります。もし
部屋に閉じこもったりすれば、また新たにお母さんの雷が落ちる
ことになりますから。

 「……さてと、まずお兄ちゃんの方からね」

 私が部屋に戻ると、お義母様の方はもうすっかり準備が整って
いて、ちょうどマッチを摺ってお線香に火をつけるところでした。

 私は、恐怖のあまり二人が逃げ出したんじゃないかと心配しま
したが、さすがにそれはありませんでした。

 ずっと、正座したままでお母さんがお灸のセットを持ってくる
のを待っている二人の姿を想像すると、もうそれだけで、健気で
抱きしめたくなります。

 それってお母さんはもっともっと感じてることでしょうから、
同じようなことでお仕置きする時でもチビちゃんたちには優しく
なりがちで……それがまた美咲ちゃんには不満みたいでした。

 「敬子ちゃん、あなた、高志の身体を抱いててちょうだい……
正座して、膝の上に乗っけておけばいいわ。……たぶん暴れたり
はしないと思うけど、一応、この子の胸のあたりに手を回して、
上半身だけは押さえておいてね…………そうそう、それでいいわ」

 私は子どもたちの拘束台の役目をおおせつかります。
 正直、『暴れたらどうしよう』と不安でしたが、私が抱きしめ
ても高志君はおとなしいままでした。

 お母さんに半ズボンとパンツを脱がされて、可愛いオチンチン
が丸見えになっても抵抗する素振りはみせません。

 何度も言いますが、美咲ちゃんとはえらい違いです。
 いったいどっちが年長者なんだろうって思ってしまいます。

 それをお義母様にあとで尋ねたら……
 「だって、美咲が生まれた時は仕事が忙しくて他人任せにして
しまった時期もあったけど、この子たちは生まれた時から片時も
離さず、ずっと私が抱いて育ててきたんですもの。子育てだって
気合の入れ方が違うの。そんなの当然よ」

 お義母様は自慢げにおっしゃいますが……
 『えっ!?この子たちを昼間あやしてたのは私なんですけど』
 なんて思わず言いたくなりました。

 でも、たしかに、お義母様のこの子たちに対する愛情は大変な
ものでした。哺乳瓶のミルクには常にビタミン剤とカルシウムが
入っていましたし、離乳食でさえご自分で一度噛んでから子ども
たちの口の中に流し込む念の入れようでした。

 オムツは30分ごとにご自分で点検、顔を見れば必ず話しかけ
ますし、頬ずりします。ほっぺを舐めまくります。

 濃厚なスキンシップは、ほっぺただけじゃありません。動物の
母親が生んだ自分の赤ん坊を舐めて育てるように、お義母様は、
とにかく子どもたちを全身舐めまくっていました。

 特にお風呂上りが大変です。裸になった二人の全身をくまなく
キスで攻めたててから丹念に舐めまくります。
 その中には、お臍だって、オチンチンだって、お尻の穴だって、
例外じゃありませんでした。もし、母親じゃなきゃ変態です。

 『そうやって育ててきた我子が自分を裏切るはずがない』
 お義母様は固く信じていましたし、実際子供たちもお母さんの
言いつけはよく守っていて、外へ連れ出しても『あれ買って~』
『もう帰る~』といったイヤイヤをして泣き叫ぶなんてことが、
ほとんどありませんでした。

 そんなお母さんにとっての扱いやすい『よい子』は、お仕置き
を受ける時だって『よい子』だったのです。

 「さあ、これから熱い熱いしますけど、しっかり我慢するのよ」

 お義母様はそうおっしゃいますけど、こればかりはだからって
おとなしくしていてくれるでしょうか。
 お兄ちゃんを抱きかかえている私は心配で仕方がありませんで
した。

 お母さんはロケット型のオチンチンをちょこんと持ち上げると
下の袋との間、つまりオチンチンの根元に大きな艾を乗せます。

 どうせ幼稚園児なんだから、という心安さはあるのかもしれま
せんが、私の方から見ると、とにかくすごい映像です。

 『えっもうそ、冗談!!!?』
 まさに、そんな感じの大きさでした。

 「さあて、これが我慢できるかなあ」
 お母さんは半分笑いながら高志君に問いかけます。

 すると……
 「…………」
 高志君は大きく首を振って反応。

 「そう、じゃあ、これからはお外の道では自転車乗らない?」
 お母さんが尋ねますから、一も二もなく……
 「もう、乗らない」
 という震えた答えが返ってきました。

 すると、少しだけ間を置いてから……
 「そう、それじゃあ、これは可哀想ね」
 お母さんはそう言うと、一度置いた艾を半分にして、また同じ
場所に乗せます。

 でも、それでもかなり大きな艾でした。

 「ご近所にご迷惑をかけたら、あなたたちだけじゃなないの。
お母さんたちだってごめんなさいしなきゃいけないの。わかる?」

 「……はい」

 「これからは、何でもお母さんに報告しますか?」

 「……はい」
 高志君すでに涙声でした。

 「これからお外の道では自転車に乗りません……言って御覧な
さい」
 「これからはお外の道で自転車に乗りません」

 「お外で起こったことは、みんなみんなお母さんにお話します」
 「お外で起こったことは、みんなみんなお母さんにお話します」

 お母さんは高志君に二つの誓いをたてさせます。
 すると、半分になった艾がまた半分になります。

 そして、最後に……
 「ところで、高志ちゃん。高志ちゃんは、これからもお母さん
と一緒に暮らしたいですか?」

 高志君は突然の質問に一瞬迷っていましたが、もちろん答えは
決まっていました。
 「……はい」

 ということで、艾はさらに半分に……
 でも、これで許されるというわけではありませんでした。
 残った艾は小さいですけど、それでも高志君の根元に目立って
あります。

 「じゃあ、これからお仕置きをします」
 お母さんは顔をきりりと引き締めました。
 「可哀想だけど、昨日あなたがしたことは角田の家では許され
ないことなのよ。お仕置きが嫌なら、お母さん、あなたとの縁を
切ります。その方がいいのかしら?」

 「えっ!?」
 こんな幼い子にそんなの酷ですけど、お義母様は美咲ちゃんに
もこのフレーズをよく使っていました。
 逆の見方をすると、子どもが自分について来るという絶対的な
自信があるからなんだと思います。

 「はい」
 高志君にとっては良いも悪いもありませんでした。
 経済的にも精神的にもお母さんの愛なしには生きられないんで
すから、当然と言えば当然……お灸のお仕置きだって当然受ける
より仕方がありませんでした。

 「敬子ちゃん、あなたの手でその子に目隠しできるかしら……
怖がるといけないから」
 お義母様は私に命じます。
 ですから、その通りにしますと……

 「……!……」
 乗ってた艾はあっという間の早業でお線香の頭くらいのほんの
小さなものになったのでした。

 そして……

 「ぁ~ぁぁぁぁ」
 その瞬間、高志君の身体は私の懐の中で反応しました。

 何とも切ない声が漏れます。
 両足をバタつかせました。
 背中が反りあがりました。
 当たり前ですけど、これでも十分熱かったと思います。
 でも、一瞬の出来事でした。

 「よし、よく頑張ったわね」
 お母さんはすぐにパンツを穿かせると高志君を抱き上げます。

 「あなたは私の大事な大事な赤ちゃんなのよ。ずっとずっと、
いい子でいましょうね。お母さんの愛の中にいればいつも幸せ。
……そうでしょう?……違った?……そうは思いませんか?」
 「はい」高志ちゃんはもう笑顔です。
 「そうでしょう。だったら、お言いつけをちゃんと守っていい
子でいましょうね」

 お母さんは高志君をひとしきり愛撫すると……

 「さあ、次はアー坊、あなたの番よ。あなたも、お兄ちゃんを
見習ってしっかり我慢してね。……あ、それから、……あなた、
お兄ちゃんなんだから、アー坊の身体押さえていて頂戴」
 お義母様はなんと、私の仕事をこんな幼い子に頼むのでした。

 『えっ!!大丈夫なの?』
 当然、そう思いましたが……

 手順は同じ。

 「ぁ~ぁぁぁぁ」
 その瞬間、アー坊(明雄君)の身体は高志君の抱っこの中で反応
しました。

 何とも切ない声が漏れます。
 両足をバタつかせました。
 背中が反りあがりました。
 当たり前ですけど、とっても熱かったと思います。
 でも、これも一瞬の出来事でした。

 そして、その後もまったく同じ……
 抱っこよしよし、頬ずりすりすりしながら……
 「アーちゃんはね、私の大事な大事な赤ちゃんなの。わかって
ますか」

 「はい」
 明雄ちゃんはお母さんに抱かれるともうすぐに笑うのです。

 「ずっとずっと、いい子でいましょうね。お母さんの愛の中に
いればあなたたちはいつも幸せですよ」

 「はい」
 明雄ちゃんは恥ずかしそうにお母さんの胸の中顔を埋めます。
高志君は羨ましそうにお母さんのすぐそばでそれを見ていました。

 最後は二人ともお母さんの膝の上に抱いてもらって……
 「ほんと、あなたたちは手の掛からない子で助かるわ。夜泣き
はしなかったし、ミルクは沢山飲んだし、街に連れ出してもだだ
をこねたことがなかったし……ご近所の誰からも、『どうしたら
そんないい子になるの?』って羨ましがられてたのよ。ほんと、
お母さん、あなた方が赤ちゃんで幸せだわ。………これからも、
お母さんのお言いつけを守っていい子でいましょうね」

 「はい」
 「はい」
 二人は少しはにかんだ様子でご返事します。
 でもお義母様のおっしゃってることは本当です。子守仲間の誰
に聞いてもこんなに大人の手を煩わせない子はどこにもいません
から、私自身も羨ましがられていました。

 だから、こんなお仕置きだって本当はいらないと思うのですが、
お義母様に言わせると、『お料理のスパイスと同じで、まったく
お仕置きをしないと親子も緊張関係がなくなって、お母様に飽き
てしまうの。お小言の効果がなくなってしまう』んだそうです。

 そんなスパイスを時折効かせながら、この男の子二人に関する
お義母様の可愛がりようは尋常じゃありませんでした。

 いくら幼児といっても、この時すでに、もう赤ちゃんという歳
ではありませんでしたが、お義母様はこれから先もこの子たちが
もっと大きくなってからも『あなたは私の大事な大事な赤ちゃん』
を連発していました。
 『食べちゃいたいくらい可愛い』なんてという表現がぴったり
するくらい、この男の子二人は愛されていました。

 私は男の子に恵まれなかったのでそのあたりは分かりませんが、
母親にとっての男の子って、父親が娘を溺愛するように、何だか
特別な存在なのかもしれません。
 だから美咲ちゃんが二人に焼きもちをやく気持もわかるんです。

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『悪い子』さんへ……ご返事遅れてすみません

『悪い子』さんへ……ご返事遅れてすみません

 一ヶ月もたって今さらご返事も変なんですが、私のブログ管理
が悪くて悪い子さんの拍手コメントに気づきませんでした。
 遅ればせながら、コメントありがとうございました。


 私の母は威圧も含め体罰には寛容な人でしたから、私の心の中
は『体罰=悪』ではないんです。勿論それって子供の方に自分は
愛されてるという実感がないと虐待になってしまいますが……
 幸い、私の場合は親を信じることができましたから着いていき
ました。

 ただ、それでも副産物はあります。
 本来は、飴と鞭を使い分けて教育訓練するわけですが、これが
段々ごっちゃになっちゃうんですよね。

 特に、鞭の危険がなくなってやれやれと思うようになってから、
妙に鞭(お仕置き)が恋しくなる。
 『パブロフの犬』じゃありませんが、鞭(お仕置き)が飴(愛)
を想起させるんでしょうね。

 しかも、その時はHな気分だって持ち合わせてるし、自分の体
は立派になってるから、昔のお仕置き(体罰)より過激なことを
求めるわけです。

 私のような古狸は親が過激なことをしてくれた分、今の子より、
大人になって求める夢やリアルは『もっと、それ以上でないと…』
と思うわけです。

 そう、大人になってマゾヒティクな快楽におぼれやすいという
ことになります。
 結果、こんな小説を書くことになるというわけです。

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4/9 抱っこと赤電話

4/9 抱っこと赤電話

*)あいも変わらず昔話のエッセイです。

 私は恵まれて育ったようだ。
 本人にしてみると『母親がもっと女らしい人だったらいいのに』
とか、『家がもっとリッチだったらいいのに』などと思っていた
から、あまりピンとこないけど、そういう事は贅沢な悩みなのか
もしれない。

 実際、親は私を愛してくれていたし、学校の先生は優しかった
し、友だちからいじめなんて受けたこともなかったから、それで
十分なのかもしれない。……そうそう、友だちの方からは偏屈で
付き合いにくい奴だと思われていたかも……

 いずれにしても、私はそんな優しい大人たちに囲まれて甘える
だけ甘えて大きくなった。
 親はもちろん、先生にも街のおじちゃんやおばちゃんたちにも
平気で抱かれに行ったし、また抱いてくれたから、昭和30年代
って、いい時代だったと思う。

 そうそう、それで思い出すことが一つある。
 あれは、まだ幼稚園に通い始めの頃、僕は隣町のアーケードで
道に迷ってしまったことが何度かあったんだ。

 当時は、お母さんに毎週のように隣町のデパートまでお使いを
頼まれていて……用を済ませたまではよかったんだけど……帰り
の道、バス通りへ行く方向が分からなくなってしまって……

 「えっ!3歳児を隣町までお使いにだすの!危なくないの?」
 近所のおばさんにはよくそう言われた。もちろん、『初めての
おつかい』じゃないからカメラも付き添いもない。

 今のように世の中が物騒だと考えたかもしれないけど、うちの
母親ってそんなことには平気な人だったんだ。物心ついた頃には
電車でもバスでも乗ってどこへでもお使いに出ていた気がする。

 そもそも本人が電車バス大好き少年だったから、バスに乗れる
ならと喜んで頼まれていたんだ。

 ところが、まだ子供だろう、ショーウィンドウに気を取られて
道を一つ間違えて曲がってしまうなんてことがよくあったんだ。

 見かけない風景に慌てた僕は、一旦、今来た道を引き返すんだ
けど、今度は間違って曲がってしまった十字路を行き過ぎてしま
ったりして、結局は迷子になっちゃうってわけ。

 『困ったなあ』
 とは思ったけど泣いたことはなかった。親もこんなことで泣く
ような子ならそもそもお使いになんか出さない。

 こんな時は、あたりを見回してまず赤電話(公衆電話)を探す。

 『しかたない、お母さんのガミガミって声は我慢して家に電話
しよう』
 そう思ってお守りの中から十円玉を二枚取り出す。困った時の
非常用電源だ。

 と、ここまではいいんだけど……
 悲しいかな設置された電話はたいてい高いところにあって幼児
の身体では手が届かないケースが多いんだ。

 ならば、『万事休す』か、というとそうではない。
 こんな時は子供ならではの奥の手があるのだ。

 「だっこ、だっこ」
 僕は通りがかりの見知らぬおじさんかおばさんの袖を引く。
 本当は、『家に電話したいので抱いてください』というのが、
ご挨拶としては正しいのだろうが、抱っこ抱っこで用が足りた。

 「えっ!????」
 そりゃあそうだろう。見ず知らず幼い子にいきなり『抱っこ、
抱っこ』ってせがまれたんだから、大人だって最初は『何事か?』
と思うはずである。

 ところが、真剣に頼めば、たいていの人は……
 「だっこするの?」
 とためらいつつも抱いてくれる。僕の実感を言えば街を歩いて
いる人は、ほぼ100%とっても親切な人たちだったんだ。

 とにかく抱かれてしまえばこっちのもので、体を赤電話の方へ
伸ばすと、おじさん(おばさん)はこちらの意図を分かってくれる。

 「ああ、電話するのね?お家に?」
 「そう、独りでかけられるの?」
 「坊や偉いのね」
 たいていは褒めてくれる。

 で、お母さんが電話に出たら、周りの風景を説明すると………
『ほら、角にいつも行くおもちゃ屋さんがあるでしょう。見える?
そこを右に曲がるの』ってな具合に教えてくれて問題は解決する
のだ。

 あとは、抱っこしてくれたおじさん(おばさん)に……
 「ありがとうございました」
 ってお礼を言えばOKってわけ。
 中にはご親切にバス停まで送ってくれた人もいた。

 こうした場合、普通の子なら道行く人や交番で帰り道を尋ねる
んじゃないかな。実際、お母さんからも……
 「もし、電話で用が足りなければ交番へ行くのよ」
 って言われてたけど、自分から交番へ行くことはなかった。

 なぜって、こんな幼い子がそんな事をしたら、僕は本当の迷子
扱いされて警察官のおじさんがたちまち親に連絡をとってしまう
から。

 結果、親が駆けつけるか、家まで送ってもらうことになる。
 そんなことは僕の沽券に関わるから嫌だったんだ。

 『3歳児の沽券って何だ?』ってなもんだろうけど……
 これはお父さんから教わった言葉。当時の僕はもの凄くプライ
ドが高かったんだ。

 いずれにしても、母がこんな幼い子に遠くへのお使いを頼めた
のは、町の治安がよくて、街の誰もが子供に親切だったからで、
母自身もそんな幸せな街に甘えて子育てしてたんじゃないかな。

 『甘える』って悪いことのように言う人がいるけど、甘えられ
る社会って大事だと思うよ。

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4/5 おやつ

4/5 おやつ

*)エッセイ

 今の人は『家』という概念が希薄なので、。世の中というのは
日本国憲法以下、それに連なる法律で万事規制されているものだ
と思ってるみたいだけど、僕たちが子供の時代には『家』という
枠内だけで通用する法律というものがあったんだ。

 日本国中でここだけにした適用されないルール。そうローカル
ルールが各家庭に存在したのである。

 もちろん、それって我が家にも色々あったんだけど、僕が一番
不愉快だったのは、おやつに関することだった。

 もともと僕のお家で『おやつ』というのは、水菓子か、貰い物
のゴーフルや泉屋のクッキー、虎屋の羊羹、なんてところなんだ
けど、そこに『近所の駄菓子屋で買ってきた御菓子』というのは
含まれていなかった。

 でも、僕にだって『お友達とのおつき合い』ってなものがある
から、お小遣いで駄菓子屋の御菓子を買いたかったのだ。

 そこで、その事をお母さんに訴えると……
 渋々、お小遣いで駄菓子屋のお菓子を買うところまでは許して
くれた。そこまでは……

 ところが……
 「そこで買ったお菓子を道々食べてはいけませんよ。必ずお家
の中で食べなさい」
 って言われてしまったんだ。

 「おやつをお外で立って食べるなんて……あなたは、乞食の子
じゃないの。そんなみっともないまねしないでちょうだい」
 というのが母の言い分だった。

 だから、ごく幼い子の頃は駄菓子屋で買った御菓子をそのまま
家に持ち帰っていたのだが……
 家に着くと不思議な事に嬉々として買ったはずのその御菓子が
あまり美味しそうじゃないんだ。

 だから、おやつはこれまでのようにゴーフルやクッキーや羊羹
をお母さんのお膝の上で食べていた。
 こちらの方が断然美味しかったからだ。

 別にお菓子の味や値段は関係ない。これらのお菓子というのは
お母さんのお膝の上で跳ね回り、お母さんのお手々を舐めながら
食べることができるからとっても美味しいのだ。

 ところが、そんなある日のこと……

 悪友たちが、「一緒に食べようぜ」と言って僕を神社の境内に
誘いこんだ。
 僕としては、もうそれだけでちょっとした不良少年気分だ。

 「こんなところで食べていいの?」
 尋ねる僕に……悪友たちは不思議そうな顔をして……
 「何言ってるんだ?オマエ?」
 と言われた。

 そこで、さっきみんなと一緒に買ってきた駄菓子屋の御菓子を
みんなと一緒に食べてみたんだけど……これが……

 「(えっ)!!(美味しい)!!」

 僕は感激した。
 そのお菓子は信じられないくらい美味しかったんだ。

 『そうかあ!駄菓子屋で買うお菓子は、みんなでお外で食べる
から美味しいんだ!!』

 これが、僕がお外のルールを初めて知った瞬間だった。

************************

3/31  子守っ子、敬子の性春 ~3~

3/31  子守っ子、敬子の性春 ~3~

 お話は多少前後しますが、私がお義母様から二度目のキツイお
仕置きをもらう少し前のことです。

 夏休みの間も私はお義母様からずっと勉強させられていました
が、最後の1週間だけは、遅い薮入りのお休みをもらって実家に
帰ることができました。

 角田の家から実家までは近くの電停から電車に乗って20分。
終点で降りて徒歩でさらに山道を30分歩かなければなりません。
ただ、道中全部あせても一時間とかかりませんから、実家までは
そんなに遠い距離ではありませんでした。……ただ、ならば週末
ごとに実家に帰れるのかというと、そうはいきませんでした。

 そもそも私のように奉公してる者には世間の人が思い描くよう
な土曜日や日曜日といった日がないのです。
 むしろ世間とは逆で、学校に行かせてもらっている子守っ子は、
学校がお休みの土曜の午後や日曜に、ここぞとばかり家の人から
御用を言いつかります。ですから、土曜日や日曜日というのは、
むしろ忙しい曜日だったのです。

 もともと奉公人のお休みは薮入りと言って1月と7月の年二回、
それもそれぞれたった一日だけが公休日ですから、ほぼ一年中が
勤務時間でした。

 もっとも、私が育った頃になりますと、さすがに363日働き
づめはオーバーで、年に二回、一週間くらいのお休みを取る事が
できました。

 その日は若奥様にあつらえて貰った着物を着て、新しい下駄を
履いて帰ります。それと懐には多少まとまったお金が、お小遣い
として入っていました。

 しかも、こうした恩恵は何も働いている私だけじゃありません。

 私が実家に着くと、すでに若奥様が送った大きな柳行李が開け
られていて、家族全員が戦利品を分配しています。
 妹はすでにワンピースを着て独りファッションショーをやって
いましたし、兄は学生服に誇らしげに万年筆が刺さっています。
 もちろん母には帯止め、父は大吟醸を茶碗に注いですでに赤い
顔をしていました。

 7人の兄弟、父母、そして祖父母にいたるまで、薮入りになる
と、若奥様は私の家族全員分のお土産を用意して送ってくださる
のです。

 1日だけの昔とは違い、奉公人が一週間も実家で暮らせば、誰
だって里心がついてしまいます。実家にいる気安さから、お店や
主人の悪口だって飛び出します。そんな時、休暇明け、奉公人の
家族が奉公人を再び安心してお店へ送り出してくれるためには、
お店側も奉公人がお店で大事にされていることを家族にアピール
しなければなりません。

 そんなこともあって、若奥様は奉公人に何かと付け届けをして
くださっていましたが、他の商家なら子守っ子にこんな事までは
しません。

 年二回お店から送られる家族へのプレゼントは、お小遣い程度
の私のお給金より高価でしたから、家に戻った私の株はその瞬間
だけ上がります。若奥様は良い人だということになります。

 そんな、みんなが喜んでいる席で私が、『奉公先をやめたい』
などと切り出して、はたして家族が賛同してくれるでしょうか?
 その辺りは若奥様も計算ずくでプレゼント攻勢をしかけている
のでした。

 私は不利な状況のなか、夕食の時、両親の前で恐る恐る話しを
してみます。

 「今さあ、あたし若奥様の命令で学校の勉強させられてるの。
私の頭が悪いの、若奥様だった知ってるはずなのに、家庭教師の
先生までつけて無理やり『勉強しろ』だもん。こんなのおかしい
よ。……しかも、ついていけないと、お仕置きでお灸まですえる
んだから……あたしさあ、うちに戻って、家の仕事を手伝うよ。
……ね、それでいいでしょう」

 私は若奥様から特別な愛情を注がれている事までは話しません
でしたが、私なりに窮状を訴えます。

 すると母も私が『お灸』という言葉を使ったので心配になった
のでしょう。隣の部屋に私を呼ぶと、裸にして丹念に灸痕を確認
します。

 心棒はさすがに黙っていましたが、お尻のお山も尾てい骨も、
乳頭の周りやお臍、ビーナスの丘まで……相手が母親ですから、
ためらいはありませんでした。

 「ね、ヒドイでしょう」
 私は母に同意を求めます。
 『これがきっかけで家へ帰れるかも…』なんて思ったりもしま
した。

 ところが、母の反応は意外なほど冷静だったのです。

 「要するに灸痕がついたのはお尻の割れ目とお臍の下だけじゃ
ろう。お前が大騒ぎするからよほど何かされたのかと思ったら…
…このくらいの事なら家にいたってばあちゃんに据えられるから
同じだよ」

 「えっ……そんなあ……」
 あてが外れた私はがっかりです。

 確かに若奥様はお灸がとっても上手で、他の箇所は私が熱さを
感じるとすぐに火をもみ消してしまういわゆる寸止めですから、
灸痕は残っていませんでした。

 「それだけじゃないの。あの人、私のお股の中にもすえたんだ
から……」
 私は恥ずかしかったのですが、とうとう最後の手段に打って出
ます。

 私は、これを見せたら母が角田のお店へ怒鳴り込むんじゃない
かって思って心配していましたが、いざという時は、母だけなら
その場所だって見せるつもりで心の準備をしていたのです。
 ところが……

 「……ふう~ん、お前、すでに心棒まで入れてもらったんだ。
……それは、やっぱり、奥様が自らなさったのかい?」
 母は私を確かめもせず、こう聞いてきます。

 私はここぞとばかり若奥様の悪口を言い立てました。
 「だから、おかしいでしょう。それだけじゃないのよ。若奥様
は私を裸にして撫でたり擦ったりもするんだから……いいこと、
あの人がおかしいの、ちょっとやそっとの事じゃないわ。あの人、
きっと変態なのよ」

 もちろんそれは、母が私を家に戻してくれることを期待しての
ことでした。

 「そうかい…………」
 母がその時考えていたのもきっとその事だと思ったのです。
 『娘の為にどうやって父を説得しようか』って……

 ところが、その時母が考えていたのは、まったく別の事でした。

 「心棒ってのは、このあたりに昔からの習慣だけど、やるのは
たいてい良家のお嬢様だけ。うちらみたな貧乏人の家じゃ、まず
やらない。女中や子守になんか、お仕置きとしてたって、やられ
たなんて話、聞いたことがないよ。ましてや奥様がご自身で据え
てくださったなんて……お前、よほど若奥様から可愛がられてる
んだね」

 「ええええっ……何言ってるのよ。そんなことないよ。だって、
あれはお仕置きなんだよ」

 「だからさ、そんなこと、本来、奥様のお仕事じゃないもの。
女中や子守が何かしでかして折檻される時は、古株の女中がやる
ものなんだから。お前だって女なんだから、わかるだろう。女の
あんな処、誰だって触りたいなんて思やしないよ。それをやって
くださってるんだよ。お前の為に…………特別な思いがなきゃ、
ありえないよ」

 「だって……」

 「しかも、家庭教師までつけて勉強させてもらってるなんて。
お母さん、正直、若奥様の真意はわかないけど、そういう時は、
乗ってやってみて損はないと思うよ。それに、お前の口ぶりだと、
しゃべってる愚痴ほどには、どうしても今の生活が耐えられない
とは聞こえないもの」

 「どうしてそんな事わかるのよ!こっちは本当に大変なのよ!」

 「何だ?違ってるのかい?」

 「えっ!」

 「私はあんたを赤ん坊の時から負ぶって世話してるんだ。……
だから、あんたがどれくらい切羽詰ってるかぐらい分かるんだ。
……私はあんたの母親なんだよ!!……違ってるかい!?」
 母は最期には語気を強めます。

 「…………」
 私は言葉を失いました。
 というのも、家庭教師を付けられて勉強を始めた頃は、確かに
毎日毎日嫌で嫌で仕方がなかったのですが、少しずつ学校の勉強
が分かってくるようになると、それはそれで楽しみも出てきます。
それを母に見透かされたのがショックでした。

 「ここで言えるだけの愚痴を言ったら、お店へお帰り。そして、
若奥様に必死に着いて行ってごらん。それが何よりおまえの為だ
から……」

 「えええっ、だって、あそこはお灸が…………」
 私は最後の抵抗を試みますが……

 「お灸なんて、ここにいたって据えられるよ。お前は、そんな
事とは引き換えにならないくらい大きなチャンスを掴んでるんだ。
頑張ってごらん」

 「ええええっ……」
 私はすっかりあてが外れてしまってがっかりです。
 でも、母の言う『どうしても今の生活が耐えられないという訳
じゃないんだろう』という言葉もまんざら嘘じゃありませんから
仕方がありませんでした。

 私の家は元々水呑み百姓と呼ばれる小作の農家で、農地解放で
地主にはなりましたが、暮らし向きは決して楽ではありませんで
した。
 楽ではないから私が子守にだされたのです。

 そんな私が「帰りたい」なんてわがままを言っても両親が困る
のは分かっていました。だって、私が帰って農作業を手伝っても
それで私が自分の食い扶持を稼ぐことはできないのですから……

 母と二人して居間へと戻ってくると、母が家族を前に重い口を
開きます。
 それは『父が春先に怪我をして1ヶ月農作業に出られなかった
こと』や『すぐ上の兄が高校へ進学したいという話』でした。

 それらはいずれも、『うちの経済事情が厳しいから、おまえは
中学を卒業するまでは今のお店で働いて欲しい』という意味です。

 予想されていた展開とはいえ、私にとってはたびたびがっかり
です。
 『幼い頃から慣れ親しんだ家で、家族と一緒に暮らしたい』
 そんなささやかな幸せでさえ、この時はできませんでした。

 でも、そんな私の姿を見て不憫に思ったのでしょう。意外にも、
大吟醸で出来上がっていた父が承知してくれたんです。

 「お前がそんなに嫌なら仕方がないじゃないか。そこの主人に
お暇をいただけるよう、わしが手紙を書いてやるから安心しろ」
 とまで約束してくれたのでした。

 私はそんな父の口約束に一縷の望みを託していました。
 ところが、そんなはかない夢も、この間お義母様からお仕置き
をいただいた時についえてしまいます。

 父が、私の希望に反して『今後とも娘をよろしくお願いします』
と若奥様宛てに手紙を書いてよこしたのを見せられたからです。

 後で知ったのですが、父はすぐ上の兄が高校へ行くための資金
を角田の家から借りたみたいでした。

 実家での約束は父が酔っていましたから仕方がないとも言える
のですが、『裏切られた』という思いは残ります。
 それはお義母様から据えられた心棒よりもずっと長い時間私の
心を苦しめたのでした。

*************************

 二学期が始まると、とたんに三田村先生の予想が的中します。

 夏休み明けの確認テスト。これは夏休み中も真面目に勉強して
いたかを確認するテストです。これで私の国語はクラストップの
成績でした。

 普段、通知表が3だった子がいきなりクラスの最高点を出した
わけですから、当然、周囲は驚きます。
 特に担任の先生は私がカンニングしたんじゃないかって疑った
くらいでした。

 「あら、何だか気落ちしているみたいね。お勉強大変かしら?」

 お義母様に言われたのでその事を話すと……
 「大丈夫よ、あなたの力は本物ですもの。心配する事はないわ。
何度か試験を受ければそんな疑いすぐに晴れることじゃないの。
女は何かと目移りするけど、あれもこれもって追いかける人より、
与えられた場所で努力した人の方が幸せになるのよ。……あなた
に与えられたのは、この場所。そして、この私」

 「…………」

 「信じられる?」
 「…………はい」
 こう答えるしかありませんでした。

 「だったら、付いてらっしゃい。幸せにしてあげるから……」
 「はい」
 お義母様の強い言葉につられるように、ほんの少し声が大きく
なります。

 「その代わり、お仕置きも沢山よ。わかってる?」
 「はい」
 私はまた一歩、お義母様との中が近くなったみたいでした。


*************************

 さて、こうやってお義母様との関係ばかり述べていると、さも、
私が角田家の一員になったかのようですが、そうではありません。

 お義母様との関係は、あくまでお義母様と私が二人だけでいる
場合だけのことで、普段の私は相変わらず子守っ子のままでした。

 私は相変わらずお義母様の子どもたち三人の面倒をみなければ
なりません。着替え、入浴、食事のお給仕……はては下の男の子
二人(双子)のトイレの世話だって私の仕事でした。

 男の子は双子ですから共に4歳。お義母様がちゃんと仕付けて
らっしゃいますから身の回りのことは一通り何でもできるのです
が、私がそばにいると昔の習性で何でも甘えたがります。

 着替えや入浴は立ってるだけですし食事は欲しいものを指差す
だけ。仕方なく私がスプーンに乗せて口元まで持っていってやる
と、喜んで椅子の上で跳ね回ります。まだまだ赤ちゃん気分です
からトイレでウンチをする時なども、赤ちゃんがするように私が
だき抱えてやらなければなりませんでした。

 怖いお義母様が見ているとちゃんとしていますが……いない処
では二人とも私に甘え放題なんです。

 お義母様は、そんな二人を見て「自分でやりなさい!」と叱り
つけますが、効果があるのはその時だけ。放っておくと何もしま
せんから、結局は私がやる事になります。
 それは、子守っ子の悲しい宿命みたいなものでした。

 その点、美咲ちゃんはすでに10歳ですし、何より女の子です
から、子守の世話は受けたくないとばかりに自分のことは何でも
自分でしたがります。

 ま、それはいいのですが、彼女、大変なお転婆娘でした。

 幼稚園の頃から札付きで、女の子よりむしろ男の子の友だちの
方が多く、男の子と一緒にチャンバラごっこやターザンごっこを
やって遊んでいました。

 当然、喧嘩相手も大半が男の子ですし、顔はいつも日焼けして
真っ黒、年がら年中生傷が絶えませんでした。

 ご主人(お父さん)がよく冗談めかしに……
 「あいつ、そのうちオチンチンが生えるじゃないか」
 なんて言っていたほどなんです。

 今の言葉でなら『体育会系』ということになるのでしょうか。
学校の成績はビリから数えた方が早いですし、ピアノとか日舞と
いった習い事も続けてはいましたが、サボってばかりですから、
いっこうに上達しません。
 お義母様にしてみると、それが頭痛の種だったみたいです。

 そんな事情から、美咲ちゃんはお母さんからよくお小言をいた
だいていました。
 いえ、お小言だけならまだしも、キツイ折檻(お仕置き)だって
日常茶飯事だったんです。

 つまり美咲ちゃんとお義母様って似たもの親子だったんです。

 そんなある日のこと、その美咲ちゃんに勉強を教えるように、
つまり家庭教師になるようにと、お義母様が私に命じるのです。
 それは今までの経緯から、ある程度予想できたことなのですが、
いかんせん私にはハードルが高すぎます。

 「無理です」
 私ははっきりお断りしたのですが、お義母様は……

 「いいから、やって……あなたへのフォローは何でもしてあげ
るから……もちろん、言うこと事きかないようならあなたの判断
でお仕置きしたってかまわないのよ」

 「…………」
 お義母様はそうおっしゃいますけど、私はまだ14歳、しかも
使用人の立場です。主人の娘さんをお仕置きするなんて、そんな
大それたことできるはずがありません。

 でも、お義母様は聞き入れませんでした。
 そして、敬子ちゃんを前にこう宣言します。
 「あなただって、いつまでも山猿のままってわけにはいかない
でしょう。だから今度、敬子さんにあなたのお勉強をみてもらう
ことにしたの」

 当然、美咲ちゃんは大むくれです。
 だって、私は年長者といっても子守っ子ですからお嬢様である
美咲ちゃんは私の事を自分の下にいる人間だと思っていました。
それがいきなり自分の先生になるわけですから面白かろうはずが
ありません。

 でも……
 「いいわね」
 お義母様に強く言われると……
 「はあい」
 あくびしたようにも見えますが、美咲ちゃんとしてはとにかく
こう答えるしかありませんでした。

 しかも……
 「敬子さんには、もし、あなたがサボるようならお仕置きして
かまわないって言ってあるから、そのつもりでいなさいね」

 「えっ!?」
 美咲ちゃんの顔色が変わります。
 おまけに……

 「それでは、ちゃんと正座して、先生によろしくお願いします
をしましょう」
 最後はお義母様の指示で、私を前に両手を畳に着けてのご挨拶。

 「先生、よろしくお願いします」
 私の前で笑顔なんかありませんけど、笑顔のお母さんに押し切
られた格好でした。美咲ちゃんはこの時まだ10歳。お母さんに
言われたら嫌でも仕方がありませんでした。


 そこで、美咲ちゃんの家庭教師を始めるには始めたんですが…

 案の定、元は子守っ子だった私のレッスンなんかまともに受け
てくれませんでした。美咲ちゃんはたちまち膨れっ面になって、
ストライキです。

 でも、これもまたお義母様は織り込み済みのようでした。

 昭和30時代、このくらいの年齢の子がお母さんの言うことを
きかない時はどうなるか……

 「いやあ~~お灸だめ~~ごめんなさい、ごめんなさい、……
勉強します、勉強します、だめえ~~お灸しないでしないで~」

 突然、家中にもの凄い大音響が木霊します。
 もう少し歳がいけば、女の子ですからね、自分の悲鳴がご近所
にも届いて、恥ずかしいという気持も起こるんでしょうが……

 「いやあ~~人殺し~~鬼~~やめろ~~~死んじゃう~~」

 いつも元気一杯の美咲ちゃんは、仏間に引きずられて行く時も
元気一杯でした。

 「敬子ちゃん、あなたも手伝って」
 お義母様はもの凄い形相で私を睨みつけると一緒に着いて来る
ように指示します。
 まるで、私も美咲ちゃんの共犯みたいでした。


 仏間に引っ立てられた美咲ちゃんは、さっそく畳の上に仰向け
に寝かされ、ショーツを剥ぎ取られると両足を高くされます。

 「この子、押さえてて」
 お義母様がこう言って、美咲ちゃんの両足を私に預けるまで、
あっという間でした。

 「いや、お灸いや、ごめんなさい、もうしませんから、やめて」

 美咲ちゃんは仏壇にお灸を取りに行ったお母さんに向って必死
に命乞いしますが、身体をよじろうとすると……

 「お黙り!!」
 ドスのきいた声で一喝されてしまいます。

 すると、美咲ちゃんは本当に黙ってしまいました。
 私だって経験があるから分かるのですが、美咲ちゃんは本当に
怖かったんだと思います。お母さんが怖くて怖くて、声が出ない
みたいでした。

 こんな時、今のお母さんなら、まずお仕置きをするにあたって
事情を説明してくれるみたいですが、私の育った時代、私の育っ
た町ではこの位の子供をお仕置きするにあたっては親が何も説明
しない方がむしろ一般的でした。

 おいた(罪)とお仕置き(罰)は、できるだけ時間を短くが基本
だったのです。
 「お母さんはこんなに怒ってるのよ」
 という怒りの感情を子供に伝えることが大事だったんです。

 『もう、お仕置きは逃れられない。もし、これ以上お母さんを
怒らせたらどうなるか……』
 その先を経験済みの美咲ちゃんは諦めるという道を選択したの
でした。

 「やっと、おとなしくなったわね。……どうなの?少しは反省
した?」
 お母さんは美咲ちゃんのお股から顔を覗かせて、しょげ返って
いる美咲ちゃんの顔を見ます。

 「急におとなしくなったから、お漏らししたのかと思ったけど
……それはないみたいね」
 お義母様はそうは言いつつも美咲ちゃんのお股をタオルで綺麗
に拭き取ります。

 親子ですから、そのあたり何のてらいもありませんでした。
 そして、おそらくは私が据えてもらった艾よりさらに大きな艾
をまだ小さな大陰唇の近くに乗せます。

 「ほら、火をつけるよ。歯を喰いしばって!!」

 お母さんが言ったのはそれだけ。
 私より小さな身体の美咲ちゃんが私より大きな艾の味を噛み締
めます。
 それは、私にとっても子宮がぐっとしぼむほどの衝撃でした。

 「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
 声にならない声が私にも伝わります。
 それは両足を押さえている私にとっても辛い体験でした。

 ただ、美咲ちゃんは仏間へ入って来た時とはうって変わって、
静かにお灸のお仕置きを受けています。

 「よし、あなたも少しはお姉ちゃんらしくなったみたいね」
 お母さんは満足そうに笑うと、美咲ちゃんの両足を下ろして、
ショーツを穿かせ、正座したご自分の膝に乗せます。

 私が育った世界では『まずは、とりあえずビール』じゃなくて
『まずは、とりあえずお仕置き』
 そして、ここからがお小言でした。

 「どうして、学校で敬子先生のありもしない悪口なんか言うの。
敬子先生はあなたよりお姉さんで、成績も優秀。あなたに不足の
ない先生なのよ」

 「だって、子守じゃない」

 「そうよ、子守よ。だから、あなたたちお世話になったんじゃ
ない。それのどこが問題なの?学校の成績が優秀だから、今は、
あなたたちのお勉強もみてもらってる……それだけじゃないの。
それのどこが気に入らないの?」

 「それは……」

 「敬子ちゃんはね、子守をしながらお勉強してこんなに立派に
なったの。立派になったからあなたのお勉強をお願いしたのよ。
それに引きかえあなたはどうなの?何一つお家のお仕事をしない
ばかりか、何をやらしてもサボることばかり考えてるじゃない。…
…ん?敬子ちゃんとはえらい違いよね」

 「…………」
 美咲ちゃんは泣いているのでしょうか、お母さんの胸に顔を押
し当てます。

 「あなたは何もしなくてもずっと私の娘でいられると思ってる
のかもしれないけど……私は傲慢な子や怠け者は嫌いなの。……
いいのよ、あなたなんかここにいなくても……跡取りは、すでに
二人もいるんだし……」

 「えっ?」

 「そう言えば、叔父さんがあなたを養女に欲しいっておっしゃ
ってたことがあったわ。あなた、そっちで暮らした方がよくない?
……うちは女の子が欲しかったら、敬子ちゃんを養女にするから
……」

 「…………」
 この時、美咲ちゃんの顔が真っ青になったのがわかりました。
 それはあり得ないと思っても、お母さんと離れて暮らすなんて、
子どもは絶対に考えたくありません。ですから、お尻叩きより、
お浣腸より、お灸よりこれが一番キツイお仕置きだったのでした。

 「どうやら、あなたはわかってないみたいね。敬子お姉ちゃま
からあなたが習わなければならないのはお勉強だけじゃないの。
見習わなければならないことがたくさんあるの。それをよ~~く
覚えておきなさい」

 「はい」
 美咲ちゃんは少し甘えた声を出しますが、お母さんのお仕置き
がこれで終わったわけではありませんでした。

 「そう、良いご返事ね。それじゃあ、今日学んだことをお灸で
復習しましょう」

 「はい」
 美咲ちゃんの顔には明らかに不満な様子が窺えますが、養女に
出すとまで言われたら従うしかありません。

 美咲ちゃんにとってはこれからが本番。これからがお仕置きの
メインイベントでした。

 「敬子ちゃん、この子慣れてるからたぶん大丈夫だと思うけど、
一応、美咲の身体を押さえててね」
 私はお義母様に頼まれましたが……

 「そんなことしなくていい、大丈夫だよ。あんたは何もしない
で……」
 美咲ちゃんが自分で服を脱ぎ捨てながら不満そうに言います。
当時、角田の家の子供たちがお灸のお仕置きを受ける時に許され
るのはパンツ一つ。女の子の美咲ちゃんもショーツ一枚でした。

 美咲ちゃんの気持は分かります。他人の私が見ている前で裸に
なるのは嫌でしょうし、身体を押さえられるのはもっと嫌なんで
しょうけど……

 「生意気言うんじゃありません!!あんたのそういう処がいけ
ないの!!」
 お母さんに一喝されてしまいました。

 確かに私が押さえてなくても美咲ちゃんは耐えられるかもしれ
ません。けれど、これはお仕置きのためのお灸ですから、誰かに
取り抑えられながらお灸を受けさせるという屈辱感みたいなもの
がお仕置きをする側にとっては大事な要素となるのでした。

 腹ばいになった美咲ちゃんは、まずは首筋の少し下と腰の辺り
に背骨を挟んで二つずつ、仙骨の辺りに一つ、すでにある五箇所
の灸痕に新たな艾が乗せられます。
 そうしておいて……

 「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
 「はい、先生の悪口は言いません」
 美咲ちゃんがお母さんにご返事すると、首筋の下にある艾にお
線香の火が移されました。

 「ひぃ~~~」

 「しっかりお勉強しますね」
 「はい、ちゃんと勉強します」
 今度も同じ。美咲ちゃんがお母さんの期待するご返事が出来て
から、腰の辺りに乗せられた艾に火が移されるのでした。

 「うっ~~~~」

 「次にこんなことしたら、このお尻の穴に焼き鏝ですからね。
分かってますか?」
 お母さんは、あえて美咲ちゃんの菊座に指を突き立てます。
 こんなこと、もちろん本当の親子だからできることでした。

 「はい、そんなことにならないように頑張ります」

 最後は仙骨のあたりに……

 「あっ、ああああああつ~~~」
 思わず顔が歪み、引きつったような声が出ます。
 慣れていても、やはり、ここが一番熱いようでした。


 「さあ、次は仰向けよ」

 仰向けにされた美咲ちゃんは、最後の砦である白いショーツも
剥ぎ取られて、その下、お臍の下に集中砲火を浴びます。

 もちろんここでも、一火ごとにお母さんが質問を繰り返します
から美咲ちゃんはそれに丁寧に答えなければなりませんでした。

 「美咲、もう敬子先生の悪口は言いませんね」
 「はい、先生の悪口は言いません」
 お母さんはその答えを聞いてからお線香の火を艾に近づけます。

 でも、もし美咲ちゃんがちょっとでもふて腐れた顔を見せたら
……

 「あら、そう、まだ反省が足りないみたいね」
 こうお母さんに宣告されて、やり直し。
 また、熱いお灸を最初から我慢しなければなりませんでした。

 もちろん、それは美咲ちゃんも十分に承知してはいるのですが、
いかんせんまだ幼い子供のことで、そういつまでもお芝居(?)は
続きません。

 そこで……
 「もう一度、最初からやり直します」
 なんて言われたら、もう手遅れでした。

 「いやあ~~~だめ~~~ごめんなさい、もうしません、もう
しませんぁぁぁ、熱い、いやあ~~もうしないで~~いや、いや、
いや、だめ、だめ、だめ、死んじゃう、死んじゃう」
 お灸は二度目三度目は最初の時よりさらに熱いですから、美咲
ちゃんの顔も最初の一火から歪みます。

 「おかあちゃま、何でも言うことききます、何でも言うことき
きますからもうしないで……」
 美咲ちゃんはたまりかねて甘えた声を出しますが、お母さんは
決して許そうとはしませんでした。
 むしろ……

 「ほら、敬子ちゃん、もっとしっかり押さえてて、ここが肝心
なところなんだから……」
 美咲ちゃんに向ったお義母様の怒りが、私の方へも跳ね返って
来ます。

 家庭内のお仕置きって、親も子も体裁をまったく気にしません
から、そのぶん過激でハレンチ。それは戦場というか、修羅場で
した。

 お義母様は艾を小さくして、何度も何度も据えます。
 そして美咲ちゃんが泣き疲れて懺悔する声さえ出なくなるまで
それは続いたのでした。


 一区切りがつくと、お義母様は美咲ちゃんを正座した膝の上に
抱き上げます。
 そして、まるで幼子をあやすように抱きしめてから再びお小言
するのがお義母様のやり方でした。

 「あなたは自分が角田家の娘だからここで働いている人は自分
より下の人間だぐらいに思ってるみたいだけど、それは違うのよ。
そもそも、今のあなたに何が出来るの?」

 「…………」

 「力仕事はもちろん、お裁縫もお料理も何もできないじゃない。
今のあなたは、私とお父様に食べさせてもらってるだけでしょう。
……違うかしら?」

 「…………」

 「そんなあなたが、ここで働いてる人たちを足蹴にするような
ことを言っていいはずがないわ。敬子ちゃんはたしかに子守よ。
でも、あなたなんかよりはるかに偉いの。誤解したらいけないわ。
そもそも、あの人たちを雇っているのは、お父様。そして、私。
あなたじゃないの。……いいこと、これだけは覚えておきなさい。
今のあなたは、この家ではまだ何の役にもたたないお人形でしか
ないの」

 「……はい」
 美咲ちゃんの口から小さな小さな声がやっとでました。
 その美咲ちゃんにお母さんは追い討ちを掛けます。

 「お人形は誰かにあげることができるわ。幸い、家には跡取り
もいることだし、あなたはもういらないの。叔父さんが子どもが
欲しいそうだから、あなた、そこで養女になった方がよくないか
しら?」

 「いや、お母さんのところがいい」
 今度はもっとはっきりした声がでます。

 「そう、だったら仕方がないわね。ここにおいてあげるけど、
その代わり、敬子お姉ちゃんとしっかり勉強して頂戴。いいわね」

 「……はい」
 また声が小さくなりました。

 「もう一度言います。敬子お姉ちゃんは山猿のあなたなんかに
比べたら、はるかに優秀なの。十分に家庭教師が務まるわ。もし、
今度お姉ちゃまを困らしたら、その時はお尻の穴に焼き鏝。……
いいわね」

 「いや、いや……美咲どこへも行かないから……」

 お母さんの厳命に美咲ちゃんの顔が震えます。そして、震えた
顔は、やがて震えたままお母さんの胸の中に収まるのでした。


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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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