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真紅の薔薇の蒼いトゲ <1>

      真紅の薔薇の蒼いトゲ

 < 寄宿舎学校 >

 少女の人生は親しだい。
 もちろん、幸せな親子関係だって世の中たくさんあるでしょう
けど……私のように両親が離婚して、ある日、後妻がやってきて、
家の中に母さんの思い出がいつの間にかなくなってしまうと……
寄宿舎学校というのも一つの選択肢かなと……

 そこで学校見学してみた。

 目指した学園は大きな森の中にある別世界。

 赤いレンガの校舎は時計台になっていて窓辺にたくさんの花が
飾られてる。美術室にはプロが描いたような油彩がいくつも掛け
られ音楽室からは天使の歌声が美しいハーモニーとなって流れて
くる。
 授業中の教室に響いているのは、授業を進める先生の声と生徒
たちが本の頁を捲る音だけ。
 中庭に出てあらためて校舎を見上げると、そこには中世のお城
がそそり立ち、ここが私の学び舎なんだと実感します。

 『天使の楽園』

 たまたま見かけた旅人にはそれはもうこの上なく美しかった
から、私、ここに決めたんだけど………

 でも、ここは楽園ではなかったの。
 ここは世間の人に注目される事は決してない学校。
 いえ、決して注目されてはいけない学校だったの。

 生徒はみんなそこのお家の厄介者。
 「目立たないで大人になってね」
 「迷惑をお家に持ち込まないでね」
 って言われて家から追い出された子どもたち。

 目立っちゃいけない子は勉強を沢山しちゃいけないの。
 偉い人になっちゃうと新聞や雑誌に名前が載るでしょう。
 音楽も、絵画も、有名にならない程度に頑張ってちょうだい。
 スポーツは一流にはならなくても対外試合があるから禁止。
 お外の子供たちと接触することが駄目だったから。

 だから、楽しみは自分たちで考えないといけない。
 さて、何がいいかしら……

 で、思いついたのが『お仕置き』

 そうだわ。規則をうんと厳しくして、椅子取りゲームの椅子が
取れなかった子を辱めてたくさん罰を与えるの。
 どうせ、まわりは女の子たちだけなんだもの。
 う~~~んと元気に……
 う~~~んとハレンチに……
 ……ね、いいアイディアでしょう。

 誰かが考えたってわけじゃないけど自然にこうなっちゃったの。
だって、こんな山奥で6年間も過ごすなんて思春期の少女達には
あまりに退屈なんですもの。

 このお話は、そんな私と同様に、外観の美しい姿形に惑わされ、
悪魔の城に迷い込んでしまった一人の少女の物語です。




 ****** ハレンチな夜会(自己紹介) ******

 「いやあ~~~もう、やめてえ~~~だめ~~~できちゃう」

 私は椅子に座らされるなり声を限りに叫びました。
 もう、恥も外聞もありません。
 客席で笑いこけてる上級生たちの視線だけでも痛くのにこんな
舞台の上でお漏らしだなんて、そりゃあ絶対にイヤでしたから。

 「ほらほら、何言ってるの。このくらいの事で騒がないのよ」
 後ろに立つ同室の先輩お姉様がさっそくたしなめます。

 「あなた、このくらいのことでお漏らしたら、卒業式の日まで
ずっと西村ババ子って呼ばれ続けるわよ。さあ、しっかりなさい。
無理だと思っても頑張っていればなんとかなるものよ」

 「そうそう、これは寮のしきたりなの。みんなやってきたこと
なんだからあなただけ出来ないってことないわ。我慢して……」

 「そうよ、我慢、我慢、女の子は何につけても我慢が大事なの。
……ほら、汗ふいてあげるから」

 私が座る椅子の後ろに立っている上級生2人は、新入生である
私のお世話係。
 だから、色々励ましてくれたんだけど……

 そもそも、先ほど控え室で起こった出来事がまだ私の心の中を
黒い雲で覆っています。

 いきなりお姉様たちからテーブルに仰向けに倒されて、タオル
を詰められ猿轡。
 無理やり身体を押さえつけられたあげく、スカートは捲られ、
ショーツは下ろされ、両足を高く上げさせられて……

 「静かにしなさい」
 だって……できるわけないでしょう!!!これじゃあ、まるで
ギャング団よ!!!強姦と同じじゃない!!!

 「ううううううう」

 身動きが完全にできなくなるとグリセリンというお薬をお尻の
穴から100㏄も入れられて……

 もうそれだけだって死ぬほど恥ずかしかったけど……
 オムツをはめられ、オールインワンの赤ちゃんの続き服を着せ
られて……

 気がついたら上級生全員が見学する舞台の上にいたの。

 スポットライトを浴びて、こちらは明るいけど、客席は真っ暗。
 暗闇に光るコウモリみたいな観客の目に怯えてたわ。
 『ここはどこ?』『私は誰?』って感じよ。

 並んだ椅子の一つに座らされて……

 「これから新入生に自己紹介してもらいます。新入生の人達は
どんな質問にも笑顔が大事よ。素直に答えてね。20分もすれば
終わるから、トイレはその後ね」
 って……何よ、それ!!!これ、どういうことよ!!!

 「ほら、新入生達、表情が硬いわよ。リラックス、リラックス」

 お姉様は簡単に言いますけど、私、20分はおろか、10分、
いえ5分だってもうもたないわ。こんなことされてもう絶対無理、
無理に決まってるでしょう。えっ、どうしたらいいのよ!!!
 だいいちこの服は続き服、自分じゃ絶対脱げないのよ!!!

 新入生を全員こんなハレンチな格好で舞台に並べて、どういう
つもりなの!!!これが新入生への歓迎会なの!!!

 見渡せば舞台には私と同じ格好の子ばかり。どうやら、みんな
私と同じ新入生みたいでした。

 とにかく、私、必死に我慢を続けていましたが、寄せては返す
波のような便意は次第に大きくなり、私の番が回ってきた時は、
座っていることさえやっとの状態。すでに気を失いそうになって
いました。

 朦朧とした意識の中で……
 「あら、西村さん、お顔が歪んでるわよ。笑って、笑って……
私たちニーナ女学院の生徒はどんな時でも笑顔で接しないといけ
ないって、ガイダンスで先生にご注意を受けだしょう。私たちも
それは何回も説明したわよね」

 いったい誰の言葉でしょうか、会場のどこからか声がします。

 『何言ってるのさあ!!!だって、だって、こんな時に笑える
わけがないでしょう!!!』
 私は心の中で怒鳴って泣いて正気を取り戻します。

 こんな絶体絶命のピンチでは、最初は自分の事で精一杯。
 誰が何を言っても分からなかったのですが、そのうち、ふいに
観客席の声が拾えたりします。

 もう、全身鳥肌。寒くもないのに全身ガタガタ震えててお腹が
これでもかあってくらい締め上げられてるし、ビュービューって
鳴りっぱなしのお腹の音は外に漏れてもおかしくないほどなの。

 『私、いつ爆発してもおかしくないんだから!!!』
 私、声を出して泣き叫びたかったけど、やがて、その気力すら
なくなっていました。

 「西村さん。笑顔で接するのに、だってもあさってもないの。
私たちはどんな時でも笑顔を絶やしちゃいけないのよ。それは、
お浣腸の後でも同じ。女の子はどんなに苦しくてもまるで何事も
なかったように振るわなきゃ。これはね、その最初の訓練よ」

 「心配しないで、たとえしくじっても特性のオムツがしっかり
受け止めてくれるからお外に漏れたりしないわ」

 「匂いはするけどね」
 会場にいた誰かのヤジにみんながドッと笑います。

 「西村さん、みんな育児や介護実習でこんなの慣れっこだから、
安心してお漏らししていいわよ」

 『えっ!?仁科先生?』
 お姉様たちの声に混じって観客席から一段低い大人の声が聞こ
えます。

 ってことは、これってお姉様達が勝手にやってるんじゃなくて
……これも学校行事の一つなの?

 「あら、ホント。西村さんお顔が歪んでるわね。笑顔、笑顔、
こんな時でも女の子は笑顔でなくちゃ」

 それは先生が私を励ましてくれているように聞こえましたから、
思わず……
 「はい、先生」

 なんて言ってしまったけど、今は事情が違うでしょう!!
 こんな時まで、そんなことできるわけないじゃない!!!

 「……あっ、それから、これは寮の歓迎会だけど、このあと、
学校の歓迎会もあるから、そちらも楽しみしていてね。そこでは
これまであなたが経験したことのないようなお仕置きをたくさん
体験できるから、これから先ここで暮らしていく上でもとっても
ためになるわよ」

 えっ!このほかにもこんな会があるの?
 お仕置きを体験するって???……まさか、冗談でしょう!!
 何で悪い事もしないのにお仕置きを体験しなきゃいけないのよ。

 もういやよ。これ何なの。こんな馬鹿げたことする学校なんて
世の中にあるわけがないわ。

 『これ夢よね。夢なんでしょう。早く醒めてよ』
 私は真剣に願ったけど……

 でも、これは悪夢じゃなかった。
 正真正銘、現実に起こっている出来事なの。

 すると……
 そんな私と同じ宿命を背負った子が、突然椅子から立ち上がり
ます。

 「あっ……合沢恭子です。私を先にやらせてください」

 私、もう、それだけで、その子を尊敬してしまうけど……。
 思えば、こうしておとなしく順番を待ってるより、思い切って
先にやっちゃった方が楽に決まっています。

 私の頭は混乱していて、そんな簡単なアイディアさえその時は
浮かんできませんでした。

 「小学校は東京の私立聖園小学校。特技は、四歳からピアノを
習っていますけど……」

 「あら、そうなの……きっとお上手なんでしょうね。そうだ、
ここにも舞台のそでにピアノがあるから、一曲弾いて頂ける?」

 「えっ……いえ……それは……ちょっと……」
 恭子ちゃんは私なんかがうらやむくらいしっかり受け答えして
ましたけど、ピアノを弾いて欲しいって先生から注文されると、
そこは躊躇します。

 そりゃそうです。簡単な受け答えならまだしも、ピアノを弾く
なんて神経を使う仕事、この状態では無理に決まってますから。
 上級生たちはそれがわかっていてあえてはやし立てるのでした。

 「どうしたの?椅子から立てないの?ピアノの処まで負ぶって
あげましょうか?」
 その声に呼応するように場内また大爆笑です。

 結局、恭子ちゃんはお守り役のお姉様に背負われて舞台の袖へ
移動したのですが、その袖から突然、お姉様の声が上がりました。

 「えっ!?もう漏らしたの?……呆れた、そんな根性なしじゃ、
この先、ここで暮らしてなんていけないわよ」
 わざと、みんなに知らせるような大きな声です。

 すると、客席の視線は一気にその子の方へ集まり、舞台のあち
こちから、それまで他の新入生に付き添ってお世話を焼いていた
お姉様たちまでもがその子のもとへ馳せ参じます。

 一大事というわけでお手伝いに行くのですが、どの顔にも深刻
な様子はなくて、晴れやかな顔ばかり。お姉様たちの声は弾んで
いました。

 「まったく、最近の新入生は甘ったれてるわ。恥ずかしいって
感情がまだ育ってないんじゃないの、こんな処でお漏らしして。
今の親は子供のお仕置きに浣腸なんてしないのかしら」

 「しないわよ、最近の親は私たちの時代と違って過保護だもの」

 「ここでは、お浣腸なんてほんの挨拶代わりだっていうのに、
うちの子なんてすぐにピーピー泣いて、この先が思いやられるわ」

 「そうよね、ここではスパンキング一つとっても平手だけじゃ
なく、革鞭やケインもあるし、蝋燭やお灸だってあるんだから。
ホント、私もこんなことで大丈夫なのかって思っちゃうわ」

 「あら、あら、指導する方が今からぼやいてどうするの。……
大丈夫。すぐに慣れるわよ。慣れることに関しては、男の子より
女の子の方が上なの。みんな夏休みまでには慣れるわ。それに、
鍛え甲斐のあるくらいの方が、たっぷりと楽しめてよ」
 お姉様方の声に混ざって仁科先生の声も遠ざかっていきます。

 私、仁科先生の声を追ってその子の様子を見てみたかったけど、
今は私もそれどころじゃないし何より怖くて見られませんでした。

 「あらあら、やっちゃったみたいね」
 「確かにそうね。もう、ここまでぷ~~んと臭うわ」

 「あなた、お薬入れてからまだ10分しかたってないじゃない。
図体ばかり大きいくせに、ちょっとばかり節操がなさすぎるわよ。
これからは我慢って言葉をもっと具体的に教えてあげなきゃダメ
みたいね」

 「そんなに責めたら可哀想だわ。……仕方ないでしょう、まだ
慣れてないんだから。それより、この子に効くお薬が、他に何か
あったんじゃないかしら?」

 仁科先生が謎をかけると、客席のあちこちから……
 「お灸です」
 「熱いお灸です」
 「会陰へのお灸です」
 そして、それと同時に笑い声もまた巻き起こりました。

 『人のうんちなんてとっても汚いのに、どうしてみんなこんな
に笑えるのかしら?』
 素朴な疑問がわきます。

 いえ、その時はそれは不思議だったんですけどね……
 半年も立たないうちに私も同じ色に染まってしまいます。

 気がつけば、私だってみんなと一緒に笑えるようになっていま
した。

 誰だって自分の事は棚に上げて、やはり他人の不幸は楽しいん
です。

 お漏らししてしまった恭子ちゃんは、この後、お灸です。
 それも、お姉様方から身体を押さえつけられて……
 1ミリだって身体が動かないように縛り付けられて……
 女の子が一番熱がる会陰や膣前庭に……

 「いやあ~~~やめてえ~~~ごめんなさい、もうしないで!」

 今までとは明らかにトーンが違う悲鳴や叫びと共にお父様にも
見せたことのない場所を焼かれる断末魔のドタバタが会場に響き
渡ります。

 いえ、現場を見たわけじゃありません。
 でもわかるんです。私もかつてお母様からやられたことあり
ますから、その強烈な熱さが脳裏を離れていませんでした。

 身体を寸分の隙なく押さえられて、
 女の子の一番大事な処を全て晒して、
 猿轡までされます。
 何もされなくてももの凄く苦しい姿勢なんです。

 そして、火が回ると熱いのはそこだけじゃなくて、頭の天辺が
ジンジン。目がくらみ、息も絶え絶え……

 必死になって暴れてみますが、どうにもならないのです。

 『お願い、気絶させて~~』
 って叫びたくなるほどでした。

 お仕置きが終わって放心状態でいる私に、母は……
 「安心なさい。こんな場所に火傷の痕ができても誰も覗かない
から…………あら、ご不満なら、今回の件、あらためてお父様に
ご相談してみましょうか?」

 私はお父様の処へ連れて行かれるのだけは絶対に嫌でしたから、
首を激しく横に振ります。

 すると、それを見て勝ち誇ったように笑う母。
 私が、あえて全寮制の学校を選んだのはこの瞬間だったのです。

*************************


☤☤☤☤☤☤  銀河の果ての小さな物語  ☤☤☤☤☤☤

     ☤☤☤☤☤☤   <第2章>  ☤☤☤☤☤☤
          ~ バンビ~の幼年期 ~



§2 お仕置き適齢期

 僕は生まれた時は男の子だったみたいです。それを大人たちが
身体を色々いじって、見た目女の子のようにしてしまったのです。
 ですが、完全に女の子の身体にすることはできませんでした。

 たしかに、僕の身体は一見すると女の子に見えます。お臍の下
にオチンチンなんて見えませんし、大昔は使われていた赤ちゃん
の出てくる処(=ヴァギナ)だってちゃんとあります。

 でも、僕がそのヴァギナに指を入れても、くすぐったいだけで
何か感じるなんて事はありませんでした。そもそもその奥に子宮
なんてありませんし、成長してもメンスは来ません。赤ちゃんを
産むことだって絶対にないわけです。

 大人たちは、僕をそかな奇形にしてお母さんに預けたんです。
 身勝手なもんです。散々実験材料にしておいてうまくいかなく
なると他人に預けるんですから。

 ただ、いい事もありました。奇形の子を育てるのは大変だから
と、普通なら四五人一緒に子育てしなければならないところを、
僕一人だけにしてくれたんでした。

 おかげで、僕は最初から一人っ子。姉妹が多い家庭と異なり、
四六時中お母さんと一緒の生活だったのです。

 一緒のお布団で寝て、一緒にご飯を食べて、一緒にご本を読ん
で、一緒に玩具で遊ぶ。一日中、お母さんと一緒なんです。
 そうそう、お母さんとはトイレまで一緒でした。

 べったりとしたお母さんとの甘えん坊生活。
 おかげで幼稚園に入れられると、そこは退屈で退屈で、いつも
あくびばかりしていました。

 別に先生が怖いとか、お友だちが意地悪とかいうんじゃありま
せん。先生とも、お友だちとも、ちゃんとちゃんとお付き合いは
したんですから。
 ただね、幼稚園って処はお母さんが『行きなさい』と言うから
仕方なく行ってるだけで、本当は一日中ずっとお母さんのおそば
にいたかったんです。

 そんな中、僕にとって一番のお友だちは、マーサお婆ちゃんと
一緒に暮らす子供たちでした。
 実は、マーサお婆ちゃんというのはお母さんのお母さん。だから、
そこの子供たちというのは僕から見れば叔母さんになるんですが、
ま、そんな血縁関係みたいなものはここではあんまり意味があり
ません。

 だってこの星の家族って最初からみんながみんな血が繋がって
いないわけですからね、叔母さんと呼ぶのもちょっと変なんです。
要するに子供たちはみんなお友だちでした。

 そんな僕たち子供が大事にしなければならない事は、お母さん
から愛されること。お友だちと仲良くすること。それに先生から
信頼されることの三つだけ。

 これだけ守っていれば、パッピーライフだったんです。

 ところが、これが意外に大変でした。
 お母さんはいいんです。赤ちゃん時代から一緒で気心が知れて
いますから。でも、お友だちは幼稚園にも小学校にも色んな性格
の子がいますからね、お付き合いするのに骨が折れます。それに
先生も、色々無理難題言ってきますから、言いつけられた課題を
すべてクリアするのは大変骨の折れる仕事でした。

 そんな時、頼りになるのは、やっぱりお母さんなんです。
 ですから、子供たちはお母さんの命令にはたいてい従います。
 例えば……

 「パンツを脱いで、お膝の上にうつ伏せになるの」

 こんなこと言われてお膝を叩かれたら、どんなに幼い子だって、
これから何をされるかはわかっていますよ。
 でも、そう言われたからって逃げ出す子はこの星にはいません。

 どんな子も、パンツを脱いで、お母さんのお膝に横たわります。

 それは『恐怖のあまり仕方なく』というのではなく、お母さん
との信頼関係がそうさせるんです。

 お母さんはいきなり強くなんて叩きません。たっぷり、お説教
して、何度も僕に『ごめんなさい』を言わせるんですが……その
間は、お尻はすりすりだけか、軽くしか叩かないんです。

 「わあ、恥ずかしいなあ、もう、こんな恥ずかしい事やめよう
ね」
 そう言って、強くぶつのは、最後の二三回だけでした。

 その後は、抱っこに切り替わって……
 お尻よしよし、お背中トントン、頭なでなで、ほっぺスリスリ
が、お母さんのお膝の上で僕が泣き止むまで、ずっと続くことに
なります。

 そんな優しいお仕置きが、ずっと続けばいいのですが、幼い子
も大きくなると、それでは効果がなくなりますから、お仕置きも
少しずつ厳しいものへと変わります。

 そして、それがとりわけ劇的に変化するのが、10歳を越えた
あたりでした。

 それまでお尻叩きは平手だけだったのに、スリッパが使われる
ようになりますし、スパンキングの前にはお浣腸だって受けさせ
られます。

 いえいえ、それだけじゃありません。

 お母さんの言いつけを守らない子は、沢山のイラクサをパンツ
の中に入れられたり、オムツを穿かされて学校へ行かされます。
 おうちだけじゃありませんよ。学校だってそうです。テストの
成績が悪かった子には、放課後お尻に革紐鞭のお仕置きが待って
いました。

 とりわけ10歳から13歳というのがこの星のお仕置き適齢期。
この時期はどんなに良い子で頑張ってみても、一学期に二三回は
親や教師からのお仕置きを我慢しなければなりませんでした。

 そんな中にあって、ローラお姉ちゃまは、マーサお婆ちゃんが
育てた最後の子どもなのですが、幼い頃から評判のお転婆さんで
した。ですから、お仕置き適齢期ともなると、もう毎週のように
お仕置きされてたみたいでした。

 そんなある日の事です。ママが僕に言いいます。
 「今日は、お婆ちゃまから、ローラちゃんを教会の懲戒部屋で
お仕置きするから見にいらっしゃいってお誘い受けてるの。ママ
と一緒に着いてきてね」

 「えっ!」
 お母さんに言われて、僕は青くなります。

 そりゃあ、お仕置きを受けるのは僕じゃありませんけど、それ
って、僕とそれほど年の変わらない子が大人たちに泣かされるの
を見学するわけでするからね、気持のいいものじゃありませんで
した。

 「えっ、僕も行くの」
 嫌そうに言うと……

 「そうよ、まだまだ赤ちゃんだとばっかり思ってたけど、思え
ばあなたもすでに8歳。そろそろ自立しなくちゃね。今までは、
赤ちゃんということもあって、そんなに厳しい事もしてこなかっ
たけど、あなただってそろそろお仕置き適齢期を迎えるわ。……
今日は11歳のローラちゃんのを見て『自分もおいたをすると、
これからはああなるんだ』って、自覚するにはいい機会になると
思うのよ」

 そう、お仕置き適齢期の子は単に大人たちからお仕置きされる
というだけじゃないんです。姉妹や同級生、はては、町のみんな
の前で晒し者にされる事が珍しくありませんでした。

 女って、男性の前では猫を被ってますけど、本当はハレンチな
ことが男性より大好きなんです。

 そんなわけで、まだ赤ちゃんの僕もこれまでにたくさん晒し者
にされたお姉ちゃんたちを見てきました。
 いえいえ、見ただけじゃありません。

 晒し台にはたいてい鞭が掛けてあるのですが、それは9歳まで
の子なら親の監督のもとで誰でも自由に取ってお姉ちまのお尻を
ぶつことができました。僕だって何度となくお姉ちゃまのお尻を
叩いたことがあります。

 ですから、お仕置きには慣れっこなんですが、やっぱり親しい
お姉ちゃまのお仕置きを今さら見に行きたいだなんて思いません
でした。それって、やっぱり可哀想ですから……

 でも、お母さんの命令なら、それも仕方のないことでした。
 だって、僕はこの時まだお母さんの赤ちゃん。お母さんの命令
は絶対だったんです。


 教会の懲戒所は礼拝堂の隣りに隣接した煉瓦造りの古めかしい
建物でした。この建物はさらにそのお隣りの修道院とも隣接して
いて、子供のお仕置きを頼まれると、暇をもてあましたシスター
たちがすぐに駆けつけて手伝ってくれますから、そういった意味
でも便利な建物だったのです。

 この時も、三人のシスターたちがローラお姉ちゃまのお仕置き
を手伝ってくれました。
 何しろこの人たちときたら、昔は何人もの子供たちを育ててき
たベテランばかりですからね、マーサお婆ちゃんとしても心強い
助っ人だったわけです。

 この儀式はローラお姉ちゃまがまず素っ裸にされるところから
始まります。男の人はもちろんいませんし、見ているのは家族と
身内だけ、『死ぬほど恥ずかしい』ってわけじゃありませんけど、
それでもやっぱりお仕置きで裸になるのはお風呂に入るのなんか
と違って恥ずかしいことでした。

 「さあ、何をぐずぐずしてるの。お前はいつから服も脱げない
赤ちゃんになったんだい」
 いつになくマーサお婆ちゃんの厳しい声が飛びます。

 それに促されるのようにして、ローラお姉ちゃまは裸になりま
した。スカートもブラウスもスリップもショーツも靴下も……ま、
とにかく全部脱いじゃいます。

 「お姉ちゃま、お風呂に入るの?」
 僕が抱っこされたお母さんの方を振り返って尋ねると……
 「そうよ、ここで汚れた心とからだを綺麗にするの」

 「お仕置きって心とからだを綺麗にすることなの?」
 こう尋ねても……
 「そうよ。子供は自分では何もできないから、心と体をいつも
綺麗にしてないとすぐに病気になっちゃうの」

 「ふうん」
 分かったような分からないようなあいまいな返事をして、再び
前を向き直ります。
 すると、お姉ちゃまはすでに大きな盥の中に入って膝まづいて
いました。

 お姉ちゃまの前には、マリア様の像が飾られた祭壇があって、
お姉ちゃまは壁に掛けられた沢山の蜀台に照らされています。
 電気と違ってローソクはささやかな風にも揺らめきますから、
それはとても幻想的な光景でした。

 そんな中、まずはお姉ちゃまの身体にシスターたちが桶でお湯
をかけて隅々まで洗い清めます。これは沐浴と呼ばれてお姉ちゃ
まの体を冷やさないためでもありました。

 室内にはたちまち湯気がたちこめ、ローソクの光までもが霞む
ほどでしたが、僕はここで一つの発見をします。
 実はお姉ちゃまの体に掛かったお湯は、すのこ状になっている
盥の底から流れ出て盥自体にはお湯が溜まらない仕組みになって
いました。

 「この盥、お湯が抜けちゃうからちゃぷちゃぷはできないね。
でも、お姉ちゃま気持よさそう。僕もやってもらいたいな」
 僕がお母さんに話しかけると……
 「馬鹿なこと言わないの。これからが大変なのよ」
 という答えが返ってきました。

 たしかにお姉ちゃまは、その後、石鹸のついたタオルを強引に
口の中にねじ込まれて、「オエ」「オエ」言いながら苦しそうに
していましたし、顎の下や脇の下、ぺちゃぱいのおっぱいやお股
の中までもシスターたちにゴシゴシやられていました。

 「あれ、痛くない?」
 僕が尋ねると……
 「痛いけど、もうお姉ちゃんだから我慢しているのよ」
 ということみたいです。

 実際お姉ちゃまは、シスターたちに何をされても、お人形さん
みたいに静かにしていて、大声を上げたり暴れたりはしませんで
した。

 でも、本当に大変だったのはこれからだったのです。

 「ローラちゃん。あなたはこの二週間、数多くの過ちを犯しま
した。今日は、それをここで精算しましょう」
 祭壇の前に立って凛とした態度でいるお婆ちゃんは、普段は、
僕たちにもとても優しい修道院の院長先生。

 でも、この時はとっても意地悪だったんです。

 「はい、院長先生」
 この時、ローラお姉ちゃまは素直にご返事しましたが、すでに
その全身が震えていました。

 「ねえ、お姉ちゃま、寒いんじゃない?早くお洋服着たほうが
いいよね。僕、着せてあげようか……」

 すると……
 「そうじゃないわ。いいから見てなさい。黙って見てるの」
 こう言ってお母さんは僕の顔を再び盥の中のお姉ちゃまの方へ
向け直します。

 「あなたは、先週の月曜日。仮病を使って学校を休もうとしま
したね」

 「はい」

 「その時、お母様がどれほど心配されたことか。……聞けば、
体温計をぬるま湯につけて、熱があるように装ったとか……」

 「…………」

 「悪知恵だけは働くのね。分かってるでしょうけど、それって
とってもいけないことですよ」

 院長先生がそこまで言った直後です。
 「あっ!」
 ローラお姉ちゃまは、思わず後ろを振り向こうとしました。
 でも……

 「後ろを向かない!」
 院長先生にきつく叱られてしまいます。

 でも、それって、仕方のないことだったんです。
 だって、その時、別のシスターがお姉ちゃまのお尻を開いて、
イチヂク浣腸を挿したんですから……そりゃあ、誰だって後ろを
振り向きますよ。

 でも、それって、やっぱりいけないことでした。
 身体を洗ってもらっていた時と同じように、盥の中に入ったら
どんな時もじっとしていなければならなかったのです。

 「あれ、何してるの?」
 僕が尋ねると、ママが小さな声で教えてくれます。
 「お浣腸よ。お姉ちゃんはおいたをしたから、そのおいたの分
だけ、あのスポイドでお尻に石けん水を入れられるの」

 「もう、終わり」
 「まだまだ、これからよ。いいから静かに見てなさい」
 お母さんは再び僕の顔をお姉ちゃまの方へと向けます。

 「そもそも、なぜ学校を休もうとしたのかしら?」

 「…………」
 院長先生の質問にローラお姉ちゃまはやっぱり答えられません
でした。
 正確には、答えたくなかったのかもしれません。

 「いじめっ子がいるからかしら?…………そうじゃないわね。
先生がやってきないと言ってた課題をやってなかったからよね」

 「…………」
 お姉ちゃまはやっとの思いで頷きます。
 すると……

 「!」
 また、スポイド浣腸がお姉ちゃまのお尻の穴に突き刺さります。

 「ということは、宿題になってた課題をやってこないわけです
から、テストのお点も悪かったわよね。何点だったのかしら?」

 「35点と45点です」

 「合格点は?」

 「80点です」

 「それって、合格点までかなり足りないわよね」

 「……は、はい」
 お姉ちゃまが言いにくそうに答えると、その直後、後ろにいた
おばちゃんシスターが、今度はお姉ちゃまに盥の中で四つん這い
になるように命じます。

 「!」「!」
 今度はスポイド二つです。

 もちろん、この時だって、お姉ちゃまは何一つ抵抗しませんし、
声も出しません。
 終わると、再び盥の中で膝まづいて、両手をぺちゃぱいの前で
組んで院長先生のお話を聞きます。

 どうやらこれが、ここのルールのようでした。

 一回の量は僅かですし、お薬も石けん水ですから、すぐに我慢
できなくなるわけではありませんが、それでも、お姉ちゃまの体
にはお薬が少しずつ溜まっていきますから……いつまでも最初と
同じ気持というわけにはいきませんでした。

 「あっ……」
 何か感じたのでしょう。お姉ちゃまは辛そうな顔で院長先生に
訴えかけます。

 「お…おトイレに行きたいんです」

 でも……
 「まだだめよ。まだお話が終わってないわ。ね、もう少し我慢
なさいな」

 院長先生の言葉は穏やかですけど、お姉ちゃまにしてみたら、
悲しい返事でした。

 「水曜日は、ドリスお姉ちゃまの日記を勝手に読んでて喧嘩に
なったわね」

 「でも、あれは、ドリスお姉ちゃんが予定より早く帰ってきた
から……」

 「早く帰ってきたって……そんなの理由にならないわ。………
日記は他の人には見られたくないことだって書くから、他の人が
見ちゃいけないものなの。学校で習わなかったかしら……」

 「……習いました」
 ローラお姉ちゃまが渋々認めると、そこでまた四つん這いです。

 「!!(あっっっ)」

 「木曜日は……朝寝坊したんですって?」

 「…………あれは、お仕置き済んでます」
 お姉ちゃまがこう言うと、院長先生は不思議そうな顔になって
……

 「どうして?お仕置きが済んだかどうか、あなたが決めるのか
しら?……あなたなの?……そうじゃないでしょう。……それに
何より、なぜ、朝、起きられなかったのかしら?それが問題よね」

 「…………それは…………」
 お姉ちゃまは気まずそう、答えにくそうだったのです。

 「こっそり、寝室から起きてきて、お姉様たちと一緒になって
Hなテレビを見てたからじゃないかしら?」

 「………………」
 院長先生の詰問にお姉ちゃまは答えられませんでした。
 だって、それって真実ですから……

 代わりに他のシスターたちが、またお姉ちゃまを四つん這いに
して、もう一つ、お尻へのお注射(浣腸)です。

 「もう、堪忍して……」
 思わず四つん這いになったお姉ちゃまの口から愚痴が漏れます
けど……

 「ダメよ。まだ、まだ、他にもたくさんあるんだから……さあ、
もう一度膝まづいて両手を胸の前に組むの………」

 院長先生にこう言われましたが、お姉ちゃまは首を横にします。
すると……

 「あらあら、どうしたの?……ストライキ?……嫌なの?……
だったら、いいわよ。そこでうんちしちゃっても……残りは熱い
鞭で償ってもらいますから……」

 院長先生のせっかくのお誘いにも、お姉ちゃまは首を振ります。
 どうやら、どっちも嫌みたいでした。

 そこで、もう一度膝まづいて、両手を胸の前で組もうとしたの
ですが…………

 「いやっ」
 小さな声と共に慌ててしゃがみ込みます。

 どうやら、これがローラお姉ちゃまの限界だったみたいです。

 桶の淵が高いので、お姉ちゃまがうんちしている様子は、直接
見えませんでしたが、不気味な破裂音は、僕には不快ですから、
あまり考えもせずに……

 「ママ、臭いね」
 って、言ってしまったのでした。

 これってその場の雰囲気でそう言ってしまっただけで、本当に
臭かったわけじゃないんですけど、僕の声を聞いてお姉ちゃまは
ずっと泣き通しになってしまうのでした。

 シスターが何をどうなだめても嫌がって自分の身体に触れさせ
ようとしません。

 仕方なく、それまで傍観していたマーサお婆ちゃんがなだめて
ローラお姉ちゃまの身体を洗い、バスローブに包んで抱き上げる
と、自分の席へ連れて帰ります。

 マーサお婆ちゃんの膝の上に抱かれたローラお姉ちゃまは、僕
と同じようにママに甘えます。
 だって、僕は『マーサおばあちゃん』だなんていってますけど
ローラお姉ちゃまにしてみれば、その人がお母さんなんですから、
そのお膝が気持ちよいのは当たり前のことでした。

 「大丈夫、泣かなくていいわ。だって、あなたは、今、こんな
にも綺麗な体になったんですもの。恥ずかしがることなんてない
でしょう。穢れをまとってすましてるより、よほど立派なことよ」

 お母さんに頭を撫でられたお姉ちゃまはとろんとした目をして
お母さんの胸の中へその泣き顔を埋めます。
 でも、これでパッピーエンドではありませんでした。

 「あなたは、これから生まれ変わるの。デュラックの子として
……でも、そのためには、試練を受けなければならないわ。……
そうやって罪は償わなければならないの。……それがデュラック
の掟よ。……誰でも同じ。……あなたがこれからもデュラックの
一員でいたければ、それは避けては通れないのよ」

 マーサお婆ちゃんの言っていた試練。それはお尻への鞭でした。
机に縛り付けられて、3回か、6回か、12回。革紐の鞭を剥き
出しになったお尻で必死に受け止めなければなりません。

 いえ、それだけじゃありません。大人たちの前で膝まづいて、
『鞭をお願いします』と、自らお願いしなければならないのです。

 それは子供にとっては恐ろしいほどの勇気が必要な課題でした。
そして、何よりそんなこと理不尽に感じられたのです。

 僕だったら……
 大人たちに無理やり腕を引っ張られ、膝の上に強引に乗せられ
て、泣き叫びながらお尻を叩かれておしまいです。
 でも、同じ子供でも、お姉ちゃまでは果たさなければならない
義務がそれだけではありませんでした。

 「……………………………………………………………………」

 一方、それを迎える大人たちも、すんなりと子どもたちが自分
の目の前で膝まづいて懺悔してくれるなんて考えてはいません。
一時間でも二時間でも、子供たちが『他に道はない』と悟るまで、
辛抱強く待ち続けるのでした。


 「さあ、勇気を持ってやるべきことはやらないと道は開けない
わ。辛いことから逃げようとしたら、さらに辛い事になるだけよ。
ここが嫌なら、学校の教室でみんなの見てる前で鞭をいただく事
になるけど、その方がいいのかしら」

 「…………」
 マーサお婆ちゃんの説得にローラお姉ちゃまは首を横に激しく
振ります。

 小学生だって理屈は分かっています。
 これは拒否できないって……拒否すれば、もっと辛い罰になる。
もっともっとハレンチな罰を受けなければならないって……でも、
多くの女の子にとって、その勇気はなかなか出ないものでした。

 「私ももちろんだけど、院長先生にしても、他のシスターたち
にしても、あなたをとっても愛してるのよ。……愛しているから、
こんなことで止めてあげようとしてるんじゃないの。あなたの罪は、
本来なら全校生徒の前で、むき出しのお尻を一ダースもぶたれる
ような重い罪なのよ」

 「…………」
 ローラお姉ちゃまは、さっきからずっとお母さんに頭を撫でて
もらっていましたから、心はだいぶ落ち着いたようでした。

 「…………」
 でも、時折院長先生の方をちらりと見るくらいで、立ち上がる
勇気はなかなか起きないようでした。

 すると、それにマーサおばあちゃんも業を煮やしたのでしょう。
 「仕方がないわね」
 こう言って、ローラお姉ちゃまをそのまま抱いて立ち上がろう
とします。

 すると、ここでやっとローラお姉ちゃまが慌てるのでした。

 「ごめんなさい、行きます。行きますから」

 お姉ちゃまはマーサお婆ちゃんが次に自分をどうするか、自分
がどんな目にあうかを知っていたみたいでした。
 長い付き合いですからね、そこは敏感なんです。だから、慌て
たのでした。

 「ほら、いつまで甘えてるの。さっさと、行っておいで」

 ローラお姉ちゃまはそれまで包まれていたバスーロブから抜け
出て、すっぽんぽんの身体で院長先生の場所まで向います。

 それってたった3mくらいですが、きっと長い長い距離に感じ
られたに違いありませんでした。
 ええ、僕もその後にまったく同じような事を経験しましたから
わかるんですけど、『途中で卒倒しないかなあ…』なんて密かに
期待するくらいなんです。

 どうせ罰を受けに行かなければならないなら、さっさと済ませ
ればけば良さそうなものですが……そこは人間の弱いところで、
嫌な事、辛い事はできるだけ先延ばししたいじゃないですか。
 女の子の場合は怖がりさんの子が多いですからね、特にそうな
んです。

 だから、多くの子がお母さんが業を煮やすまで、そこで甘える
ことになるのでした。

 「ローラは悪い子でした。どうか、それに見合うだけのお仕置
きをお願いします」

 ローラお姉ちゃまは院長先生の足元に膝まづくと、自分へのお
仕置きをお願いします。
 もうこの時は覚悟が決まっていたのか、お姉ちゃまは凛とした
態度でした。

 「わかりました。では、そこへうつ伏せになりなさい」
 院長先生もこれには満足そうな笑みで答えます。

 そこで、お姉ちゃまは腰枕の乗った懲罰用の机に自分から寝そ
べると……介添えのシスター二人が両手両足を革のベルトで固定
しますが、お姉ちゃまは何一つ暴れたりはしませんでした。

 両足が大きく広げられて女の子の大事な処も全部丸見えですが、
それもお姉ちゃまは意に介さないみたいでした。

 すべては承知の上で、自分からこうしているんだという自覚が、
お姉ちゃまを強くしているのでした。

 そんなお姉ちゃまの心臓を試すように、院長先生がトォーズと
呼ばれる幅広の革紐鞭をお姉ちゃまのお尻にちょんちょんと当て
ます。
 すると、お姉ちゃまのお尻やあんよは電気を当てられた蛙さん
みたいに痙攣します。

 女の子なら誰だってそうでしょうが、そんなことをされれば、
全身の筋肉がぎゅっと縮んで、子宮だって縮んで、全身の毛穴は
開き、瞳孔だって開いて、子宮から絞り取られた血が頭に駆け上
って沸騰します。

 そんな幼い子の恐怖体験を楽しむかのように院長先生二度三度
と鞭をちょんちょんとお姉ちゃまのお尻に当て続けるのです。

 そのたびに、お姉ちゃまの血圧は普段の倍くらいになってるん
じゃないでしょうか。
 それは小さな身体にとって、限界を超えるほどのテンションマ
ックスです。

 やがて……
 「ピシッ」
 本物がやってきました。

 でも、不思議なことに、厳しい鞭がお尻を襲った瞬間は、それ
ほどのショックはありませんでした。
 もちろん、痛いのはこの上なく痛いのですが……

 むしろ、それまで頭に上った血液が、今度は一気に子宮を目指
してかえっていく刹那で、私たち女の子は何かを感じるのでした。

 もちろん、この時のお姉ちゃまには、まだそんな特別な気持を
感じ取る余裕なんてないでしょうが、こうしたことを何度か繰り
返すうちに、多くの女の子たちは、自分の心の中に沸き起こる体
の不思議に気づくことになるのでした。

 女の都というのは中に女性だけしかいませんから、女性同士の
恋愛には寛容で、お互いが大人同士なら夫婦のように愛し合って
一つ屋根の下で暮らすことも認められています。

 でもその時は、幼い日に味わったこうしたお仕置きの思い出が
蘇るのでした。

 それは院長先生だってご存知ですら、無理強いはなさいません。
 少しずつ、少しずつ、お仕置き適齢期の子を慣らしていって、
女性の楽しみをレッスンしていきます。
 お仕置き適齢期の鞭は単に悪さをした報いというだけではなく、
女性としての性教育という側面を隠し持っていたのでした。

 ローラお姉ちゃまは、最初12発の予定が、たった3回で終わ
ってしまいます。
 もちろん、表向きは……
 「今日は特別。あなたももう十分反省してるみたいだから今回
は許してあげます」
 なのですが……そこには……
 『少しずつ、少しずつ、じらすようにやっていかなければ、蕾
は開かないわ』
 という思いも存在するのでした。

 「お姉ちゃま可哀想だったね」
 帰り道、僕がお母さんに言うと……

 「そんなことはないわ。お姉ちゃまは院長先生を始め、あそこ
のシスターさんたちにとっても愛されてるのよ。お仕置きされる
ってことは愛されてるってことなのよ」

 お母さんの言うことは、まだ幼い僕には理解できませんでした
が、僕はお姉ちゃまの裸のお尻を見ることができましたからね。
なんだかとっても得した気分でした。

 えっ、女の子の裸に興味ないだろうって……

 いえいえ、そんなことありませんよ。だって僕は体は女の子の
ように見えても頭脳は男の子なんですから……
 女の子の裸、大好きなんです。


***************************  

銀河の果ての小さな物語 < 第2章 > §1

☤☤☤☤☤☤  銀河の果ての小さな物語  ☤☤☤☤☤☤

     ☤☤☤☤☤☤   < 第2章 >  ☤☤☤☤☤☤
             ~ バンビ~の幼年期 ~


§1 昔とった杵柄

 あれは五歳の頃だったか、近くのゲーセンで遊んでいたらすぐ
にコインがあっという間になくなっていく。
 何しろまだ生まれてこの方5年しかたっていないので、うまく
遊べないのだ。
 遊べないけどゲームはやりたい。特にシューティングゲームは
私のお気に入りだった。

 「ああ、終わっちゃった。もう帰ろうね」
 母はそう言ったが……

 「だめえ!もう一度やる~~~~~」
 だだをこねてゲーム機にしがみつく。

 「ご飯食べなきゃいけないでしょう」
 こう言われても……

 「ご飯いらないから、これやるの~~」
 声はだんだんに大きくなる。

 「しょうがないわね」
 彼女はそう言って再びコインをいれてくれたのだが、それは、
僕がやるためではなかった。
 僕はお膝にのんのするだけ。お母さんが自分で操縦席に座った
のである。

 「ダダダダ…ダダダダダダダダダダダ……ダダダダダダダダダ
……ダダダダダダ…ダダダダダダダダダダ……ダダ…ダダダダダ
ダダダダダ…ダダ」

 お母さんのコスモビーグル(一人乗り戦闘機)があっと言う間
に敵の戦闘機を蹴散らしていく。
 重爆撃機や宇宙空母や敵基地なんかが次から次へと木っ端微塵
になっていく。
 それはゲームというより、始めからストーリーのあるアニメを
見ているようだった。

 第1、第2ステージぐらいではそうでもなかったが……

 「ダダダダ…ダダダダダダダダダダダ……ダダダダダダダダダ
……ダダダダダダ…ダダダダダダダダダダ……ダダ…ダダダダダ
ダダダダダ…ダダ」

 第4、第5も短時間で決着させると……
 当然、その勇姿に観衆も増える。
 そのざわつきの中で僕はなにげにおばさんたちの会話を聞いて
しまったのだった。

 「わあ、凄いわね」
 「そりゃそうよ。あの人プロだもん。恐らく空軍のパイロット。
それも編隊長経験者だわ」
 「まあ、そうなの……どうりで」
 「え!?どうしてわかるの。ただのゲーム好きじゃないの?」

 「違うわ。私、空軍にいたからわかるのよ。ゲームでは左手の
薬指は必要ないけど、実際のコスモビーグルでは、あれで尾翼の
方向舵を操って命中精度を高める重要な働きがあるの。だから、
いつも左の薬指が動いてる。それに、右手の小指が常に動いてる
でしょう。あれは編隊の他の機へ指示や連絡を送るための打電用
なの」

 「そんなの言葉でいいじゃん」

 「そんなことしたら、相手にこちらの動きを読まれちゃうわ。
あれは、各編隊ごとに暗号化されていて、その日ごと別のソフト
を使ってるのよ」

 「じゃあ、何打ってるのかわからないわね」

 「そんなことはないわ。打電する時はみんな同じよ。ただ途中
が暗号化されるだけだから。でなきゃ、百も二百も乱数表覚えら
れないでしょう」

 「あ、そうか。じゃあ、あの小指はごく普通の……」

 「そう、モールス信号よ。…だから分かるの。あの人が編隊長
だって…他の機に指示を出しながらゲームをやる人なんていない
もの。第七ステージと言えば、ゲームとは言ってもほとんど実戦
さながらのはずなのに、まだこの余裕だもの。現役時代は相当に
腕のたつビーグル乗りだったはずよ」

 「ふうん……でも、そんなお偉いさんが、どうしてこんな処に
いるわけ?ここは養育惑星で、ここで軍人と言えば、怪我したか、
歳を取って除隊した退役軍人だけのはずよ。あの人、まだ若いし
怪我してるようにも見えないけど」

 「そんなこと知らないわよ。……あっ、待って、また打電し始
めたから読んでみるわ…『セリーヌ、アナタノコドモ…バンビ…
…コンナニオオキクナッタワ……キジュウソウシャモコノトシニ
シテハソウトウナモノヨ……デモネ……ワタシ…コノコヲグンニ
イレルキハナイノ…ネ…ソノホウガアナタニトッテモイイコトデ
ショウ』」

 その直後、母のゲームは終わってしまった。

 「チッ、ゲームじゃ錐揉みが使えないか!そのくらいソフトに
組んどきゃいいのに」

 残念そうなお母さんの、ちょっときつい言葉。普段だったら、
もっとやさしい言葉を使うのに……その時は、お顔もちょっぴり
恐かった。

 しかし、期せずして周囲の観衆から拍手が起こると、お母さん
は顔を赤らめて僕の手を引いて外へ出た。
 お母さんは自分がみんなから見られていた事を知らなかったの
だ。

 そんな中、店で聞いた『セリーヌ』という名前が気になった。
 おばさんたちが話していた『バンビ』というのはどうやら私の
ことのようなのだ。

 そこで、近くのパフェに入ったとき、お母さんに……

 「ねえ、セリーヌって誰のこと?」
 単刀直入にこう切り出してみたんだ。

 すると、ほんの一瞬だけど、幼い私にもはっきり分かるほど、
お母さんの顔色が変わったようだった。

 「セリーヌって?……ああ、セリーヌね、子供服のメーカーの
名前よ」

お母さんは取り乱す様子もなく答えたが、私が『セリーヌ』と
いう名前を最初に聞いたのはこの時が初めてだったのである。

***************************

銀河の果ての小さな物語 <第1章> §2

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     ☤☤☤☤☤☤   <第1章>  ☤☤☤☤☤☤
            ~ バンビの赤ちゃん期 ~


§2 

 私が少しずつ記憶を頭の中に残せるようになって、つまり物心
がついて、私の目の前にいつも現れる人がお母さんと呼ばれる人
なんだと知れる頃になると、彼女はしきりに私を公園へ連れだし
家では文字を教え始めた。

 そして、二歳で文字を読み、三歳でそれが書けるようになると、
この人は、そのたびに大喜びして、公園に集まって来る人たちを
集めては、覚えたての芸を私に披露させたのである。

 誰にでもできることを、さも『この子にしかできない』と言わ
んばかりの物言いをされては、観衆も呆れて言葉もでなかったと
思うけど、そこは人のよい住民のこと、嫌な顔一つせず、この風
変わりな親子を褒めてくれていた。

 すると、私はともかく、このお母さんなる人物は、そのことが
いたく心地よいと見えて、
 「じゃあ、今度は英語を……」
 「算数も……」
 「ついでにピアノも……」
 なんて言い出す始末。こんな案配だから私が覚えなければなら
ないノルマは、あっという間に膨らんでいく。

 「さあ、始めますよ!」という声に、いやいやもたくさんした
のだが、いざとなると、まだ小さかった私をしっかりと膝の上に
抱きかかえ、鼻息一つを私の後頭部に吹きかけては、仕事に取り
かかってしまう。こうなると、体の小さな私は何一つ身動きが取
れなかった。

 目を開ければ書き取りと算数のドリル。手は、問題を解くこと
以外何もできないように両手ともしっかり上から包み込まれてい
るし、頭はおっぱいの谷間がしっかり挟みつけていし……後ろは
おろか横さえ向けない窮屈な場所。
 わずかに自由になる両足をばたつかせても、太くて大きな足に
は大して影響がなかった。

 こんな状態が長く続けば、幼児にとっては、お勉強というより
拷問に近かったのだが、それを支えたのはお母さんのお膝にのん
のしているという心地よさだった。
 あめ玉をしゃぶらされ、頭をなでられ、時には本物のおっぱい
まで舐めながら、時に、ほっぺたを強く引っ張られたり、恐い顔
で脅かされたことだって何度もある。

 たっぷり2時間、この苦行が終わると、ご婦人はさらに機嫌が
よくなるのである。

 で、それが何かの役にたったのかというと……(^_^;)

 彼女が公園へ行って、自分の鼻の高さを自慢すること以外には、
あまり益はなかった。一方、子どもの側からすれば……
 『お母さんはおっかない!とっても、とっても、おっかない!』
 という思いだけが他の子より強くなる。つまりは、マザコンに
なったというわけだ。
 おかげて、我が子の支配はぐっとしやすくなった。

 もっとも、子どものうちは別にマザコンであっても、それほど
不自由なことはなかった。
 お膝の上で元気にはしゃぎ、うまうまをスプーンでお口に入れ
てもらい、ちゃぷちゃぷお風呂で体を洗ってもらいながら湯船で
眠るなんてことは、子供にとってはなかなか気持ちのいいものだ
からだ。
 ついでにうんちまでしたら、これはさすがに叱られたが……

 マザコンじゃあ自分の好きなことができないっていう人もいる
けど、そもそも世の中に出てまだ間のない身では、何をして遊ぶ
のが一番楽しいのかさえ、まだ分からないままなのだ。

 前にやっていて楽しかった事やおもしろそうな事を見つけたら、
とにかく、
 「あれ!」
 って指を指せば、お母さんがお膳立てしてくれるからたいてい
それでOKだった。

 「どうしたの?あれしたいの?」
 ってお母さんが寄って来て、抱き上げる。
 どうにかすると、指さしたことより、この瞬間(=だっこ)の
方が一番楽しかったりするのだ。

 望みはもちろん叶わない事だってあるが、そんな時はたいてい、
頭をなでなで、お背中すりすり、抱っこよちよちの残念賞がつい
てきた。

 ただ、それでも満足できなくて、いやいやを続けると……
 一転、恐い顔になるから、その按配が難しい。もっとも、そん
な時もお母さんの腕を目一杯の力で握りしめて泣けば、そのうち
顔色は変わってくるのである。

 結果、お母さんの二の腕に大きな青あざがついても、それは、
子どもの私があまり心配する事ではなかった。
 この間も公園で……

 「この子ったら、泣きながら『ママ嫌い、ママ嫌い』って言っ
てるのに、腕だけはしっかり握ったままだから……ほら、見てよ、
こんな大きな痣になっちゃって……もう、やんちゃで困ったもん
だわ」

 笑いながら、私のつけた痣をしきりに自慢していた。
 お母さんという親は、実に不思議な生き物だ。
 少し、マゾっ気があるな、ありゃあ(^◇^;)

*************************

銀河の果ての小さな物語 <第1章> §1

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             ~ バンビの赤ちゃん期 ~

§1

 私がその人と出会った時、彼女は文字通り巨人だった。巨大な
顔は、私を見つけるといつもものすごいスピードでよって来る。
たいてい笑っているから、その意味ではそんなに恐くはなかった
が、巨大なスプーンに何やら山盛りになったものを口の中へねじ
入れられた時は殺されるかと思うほどショックだったこともある。

 「美味しい?」

 彼女がしつこく尋ねるので思わず頭を下げると、また同じよう
なものをを山盛りにして私の口元へ持ってくるから、どうやら頭
を下げるのは「もっと!」という意味らしい。

 しかも、私が昨日までやっていた、口に含むとやわやわで噛む
とミルクの出る食事がしたいと思っても、彼女は、ひたすら……
「あ~ん、あ~ん」を繰り返すばかりだった。

 仕方なく、試しにもう一度ほんのちょっとだけ口を開けると、
スプーンの先で私の口を無理やりこじ開け、その山盛りの物質を
無遠慮に私の口の中へと押し込む。

 そしてここでも「美味しい?美味しい?」としつこく尋ねるの
だった。

 飲み込めと言われれば飲み込めなくはない代物だが、どうも、
私は彼女の笑顔に弱い。彼女が笑うとついつい私も一緒になって
笑顔になってしまうのだ。
 それを誤解して……

 「そう、おいちいの。よかったわ。あなたはね、銀のスプーン
をくわえて生まれてきたの。不幸になんかなるはずないわ」
 と、きた。

 これは、その後もかなり長く私に語り続けた彼女の決まり文句
だった。
 そして、そのトレードマークである銀のスプーンをアップリケ
や刺繍やらで、やたらめったら私の服に縫いつけていた。

 もちろん、私がそんな異物をくわえてこの世に生まれてこなか
ったことは周知の事実なのだが、これは世に言う慣用句の一種で
『それほどまでに幸せな幼年期』と言う意味らしかった。
 早い話が彼女の育児自慢なのだ。

 お母さんの必要すぎるおせっかいはともかく、『養育惑星97』
での私の生活はそれほど不快なものではなかった。
 緑の草原にいつも緩やかに南風が吹いていて、そこに百件余り
の住宅が建ち並んでいるのだが、森も湖も山も川もそのすべてが
私には優しかった。

 養育惑星であるため、もともと人工的に気候を調整して住みや
すくはしてはあるものの、調整したのは何も自然だけでなかった。
 ここに住む住民はある意味選ばれた人たち。みんな穏やかで、
とげとげした感じの人は一人もいなかった。

 もともと子育てが仕事の彼女たちは、幼い子が公園で砂遊びに
夢中なら、その子が飽きるまで、その砂遊びにつきあってくれる。
山遊び、川遊び、家の内外を問わず私たちがやりたいことの最初
の先生だった。

 お昼もそうだ。いい匂いがしていれば、どのお家でも上がり込
んで、そこでご馳走になって、何の問題もなかったのである。

 子供たちは、誰もが袖無しのジャケットを着せられているが、
これさえ身につけていれば大人たちは機嫌がよかった。というの
も、このライフジャケットさえ着ていれば、その子が、今どこで
何をしているか、たちどころに中央管制室のモニターに映し出さ
れる仕組みになっている。

 居場所だけではない。今日、食事したか、うんこしたか。今、
運動しているか、寝ているか。今、楽しいげにしているか、恐い
思いをしているか。などなど大人たちは子供たちの動静をリアル
タイムで監視できる。
 当然、その情報はコンピューターが一元管理していた。

 早い話24時間体制で監視されているわけで、子どもたちは、
どんなに平静を装っていても大人たちに嘘をつくことができなか
ったのである。

*******************(1)*****

 しかも、この薄手のジャケットは万が一危険なことが起こった
時にも重宝だった。

 例えば一定以上のスピードで何らかの物がその子に近づいたり、
周囲の温度が異常なスピードで上昇したり、はたまた頭から水を
かぶったりしただけでも、たちどころに体全体をバリアで包んで
保護する仕組みになっていた。

 こうなると、一時的に子ども自身は身動きがとれないが、数分
以内に、大人たちが駆けつけてくれるので子どもが不慮の事故に
遭う可能性は極めて低かった。
 だから、この星ではライフジャケットを身につけずに外に出る
ことは、裸で外に出るのと同じだったのである。

 穏やかな大人たちとクオリティーの高い安全装置のおかげで、
子供たちはすべてにおいて快適に暮らしていけていると思われる
かもしれないが、子どもの立場で言わせてもらうと、全てが快適
とまではいかなかったのである。

 例えば、この安全装置。子どもの立場からすれば、高い崖から
落ちても、池に飛び込んでも、たき火の中で騒いでも全然平気だ
と分かってしまえば、誰だって試してみたくなるのが人情。
 ところが、大人たちはそれを絶対に許さなかったのだ。

 それを許すと、いつしかジャケットを着忘れて崖から飛び降り
かねないと彼らは危惧していたようだった。
 だから、そんなことを企てる悪戯っ子は、崖から落ちて怪我は
しないものの、その日の夕方、母親から真っ赤に熟れたリンゴか
トマトのように、色が変わるまでお尻をぶたれるはめになるので
ある。

 養育惑星ではカラスの鳴かない夕方はあっても、子どもが母親
からお仕置きされて悲鳴あげない夕方はなかった。まるで持ち回
りのように、どっかしらの家で子どもの「ごめんなさ~い。もう
しませんから~~」という声がしていた。だから、子供にとって
はここが天国だなんてとても思えなかったのである。

 ちなみに、ここでは子どもをお仕置きするのは何も母親だけと
は限らない。ここに住む大人なら誰でも、街で悪さをするお転婆
娘を見かければ、その子のショーツをはぎ取ってお尻を叩く事が
できた。

 そもそもこの星には自制心のない大人などいなかったし、子供
が嫌いな大人や子供の要望に応えらないほど忙しくしている人も
一人もいなかった。
 ここでは大人たちも比較的のんびり暮らしているのだ。

 そのせいだろうか、子供の方も顔見知りの大人たちからぶたれ
ても、それほど強いショックではなかった。

 しかも、親や先生からは……
 「あなた方は、何兆という中から選ばれた特別な神の子です。
ですから、グレートマザーはあなた方のために、この愛のエリア
を与えてくださいました。この愛のエリアは、天国と同じくらい
すばらしい場所なのです。ですから、ここで起こったことは天国
で起こったことと同じ。あなた方がお母様にお尻をぶたれるのも、
神様にぶたれたのと同じなんですよ」
 と、こう言ってお説教してくるのだ。

 こんな無茶苦茶な論理でも、これを大まじめに、毎日のように
語り聞かされれば、洗脳されない子供はいない。
 「大人は偉い人。神様と同じ」
 という乱暴な神話も、素直に心に届くという仕掛けだったので
ある。

********************(2)****

 おまけに、彼らは小型のエアジェットを背負って普段から野山
や町中を自由に飛び歩いている。
 子どもとしてはそういった意味でも街ゆく大人たちは、殿上人。
 『大人になれば空が飛べる』と信じるだけでも、大人になりた
いという動機付けには充分だった。

 ただ、街行く大人たちが誰も親切で、どんな時でも甘えられる
とはいっても、子どもにとって、お母さんというのはやはり別格
の存在。

 特に私の場合は、お母さんがよほど気に入っていたのか、家に
いる時はいつもそばにいたし、遊びの途中でも理由もなしに家に
戻ることが何度かあった。少し離れた処にいた時でも、彼女が、
何をしているのかをいつも気にしていたのである。

 そして、つとめて抱いてもらっていた。朝といわず昼といわず、
夜だって当然のように添い寝だった。

 ま、赤ん坊なのだから当たり前かもしれないが、お母さんの懐
が一番心地よい場所だったような気がするのだ。

 それはまた、逆の見方をすれば彼女がいかに私を大事にしてく
れていたかという証でもあった。

 お母さんは幼い私のことを、『バンビ』『バンビ』と呼んで愛
してくれた。

 なぜ、『バンビ』なのかはその後分かることになるが、いずれ
にしても、こうして大事にされ愛された子供というのは、途中で
多少きついお仕置きにあっても、そう簡単には大人を恨んだりは
しないものなのである。

******************(3)****

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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