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第 4 話

< 第 4 話 >
 翌朝、僕はクリスタルパレスへ出かけた。クリスタルパレスはその名
の通り全面ガラス張りの宮殿で、お天気の良い日には巨大な宝石のよう
に輝いて見える。主は亀山では女王様と呼ばれている人物。
 有り体に言えばこの街を造った創立者のお孫さんでこの街の責任者と
いうか町長さんみたいな人だ。ただ、その権限は絶大で、お父様でさえ
その意向に逆らうことができない。だからこそ女王様だなんて呼ばれて
いるんだろうけど、普段、会いに行くと子供たちにはとても優しい人だ
った。
 評判の甘え上手(自身はそうは思っていないがあくまで亀山での評価)
だった私は、ママやお父様たちのことで女王様に愚痴を言ったことなど
なかったが、子供たちのなかにはママやお父様たちといった親子関係や
学校の先生との関係、さらには友達関係で悩む子も少なくなかった。
 そんな子供たちが駆け込み寺のように利用していたのがこのクリスタ
ルパレスであり、女王様だったのである。
 ここには家や学校にはないマンガやオモチャが置いてあって今で言う
ゲームセンターみたいな役割を果たしていた。そして、そこで語られる
子供たちの本音を吸い上げては学校や家庭にフィードバック。厳しいお
仕置きのもとで我が儘の言えない子供たちとの風通しの役を担っていた
のである。
 それだけではない。子供たちの悩みが主に大人側に問題のある時は、
子供たちを一時的にママやお父様の愛から外して、ここで預かったりも
する。
 女王様のもとで一緒に暮らす彼らは『光の子供たち』と呼ばれたが、
ほとんどが短期間で、女王様の指示で大人たちが受け入れ方法を整える
とすぐにでも返された。子供は寄る辺なき身、いっぱいおっぱいを飲ん
だ場所を代えるという決断は彼らにはあまりに重かったのである。
 ただ中には例外もあって、大人たちがどんなになだめすかしても赤ち
ゃんのままでいるのを拒み、自ら自立を望んだ子供たちだっていた。
 そんな気骨のある子供たちは別のママやお父様を世話してもらうか、
いっそクリスタルパレスを住まいとしたのである。
 ま、私のような凡才は、一時(いっとき)自立したいと決意しても、
大人たちからなだめられると、すぐに赤ちゃんに戻ってしまうのだが、
彼らの場合は、なまじ才能も豊かで好奇心や探求心に恵まれていたため
家庭的には不幸だったようである。
 そんな子供たちも引き取って女王様は面倒をみていた。つまり孤児院
の孤児院というわけだ。
 最初のお父様と離れてしまう子は年に数名いたが、さらに女王様の処
で中学卒業までずっと暮らす子となると、年に一年に一人いるかどかと
いったところだった。ところが、皮肉なことに亀山を下りて成功した者
の多くがここの出身者なのだ。彼ら(彼女ら)はお父様の直接的な援助
が受けられないため、他の子たちとは異なり勉強の世界(インテリ)で
自立できるよう女王様から仕向けられるのである。
 ただ、それならこの子たちにはお仕置きなんて必要ないのかというと、
それとこれとは話は別なようで、中庭には各種の晒し台やお浣腸で汚れ
たお尻を洗う泉、大声で泣き叫んでも声が外に漏れないように防音設備
のあるお仕置き部屋など亀山の一般家庭(?)に必要なものはここでも
必需品だった。
 私が訪れた時も中庭では一人の女の子がちょうど素っ裸で立たされて
枷に捕まるところだった。(何度も言うがこんな事ここでは日常茶飯事だ)
 「ひょっとして香澄ちゃん」
 僕の声かけに香澄は最初、豆鉄砲を喰った鳩のような目をしていたが、
やがてその瞳に生気が戻ると満面の笑みになる。
 「健、兄ちゃん。帰ってきてたの!」
 香澄は女の子をほったらかして僕に10秒ほど抱きついた。その間に
僕は彼女の髪をくちゃくちゃにしてなで回しおでこ同士をこすりつける。
 これって特別なことをしたのではない。巷でなら握手を交わした程度
のことだ。
 「一時帰郷。君はここで働いてるの?」
 「そう、離婚して…子どもも手が放れたら…私って行くところがない
じゃない。だったら……昔のつてを頼ってここに入れてもらったの」
 「楽しい?」
 「ええ、とっても…とにかくここは疲れないわ。肉体的には大変だけ
ど精神的にはとっても楽なの。とにかく言うことをきかない子はお尻を
ピシャピシャっと叩いて抱けばいいんですもの」
 「なるほど、世間じゃ体罰がどうのこうのってうるさいからね」
 「あんなのナンセンスよ。今の親は、乳飲み子を保育園に放り込んで
ろくに面倒もみないもんだから親子関係が脆弱でちょっとしたお仕置き
にも子供の心が傷ついてしまうだけ。もとはと言えば親の責任よ」
 「そういえば、女王様も同じこと言ってたよ。ちょっとしたお仕置き
で子供の心が傷つくようなら、それは戸籍上はともかく実質的にはそも
そも親子じゃないって……」
 「女王様には多くの子供たちをお仕置きで育てて、何人もの成功者を
出してきたプライドがあるの。だから『お仕置きが百害あって一理なし』
みたいな言われ方をすると、カチンとくるわけ」
 「この子は、何?……ママのお仕置きが厳しくて逃げて来たとか?」
 「まさか。……あっ、忘れてた」
 香澄は苦笑いを浮かべるとその場にうずくまり必死に体を小さくして
恥ずかしさから逃れようとする少女の背中に回り込む。
 そして、その耳元で…
 「今度はおじちゃまのお膝に抱っこしていただきましょう。……ね、
枷に捕まってるよりその方がずっと楽でいいでしょう」
 そう説得されてベンチに腰を下ろした僕の膝の上へとやってくる。
 「お願いします」
 少女は一言そう断って私の膝を椅子代わりにしたが、さっきまで地面
にしゃがみ込んで震えていたとはとても思えないほど堂々たるもので、
前も隠さないでやってくる姿は開き直っているとも見える落ち着きぶり
だった。
 「(ほう、お愛想笑いもできるのか)」
 彼女は私の膝でごく自然に笑って見せた。亀山の子供たちのならいだ。
『抱かれたら笑う』という習慣は生きていたようだ。
 そうなると、こちらも何かしてやらなければなるまい。
 「タオルケット、いいかな」
 まずは香澄からタオルケットを受け取ると、少女にそれを優しくくる
んでやる。そして、おでこをこっつん、ほっぺをすりすりして微笑む。
これも亀山のならい。習慣だった。
 「良い子じゃないか?……お嬢ちゃん、お名前は?」
 「倉田真里」
 「倉田先生は優しい?」
 「ママは優しいよ」
 「そう、だったら、どうしたの?」
 「…………」
 そこまでハキハキ答えていた真里の口が急に開かなくなった。代わり
に香澄が……
 「お父様が毎晩Hなことするからあそこにはもう居たくないって女王
様に泣きついてきたの」
 「この子のお父様って?」
 「河村誠一郎」
 「電気屋さんか。創業者でワンマンだったからな」
 さもありなん、なんて顔をすると…
 「そんなことないわよ。この子がそう言うから一応関係者に当たって
みたけど、河村さんはここに来てまだ日が浅いこともあって子供たちに
はとっても気を使ってくださってるの」
「ということは……」
 「そう、女の子特有の病。思春期には特に多発するわ」
 「でも、僕のお膝ではご機嫌みたいだけどなあ」
 私が笑顔を一つ投げかけると少女はそれと同じくらいご機嫌な笑顔を
返してくれた。
 「それはあなたが、ここでの作法、女の子の抱き方を知ってるからよ。
そこらが、会長はまだ慣れてらっしゃらないもんだから……」
 「会長職を退いて二年くらいだもんね」
 「ここへ来てまだ1年たってない。恐らく思春期の子という事で大事
にし過ぎたのね。ところが、女の子というのは不安そうに抱かれるのが
一番いやなのよ」
 「この子いくつ?」
 「12歳よ。まだまだ赤ちゃんなんだから、言うことをきかない時は
お尻を二つ三つ、ピシッピシッってどやしつければそれでいいんだけど、
巷のならいでなかなかそれがおできにならないからかえって溝が深まっ
ちゃったってわけ」
 「確かに、素っ裸で男性とベッドを共にするのは女の子にとっちゃあ
辛いよね」
 「いえ、お父様が赤ちゃんの時から何度も抱かれ続けた方なら女の子
も対応できるんだけど、河村さんの場合は今年こちらにお見えになった
ばかりでしょう。お互いが固くなっちゃってて……」
 「なるほど…そりゃあ、無理かもね」
 「でも無理じゃ困るわ。過去、そんなケースは五万とあるけど大半の
子がクリアしてきたんですもの。真里だけが、できませんってわけには
いかないわ」
 「で、他のお父様にはそわせなかったの?」
 「もちろん本人の希望を聞いて二三人そわせてはみたけど、やっぱり
そっちの方がよほどハードルが高いみたいで……結局、女王様が「私の
処へ残りますか?」って聞いたら、「やっぱり、お仕置きされてもいいか
ら元のお父様のお家へ帰りたいって……それで、ここにいるってわけ」
 「なるほど、新しいお父様が怖かったんだ。……それって、ちょっと、
辛抱すればすむことなんだけどね」
 「それができないから子供なんじゃないの」
 「ぼくなんか初めからお母様のペットだったからな。当番の日なんて、
おっぱいはしゃぶらなきゃならないし、ほ乳瓶でミルクは飲まなきゃい
けないし、オチンチンなんて毎晩のように触られてたけど。それでも、
変な気持になった事なんて、一度もないよ」
 「だって健ちゃんは男の子だもん。女の子ってのは元来が臆病だし、
肌を触られることにとっても敏感なの……」
 「でも、今回みたいなこと、あんまり聞いたことないけどなあ」
 「そりゃあそうよ、私たちにとっては物心つく前からやってる儀式で
しょう。今さら、『体が大きくなって気が変わりました』なんてお父様に
言いにくいもの」
 「そうかなあ。そんなことに女の子はドライだと思うんだけど……」
 「だから、それって、幼い頃からずっと抱き続けてもらってるお父様
だからそうなの。だからちょっとぐらいイヤな事でも辛抱できるのよ」
 「そう言えば『女の子は何をされたかより誰にされたかが問題なんだ』
なんて言ってた人がいたけど、そういうことかな」
 「それはいえるわね。この子だって前のお父様だったら、こんな問題
は起こさなかったと思うもの」
 「で、これからこの子どうするの?」
 「もちろん河村のお父様の処へ返すんだけど、今夜あたりおばば様に
来てもらうようなこと言ってたわ」
 「おやおや、そりゃ可哀想に……」
 私が憐憫の情で横座りした少女の顔をタオルケットごしに覗く込むと
彼女もまた私を少し悲しい目で見上げる。どうやら家へ帰ってこれから
何をされるかは分かっているようだった。
 「おばば様に心棒を通してもらうんだ」
 「ええ、色々考えたんだけどその方がいいと思って……女王様も同じ
意見なの。女の子ってのは色々に夢や願望はおしゃべりするけど、一旦
『ここで暮らしなさい』って言われたらもうそこで暮らせるものなの。
そのあたりの辛抱は男の子より上よ。……だから、おばば様に『あんた
のお家はここ』『あんたのお父様は河村先生』って念押してもらうが手っ
取り早く諦められるわ」
 「あきらめちゃうの?」
 「そう、女の子は自分の力で夢を実現することが男の子以上に難しい
から、どう綺麗に諦められるかで幸せが決まってしまうの。お股の中に
つけられたお灸の痕は、世間の人たちには残酷なことのように映ってる
みたいだけど、私にとっては、『ここで頑張らなくちゃいけないんだ』っ
て本気にさせてくれたからむしろありがたいお灸だったわ」
 「……えっ、それって本気?」
 「ええ、私の場合もおばば様からやられた当初はそりゃあショックだ
ったけど……でも、それで決心がついたら、後はスムーズに行ったわ」
 「…………」
 「何、変な顔して?……男性には分からないことよ」
 「女の子って、厳しい世界だね」
 「野心をもてばね、男の世界をハンデ背負って生きなければならない
から。でも、女の世界で妥協して生きるんなら、責任はないしお気楽な
人生よ。……さっ、そろそろ帰りましょうね」
 香澄はそう言いながら僕の膝から少女を抱き上げ近くに止めてあった
特大の乳母車へと乗せ換える。
 「裸のまま連れて行くのか」
 「そうよ、何?忘れたの?赤ちゃんはいつもこんな時は裸ん坊さんよ」
 「寒くないか?」
 「『寒くないか』?よく言うわねえ。お兄ちゃまはどこの御出身なのよ?
これに乗ったことないなんて言わせないわよ」
 「そりゃあそうだけど、今日はちょっと風もあるし……」
 「大丈夫よ。体はすっぽり籐篭の中だもの。それに子供は体温が高い
から……」
 「そりゃあ……まあ……そうだけど……」
 「なによ、やけにからむわねえ~~はっああ~ん、さては情が移った
んでしょう」
 香澄が笑う。でも確かにそうだった。不思議なことにほんの短い時間
でも抱いてしまうと、それまでその子にそれほど感心を示さなかったの
に『何とかしてやりたい』という気持になるのだ。
 そんな大人の心理を女王様はよくご存じだったのだろう。「どんな時で
も子供は見つけしだい抱きなさい」が亀山の掟だった。

第 5 話 ①

< 第 5 話 > ①
 香澄と私は大きな乳母車を押して町中を散歩する。目的地は河村邸。
ただ、最短コースを通ってそこへ行ったわけではない。途中学校に立ち
寄り、公園で休憩し、修道院や司祭様の私邸にまで押しかけたのだ。
 目的はもちろん赤ちゃんの顔見せ。あけすけに言ってしまうとこれも
この子へのお仕置きの一部だった。
 元気で可愛らしい赤ちゃんの体をできるだけ多くの街の人たちに隅か
ら隅までたっぷりと見てもらおうというのだ。当然、タオルケットの下
は全裸。
 経験者だから言わせてもらうけど、これって結構キツい。枷に繋がれ
ていた方がよっぽど楽なのだ。枷の場合だってもちろんお外で全裸なん
だけど、実は裸で居る時間というはそんなに長くないし、見られる相手
も最初からだいたい想像がつくので服を脱ぐ段階で覚悟が決まってしま
うけど、こちらはどんな人に見られるか分からないという不安を常に抱
えて長い時間裸で過ごさなければならなかったから精神的にしんどかっ
たのである。
 それに、見てる方はまさに上から目線で『よちよち』てなもんだが、
見られる方は大きな顔が鼻先まで迫って来るわけで、恥ずかしくて恥ず
かしくて死ぬ思いだった。
 男の子でこうなんだから女の子はさぞや……と思い尋ねると……
 「お仕置きなんだもん。しょうがないじゃない」
 「だってその子が悪いんでしょう」
 「そんな時は、頭を空っぽにして開き直って笑ってればいいのよ」
 と存外そっけない答えが返ってくる。だから私は、『へえ~女の子って
強いんだなあ』ってずっと思ってたんだが、事実は…
 『そもそもそんなこと口にしたくない』というのが本音のようだった。
 そう、実は井戸端会議の議題にすらできないほどのショックを受けて
いたのだ。
 そりゃそうだろう。素っ裸で乳母車に乗せられただけでもショックな
のに、色んな人に上から覗き込まれて、あげく…
 「さあ、笑ってえ~~赤ちゃんみたいに笑ってごらんなさい」
 とくる。
 もちろんそんなのイヤだからプイっと横を向きたいところなんだけど
……そんなことしようものなら……
 「あらあら、赤ちゃん、ご機嫌ななめねえ。ひよっとしたら、うんち
が出てないからかしらねえ。……だったら、お浣腸しましょうか」
 なんて平気で言ってくる。もちろんこんなこと巷の子にやったら……
 『ふざけないでよ!』
 って啖呵を切って大暴れなんだろうけど、亀山の子は、そんなことは
まずしない。
 だって、それをやっちゃったら今度はどんな恐ろしい罰になるか知っ
ているからだ。……だいいち乳母車の中ではバンザイの格好で両手首を
革のベルトで縛られているから上半身が起こせない。ま、下半身は起こ
せないことはないけど、こっちを起こして暴れるという子はまずいなか
った。
 結局、引きつった笑い顔でずっと寝てなきゃならないのだ。しかも、
これって分別のある大人だけじゃない。友だちをからかうのが生き甲斐
にしているクラスメートたちだってやってくるのだ。
 もちろんバスタオルなんかで大事な処は一応隠してはもらえるのだが、
これだってうまく笑顔が作れないでふてくされてると……
 「いやあ~~やめてえ~~ゴメンナサイ。もうしません。笑います。
笑いますから~~~」
 バスタオル剥奪なんてことにも……僕たちは寄る辺なき身、お父様を
お慰めして沢山の愛をいただいている身なのだ。だからたとえ悲しい時
でも笑顔を作らなければならないし、そんな訓練も受けている。 でも、
こんな恥ずかしさと隣合わせの不安な時に、みんなが納得する笑顔を、
と言われても引きつった笑顔しかできないことが多かった。それでも…
 「あらあら、真心がこもらない笑顔では相手の方に失礼よ。そうだ、
オムツしようか?その方があなたも気分が出るんじゃない」
 なんて言われたら、どの子も背中と心臓が凍り付くこと請け合いだ。
というのも亀山でオムツを穿かされる時はお浣腸がつきものだからだ。
 実際、オムツをされ、火事場金時みたいな真っ赤な顔をした子を私は
何人も目撃している。何をされたかなんて言われなくても明らかなんだ
が、つい悪戯心を起こして…
 「今日は裸ん坊さんじゃないんだ。だったら、乳母車に乗ってるだけ
なの?じゃあ、ミーちゃん楽ちんだね」
 なんて言っちゃったもんだから、後で講堂の隅に呼び出されて美知子
に思いっきりひっぱたかれちゃった。
 『あの時は、可哀想なことしたなあ』って今でも思ってる。もちろん
からかったこともそうだが、その時の様子を運悪く先生とお父様に見と
がめられちゃって、美知子はどっかへ連れて行かれちゃったんだ。
 その後に会った時は何も言わなかったけど、ひょっとしてフルハウス
(お鞭、お浣腸、お灸のお仕置きをいっぺんにやられる罰のこと)なん
て事になったんじゃないかと思って……
 とにかくここは兄弟やお友だち同士が仲良くしてないと先生の機嫌が
悪くて、特にお父様の前ではよい子でいるのが当たり前、そこで取っ組
みあいなんてやっちゃうと、お浣腸にオムツをさせられて後ろ手に縛ら
れ、つま先がやっと床に着く程度の高さで吊り下げられる、なんていう
SMまがい(普段だってそうだけど)のお仕置きだってあったくらいだ
った。
 ま、そうでなくても亀山の子供たちは……
 『目上の人にはお行儀良く(絶対服従)お友だちとはみんな仲良く』
 が絶対の義務として課せられていて、これはお勉強のことなんかより
ずっとずっと大事な約束事だったのである。
 真里の乳母車は最初に真里の通う学校へやって来た。
 そこの園長室で迎えたのは、白髪でメガネをかけたスーツ姿の婦人。
僕の時代の園長先生ではないので私は彼女のことをあまり知らないが、
彼女は僕のことはよくご存じだった。おそらくは亀山出身者なのだろう。
 「まあ、それで結局、元の鞘に収まったのね。それはよかったわ」
 大人二人との会話が終わると、園長先生はデスクを離れて乳母車の処
へとやってくる。そして、緊張する真里ちゃんの顔を覗き込むと……
 「真里ちゃん、あなたも慣れないお父様で大変でしょうけど、女の子
は神様から与えられた場所で精一杯生きるしかないの。あなたの不安は
もっともだけど河村のお父様はとても立派な紳士よ。だから、あなたの
事を誰よりも心配してくださってるわ。先生方とのお話し合いの席でも、
あなたのことを相続権を持たない養女として受け入れてもいいとまでお
っしゃってくださったんだから」
 園長先生は人差し指で真里ちゃんのほっぺを小さく軽く叩いてみせる。
 「幸せ者ね、あなたは……ほら、笑って……ちゃんと笑える?……ん?
……女の子は微笑みを絶やしてはだめよ。いいこと、あなたはまだ世間
というものを知らないからピンとこないでしょうけど、河村家の養女に
なるってことは凄いことなのよ。そばにいた先生方もおばば様も、腰を
抜かすぐらいびっくりしたんだから。さすがにそれは他の子とのバラン
スもあるので丁重にお断りしたけど、河村のお父様があなたの事を他の
どのお父様方より大事に思ってらっしゃるかそれでわかったの。だから、
あなたは河村のお父様を本当のお父様と思ってお仕えなさい。それが、
あなたにとっては何より幸せになれる近道だわ」
 園長先生は真里のために小さなロザリオを首に掛けてやると頬ずりを
して真里を送り出してくれた。もちろん、タオルケットの下を確認する
なんてハレンチなことはなしだ。
 香澄はこのあとすぐに校門を出る。私が悪戯っぽく
 「ねえ教室へは寄らなくていいのかい?せっかくだからクラスメート
にも報告した方が……」
 なんて尋ねると…
 「どうして?わたし、そんなに意地悪じゃないわよ」
 とあっさり断られてしまった。みんな亀山の出身。どうすれば、どう
なるか。些細な行動や仕草もそれにどんな意味かせあるかはみんな知っ
てることだった。
 学校を離れ、次に乳母車を止めたのは公園。ここは天気さえよければ
暇を持て余した先生のリタイヤ組が編み物をしたり、おしゃべりをした
り、絵を描いたり、時には子供をお仕置きしたりして、思い思いに暇を
つぶしている。
 そして、真里にとっては運悪く当日は好天に恵まれていた。
 「あら、赤ちゃんかしら」
 一人の老婦人がさっそく近寄ると乳母車の中を覗き込む。
 「真里と言います。倉田真里です」
 こう言ったのは真里本人ではなく香澄だった。別に真里が恥ずかしが
っているわけではない。こうして赤ちゃんのお仕置きを受けている時、
赤ちゃんは笑うことと泣くことしかできない。だから付き添いの香澄が
答えるのである。
 「何したの?」
 「いえ、もう終わったんです。これから元のお父様の処へ帰るところ
ですから」
 香澄の答えに老婦人も頭の中を一旦整理してから問いかけた。
 「この子、河村さん処の?」
 「は、はい」
 「ほう、結局、元のお父様の処で暮らすことになったんだね。そりゃ
あよかった。河村君は僕も知っているが高潔な紳士だからね、君を不幸
にはしないよ」
 そう言ったのはツィードのハットを被った老紳士だった。
 「ご存じなんですか?」
 「昔、一緒に仕事をしたことがあるけど、社員からも慕われていてね、
高い人徳を感じたよ」
 「これから、お宅へ伺うの?」
 「はい、おかげさまで……」
 「そう、いいことだわ。女王様のもとで暮らすこともできるでしょう
けど女の子は後ろ盾になってくださる方がいるならそれにこしたことは
ないもの」
 気がつくと三人四人と観客は増えていく。その誰もが一度は乳母車の
中を覗き込んだ。老人たちが幼い女の子のストリップを見たってだから
どうなるというわけではないが、まるで可愛らしい珍獣でも見るかの様
に一様に笑顔で挨拶していったのである。
 「……あなた、河村さんにお世話になるんなら、そんな引きつったよ
うな笑い方じゃいけないわよ。もっと明るく笑わなきゃ。色んな人から
言われて耳にタコができてるでしょうけど、今のあなたはショーツ一枚
自分のものではないの。ほら、だから今のあなたは何も着けてないでし
ょう」
 彼女はそう言うとタオルケットを捲って暖かい日の光を乳母車の中に
入れる。当然、真里の体は全て白日のもとに晒されることになったが、
真里は声を出さなかった。
 「ほら、見えるかしら……これがあなたなの全てなの」
 婦人は真里の頭を起こし自分の体を見せてやる。
 「今、あなたが大人にアピールできるのはこの身体と一生懸命な笑顔
だけ。……引きつった笑顔だけでは誰からも受け入れてもらえないの。
……分かるでしょう?」
 「……」真里が静かにちょこんと頷く。
 「あなたはお父様を一度裏切ったの。だから、戻る時には辛い罰を受
けなければならないと思うけど、それは悲しむことではないわ。その罰
が重ければ重いほどあなたはこれから先愛され続けるんだから…」
 そう言って励ましたのは最初に乳母車の中を覗き込んだ白髪の老婦人
だった。
 「…………」
 「ん?どうしたの?私の言うことなんて信じられない?」
 「…………」
 「でも、本当よ。ここで育って、ここで多くの子供たちを育てた私が
言うんだから間違いないわ。ここでのお仕置きはママにしろ先生にしろ
それをやる人が『これから私の責任でこの子をもっともっと愛します』
ってお誓いする儀式なの。一時的な癇癪を爆発させるだけの虐待とは、
まったく違うものなのよ。ここには、昔からお仕置きはあっても虐待は
ないわ。だからあなたがお仕置きで一時辛い思いをしても、やがてその
何倍も愛で包まれることになるから辛抱しないね」
 「…………」
 老婦人の説教に真里はきょとんとしていたが私には彼女の言った意味
がわかった。確かにそうなのだ。私が子供の頃にもある先生が……
 「ここでへはお仕置きも受けない真面目な子が幸せとは限らないわ」
 と呟いたことがあったが、きっと同じ意味なのだろう。お仕置きは愛
の一部。だからそれを避けられたと喜んでいるのはお門違いなのだ。
 「そうだ真里ちゃん、おばさんがお浣腸してあげましょうか」
 老婦人はしばし真里の顔を笑顔で眺めていたが、突然こんなことを言
い出したのである。

第 5 話 ②

< 第 5 話 > ②
 「…………」
 当然、真里の顔は引きつるが、目上の人の言葉に『イヤです』が言え
ない悲しい身の上。
 「あなた、オムツとイチヂク持ってるわよね。私がやってあげるわ」
 こう言うと、イチヂクを真里のお尻に差して、香澄から差し出された
オムツをあてがう。あっと言う間の手際の良さに香澄も私も呆然だった。
 「ああ、だめ~~~」
 一分もたたないうちに真里の顔が青ざめる。
 しかし老婦人は落ち着いたもので……
 「さあ、さ、修道院で着替えてらっしゃい」
 こう言って我々三人と乳母車を送り出したのだった。
 そこから五分と行かない処に亀山の修道院がある。煉瓦造りだがこの
街でもっとも大きな建物群だ。この街はもともとこの修道院に付属する
ものとしてできあがっていたから当たり前といえば当たり前なのだが、
OBやOGたちが出世して競うように寄付をしたおかげで周囲に色んな
建物が建ち並び昔ほど目立たなくなっていた。
 修道院というくらいだからキリスト教に関連した建物ではあるのだが、
亀山の宗派はもともと既存の大教団とは一線を画す新興宗教団体だから
修道院も巷のイメージからするとかなり開放的だ。
 門限はあるものの中庭までは誰でも勝手に出入りできるし、尼さん達
も頻繁に街へ顔を見せている。それだけではない。子供たちにとっては
まるで通ってる学校みたいに出入り自由な空間だった。子供達はここで
シスターから補習を受けたり、ここが習い事の教室だったりするからだ。
 ただ良いことばかりではない。特別厳しいお仕置きもまたここで執り
行われるからだ。中世ヨーロッパの拷問部屋みたいな処で執り行われる
お仕置きは、たとえそれほどキツいことをされなくても子供達に与える
心理的プレッシャーは相当なもので、数十年経った今でさえ、かつての
お仕置き部屋辺りにさしかかると心臓が締め付けられるように高鳴った。
 「あら、真里ちゃん、どうしたのかしら?……そう、緊急事態みたい
ね」
 院長室に乗り付けられた乳母車を覗き込むと院長先生は真っ赤な顔の
真里に微笑みかける。僕ら時代は品のいい年輩者だったが今の院長先生
は私より若いのでびっくりした。
 「花江さん、オマルを用意して」
 彼女は秘書役のシスターにオマルを持ってこさせると、乳母車の脇に
それを置いて無造作に真里のオムツを外そうとする。
 慌てた秘書が「そんなことは私が…」と止めたのだが…
 「いいでしょう、私がやっても……人助けは一番近くにいた人がやる
ものよ」
 そう言ってうてあわなかった。そしてオマルを外してすっぺんぽんに
なった真里を抱きかかえると、赤ちゃんをそうする様に真里の両太股を
もってオマルの上にかざしたのだ。
 もちろん、真里も抵抗したのだが、それは必死にというものではなく、
女の子のたしなみとして…あるいは自分はそんなにハレンチじゃないと
いう言い訳に…パフォーマンスしただけ。
 「いや、いや、だめ、だめ、しないで、しないで、わたし……」
 真里はし終わった後も真っ赤な顔のまま訴えるが、もとよりこんな事
を子供にやらせてくれる大人は亀山にはいなかったのだ。
 ここでは『子供が悪さをしていたからお仕置きしたよ』でよかったし、
別の人が『可哀想だから許してあげたよ』で、またよかったのである。
ただし、子供が自ら後かたづけする事までは許していなかった。
 お浣腸されて…オムツにお漏らし…でもそれを片づけるのは必ず大人
でなければならなかったのである。
 そう、これは私たちの時代、いやそれよりずっと以前からの決め事、
決まり事だった。
 お股の汚れを濡れたタオルで綺麗にしながら…
 「恥ずかしい?……だったらよい子にしてなさい。恥をかかないと、
何が正しくて何がいけないのか、あなたは覚えないでしょう」
 「そんなこと……」
 「そんなことないって言いたいの?いいこと、子供は頭では分かって
いても体が覚えないと芸ができないの。体で覚えなきゃまた繰り返すわ」
 大人たちはこのフレーズが得意で、これが言いたいために子供に自ら
処理をさせず自分で行っていたのである。
 院長先生は一通り真里の体を吹き上げると真里のために新たなオムツ
をはめてやる。それは…
 「私からのプレゼントよ。ここでは新たな家へ行く時は何一つ纏わず
に行くことになってるけど、あなたももう六年生だし、すっぽんぽんで
は恥ずかしいでしょう。もし向こうのお宅で聞かれたら『修道院の院長
先生からいただきました』って言えばいいわ」
 確かにこの時の真里はすでに胸が膨らみ、下草も生え始め、お尻も大
きくなりかけてはいるが、それでも赤ちゃんとして扱うのが亀山のルー
ル。それをあえて破るのは院長先生が真里を『とってもよい子』として
認識しているからに他ならなかった。
 乳母車は最後の寄り道として司祭様の自宅へと向かう。司祭様はこの
街を創った宗教団体の幹部のなかにあっては唯一の男性。私がここにい
た頃は『金曜日の死刑執行人』として女の子たちから畏れられていた。
 私は端(はな)から同性なので関係ないが、女の子たちにしてみれば
ここで日常的にお仕置きを受ける大人としては唯一の異性だったから、
その気の使いようも明らかに他の大人たちとは違っていたのである。
 案の定、司祭様の家に着いた時から真里の表情は明らかにそれまでと
違っていた。
 もちろん、そこには言いしれぬ緊張や恐怖があるに間違いないのだが、
私がここにいた昔、女の子たちの言動を見ていると、司祭様との間には
どうやら負の想いだけではない何かがあることを私は感じ取っていた。
 その匂いが、実は真里の顔の奥からも垣間見えるのである。
 「おう、合沢君じゃないか。帰ってきたのかね」
 こうして香澄と一緒に乳母車で回っていても私に声をかけてくれたの
は司祭様が初めてだった。
 「司祭様は健児のことを覚えてらっしゃるんですか?」
 「もちろん。私がまだ就任したての頃でね、とにかく頭のいい子だっ
たからね」
 「そんなに健ちゃん学校の成績がよかったんですか」
 「いやいや、学校の成績というより、とっても大人びて見えたんだ。
先生方の評判もよくてね、私が下手に厳しいお仕置きを言い渡そうもの
ならあちこちから抗議がくるんもんだ。それだけ人から愛されるすべを
知ってたってことかな。いずれにしても懺悔聴聞僧泣かせだったことは
確かだったよ」
 「へえ~~」
 香澄は意外という顔をした。彼女にはよく先生方からお仕置きされて
は泣きべそをかいてた姿しか思い当たらないからだ。
 確かにそれは嘘ではない。私はよく大人たちからお仕置きされていた
し泣き虫でもあったから。でも、酷(ひど)いお仕置きにあったことは
あまりなかったし、お仕置きされた分はその何倍も甘えて取り返してい
たのである。ここはそれが可能な街だった。だからこそ子どもの楽園で
あり続けるのである。
 「さあ、僕の話はどうでもいいじゃないか。仕事、仕事」
 私は照れ隠しに香澄をたきつけた。
 実際、乳母車の中では小さな心臓を張り裂けんばかりにして真里が待
っていた。
 「おう、可愛いオムツをしてるじゃないか。これは?」
 司祭様は香澄に尋ねる。対応は以前お会いした方々とほぼ同じ。
 赤いほっぺたを人差し指ちょんちょんと叩いてから頭を撫で、手の指
足の指を優しく揉んでいく。そして拘束されている手首のベルトを外す
と、そのまま本物の赤ちゃんを抱き上げるようにお姫様だっこで自分の
胸へと引き上げるのだ。
 もちろん、真里は笑顔を崩さない。時折、不安から顔が引きつりそう
になるが、それでも香澄先生に教わった通り必死に笑顔を作ろうとして
いた。
 「良い子だ。良い子だ。その笑顔はお父様の前でも見せるんだよ」
 司祭様は真里をご自分の膝の上で横座りにさせると再度頭を撫でる。
 「でも、こんな時に笑ってたら馬鹿みたいだって思われませんか?」
 「そんなことはないよ。君が大変な立場にいることは周囲の人たちが
みんな知ってることだからね。そんな中でも笑ってるってことは、君が
努力してる賜だって誰だってわかるもん。君を愛する大人の人たちは、
君のそんな努力を無にしようだなんて思わないから」
 「だって……」
 「だって、何だい」
 「だって、公園ではおばさまにお浣腸されたし、院長先生は部屋の中
でオマルにうんちさせたんだよ」
 「それは仕方がないだろう。君はまだ赤ちゃんなんだから……それに、
お浣腸は向こうにいっても必ずやらされるはずだから……初めてより、
二回目の方が楽だろう。それに何よりこんなオムツ普通は穿かせてもら
えないんだよ。そのお家に初めて入る時は……」
 「ね、それ違うよ。だって私、二ヶ月前までお父様の家にいたもの」
 「だけど、『あそこはイヤだ』って女王様に泣きついたじゃないか。そ
んな身勝手な子が今でも河村のお父様の子であり続けるはずないだろう。
もう一度、あの家で河村さんをお父様って呼びたいなら、それは初めて
そのお家に入る時の儀式をやり直さなきゃいけないんだ。わかるかい?」
 「……うん」
 真里は不承不承小さく頷いて返事をした。
 「大丈夫、みんな君のことが大好きだからね。きっとうまくいくよ」
 司祭様はそう言うと真里の体に香油を塗り始める。手や足、顔、首、
お腹、背中、膨らみかけたおっぱいも例外ではなかった。
 これは裸でいる時間が長い子のために皮膜を作って幼い子の肌を守る
ための処置だった。そして何よりこの甘い椿の香りが司祭様の御印とし
て河村家に届けられることになるのだった。
 園長先生のロザリオ、公園での老婦人のお浣腸、院長先生のおむつ、
そして司祭様の香油も…そのすべてが『この子をお願いします』という
無言のメッセージであり、この子に罰を与えようとする大人たちはそれ
を感じ取ってその子の処断を決めることになるのだ。
 『ここではどんな大人の人たちからも愛される事が大事なの。幸せに
なりたければ、お友だちの好き嫌いもだめ、大人の人たちの好き嫌いも
だめなの。どなたの胸にも快く飛び込んでいくのがあなたのお仕事よ。
必ず良い事があるから』
 ごくごく幼い頃から私はママにこう言われて育った。ただ当時は……
 『そうは言っても嫌いな子もいるし、あまり抱きつきたく大人だって
いるんだけどなあ』
 なんて思いながら聞き流していたが、今にして思い返すと、それは決
して意味のない教訓ではなかったようである。
 乳母車はとうとう目的地へと到着する。
 河村家は秋山四十郎氏のお屋敷を譲り受けたものでそこで暮らしてい
た子供たちも引き受けていた。ここへ移住してこられるお父様たちは、
そのほとんどが現役を退いた方ばかりなので、移住された段階ですでに
高齢の方が多く、だいたい10年から20年位経つと亡くなるか子ども
たちとの暮らしが困難になるかして、新しいお父様と交代されるケース
が多かった。
 当然、子どもたちもその新しいお父様へと引き継がれるため、生活の
仕方に大きな変化はないはずなのだが、赤ん坊の時から面識がある元の
お父様に比べ新しいお父様のもとでは気心の知れないことも多くて自分
の預かった子供たちを新しいお父様にどう馴染ませるか、ママたちには
人知れぬ苦労があった様だ。
 とりわけ、真里のような思春期の子は新しいお父様になかなか馴染め
ないケースも多く、今回のように女王様の処へ泣きつくケースも少なく
なかったようだ。
 私の場合は幸い一人のお父様で中学を卒業できたので体験談は語れな
いが、友だちの話を聞くと、それまで元のお父様の時は何でもなかった
当番の添い寝が新しいお父様になったとたん強姦されるんじゃないかと
いう恐怖に襲われるんだそうだ。
 もちろん、たとえ素っ裸で15の少女が隣に寝ていたとしてもそれで
間違いを起こすような人物はここには入ってこれないはずだが、そこは
それ、思春期の尖った自意識が簡単にうち解けた関係を作らせないもの
だから仕方がない。
 結果、今回のようなことになるのだった。
 玄関を入る際、私は何となく気になって乳母車の中を覗き込んだが、
そこにいる真里は顔面蒼白、焦点の定まらないうつろな目をしていて、
引きつった笑い顔でさえもう求めるのが困難なほど憔悴しているように
見えた。
 「大丈夫か?こいつ?凄い顔になってるぞ」
 私が心配になって香澄に尋ねると、彼女は乳母車の中を一瞥。
 「ん?……」
 笑い出すと…
 「や~ね、大丈夫よ。この子、耐える準備をしているの。女の子って
耐えるだけなら男の子以上に強いのよ」
 彼女にすると『そんな事も知らないの』とでも言いたげな笑顔だった。

第 6 話

< 第 6 話 >
 乳母車は薔薇のアーチをくぐり前庭の噴水を迂回して玄関ロビーへ。
そこはまるでリゾートホテルの様な造りの洋館だった。
 玄関で待っていたのは河村誠一郎夫妻。女王様、おばば様、小学校で
の担任の先生、女中さんたちなど総勢8名。まるで温泉旅館にでも着い
た時のような歓迎ぶりだった。
 「お疲れさまでした。倉田先生。どうでしょう。みなさん方の賛同は
いただけたでしょうか?」
 「大丈夫ですわ。みなさん、やはり河村様が真里のお父様として最適
だとおっしゃっていまいした」
 「そうですか、それはよかった。いや、私には亀山の子供を抱く適性
がないのかと心配しておりましたから」
 「そんなことはありませんわ。ほら、ご覧ください。小学校の園長先
生からは銀のロザリオ、修道院の院長先生からはお手製のオムツ、司祭
様からは自らこの子のために香油を塗っていただきましたし、元うちの
小学校で教鞭を執っていた香月先生からはお浣腸までしていただきまし
た。こんなに多くの祝福を受けられるなんてこの子も幸せですわ。です
からどうか、末永くこの子をよろしくお願いします」
 大人たちの挨拶を尻目に真里は依然乳母車のなかでその緊張した顔を
崩そうとはしなかった。
 実はこれから、真里にとって今回最大の山場がひかえていたのである。
 「元気でな」
 私は乳母車の中の少女に挨拶してこの場を去るつもりだった。もとよ
りこの儀式は私には関係ないこと。いくら街中フランクなお付き合いが
信条とはいえ、そこまで割ってはいるのはあまりに非礼と思ったからだ
った。
 ところが……
 乳母車から顔を上げた私と河村氏の視線があってしまう。彼はしばし
怪訝な顔で私を見た後、こう切り出したのだった。
 「ひょっとして、合沢先生じゃありませんか?」
 「ええ、そうですが…」
 「やっぱり、そうですか。最初、お顔を拝見した時から似てるなあと
思ってはいたんですが……寄寓だなあ」
 「いや、……」
 私は赤面する。確かに河村氏とは面識がないわけではない。一応この
会社の顧問弁護士の末席に名を連ねているから挨拶程度はかわしたこと
があったのだが、重要な案件を任された事はなく、こみいった話をした
ことも一度もなかった。だから相手が私の事を覚えている気遣いはなか
ろうと高をくくっていたのである。
 ところが、ところが、だった。
 「先生もここの会員になられてたんですか?」
 「いえ、違います。……実を言いますと……私、ここの出身なんです」
 「こりゃあ、こりゃあ、気がつかなっかなあ。では……お父様は?」
 「天野茂氏です」
 「天野興産中興の祖と言われた……」河村氏は嬉しげに頷く。そして
「……いや、ちょうど良かった。あなたもご存じだとは思いますが、私、
恥ずかしながら娘に逃げられましてね…なにぶん慣れない土地なもんで、
しきたりなんかもよく分からなくて……先生、よろしければ私にここの
ことについてレクチャーしていただけませんか。……それともお忙しい
ですか?」
 「いえ、大丈夫ですよ。私も久しぶりの里帰りで、休暇の身ですから」
 「いやあ、よかったよかった、これは天の助けだなあ」
 破顔一笑、彼は子供のように笑うと私の両手を握りしめて助言を請う
たのだった。
 私は誘われるままに河村氏の洋館へ入っていく。この建物、玄関から
応接室あたりまでは洋風の造りだが、そこを過ぎると後は典型的な日本
家屋になっていた。私もその昔、友だちの関係で何度かお邪魔したが、
苔むした灯籠の苔を綺麗に剥いで掃除したり、お池の鯉を追っかけたり、
お父様のゴルフクラブを持ち出してそれを折っちゃったり、とけっこう
悪さをしていた。もちろんこういう事は主人が先生に一言苦情を言えば、
こっちはフルハウスのお仕置きを覚悟しなければならない身なのだが、
当時この館の主だった水谷氏はそんな告げ口は一度もしなかった。
 そんな想いでの日本庭園を横目で見ながら私はさらに奥へと進む。
 着いた処はこの屋敷の居間だった。二十畳もあるその広い和室には、
ペルシャ絨毯が敷き詰められ、床の間と反対側のスペースには小さいな
がらも舞台が造られている。
 この舞台、普段は襖を閉めて舞台は隠されていて、子供たちが楽器を
弾いたり日舞やバレイを披露する時だけ小さな劇場としての役割をはた
しているのだが、普段閉まっているはずの襖が開いているところをみる
と、どうやらこの舞台に真里を上げて、そこで儀式を執り行おうとして
いるのだろう。
 案の定、真里は一段高い舞台に上げられると、まずは舞台の袖で正座
した倉田ママによってしっかりと抱きかかえられた。
 「いいこと、あなたは大日如来様が私に預けてくださった子供なの。
そのご加護があるから女王様も、おばば様も、園長先生も、院長先生も、
司祭様も、みんながあなたを好きなの。だからここへ来ることのできな
かった先生方もあなたに色んな物を授けてくださるのよ。河村様も同じ。
あなたがまず最初に河村のお父様を愛すれば、如来様から授かった能力
がお父様に伝わり、その何倍も大きな愛でくるまれることになるのよ」
 倉田ママは真里を抱きかかえると囁くような小さな声で震える子供の
心を落ち着かせようと説教をしている。
 ところが、その文言は実は私もママから聞いて知っていたから途中で
思わず吹き出しそうになってしまった。
 そんなことをしていると私の隣にいた河村氏が尋ねる。彼は私を客分
として扱い、こんな大事な儀式にもかかわらず『お父様』の隣に椅子を
置いて座らせてくれたのだった。
 「ねえ先生、私がここへ移住を決めた時には係の人から『子どもへの
お仕置きは絶対にできませんよ』と何度も釘を差されたんですよ。でも
今回は、女王様もおばば様も、私にお線香で艾に火をつける役をやって
欲しいと言われるんです。これって受けていいものかどうか………」
 「それは構いませんよ。その趣旨はあくまで自らお仕置きを企画して
はいけないってことで協力を求められた時はその限りにあらずなんです。
私のお父様も滅多に私にお仕置きなんてしませんでしたが、ただママに
頼まれてという形なら何回かありましたから……これはあくまで特別な
時……つまり今回のような時だけです」
 「そうですか。それで一安心です。でも、それにしても、すえる処が
……」
 「大丈夫ですよ。先生」
 二人の話に割って入ったのはおばば様だった。もっとも、私の時代は
本当にお婆さんだったからしっくりいったが、今の人は年配といっても
まだ若く『おばば様』とは呼びにくい年齢だったが、お灸をすえる係は
いくつであってもおばば様なのだ。
 「大丈夫ですよ。すえるのは大陰唇だけですから。ここは外皮ですか
ら、熱さは他の皮膚と変わらないんです。ただ、女の子としては自分の
大事な処にすえられたという意識でとりわけ熱く感じるだけなんです」
 「でも、それって心の傷にはなりませんか?」
 「ならないといったらそりゃあ嘘でしょうけど、心に傷を受けるのは
何もお仕置きだけではありませんから。むしろ、そこに傷を持つことで
常に自分が女なんだいう意識が顕在化して都合がいいんです」
 「徳川家康が三方ヶ原で敗走して城に逃げ帰った時、自分のふがいな
い姿を絵師に描かせてそれを常に見て戒めにしていたという逸話がある
でしょう。あれと同じなんです。常に自分だけが意識できて且つ他人に
は見られませんからここが一番いいんです」
 「残酷なような気がするけど……」
 「河村先生はフェミニストなんですね。でも大丈夫です。もう百年も
続けてきた伝統なんですから。それに、『これが励みになった』という人
はいますが、『足枷になった』という人はいませんから……本当ですよ」
 「男性にとっては凄いことって思うかもしれませんけど、女性にとっ
てはそれほどでもないです。僕の周囲もみんなここにお灸の痕がありま
すけど、ここは身体を許した人しか見ることができないからまだいいん
です。むしろ。お尻のお山にすえられたお灸の方を気にしてましたよ。
Tバック下着が穿けないじゃないかってね」
 「そういうもんですかね」
 「女性って意外と合理的なんですよ。どんなハンディキャップも隠せ
さえすればそれでいいってところがありますから。…………もちろん、
お嫌なら無理強いまではできませんけど、やっていただくと、これから
親子をやっていく上にもスムーズにいくと思いまして……」
 「『これは重要な儀式なんです』と女王様からも聞きましたから承知は
しているですが…何しろこんなこと初めての経験ですから……」

 「女王様は何と?」
 「ええ、あの子が犯した罪を私があえて罪を犯すことで救ってやって
欲しいと……」
 「相変わらず女王様は厳しいですね」
 「でも、そこまでおっしゃる熱意に打たれたんです。この人は嘘を言
わない人だ、信頼できる人だとわかったんでお受けしたんです。………
もともとこの事は私にも非のあることですから」
 「そう言っていただけると嬉しいです。決して秘密が外に漏れるよう
なことはありませんから、お願いします」
 香澄は河村氏の前で両手をついて頼み込んだ。
 そう、これは例外中の例外。これから面倒をみてもらう者とみる側の
神聖な儀式なのだ。聞くところによれば、子供たちがここへ預けられる
時もまた、おばば様がその赤子にお線香を握らせ、裸になった母親の体
に貼り付けられた艾に一つずつ火をつけてまわるのが約束事なのだそう
だ。
 河村氏があえて悪人になることで真里に素直なあきらめの気持をもた
せ、河村氏の愛の中に組み入れたいと大人たちは考えたようだった。
 だから舞台の上の真里は、女王様、倉田先生、お母様、おばば様、…
…彼女をこれから愛していかなければならない多くの人たちにその身体
を完璧に押さえ込まれ、微動だにもできないほどにされて、仰向け両足
を高く上げる姿勢のまま女の子の全てをさらけ出し、お父様のお線香で
二つお灸をすえられたのだった。
 「いやあ~~~だめえ~~~ごめんなさい、もうしません、しません
からゆるして、だめ、熱い熱い、いや死んじゃ、死んじゃう、痛~い」
 耐えきれない恐怖と不安そして現実に訪れた強烈な痛みに真里は悶絶
して悲鳴をあげたが、もとよりそれ以外どうすることもできなかった。
 時間にして三十秒にも満たない一瞬ともいえる儀式だが、女の子たち
はこの瞬間を生涯忘れることはない。
 ここへのお灸はいつも擦れる場所なのでその後もかさぶたができたり
ケロイド状になったりで治癒したあとも「あっ、あの時の……」という
意識が毎日のように蘇るのだ。ただ、それが悪感情になることはあまり
なかった。
 というのもここへのお灸は自分一人の傷ではないのだ。亀山で育てば
山を下りるまでに少なくとも三回はすえられるのが普通で、ここに灸痕
のない子はいなかった。私の親しい友人などは……
 「だって、人に見せるわけじゃないし、何より亀山を出たという証(あ
かし)みたいなものだから」
 と、さらりと言ってのけたほどだった。
 傷跡におばば様から軟膏を塗ってもらった真里は身なりを整えて舞台
を降りる。しかし、これで終わりではない。彼女にはまだまだやらなけ
ればならない仕事がたはさん残っていたのである。
 まずはこれからお世話になるお父様へのご挨拶。
 これは今まで舞台とは違って上座にあたる床の間を背にお父様とお母
様が座り、その前で正座した真里が両手を床について行わなければなら
なかった。
 「お父様、お灸の戒めありがとうございました。これからはお父様、
お母様のお言いつけを守って暮らしますからよろしくご指導ください」
 お灸のお仕置きのあと、子供たちが言わされるこのご挨拶は昔と一言
一句変わっていなかった。
 「わかりました。あなたもお勉強に芸事にしっかり励んでくださいね」
 こうお母様に言われて目の前には漆塗りの箱が登場する。どれも文箱
を一回り大きくしたほどの大きさで三段重ね。ただ、差し出される時に
は一段一段中が見えるようにして置かれるのが普通だった。
 「もうあなたには説明の必要もないとは思いますが、今一度心を新た
にする意味でお聞きなさい」
 「はい、お母様」
 「三段目がお浣腸のセット。ピストン式の浣腸器にゴム管、導尿用の
カテーテルに膿盆、局所麻酔用の注射器やイチヂク浣腸なども入れてお
きました」
 「ありがとうございます」
 「二段目はトォーズとナインテールです。いずれも小ぶりのものです。
実際に行う時はもっと大きなものを出してきて使いますが、戒めとして
ご覧なさい」
 「はい」
 「一段目はお灸のセットです。艾やお線香、お線香立てにマッチ、傷
薬なども入っています」
 「……ありがとうございます」
 真里は一つ生唾を飲んでからお礼を言う。今し方のことがきっと脳裏
を掠めたのだろう。
 「あなたは良い子だからこんな物は必要ないとは思いますが、これを
お部屋に持ち帰って日々の戒めとなさい」
 「はい、お母様。これからお父様お母様の御名を汚さぬよう精進いた
します」
 と、時代ががったというか芝居がかったというか口上を述べてその箱
を受け取るのだが、『やれやれこれで一件落着』とはいかない。
 実はこの儀式、まだ先があったのである。
 「真里ちゃんここへいらっしゃい」
 少し離れたところでママが正座した膝を叩いて真里を呼ぶ。言わずと
知れた合図、『この膝に俯せになりなさい』ということだった。
 そしてその膝の上に腹這いになると…
 「お灸のお仕置きはどことどことどこにすえるんだったかしら?」
 「お尻のお山とお臍の下とお股の中です」
 か細い声はさらに震えて私の耳に届く。きっと恐怖と恥ずかしさがな
い交ぜになっているのだ。
 「お股は終わったけど、お尻とお臍の下はまだでしょう。ここも本当
ならお父様にお願いするところたけど、お前がお股のお灸をすえられた
時、あまりに大きな声をだすから「可哀想だから」とおっしゃって遠慮
されたの。でも、お仕置きを途中でやめるわけにはいかないから代わり
に私がします。いいですね」
 「はい、…………」
 「『はい、』だけ?」
 「はい、お願いします」
 「そうでしょう。肝心なことわすれてどうするの。お仕置きはお願い
するものなの。何度も同じことを言わせないでちょうだい」
 「ごめんなさい」
 真里は謝ったが、もちろんそれで許されるというものではなく…
 「では、始めます」
 となった。
 短めのプリーツスカートが捲り上げられると、まぶしいほど白い綿の
ショーツが顔を出す。しかし、それもほどなくずり下ろされて、真里の
まだ可愛いお尻が現れた。
 とたんに畳にこすりつけるように低くなった少女の顔が真っ赤になる。
 亀山は毎日のように子供がお仕置きされている処だが、毎日同じ子が
罰を受けているわけではない。真里にしても前のお仕置きからはすでに
三週間近く間があいていたから、あらためてパンツを脱がされるとそれ
はそれで恥ずかしいのだった。
 「合沢さん、こういった時は近くによってはいけないんでしょうね」
 「えっ……」私は突然尋ねられたので驚いたがすぐに笑顔に戻って…
 「構いませんよ。あの子はここではあなたの娘なんですから、お尻で
も、お臍の下でも、お股の中だって、「見せなさい」って命じればそれで
いいんです。子供はお父様の命令に『嫌!』とは言えない立場なんです
から」
 「でも、体罰はできないと……」
 「いや、身体検査は親の権限であり健康管理は義務でもあるわけです
からそれは体罰ではないですよ。私のお父様もそうでしたが月に一回は
必ず身体検査と称して子供を裸にしてましたから……もちろん女の子も
……性器も全部です」
 「そうなんですか、何かそれって卑猥なことかなって思ってしまって」
 「確かに卑猥な心で見ればそうでしょうけど……そうでなければいい
んです」私たちの会話に女王様が割り込む。「だって産婦人科のお医者様
はそこを見なければ仕事になりませんもの」
 「そりゃそうですね」
 「いえ、娘の裸がみたいならお風呂に入るのが手っ取り早いですよ。
どこの家でも大抵サウナ室が広めに造ってありますからね。あのベンチ
に寝っころがして調べるんです。亀山の子は幼い頃からお父様への絶対
服従を厳しく仕付けられてますからね。決して暴れたり大声を出したり
はしないはずです。もちろん、ここへ移住する人たちは間違いを起こす
ような人ではないという信頼関係があってのことですが……」
 「行ってみましょう」
 私が誘うと河村氏も腰を上げる。
大人三人にいきなり近寄られた真里は真っ青になった。今、お尻への
お灸が終わり今度はママのお膝を枕に仰向けにされたばかり、当然お臍
の下は大人たちから丸見えだった。
 もちろんだからといって暴れたり大声を出したりはしない。僅かに顔
を背けることだけが彼女にできる精一杯の抵抗だったのである。
 「ほら、真里。お父様がいらっしゃったのよ。ご挨拶は?」
 ママは握った娘の両手を振って催促する。
 「こ、こんにちわ」
 「違うでしょう。こんな時はね、『お恥ずかしいところをお見せしてお
ります』って言うのよ。……あら、それはそうと真里ちゃん、あなた、
床屋さんに行かなかったのね」
 ママの詰問に、その顔から『しまった』と字が浮き上がる。亀山の子
は女の子も床屋さんで髪をセットしてもらう。しかしその時は、上の毛
だけでなく下の毛も剃り上げてもらうのが慣例になっていた。
 「ほらあ、こんなに下草が伸びてますよ」ママはさの下の皮膚が吊り
上がるほど下草を摘んで持ち上げる。「あなたももういい歳なんだから、
自分のことは自分でやらないと…」
 「ごめんなさい」
 「ま、仕方がないわ。真里ちゃんもおじさんにお臍の下を触られるの
が恥ずかしいお年頃になったのよねえ」
 おばば様が助け船を出してくれたが…
 「そんなこと言っても規則なんですから……真里、今度下草の処理を
さぼったらお仕置きですからね」
 とうとうママから脅かされてしまう。
 「今日のところは私が処理しましょう」
 おばば様はそう言うと、お湯に浸したタオルでそこを暖め、男性用の
T字カミソリであっという間に剃り上げてしまう。もともと陰毛といっ
ても小学生の身体、まだまだ産毛のようなものだから処理は簡単だった。
 「もう、すでにお灸の痕がありますけど…あれは……」
 河村氏が私の耳元で囁く。
 「最初は二歳ぐらいの頃に皮切りと言っておばば様からすえてもらう
んです。その後、しばらく間があって…四年生か五年生の頃またすえら
れて…六年生か中学一年の頃にもう一回、都合三回は最低でもすえられ
るんです」
 「そんなに…ですか?」
 「いえ、お転婆さんなんか、その倍も、三倍もすえられますよ」
 「へえ~」
 「すえられるたびに灸痕がだんだん大きくなりますからね、五回六回
とすえられる子は目立つお尻は免除してもらってお臍の下とお股の中が
中心になるんです。お臍の下はその後毛が生えて隠れますし、お股の中
は心を許した人以外には見せないでしょうから…」
 「なるほど…」
 「私の子供時代ですら、おばば様が『戦後は回数が減った』と言って
いましたから、今はもっと減ってるかもしれません」
 「…………」
 河村氏が無言で頷く。すると、女王様が…
 「この子の前は五年生の時、脱走の罪でお仕置きされたんです。です
からお灸はちょうど一年ぶりぐらいですわ」
 「脱走?そんなことできるんですか?」
 「できませんわ。ここは入る事も出る事も刑務所並に難しいんです。
中の秘密を絶対に外へ漏らしてはいけませんから……でも、産みの母に
会いたいという衝動を抑えきることはできませんから時々そんな事故が
起こるんです」
 「産みの母とはもう生涯会えないんですか?」
 「この子たちが18歳になるまでは原則面会も禁止しています。里心
がつくとこちらも困りますから……」
 「18歳以降は?」
 「実は東京に私書箱があって、半年ごとに近況を伝える報告書と共に
子供の映像を収めたDVDを入れておきますから子供に未練がある親は
必ず受取に来ます。それを見れば18歳以降の居場所もわかるはずで、
会えた後は本人次第というわけです」
 「合沢さんは、どうされたんですか?産みのお母さんには会われたん
ですか?」
 「ええ、会いましたけど…結局、一緒に住むことはありませんでした」
 「そりゃまたどうして?」
 「血の繋がりは関係ありません。私にとっての母親は高橋というここ
で暮らすシスターあがりの先生だけなんです。もっと言うと、この亀山
の地そのものが私の母なんだと思ってます。……いえ、ここに住んでる
時は、正直お仕置きばかりで地獄のような処だって思ってましたけど、
世間を歩くうち、ここが本当の楽園だったんだって気づいたんですよ。
遅きに失した感はありますけどね」
 「…………」
 私が話す間に真里のお臍の下には七つもの艾がのせられ火がつけられ
ていた。
 彼女は必死に顔をしかめ、身体をよじってその熱さから逃れようとし
ていたが、叶わぬまま艾が燃え尽きてしまう。
 荒い息と嗚咽のなか、彼女がこんな野蛮な行為に感謝することなどあ
り得ないだろうが、その内心は別にして身繕いを終えた真里は私たちの
前に正座して…
 「お仕置き、ありがとうございました」
 と両手を畳につけて挨拶するのだった。

第 7 話

< 第 7 話 >
 真里への儀式が終わったあと、一週間ほど過ぎてから私は河村さんに
頼まれて一緒に図書館を案内することになった。もちろんそんな仕事は
他に誰でもできそうなものだが、巷での面識がある私の方が心強いのか
私を指名してきたのだった。
 「どうですか、その後、真里ちゃんとは?」
 「ええ、私の方は順調です。最初、パジャマを用意したんですが先生
から止められたんでしょうね次の日からは着なくなりました。それでも
いきなり親しみの湧かない男の隣に裸で寝るのは可哀想だと思い。タオ
ルケットを捲いて寝るようにしたんです。でも、それもNGだったらし
く、三日目はついに私の隣で裸で寝てくれました。そして四日目、恐る
恐る抱いてみると抵抗らしい抵抗は何もしませんでしたが震えてました
からね、『寒いのか?』って言ったら笑ってました。以降は他の子と同じ
です。今日の出来事をあれやこれや聞いて、これからやりたいことや夢
なんかを聞いて…私は想いで話しをして…幼い子には絵本を読んでやっ
たりします」
 「いい、お父様ですね」
 「いえ、自分の子供たちにはこんなこと、したことありませんでした。
当時は忙しかったもんでね。なかなか子供の相手はしてやれなくて……
娘とも一緒に風呂に入れたのは、たしか幼稚園まででしたよ。以後は、
一緒にお風呂に入ろうなんて言おうものなら変態扱いですからね。でも
ここでは15の子でも一緒にお風呂なんですね」
 「それが子供たちの仕事なんですよ。私たちはお父様に可愛がられる
ように動きますし、そうなるようにママや先生方から訓練され続けるん
です」
 「どうりで……ここの子供たちはなんて無垢で純粋でよく躾られてて
なんて子供らしい子供なんだろうって思ってましたけど、あれは私たち
を喜ばせるお芝居だったんですね」
 「いえ、純粋なお芝居じゃありませんよ。義務感をもってお父様たち
とは接っしますが、心にもないことをしてるってわけじゃないんです。
子供ですからね、抱かれれば素直に嬉しいし、お風呂で身体を洗っても
らうのも、同じお布団のなかで身体を撫でてもらうのも、それはそれで
楽しいことなんです」
 「でも、それって子供たちには辛いことを強いてるじゃありませんか」
 「確かに大人たちの期待に応えることができないとお仕置きお仕置き
で追いまくられますからその点は辛いですけど、ただお父様はお仕置き
なんてしませんからね、お父様との関係で辛いと思ったことはありませ
んよ」
 「でも、先週は真里にわたし……」
 「あれは例外中の例外ですよ。その代わり、慣れるまでは真里を毎晩
抱き続けてくださいって言われたでしょう」
 「ええ、……でも、うまくいってますよ」
 「女王様はそうなることを見越して河村さんお願いしたんだと思いま
す。ご自分でお灸をすえてその責任をとっていただく」
 「せ、責任ですか……」
 「いえ、そう堅苦しく考える必要はありませんよ。慣れるまで真里を
毎晩抱いてやればいいんです。普段、夜とぎの子供は日替わりでしょう
けど、真里だけは特別に毎晩抱いてくださいということなんですから」
 「なるほどそういうことなんですか」
 「相手は子供ですからね。大人のようには割り切れない子もいるわけ
です」
 「そりゃそうでしょうね。かたや物心ついた時から抱かれ続けた親、
こちらはいきなり現れたおじさん。こりゃ勝負になりませんよ」
 「でも、そんなことも想定して躾ているので大半は大丈夫なんですが
……」
 「だから、例外中の例外ってわけですか」
 「今夜あたり、あの子のお股の中に手を入れてみてごらんなさい」
 「えっ、そんなこと」
 「大丈夫ですよ。といってあまり卑猥な動きをされても困りますけど、
触れたという程度なら問題はありません。……私なんて男でしたけど、
お母様から毎晩のようにオチンチンを触られ、キスされ、ありとあらゆ
る処を濃厚なスキンシップで責められましたけど、別に不快と感じた事
なんてありませんでした。いえ僕だけじゃありませんよ。亀山で育った
子はどの子も大人のスキンシップを楽しい遊びとして躾られてますから
ね、少々のことでは驚かないんです」
 「真里のような思春期の子でも…ですか」
 「はい、そのあたりは巷の子供たちとは感性が違うはずです」
 「…………」
 河村氏は口を閉じてしまったが、後日、この事で礼を言われた。恐ら
くそんな子供がいるなんて彼には信じられなかったんだろう。しかし、
亀山とはそんな処だ。だからこそ、資産家が金を使いわざわざ移住まで
して子供の世話をする不思議な場所なのだ。
 雑談するうち目的地に着いた。そこは子供が立ち入ることのできない
大人たち専用の図書館だ。
 「ここって、学校ですよね?勝手に入って大丈夫なんですか?身分証
か何か……」
 「そんなもの必要ありませんよ。ここに限らず亀山はどこでも大半が
出入り自由なんです。そもそも怪しい人はこの山には入れませんから。」
 それは私にとっての常識だから思わず心の中でふいてしまった。
 「…河村さんだって温泉宿の大浴場に入ったことがあるでしょう?」
 「ええ、まあ…」
 「その時、身分証なんか提示して湯船に浸かりますか?」
 「……」
 「ここも同じなんです。お互い同じ常識を共有する者同士の信頼関係
で成り立っているんです。ですから、亀山のゲートをくぐる時は色々と
チェックがありますけど、入ってしまえば、中は自分の常識やモラルの
範囲で自由に行動して構わないんです。でなければ年頃の娘を素っ裸に
して公園の枷に繋ぎ止めとくなんてことができるわけないじゃないです
か。逆に言うと、そんなことができる処だからこそここは楽園なんです」
 「なるほど……だから外国人には門戸を開いていないのか」」
 「さあ、こちらです」
 講堂の中二階まで一旦上がってその奥にある目立たない扉を開ける。
 小さな踊り場の先に石造りの階段があって、螺旋状に地下へと降りて
いけるようになっている。その階段は鍵のかかった厚い木の扉で行き止
まり。だが脇にあいた小窓に部屋の鍵を置くと用務員のおじさんが扉を
開けてくれる手はずになっていた。
 「どうぞ、河村様、合沢様」
 作業服姿の用務員さんは厚い木の扉を開き丁重に二人を招き入れる。
入ると応接セットといった感じのソファとテーブルがあってバーカウン
ターも備わっている。広さも五六人がちょうど心地よいという程度だ。
 「酒も飲めるんですか?」
 「ええ、固いことは言いませんが、ドアを出れば学校ですからそこは
ご理解ください」
 「なるほど、生活のすべての面で私の良識が試されるというわけだ」
 「亀山への入場を許されている人はすでにその資質が高く評価されて
いる方ばかりですから堅苦しく考える必要はありませんが、多くの人の
美学に反するようなら問題となることもあります。ただ、ここについて
言うなら、多少の醜態は大目に見てもらえます。夜まで待って外に出れ
ばいいんですから」
 「なるほど」
 二人の会話に先ほどの用務員さんが顔を出す。
 「ご予約がございませんでしたのでこのような姿で失礼いたします。
お飲物は?」
 「ドライマティーニ」
 「ぼくはスクリュードライバーで」
 「承知しました。こちらが本日のメニューでございます」
 そう言って置いていった厚手の表紙の薄い本。
 「メニューですか」
 河村氏はそう言って手に取った。どうやらそれが本当にメニューだと
思って中を開いたようだった。
 「…………」
 驚きの表情が楽しい。
 中にはずらりと昨日今日起こった事件が……
 「なるほど」
 事のあらましまで記(しる)したお仕置きの記録がそこには写真付き
で載せてあった。
 「お気に入りのものがあれば取り寄せることができますよ」
 私は自分に渡されたメニューを見ながら河村氏に勧める。
 メニューはあくまでサンプル。学校のお仕置きは必ず動く絵となって
残っていたのだ。
 「どれもいいですね。迷ってしまいます。でも、これ全部というわけ
にはいかないんでしょう」
 「もちろん可能ですが、一皿3万円ですけど、よろしいですか?」
 「ということはこれ五本で15万円か……」河村氏はしばし笑ってい
たが、「いいでしょう。でも、ビデオは持ち帰れるんでしょう?」という
ので、その説明をしようとしたら用務員さんがドライマティーニとスク
リュードライバーを銀盆の上に乗せて現れた。
 「残念ながら旦那様、それはここでしか見ることができないんです。
ただ一旦お買いあげになられたものはここに来ていただければいつでも
無料でご覧になれますが……」
 「持ち出しはできないのか」河村氏は苦笑したが、それはあきらめた
ということではなかった。
 「分かりました。五本とも買い取りますよ。正直、私はこういう事が
嫌いではないものですから……」
 「それはようございました」
 用務員さんはメニューを下げようとしたが…
 「おう、これは失礼いたしました。今日のメニューには由香里お嬢様
のが含まれております。たしか、由香里様は河村様の……」
 「ああ、そうだよ。だからこそそれを一番始めに見てみたいと思って
たんだ」
 「でしたら、これに代金は発生しません。親御さんがご自分の娘さん
の折檻をご覧になるのは当たり前のことですから」
 「そうか……」河村氏の笑い皺がさらに深くなった。
 「ところで、もっと古いものもあるのかね。例えば、ここの合沢先生
がここにいらした頃のものとか……」
 「ええ、ございますけど、当時は8ミリか16ミリフィルムでしたの
であまり画質がよろしくございませんが……」
 「かまわないよ。探してみてくれないか。……ね、合沢先生」
 河村氏が悪戯っぽく笑う。
 「…………仕方ありませんね。本当はあまりお見せしたくないんです
が、拒否する権限もありませんから……ま、よろしいでしょう。来月、
一万円振り込まれますから、それで寝酒でも買います」
 「ん、どういうこと?」
 「ここで先生が支払われたお金はそのフィルムに映っている子の口座
に振り込まれる仕組みになってるんです。現役の子は手数料なしの3万
円、大学卒業前の子は手数料1万円を引いて2万円、私のような社会人
だと2万円が手数料で1万円が振り込まれるというわけです」
 「なるほど育英資金になってるわけか。ささやかだけど何もないより
ましだ」
 「これだけじゃないんですよ。みんな楽器を習ってるでしょう」
 「ああ、みんな上手なんで驚いてる」
 「その演奏会が年に10回くらい開かれるんですが、そこでのギャラ
ンティーなんかも個人口座に振り込まれるんです」
 「へえ~~じゃあみんなプロなんだ。どうりでうまいはずだ。でも、
そのレッスン料なんかは?」
 「もちろんお父様が払います。それに演奏会といっても多くがお父様
とコネクションのある会社で開かれるものでマッチポンプみたいな催し
ものも少なくありませんから子供たちが純粋にお金を稼いだとは言えな
いかもしれませんが……」
 「つまり、はじめから我が子にお金を渡す目的で自分で演奏会を開く
ってことだ」
 「ええ」
 恥ずかしそうに答えると…
 「でも、いいじゃないか。それだけ愛されてるって事だもん。いや、
実をいうとね。世間色々うるさい事を言う人がいるから、ひょっとして
もっとうさんくさい処なんじゃないかって心配してたんだ。でも、今の
君の話を聞いて安心したよ。ここのお父様たちは本当に子供好きで子供
を愛しているってわかったから……」
 「本当は直接お金を渡した方が安上がりなんだけど、それじゃあ子供
のためにならないからって……」
 「そうでしょうね、分かりますよ」
 「女王様やお父様達が知恵を出し合って成人になるまでにいくらかで
もお金を残してやろうというので色んな催し物に引っ張られるんです。
でも世間を知らない子供たちはそんな大人の愛情なんかも分かりません
からね。『孤児だからってこき使うなよな。僕たちだって遊びたいんだ
ぞ!』って影で言ってました」
 「親の心子知らずですね」
 「貯金通帳は一応見せられるんで、お金が貯まっていく様子は分かる
んですが、どのみち数字だけで使えませんから実感が湧かないんです」
 「どのくらいになるんですか?」
 「人によってそれぞれでしょうけど……僕の場合は一番多い時で……
三千万円くらいじゃなかったかなあ」
 「三千万ですか。そんなに……」
 「僕は男の子でしたし、それにめちゃくちゃに弾いたピアノ曲がレコ
ードになってちょっぴり売れたりしたもんだから……」
 「男の子の方が稼ぐんですか?」
 「社会人になった時の支度金として稼がせてくれるんですよ。女の子
の場合、お嫁入りの相手も結婚資金もお父様が出すケースが多いもんで
すから、手元資金はそんなにいらないんです。もし、結婚生活がうまく
いかなくてもここへ戻って先生をやるって方法もありますし……でも、
そう言うと彼女たち怒ります。そんな考えが女性の自立を妨げてるって
ね」
 「ねえ先生、そんな音楽の才能がおありだったら、先生はなぜそちら
の道には進まれなかったんですか?」
 「そちらって音楽ですか?」
 「作曲がお得意とか……さっき言われてましたでしょう……」
 「ああ、あれですか。あれは、一応、五線紙に音符は書きましたけど、
当時の音楽の先生がよりよく手直ししてくれたから完成できたんです。
僕の力だけじゃないんです。それに完成したそのレコードを売ってくだ
さったのも天野お父様なんですから僕の誇れるものは何もないんですよ。
とにかく、お父様も女王様も私たちの口座にお金が振り込まれるように
色んな仕組みを考えてくださってるんです。これだけじゃありませんよ。
これなんかその一部です」
 「そうか、そう聞いては五本では足りないな。百本くらい買ってあげ
ないと……」
 「それは豪勢ですね。でも無理なさらなくてもいいですよ。ここには
それこそ膨大な量の映像が眠っていますから。暇をみつけていらっしゃ
って、興味を引く物があれば、ぼちぼちお買い上げくだされば、それで
いいんですから。ドライマティーニはこちらによろしいですか」
 用務員さんがいつの間にか蝶ネクタイ姿になってカクテルを運んでく
る。
 「ねえ、このビデオを本人と楽しむというのは悪趣味だろうか」
 「構いませんよ。合沢様がご承知なら…」
 「いや、今の子供たちとですよ」
 「それはちょっと……先生がお仕置きの一つとしてそうしたことなさ
ることはありますけど、いずれにしてもここへは子供を呼べませんから」
 「あっそうか、肝心なことを忘れてた」
 「スクリュードライバーをお持ちしました」
 「ありがとう」私は用務員さんからカクテルを受け取ると河村さんに
助言する。
 「簡単なことですよ。その子のお父様と仲良しになればいいんです」
 「なるほど、その手があったか」
 このあと、河村氏は太古の昔に撮られた私のお仕置きフィルムを探し
出すと、楽しそうにその当時の様子を質問してくるのだが、私としては
いくら過去のことでも恥ずかしい思いでにつき合わされるのは苦痛で、
適当に調子をあわせることになる。
 ただ、……
 『おれ、こんな顔をしてお灸をが我慢してたのか』
 『あの美少女、大きくなってからはいつも凛としていて近寄りがたか
ったのに、こんな事して泣き叫んでた時もあったんだなあ』
 『あっ、高橋先生、若い!』
 『あっ、これ覚えてるよ。クラスの子全員素っ裸にされて校庭を三周
走らされた時のやつだ』
  などという発見もあったので決して無意味ではなかったのだが……。

第 8 話

< 第 8 話 >
 また数日して河村氏が私を誘ってきた。出会った時『一ヶ月ほど滞在
したいが宿泊費が心配だ』などと言ってしまったため、彼が私のホテル
代を一月分前払いしてしまったのだ。そのためこちらもつき合わざるえ
なくなっていた。
 場所は河村氏の邸宅。中庭にいるというのでそちらに回ってみると、
一見ワイルドに見えるイギリス庭園風の芝の上で彼は籐椅子に寝そべっ
ていた。
 庭の奥には小さな滝と泉がしつらえられていて、滝の水は若い女性が
肩に担いだ壺の中から流れ落ちている。そして、その泉のほとりでは、
小学四年生になった楓ちゃんがママにお尻を洗ってもらっていた。
 「どうですか、ここでの暮らしは?」
 「どうもこうもない。最初こそ不安だったが、今となってはどうして
もっと早く移住しなかったのかと悔やまれるくらいだ」
 「では順調なんですね」
 「順調すぎて怖いくらいだ。真里も今ではすっかりうちの娘だ。先生
は『もうそろそろこちらで引き取ります』なんていってるが、僕の方が
離れがたくなってる」
 「いえ、手放しても当番の日にはまた添い寝できますよ。一週間か、
10日のうちには……」
 「そんなことはわかってるよ。でも、その辛抱すら効かないんだ。私
自身、自分がこんなにも分別のない人間だったのかと思うほどでね。…
…何度も何度も、『こんな小娘に…』って思うよ。でも愛おしくて仕方が
ないんだ。君たちはいったい幼い頃からどんな躾を受けて育ってるんだ」
 「どんなっていわれましても、他を知りませんから……とにかく私達
の目標はお父様に可愛がられること、愛されることだって口を酸っぱく
して教えられるんです。器楽の演奏もバレイも古典詩の暗唱も…およそ
学校で教わるものはすべてお父様に恥をかかせないために一生懸命やら
なきゃいけない。そんな感じでした」
 「なるほど、わかるような気がするよ。真里もね、最近になって……
……」河村氏はそこまで言うと思いだし笑いで一度吹き出してから言葉
を続ける。
 「寝床で、『おいた』までするようになってね」
 「『おいた』ですか……ひょっとしてそれ、添い寝の時に乳首を舐めら
れたとか……」
 「そう、それ……驚いたよ。女性ならいざ知らず男の小さな乳だから
……どうして?ってこっちは戸惑ってるんだが、向こうは無邪気に笑っ
てるからね」
 「それは亀山では親に対して親愛の情を示す表現なんです。お父様に
抱かれた時は自分の気持ちを無にして甘えなさいって先生にはよく言わ
れますけど、どうしていいか分からない時によくやるんです。私なんか
お母様でしたから本当に赤ちゃんです。でも幸いにしてここに移住する
人でこれが嫌いという人はまずいませんから……おいたと言ってもこの
おいたはお仕置き覚悟でやってるわけじゃないんです」
 「やっぱり、僕のためにやってくれてたんだね」
 「お嫌いですか?」
 「お好きです」
 河村氏は破顔一笑。青空に顔を向けて高笑いだった。
 「もし、そんなに仲良くなれたんなら、本当にもう先生に任せた方が
いいです。他の子の手前というのもありますから。ここにいる子たちは
みんな孤児で、しかも女の子でしょう、みんな平等に扱ってやらないと
臍を曲げちゃうんですよ」
 「ええ、分かってます。先生にもそこの処は注意されましたから……」
河村氏はしばらく間をおいてからこう続ける。「………時に、合沢さん。
これはできないなら聞き流して欲しいんだが……」
 「何ですか、あらたまって?」
 「この間あなたと図書館に行ったでしょう。あれから、私、あそこに
独りで通ううちに真里をお仕置きしてみたくなりましてね。もちろん、
自分の手で子供をお仕置きできないのは知っています。でも、ああした
映像ではなくライブでお仕置きの様子を見れないものかと思ってるんで
すよ……」
 「自宅ではなく学校でのお仕置きを見たいという事ですよね」
 「自宅では先生方が色々配慮してくださるし公園ではベンチの老婦人
にチップをわたせば面白いものも見せてもらえるんだが……」
 「学校は教育現場ですからね……もし、今すぐどうしてもということ
なら『できません』とお答えするしかありませんね。たしかに、ここは
お仕置きの多い街です。でも、何の落ち度もない子供を折檻すれば先生
との人間関係に悪影響を及ぼしますし、子供の発育にとっても有害です
から……」
 と、ここで河村氏は私の言葉を遮った。
 「わかっています。その説明は何度も受けましたから。ここは孤児院
であって、巷の売春宿や風俗店ではないとおっしゃりたいんでしょう。
承知してますよ。ただ、真里が本当に何か悪さをした時、私がその場に
立ち会えないものかと思いましてね……親として」
 「そういうことですか。それなら可能ですよ。……毎回お仕置き部屋
に乗り込んで行くというのはちょっと無理でしょうが、マジックミラー
越しでよろしければ真里ちゃんがお仕置き部屋へ行くたび倉田先生から
連絡してもらえるはずです」
 「そんな制度があるんですか」
 河村氏の顔に赤みがさした。正直な驚きと笑顔がなぜか嬉しい。
 自分もお仕置きされて育った身なのだが、大人になると不思議なもの
で『子供のお仕置き反対』とはならない。自分もそれで散々苦労したく
せに今度は今の子供たちがお仕置きされてる姿が見たくて仕方がない。
それも品も教養もないスラムの子ではなく自分と同程度の環境で育った
子の泣き顔にひかれるというのだから人間立場が変われば得手勝手なも
のだ。
 しかし、ここは私のような身勝手者の欲求を満たしてくれる場所とし
て作られているのだから、その為の準備は怠りなかった。
 「そのことは説明されてないんですか?」
 「ええ」
 「今の制度は知りませんが、おそらく今でもそうした配慮はしてくれ
るんじゃないかと思いますよ。それに誰でもよければ教室の中二階でも
一日何回かは子供のお仕置きは見ることができます」
 「ええ、それは利用させてもらっています。中庭でのストリップも…」
 「そうですか、お仕置き部屋に連れ込まれるその先が見たいという訳
ですか。でも、あそこの目的はあくまで感化や躾、訓戒といったもので
すからね、脅しただけで終わりというケースもあります。あまり過激な
ものは期待なさらない方がいいかもしれませんよ」
 「どのくらいの頻度でそのお仕置き部屋へは呼び出されるものなんで
しょうか?」
 「その子の性格にもよりますけど週に二三回というのが一般的でしょ
うかね」
 「そんなに……」
 「いえ、だから毎度毎度厳しいお仕置きがそこで展開されるわけじゃ
ないんですよ。厳しい罰になったとしてもせいぜいそこで行われるのは
トォーズでのお尻叩きくらいです。跳び箱みたいな処に俯せに寝かされ
てお尻を叩かれるんです。…親御さんが見学なさってる時は両足を広げ
させます。……ですからね、ある程度の歳になると、先生に『両足を広
げなさい』って言われただけで『あっ、お父様が見に来てるんだ』って
わかったものなんですよ」 
 「なるほど、それじゃ部屋に入って見てても同じですね」
 「いえ、それでも直に見られてるのとはショックが違いますよ。……
ああ、あと、一学期のうちには二回か三回。お転婆な子なら月に二三回、
お父様の前でのお仕置きというのがあります。これはお尻叩きだけじゃ
なくお灸もお浣腸もしますからね、子供としてはお父様に見られながら
という事もあってもの凄くショックです。その代わり、終わったあとは
数日お父様と添い寝ができますからね。女の子の中にはわざとお仕置き
される子だっているくらいなんです」
 「まさか、そんな馬鹿な……」
 「いえ、本当ですよ。生き証人の私が言うんだから間違いありません」
 「でも、逆に『よい子でいよう、お仕置きされないように注意しよう』
と思ってる子は大人になるまでずうっと私の前でのお仕置きがなかった
ってことになるんじゃありませんか」
 「そう思うでしょう。ところが、子どもが一度も罪を犯さず一学期を
乗り切るなんて事ありませんから。回数はもちろんお転婆さんたちより
減りますけどね、一学期に一二度はそんなの子もお父様の前で恥をかく
ように仕組まれてるんです。そして、そういう良い子というのは、一旦
お仕置きとなると慣れていませんからね、色々と粗相もしがちで、より
罰が重くなってひーひー言わされることが多いです」
 「でも、それじゃあ、その子があまりに可哀想じゃありませんか?…
…そんなことして性格が歪んだりしませんかね」
 「たしかに……私も子供の頃、そんなタイプの子が好きで、その子が
お仕置きされた時は随分心配したんですが、その後の様子を見てると、
そうでもないみたいなんです。むしろそれまでより明るくなりました」
 「まさか……それは、悟られまいとしてわざと明るく振る舞ってたん
じゃないですか?」
 「いえ、違うんです。わざとそうしてるんじゃなくて本心からほっと
してたみたいなんです」
 「信じられないなあ。どうしてですか?そんな嫌なことされてるのに」
 「彼女が私にこう言ったんです。『女の子は、何をされたかが問題なん
じゃないの、誰にされたかが問題なの』ってね」
 「誰にって……それは自分の面倒を見てくれてる先生の事ですか」
 「確かにママがお仕置きの実行犯ですけど、そうじゃありませんよ。
ママはママ。確かに人生の先輩で先生ですけど、同性じゃないですか」
 「というと、お父様ですか?……ま、まさか、孫ほども歳が違うんで
すよ。そんなおじいちゃんを……」
 「でも、優しいでしょう。滅多に自分にお仕置きなんて仕掛けないし、
何でも買ってもらえる。そして、他に比べるものがないからですけど、
異性じゃないですか。憧れをもったとしても不思議じゃありませんよ」
 「でもねえ……」
 「女の子たちはそのほとんどが本心からお父様に可愛がられたいと思
ってるんです」
 「ほんとうですか?」
 河村氏は懐疑的な笑顔で僕を見つめる。でも、本当なら嬉しい。そん
な顔でもある。
 「その子も、他の子がみんなお仕置きの後、お父様にそれまで以上に
可愛がられている事実を見聞きするにつけ疎外感を感じるようになった
みたいなんです」
 「でも、痛い目にあって、大恥かいてでしょう。信じられないなあ。
それとも私が男性だから分からないのかなあ」
 河村氏は自問自答するように苦笑した。
 「いえ、そういう事だと思いますよ。男性には女性の気持ちが、女性
には男性の気持ちがよく分からない。子供だって同じです。特に女の子
は自分に強いコンプレックスをもってますからね。それを癒すために、
何事によらず徹底的に平等に扱ってもらわないと納得しないんです」
 「ええ、そんなことを女王様にも言われたのできる限り平等に扱って
るつもりなんですけどね。プレゼントなんかも同じ歳格好の子には喧嘩
にならないように同じような物をプレゼントするようしていますから」
 「そんな、ぬいぐるみやドレスなんかと同じように、自分に対するお
仕置きも平等の中に含まれるんです。……男には理解しにくいのですが、
彼女たち、とにかく仲間はずれにだけはなりたくないみたいなんですよ」
 「…………」
 河村氏は苦笑いをしながら首を振るが、私もこれには私なりの確信が
あった。私は彼女たちの中に混じって生きてきたからだ。
 当たり前のことだが、お仕置きは女の子にとっても苦痛だ。年齢が上
がれば恥ずかしさも加わって、やがてそちらが主体になってくる。特に
厳しいお仕置きが終わった直後は放心状態で魂の抜け殻みたいなってし
まうものなのだが、その抜け殻をここでは放っておいてくれなかった。
先生やママ、お父様たちがよってたかって抱いてくれるのだ。
 『放っておいてやればいいのに』
 なんてよく思ったものだが、前にも述べたようにが亀山では子供の方
から『抱かれたくありません』は言えなかったから仕方がなかった。
 もちろんこれは女の子たちにも悪評で、口を揃えて……
 「放っておいてくれればいいのに……まるで赤ん坊みたいに抱くのよ、
感じ悪いったらないわ…後で抱くくらいならぶたなきゃいいじゃないの」
 なんてなことを言っては友だち同士では盛り上がっている。
 だから当初は『男の子も女の子も気持は同じなんだ』と思っていた。
しかし、それはあくまで彼女たちのたてまえであって本心ではなかった
のである。
 子供たちは、厳しいお仕置きを受けた夜はその日が当番でなくても、
お父様とベッドを共にしなければならない。素っ裸の娘が血の繋がりの
ないで大人と一緒に一晩過ごすのだから何かあっても不思議じゃないと
思う人もいるだろうが、そんなことぐらいで野獣と化すような人は、こ
の亀山ではいくらお金があってもお父様にはなれない。
 いや、問題は子どもの方で、女の子たちはこんな時、ママやお父様に
抱かれるだけで、友だちにも言えないある種複雑な満足感が心に生じる
のを期待していたのだ。
 それを、普段はお仕置きされることを良しとしない『よい子』たちも
女の嗅覚として感じ取っているからこそ、彼女たちもお仕置きに憧れる
ようになる。
 ただ、彼女たちの場合、お仕置きに興味はあるものの自ら進んで罪を
犯す勇気などない子がほとんどだから、先生り方が頃合いを見計らって
アシストしてあげるのだった。
 『お仕置きと愛撫』
 これを聞いて「ん?」と思われた方も多いだろう。そう、マゾヒティ
クな快感を亀山ではあえて教育や躾の中にそこはかとなく身に備わらせ
ているのだ。
 『女の子はマゾヒティクな満足を得て暮らす方が幸せです。ですから
ここではそのように育てております。そこで結婚相手には少しサディス
テックな殿方が望ましいのですがどなたか心当たりがおありでしょうか』
 私はお父様の一人が女王様に娘にはどんな相手が望ましいかと訪ねら
れた時の答えをようく覚えている。
 実際、亀山の厳しいお仕置きは遠く結婚生活をも見越した教育であり
躾であったのは間違いないだろう。

第9話 ①

<第9話> ①
 河村氏の自宅中庭で楓ちゃんのお仕置きを見ながら雑談してから三日
後、河村氏からまたまたお呼びがかかる。
 倉田先生が今日午後三時から真里をお仕置きするから見学したいなら
お仕置き部屋の裏部屋に来て欲しいと連絡があったというのだ。
 そこで、お仕置き部屋の裏部屋へ案内して欲しいというのだが……
 『そんなのは手近にいた先生にでも聞けば教えてくれるよ』
 と思いながらも出かけていく事になった。
 「ほう、こんな処から入るですか。図書館といいお仕置き部屋といい、
ここは凝ってますね、まるで少年時代の秘密基地のようだ」
 お仕置き部屋は北の角部屋。でも、その裏部屋へ通常入るには礼拝堂
の隅にある懺悔聴聞室の奥の扉を背をかがめて抜け、人一人やっと通れ
る細い廊下を30mほども進んだ先にあるマリア様の像を90度廻さな
ければならない。
 そうやって鍵が外れた引き戸を開けてはじめて入ることができた。
 「なるほど、ここですか」
 河村氏は1m四方もある大きなマジックミラーの窓を感慨深げに眺め
る。見えているのはもちろん隣のお仕置き部屋の風景。大人一人用のソ
ファや病院の診察室にあるような黒革張りのベッド、大きな薬棚にはお
浣腸用のグリセリンやピストン式の硝子製浣腸器、導尿用のカテーテル
や膿盆、オムツだってそんなにいらないだろうと思うほど沢山用意され
ていた。その隣は蒸し器、こいつはいつ来ても必ず湯気を立てていた。
 この他にも壁には普段使わないケインが麗々しくかざってあったり、
壁から突き出た短いベッド。こいつは仰向けに寝かされ両足をバンザイ
させて固定するもので、ここに寝かされると内診台と同じで大事な処は
全て丸見えになるから晒し刑としてよく使われている。
 その他、子供が親や教師に折檻されている場面を描いた油彩が掲げら
れ、幼い子などはこの絵を見ただけでビビっていた。いや、私はビビっ
ていた。
 しかし、それらはむしろ添え物で、使われる頻度は低かった。ここで
圧倒的に用があるのは中央に置かれたお馬ちゃんだったのである。
 こいつは背もたれのないソファに四本の足を足して高くしたようもの
で、用途はもちろんお尻叩き。先生が立った姿勢でトォーズを振り下ろ
すのに丁度いい高さに設定されていたから子供にとっては随分高い処に
乗せられたというかんじがした。
 いずれにしても、かつてここの常連だった者としては笑って眺められ
る景色ではなかった。
 「昔と変わった処がありますか?」
 河村氏の質問にハッと我に返った。
 「いえ、それがおどろくほど昔のままなんで驚きました。ガラス戸の
薬棚や蒸し器なんかも昔のままだと思います。壁に掛けてあるタペスト
リーや絵画なんかは僕の知らないものもありますけど……」
 「あそこに奇妙な棚がありますよね。あれは何か乗せるものなんです
か?」
 「どれですか?……ああ、あれですか。あれはラックなんて呼ばれて
ましたけど、要するに晒し台です。物じゃなく子供を乗せるんですよ。
あの棚に子供を仰向けに寝かせて、両足を上げさせて壁の革ひもで固定
するんです。どんなことになるか、想像がつきますか?」
 「だいたい……要するに女の子なら『ご開帳』ということですよね」
 「そういうことです。男の子はやってもあまり効果がないため滅多に
やられませんでしたけど、女の子の場合はここへ来ても反省の色がない
と判断されればあそこで30分間は反省させられるんです」
 「わっ、そりゃあ大変だ」
 河村さんはそう言ったが、顔は笑っていた。
 「私も一度だけあそこに登ったことがあるんですが、とにかく窮屈で
死にそうでした。女の子と違ってあまり恥ずかしさはなかったんですが、
メントール入りの傷薬をたっぷり感じやすい処に塗られますからね……
もうそれだけで悲鳴なんですよ。女の子の中には少々のお仕置きでは声
を出さない剛の者もいたんですが、さすがにこれだけはその子も悲鳴を
あげてました」
 「よく、幼児虐待だなんて言われませんでしたね」
 「今の基準でならこれに限らずどれも虐待でしょうけど、それを虐待
ではなくお仕置きにしているのは、先生やお父様方の理性あってのこと
なんだと思います。実際、僕も子供の頃に受けたこんなお仕置きの事を
『虐待されて大変でしたね』なんて言われるとあまりいい気持ちはしま
せん。もちろん、お父様方の心の中には純粋な教育的見地に基づかない
欲求があったのは承知していますが、それがあったとして私自身は天野
のお父様に拾われて不幸せだったなんて思ったことはありませんからね」
 「天野のお父様は優しかった?」
 「ええ……ま、私だけじゃありません。ここではお父様が優しくない
と秩序が崩れてしまうんです。私たちにとってお父様というのは最後の
砦ですからね。そこで厳しい目に合うともう行き場がなくなってしまう
ですよ。……精神的に…………孤児というのはどんなに可愛がられても
絶対的な存在を持っていませんから、お父様にはその役割が期待されて
るんですよ」
 「だから、何があっても自らお仕置きしてはいけないというわけか」
 「家庭ではママがお仕置きしてお父様が抱くというのがパターンです。
ただ、ママや先生、それに司祭様なんかがお仕置きを手伝わせてくれる
事があって、その時は子供をお仕置きできます」
 「それで満足できなければ、『どうぞお引き取りを…』ということか」
 「それで満足できそうにない人ははじめからこの地を踏むことはない
んです。そこは女王様が厳しくチェックしますから……」
 「それで、今まで間違いはなかった」
 「ええ、……ま、私が全てを知ってる訳じゃありませんが……」
 「あっ、倉田先生が入ってきましたよ」
 倉田先生は向こう側のドアを開けて入ってくると、我々が覗いている
窓、向こうの部屋からは鏡のある場所を通過、手前の扉から一旦外へと
出た。
 そして、我々がこの部屋に入ってきたのとは反対側にある扉の向こう
からこう言って注意したのである。
 「その部屋は一応防音装置に守られてはいますが、大きな声や物音は
させないようにお願いします」
 「承知しました。本日はありがとうございました」
 河村氏がお礼を言うと……
 「それから、場合によっては真里共々この部屋へお邪魔するかもしれ
ませんので、その時はマリア様の場所まで避難して真里とは会わない様
にお願いします」
 「隣の廊下まで撤退すればいいんですね」
 「はい、その際はマリア様の向きを変えて鍵をかけておいてください」
 「わかりました」
 「では、真里を部屋へ呼びますのでよろしくお願いします」
 先生はこう言ってお仕置き部屋へと戻っていった。
 そして数分後。向こう側のドアがノックされる。
 「倉田真里です」
 「真里ちゃんね、入ってらっしゃい」
 と、ここで先生がステレオのスイッチを入れる。
 流れ始めたのはお世辞にも上手とは言えないショパン。しかも……
 「…………」
 先生の仕掛けたちょっとした悪戯。といっても、嫌な思いをしたのは
真里ちゃんではなかった。
 「ママ~~」
 真里ちゃんはドアを閉めるまでは神妙な顔をしていたが、それが終わ
ると、さっそく一人掛け用のソファに飛びついていく。
 お膝に馬乗りになって顔を胸にこすりつける。無論、その顔は満面の
笑みだ。
 「ほらほら、お膝でそんなに跳ねないの。もう、あなたも重くなって
抱っこが大変だわ」
 「ん、けちんぼ……いいじゃないこのくらい」
 「……ところで、あなた、今日はママが呼んだんだっけ……」
 「あっ、そうか」
 真里はそう言われると慌ててママの膝を降りて挨拶する。
 「倉田真里です。倉田先生、お呼びでしょうか」
 急に麗々しい挨拶を始める。私たちの時代もそうだが、ママというの
はあくまで家庭の中だけの呼び名で学校では自分の母親(=と言っても
血の繋がりはないが)といえど何々先生と呼ばなければならなかったの
である。
 とはいえ、相手は子供。僕もそうだったが二人っきりの時はやっぱり
ママ。
 彼女も先生にご挨拶はしたものの、すぐに腰をくねらせて意味ありげ
な笑顔になった。露骨に甘えたいとアピールしているのだった。
 「しょうがないわね、いらっしゃい」
 作戦成功、真里は再びママのお膝をゲットしたのだった。
 「しょうがないわね、こんなに大きくなっちゃって……ママのお膝が
壊れそうだわ」
 「でも、やっぱり赤ちゃんは赤ちゃんなんでしょう?」
 「それはそうだけど……」
 「ねえ、さっきからかかってるピアノ、誰が弾いてるの?」
 「合沢健児って人。ここのOBらしいわ」
 「男の子なの?それにしてもずいぶん下手ね」
 「でも、一年に500曲も作曲して、当時は東京や大阪の発表会では
人気者だったって書かれてたわ」
 「信じられない。こんなに下手くそなピアノしか弾けないのに……」
 「大きな声ださないの。聞こえたらどうするの」
 「聞こえるわけないじゃない。だって、もうここにはいない子なんで
しょう」
 「そりゃあそうだけど……」
 先生は部屋の鏡を見て思わせぶった笑顔を見せる。もう、私は顔が火
照って真っ赤だった。
 「ところで、あなた、ここに呼ばれた訳は知ってるわよね」
 「……う、うん」真里は話題が変わると急に肩を落とした。
 ま、この部屋に呼ばれて誉められることは期待できないが、先生の他
に人がいない処から見てそれほど重大な罪を犯したわけではないはずだ。
もし、ここに司祭様や女王様がいたら、真里だっていきなり抱きつきは
しないはずである。
 あれは四年生の時だったか、ここへ真美ちゃんという女の子と一緒に
呼び出されたんだが、部屋にはいるといきなりおばば様の姿が目に入っ
てしまい、二人とも腰を抜かしそうになったことがあった。僕の方は、
ま、それで済んだんだが、真美ちゃんは恐怖のあまりってことなんだろ
う、部屋に入った処で立ちすくんでしまい、そのままお漏らしをしちゃ
ったことがあった。
 これには大人たちの方が慌てたのを覚えている。当時のお仕置きはそ
れほどまでに怖かったのだが、今はその雰囲気をみているとずいぶんと
子供たちが楽そうにみえる。これも時代の変化なのだろう。

「誰にここへ来なさいって言われたの?」
 倉田先生は真里の耳元で囁く。
 「石川先生、今週は、書き取りの確認テストが一回しか合格してない
から……」
 「漢字の書き取りだけじゃないでしょう。算数の佐々木先生も今週は
合格したのが火曜日と木曜日だけっておっしゃってたわ。月、水、金は
不合格だったでしょう」
 「でも、不合格になった日は居残りさせられて、ちゃんと覚えたよ」
 「それは当たり前の事をしただけじゃない。もし、あなた一人がわか
りませんなんてことになったら、次の単元に授業が進めなくて他のお友
だちにも迷惑がかかるでしょう。自慢になることじゃないわ。だいいち
そのたびに助教師の平林先生にご厄介をかけてるのよ」
 「えっ、それは………う、うん」
 「確認テストは毎日の宿題なの。家で四回は連続して満点とれるまで
繰り返し練習しなきゃいけないことになってるけど、あなた、お父様の
処でちゃんとやってる?」
 「それは……」
 真里は口ごもった。確認テストというのは授業でやった内容が知識と
して定着しているかを確かめるためやるテストで、応用問題はなく出題
される問題もあらかじめ提示されているから、要はそれを暗記してくれ
ばそれでよかった。とりわけ国語の書き取りと算数の計算問題は、毎日、
授業の最初に小テストとして必ず行われるから、そのぶんはみんな否応
なしに勉強せざる得なかった。
 もし、さぼると、今日の真里ちゃんみたいなことになるのだ。
 「そうか」
 と、その時河村氏から思わず声が出た。
 「どうしたんですか?」
 「いやね、先生からは四回続けて全問正解を出すまでやらせてくださ
いって言われてたんだが、今の今まで忘れてたよ。私の方も早く真里が
抱きたくて仕方がないもんだから、彼女が一度でも全問正解を出すと、
ついついお菓子を与えて機嫌をとって、勉強部屋から居間へ連れ戻して
たんだ。いや、真里には悪いことをしたなあ」
 「そうですか、そんな時は自分が家庭教師をかって出ればいいんです
よ。私も経験があります。正直、子供としてはあまり歓迎されないけど、
お互い人間椅子としての心地よさはあります。もちろん、長時間あの子
を膝の上に抱けるなら、ですけれど……」
 「大丈夫、そのためにここへ来たんだ。そのくらいの苦行には耐えて
みせるよ」
 私たちが小さな声で雑談をしている間に、お仕置き部屋の中では一つ
の結論がまとまったようだった。
 「だって、お父様が居間の方へいらっしゃいって言うから……」
 「まだ、お勉強が完全ら終わってないのに?」
 「…………」真里は小さくかむりを縦にした。
 「そんなはずないわ。ママはお父様に四回続けて完全に正答がでる迄
お勉強を続けさせてくださいってお願いしてるもの」
 「だって、お父様は一回でもできると『もういいんじゃないか』って
…………だから、しょうがなくて……」
 「どうして、しょうがないの?『まだ、終わってません』って断れば
いいでしょう」
 「だって、お父様に逆らっちゃいけないって……」
 「逆らってなんかいないでしょう。まだ、終わってないんだから、終
わってませんって言うだけだもの」
 「だって……」
 「これはお父様の問題じゃなくて、あなたの問題なのよ。お父様が、
よしんば『遊びましょ』ってお誘いしたとしても、だからって、宿題を
やってこないでもいいってことにはならないのよ。それとも、お父様は、
あなたに『お勉強をやめて、こちらへ来なさい』っておっしゃったの?
……違うでしょう」
 「…………」
 真里は下唇を噛んだまま。納得したわけではなかったが、子供の身分
ではこんな場合にだって親がそう主張すれば納得するしかなかった。
 「石川先生も佐々木先生もとってもあなたのことを心配なさってたわ」
 「えっ、だって算数は二回合格してるし……」
 「何言ってるの、この一週間は不合格だった日の方が多いじゃないの。
こういうテストはお家でちゃんとやってくれば必ず合格するテストなの。
不合格ってことは、『宿題をちゃんとやって来ませんでした』ということ
でしょう。ママだってお二人の先生方と同じでとっても心配だわ。……
だからこのあたりでね、『がんばれ~~』って励ましてあげた方がいいん
じゃないかと思うんだけど。…………どうかしらね」
 こうママに言われて、真里は傍目からも分かるほど真っ青になった。
もとよりここに呼ばれた段階である程度覚悟はしてきているが、それで
もひょっとして許してもらえるかもしれないと楽観的に考えてしまうの
が子供なのだ。それがあらためて親や教師に面と向かって言われること
で『さあ大変だ!』ということになる。そのあたり子どもというのは、
とっても近視眼的だったのである。
 ちなみに『励ます』というのは亀山独特の隠語で『お尻をぶちます』
という意味。この他にも『我慢を教えてあげます』とか『お腹の悪い虫
を追い出しちゃいましょう』なんて言われたらお浣腸。お灸は『気付け
薬』だし、『ちょっとのぼせちゃったみたいだから、お外の風に当たりま
しょうか』なんて言われたら素っ裸で晒し台送りという具合だ。
 「ゴメンナサイ、来週からはちゃんと合格しますから……」
 弱々しい声で釈明してみたが……
 「そうして頂戴。あなた一人が遅れをとると、クラスみんなに迷惑が
かかりますからね。……でも、今週の分は今週の分でちゃんと精算しな
ければならないわ。それに、あなただって何かきっかけがないと頑張れ
ないでしょう」
 「…………」
 真里は一生懸命首を横にふったが……
 「何?そんな事してもらわなくてもできますって言うの?……無理よ。
ママはあなたのことずっと見てきてるけど、そうやって改心したことな
んて一度もなかったもの」
 「今度は一生懸命やるから…」
 「『今度は、』『今度は、』ってのも何回も聞いたけど、できたためしが
ないじゃない。やっぱりここはピリッと辛いものを食べた方がいいわ。
お尻をぶってもらってその違和感が残ってうちは『ああ、そうだった』
って思い出すでしょうから……」
 「そんなことないよ」
 「そんなことあります。あなたの浮気癖だってそうじゃないの。『新し
いお父様がいやだあ~~』なんてだだをこねて、結局、お股にお灸して
もらったらピタッと修まったじゃないの。あれ、今でも違和感は残って
るでしょう」
 「……」真里は下唇を噛んだまま静かに頷く。
 「ま、一年くらいはほんのちょっぴり感じる程度残るでしょうけど、
それでいいの。また、我が儘が言いたくなったらその火傷の痕があなた
を止めてくれるわ。……いいこと、ここのお父様はどなたに当たっても
大変な人格者ばかりなの。本来なら世間知らずのあなたごときにえり好
みされるような人たちではないのよ。それを河村のお父様は自分が悪者
になることであなたを引き取ってくださったんだから。感謝しなければ
罰(ばち)が当たるわ」
 「…………」
 「女の子というは与えられた場所で花を咲かせるようにできてるの。
あなたにはまだわからないでしょうけど、ここは最高の花壇だわ」
 「……」真里は不承不承という顔だったが小さく頷いてみせる。
 「さあさあ、分かったらさっさとお仕置きも済ましてしまいましょう」
 「えっ、やっぱりやるの……やだあ~~」
 その口振りはママのお説教を納得すれば許されると思っていたのかも
しれない。ところが意に反してママの態度が強硬だったから驚いたのだ。
 真里はそれまでの抱っこから下ろされてママの目の前に立たされる。
そして、膝上丈の短いフレアスカートの裾を何の遠慮もなく跳ね上げる
のだった。
 「…………」
 その跳ね上げられた裾はお腹の辺りにピンで留められ、真綿のような
木綿のショーツがむき出しになってしまったが、そこは女同士、しかも
相手がママなのだからそんなに抵抗もなかった。
 「さあ、ショーツも脱いで……」
 ママは次を指示して蒸し器へと向かう。そこには熱々に蒸し上がった
タオルが数枚入れてあった。
 ママはそれを少し空気に触れさせてさまし始めるが、見ると娘が何だ
かもじもじしているので……
 「どうしたの?早くなさい」
 とせき立ててみるのだが言うことをきかなかった。
 そこで程良い温度までさました蒸しタオルを二枚ほど持って戻ると…
 「さあ、早くなさい」

第9話 ②

<第9話> ②
 そう言って娘のショーツに手を掛けたが、真里の方がその手を押さえ
て抵抗するのである。
 「どうしたの?」
 あらためてママが尋ねると…
 「だって……」
 彼女はこちらへと視線を向ける。
 どうやらここに誰かいると感じているらしかった。亀山はその性格上
子供たちには知らされていない秘密が沢山ある街なのだが、私の時代で
さえ、お仕置き部屋の鏡はマジックミラーになっているというのが定説
になっていた。
 当然、真里としても心穏やかではないのだろう。
 ただ、そうは言ってもママがおいそれとそんなことを認めるわけには
いかなかった。
 「どうしたの?その鏡になにかあるの?」
 「だって、それってマジックミラーなんでしょう」
 「そうよ、昔はお父様や司祭様が娘のお仕置きを確認するために使っ
てたの。でも、今は部屋を閉鎖しちゃったから誰も覗けないはずよ」
 「ほんと?」
 「ほんとよ。行ってみる?」
 こう言われたらそりゃあ確認するでしょうから……
 「うん」
 真里は頷いてさっそくスカートのピンを取り始めます。
 すると、その隙に倉田先生は鏡の前へやって来て入口の方へ目配せし
ます。『一旦待避』の指示でした。
 そこで河合氏はさっそく私たちが入ってきた入口へと向かったのです。
そして早々マリア様の像を動かして鍵を下ろそうとしますから…
 「大丈夫ですよ。すぐにここへは入れませんから、それよりもう少し
ドアを開けておかないとタバコの煙が……」
 「あっ、そうか、まずかったなあ」
 河合氏は慌てて煙りを外に出そうとするが、何しろ換気の悪い部屋の
ため思うにまかせない。それでも、真里がこの部屋へ押し入るまでには
相当の時間がかかった。
 というのも、向こう側はドアの前に椅子や机が積み上げられていて、
まずはそれをどかさなければならないのだ。おまけに鍵が三つも掛かり
引き戸もスルスルと開けられる状態ではなかった。
 私たちは先生が鍵を開け始めたところで退散したがそれまででもゆう
に10分は経過していた。
 「ほら、これで満足したかしら?」
 倉田先生は立て付けの悪いドアを押し開けると、してやったりとでも
言わんばかりに言い放ったが、真里は疑い深い眼差しで部屋のあちこち
を嗅ぎ回っている様子だ。
 「もう、いい加減になさい。一目見れば誰もいないのはわかるでしょ
うが」
 「うん、……」でも、ママ、この部屋ただ、
 こちら側のドアは隠し扉で見た目は板壁にした見えないうえにしっか
り施錠されているから子供の眼力で見抜くのは難しかった。
 『そうか、こんな仕掛けになってたのか』
 私は過ぎ去りし日に先生とここを訪れた日の事を思い出していた。
 真里もこれで私とまったく同じ経験をするこになるのだ。
 「ねえ、ママ、この部屋、タバコの匂いがしない?」
 真里はするどい嗅覚でタバコの匂いを嗅ぎだしたが……
 「どうして?」ママは一応鼻を動かしてはみるのだが……
 「いいえ、あなたの気のせいよ」
 と、一蹴されてしまう。
 「さあ、気がすんだら帰るわよ」
 結局、何の発見もないまま真里は先生と裏部屋をあとにした。
 戸を閉めて鍵が掛けられ、以前のように椅子や机をドアの前で積み上
げている様子に聞き耳を立てながら、頃合いを見計らって私たち裏部屋
へと戻ってみる。
 再び、マジックミラーを覗いてみると、真里がすでに下半身をすっぽ
んぽんにされているところだった。
 新たな蒸しタオルが用意され、真里はそれにお股とお尻を任せる。
 亀山での正式なお仕置きの作法では、鞭打ちの時はお股とお尻をママ
や先生から綺麗に拭いてもらうのが慣例になっていた。
 ま、小さい頃ならまだしも大きくなってからは誰も見てないとはいえ
これって結構恥ずかしかったのを覚えている。
 これが終わると、お馬さんと呼ばれる鞭打ち台に自らしがみつかなけ
ればならない。このお馬ちゃん、クッションが効いてるから抱き心地は
申し分ないのだが、結構高いので小さい体には怖かったのを覚えている。
 男の子はパンツも半ズボンも脱がされて下半身はすっぽんぽんだが、
女の子はスカートは捲られて安全ピンで留められている。どちらも同じ
ような哀れな姿だが、女の子にはさらに加えて試練があった。
 「はい、口を開けて」
 ママの指示で真里が口を開くと、そこにねじ込まれたのは今の今まで
自分が穿いていたショーツだったのである。
 「さあ、いくわよ。よう~~く反省してね」
 先生はそう言うと使い込んだトォーズを真里のお尻に添わせるが……
最初はそれだけ。すぐには一発目を振り下ろさない。
 その代わりに、ピタピタとトォーズの革の感触をお尻全体に覚えさせ
ながら、同時にたっぷりとアルコールを浸した脱脂綿でお尻の隅々まで
をしっかり拭き上げるのである。お尻の穴も、女の子は性器も……
 私もああしてやられた一人だが、子供は体温が高いためにアルコール
のひんやり感が余計に強烈で、これからぶたれる革の感触と共にお尻を
なで回されると発狂したいほどの恐怖感だった。
 「えっ、発狂したいほどって、そりゃあいくら何でもオーバーですよ。
だって、そんな辛いことをしてるようには見えないけどなあ」
 私が思い出話をすると、河村氏が冷ややかなので、つい…
 「あれをやられたことのないあなたに何が分かるんですか!あなたも
あの子と同じ頃にこれをやられてみれば、それがどんなに恐ろしいか、
分かりますよ」
 私は河村氏を睨みつけてしまった。亀山のお仕置きは過激な事をして
いるように思われがちだが、お灸を除くとその主体は精神的なもので、
いかに身体を痛めずにお仕置きの効果をあげるかを追求しいる。これも
そんな長年の経験から割り出された一つなのだ。
 亀山では、このくらいの年齢の子にはこれが、こんな性格の子にはこ
れが、今の精神状態ならこの方が、…と、ケースバイケースでお仕置き
のやり方が細かく決められていたのである。
 倉田先生はようやくじらしにじらして最初の一撃を放つ。
 「うっ!!!!」
 それは自分のショーツで猿轡をしているから悲鳴にはならないが、私
の経験でいうなら、その強烈な衝撃は、お馬さんを抱いて逃げ出したい
ほどの痛みだったに違いない。
 最初の一撃は身体が慣れてないせいもあるが目から火花が散るという
表現が決してオーバーじゃないと分かるほどキツいものだったのである。
 倉田先生はここで一旦真里の口からショーツを吐かせるが、その顔は
それまでママに甘えた子供らしいものとは違い、たった一発で唇を振る
わすほどの怯えの表情に変わっていたのである。
 「今日は12回にしましょう。国語が6回、算数が6回よ。いいわね」
 「……」真里は本当は『はい』というつもりだったが、そのあまりの
衝撃に声が出ないでいた。
 「今、1回すんだから、あと11回よ、頑張りなさい」
 倉田先生はそう言うと、再びショーツを真里の口に噛ませ、再び後ろ
に回って脱脂綿に含んだアルコールを可愛いお尻へ丹念に塗り始める。
そして、太股を大きく開かせてはその奥に秘められたまだまだ可愛い蕾
にもしっかりと新鮮な外気を取り込んでやるのだ。
 「………………」
 これには河村氏も満足した様子で、思わず笑みがこぼれる。
 ただ、私はここで育って、この部屋に何度も出入りしている身として
は、時が経った今でも女の子の御印を見てにやつく気にはなれなかった。
 倉田先生は一旦前に回って口に含ませた真里のショーツを取り出すと
 「痛かった?」
 笑顔で尋ねたが返事は返ってこなかった。
 たかが革ベルトとあなどるなかれ、本気の一発は大人だって飛び上が
るほど痛いのだ。子供の真里にとってはこのまま身体をバラバラにされ
るんじゃないかと思うほどの恐怖だったに違いなかった。
 「(今のは何?こっちはそれどころじゃないの!)」
 そんな仕儀だったのだろう。
 「あなたも、もう六年生になったんだから、お仕置きも五年生の時と
同じじゃないの。しっかりパンツを噛んで自分の至らなさを反省なさい」
 先生は動揺の収まらない真里の口に再びショーツを噛ませようとした
が、何か気がついたのかそれをあらためて広げてみる。
 「あらっ?あなた、今ならメンスの時期にはかかってないわよね。…
…痔かしら???まさかね………ひょっとして画鋲の上に腰かけたとか」
 倉田先生はすかさず真里の顔を見る。
 すると、相手は子供だから顔色がすぐに変わってしまうのだ。
 「そう、画鋲だったのね……で、誰なの?」
 倉田先生は当然犯人を聞きたがるが……
 「…………」
 真里はすぐには口を割らなかった。というのもこうした事は子供同士
の遊びの中で起こることで、もし、こんなことで友だちを売ったりした
ら、それこそあとで、仲間はずれにされたり虐められたりしはかねない
からだ。
 とはいえ、先生もこうした問題を看過できなかった。亀山では、『お友
だち同士が仲良くしていなければいけない』という絶対的な決まり事が
存在するからだ。
 もちろん巷にだって仲違いする同級生や反目するクラスメートなんて
珍しくもないだろうが、ここではお父様方がご自分の娘を溺愛している
場合が少なくなく、子供の喧嘩がいつの間にか親の喧嘩となって、その
挙げ句いじめっ子の粛正なんて物騒なことにもなりかねない。
 庶民にはピンとこないかもしれないが権力を持った人たちにとっては、
たかが孤児の一人や二人、お人形をゴミ箱にでも放り投げる様な気安さ
で、それから先の人生を潰すことなど簡単にできるのだ。
 そんな大人の事情もあってか先生は『とにかく、仲良くさせておかな
ければ…』という強迫観念にとらわれ、子供同士の喧嘩や虐めには特に
神経を尖らせていたのである。
 「いいたくないの。でも、そんなことしてると、また虐められるかも
よ」
 「いいの、遊びだったんだから……」
 「遊び?悪ふざけしてたってこと?でも、度が過ぎれば同じことよ。
ここではお友だちと仲良くできない子はお仕置き。そう決まってるの。
あなただって知ってるでしょう。亀山では一番大事なお約束よ」
 「………………」
 「あなたがそのお友だちの事を言いたくないってことは、あなたにも
何か後ろ暗いことがあるんじゃないのかしら。そうなったら、あなたも
お仕置きの列に並ばなきゃならなくなるわね」
 「そんなことありません……」
 「だったらいいじゃないの。先生だってあなた達がどんな遊びをして
いたのか知りたいわ。……でも、それがイヤなんでしょう」
 「イヤってわけじゃ……」
 真里はやっぱり口が重かった。そこで先生は最後の手段……
 「いいわ、だったらおばば様にここへきてもらいましょう。あなたも
おばば様になら話せるでしょうから」
 「だめ、そんなことしないで…」
 さすがにこれには反応が早かった。
 色々やられるお仕置きだがやはりお灸だけは別格で、この山を下りる
までそうたびたびすえられたわけではないのだが、ひとたびすえられる
と、その後3年間はママや教師の脅しだけで効果があるというありがた
いお仕置きだったのである。
 「美枝ちゃんと美子ちゃんです。三人でお仕置きごっこやろうってこ
とになって、画鋲をいくつお尻につけられるか競争してたんです」
 真里はようやく口を割った。聞けばたわいのないことだが、虐めとい
うのはこんなことからエスカレートするから先生としても気が抜けない
ないのである。
 「……でも、二人には私がしゃべったなんて言わないでね」
 「そう、そんなに二人が怖いの」
 「怖いってわけじゃ……」
 真里はそう言ったが、怖いというのが真実だろう。これを口実に仲間
はずれにされたり虐められたりしかねないからだ。
 そんなことはママだって百も承知だったから、この後真里は密告した
二人の前で厳しいお仕置きを受けることになる。そして、その二人には
それよりもさらに厳しい折檻が待っていたのだった。
 これが亀山流のけじめの付け方で、密告された方も目の前で密告者が
厳しい罰を受けているので、自分たちも仕方がないかと思えるのである。
 「へえ、子供の世界にもそんなに大変な深謀遠慮があるんですね」
 河村氏は私が中の様子を説明すると感激したようにこう呟いた。
 「ところで、部屋の四隅に小鳥の巣箱みたいなのが掛かってるけど、
あれは?……」
 「やだなあ、この間図書館で見たじゃないですか、カメラですよ。今
は無人ですけど僕の頃は8ミリか16ミリで専門の方が部屋にいました。
そう言えばカメラ用に照明が点いてて部屋全体ももっと明るかったか」
 「まるで、映画撮りだ」
 「ええ、昔はね。だからお仕置きに至る話し合いは別の部屋でして、
ここでは純粋にお仕置きを受けるだけだったんです。……そうか、今は
話し合いもこの部屋なのか……」
 私は昔と何もかわっていないと思い続けていたがここではじめて隔世
の感を感じたのだった。
 「ねえ、鞭のお仕置きってああやって、一回一回アルコールでお尻を
ぬぐうの?」
 「回数が少ない時は全部やりますけど、今回は12回と言ってるから
最初の三回か四回だけだと思います。あんまり何回もやってると慣れて
効果が薄くなります」
 「さっきの鞭はこっちもびっくりするくらい厳しかったみたいだけど
あんなの12回も受けるの?」
 「鞭の威力というのは、たいてい最初が一番キツくて、あとはそんな
でもないんです。ほら、今、二回目の鞭が派手に「パーン」って鳴った
でしょう。でも、あんな音のする時はかえって痛くないんですよ」
 「その場、その場で使い分けてるんだ」
 「ええ、こんなもの鞭を扱う人のさじ加減ひとつでどうにでもなっち
ゃいますから、真里ちゃんだって最初12回ぶちますって言われた時に
そんなに反抗的な態度をとらなかったからこんなに優しくしてもらえて
るんです。もし、先生を怒らしちゃってキツいのを12回ももらったら
すぐにはお馬さんの背を降りられません…今晩、ベッドで仰向けに寝る
のも無理です」
 「そんなに厳しいんだ」
 「ええ、お仕置きですからね、仕方ないですよ。……お尻叩きなんて
いうと軽い懲罰くらいに思ってる人がいますけど、亀山では、やられて
三日目でもまだ痛いなんてのがあるんですから…こんなチビちゃんには
しませんけど……」
 「そりゃ、そうだろうけど…でも、中学生ならそんなのもありなんだ」
 「ええ、彼らはもう赤ちゃんではないので見せしめを受けることはな
いんですが、その分体罰はキツくなるんです」
 「なるほど」
 「私も赤ちゃんの頃は素っ裸にされるたびに『お姉ちゃん達はいいな、
恥ずかしいことされないから』と思っていましたが、実際なってみると
ケインなんて呼ばれる籐鞭で毎日のようにぶたれてヒーヒーでしたよ」
 「よく考えられてるだね。たしかお仕置きのモットーみたいなのが…
あったよね」
 「安全で、心に残って、…それでいて悪感情は残さない。最後に必ず
抱いてもらうのもその為なんです。特に赤ちゃんのお仕置きってのは、
その効果はどんなに長くても次のご飯までしかもたないようにできてる
んです」
 「じゃあ、それから先は忘れちゃってもいいってこと?」
 「忘れやしません。痛みがなくなるだけです。痛みは去っても心には
残るようにしてあるんです。今、そこで一回一回アルコールで拭いてる
のもその為なんですから…」
 「なるほど、そういう意味か。飴と鞭を使い分け、皮膚感覚を大事に
してるってわけだ」
 「そういうことです。女の子の場合は痛みと快感を微妙にすりあわせ
ながらリビドーを高めたりもします」
 「それって、私のため?」
 「ええ、それもありますが、その後の夫婦生活のために必要なんです。
男性は総じてサディステックなものですからね、受け手の女性はマゾヒ
テックに仕上げるんです。それで結婚させてみて、うまくいかなければ
ここに戻ってくればいいからって送り出すんです」
 「なるほど、お仕置きにはそんな意味まで含まれてるんだ」
 「女王様に言わせると、『お仕置きはすべて子供のためにやってるの。
女の子が偉ぶってお金を稼いでも愛されないなら幸せにはなれないわ』
ということになります」
 私は思わず女王様の物まねまでしてみた。
 「似てる、似てる」
 それは意外にも河村氏にも受けたのだった。

第10話 ①

<第10話> ①
 その週末、私は河村氏の私邸に招かれた。二週間ほど前、真里ちゃん
のお股にお灸がすえられたあの舞台では本来の催し物が開かれ、ピアノ
やフルート、バイオリン、ハープなどの演奏、バレイや日舞、古典文学
の朗読なんてものまである。
 私が子供だった頃と出し物に大きな変化はないが、腕は僕らの頃とは
段違いだ。
 なるほど、これなら僕のピアノを聞いて真里が「下手ねえ~」と言う
はずである。
 僕らの頃はまだ指導法が未熟だったせいかこんなに上手な子はいなか
った。
 「どうですか、先生も一曲お手本を示されては?」
 「いや、もうピアノを外れてから二十年近く経ちますからね。今さら
恥はかきたくありませんよ」
 「そうそう、恥と言えば…真里のお仕置きに行ってきましたよ。結局、
あれは真里が虐められたんじゃなくて、女の子たちが桃色遊技をしたと
いうことでお仕置きになったんですが、いやあ~~ひどいもんでした」
 「ひどい?どんな風に?」
 「あなたに説明を受けたでしょう。壁から突き出している狭いベット。
あれに寝かされてメントールの入った薬剤をたっぷり股の間に塗り込ま
れるんです。私もそれなりに覚悟はしていったんですが、想像以上でね、
辛かったです」
 「悲鳴が上がったでしょう」
 「ええ、それがどの子も…もの凄いんですから。あれ、もの凄く痛い
んでしょうね」
 「私は男なんで…あれは、されたことがないんです。ただ、友だちに
聞いた話では『焼け火箸をそこに押しつけられたぐらいショックだった』
って言ってました」
 「でしょうね、そのくらいの轟音でしたもの。とにかく、少女が人目
もはばからずこんな凄まじい悲鳴を上げるのかってくらいのものだった
んですから……さすがに私もその場に居たたまれませんでしたよ」
 「でも、あれ、その場限りなんですよ」
 「と、言いますと……」
 「だから、ものの一二分でまるで何事もなかったようになっちゃうで
すよ」
 「そう言えばそうか、彼女たち、その後鞭のお仕置きももらったんだ
けど……その時は、もうそんな素振りは見せなかったなあ……」
 「でしょう、あれ、元々傷薬ですからね、染みても害はないんです。
ただ、あれ…後でかゆくなるみたいでしてねえ、寝る時オナニーなんか
しないように貞操帯を着けて帰すのが普通なんですよ」
 「なるほど……」
 河合氏は私に相槌をうつとさっそく真里を捜し始めた。
 そして……
 「真里、こっちへ来なさい」
  彼は真里を自分の目の前に立たせると何も言わずそのスカートを捲り
上げたのである。
 「…………わかった。もう行っていいよ」
 ほんの数秒、スカートの中を確認しただけで彼はスカートを下ろす。
 「なるほど、貞操帯ってショーツの上から穿く物だったんだ」
 「トイレへ行く時なんかは人を頼まないとどうにもならないから結構
辛いんですよ。ま、こちらの方がよほどお仕置きとして辛いかもしれま
せんね」
 「どうして?」
 「一週間くらいあの姿なんです」
 「一週間も……」
 「僕らの頃は『この方がおしとやかになるから』ってよく大人たちに
やらされてましたよ」
 「ここは保守的な街ですからね」
 「いえ、これでも若干変化はしてきてるんです。僕らの前の世代は、
おねしょもお仕置きの対象だったくらいですからね。『今は、おねしょは
お仕置きの対象になりません』って話したら、先輩達にはたいそう羨ま
しがられましたよ」
 「そうかもしれませんね。僕なんか巷の育ちですけど、おねしょのお
仕置きにお灸をすえられたなんて話、よく聞きましたから………あれ、
当時は本人の自覚の問題で、『起きる意思が弱いからおねしょするんだ』
なんて言われてたみたいですね」
 「今はオナニーも解禁されてるそうじゃないですか」
 「ええ、完全にではないそうですが、何でもかんでもお仕置きって事
じゃないみたいです。合沢さんの時代は違ってましたか?」
 「ええ、違ってましたね。特に女の子は絶対のタブーで…見つかると、
必ずと言っていいほどフルハウスなんです」
 「男の子はいいんですか?」
 「いえ、男の子だってダメはダメなんですが、見つかってもやりすぎ
には注意しましょうぐらいで、無罪放免になっちゃいますからね、女の
子たちには不公平だってよく責められましたよ。
 「どうしてなんでしょうね。その落差は?」
 「一つは身体の構造上女の子の方がばい菌が入りやすく炎症を起こし
やすいって問題があるのと、やはり大きいのはオナニーをするような子
は淫乱で純真じゃないっていうお父様方の先入観に配慮したんだと思い
ますね」
 「そりゃあ、あるだろうね、自分の事は差し置いて勝手な話だけど、
やっぱり添い寝してくれる子は性のことなど知らないうぶな子であって
欲しいもの」
 「そういえば、真里ちゃんは先生にお返しになったみたいですね」
 「ああ、本当はこのままずっとそばに置いておきたかったんだけど、
どうやらそうもいかないみたいだからここは分別をつけて手放したんだ。
……ただ、他の子たちもとっても良い子でね。別に、寂しい思いはして
ないよ。とにかくこんないい子たちを育ててくれた先生方には感謝感謝
だ。……そうだ、今夜は泊まっていくといい。当番の子が添い寝してく
れるんだが、妻が里帰りしていないものだから、四人じゃ多すぎるんだ」
 「わかりました」
 「でも、奥さんがよくここへの移住を承知なさいましたね。…実は、
奥さんの反対で断念される方が結構多いんですよ」
 「うちだって同じさ。渋々着いてきた。『何で今さら見ず知らずの子供
の面倒をみなきゃならないの!?』ってね。女にとっちゃ子供の世話は
仕事であって趣味にはならないみたいなんだ。…でも、怒って帰った訳
じゃないよ。その逆。ここで暮らすうちに本格的に移り住んでもいいと
言い出してそのため荷物を取りに帰ったんだ」
 「じゃあご機嫌が直ったんだ」
 「そういうこと。最初は不安だったんだろうが、里子を持つといって
も、こちらの仕事は抱いてあやすだけみたいなものだし、しかもみんな
上品で従順に躾てあるだろう。毎日孫を抱いてるみたいで彼女としても
楽しいんだよ」
 私はこうして河村氏の家で子供たちとの一拍を経験することになった
のである。
 夕食は大広間。当番の子だけがお父様たちと同席できるのは私の頃と
同じルールだ。ただ違う点もいくつかある。まずはBGM。僕たちの頃
も頭上には妙なるメロディーが流れていたがそれは大半がクラシックで、
私のようにピアノの練習が苦手な子はたまたま自分の課題曲がかかると
ご飯が不味くて仕方がなかった。それが今では、正々堂々ビートルズや
カーペンターズが流れているんだから驚きだ。私たちの時代は過ぎ去り
今はこれがクラシックなのかもしれない。
 次に食事の内容。僕らの頃はママと一緒の下座とお父様たちの上座で
は明らかに食事の内容が異なっていた。お酒なんかは当然にしてもお料
理そのものが上座の方がはるかに豪華なのだ。だから当番の日は、普段
食べられないものが食べられるのでわくわくしたものなのなだ。それが
今では上座下座関係なく同じ料理がでてくる。
 『おいおい、これでは当番の日の楽しみが一つ減ってしまうな』
 と思ったが、これも時代の流れなのだろう。料理そのものも…
 『こんなものチビには贅沢だ』
 というしろもの。食品関係で成功した先輩達がこぞって色んな食材を
提供するので仕方がないといえば仕方がないのだがそれだけ日本という
国が豊かになったということでもあるのだろう。
 ただ、食事風景そのものは昔のままだった。上座ではお父様お母様が
愛児を膝の上に乗せてスプーンで口の中へと運び入れているし、下座で
もママが幼い子を抱いて同じ様な格好で食事させている。もう少しだけ
大きくなった子には14歳以上の子がママの代わりをしている。これも
昔のままだ。
 私には楽しく懐かしい光景だが、こんな光景を見たら巷の人たちには
首を傾げるだろう。
 『この子達は一人で食事ができないのか?』
 『ひょっとして身障者なのか?』
 なんて思うかもしれない。もちろん、どちらもNoなのだが、これが
亀山の流儀なのだ。どんなに厳しいお仕置きの直後でも食事の時だけは
無礼講で、たっぷりママやお父様お母様に甘えることができた。そして、
何でもありの亀山のお仕置きだが、唯一、食事を抜く罰というのだけは
なかったのである。
 そんななか、私もせっかくなので先輩として応分の責任を取ることに
した。
 「安西真奈美です。よろしくお願いします」
 その子は椅子に座る私の足下でお約束の乙女の祈りを捧げる。
 「真奈美ちゃん、さあおいで」
 私はかつて何百回もやってもらったことを初めてしてみた。
 両脇を抱えて自分の膝の上に乗せるのだ。正直、この位の歳になると
脇の下が痛いのだが、彼女も亀山の子、そんな事はおくびにも出さない。
 「どれが食べたい?」
 必ず注文を聞いて料理をとりわけスプーンに乗せて「あ~ん」させる。
 「美味しいか?」
 「美味しい」
 「幸せか?」
 「幸せです」
 「そうか、そうか、それはよかった」
 約束通りのたわいのない問答。でもこの時初めて私は大人たちがこう
して子供を抱いて食事させることが嬉しいことなんだと知ったのである。
 というのも、これって子供の立場からすると必ずしも嬉しいことでは
ないからなのだ。
 それは、お膝の上と言っても色々あって必ずしも楽ちんなものばかり
ではないからだ。大人だから口臭体臭のする人もいるし、スプーンの扱
いが乱暴で口の中を怪我しそうになったことやどさくさに紛れて急所を
触ったりする人もいる。子供の立場からすると色々あるからだ。
 しかし、こうして初めて子供を抱いてみて、私はどうして大人たちが
こんなにも膝の上に子供たちを抱きたがるのかわかったような気がする。
 とにかく膝の上に子供を乗せると楽しいのだ。その弾む身体がまるで
私のかたくなになった心をマッサージして解きほぐしてくれているよう
な感じがするのである。
 だから…
 「ねえ、今度の誕生日にバービー人形のお家買って」
 なんて言われると、つい…
 「よし、いいよ」
 なんて、簡単に約束してしまうから不思議だ。
 だから、大人たちは『子供、子供』と低くみるのだが、実は大人の方
がよほど精神構造が単純なのかもしれないと思ったりもする。
 しかし、それで大人と子供、調和が取れているのかもしれない。
 私はまるで生まれた時から抱かれているような馴れ馴れしさで私の胸
にしがみついてくる真奈美を時間の許す限り抱きしめ続けた。
 もちろん、私の経験からしてもそれは真奈美にとって大変迷惑なこと
だったのかもしれないが……
 食事が終わると幼稚園さんたちはお風呂に入り寝床へ直行する。
 彼らはもう他にやるべきことがないからだ。たいていママと一緒にお
風呂へ入り、お父様の処へ行っておやすみのご挨拶。すると、お父様と
お母様は絵本を読んでくれ子守歌を歌ってくれてやがて寝かしつけられ
る事になるのだが、距離感の違いとでもいうか、子供にすればそんな時
でもママが近くにいないと泣いてしまうケースが多かった。遊んでいる
のは子供。遊ばれているのはお父様とお母様。そんな感じで8時を回る
頃には幼稚園児はネンネとなって、今度は小学校の低学年さんがやって
くる。

第10話 ②

<続>亀山からの手紙

第10話 ②

 彼らは夕食の前にはお風呂をすませており、夕食後は、楽器の
練習やバレイや日舞なんかを習っている。そして、幼稚園児が寝
息を立てる頃になって、お父様やお母様にお休みのご挨拶をしに
やってくるのだ。

 この頃になると、子供たちはお父様やお母様の前で習っている
楽器を披露しなければならなかったり、お父様が自慢げに話す昔
話なんかを聞かされるはめになる。いわば里子としての営業活動
を強いられるわけだ。

 しかし、苦労というほどの苦労はなく、折を見て欲しいものを
ねだったり、退屈なら、お父様のお膝の上で抱きついたまま寝て
しまってもよかった。

 そして、下のチビちゃん二人が片づいた後、お父様はちょっと
大きめのチビちゃんである小学校高学年の子らをコテージに訪ね
る。

 彼らは楽器のレッスンを受けた後、割り当てられた勉強部屋で
明日の確認テストのための勉強をしていて、それが終わった頃に
なってお父様が部屋にやって来る算段になっていた。

 だからこの間お仕置きをいただいた真里ちゃんにしても、仮に
ママのお言いつけ通りにやっていれば、お父様がお部屋にいらっ
しゃった時はすでに四回連続で正解を出していてテストの対策は
終わっていなければならないわけで、それができていないという
のは、それまで何かしらさぼっていたに違いなかった。

 この日、お父様が勉強部屋を訪ねたのは僕が夕食の時お世話に
なった(?)真奈美ちゃんの部屋だった。

 お父様が部屋に入ると、彼女はすでに勉強が終わったらしく、
ランドセルに勉強道具を詰め始めていた。

 「もう、終わったのかい?」
 「はい、終わりました」
 「何か分からないことがあるかい?……どんなことでも教えて
あげるよ」
 河合氏は真里のことがあって先を急がなくなったようだが……

 「大丈夫です。明日のテストでお父様の名を辱めるような事は
いたしませんから」
 と、亀山では優等生のお答え。

 いや、自分でも言っていたのだが、何だが、あらためて聞くと
吹き出したくなるほど恥ずかしい。脇を向いて思わず笑ってしま
った。

 「ありがとう、じゃあ、おいで」
 河合氏はそう言うと、真奈美の目の前で中腰になって、両手を
広げる。

 亀山では『さあ、お父様に抱かれにいらっしゃい』という合図。
子供としてはイヤとは言えない合図だ。

 「ようし、良い子だ」
 河合氏はご機嫌で真奈美を拾い上げると、満面の笑みでほっぺ
たを擦りつけながら、抱っこしたまま部屋を出る。
 そして、長い廊下を通って自分の寝所へと真奈美を連れ込むの
だった。

 広い寝室には大きなダブルベッドが二つも並んで置いてあり、
小さな舞台の天井に飾られたミラーボールがビロードのベッドカ
バーに反射して、辺りはまるで夜の湖面のように光り輝いている。

 そこで真奈美はお父様の求めに応じてフルートを吹き、歌を歌
った。

 ファーストオブメイやイエローサブマリンを自分なりに器用に
アレンジして吹き、トップオブザワールドを英語で歌うとお父様
は大満足。

 もともとこうした芸事は、自分の為というよりお父様を喜ばす
為に習っているのだ。

 「君もこんな処で演奏したことがあるんだろう」
 「ええ、僕はピアノでしたけど、演奏が下手でしたから辛かった
です。いつも間違えてばっかりで……」
 「でも、それで叱られたりはしなかったんだろう」
 「それはそうですね」
 「親はね、自分のために一生懸命に弾いてくれれば、それで十分
幸せなんだから……」

 お父様は乙女の祈りをして跪く真奈美をソファーの上にに引き
上げると、その膝の上に下ろして高級チョコレートの箱を開く。

 まるで宝石箱でも見るように目を輝かせる真奈美に「どれでも
好きなものを取りなさい」と勧めるのだ。

 「君の頃も夜のお菓子はあったんだろう?」
 「ええ、今日一日よい子でいたご褒美として…でも、お仕置き
なんかあって良い子でなくても、やっぱりもらいましたけどね…」

 「天野さんは優しかったんだ」
 「ここのお父様はどなたもやさしいです。そもそもよほど子供
好きでなければ、こんな処へ移住して来ないと思いますから」

 「そりゃあそうだ。……ん、もう一つ欲しいのか?……よしよし、
もう一つだけだぞ。それが終わったら歯磨きをしてネンネだ」

 河合氏はママに夜の歯磨きの用意をしてもらう。
 使うのは練り歯磨きと塩。それを指にとって歯と歯茎を丁寧に
マッサージしてもらうのだ。

 「最初は女王様に言われてね、『何もそこまで』と思ったけど、
これがやってみると、結構楽しくてね。なるほど、ここではあり
とあらゆる機会を利用して、子供と触れあって楽しむんだと実感
したよ」

 「僕なんて、小学校時代はお母様から毎日フェラでしたよ」

 「天野先生の奥様というと、美容業界の女傑とうたわれた……」
 「天野美津子です」
 「天野美津子。天野美容室の……あの女史か。そうか、彼女に
そんな趣味があったとは知らなかったなあ」

 「巷での実績は知りませんけど、とにかく、子供が大好きな人
なんです。私が『お風呂はすみました』なんて言っても、『だめ
よ、まだ汚れてるから私が洗ってあげる』って、わざわざ寝室に
大きな盥を持ち込んで行水させるんです。……そして、ベッドに
転がしたら、とにかく体中をキスしまくるんですから………戯れ
ですけどね」

 「なるほど……その中にはオチンチンも、というわけだ。……
じゃあ、お母様が嫌いだった?」

 「いえ、そういうことじゃありません。とにかく物心ついた時
からずっとされてることですからね、もう、習慣になっちゃって
て……」

 「なるほど、物心つく前からなら…問題ないのか」
 「えっ?」
 「なにしろ、僕は真里にとっては外様だからな……」

 河村氏は少し自虐的に笑うと、真奈美を膝の上で仰向けにして
歯磨きを始める。もちろん、これだって親がやらなければならな
い訳はなく、子供の口の中に指を入れると、それが心地よいから
多くのお父様がやっているだけのことなのだ。

 「ん?気持ちいいか?」
 「……」
 真奈美は笑って答える。

 逆に子供といえど本当に不快ならこの笑顔は出せないだろう。
彼女は新しい父親をすでに受け入れているように見えた。

 終わると、ママが、自分が含んだ水を吐き出すためのボールを
口元に用意する。つまり、この瞬間は、普段厳しいママが自分の
下にいてメイドの様な仕事をしているというわけだ。
 そしてそれをさせているのが、今こうして抱かれているお父様
なのだ。子供はお父様の膝の上で大人の上下関係を実感するのだ
った。

 「(お父様って、やっぱりママより偉いんだ)」

 理屈では分かっていてもそれを肌で感じる機会は少ないから、
そういう意味でも有意義なのかもしれない。

 歯磨きが終わると、お父様は子供を自分の目の前に立たせる。
そして、やおら着ている服を一枚一枚丁寧に脱がせる。

 ブラウスやスカートはもちろん、スリーマーやショーツ、靴下
まで……残らず剥ぎ取って、すっぽんぽんにしてしまうのである。

 もちろん真奈美はそれを嫌がらない。実をいうと、真里もここ
までは抵抗しなかったのである。しかし、その場に跪き胸の前で
両手を組んで、次の言葉が出てこなかったのだ。

 「今日も一日。お父様のよい子でいました。どうか明日も一日
よい子でいますように。お父様の元気な赤ちゃんでいますように」

 これはどんな幼い子もやらされるお父様へのオネムのご挨拶。
そしてこの後、お父様が差し出す右手の指をおしゃぶりしなけれ
ばならない。
 これは『極楽では人々が差し出す指を赤ん坊がしゃぶって乳を
貰う』という仏教説話から来ていて、亀山の子はこれをしなけれ
ばお父様のベッドに入ることが許されない。というか、そもそも
お父様の家にいること自体許されない。
 真里はこれができなかったのである。

 対照的に、真奈美はお父様の人差し指と中指それに薬指を丹念
に舐めた。

 「美味しいか?」
 お父様の問いかけにも真奈美は笑顔を絶やさない。
 お父様にしても、愚問は承知の上での問いかけだ。

 「そうかそうか」
 お父様の笑顔は、私たち大人には決して見せることのない全て
を許す慈悲の笑顔だった。
 そして少女への返礼がこの抱っこしての頬ずり。

 彼はこのまま真奈美を抱いてベッドへはいる。親としてはこの
瞬間が何より至福の時なのだ。私は抱かれた経験しかないが、そ
れは抱かれていても分かることだったのである。

 この後、ママは部屋に残るものの、実質的にはパパと娘、二人
っきりの世界だ。そしてこの後、お父様の懐に飛び込んだ娘は、
この一週間自らに起こった出来事の全てお父様に物語る。
 彼女は自分の全てをお父様に聞かせなければならなかったので
ある。

 この内容はママと相談して事前にある程度話の内容を詰めては
いるのだが、中身は何も誇らしいことばかりではない。お仕置き
されたことなんかも包み隠さず話さなければならないのだ。

 もし、お話の中にお父様が期待したものがないと……
 『あれはどうなったの?』 
 なんて言われてしまう。

 前にも述べたが、お父様のもとには娘に関する有りとあらゆる
情報が入ってくる仕組みになっているから、そもそも隠しようが
ないのだ。

 内容によっては口にするだけで顔から火が出るほど恥ずかしい
こともあるが、お父様に問われれば、それを拒否するすべは子供
の側にはなかったのである。

 ただ、それで叱られるかというと、そうではなく、どんな事も
大きな胸がしっかりと受け止めてくれたのだった。

 ベッドの中での会話は幼い子と同じく大半がたわいのない四方
山の話。隣のベッドに入ってるママも、実はお目付役として起き
ているのだが、ママが二人の会話に口を挟むことはなく、娘は、
一人でお父様を接待しなければならない。

 つまり、同じ小学生といっても四年生から上はお父様に対して
百%受け身ではいけなかったのである。

 そして、私の例でも分かる通り、お父様やお母様というのは、
ある種の目的を持って私たちと接しているのだから、ベッドの中
では、かなり際どいことまでしてくるのだが、羽目を外して一線
を越えてくることはなかった。

 ここでは、外からの情報、とりわけ性に関する情報が徹底的に
カットされている。大人といえどもそうした情報は例の図書館へ
行かないと入ってこない。そうした環境の中で、子供たちは物心
つく前からずっと大人たちに抱かれるだけ抱かれて育つ。

 『大人は偉くて優しくて子どもを守ってくれる人』として教え
込まれるのだ。オモチャが欲しいドレスが欲しいといった物欲も
ここでは大人を介してでないと手に入らない事は亀山の子供なら
誰もが知ってることだ。
 だから、ママやお父様に限らずおよそ『大人』に対する親近感
が巷のそれとは比べものにならないくらい強くて、世間でいうと
ころの『他人』はここでは存在しないのである。

 そこまで徹底して純粋培養した子供たちを出資者である大人達
が、大いなる理性をもって一線を越えないぎりぎり線で楽しんで
いる。
 それが亀山という楽園の構図だった。

 ベッドインした子供たちは、手足を揉まれ頭を撫でられお尻を
さすられほっぺや乳首を舐められる。性器を触られることだって
ここでは日常茶飯事だ。

 しかし、その一線さえ越えなければ、何をしてもよかったし、
相手もそれを許している。

 牧歌的で野放図な愛は厳しい見方をすれば子供を手込めにして
いると見えなくもない。しかし、ならば赤ん坊は母親から手込め
にされているのかというと、そうではあるまい。

 性欲を卑しいもの、忌むべきものと考える人たちは性欲を子供
と切り離すことが可能でありそれこそが尊いことだと考えている
ようだが、それはあり得ない理想を追っているにすぎない。

 性欲をもつ大人が子育てに関わる以上、それを抜きにして語ら
れる親子関係は、理想論というより、むしろ不適切と考えるべき
なのだ。

 要は、手込めにされた子供がその後幸せに生きられるか否かで
あり、その基準で子育てや教育は考えられなければならない。

 と、これは女王様の持論だが、私もいわば女王様の子だから、
同じように思うのである。

 膨大な愛の海でイルカにお尻を突かれながらその泳ぎ方を覚え
て育った子供は、やがて陸に上がり自らも膨大な愛の海を作って
そこに我が子を泳がせる。そして、時々イルカになって我が子の
お尻をこづきながら陸に上げてやる。

 そんな太古の昔から続く人間の自然な営みが、今途絶えようと
しているのは悲しいことだ。

 おう、そうだ一つ忘れ物があった。
 実は、真奈美が寝入った頃になって、14歳以上のお姉ちゃま
二人が相次いで『お休みの』の挨拶にやってきた。
 彼らはすでに赤ちゃんを卒業しているので、お父様のベッドに
裸で入ることはないが、指をしゃぶる亀山独特の挨拶はやらなけ
ればならない。

 それぞれにベッド脇に置かれたフィンガーボールでお父様の指
を丁寧に洗うと、本当にそこからミルクが出てるんじゃないかと
思うほど美味しそうにお父様の指をしゃぶる。

 そして、歳下の子たちと同じようにこの一週間の様子をお父様
に物語ったあと、なんとお父様とベッドを共にしたいと望むので
ある。

 巷では思春期の少女が、父親の、しかもこの場合は血の繋がら
ないお父様のベッドで添い寝するなんて、信じられないだろう。
 実は、私も現役時代、お母様には随分可愛がられて育ったが、
さすがに14歳になってからはお母様と添い寝したことがない。
 何かが起こるなどとは思わないが、恥ずかしさが先にたって、
できないのだ。
 なのにこの子たちは平気なのである。

 「ねえ、今夜はお父様と一緒に寝てもいいかな?」
 「えっ、わたしも……」
 その瞬間はお父様より私の方が驚いた。

 一方で新しいお父様を頑なに受け入れない子がいるかと思えば、
もう一方で、すでに大人に近い身体をしているのに、今でもお父
様と一緒にベッドで過ごしたいと願う子もいる。
 女の子というのは実に不思議な生き物なのだ。

 「悪いな、合沢さん。こういう仕儀だから……今夜のところは
客間のベッドを使ってくれないか」
 そういう河合氏の顔はにやけてさえ見えた。

 さすがに素っ裸ではない。パジャマは着ている二人だが、共に
あっけらかんとして先に奥のダブルベッドを占拠している。

 「(ひょっとしたら、何かおねだりじゃないですか?)」
 私がそんな顔をすると…
 「(それでもいいよ)」
 という顔が帰ってきた。

 ということで、河合氏とは無言のまま、顔と顔で挨拶してその
夜は別れたのだった。

   

9月5日付

9/5

 私の作品の中には、それなりに成長した子どもが赤ちゃん扱い
されるシーンがよく登場する。

 実はこれ、ある雑誌の記事に『昔、ヨーロッパのとある貴族が
娘の非行に手を焼いて、その娘を監禁してオムツを穿かせ、赤ん
坊のようにして育てなおした』というのがあったことに由来する。

 その記事自体、そもそもポルノではなかったし、他との関連で
入れられたほんの数行の文章。おまけにその試みがうまくいった
かどうかさえ書いてなかったのだが、個人的にはとっても興味深
かった。

 私自身も、育て直しというわけではないが、親が溺愛のあまり
私をオモチャにするようなところがあって、その記事に親近感を
覚えたのかもしれない。

 大人は子供を作ろうと決心する際に、色んな事情はあるだろう
が、その動機の重要な一つは、『オモチャがほしい』という思い
だろう。

 そして、この『オモチャ』の中には性的要素が完全にないとは
言い切れないと私は思うのである。
 近親相姦だなんて話は論外にしても、そうした目で子供を見る
親は皆無ではないはずだ。

 もちろん、実際には親の理性が勝って問題が表面化することは
稀かもしれない。しかし、大人に性欲がある限り、自分の子供を
そうした対象で見ない保障は誰の心にもないのではないだろうか。

 要はそれが内心に留まる限りは実害がないわけで、そうなくて
はならないわけだが、親子に横たわる性の問題を全て否定して、
倫理観だけでこれを抑えようとすることには、限界があるように
思うのである。

 昔は、親がわりあい自由に子供をお仕置きできたし、お仕置き
という大儀の前にはポルノチックなことだってあったと思うのだ。
そして、それがガス抜きの安全弁になって、世の中に児童ポルノ
のようなものが蔓延せずにすんでいたような気がする。

 かつてビクトリア朝がその高い倫理性ゆえに裏で性的な腐敗が
進んでいたように、何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし。潔癖
性や建前で当然視して問題を片付けるのはなく、本音で親子の性
の問題を語る時が来ているように私は思うのだ。

9月6日付

<9月6日>

 Sassy Bottomさんのイラストです。

 今はもう先進諸国どこへ行っても児童へのあからさまな体罰は
禁止されているようですが、私が子供だった50年ほど前は、家に
限らず、学校でも体罰が広く行われていました。

 私の通った小学校なども田舎では名門校で通っていましたから
早くから体罰には否定的な意見の先生が多くて、私の担任だった
先生も生徒を前に……

 「ご父兄の中には、あなた方への厳しい体罰を望まれる方も
いらっしゃいますが、私はあなた方が、牛や馬でない事を知っ
ていますから、そのような体罰による教育はこのクラスでは
いたしません」

 なんて大見得を切っておいででしたが、体験した私たちに
してみると、教室の後ろや廊下に立たせるのはもちろん、
往復ビンタやほっぺを思いっきり抓られたり……いつぞやは、
トイレの柱に縛り付けるなんてパフォーマンスまでありました。
 当時はまだ汲み取り式のトイレで、かなり匂ってましたから、
きっと効果的だったんでしょう。…>_<…

 ま、ことほどさように、理想は唱えていても、『子供は体罰で
教え込むもの』という思想は社会各所で色濃く残っている時代
でした。

 でもこれって、日本はまだまだましな方みたいですよ。欧米
では家でも学校でももっと厳しかったみたいですから。
 もちろんこの絵ほどではないと思いますが(*^_^*)

*)
<左上>
職員室というより、お仕置き部屋というべきでしょうか、
お友達が部屋の中で先生にお尻を叩かれているのを
男の子がガラス窓越しに心配そうに覗き込んでいます。
きっと彼もまた次にはお仕置きが待っているのでしょう。
意味深でドラマが感じられて、構図にはちょっぴり問題
もあるのですがSassyさん初期の中では傑作です。
ただ、この絵は今、ネットにありません。
Sassyさん自身が世の中の流れを見極めて外してしま
ったんじゃないかと思っています。
実に残念です。
<右下>
これもSassyさんのイラスト。
男の子と女の子が二人並んで教卓にうつ伏せになり
先生の定規によるお尻叩きのお仕置きを待っている
ところです。
最近、やたらこうしたことが自粛ムードですけどね、
私なんか、『これのどこがポルノで、どこがいけない
んだ』って思いますね。


9月7日付

<9月7日>

これは、その昔、RGEfilmが通販していた『お仕置き』をメインテーマ
にしたビデオシリーズの1本。

 役者さんも迫真の演技だし、筋立もしっかりしていたので、私たち
の間では…ですが、なかなかの人気のシリーズでした。

 中身は、普通のドラマで見られるお仕置きシーンをそこだけピック
アップして過激に演出してみせたもの。

 普通のドラマとして見るとかなり過激でポルノチックですが、SMと
して愛好家の人たちに見せると……『甘ったるくて見るに耐えない』
ということになる。そんな代物でした。

 ただ、今は時代の流れと共にこうしたものを受け入れられる土壌が
少なくなってきたようです。

 私の場合は世の中に体罰がごく自然に存在した時代に育ちました
から、こんなものを見ても多少過激な演出をしているなあ程度の
感想ですが、今の人たちにしてみると、これは純粋な虐待劇としか
映らないようです。

 というのも、彼らの場合、親からまともなお仕置きを受けたことが
ありませんし、周囲でそれを見る機会もありませんからね。
 愛玩された経験はあっても真実の愛は未経験なわけです。

 勿論これは私たちの時代のSM愛好家とも意見が違います。
彼らはSMの事を『浮世で観る究極の体感芸術』として愛して
いましたから。

 私の小説はそれほど立派なものじゃありませんが、それでも
お仕置きを邪悪な心として表現した事はありません。
 これはこれで立派な芸術作品ですよ。

(*)
<本来左上にあった写真>
REG-films クリスマスの物語(1)
<本来右下にあった写真>
REG-films クリスマスの物語(2)

9月8日付

<9月8日>

LeeWarnerさんのイラストです。
何でも写真にペインティングして仕上げる技法だそうで、
どうりで絵画としては写真のようなリアリティだと思いま
した。

 いずれにしても美しい作品です。
 何よりこの原版写真があるはずですからそれを見たい
気がします。

 どうやってとったんでしょうか?
本当のお仕置き?演技指導?そんなことが気になります。

 そうそう、これを観ていて、私、あることを思い出しました。

 実は、私たちの世代は親や教師からスパンキングの
お仕置きを受けたなんて経験がほとんどないんです。

 大多数の家で行われていたのは、「ビンタ」や「閉じ込め」
「締め出し」「縛りつけ」といったこと。むしろ同じ少数派でも
「お灸」の方がよほどポピュラーでした。

 当時の親世代にとってお尻というのは、今の人以上に
「不浄な場所」という意識が強くて、たとえお仕置きでも
そこは触れたくないという思いが強いようでした。

 そんな中、一軒だけスパをやる家があって、私もそこの子
と一緒に体験したんですが、さすがに、よその子はそんなに
強く叩けないとみえて大したことありませんでした。
 ただ、その家の子がお仕置きを宣言された瞬間、この世
の終わりのような顔で震えていたのを思い出します。
 幼児体験は怖いですね。

注)
このコーナーは本来、紙で回っていた資料をネットに移した
もので、原本には左上と右下にイラストがあったのですが、
その部分は掲載を見合わせました。
 段落がでこぼこしているのはそのためです。
私の日記に飾られていた絵のいくつかは
http://thehandprints.com/hpDrawings.html
などのネット上にあったものです。
そこでURLを表示できるものは表示していきます。
ご覧になりたい方は、ご自分でコピーして開いて
みてください。

(本来、左上にあった絵)
あなたにはスパンキングが必要よ
(本来、右下にあった絵)
これでわかったかしら

9月9日付

<9月9日>

 これは加藤かほる先生のイラスト
です。今日の作品しかご存じない方
にすれば、「ほう~~(・0・)」かも
しれませんね。
 時代の流れで今はお目にかかれま
せんが、ロリコン全盛期には先生も
こんなに可愛い作品を残しておられ
ます。とりわけ和物の作品は珍しく、
私の手元にも数点あるだけです。
 そんな注釈はともかく、この二つ
の作品、純粋に私は好きです。
 先生には珍しく女の子も母親にも
ちゃんと表情があって、お仕置きの
リアリティーが伝ってきますから。
実は先生の作品、そのトーンはとて
も綺麗で私好みなのですが、多くの作品で人物の表情が乏しく、
いずれも能面のように冷たいという欠点(?)があるんです。でも
これは、その背景も古きよき日本の
原風景って感じで好感がもてます。
\(^O^)/
 ちなみに、私自身にその経験がない
ものですから、『お浣腸のお仕置き』
というのは、SM作家さんの専売特許
だとばかり思っていました。
 ところがある日のこと、某有名お嬢
様学校の生徒さんたちの会話を喫茶店
で盗み聞き。実際、子供の頃にそんな
お仕置きも受けた事があると知って、
目から鱗。今まで随分と損をしたなあ
って、たいそう悔やんだものです。
 それだけではありません。彼女達が
話すお仕置き談義は破廉恥そのもの。
私も若かったせいで膝の上のテーブルが思わず持ち上がりそうでした。

*)ここには加藤かほる先生の和物の作品が二枚ありました。
 どちらも味わいのある作品で私は好きです。
<左上>
 少女が祖母、母、とおぼしき人たちからお浣腸
されているイラストです。
<右下>
 少女が母とおぼしき人から縁側でお灸をすえら
れているイラストです。

9月10日付

<9月10日> 

早くに引退されたので、
今の方はあるいはご存知
ないかもしれませんが、
これは四条綾先生のイラ
ストです。
 加藤かほる先生の洋物
に対して、こちらは和物
が多い先生でした。
 先生の作品は身近な題材が多いので、観ていてほっとするという
か、とっても親近感がわいてきます。上の絵なんて、ちょっぴり過激
で…それでいて、こんなことがあってもおかしくないかって思わせる
ところがミソなんでしょうね。
 女学生は悲しい顔してますけど、周囲の大人たちはみんな笑ってる
でしょう。これは子供のお仕置きが、
重々しい特殊な行為などではなく、
日常生活でごく当たり前に行われる
儀式、愛情表現だったからなんです。
 親も教師も近所のおばちゃんも、
当時は子供を愛する誰もがお仕置き
に参加できました。というのも、子
どもは大人たちの、地域全体の宝物
というか、ペットだったんですから。
 今のように『子どもは親の独占私
有物。親の許可なく指一本触れては
ならぬ』なんてことはありませんで
した。
 ですから当時の子供は恥ずかしい
お仕置きを受けたくなければ大人に
なるしかなかったんです。今の子の
ように、「子どもの方が楽なんだから、
大人にならなくてもいいや」なんて
考える子はいませんでした。


*)
四条綾先生のイラスト、本当は出したいけど
やっぱり止めておきます。
正直、どこまでよくて、どこまでいけないのか
私自身分かっていないんです。
ただ、今はこのブログ自体満足に操作でき
ないんですから、余計な問題は背負い込み
たくないというのが本音なんです。 

9月11日付

<9月11日>

この絵は知る人ぞ知るSU(ス)
さんの一コママンガです。
左の絵はフローネでしょうかね。
雰囲気出てます。
絵そのものは子どもの悪戯書き風。
線も弱くタッチも荒々しくて一枚
二三分もあれば出来そうな代物ば
かりですが、女の子の表情、体位
も多彩で見る者を飽きさせません。
何より当人が楽しんで描いてるの
が傍(はた)からもよく分かります。
私の小説も最初はそうでした。(もとい、今でもそうなんですが……)
とにかく、書いていて楽しくなけれはこういうものは続きませんから、
そういう意味ではSUさんはまさに王道を歩いているわけです。
ただ、人間と言うのは欲があります。『もうちょっと面白くならないか』
『他人の関心を引きたい』あるいは『世間に認知されたい』なんてのも
煩悩としてあるでしょうね。
でも、その欲を実現していく過程で、多くの場合は本来の姿から離れて
いくようです。そして、やがて自分自身が飽きていく。書く(描く)の
がおっくうになっていく。(プロにでもなれば『お金のために…』という
励みもありましょうが、アマチュアはそうはいきません)
そうやって埃をかぶった作品をある日
手に取ると……
「へえ、俺ってこんなこと書(描)い
てたんだ」なんて感心したりする。
そして、また書き(描き)始める。
こんな事の繰り返しだったような気が
します。その点、SUさんは首尾一貫
しています。
『好きなものを好きなように描く』
これって当たり前のようですが、なか
なかできないことなんです。

*)原本には以下の絵が左上と右下に貼り付けてありました。
 興味のある方は探してみてくださいませ。m(__)m
<左上>
  http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=2007244
<右下>
  http://thehandprints.com/variouss0762.jpg

9月12日付

<9月12日>

以下はSandさん(今は越野眞砂と名乗っておられます)の作品です。
学校もの、浣腸ものがお得意で、女学生の顔も清楚に描かれて
いますから、私好みの絵の一つです。
ただ内容はかなりハードですから、SMとの境界に位置するかも
しれません。(今の人なら当然、これはSMの範疇でしょうね)
でも、そんな絵を私がSMと断じないのは、私たちが暮らしてきた
年代や地域がこれとそう遠くない折檻を子どもたちに強いてきた
事実があるからなのです。
私たちにとってこの絵は多少の脚色はあっても夢物語とするには
あまりに生々しいのです。
テレビもカラオケもパソコンもない時代に子育をしていた世代に
とって子どもと言うのは最も身近な娯楽。
お人形、玩具、ペットだったんです。
ですから、今の親たちのようにそれが教育的見地に立っているか
どうかなんて、はなから考えません。
気に入らなければ……殴る、ぶつ、閉じ込める、締め出す、お灸を
すえる、とにかく何でもありです。
 それでいて子どもが比較的まともに育ったのは、隣近所のおば
ちゃんたちを含め、子どもを取り巻く多くの大人達がその子を
無条件に抱く事ができたからでした。当時はスキンシップといえど
親の専売特許ではありません。親に叱られた時でも泣ける場所が
別に用意されてたんです。


*)以下は平さんのHPに残るSandさんの絵。
 過激ですからご注意くださいませ。m(__)m
Sandさんの絵(No.1)
Sandさんの絵(No.2)
Sandさんの絵(No.3)
Sandさんの絵(No.4)

9月13日付

<9月13日>



 これはBarbaraさんの絵です。丸の中にBarbと署名のある
のが特徴で、今はもうお見かけしませんが、平さんの残して
くれたHPの中だけで、今も見る事ができます。

 とってもキュートというかチャーミングで、清潔感があります。
何よりこれを見ていると物語を連想させてくれます。

 権威で相手を屈服させて、合意の上で罰を与える。という
お仕置き本来の姿が、ここにはあります。

 SMの場合は、多くが無理強いによる屈服で、そこに楽しみが
あるのかもしれませんが、私の場合それでは楽しくありません。
たとえ悪法でも、不条理でも、そこに流れている秩序にそって
罰が与えられお仕置きがなされなければならない。
 無法は範疇外なのです。

 だから『お仕置き小説』と名乗ってるわけなんですが。

 と、こんなこと言っていると、私がさも親や教師から数多くの折檻を
受けてきたように感じられるかもしれませんが、事実は反対で、
私の家庭、学校ともに、周囲の環境と比べればお仕置きの頻度は
少なかったと思います。

 では、なぜこんなものを書くようになったのか。
 それは憧れだったと思います。自分には与えられないものへの
憧れ。それが小四からこの道に走らせたんじゃないでしょうか。

 嫌なはずの行為に憧れるなんて、どう考えても変でしょう。
 でも、そうなんです。


*)原本には以下の絵が左上と右下に貼り付けてありました。
 興味のある方は探してみてくださいませ。m(__)m
 ただ、何ぶん古い資料なので今もそこにあるかどうかは
 分かりかねます。
<左上>
http://pl-fs.kir.jp/kunken/cat9tail/INDEX-2/ITEM/DETAIL/FINEARTS/artist/BARBARA/barb07.htm
<右下>
http://thehandprints.com/various396.jpg
Barbaraさんのイラスト

本日これまで

9月14日付

<9月14日>

左の絵は『SMセレクト』
(昭和51年2月号)に掲載
された小説『蒼白い恋慕』
(黒田浩一)の口絵です。
この絵そのものはちょっと
ダーク過ぎて私の好みでは
ありませんが、小説自体に
は感激しました。 
 ある日突然お隣に引っ越
してきた母子家庭の女の子
がことあるごとに継母から折檻される話で、今の人たちの基準で言え
ば間違いなくSMというか、鬼畜の範疇にしか入らないでしょうが、
同じ高度成長前の日本を知るものとしては、とても他人事、絵空事と
しては読めませんでした。
 そう、主人公の境遇が子ども達を取り巻く環境がリアリティをもって
迫ってくるのです。特に幼い女の子の置かれた立場が、家庭は勿論
のこと、学校でも地域でも、当時と今とでは随分と違いますから……
その時代を知らない若い作家さんに、これは書けないでしょうね。
 何より今の人たちには物語の中で継母から不条理な折檻を受ける
女の子の存在が単に『可哀想』の一言だけでしょうから。それでは、
この小説の意味はないんですよ。(^_^;)
 右の絵はBarbさんの一枚。西洋
でも昔は見せしめのお仕置きという
のが存在したみたいですね。実は私、
一度だけお灸をすえられた事がある
んですが、その時は近所の人たちを
招いての公開処刑でした。もちろん、
私の親だけが特殊だったんじゃあり
ませんよ。当時はかなり年長の女子
でも公開処刑はごく普通に行われていましたから。(^◇^;)……そう
そう、以前、女学生がお灸をすえられてる四条さんの作品を紹介
したでしょう。あれ絵空事じゃなくて、同性しかいない場所なら『有』
だったんです。

*)
左上の絵は「SMセレクト」に掲載されていたものですからNGです。
右下の絵は以下の住所にありました。
http://thehandprints.com/various402.jpg

9月15日付

<9月15日>

左の写真は、映画『小さな
恋のメロディ』のスチール
写真です。
この映画、海外ではパッと
しませんでしたが日本では
とにかく当たりました。
かく言う私も、これは二度
三度と映画館に通いました
し、DVDなども持っており
ます。恐らく、私と同世代で同様の趣味を持っていたら観たことが
ない人はいないと思いますよ。
 お話は、題名そのまま。まだ11歳の二人がママゴトの様な恋の
果てに友達の祝福を受けて結婚式をあげ二人で漕ぐトロッコで
駆け落ちするまでを描いた作品。
 私は当初、西洋の人たちはこんな爽やかな作品のどこが気に入ら
ないんだろうって思っていましたが、やがてそれは子育ての違いに
よるものだとわかりました。何事によらず子どもを早く自立させたがる
西洋では、子どもに対する評価も日本とは違います。「11歳なら
SEXだってできるじゃないか。そんな危険な年頃の、しかも全てに
経験不足の二人が結婚を考えるとは何事か!」というわけです。
つまりこの二人の恋は彼らにはまがまがしいものと映ったわけです。
 一方、日本での11歳は、
純粋に子ども。SEXのこと
なんて、親だってはなから
眼中にありませんよ。
 とりわけ、私たちの時代
なら、まだまだお尻をむき
出しにしてぶっても、公開
処刑にしても、他から非難
されることのない年齢だったんです。実際、私が11歳でデートした時
などは、親が洋服を新調して、プレゼントを持たせて送り出してくれま
したから。


*)
左上は映画『小さな恋のメロディ』のスチール写真
右下は作家さんは分かりませんが、のどかな田園地帯で
幼い男の子と女の子がおままごとをしているイラスト。
僕好みのほのぼの感が心地よい作品です。

9月16日付

<9月16日>

これは『RIKU』さんという方の絵
です。SUさんと比べると線がはっ
きりしていて見よいですし対象が
ごく幼い子のものが多いようです。
お仕置き小説はSMとは違い大人
の性をおう歌するというより幼児
退行を楽しむ人が多いようで、自
分を幼女や赤ん坊に見立てて遊ぶ
人が沢山います。
RIKUさんも、そんな一人なんじゃ
ないでしょうかね。(*^_^*)
いえいえ、私だってそんな遊び、
嫌いじゃありませんよ。
RIKUさんは女の子でしょうから、このお膝はお兄ちゃまか、お父様で
しょうね。男の子の場合、それがお母様になります。
お母様はマリア様。絶対的な愛の源泉ですからね、お仕置きされた
ぐらいじゃその関係が揺らいだりはしないんですよ。そしてその揺ら
がない絶対的存在を肌で感じることができる
のがお仕置きというわけです。
本当に幼い時はお仕置きなんてされたら
この世の終わりみたいにパニくるだけで
すけど、ある程度大きくなると親の了見
みたいなものが見えてきて、その先には
必ず安住の地(抱っこ)が訪れると確信
をもてるようになりますから、辛いお仕
置きの最中も、どっかで甘えた気分にな
ってしまうんです。
これがお仕置き小説がSMなどではなく
愛の物語である所以なんですけど……。
ただ最近は、不幸にして親に愛されずに
育った人も少なくないようで、そんな方
にはこの気持は理解できないようです。

*)「RIKU」さんの作品は割りとネット上に多いと思います。
<左上>
http://thehandprints.com/Riku038.jpg
<右下>
http://thehandprints.com/Riku051.jpg

9月17日付

<9月17日>

左の写真は、べつにポルノ映画では
ありません。1926年の映画『緋文字』
のスチールです。
性に関してストイックなアメリカン
・ピューリタニズムが、逆にこんな
破廉恥な刑罰を生んだのかもしれま
せん。
私の育った時代も、清教徒と比較は
できませんが、礼儀や道徳、秩序や
規則といったことには厳格でした。
もちろん性に関することにも今より
強い制約がありました。
でも、それが刑罰(お仕置き)となると、とたんに破廉恥になるんです。
こんな時、親を含めおよそ周囲の大人達は子ども達に無慈悲でした。
『悪いことをしたんだから仕方がない』
そんな大義名分をかざして……みんなの見
ている前でお臍の下にお灸はすえるわ……
夜中パンツ一つで家の外に立たせるわ……
お浣腸と称して薮蚊がぶんぶんうなる庭の
隅で用を足させるわ、もう、やりたい放題
です。今で言うなら児童ポルノということ
になるかもしれませんね。
でも、当時はそれをいぶかしがる人なんて
いませんでした。大人達は子供の必死な泣
き顔を見て楽しみ、それを抱き上げて笑顔
にする事に無上の喜びを感じていたのです。
そう、見方を変えれば、この時代は児童ポ
ルノが街に溢れていたのかもしれません。
一方、やられた子どもの方はというと……
『一刻も早く大人になって自分の子どもをヒーヒー言わせてやるんだ』
そんなことを思って大人になりましたから、それが制約されていく時代
の流れに不満もあるんですよ。(^○^)


*)
<左下>
ほんとに最初見た時はポルノ映画のスチールかと思いました。
帽子以外全裸の婦人がピロリーに架けられているのを清教徒の
衣装を身にまとった男たちが取り囲んでいるという、文芸作品の
映画スチールとは思えないすごい写真です。
<右下>
これは絵のタッチからいって四条綾先生だと思うんですが、
一人は下着を下ろしスカートを捲り上げて後ろ向きに立っていま
すが、これからお仕置き(スパンキング)を受けようとしている
友達(姉妹かな)のことが気になって振り返っている。もう一人の
少女は今まさに母親(?)からお尻を叩かれるために自らスカートを
たくし上げ、下着を下げようとしている、その瞬間を描いたもの。
お仕置きする側の手にはスリッパが握られているが、描かれて
いるのは膝と手の部分だけだ。
結構緊迫感のある絵で「ぶたれているところだけがスパ絵じゃ
ないぞ」って作者が叫んでいるような気がする。

9月18日付

<9月18日>

イラストはLeeWarnerさんのもの。
聖母子風の構図で思わず笑ってしま
いました。
『人間考えることなんてみんな同じ
なんだなあ』って思ったんです。
私の作品の中にも天国や極楽、ある
いは煉獄や地獄なんてのをモチーフ
に描いた作品が幾つかあるんです。
実は、楽園ものは、愛のお仕置きを
趣味とする我々からすれば、しごく
理にかなったものだからなんです。
我々の世界はよく『コップの中の嵐』
に例えられますが、なるほどこのコップが割れることは絶対にありませ
ん。よって、壊れるかもしれない人間社会より絶対に壊れない(勿論、
概念的にですが…)神々の楽園を舞台にする方がぴったりはまると
いうわけです。
ただ、本来完璧でなければならない楽園に何かと問題を生じさせなけ
ればならないため、宗教関係者の方々が不快に感じられても困ると
思って、作品を公にしたことはありません。
この作品もあくまで聖母子風と逃げ
ているところがミソなんでしょうね。
右の絵はLeeWarner風ではあります
が、署名判読不能でどなたの作品か
はっきりした事はわかりません。
無慈悲に捲られるショーツと可愛い
お尻のコントラストが目に止まり、
私のコレクションから引張り出して
きました。(⌒~⌒;A ふきふき
よく、「こんな時に勃起しないのか?」
なんて失礼なことを聞いてくる人が
いますが、お仕置き小説は全て空想
の産物。誰も傷つけません。公私の区別がつかなくなったらやめますよ。


*)お暇でもあったら探してみてください。
<左上>
http://thehandprints.com/lwclr051.jpg
<右下>
http://thehandprints.com/variouss0865.jpg

9月19日付

<9月19日>

左の絵はローレンスって言ったかな
あ、記憶があいまいで御免なさい。
いずれにしてもそれほど有名でない
プロの絵描きさんが描いた大きな絵
の左下に小さく描かれた幼子をそこ
だけコピーして持っていたんです。
私の場合どのみち空想を膨らませて
作品に仕上げますから、原本は何も
スパンキングなどの絵である必要は
ないんです。
それより、子どもらしい品があって、
ほんの少し理知的、それでいて僅か
に愁いを帯びた少年少女の絵なり写
真なりがあればそれで充分なんです。
だから、この子だけじゃありませんよ。こんなごく普通の構図で描かれ
た絵や自然な笑顔のスナップ写真なんかが沢山ストックされていま
す。実は私の描くお仕置き小説というのは本来僕自身のために創っ
ていたメルヘンですからね、子どもはあくまで『僕』なんですよ。
σ( ̄∇ ̄;)
分かりますか?……この意味?(^_^;)
発表する小説は他の人が読む事を想定
していますから、便宜上、女の子が主
人公ってことになってますけど、その
為に女の子を実験台にしている訳では
ありません。要するに『僕がこんな事
されたらどんな気持だろう』『あんな事
されたら……ひょっとして気持ちよか
ったりして』なんて、僕をモデルに楽
しく想像しながら書いているわけです。
ですから、お父様のお膝でショーツを
ずり下ろされて悲鳴を上げている女の
子の股間には……実は、オチンチンが
生えているんです。_〆(・・ )♪


*)
<左上>
アンガースタイン家の子供たち

<右下>
これは本のページを切り抜いたものだったと思う。
もちろん、そっち系の本じゃない。
ただ、二人の幼女が並んでお尻を突き出す様が
「これからお仕置きをお願いします」と言ってるようで
可愛らしいのだ。

9月20日付

<9月20日>

下の絵はとあるヨーロッパのワインメーカーが使っていたラベルです。
つまりこの絵がワインラベルとしてビンに貼り付けられ店先に並べ
られていたわけです。
何かの催しに合わせた期間限定品というわけでもありません。
社長さんの(趣味?)遊び心なのでしょうか、ラベルの絵柄は
時代時代で代わりますが、構図は首尾一貫して子供がお尻を
叩かれている絵なのです。
歴代私の知りうる限りで14、5枚にもなります。
恐らく何十年も前から……ひょっとしたら創業当時からこのラベル
だったのかもしれません。
 これはあくまで私の個人的な見解ですが、どうもヨーロッパ大陸
の人たちは英米文化圏の人たちより子どもをきつく折檻する傾向に
あるようです。
世間では『イギリスの悪習』などと言ってイギリス人はやたらと
子どもに鞭を使うように言われますが、それは彼らが規則を犯した
子供の罰として鞭打ちを定めているから頻度が多いだけで、
実際に使われる時はかなり抑制的に見えます。
これに対しヨーロッパの人たちは子供を叩く基準が曖昧かつ
感情的で、いったん怒ると子どもは血が流れるまで打ち据えられる
ことになって、気の小さい私は肝を潰したことが何度もありました。
鞭打ちの文化、お尻叩きの文化というのはむしろ大陸の方が本場
なような気がします。
ですから過激だといわれるRGEfilmがチェコの会社だって言われ
ても「なるほどな」って頷けるんですよ。
(・o・)


*)
スパンキング柄のワインラベル

9月21日付

<9月21日>

 天使というのは無垢な子供の象徴
ですから。お仕置き小説の中でも昔
から数多くの題材になっています。

 私も天国ものや煉獄ものを書く時
には定番です。宗教的な薀蓄(うん
ちく)を言えるほど知識はありませ
んが、とにかく可愛いですからね、
ネタに詰ると思わず手を出してしま
う存在でもあります。(^_^;)

 ただ、私なりにその楽園は秩序が
定まっていて……天使は無垢な心の
ままで死んだ子どもの化身であり、神様に愛される子どもとして天国
で暮らしているという設定になっています。_〆(・・ )♪

 私のお仕置き小説はもともと愛が基本のお話ですから典型的な
悪人というのは物語に登場しません。天使が犯す過ちも『良かれと
思ってした事がかえって仇になってしまった』といった内容のお話が
ほとんど。

 ま、その割りに神様からのお仕置きがきついのですが……「そこは
天国というモラルの高い場所での出来事だから仕方がない」と勝手
な理屈をこねて正当化しています。(^^ゞ

 そこで、結構ハレンチなことを目論む時は煉獄という概念が便利
です。
ここは天国へ直接行くにはまだ魂の浄化度が足りない亡者が、天国
への切符を求めて魂の浄化を受ける場所ですから、結構厳しい罰に
も耐えるという設定が可能なんです。

 「そんな事してると地獄へ落とすよ」
 なんて上級天使に脅されて子供亡者
が泣く泣く従うなんてところはどこか
学校の教師と生徒の関係に似ています。

 ああ、あと地獄のお話は数が少ない
ですが『落ちこぼれのお人よし天使が
天才詐欺師を天国へ迎え入れるお話』や『地獄に落ちてしまった
少年が奮起して天国への切符を手にしたのに、誰もが等しく救われ
ない天上の現実を知ってそれを破り捨てるお話』などがあります。


*)キューピットを折檻するヴィーナス(ワトー)
キューピットを折檻するヴィーナス(ワトー)


9月22日付

<9月22日>

 ん~、凛々しいお姿、私好みです。
 私は教養も品性もありません。もち
ろん美男子でもありませんから、こう
いう娘(こ)に弱いんです。自分にない
ものに惹かれるというんですかねえ。
「娘にできないかなあ」なんて衝動的
に思っちゃいます。
 そういえば昔、私とほぼ同じ趣味を
持つとある大学教授に「私は白痴の娘
がいいなあ」って言われたのを思い出
しました。博識も教養もあるお方にと
っては、白痴の娘のやることなすこと
すべて新鮮に映るのかもしれません。
 ん~、ノータリンには実に羨ましい
限りです。
それと関連付けるわけでもないんで
すが、当時、集まっていた人たちの多
くは、どちらかと言うと親に甘やかさ
れたお坊ちゃん育ち。つまり、子供時
代もお仕置きとは無縁だったんです。
 「では、どうして?」ってお思いで
しょうが……それこそが無いものねだりなんです。
 お仕置きが不快なものだなんて、それこそ誰でも知ってますけどね。
でも、やってみたい。やられてみたかったんです。その思いがイラスト
になったり小説になったりするわけで、
そこでは往々にして過激に筆が滑りが
ちです。ですから読んだ方々からは、「ほ
~こんなこともしたのか、あんなこと
もされたのか」って勝手に推測されて
しまうみたいですが…自慢じゃありま
せんがね、私なんて平手で三つもお尻
を叩かれたら泣いて謝ります。(^^ゞ

*)
<左上>
外国の少女の立ち姿。雑誌の切り抜きだと思います。
<右下>
男の子の写真。新聞の切り抜きです。
いずれも二十年以上前になりますか。
ものもちがいいでしょう。(^◇^)

9月23日付

<9月23日>

 同じスパンキングでも、OTKなんかと違ってこれは可哀想。
これじゃあ大事な処が丸見えですからね。異性の親はすべ
きでないかもしれません。
 ただ、女の子に取材して分かった事なんですが、こんな
ことされても、実は、我々が思うほど彼女達はショックを
受けていないみたいなんです。
 いえ、こんなことを言うと、「また、また~」なんて言われて眉に唾を
つけられそうですが、その女の子、曰く……
 「大事な処を見られてそれを理由にパパを嫌いになった子は
確かに沢山いるけど、それって自分の心に『だから仕方がない』って
思わせるためなの。女の子の多くは何があってもパパが大好きよ。
だけど女の子って男の子のように自分では稼げないから、親から
独立しないと生きていけないのよ。勿論、大金持ちのお嬢様や
才能豊かな人は別なんでしょうけど多くの子は男中心の社会の中で
生きていく難しさを知ってるもの」
 正直、『なるほどなあ』って思いました。実を言うと僕らの仲間は
まったく逆。
ほぼ例外なく全員が超ど級のマザコン野郎なんです。表向きは、
『奥さん大事、子供大好き』なんて公言してますけど、
男同士本音を言い合う時は『奥さんよりお母さんの方が大事』
『奥さんは大人のおしっこをするためのオマル』『子供とはお母
さんと愛を争うライバル同士』ってことになるんです。
ま、女性にはこんな現実は理解しがたいでしょうね。
 でも、男ってね……∈^0^∋
 「さあ、パンツも脱いで!(-_-#)」
 なんて怒鳴られても無条件で従えるのは、世界で唯一
ママだけなんですよ。
 信じられませんか?
 そりゃあ、表向きそんな態度はとりませんからね。
 別に信じていただけなくても結構です。
 でも、それが本音です。



*)
話題に出てきたイラストはBarbaraさんの一枚です。
ただ、今はネットに他の絵に紛れてしか見ることが
できません。以下の場所にアクセス。
下から二段目、左側の絵です。
Barbaraさんの一枚

<記事とは無関係のおまけ(sassyさんのイラスト)>
注)この絵は私の日記に貼り付けた原本ではありません。
sassyさんの絵は、本人の意向だと思うのですが、多くの作品が
ネット上から引き上げられており、これは同じ絵をアメリカの
ブログで見つけたものです。
sassyさんの一枚

9月24日付

<9月24日>

これは四条さんの絵、見ればわかるで
しょうが女の子がオマルで用を足して
いるところです。
『こんな大きな子が?』って今の人に
は思われるかもしれませんが、当時の
母親はほとんどが専業主婦。
ですから子供に対してもとても世話好きでした。
前にもちょっとだけお話しましたが、
当時は娯楽の少ない時代でしたから、
自分の子供は何よりの娯楽の対象……
お人形、玩具、ペットなどと同じ感覚
だったんです。
ですから全体に子供へは過干渉ぎみで、
こんな大きな子のお下の世話だって、
そう珍しいことではありませんでした。
ただこの傾向は、社会全体がアメリカ
ナイズされていくなかでなくなってい
きます。彼らは何かにつけて子供が早期に自立することを喜びます
から。こうした伝統的な子育て観というのは、もちろん男の子でも
事情は同じで、私の家でも母は細々したことまで私の世話を焼き、
特に小学生時代は、学用品の取り揃えや勉強をみたりするのはもち
ろんのこと、おやつは母のお膝の
上で済ませ、お風呂も一緒に入っ
て身体を洗ってもらい、夜は母と
一緒の布団に包まって寝るという
のがごく普通の生活でした。
勿論、他の子も大半がそんな感じです。
たまさか自分の部屋にあるベッドで独り
で寝るなんてこともあるにはありました
が、それはそれ自体がお仕置きだったん
です。ですから、僕たちの感覚で言えば、
西洋のお友達は毎晩お仕置きを受けてる
ってことになるんです。(^◇^;)

*)
<左上><右下>
四条さんの絵は昔はネットでも見たような気がしましたが、
ありませんでした。趣のある絵で、何より温かみを感じます。
SMということではなく、あくまでお仕置きの絵なんですよ。
ま、どうしてもご覧になりたい方は風俗資料館(東京/飯田橋)
に行かれると見ることやコピーすることができると思います。
「東京」「会員制」とハードルは少々高いですが、地方在住者
むけの特別な会員制度なんかもあってこの趣味を持つ人に
とっては比較的有名な図書館(決していかがわしい場所では
ありません)です。

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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