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朝のしきたり < 第 4 回 >

❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈ [ 第4回 ] ❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈


お話がまたあさっての方向へ向いてしまいましたね。
僕の悪い癖です。すべてに落ち着きがなくて集中できないんです。
ごめんなさいネ。
m(_ _)m

てなわけで、朝の続きですが・・・。

朝ご飯が終わると部屋着を着替えてランドセルを持ってきます。
(^^ /""

もちろん朝の支度は自分でしますが、毎朝すぐに出かけられるわけ
ではありませんでした。
いつも玄関先でお母さんが待っていて、その場で気をつけの姿勢を
とらなければなりません。
(*_*)

女の子たちはさしたる時間がかかりませんが、男の子には厳しくて、
シャツの襟を直したり、はみ出した裾を半ズボンの中に押し込んだ
り。

それだけではありません。丸いつばのついた帽子を取って髪の毛を
なでつけたり、皺になったハンカチをアイロンの当たった新しいも
のに取り替えたりも。

おまけに、それが終わるとランドセルの中身が調べられ、忘れ物が
ないかをチェック。
(-。-;)

「それじゃあ僕ぼくの苦労は(T_T)?」
「それならはじめから全部お母さんが自分でやればいいじゃないか」
と叫びたいくらいです。

でも、本当にそう叫んでしまうと。

「何言ってるの!あなたのためにやってるんでしょうが。あなたに
まかせてたらホームレスの子供みたいにして駆け出すじゃないの」
(⌒o⌒)
ってひどい言われようなんです。

決してそんなことないんですよ。(T.T)

そして自分の仕上がりに満足すると、白い襟のあたりにお気に入り
のコロンをふりかけて一丁上がりとなるんですが、この一連の儀式
だけで一人3分から5分はかかります。本人はもとより他の子供達
にとってもそれは退屈な時間でした。

[えっ?たった3分や5分で!?]
と思ったあなた。あなた、大人ですね。(ー_ー;
子供は3分はおろか30秒でも退屈してしまう生き物なんですよ。
(¬―¬)

子供たちが退屈すればどうなるか。

当然、お友達を見つけてじゃれ始めます。
お姉ちゃんにとってそれは僕やみいちゃんをおもちゃにすることで
した。
帽子の顎紐を弾いたり、靴をはかせるふりをして遠くへ投げたりと、
とにかくろくなことしません。

極めつけはあがりかまちに腰を下ろしていたみいちゃんの頭へ腰を
落として乗っかかるとおまたでぐりぐり始めたんです。
(+_+)

「どうだ、気持ちいいだろう」
だって…。

こいつは本当に女の子だろうか?(@_@)
と思う一瞬です。

たしかに、見ればスカートも穿いていますし、お風呂に入ればおへ
その下に男の子なら当然あるべきものがありませんから、女の子に
間違いはなさそうなんですが、その言動は普段から女の子を拒否し
ているかのようでした。

そんな彼女は当然お母さんやおばあちゃんの悩みの種でした。
男尊女卑の思想がまだ根強い当時の田舎では学級委員の選挙ですら
正副の別をもうけていて、女の子は副学級委員という役職に就くの
が通例でした。
つまり女の子は男の子のサポート役という位置づけだったのです。

[えっ?おれ、おまえとあんまし歳かわわらないけどそんなじゃな
かったぞ!]

ごもっとも。m(_ _)m
あとで知ったのですが、文部省はそんなこと言ってません。
男女一名ずつを学級委員にしなさいと言っているだけです。
ところが、それではうちの田舎は収まりがつかないらしくて……で、
結局、こんな形に……。

本来リベラルな考えの教育関係者ですらこうなのですから一般家庭
はもっと徹底していました。

お母さんだってご飯も炊けないでお嫁に来た身ですからネ。
いくら自分の働きで家族を養っているといっても肩身は狭いわけで
すし……おばあちゃんにしても「このうえ孫まで同じ様にになった
んじゃたまらん」という危機感があったみたいです。

[ねえ!お父さんってさっき朝ご飯の時いたじゃないか。あの人、
働かないの?]
(*_*)

そうだ、そのこと説明してませんでしたね。
あの人、働かないんです。
(T_T)

うちは、商売上の名義人は一応お父さんになってるけど、実質的な
経営者はお母さんなんです。

お父さんは書道の展覧会を主催したり、東洋哲学の本をだしたり、
骨董品を集めたり、と文字に書くと見栄えはいいんですが、およそ
お金になることは何もしない人なんで、お爺ちゃんやお婆ちゃんは
とっても頭を痛めていたそうなんです。

そこでお爺さんとしても、『家を継ぐ者がこれじゃあ』と思案した
あげく、家事なんかできなくてもいいから商売のできる女の人をっ
てたずね歩いたら、お母さんに巡り合ったってわけなんです。

当時お母さんはお父さん(ぼくから見ればおじいさん)が亡くなっ
たので大学進学を断念、お兄さん(僕から見ればおじさん)と一緒
に家業を手伝っていたんですが、評判の商売上手で、商売仇からも
「女にしとくにはもったいない」と言われていました。

でも、花嫁修行はさっぱり。学校時代から家事のような仕事に興味
がなかったみたいです。

ですから、お母さんの親代わりだったおじさんも最初にこの話を持
ち込まれた時は、笑って一蹴したそうなんですけど、おじいさんの
熱心な誘いと、ちょうど事業を大きくするためにまとまったお金が
必要だったこともあって、泣く泣く妹をお嫁にだすことに……。

結婚式の前日、
「何でもいいから理由つけてさっさと帰ってこい」
ってお兄さんから耳打ちされたって、お母さんがうち明けてくれた
ことがあります。

だからお母さんは本当に何の家事もできないんだ。

だって朝夕の食事や洗濯、運動会で使う赤白の玉や絵画教室で服を
汚さないために着る割烹着を縫っくれたのも全部お手伝いのハナお
ばあちゃんだもん。

うちのお母さんはお母さんなんだけど主婦じゃないんだな(>_<)

でもって、そんなお母さんも娘にはまともなお嫁さんになってほし
いと思ってるらしく、日舞なんか習わしてるんだけど、とにかく、
お手本が何もできないんじゃ説得力もないし……(;_;)

そこで出来上がったのがメジラってわけで……みんなお姉ちゃんの
ことは……

「女にしとくにはもったいない。そのうち生えてくるじゃないか。
だけどありゃあ、おふくろさんからの遺伝だな」
って……

お母さんは町の噂に「確かにそうだなあ」って思う時もあるみたい
だけど、でも、完全に諦めたわけじゃないんだ。
だからこの時だって「ほら、やめなさい。おばあちゃんが来るわよ」
とは言ったんだけど、時すでに遅しだったんだ。

その時はすでに近所に住んでるおばあちゃんが玄関の前に立って
た。
開け放たれた玄関からはお姉ちゃんの悪ふざけが丸見えになってた
んだ。

「ほれ、あんたは何をしとるんじゃ。出世前の男の子の頭に股ぐら
なんぞ突っ込んでからに。おまえは女の子なんじゃぞ」
その声はメジラだけでなくお母さんの心臓にもよくなかったみたい
です。

おばあちゃんはお姉ちゃんを払いのけ、みいちゃんの頭を大事そう
になでつけます。
そして、こうも言うのでした。

「明子さん、こういうことは幼い時にはっきりさせといた方がええ
んじゃないやろか」

この時お母さんはお姉ちゃんの顔をものすごく怖い顔で睨んでいま
した。
そして、僕にコロンを振りかけると、

「そうですねえ」
とだけ答えます。
そして、ぱんぱんと両手を叩いて、
「さあ、行ってらっしゃい。早くしないとバスに間に合わないわよ」
と僕たちを送り出すのでした。

ただし、お姉ちゃんも一緒になって玄関を出ようとすると、

「サキちゃん、あなたは残ってちょうだい。今日はちょっとお話が
ありますからね」

お母さんの呼び止めにお姉ちゃんの顔は真っ青に変わっていまし
た。
これから何が起こるのかお姉ちゃんはこの時すでに身の危険を感じ
ていたのでした。

****************************

朝のしきたり < 第 5 回 >

❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈ [ 第5回 ] ❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈


学校に行くバスの中で、みいちゃんが浮かない顔をしているので尋
ねると、

「お姉ちゃん、厳しいお仕置きになるんじゃないかあ…かわいそう
だな」
って。

みいちゃんと僕とは双子だけど、二卵性双生児なので顔も性格もま
るで違うんだ。
みいちゃんはきかん坊で場当たり的な僕に比べればおとなしく思慮
深い子で、愛くるしい顔をしてたから誰からも愛されてました。
(^0^;)うらやましい。

大人たちに頭をなでられたりだっこされたりが兄弟の中で一番多か
ったんじゃないかな。

そんなことも影響したのか、大人が今何を考えているか、感じるの
も兄弟の中で一番敏感だったみたいなんだよね。

実はお母さんもそうで、僕たちは一度抱き上げられてしまえばまず
隠し事はできませんでした。

「お母さん、嘘は嫌いなのよ」(v_v)

こう言って頭をなでながら追いつめられます。
あのメジラですら、それは同じでした。
げに恐ろしきは母の愛
(゜◇゜)ガーン

それはともかく、みいちゃんの予想はこの時もピタリと当たってし
まいます。
\(◎o◎)/!コワイ

茜お姉ちゃん(メジラ)はとうとう一時間目を欠席してしまった
のです。

[えっ!お仕置きのために学校を休むなんてことあるの?]

あるの。(/_;)
僕のところだけじゃないよ。当時は親が子供にお仕置きするために
学校を休ませるなんてことはそう珍しいことじゃなかったんだ。
もちろん今なら虐待事件ってことになるんだろうけど、当時は親子
の関係が親密だったからね。ちょっとくらい脱線しても親子関係に
ひびなんて入らなかったんだよ。

[じゃあ、『今日はOOちゃんをお仕置きするため学校を休ませて
ください』って親が学校に電話するんだ]

まさか(^○^)
それはないよ。たいてい体調がすぐれないのでとか言って病欠にす
るんだ。
ただ、親しい友達の間ではうち明けてくれるから知ってるんだ。
男の子もだけど女の子が意外に多かったネ。

[どうして?]

普段、男の兄弟がいると悲鳴を上げるようなお仕置きはしにくいだ
ろう。だから、こんな時にまとめてやるんだ。
逆に言うと、学校休んでまでだからきついお仕置きの可能性が高い
んだよ。

この時は僕たちまだ小学2年生だったからそのへんの事情を飲み込
んでなかったけど、みいちゃんはそのことを直感的に理解してたん
だね。

[じゃあ、学校に来たお姉ちゃん沈んでた?]

ところがねえ(>_<)ゞ
二時間目から学校に来たあいつ、妙に明るいんだ。
きっと、お仕置きされたのを悟られたくなかったんだね。

わざわざ休み時間に僕たちの教室へやってきて、読みたいと言って
たマンガを置いていったの。
ほかの子の見ている前でさんざん僕たちの悪口を言ってからかって
からね。

それっていつものことだけど、この時はいつも以上に明るく振る舞
おうとしてたんだ。

[じゃあ、お仕置きはなかったんじゃないの?]

違うよ。(*^_^*)
というのは、その夜のお風呂でわかったんだ。

僕んちではお姉ちゃんと一緒に子供たち三人でお風呂に入ることに
なってるんだけどこの日はなかなか入ってこなかった。

狭いお風呂に子供たちだけで入るのは、お姉ちゃんが僕たちの体を
洗ってくれるのを大人たちが期待してたから。
結局、最後はちゃんと洗えたかどうかお母さんのチェックがはいる
んだけどね。
∈^0^∋二度手間なの。

[でも、それってお姉ちゃんは拒否できないんだろう?]

もち(^o^)
お母さんたちにすれば女の子が幼い弟の面倒をみるのは当然の
ことなんだよ。

で、その時見たんだよ。お姉ちゃんのお尻のえくぼに一つずつ大き
なのが据えたてあるの。
(*^_^*)

お転婆娘だからね、もともとお灸の痕はあったんだけど……それは
黒ずんでたからね、きっと今日据えられたばかりのはずだよ。

前は一生懸命隠そうとしてたけど、ここもお臍の下に三つもあった。

[お灸って熱いんだろう?]

当たり前なこと聞くな!(`ヘ´)
あれって熱いのは通り越して錐で揉み込まれるように痛いんだ。
(>_<)
しかも、お姉ちゃんがこの時据えられたのは実はそこだけじゃなか
ったんだ。

[どこに?]

見たわけじゃないけど、おそらくおまたの中も……

[そんなところも?…でも、どうしてわかるの?]

そのあと一ヶ月くらいしてからかなあ。お母さんのご用事でお母さ
んのタンスを開けたらお姉ちゃんのその日の日記が出てきたんだ。

[へえ~、お姉さん毎日日記つけてんだ]

違うよ。これはお仕置きされたときにお母さんから強制的に書かさ
れるやつなんだ。
僕たちも同じだよ。『こんなおいたをして、こんなお仕置きを受け
ました。ごめんなさい。もし今度同じことをしたらどんな罰も受け
ます』ってね、誓約書みたいに書かされるんだよ。
φ(.. )

たいてい泣きながら書くことになるね。
(/_;)

[で、そこにはどんなことが書いてあったの?]

どんなって…

『昨日は約束を破ってオナニーをしました。今日もみいちゃんの頭
でオナニーのようなことをしようとしました』って…
『おまたの中のお灸はとっても熱かったので、今度こそお約束を守
ってもうオナニーはしません。もし、今度約束を破ったらおしっこ
の出口にお灸を据えられてもいいです』って。

ねえ、オナニーって何だろう?
お姉ちゃんいつもそれで叱られてるみたいなんだ。
お母さんに聞いても「子供が覚える必要のないものです」って教え
てくれないんだ。

[何だ、知らないんだ(¬―¬)]

ねえ、オナニーって何だよ。

[子供は知らなくていいことさ(^0^;)]

何だよう。教えてくれてもいいじゃないか。僕がお姉ちゃんを助け
てあげられるかもしれないじゃないか。
(`ヘ´)

[無理、無理、ヾ ^_^]

証拠はほかにもあるよ。
わざわざ僕たちがいるときにおばあちゃんが襖を開けてこう言うん
だ。

「これからお姉ちゃんにお薬つけるから入ってきちゃいけないよ」
って。

だけど、そのおばあちゃんの後ろにはいつも素っ裸になって、そう、
赤ちゃんがおむつを換える時のように仰向けで両足を高くあげたお
姉ちゃんがいるんだ。

あれって、わざと僕たちに恥ずかしい姿を見せつけようとしてるん
じゃないかなあ。きっとあれもお姉ちゃんへのお仕置きなんだよ。

で、その姿でお薬を塗るとしたら、おまたの中以外にはないじゃな
いか。

[なるほどネ(;_;)]

だって、僕だって、おoんoんやおoんoん袋の裏側に据えられた
ことがあるもん。
お尻の穴とかも……本当だよ。

お母さんがお仕置きとして据えるお灸は、とにかく痕が目立たない
場所に据えるんだ。
本当に敏感なところはさすがにしないけど。

[かわいそうに(/_;)君んちの親って怖いんだね]

ありがとう。(/_;)僕だってそう思うよ。ものすごい親だなあ、コワ
イ親だなあって。

でも、僕が、
「お母さんなんて大嫌いだあ」
って言うと、

「だったら、おじさんとこへ行きなさい。おじさんは子供がいない
からおまえを養子に欲しいって………可愛がってくれるわよ」
って……

でも、それ言われると、また、ぼく泣いちゃうし……(/_;)
お仕置きは怖いけど、やっぱりお母さんのそばいいもん。(・_・)
(._.)

虐待だって言われればそうかもしれないけど、ぼくのこと一番知っ
てるのはお母さんだし、一番かわいがってくれるのもお母さんだし、
心配なことや不安なことがあったら、やっぱり一番最初に行くのは
お母さんの所だしね。

ぼくはやっぱりお母さんでいいよ。

あっ、そうだ。(^_^)b
お姉ちゃんのお灸の様子、話して欲しければお手紙にして送っあげ
るよ。
実際に見たわけじゃないけど。お母さんのお仕置きはよくわかって
るから、ほぼ間違いないと思うよ。



***今回はこれでおしまい。またね**ヾ(^_^)BYE.BYE***

<登場人物> / <追憶小説とは>

<登場人物>

【おうちの人たち】

僕(小2)……ちいちゃん
これといって才能はないが、長男だから何かと優遇されている
  幸せ者

弟(小2)……みいちゃん
僕よりちょっぴり気弱だけど、理数系に強く、感受性も豊か。
  とっても可愛い顔をしているからみんなに好かれている。

姉(小5)……お姉ちゃん
近所ではメジラと呼ばれ恐れられている乱暴者。姉御肌で体
   育会系。茜ちゃんとも呼ばれている。

従姉妹(中1)…セイちゃん
事情があってうちで預かっているけど、清楚で上品、頭もいい。
  僕はマリア様みたいに思っている。清美お姉さん。

お父さん(質屋店主)
    東洋哲学と書道が生きがい。お金にならない事ばかりして
    暮らしている道楽者。お母さんには頭が上がらない。

お母さん(お父さんの奥さん)
   怒ると信じられないほど怖いけど普段は優しい一家の大黒柱

おばあちゃん(お父さんのお母さん)
    近所におじいちゃんと住んでいる。お姉ちゃんにはなぜか
    やたら厳しい。メジラお姉ちゃんの天敵。お灸マニア。

ハナさん(お手伝いさん)
家事がまったくできないお母さんに代って我が家で主婦を
    しているおばあちゃん

【三愛学園の先生たち】

担任/小田切先生(僕たちの担任、国語と社会を教えてる)

体育/大河内先生(お外の授業と保健)

体育/神林先生(バレイ)

体育/樺島先生(日舞)

理科/丸山先生

音楽/仁科先生(合唱)

音楽/小林先生(ピアノ)

姉の担任/牧村先生

バスターミナルの先生たち
 シスター天野(老婦人)/ バスターミナルで生徒の誘導
 高宮先生(若い先生) / バスに一緒に乗り込んで点呼

*************************

<追憶小説とは>
 追憶小説というのは自分の思い出を下敷きに
創られた小説のことです。
 小説ですからすべて事実ではありませんが…

この小説について

<この小説について>
 童話のパロディーです。
 私はあまり過激なものは好みませんので、
童話の二次ものはよく創ります。
 本人はメルヘンチックなものとして創った
つもりですが、感じ方は人それぞれですから
そのあたりはご注意くださいませ。m(__)m

 

「お菓子の家」編 ~1~

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~1~ ♔♕♖♗♘♙♚

 アンナはグリムの森にお母さんと住んでいました。今年11歳に
なる女の子はとても活発で勇気があります。ですから、森の動物や
精霊たちからはとても人気があったのですが、まともな……いえ、
自分たちを『まともな人種』と信じる大人たちにとってはちょっと
困ったちゃんでもありました。

 昨日も牧師様の処へ行って教会や牧師館のお掃除をお手伝いした
まではよかったのですが感動した牧師様が何でも部屋にある好きな
物を一つだけあげようというから、小さなマリア様の像をいただく
ことにしました。

 ところが、疲れたアンナはそれをお股の中に入れたまま牧師様の
ベッドでお昼寝してしまいます。

 夕方になり牧師様がアンナを起こそうとシーツを払いのけると…

 「!!!」

 そこには、マリア様の像を自分のお股の中に差し入れて爆睡する
アンナの姿が……

 牧師様は卒倒しかけましたが、冷静になってアンナにわけを尋ね
ます。
 すると…

 「だって、いつも抱いてる熊のピーちゃん(ぬいぐるみ)抱くと
両手が塞がっちゃうでしょう。仕方がなかったのよ」
 という答え。

 「だったらベッドから出せば良いじゃないか!?」
 と言うと…

 「だって牧師様の気が変わって『返せ!』なんて言われたら嫌だ
もん』パンツの中の方が安全だわ」
 アンナはあっけらかんとして答えます。彼女、アクティブで物怖
じしない処は良いのですが、頭はちょっと回らない子でした。

 結局アンナは先週脱いだばかりのAという刺繍の入った赤い頭巾
を再び被らなければなりませんでした。

 「あなた、また、牧師様からお仕置きを受けたの?」
 赤いずきんを被って帰宅したアンナにママは呆れて尋ねます。

 「ん?……うん、一週間だって」
 「こんどは何をやらかしたの?」
 しかし、その理由を聞いた時にはあまりにバカバカしくてもう声
にもなりませんでした。

 こんな按配でアンナはいつもAが刺繍された赤いずきんを被って
います。おかげで、みんなから『あかずきんちゃん』『あかずきん
ちゃん』と呼ばれるようになっていたのでした。

 次の日、あかずきんちゃんはママにお使いを頼まれます。
 「おばあちゃんのお家にこのビスケットを届けてちょうだい」

 「え~~~いやだあ~~~だって、あんな処まで行ったら帰って
来るまで一週間もかかるじゃない。今日は、マーガレットとお花を
積みに行く約束があるし、明日は妖精さんたちのパーティーにおよ
ばれされてるのよ。明々後日は王女様の誕生会。ものすごく沢山の
ご馳走が出るんだから」

 口を尖らせて抗議するアンナにママは…
 「何言ってるの。おばあちゃんは今、風邪をこじらせてベッドで
寝込んでるの。あなたに会いたがってるわ。……だいいち、あなた、
そのずきんを被っておよばれに行くつもりじゃないでしょうね」

 「だって、しょうがないじゃない。牧師様が一週間はこれを脱い
じゃいけないって…牧師様が悪いのよ」

 「何言ってるの、あなたが悪いんでしょう。ママはそんな恥ずか
しい子をパーティーに出すつもりはありませんからね。今回はおば
あちゃんの処へいってらっしゃい」

 「いやよ。だいたい、みんなだってそうよ。私の赤ずきん姿なん
てもう見慣れちゃってるわ」

 「あっ、そう。どうしてもいやなら、たっぷりお仕置きをしてあ
げるから、その後ここを出て行きなさい。お言いつけを守らない娘
なんてママの子じゃないからどこへでも行っちゃいなさい。そうだ、
おばあちゃんの家の近くに住むオオカミさんから、私、頼まれてた
わ。養女になる子を探して欲しいんだって………ちょうどいいわ。
あなたならあげてもいいわね」

 『(何言ってるのよ)』
 赤ずきんちゃんはママを睨みました。
 『どうせまた脅かしに決まってるわ』
 そうは思うのですが確たる自信もありません。11歳のアンナは
まだ純真な子供でしたからママの指示には逆らえませんでした。

 結局、ビスケットを一杯に詰めたバスケットを持って森の中へと
入っていきます。

 「えっ!何よこれ、ママの嘘つき。おばあちゃんにビスケットを
届けるだけじゃないじゃないの。まだこんなにたくさんのご用があ
るんじゃないの」

 赤ずきんちゃんはママからのメモを見て愕然とします。そこには
……
 『(追伸)それから魔法使いのお婆さんの家に寄っておばあさん
が修理をたのんでおいた箒を受け取って欲しいの。それから七人の
コビトさんの家によって、あなたの誕生日ケーキを注文してきてね。
大きさやデザインなんかはあなたが決めていいわよ。そうそうそれ
と、お義姉様のお城へ行って王女様、つまりあなたから見れば従兄
弟ね。その子たちをお仕置きなさるそうだからそれを見届けて来て
欲しいの。土曜日の午後っていうから、時間厳守で行ってよ』

 「何よ、お義姉様のお城ってシンデレラ城のことでしょう。だい
たい、シンデレラ王妃様とママが義姉妹ってのが信じられないわ」
 ぶつくさ言いながら赤ずきんちゃんは森の中を歩きます。普通、
人間社会では幼い子は森に入っちゃいけないというのがごく自然な
ルールでした。もし暗い森の中で道に迷ったら出てこれないからで
す。ですが、このグリムの森では赤い靴を履いている限り道に迷う
ことはありません。この靴さえ履いていればその子の意思とは関係
なしに勝手に足が動いて目的地まで連れて行ってくれるのでした。

 「げっ!!!」
 赤ずきんちゃんはメモの最後を見てさらにショックを受けます。
そこにはおばあちゃんの家へ行く前にイバラ姫様のお城へ立ち寄り
なさいと書いてあったのです。

 イバラ姫様は赤ずきんちゃんの大叔母さんにあたる人なんです
が、ここへ行く時は決まってお仕置きをもらいに行く時なんです。
大叔母さんは子供へのお仕置きが大好きで自分の子供たちだけで
は飽きたらず、近所の子供たちまでその母親に代わってお仕置き
するような……そんな人なのです。

 でも、今ではそんな評判が広がって、国の内外から母親たちが
泣き叫ぶ子供の手を引いてこの城へとやってくるようになっていま
した。

 「嫌だよ、あんな処。ママったら、私をだましたのね。まったく
あの女、陰険なんだから」

 赤ずきんちゃんはぼやきながら慌てて赤い靴を脱ごうとします
が、時すでに遅し。この靴は一旦履くと目的地に着くまでは決して
脱げない仕組みになっていました。

 「え~~~どうして脱げないのよお~~~」

 諦めた赤ずきんちゃんは一旦は歩みを止めてバックしようとしま
したが……

 「……どうして足を後ろにを向けられないのσ(`´メ∂」
 赤ずきんちゃんの靴は前へはすんなり進むのですが、踵を返して
バックしようとしてすると、靴が急に重くなって動かなくなるので
す。

 「ダメかあ~~」
 諦めるしかありませんでした。

 「何よ、もうこうなったら、絶対この場所を動かないからね。
だいたいどうして私の方からお仕置きされに出向かなきゃならない
のよ。変よ、絶対に変よ」
 赤ずきんちゃん、ストライキです。

 でも、それも無駄でした。
 「……あっ、やめてえ、~~~痛い、痛い、痛い痛いんだから」

 あまり長時間その場に留まっていると、どこからともなく柳の枝
をくわえたツバメが急降下してきて……

 「ピシッ」

 「痛い!」
 赤ずきんちゃんのお尻を鞭打ちます。

 「いやあん、やめてえ~~」
 どんなに逃げてもツバメは赤ずきんちゃんのお尻を正確に捉え続
けます。
 ですから、赤ずきんちゃん、もうこうなったらママのメモ通りに
森の道を進むしかありませんでした。


***************** <つづく> *****

「お菓子の家」編 ~2~ 

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~2~ ♔♕♖♗♘♙♚

 グリムの森は明るい森です。お日様の光が大きな木の根元にまで
届いて可愛らしい草花があちこちに小さな花をたくさんに咲かせて
いました。ですから、赤ずきんちゃんはそれをたくさん摘んでバス
ケットに入れます。最初に行く魔法使いのお婆さんは顔はとっても
醜いのですが綺麗なものは大好きでした。

 「ここにもあるわ……あそこにも……黄色はあるけど紫はないか
しら」
 そんなことを呟きながら赤ずきんちゃんのバスケットはいつしか
お花で一杯になっていました。

 「このくらいでいいでしょう」
 満足した赤ずきんちゃんはお空の上からまだ用心深く自分を監視
しているツバメさんにあっかんべーをして魔法使いのおばあさんが
住むお家へと走っていきます。

 「やったあ~、ここだわ。相変わらずおばあさんは綺麗好きね、
まるで出来立てのお菓子でできてるみたいだわ」

 感心してお家を眺めていると、中から子供の悲鳴が聞こえました。
 「ごめんなさい。もうしません。もう食べないから許してよお」
 好奇心を刺激された赤ずきんちゃんはそうっと窓から部屋の中を
覗いてみます。するとどうでしょう。部屋の中では魔法使いのお婆
さんが膝の上に乗せた男の子のお尻を平手で叩いています。

 『お仕置きだわ。どうしたのかしら。あれ、ヘンゼルよね』

 赤ずきんちゃんはお友だちのお仕置きを目の当たりにしてとても
中に入る勇気が湧きませんでした。そこでもう少し部屋の中の様子
をうかがってみると…

 『やだあ、グレーテルがあんな処にいる』
 赤頭巾ちゃんが見たグレーテルは暖炉のそばに置かれた木馬の
上にいます。子供のお仕置き用なので跨る処は尖ってはいませんが、
スカートはすでに捲り上げられ、下着も身につけていませんでした。

 「(パン、パン、パン)」

 「ごめんなさい、もうしません。もう食べませんから」

 「当たり前じゃ。しかし、お前たちには以前にも前科があるから
のう。そう簡単に許してやるわけにはいかんのじゃ」

 「(パン、パン、パン)」

 「いやあ、だめえ、ごめんなさい」
 ヘンゼルは半ズボンとパンツをずり下げられた姿勢で、しきりに
謝っていますが、お婆さんは許す気配がありません。

 『あっ!』
 そんな中、部屋の中を観察していた赤ずきんちゃんはあるものに
気がつきます。

 『やったあ、本物のお菓子の家だわ!』
 魔法使いのお婆さんはもともと自分の家そっくりに作ったお菓子
の家を欲しい人に売っていました。それが今、テーブルの上にある
のです。

 『まだ、作りかけなのかなあ』

 いえいえ、その一部は明らかに食べられています。
 つまりそれが問題だったのです。

 「せっかくわしがお皿にクッキーを盛ってやったのに、大事な注
文品に手をつけよってからに…」

 「(パン、パン、パン)」

 「ごめんなさい、つい美味しそうだったから……」
 そうなんです。ヘンゼルとグレーテルはお婆さんの商売もののお
菓子の家に手をつけてこっそり食べてしまったのです。

 「ママに言ってお金をもってくるから……」

 「(パン、パン、パン)」

 「何を言っとるか。生意気言うもんじゃないぞ。まだガキのくせ
に。お金の問題じゃない。わしの信用の問題じゃ。まったくもって
最近のガキはこざかしいわい」

 お婆さんはそう言うとさっきよりさらに強くスナップを効かせた
平手打ちでヘンゼルのお尻を見舞います。

 「(パ~ン、パ~ン、パ~ン)」

 「いやあん、だめえ~~もうしないでえ~~」
 ヘンゼルは両方の手足をばたつかせて必死のお願いです。

 と、そこへ一羽の鳩が赤ずきんちゃんの肩を掠めて家の中へ……

 「おうおう、戻ったようじゃな。ようし、待っておれよ」
 お婆さんはヘンゼルを膝の上から下ろすと鳩を追って巣箱のある
隣の部屋へ。

 しばらくして……
 「おう、おう、これじゃ、これじゃ」

 ほどなく戻ったお婆さんでしたが、鳩の足首に着けられていた手
紙を見ながら何やら上機嫌です。そして三角木馬からグレーテルも
下ろして二人にその手紙を見せるのでした。

 「ほれ見てみい。……どうじゃ、お前等の母上はお菓子のお金を
払うと書いてあったか」
 魔法使いのお婆さんは勝ち誇ったように高笑い。

 憎々しい笑顔ですが、実際、手紙の内容は二人にとっては最悪の
内容だったのです。

 「お前たちの母上はわしにどんなお仕置きでもしてよいと言って
おるぞ。それがお前たちの為だからどんなことをされてもしっかり
耐えるようにとも書いてあったな。どうじゃ、ちっとは観念した
か?」

 お婆さんは不気味に笑います。その前で二人の子供たちは震えて
いるよりほかありませんでした。

 「このような性悪なガキにはどんな罰がよいかのう。ヒキガエル
にするというのも古典的過ぎるし……素っ裸で石像にでも変えて、
一週間ほど村の辻に立たせておくというのも、いいかもしれんな。
…………どうじゃ、グレーテル、そんなのは……ん?嫌か?………
恥ずかしいか?」

 お婆さんは困り切った二人の顔を楽しむようにゆっくりと眺めて
から、どうやら一つの結論に達したようでした。
 ただ、その答えは子供たちには告げず、さっそく辺りを片づけ始
めます。食べかけのお菓子の家は戸棚にしまい。編みかけの毛糸
のショールや銀の食器なども隣の部屋へ。代わりに持ってきたのは、
白い大きなシーツとお盆に乗った数種類のガラス器、それに、暖炉
の灰をかくための鉄の棒などです。

 「(えっ!)」驚きが声にもならず目が点になる二人。

 でももし二人が本当によい子なら、これらを目の当たりにしても
それほど驚かなかったかもしれません。実際、普段はお転婆なはず
の赤ずきんちゃんでさえこれらのものを見てもたいして驚きません
でした。

 『あれ、何だろう?注射器みたいだけど、それにしてはおっきい
し……あっ、あれなら知ってるわ。豚さんに番号を付けるやつよね。
でも、ここに豚さんいたっけ?』

 赤ずきんちゃんはお転婆少女でしたが、本当に厳しいお仕置きは
まだ誰からも受けたことがありません。ですから、ここに並べられ
たお道具に顔が真っ青になっている二人を見ても、それがいったい
どのくらい凄いことなのか理解できないでいたのでした。

 「わっ!なんじゃ、なんじゃ、汚い子じゃなあ」

 魔法使いのお婆さんが突然発した嬌声に、赤ずきんちゃんは何事
だろうとグレーテルの方を見ます。すると、まだ何も始まっていな
いというのにグレーテルがお漏らしを始めているのです。

 「まったく汚い子じゃ。……いいから、これで拭け」
 お婆さんはグレーテルにボロ布を投げつけます。これで自分のお
股をぬぐえというのでしょう。

 『いやよ、こんな汚いぞうきんでなんか。こんなので拭いたらか
えってお股が汚れるわ』

 グレーテルは思いましたが口に出して反論する勇気はありませ
ん。仕方なく投げられたボロ布で自分の太股のあたりをそうっと撫
でてみますが……

 「まったく手間のかかる子じゃ。パンツを脱がなきゃ綺麗になら
んじゃろうが」

 お婆さんはそう言ってグレーテルに飛びかかるとグレーテルから
ボロ布を奪い取り、少女のパンツを問答無用でずり下げるとお股を
鷲づかみにしてふきあげてしまったのです。そして何も言えず立ち
つくしているグレーテルに向かって……

 「ん?どうした?ありがとうございますの一言も言えんのかい。
親の躾がなっとらんのう」
 と迫りますから…

 「あ、ありがとうございました」
 グレーテルは仕方なく小さな声をあげます。屈辱的でしたが仕方
ありませんでした。

 「よし、では、服を全部脱いで…今度はこれを着るんじゃ」
 お婆さんが棚から取り出したのは、キャミソールと白いフレアの
スカートがついたワンピース。でも、ショーツはありませんでした。

 「おう、おう、よう似合っとるぞ。お漏らしするような赤ちゃん
にはこれで十分じゃて……よし、ヘンゼルもパンツを穿いてよいぞ」

 留魔法使いのお婆さんは二人に一旦下着を身につけることを許す
と、すっかりしょげかえってしまった二人を前にして一枚の誓約書
を提示します。そこには…

 『私たちはお婆さんが大事にしているお菓子の家を食べてしまい
ました。ですから、お婆さんからの罰を受けて許してもらうことに
します。どんな罰でも素直に受けます。絶対に恨んだりしませんか
ら、どうか神様、私たちをお守りください』

 と書かれてあります。まったくおばあさんの一方的な言い分です
が二人はこれにサインしなければなりませんでした。グリムの森の
子どもたちは大人たちからお仕置きを受ける時、どんな罰でも素直
に受けますという誓約書にサインをする仕来りになっていました。

 もしお仕置きの後、誓約書に反してあちこちで恨み言を言うと、
さらに厳しいお仕置きが待っていますから、子どもたちにとっては
これにサインすること自体とても勇気のいることだったのです。

 ためらいながらも二人が誓約書にサインをすませると、お婆さん
は二人を呼び寄せてとってもやさしく抱きしめます。なんだか矛盾
しているみたいですが、これもまたグリムの森のルールでした。

 『子どもたちへのお仕置きは、大人が冷たく突き放すための刑罰
ではなく、愛する者が愛の中で行う愛の儀式』
 そんなポリシーからでした。子供たちはお仕置きの前後には大人
たちから優しく抱いてもらいます。

 とはいえ二人の子供たちにしてみれば、お婆さんが用意したもの
からこれからどんなのお仕置きが自分たちに待っているかを容易に
想像できます。たとえお婆さんから一時抱いてもらったとしても気
もそぞろといった様子だったのです。

 「どうした?怖いか?…でも、仕方がないのう、お仕置きじゃか
らな」

 震える二匹の子羊をお婆さんは交互に抱きながら落ち着かせます
が、そのうち窓辺に赤いずきんを見つけます。

 「おう、赤ずきんじゃないか、来ておったのか。入れ、入れ」
 赤ずきんちゃんは随分待ってやっと魔法使いのお婆さんの家に入
る事ができました。

 「おばあちゃまの箒じゃな、おうおう出来ておるぞ。これは性格
のいい働き者でな、きっと気に入るはずじゃ。これがあればな、夜
の間にお部屋が見違えるように綺麗になるからな、体の不自由なお
前のおばあちゃまにはぴったりな箒じゃ。わしには、まだいらんも
のじゃがな。(^◇^)」

 魔法使いのお婆さんは自慢の箒を手渡します。すると、赤ずきん
ちゃんはお礼にバスケット一杯に摘んできたばかりの花を差出した
のでした。

 「これ、お花、私が摘んだの」

 「おお、そうか、そうか、綺麗じゃ綺麗じゃ。これはお前の心の
ように綺麗じゃぞ。さっそく、花瓶に入れような」
 魔法使いのお婆さんは赤ずきんちゃんを抱きしめ野の花を花瓶に
生けようと立ち上がります。けれど今の赤ずきんちゃんはどうやら
他の事に気があるようでした。

 「ん、どうした?……こいつらのことか?……こいつらはお前と
違ごうて悪戯坊主じゃからな、今、お仕置きしておったところじゃ。
これからが本番じゃが、見ていくか?」

 お婆さんのお誘いに赤ずきんちゃんは首を横に振りましたが……

 「嫌か?いいから見ていけ。こいつらも観客がおった方が楽しか
ろうて……これもグリムの森の社会科見学じゃ。悪さを繰り返す子
が、どんなお仕置きを受けるかを見ておけば自分の心に悪い誘惑が
忍び寄った時も考え直すきっかけになるじゃろうからな」

 お婆さんはそう言って赤ずきんちゃんを引き留めます。赤ずきん
ちゃんは心の半分まではお暇(いとま)しようかと考えていました
がお婆さんに勧められたんじゃ仕方がありません。

 「ここで見ていればいいの?」
 「そうじゃ、少しだけ手伝ってもらうかもしれんがな」
 本当は二人のお仕置きを見たくて仕方がありませんでしたから、
これで公明正大に二人の泣き顔を見学することができます。

 『やったあ!』\(゚▽゚)/
 赤ずきんちゃんは申し訳なさそうに二人の様子を見てはいました
が、それは顔だけのこと。心の中はこれから始まる二人のお仕置き
に胸を躍らせていたのでした。

 「ほれ、これでも食べて待っておれ、もうすぐ助っ人も来るでな」
 お婆さんはお皿にお手製のビスケットを乗せて持ってきてくれま
す。

 「いただきます」
 赤ずきんちゃんは二人がびくびくしながら部屋の隅で震えている
光景を肴にビスケットを一つ手に取ると食べ始めます。
 すると、その口をもぐもぐさせながら顔はどうしても微笑を隠す
ことができません。ばつが悪いのでお婆さんに尋ねてみました。

 「ねえ、助っ人って誰?」

 「コビトじゃよ」

 「コビト?」

 「ほれ、白雪姫がお仕置きとして送り込まれとる家の住人じゃ」
 「七人のコビト?」

 「そうじゃ、もう、すぐそこまで来ておるわ」

 魔法使いのお婆さんはグリムの森の住人の中でも特別な能力をも
っています。これもその一つでした。彼女は誰が森のどこにいるか
念じるだけでそれを感じとります。

 ですから、お婆さんの言った通りでした。赤ずきんちゃんが二枚
目のビスケットに手を伸ばした時には、もう彼らは現れていました。

 「おう、よう来たな」
 「おばばの頼みじゃ、来ないわけにはいかないでしょう」
 一人のコビトが窓から顔を出します。すると、その青い帽子のコ
ビトの肩に乗って次から次へと他のコビト達も部屋の中へと入って
きます。

 彼らはとっても身軽でテーブルや椅子の背もたれはもちろん高い
棚の上までも椅子代わりにしてそれぞれ思い思いの場所に陣取りま
す。中でも青い帽子のコビトは彼らのリーダー格でした。彼は魔法
使いのお婆さんの肩に留まると…

 「何でも言ってくれよ。できる限りのことはするから」
 こう言って手と足を組みます。

 魔法使いのお婆さんはこんな無礼な態度にも怒った様子はあり
ません。むしろ肩の上のコビトに親しく話しかけます。
 「そう言ってくれるとありがたい。……時に、継母がお宅たちに
押し付けたお嬢様は元気かい?」

 「白雪姫かい。…ああ、最初はお仕置きのたびに大暴れして大変
だったがね、今じゃ自分から鞭打ち台に上っておとなしいものよ」

 「ほう、あの跳ねっ返りの小娘がなあ」

 「誰だって同じ、最初は虚勢張って突っ張ってるがね、ここより
他に暮らす場所がないと分かれば諦める。今じゃお義母様にせっせ
せっせと反省の手紙を書いてるよ」

 「それじゃあ、お城に帰る日も近いのかい?」

 「そうはいかないさ。今はまだ、悪さが見つかれば素直にお仕置
きを受けるって程度だからね」

 「それだけじゃいけないんだ」
 お婆さんの言葉にコビトは思わず語気を強めて…

 「そりゃあそうさ。こんなおチビさんなら、それでも仕方がない
だろうけど……」

 コビトのリーダーは語気を強めてしまい赤ずきんちゃんを驚か
してしまったことを詫びるように微笑みます。
 そして穏やかな口調に戻って……。

 「白雪姫はハイティーンだからね、罪を懺悔して自ら罰を受ける
ようにならなければ本当に改心したことにはならないよ」

 「そこまでは進んでいないというわけか」

 「そういうこと。幼い子と違ってあれだけ歳がいってからだと、
矯正するにも時間がかかるんだ」

 「そうじゃな。では、あの子たちはどうじゃ。もう手遅れか?」

 「そうだなあ、……これで何回目だい?」

 「三回目だ。前の二回は、スパンキングと蝋涙で許してやったん
だが……」

 「効果がなかったんだな」

 「まあな」
 青い帽子のコビトは二人をいぶかしげにながめながら……

 「……ん~~かもしれんなあ。男の子はいくつだ?」

 「11歳。女の子も同じじゃ。こいつら二卵性の双生児でな」

 「なるほど、男の子は観念しとるように見えるが、女の子の方は
まだまだ………だな」

 「わかるか、さすがに鋭いな」

 「そりゃそうさ、見くびってもらっちゃ困るなあ、こう見えても
こっちとらお仕置きが商売なんだぜ。そのくらいわかるよ。あの子
は女の子の典型だ」

 コビトの言葉に赤ずきんちゃんが反応しました。
 「女の子の典型って?」

 それにコビトのリーダーが答えます。
 「ん?お嬢ちゃんにはまだ関係ないけどね。女の子というのは、
成長するにつれて、お腹の中で思っていることと顔の表情を別々に
することができるんだ」

 「それって、本当は反省してないってこと?」

 「そういうことじゃな。反省しましたって、ふりだけすれば許さ
れると思ってしまうんじゃ」
 魔法使いのお婆さんが答えます。次にお婆さんは肩の上のコビト
に尋ねました。

 「表面づらは申し訳なさそうな顔をしていてもお腹の中では笑っ
てるような子にはどんなお仕置きがいいだろうね」

 「さあ、どうしようか」
 コビトのリーダーはグレーテルを見て笑っています。その笑いは
相変わらず申し訳なさそうな顔をしているグレーテルのお腹の中に
も届いたはずでした。

 「でも、おばば。おばばはもうこの子への罰は決めてるんだろう。
テーブルの上に色々乗ってるし暖炉では焼き鏝もすでにいい色合い
に焼き上がっているじゃないか」

 「そりゃあそうじゃが、あんたの意見も聞きたいと思ってね。何
しろ可愛い孫たちじゃからな。あまり手荒なことはしたくないんじ
ゃが、そうかといってこのままでは立派な大人にもなれそうにない
のでな」

 『(えっ!孫?この子たちはお婆さんの孫だったんだあ)』
 赤ずきんちゃんは驚きの事実を知ってしまいましたが、声は出さ
ずに三つ目のクッキーに手を出します。

 「このくらいの歳になると、もう痛いだけの罰じゃだめだろうね」

 「やっぱりそうか」

 「女の子は特にそうだけど、恥ずかしいって思わないと反省しな
いよ。特にこのくらいの歳はそういうことに敏感だから、なおさら
効果があるんだ」

 「もう少し上の方がもっと恥ずかしいがるんじゃないかい?」

 「ところがハイティーンになると、まわりも見えてくるし度胸も
つくからね。実はお仕置きの効果は薄いんだ。うちの白雪姫がいい
例さ。むしろこの頃に徹底的に恥をかかせて女の子としての心棒を
通しておくことが大事なんだよ」

 「鉄は熱いうちに…じゃな」

 「そういうこと」
 こうして二人の大人たちによりグレーテルへの厳しいお仕置きが
決定したのでした。

 こうした会話は、当然、グレーテルの耳にも届いていますから、
グレーテルの顔はすでに真っ青、心臓は今にも張り裂けんばかりに
脈打っていました。


***************** (つづく) *****


「お菓子の家」編 ~3~

(ファンタジー小説)
 赤ずきんちゃんの冒険 ③

  グレーテルのお仕置き、いよいよ佳境ですよ。(*^_^*)

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~3~ ♔♕♖♗♘♙♚
 でも最初に呼ばれたのはなぜかヘンゼルでした。

 「いいか、お前は男の子なんじゃぞ。妹の尻に敷かれてどうする。
嫌なものは嫌、ダメなものはダメとはっきりせんからこんなことに
なるんじゃ。今回だってどうせグレーテルの奴が『少しぐらいなら
分かりりゃしないわよ』ぐらいのことを言ったんじゃろう」

 実は、魔法使いのお婆さんの言う通りでした。気の弱いヘンゼル
は、グレーテルから何か言われると断り切れないのです。

 「ほれ、これを持ってみい」
 お婆さんは柳の細い枝をよりあわせて作った一本の鞭をヘンゼル
に持たせます。

 「これは魔法の杖じゃ。これがあるとな、お前の望むものは何で
も叶うからな、大事にするんじゃぞ」

 お婆さんはほくそ笑んで諭します。それは何か含みのありそうな
不気味な笑顔でしたからヘンゼルは怪訝な顔になります。しかし、
頭の良いグレーテルにとってみれば、それはもっともっと不気味に
思えたに違いありませんでした。

 「グレーテル、こっちへ来なさい」
 お婆さんは今度はグレーテルを呼びます。その声は氷河の奥底か
ら響く地鳴りのように冷たく、その鋭い視線はグレーテルの小さな
胸をえぐります。
 恐くなったグレーテルは思わず逃げようとしましたが……

 『えっ?!』
 でも、それは叶いませんでした。体が動かないのです。
 いつの間に取り囲んだのでしょうか。手も、足も、頭も、胴体も、
身体のすべてが七人のコビトたちによって押さえられています。

 「いやあ、放して」
 泣き叫ぶグレーテルに微笑みで答えるコビトたち。
 彼らは身体こそ小さいのですが大変な力持ちでした。
 彼らから見れば少女の一人ぐらいどうにだってなります。

 「だめえ、止めて、止めてよ、わたしママのところへ帰る」
 グレーテルはコビトたちの思うがままにはなりたくなくて必死に
声を張り上げました。

 「だめよ、帰る。私ママの処へ帰るんだから。離しなさいよ」

 でも、無駄でした。

 彼らにかかればグレーテルより体の大きな白雪姫でさえどうにも
ならないのです。ましてやまだ幼いグレーテルがどうにもならない
のは当然でしょう。

 やがて、コビトたちとの争いに疲れたグレーテルは、魔法使いの
お婆さんの足下に放り出されると、その直後はもう立ち上がる気力
もない様子でした。

 「ほう、どうしたね、グレーテル?観念したか?ま、そんなはず
もあるまい。ほんのちょっと休んでおるだけじゃな」
 お婆さんは意地の悪そうな目つきで床に転がるグレーテルを見つ
めます。

 グレーテルは起き上がろうとしましたが……

 「まあよい、しばらくはそこで休みながら聞け。……いいかお前、
お前の兄さんは立派な男じゃ。お母さんの言いつけはよく聞くし、
陰ひなたなく働く。何より妹思いじゃ。しかし悪さをするとなれば
話は別じゃ。あいつはわしがせっかく苦労して作ったお菓子の家を
壊して食べてしもうた。だから、罰を受けさせたんじゃ。……ここ
までは分かるな」

 「……はい」グレーテルは恐る恐る答えます。

 「だから、お前の兄さんは今は清い身体になっておる。……わし
のお仕置きを受けたからな…しかし、お前はどうじゃ、グレーテル。
兄さんにお菓子の家をねだらなかったか?……ん?わしがしばらく
は帰らないから逃げる暇はあるから、なんて言ったんじゃないの
か?」

 「…………(どうしてそんなことがわかるんだろう?)……」
 グレーテルは思います。
 すると……

 「図星のようじゃな」
 おばあさんは床に転がっていたグレーテルを立たせると、椅子に
座らせ床で着いた埃を払いながらこう言います。
 「今回のことは、おおかたお前がそそのかしたんじゃろう。……
自分が言えば、ヘンゼルがお菓子の家を取ってきてくれると思って
な」

 「…………」
 グレーテルの表情は固いまま、まるでお人形のように口を開きま
せんでした。

 「まだあるぞ。わしが不機嫌な理由が……わかるか?」

 「…………」
 グレーテルは無言で頭を横に振りました。

 「わしがお前等を見つけた時、お前、兄さんに言っとったな……
『だからお菓子の家に手をつけちゃだめって言ったのに、兄ちゃん
は言うことをきかないんだから』って……あれは何だ!」

 「…………」
 お婆さんは床に視線を落とすグレーテルの顎をとって自分の目を
見させます。

 「ああ言えば、自分はよい子で、ヘンゼルに罪を着せることがで
きるとでも考えたのか?」

 「…そんなこと……私はべつに………」
 グレーテルは小声で反論しようとしましたが、おばあさんの強い
視線にやがて目も口も閉じてしまいます。

 「愚かよのう。さっきも言ったようにお前の兄さんは正直者じゃ。
自分からつまみ食いなんぞしやせんよ。お前がそそのかさん限りは
な。それは誰もが知っとることじゃ。お前のお父さんもお母さんも、
わしもここにいるコビトたちもみんなそうじゃ。………そのことを
知らんのはお前だけじゃ」

 お婆さんはグレーテルには信用がないと言っているのです。その
言葉はグレーテルの胸にも深く突き刺さります。

 道は二つでした。素直にお婆さんの言葉を受け入れて謝るのか、
それとも……

 「だだって、私は取ってないのよ。お菓子を取ったのはヘンゼル
じゃないの!」
 どうやらグレーテルは二つ目の道を選んだようでした。

 「たしかに、お前があれを壊したわけじゃない。しかし、お前は
それを兄からもろうて食べたじゃろう」

 「わたし、食べてないもん」
 グレーテルは強情をはりますが…

 「何を言うととる、口についとる白砂糖がなによりの証拠じゃ」
 お婆さんに言われて、グレーテルは慌てて口元をぬぐいますが、
そこには何もついていませんでした。

 「いいか、グレーテル。お前がそんな了見じゃから、みんなから
嫌われるんじゃ。世の中には実際に罪を犯した者よりそれをそその
かした者の方がより強く責められることがたくさんあるんじゃぞ」

 「だって私があのお菓子の家に手を出したんじゃないのよ。ヘン
……ヘンゼルが、ヘンゼルが下手だから壊れただけじゃない。私は
……壊れた破片をちょっぴり頂いただけなんだから」
 グレーテルは必死に抗弁を繰り返しましたが、魔法使いのお婆さ
んはすでにグレーテルの言葉なんか聞く気がありません。
 もはやグレーテルが何を言おうとそれは気にせず、せっせせっせ
と準備を進めます。そして、準備が終わると……

 「だめえ~~」
 何の宣言もなくいきなりグレーテルへのお仕置きが始まります。

 まず、最初は……

 「いやあ、やめてえ、下ろしてよ~」

 七人のコビトたちに抱え上げられたグレーテルは白いシーツが敷
かれたテーブルに仰向けに寝かされます。

 「いやだ、エッチ。なにするのよ!」

 グレーテルはいきなりスカートを捲り上げられそうになりました
から慌てて身を翻そうとしたのですが、できたのは上体を30度程
起こすことだけ。

 「いやあん」

 そもそも相手は七人もいるんですからかなうはずがありません。
たちまち両手と頭の動きが封じられると、両足が高々と持ち上げら
れ、スカートは胸の位置で止められてしまいます。

 「……(もう、どうにもならないわ)……」
 そう悟るのにそう長い時間は掛かりませんでした。
 そして、悟ってしまえば一旦はおとなしくなります。

 もちろん、一度高く天井を向いて跳ね上がった両足はそのまま。
グレーテルがどんなに頑張っても踵をテーブルに戻すことなどでき
ませんでした。

 「(そっ、そんなあ)」

 グレーテルは体の自由が利かなくなってからも、しばらくは嘆き
悲しみましたが、やがて、あまりのことに頭の回路がショートして
声さえ出なくなったのです。

 「(こんなのいや、こんなの夢よ、こんなの現実じゃないわ)…」
 そう思い続けることが唯一の慰めでした。

 想像してみてください、こんな格好を。女の子だったら誰だって
卒倒したいほどのショックなはずです。
 おまけに自分のお股の間からは……

 「……(ヘンゼル!)……」

 弟の不安げな顔が見え隠れしています。

 「ヘンゼル坊や、ほうら見てごごらん、グレーテルのこんな処は
おまえはまだ見たことがないじゃろう」

 魔法使いのお婆さんがヘンゼルの後ろに回って肩を抱くと小さな
声ですがグレーテルの耳にもしっかりと届きます。
 するとその瞬間、ヘンゼルの顔が少し微笑んだように見えました。

 「…………」

 もちろん今までなら『ぎゃ~~』と金切り声を上げてるはずです。
 ところがグレーテルは声を出しませんでした。
 ヘンデルの見せたちょっぴり不気味な笑顔を見た瞬間グレーテル
の心は怒りと不安が交差したまま固まってしまい自ら自由を失って
しまったのです。

 『何よ、何なの、あいつ!どうして笑うのよ!』

 底知れぬ恐怖と不安。その正体は、ヘンゼルが初めて見せた男の
性(さが)だったのです。

 それだけではありません。周りには忌々しいコビトだっています。
彼らだって小さくても男ですからね……女の子にはプレッシャーで
す。
 『大声を出してさらに恥をかきたくない』
 グレーテルにはそんな気持が働いたようでした。

 「さあ、まずはお腹の中におる悪賢い悪魔どもを身体の外に出さ
んといかんな」

 お婆さんがそう言って取り出したのはガラス製の浣腸器。これが
横を向いたグレーテルのすぐ脇、ほっぺたから5センチと離れてい
ない処にいつの間にか置いてあります。

 「(いや、やめて、それはいや)」
 やがて、一人のコビトによってお薬の入った石けん水が吸い上げ
られていく様子が、グレーテルの視界にあまりにも大きく映り込み
ます。

 「(えっ、なっ、何よ、何するのよ、やめてよ、…いやよ、いや、
いや、それは絶対にいや)」
 グレーテルは心の中で叫び続けましたが、どうにもなりませんで
した。

 やがて目一杯の石けん水を吸い上げた特大の浣腸器の先を指で
塞いで赤い帽子のコビトがそれを肩に担ぐとグレーテルのお尻の
方へ……。

 「(あっ、待って)」

 グレーテルは声がでません。目だけで彼を必死に追いかけました
が身体がどこも自由にならない悲しい身の上。やがて視界から消え
去り、それっきり。

 代わりにお婆さんの声がして…
 「おうおう、可愛いお尻の穴じゃて…」

 「いや、触らないで…>_<…」
 ここでやっと声が復活します。

 「何が、嫌じゃ、お前のばっちい処を触っとるこっちの方がよっ
ぽど嫌じゃよ。さあ、お尻の穴を緩めんかい。抵抗するとお仕置き
が増えるぞ」
 急にドスの利いた声になったお婆さんがグレーテルのお尻の穴を
押し広げようとしますから、慌ててその門に力を入れます。

 「あ~いやあ~~どうしてこんな格好でお浣腸しなきゃならない
のよ。恥ずかしいでしょう」

 グレーテルはたまらず訴えますが、誰も聞いてはくれません。
それに今となってはどうにもなりませんでした。

 そのうち、おばあさんにお股のどこかを触られて……
 「\(◎o◎)/!」
 びっくりした拍子にガラスの突起が体の中に入ったようでした。

 「(いや、いや、いや)」
 そう思いながらも少しずつ、でも確実に、お尻の穴から石けん水
がお腹の中へと流れ込んできます。その気持ちの悪いことといった
らありません。
 「(>。≪)」

 一本目が抜き取られ、やれやれと思っていたのに……

 「えっ、またなの?(;゜∇゜)」

 ふたたび赤い帽子のコビトがガラス製の浣腸器を担いで目の前に
やって来ます。

 グレーテルの泣きそうな声にもお婆さんは冷たく……

 「まだじゃ、小さい子じゃあるまいに、お前さんがこんなもので
効くもんか。……ほれもう一本あるぞ。終わったら今度は石けん水
が逆流せんようにお尻の穴をしっかり閉じておくからな。お前さん
はお腹の中の悪魔としっかり戦うんじゃ」

 そしてまたしてもグレーテルの頬のすぐそばで石けん水が不気味
な音と共に吸い上げられていき、やがてお尻の方へと届けられます。

 「\(◎o◎)/!あっ、苦しい。だめ、痛い、痛い、痛いって、
そんなにいっぱい入れたらお腹が耐えられない。死ぬ~~~」

 「馬鹿が、うろたえるな。大丈夫じゃ、これまで何人となくお前
のようなチビさんたちにお浣腸を授けてきたが、お腹が破裂した奴
も死んだ奴もおらんわさ」

 終わるとグレーテルのお尻の穴にはお婆さんが仕掛けた魔法の栓
が食い込みます。また尾籠なことが起きないようにとコビトたちに
よってオムツも厳重に穿かされたのでした。

 「よし、これでいいじゃろう」
 魔法使いのお婆さんのお許し声。グレーテルもこれでやっと空中
に浮いていた両方の踵をテーブルの上に下ろすことができます。

 「(もう、ここまでくれば大丈夫)」
 グレーテルはそう思ったに違いありません。テーブルを降りると、
さっさとトイレへ向かおうとしました。ところが……。

 「やめてえ~~何するのよ~~トイレへ行かせてよ~~漏れちゃ
ったらどうするのよ」

 グレーテルは再び恥も外聞もなく声を限りに叫びますが、七人の
コビトたちがグレーテルの言うことをきくはずもありませんでし
た。

 「グレーテル、こっちだこっち。今日のお前のトイレはここだよ」

 コビトたちがグレーテルのために用意したトイレは、誰の目から
も身を隠すことのできる外の茂みではありませんでした。魔法使い
のお婆さんが伝書鳩を飼っている部屋の片隅で今まで埃を被ってい
た晒し台のピロリー。ここに大きなバスケットを置き、中にボロ布
を敷いてグレーテルを跪かせます。

 「いやあ~~いやあ~~おばあちゃんこんな酷いことしないでよ
~お嫁に行けなくなっちゃうでしょう」

 グレーテルは少し遅れて部屋へやって来たお婆さんを見つけると
今の境遇を顔を真っ赤にして哀願したのですが…

 「何を騒いでおる。お前がお嫁に行くのはお腹の中の悪魔を追い
出してからじゃ」

 「そんなの嘘よ。私のお腹の中に悪魔なんていないわ」
 グレーテルは抗議しますが……

 「ほう、ならばお前の性悪な行いはお前自身が悪魔だからなのか
?……もしそうなら、お前を魔女として火刑にせねばならなくなる
が、それでもいいのか?」

 「……(火あぶりって?何言ってるのよ!)……」
 グレーテルはあまりに馬鹿馬鹿しいとは思いましたが、暗い歴史
も秘めたグリムの森です。冗談が冗談で通らないこともある現実を
賢いグレーテルは知っていましたから、思わず声に詰まってしまっ
たのでした。

 「どうやら、薬が効き始めたし、悪魔も叫びだしたようじゃな。
あとは待つだけじゃな。……」

 魔法使いのお婆さんはお薬が効き始めて食いつきそうな顔になっ
ているグレーテルを尻目にいたって冷静でした。小さな首と両手首
を大きな板に挟まれたクレーテルのすぐ脇に籐でできた揺り椅子を
置くと……

 「……おいで、ヘンゼル、赤ずきん」

 二人を呼び寄せ、ヘンゼルにはここで膝まづいてグレーテルの為
に祈りを捧げるように命じ、赤ずきんちゃんは自分のお膝にあげて、
まるで何事もなかったかのように優雅に椅子を揺らし始めます。

 「お願い、もう、やめてえ~~もれちゃうから~~~」
 グレーテルは必死に哀願しますがお婆さんは知らんぷりです。
 それどころか…

 「大丈夫じゃ。時間はまだたっぷりあるぞ。今のお前さんには、
このたっぷりの時間こそがよい薬なんじゃ」
 こう言って相手にしてくれません。

 グレーテルは両足をぴったりと閉じ、全身に鳥肌をたてて震えて
います。とにかく今はそれだけしかできませんでした。

 「漏れちゃうよお~~」

 悲痛な叫びに赤ずきんちゃんが…
 「ねえ、お姉ちゃまはうんちしたいの?」
 と尋ねますが……

 「大丈夫じゃ、お尻の穴には魔法の栓が突き刺さっておるからな、
今はうんちをしようとしても出やせんのよ」

 「ふうん…………だってよ、グレーテル。うんち漏れないって」
 赤ずきんちゃんはどこまでも無邪気です。

 ただ、日頃の習慣とは恐ろしいもので、グレーテルにもそれが分
かっていてなお、無意識に肛門を閉め、必死にうんちがでないよう
に頑張ってしまうのでした。

 「もういや、……もういや、……もういや、……絶対にいや!」

 始めは小さかったその言葉が段々大きくなっていきます。
 きっと声をたてることで辛い自分を励ましたいのでしょう。

 でも、そのことがグレーテルの境遇を改善したかというと、事態
は逆でした。

 「コビトさんたちや、この子の歌に伴奏を入れてくれんか」

 お婆さんの指示に従いコビトたちが柳の鞭でグレーテルの太股を
叩き始めたから大変です。

 「いやあ~~やめてえ~~ごめんなさい、もうしませんから~~」

 鞭はそれ自体が飛び切り痛いというわけではありませんが、今は
何もされたくないグレーテルにとってはショックな出来事でした。
 しかも、泣き叫ぶグレーテルを面白がって赤ずきんちゃんばかり
か普段おとなしいヘンゼルまでもがこのお仕置きに興味津々とい
う顔で自分を見ているのです。
 グレーテルにはそれが何より気になっていました。

 「あ~はぁ、あ~はぁ、あ~はぁ、あ~はぁ、あ~はぁ、あ~ぁ」

 グレーテルは観念したのか数分で悲鳴も哀願もやめてしまいま
す。どうやらそんなことをしても無駄だと悟った様子でした。でも、
荒い息の方は10分たってもおさまりません。

 太股の方も真っ赤なみみず腫れが紫色に変化して痛々しく変わっ
ていきます。
 「いやよ、いやいや」
 時折、か細い声が痛々しく部屋の中に響きます。

 すると、ここへ来てようやく魔法使いのお婆さんが腰をあげます。

 「どうじゃな、お腹の中の悪魔は?……少しは懲りた様子かな」
 お婆さんはそう言ってグレーテルのお腹をさすります。我慢に我
慢を重ねていたお腹ですから、ちょっとした変化にだって敏感です。

 「いやあ~~やめて~~」
 しばらく出なかった元気な声が復活しました。

 「おうおう、まだこんなに元気なら大丈夫じゃな」
 お婆さんが再び椅子に座り直しますから…

 「だめえ~、もうだめなの、早く、早くしてよ~~」

 「何で、わしがお前に命令されなきゃならんのじゃ。まだなもの
は、まだじゃ」

 お婆さんは不機嫌そうにこう言うと、コビトたちの小さな鞭打ち
も再開させたのでした。

 「いやあ~~はぁ、はぁ、はぁ、いやあ~~はぁ、はぁ、はぁ、」
 絶望感が自然とグレーテルの声を小さくしてしまいます。

 心配した赤ずきんちゃんが尋ねました。
 「グレーテルお姉ちゃまは大丈夫なの?」

 「大丈夫じゃよ」お婆さんは赤ずきんちゃんの両脇に手を入れる
と、高い高いをしてあやします。そしてこう言って諭すのでした。

 「お姉ちゃまはな、今、お腹の中に住み着いた悪魔と戦っておる
ところなんじゃ。もうすぐ、我が儘という悪魔が降参するからな。
そうしたら、またみんなで楽しく遊べようになるぞ」

 魔法使いのお婆さんは得意の魔法で部屋を七色に変えると、この
世にはない不思議な生き物を次々と登場させてはヘンゼルと赤ずき
んちゃん、それにコビトたちをも楽しませます。

 でもグレーテルだけが独り蚊帳の外でした。それはそうでしょう。
今の彼女は、それどころじゃありませんから。c(>_<。)

 そうやって20分、お浣腸から30分がすぎる頃になるとグレー
テルの口からは悲鳴も愚痴も懇願もなくなります。僅かに嗚咽が聞
こえるだけでした。

 「ようし、もう一度聞いてみるかのう」
 こう言ってお婆さんは小さい椅子から立ち上がります。

 「どうじゃ、ちっとは懲りたか?」

 「もう、だめ、早くトイレ、トイレ」

 「そんなことは聞いておらんわ。相変わらずじゃな、お前は……
わしは懲りたかと聞いたんじゃぞ」

 「懲りました。ごめんなさいします。もうしませんから……」

 「もうしませんからなんじゃ。もうしませんからトイレか。……
ふん、話にならんな」

 お婆さんが立ち去ろうとしますからグレーテルは慌てて…
 「ごめんなさい。これから何でもします。どんなお仕置きでも受
けますから」

 グレーテルはお婆さんの背中に必死に訴えかけます。
 するとその声が聞こえたのでしょう。お婆さんが振り返りました。

 「そうか、何でもするか、その言葉に嘘偽りはないじゃろうな」
 言われたグレーテルはドキンとしました。だってそんなもの苦し
紛れだったんですから……でも、今さら『やっぱり、嘘』だなんて
言える状況にありません。ですから…

 「はい」
 と力無く答えたのでした。



******************* (つづく) ***

 「お菓子の家」編 ~4~

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~4~ ♔♕♖♗♘♙♚

 魔法使いのお婆さんからすると、グレーテルにはまだまだ女の子
としての修行が足りないということになります。でも、あまり長い
間こうしていては身体を壊してしまいますから、グレーテルのお尻
の栓を抜いてやることにしました。

 「パチン」
 小さな音がしました。

 お婆さんがやったのは指を一つ鳴らしただけ。たったそれだけで
グレーテルのお尻に刺さっていた栓がどこへ消えてしまいました。

 ま、お婆さんは魔法使いですからね、そのくらいは朝飯前なんで
す。

 ただ、グレーテルの方は……お腹は楽になりましたが……

 「いやん、いや、いやあ~~ん」
 突然泣き出します。

 「どうした、グレーテル。待ちきれなかったか?さもあろうなあ」

 自分でやっておいてお婆さんは慌てます。そして、ぐるぐる鳴る
グレーテルのお腹の音を聞きながら同情もしてくれました。
 でも、グレーテルにしてみればこんなところで同情されても何の
役にもたちません。

 「だめえ~~~出ちゃう、出ちゃう、止めて、止めてよ」

 グレーテルは小さく地団駄を踏んで泣き続けますが、一度堰を切
ったものを押し留めることはできません。
 そこは魔法使いのお婆さん、冷静でした。

 「もういいから、全部出すんじゃ。今さらお腹に残しておいても
何の役にもたたんぞ」

 お婆さんは手に持った杖をグレーテルの下腹にあてると、得意の
魔法で……

 「どうじゃ、これでお腹が楽になったじゃろう」

 確かにお腹は楽になりましたが、その分グレーテルのお尻は重く
なります。

 「いやあ、触らないで」

 グレーテルはピロリーから解放してあげようとしたコビトたちを
怒鳴り散らします。

 驚いたコビトたちは一瞬たじろぎますが、やっぱり無駄でした。
これまでも何一つ抵抗できなかったグレーテル。今だってやっぱり
コビトたちのやることには何一つ逆らえないのです。

 「大丈夫じゃ、安心せい。お前のばばっちい尻を洗ってやろうと
いうだけのことじゃ。任せておけ」

 お婆さんはこう言います。いえ、それ自体、嘘ではありませんが
……

 「いやあ~~~やめて~~~はなしてよ~~~」

 コビトたちがグレーテルを表の井戸に連れ出したあと、暫くして、
再びグレーテルの甲高い悲鳴が聞こえ始めます。

 「やめてえ、だめえ~~、触らないで、自分でやる、自分でやる
んだからあ~~~」

 グレーテルは訴え続けますが、願いが叶えられることはありませ
んでした。

 「ヘンゼル、ついておいで。赤ずきんちゃんもおいで」

 魔法使いのお婆さんはグレーテルとコビトたちが部屋を出てから
しばらくして子供達二人と共に表の井戸へとやって来ます。
 すると……

 「いやあ~~見ないで~~ヘンゼル帰りなさいよ~~帰って」

 一行はいきなり少女の甲高い悲鳴というか非難を浴びます。そこ
には井戸の高い梁に両手を縛られ吊し上げられた裸のグレーテルが
……。

 「ヘンゼル、ダメだと言ってるでしょう。帰りなさいよ」

 グレーテルの受難はそれだけではありませんでした。両手だけで
なく、両足首もまた1m程の棒の両端に縛りつけられているのです。
つまり、かなり大きく両足を広げさせられた格好で大の字になって
いるわけです。

 「ほれ、ほれ、騒ぐでないわ。お前が暴れるからじゃ。せっかく
コビトさんたちがお前の汚れた尻を洗ってくれているというのに…
…お前は感謝せねばならんのだぞ」

 「いやあ、だめえ~~こんなの自分でやるんだから~~下ろして
え、下ろしてよ~~」

 グレーテルは訴えかけますが、もとよりそんな我が儘が通るはず
もありませんでした。

 冷たい井戸の水が何杯もグレーテルのお尻に掛かり、コビトたち
が献身的に彼女のお尻を拭き上げます。
 でも、そこってグレーテルにとってはとっても微妙な場所だった
ので……

 「いやあん、いいからそんな処触らないで……だめえ~~エッチ、
野蛮人、恥知らず、触るな~~~」

 グレーテルは全身を震わせ相変わらず意気軒昂です。とてもさっ
きまでは意気消沈して力無く虚空を睨んでいた女の子とは思えない
変身ぶりでした。

 「まったく、しょうのないやつだ。野蛮人はお前じゃろうが……
そんな大きな声を出しよってからに………グリムの子はお仕置きを
感謝の気持で受けなければならないという約束を忘れたのか」

 「そんなこといっても……」
 グレーテルは口惜しそうに口を尖らせます。

 「あんまり騒がしいようならその口を塞いでやる……」

 お婆さんがこう言ってほんの数秒、どこから現れたのか、柳の枝
鞭を口に銜えたツバメが急降下、グレーテルのお尻を……

 「ピシッ」

 「痛~~い」
 グレーテルは思わず両手でお尻をおさえたくなりましたが、あい
にく両方とも大きな梁に引っ掛かっています。

 痛みがひく間もなく大空で宙返りしたツバメが再び襲来。

 「ピシッ」

 「いやあ~~ん」

 そしてもう一つ……
 「ピシッ」

 「いやあん、もうぶたないで……ごめんなさい、静かにするから」

 「何じゃ、もう降参か?…そんなに早く白旗をあげるくらいなら
おとなしくしておればよさそうなものを……何かと文句を言う奴に
限って信念はないもんじゃのう」

 ツバメは去っていき、グレーテルの降伏は聞き入れられましたが、
でも、それからはグレーテルと赤ずきんちゃんの出番でした。
 二人はお婆さんに教えられた通りに柳の鞭をグレーテルのお尻に
お見舞いします。

 「ピシッ」
 「いやあ、だめよ。やめてよ」

 「ピシッ」
 「だめえ~~おばあちゃん、やめさせてよ~~~」

 二人の動きはぎこちなく、力だってそんなに入っていませんから、
ツバメさんよりはるかに凌ぎやすいはずなのですが、恥ずかしさの
方はまた別で、グレーテルにとってはこの二人に叩かれている方が
人一倍恥ずかしかったのでした。

 「どうだヘンゼル、グレーテルのお尻が赤くなるのは面白いか?」
 お婆さんの問いに赤ずきんちゃんが…
 「おもしろいよ」
 と答えましたが、気の弱いヘンゼルは少し遅れて…
 「ねえ、グレーテル泣いてるよ」
 と心配そうです。

 でも、お婆さんはそんなヘンゼルにこう言うのでした。
 「いいか、おなごはな、最初が肝心なんじゃ。最初に『こいつは
御しやすそうじゃ』なんて思うとどんどんつけ込んでくる。反対に
手強いなと思えば猫のようにおとなしく従う。だから、こうしてな、
最初に屈服させるのが一番なんじゃ」

 お婆さんはヘンゼルから柳の鞭を取り上げるとグレーテルのお尻
を一閃します。

 「ぎゃあ~~」

 グレーテルはこの井戸へ来て最も大きな声を上げました。それは
もちろんここへ来て最も痛い思いをしたからでした。

 「いやあ~~、やめて~~、お願い~~~、もうしませんから~」
 グレーテルは必死に哀願します。でも、12回打ち終わるまで、
魔法使いのお婆さんはやめてはくれませんでした。

 そして、ようやくおさまったかと思うと、今度はヘンゼルに鞭を
渡して……。
 「ほれ、もう一度やってみい。今なら小鳥はよい声でなくぞ」

 柳の鞭を与えられたヘンゼルは、再びグレーテルのお尻に挑み
ます。

 「ピシッ」

 「いやあ~やめてえ~~」
 グレーテルは大声で叫びます。

 いえ、ヘンゼルの振るった鞭が先ほどより強かったという訳では
ありません。お婆さんが先ほど付けた傷の上に再び鞭が飛んできた
ものですから先ほどとは事情が違っていたのです。

 でも、そんなことヘンゼルには分かりませんから……

 「ピシッ」
 「やめなさいよ。だめだって言ってるでしょう」
 ヘンゼルはグレーテルの泣き声を自分が作り出している事に満足
した様子でした。ですから、もう一度やってみたくなりました。
 今度はもっと思い切って……

 「ピシッ」
 「いやあ~~~」
 ヘンゼルは生まれて初めてグレーテルへの優越感で笑います。

 「どうじゃ、気分がいいじんゃろう。男はおなごを従えて生きる
もんじゃ。そのためにその鞭は役にたつんじゃぞ」
 お婆さんの励ましに、しかし、ヘンゼルはすぐに不安そうな顔に
なります。

 「でも、グレーテルは嫌がってるよ」
 「大丈夫じゃ。お前があとで優しくしてやればそれでよい。おな
ごは与えられた処で賢く暮らすようにできておるからな。たとえ、
それがお前の鞭の下であっても自分で楽しみが見つけられるんじ
ゃよ」

 魔法使いのお婆さんは静かにヘンデルから柳の鞭を取り上げる
と、今度はグレーテルに向かってはこう言うのでした。

 「少しは応えたか。おなごは自分では稼がん。だから、相手から
色んなものを引き出してなんぼのもんじゃがな。しかし、それは、
相手をたててやるものよ。相手を不幸にしてはいかんのじゃ。相手
が御しやすいからと、何でもかんでも自分のものにしようとすると、
大きなしっぺ返しを食う。利口なお前さんなどは特に要注意じゃ」

 お婆さんはそう言って立ち去りかけましたが、思い出したように
振り返り……
 「コビトさんたちや。すまんが、もう一度この子の身体を洗って
くださらんか。どうもしょんべん臭くてかなわんわ」

 グレーテルはヘンゼルの意外なほどの力強さに、再びその場で
お漏らしをしてしまったのでした。

 「おばば、この子にもう一度、浣腸をかけてみるかね」
 心配したコビトのリーダーが声をかけますが…

 「それはもういいじゃろう。そいつは、大方さっきの浣腸の残り
じゃろうから、もう焼き鏝を入れても粗相することはあるまいよ」

 お婆さんの口からふいに出た言葉。でもそれはグレーテルにとっ
ては容易ならざることだったのです。

 「(ヤキゴテ?……えっ、焼き鏝!(○_○))焼き鏝だめ、いやよ、
焼き鏝なんて絶対いや。そんなことしたらママがきっと悲しむわ。
だってそんなことされたら……あたし、お嫁に行けなくなっちゃう
じゃない」

 グレーテルは一瞬考えて、それが何か分かると、必死に訴えかけ
ます。でもお婆さんの方は、さして気にとめる様子もありませんで
した。

 「うろたえるな、大丈夫じゃ。この焼き鏝はな10日で消える。
痕も残らんよ」

 お婆さんは笑います。でも、その直後、緩んだ顔を引き締めて、
こうも付け加えるのでした。

 「ただしじゃ、おまえが10日以内にふたたび同じ罪を犯せば、
そこからさらに10日、同じ模様が浮き上がるからな。もしそうな
ったら、それを消せるのは、わしだけじゃ」

 「ほんと?」
 グレーテルが不安そうに尋ねますから…

 「本当じゃとも、今さらお前に嘘をついてどうなる。大丈夫じゃ。
お嫁にも行けるわい。だからせいぜい10日の間だけでも身を慎む
ことじゃな」

 「10日でいいのね。10日で……」

 「10日、10日と一口に言うが、大人と違って子供の10日は
長いぞ。心してかかるんじゃな。もしまた同じ過ちを犯すようなら、
今度は歯の根も合わないほどのたっぷりのお仕置きを受けてもらう
からな、覚悟しておけよ」

 お婆さんはこう言ってグレーテルのもとを立ち退いたのでした。
 部屋へと戻る道すがら赤ずきんちゃんがお婆さんに尋ねます。

 「ねえ、お姉ちゃん、今度は焼き鏝なの?」

 「そうじゃ、お前はまだされたことがないじゃろうが熱いぞう~」

 「ふうん、……どこにすえるの?」

 「お尻の山に一つずつと、お臍の下にもう一つじゃ。お臍の下が
『A』で、お尻の山が『D』と『I』じゃな」

 「ふうん……ねえ、「A」ってadulteryってことなの?」

 「おまえはまた、随分とませた言葉を知っとるんじゃなあ」
 お婆さんは笑います。

 「……そうさなあ、それでもいいが……この場合の『A』はな、
お仕置きのランクのことさ」

 「『A』は一番いけないことをした子が受けるの?」

 「そうじゃない。『A』が一番軽い罪なんじゃ」

 「これでも軽い罰なの?」

 「そりゃそうじゃ、ここは人間の社会じゃない、おとぎ話の世界
じゃからな、ちょっとやそっとのことじゃ子供だって改心しやせん
のよ」

 「じゃあ『D』は?」

 「discipline」

 「『I』は?」

 「immoral」

 「本当にあの焼き鏝の文字は消えるの?」

 「何だ、お前まで疑ってるのか。10日もすれば綺麗になくなる
よ。このグリムの森で、青い火は神様からいただいた特別な炎じゃ
からな。あれで熱くした鏝も特別なんじゃ」

 「ふうん、神様の火なんだ」

 「ただし、またヘンゼルに意地悪をしたり、我が儘なおねだりを
すると、文字が消えるまでさらに10日伸びるがな」

 「私は?」

 「お前はいい子じゃから、関係ないよ」

 「そうか、私はいい子だから、あんなことはされないんだ」

 「あたりまえじゃ、よい子はお仕置きなんかされんよ」

 赤ずきんちゃんは魔法使いのお婆さんに言われてほっとしたよう
な、それでいてちょっぴり残念な気持になったのでした。

 「(私もあんなお仕置き受けてみたいな)…(それで、その身体
が火照っているうちに愛されたらどんなにすばらしいだろう)…」

 赤ずきんちゃんは声にこそだしませんが、そんな不思議な欲望が
小さな乙女の心のどこかにポッと灯ったのでした。

 10分後、グレーテルはコビトたちによって張りつけラックの上
に乗せられてお婆さんのもとへと運ばれてきます。

 もう、次は何が行われるかがわかっていますから当然素っ裸です。
暴れるといけませんから、1センチいや1ミリだって身体を動かせ
ないように厳重に縛り付けられていました。

 「(いや、焼き鏝なんていやよ。ママ、ママ、ママ助けてよう)」

 グレーテルは心の中でママの助けを求めていました。声に出せば
魔法使いのお婆さんからまた何をされるかわからないので自重した
つもりなのですが、お婆さんの方はお構いなしです。

 「おうおう、いい身体じゃ。おっぱいは……(ははは)まだじゃな。
…うんうん、この立派なお尻は丈夫な赤ちゃんが産めそうじゃわい」

 お婆さんは幼いグレーテルの裸を満足そうに調べ始めます。

 と、その時でした。

 「遅くなってすみません。お義母さん」

 聞き慣れた声と共に部屋へ入ってきたのはヘンゼルとグレーテル
のお母さんでした。

 「おう、ちょうどよい処へ来た。ちょうどこれからグレーテルに
焼き鏝を当てるところだったんじゃ」

 お婆さんがこう言うと、待ってましたとばかりグレーテルが中に
割って入ります。いえ口だけは縛られていませんから口だけは参加
できたんです。

 「ママ、ママ、助けて。焼き鏝なんかされたら、私、お嫁に行け
なくなっちゃうよ」

 「あらグレーテル、元気そうじゃない。そんなに元気なら大丈夫
ね。失神せずに済みそうだわ」
 ママはグレーテルの必死の懇願もあっさりかわしてしまいます。

 「( ・◇・)?」

 そればかりか…

 「どうじゃな、今度はお前さんがやってみたら……こういう事は
親のあんたの方がよかろう」
 魔法使いのお婆さんにこう勧められると、それもあっさり…

 「そうですね、では、私がやってみますわ」
 娘に焼き鏝を押す係りを引き受けたのでした。

 「(う、うそでしょう)……いやいや、ママやめてえ」

 娘の哀願にもママは平静でした。

 「そもそも、あなたが悪いんでしょうが。グリムの森は古くから
神様が管理される由緒正しい森なの。そこの住民も邪(よこしま)
な心を持った子がいてはいけないの」

 「そんなこと言ったって………」

 「覚悟しなさい。もし、こんな事で神様に呼び出しでも命じられ
たら、あなただってこのくらいではすまないのよ」

 「何よ、けちんぼ。娘のピンチに何もしてくれない気?だいたい
あんたは昔から薄情なのよ。こんな親に生まれなればよかったわ」

 グレーテルは逆切れ、口汚くお母さんを罵りますが、その間にも
大人たちは熱いお仕置きの準備を着々と進めていきます。

 青い火の燃え盛る暖炉からひき抜いた鉄の棒の先端には小さくA
という文字が彫ってありました。

 やがてそれがママの手に握られて自分の処へとやってくると……
 「…………」
 さすがにグレーテルだって言葉を失います。

 「(嘘でしょう。嘘よね、ママ。ママはそんなことしないよね)」

 こんな事を思っていると……

 「目をつぶって!」
 ママの大きな声が部屋中に響きます。

 それに合わせてグレーテルが反射的に目を閉じてしまうと、もう
いきなりでした。

 ママの左手がグレーテルのお臍の下の丘を握り上げ、そこが少し
だけ持ち上がったかと思うと、まだすべすべのその丘へ狙いすまし
たように『A』の焼き鏝が突き刺さります。

 「ぎゃあ~~~~~」

 その熱いのなんのって、グレーテルにしてみれば、今自分が気絶
しないでいるのが不思議なくらいだったのです。

 ヘンゼルも赤ずきんちゃんもこの時ばかりは魔法使いのお婆さん
の腰にしがみついて震えています。

 でも、これでもグレーテルに対するお仕置きが終わったわけでは
ありませんでした。

 「よし、今度は尻ぺたじゃ」

 お婆さんの号令一下、ラックにバンザイするように縛り付けられ
ていたグレーテルはコビトたちによってその縄目を解かれますが、
今度はママの膝で俯せにならなければなりませんでした。

 そうです。スパンキングをOTKで受ける時のような姿勢にされ、
さらにお尻のお山に焼き鏝を二つも受けなければならないのです。
しかも、今度は縄目はありませんから、逃げようと思えば逃げられ
る、そんな状態で先ほどもらったあの強烈なお仕置きを待たなけれ
ばなりませんでした。

 それはAを押された先ほど以上に辛いこと。ですからグレーテル
もたまりかねて身を翻すとママの膝に腰を下ろして抗議したの
です。

 「いやよ、もうあんなの耐えられない。今度こそ本当に死んじゃ
うわ。こんなの人でなしのやる事よ」

 猛烈に抗議するグレーテル。でもママもひるみません。

 「人でなしですって、いったい誰に向かって言っているの。これ
は、あなたが罪を許してもらうための大事なお仕置きなのよ」

 「だってえ~」
 グレーテルは泣き出しそうに甘えた声を出します。

 「お仕置きは昔から親の権限です。いいこと、もしこのお膝から
逃げたら、あなたは今日限り私の娘ではありません。いいですね」

 「えっ……」

 「そうだわ、ちょうどシンデレラのお継母さん(おかあさん)が
シンデレラの代わりを探していたから、そこへやります。それでも
いいならお逃げなさい」

 「…………」

 「黙ってちゃわからないわ。いいですね。わかりましたか?」

 「…………はい」

 「わかったら、ここへ俯せになりなさい」

 こんなことをママに言われては、いかに勝ち気なグレーテルでも
動揺します。『まさか、シンデレラの家の養女になんか……』とは
思っても、100%の自信はありません。もし、そうなったら……
そう考えるとママの膝に俯せになるしかありませんでした。

 膝の上に寝そべるグレーテルに向かって、お母さんはこう言いま
す。

 「……いいこと、女の子は我慢を覚えなきゃ幸せにはなれないわ。
親を、兄弟を、先生を、牧師様を、やがてあなたの夫となるべき人
を……愛すべきすべての人を信じて身を任せなさい。それが女の子
が幸せになる道なんです。……そもそもあなたは私を愛せますか?」

 「…………はい」

 「……私を愛していますか?」

 「はい」
 グレーテルは弱弱しく答えます。

 「だったら、大丈夫と言ってる私の言葉を信じてただただ必死に
我慢しなさい。いいですね」

 「はい、おかあさん」

 娘が落ち着いたのを見計らってお母さんはハンカチで娘に猿轡を
噛ませ、お尻の皮膚を引き伸ばします。
 そこにお婆さんがDとIの焼き鏝を持ってきて……

 「(うっぐ、ぎゃあ~~~~~)」

 「(うっぐ、ぎゃあ~~~~~)」

 口に押し込まれたハンカチのせいで甲高い悲鳴はしませんでした
が、その瞬間は、くの字だった体が硬直して一直線になります。

 ただ、この時ばかりは大人二人の顔からも笑顔は消えていました。

 「(怖い顔)(;゜0゜)」
 「(恐ろしい顔)(*゜Q゜*)」
 真剣で緊張感に満ちた大人たちの顔は赤ずきんちゃんもヘンゼル
も見ていました。

 でも、終わるとすぐに二人は笑顔を取り戻します。
 そして……

 「おやおや、また漏らしかいな。よほどだらしのない奴じゃな、
お前という奴は……」

 「やれやれ、あまり手間をかけさせないでよね……これじゃあ、
帰りはオムツをして帰らなくちゃならないわ」

 グレーテルはまだまだ放心状態。お婆さんやお母さんのこの言葉
を白昼夢の中で聞いたのでした。

 こうしてヘンゼルとグレーテルのお仕置きは終了。親子三人は、
仲良くお家へと帰っていきました。

 騒動が落ち着いて、魔法使いのお婆さんは次に赤ずきんちゃんの
身なりを整えてやります。
 赤いずきんをしっかり頭にかぶせ、できあがったばかりの箒を背
中に括り付けます。
 そして、森の入り口まで送ってくれました。

 「ねえ、お家の中では杖を使わないのにどうしてお外では使うの」
 赤ずきんちゃんが尋ねると……

 「これか?……これは看板じゃよ。魔法使いの看板じゃ。この方
が威厳があるからのう。薬もケーキもよく売れるんじゃ。……だい
たい生活するのに杖がいるようになったら、子供の尻も叩けんじゃ
ないか。そうなったら、大人としての値打ちはないし、魔法使いも
引退じゃよ」

 お婆さんは笑います。赤ずきんちゃんもつられて笑顔でした。

 赤ずきんちゃんはお母さんのメモを再び確認します。
 「次の目的地は……シンデレラ城かあ……あ、その前に、コビト
さんのお家にも寄らなくちゃ」

 「……何じゃ、次はコビトの処か。……なら、ここにおればよい。
じきにコビトたちが用を済ませて帰るじゃろうから」

 お婆さんのせっかくの提案でしたが…

 「いいの、帰る道も覚えておきたいから」

 「ほう、そうか、人に連れて行ってもらうと道は覚えんからな。
……感心じゃな、お前は……じゃあ、気をつけていくんじゃぞ」

 赤いずきんちゃんは魔法使いのお婆さんと別れて再び森へ入って
いきます。赤ずきんちゃんの冒険はまだまだ続くのでした。


*「お菓子の家」編はここまで。でも、物語はまだまだ続きます*

§1 <天使の庭で>

§1 <天使の庭で>

 私が亀山へやって来たのは60を少し過ぎた頃。体にはまだまだ
自信があったが、経営方針で息子と対立して退くはめになっていた。
 それまで独りで店を大きくしてきたという自負があったからよも
や店を追われようなどとは思ってもみず、落ち込んだこともあった
が、くよくよしていても始まらない。本当は何か別の事業を始めよ
うと目論んでいたのだ。
 ところがそんな折、友人から亀山に遊びに来ないかと誘いを受け
た。
 「だってあそこは功成り名を遂げたお偉いさんたちの御道楽だろ
う。都内7店舗ばかりの小さな店の隠居じゃ相手にしてくれないよ」
 私は破顔一笑して一度は断ったものの、内心では子どもとの暮ら
しにまったく興味がないわけではなかった。
 そもそもあの馬鹿息子と店の方針を争ったと言っても、その実、
奴が専務一派の甘言に奴がまんまと引っ掛かっただけの事であり、
店は早晩大手資本の傘下に組み入れられるはずである。
 それは私の脇があまかったからであり親としても息子から信頼を
得ていなかったからに他ならない。私は彼に適切な助言をしてやれ
なかった。
 要するに子育てに失敗したということだ。実際、息子が思春期を
迎えてからというもの親らしい事は何一つしてやれなかった。
 そのつけが今頃になってやって来たのかと思うと忸怩たる思いな
のだ。といって今さら成人した息子とよりを戻すことなど難しい。
そんな絶望的な状況の中で、私の心の中には新規事業立ち上げとは
百八十度違うまったく別の思いが心に浮かぶのだった。
 つまり、復讐心からくるような新たな事業を立ち上げなどより、
むしろこのまま隠とんして残った資産で血は繋がらなくとも自分を
慕う子どもたちと楽しく暮らしてみたいという夢だ。
 もともと子煩悩だった私は、実の息子とは果たせなかった子ども
との安らぎの日々を今一度望んでみたくなったのだった。
 『もし、この通りなら……』
 亀山移住を勧めるパンフレットを見ながら不思議と夢は膨らんで
いく。そこで、二度三度と誘う友人に折れて亀山への入山手続きを
とってみることにした。
 ところが、ところが、これが何と一年以上もかかったのである。
 精密な健康診断に加え、心理テストなども入念に行われ、勿論、
身辺調査も……いい加減頭にきていた頃になってやっと入山の許可
が降りた。
 このため、新しく始める事業の方はすでに準備が整い、従業員の
募集をかけるまでになっていたから……
 『ええい、そんな夢物語がこの世にあるはずがない。止めてしま
おう』
 と思ったのだが、せっかく苦労して手にいれた入山許可を一度も
使わない手はないと思い直し……
 『観光旅行のつもりで出掛けてみるか』
 ということになったのである。
 ところが、単身出かけたたった一回の観光旅行で私の考えは再び
変わってしまったのである。
 「離婚されたくなかったら、つべこべ言わず一緒に来い!」
 嫌がる妻を強引に説得、今回引退して私に権利を譲ってくださる
予定の安藤先生のお宅へ、夫婦して居候を決め込んだのだった。

§2 <天使の庭で>

§2 <天使の庭で>

 何がすばらしいと言えないくらいここはすばらしかった。まずは
住んでいる人たちが、みんな私たちと同じ常識を持つ穏やかな紳士
淑女ばかり。森に囲まれた環境で外界とは隔絶しているが、過不足
なく施設も充実しているから不満はない。もっとも、子どもにそれ
ほど興味のない人にとっては、刺激的な場所がないからきっと退屈
な田舎ということになるのだろうが、いずれにしても趣味を同じく
する私たちにとってはまさに『楽園』。その名が看板倒れでないこと
だけは確かだった。
 何より私を驚かせたのは子どもたち。
 品良く従順で勤勉。教養も高く芸事にも秀でている。いったい、
どうしたら、こんな子が育つのかと首をかしげたほどだった。
 正直に言ってしまうと、私はペドォフェリアの気があって、海外
では子どもをその目的のために買うこともあったのだが、そうした
子どもというはたいてい品がなく薄汚れていて、何より抱くとおど
おどしていて興が冷めていた。そんな暗部がこの子たちにはまるで
ないのだ。まるでどこかのお嬢ちゃまお坊ちゃまという感じだった
のである。
 「この子たちは本当に孤児だったんですか?」
 私が安藤先生に尋ねると……
 「育て方だよ。ここでは2歳以降の子は預からない。人間の性根
は3歳までに決まってしまうから、それ以前の育て方が悪いと知識
は増えても人間性には問題のある子になってしまうんだ」
 「三つ子の魂百までもというわけですか。ここでは赤ん坊にどん
な教育をしてるんですか?」
 「特別なことは何もしてないよ。ただね、この子たちの事実上の
母親である家庭教師が、日がな一日抱いて育てるから、子どもたち
はこの人を本当のママだと思ってついていくんだ」
 「生さぬ仲なのに?」
 「そうだ、彼女たちの方にも色々事情はあるみたいだがいずれに
してもだ、献身的に子育てに励んでくれるおかげで私達はこうして
楽しい美酒に酔いしれることができるというわけだ」
 「じゃあ、この子たちは家庭教師の彼女たちを本当の母親だと…
……」
 「いや、いや、そうじゃない。それは初めからちゃんと教えて
ある。勿論、私たちのこともだ。しかしそれを承知で私たちが少々
無理難題をだしたとしても、この子たちは実に健気に対応してくれ
るよ。それもこれもママのおかげだ」
 「ママ?」
 「彼らは自分の身の回りの世話をやいてくれる家庭教師をママと
呼ぶんだ。実際その通りの役回りだから、私はそれでいいと思って
いるがね」
 「私たちのことは?」
 「お父様、お母様だ」
 「おとうさまですか……私は、庶民の出なのでお父様はちょっと
……『お父さん』でいいですよ」
 「そうはいかないよ。その呼び名はここの決まりだからね。他の
呼び名はないんだ。……大丈夫、慣れるよ。私もすぐに慣れたから
……」
 「お父様かあ~~」
 「お父様といっても、私たちはこの子たちを親として教育する事
はほとんどないんだ。教訓を垂れたり知識を与えたりするのはもち
ろんOKだが基本的に子どもを泣かすような体罰はダメなんだ」
 「ええ、わかってます。そのことは女王様から厳しく注意されま
したから……」
 「…もっともね、子どもが無礼な事をすればママがすぐにお仕置
きをするから、ここの子は大人に向かって手に負えない悪戯をする
なんて事はまずないんだ」
 「ほんと、さっき、もう10歳は越えていそうな子をだきました
けどまるでぬいぐるみみたいにおとなしくて感動しました」
 「ここのお父様たちはほとんどが老人だからね。普段からおとな
しく接するように躾けてあるんだ」
 「ここの子ども達は夜ベッドに入る時は全裸って聞きましたけど
本当ですか?」
 「ああ、嫌だったら、パジャマを着せてもいいんだよ」
 「いえ、私は構わないんですが……子どもたちがよく嫌がらない
なあと思って……」
 「嫌がったりしないさ。彼らにはそれがごく幼い頃からの習慣だ
もの。なんだったら、おチンチンやおマンコを触ってもいいんだよ。
もちろん姦淫行為なんてのは論外だけど、そのくらいことは許され
てるんだ。……亀山ルールでね」
 「亀山ルールですか?でも、そんなことしたら、街中に噂が広が
って変体扱いされませんか?」
 「そんなこと言ったら、この街のお父様たちはみんなヘンタイ
だよ。わかるだろう」
 安藤先生は意味深に片目をつぶって見せた。
 「子どもたちだってあまり執拗にやらなければ騒いだりはしない
よ。そうしたこともママたちから因果を含めて教えられてるから…
…もし、子どもが本気で嫌がったら止めればいい。ただそれだけの
ことさ。そもそも、そこいらの分別がつかないような人物を女王様
はこの街には入れないから、そこらあたりは、あくまで君の判断で
いいんだ」
 「…………」
 困惑した私の表情を見て、先生は続ける。
 「この街が楽園であり続けられるのは、ここに住むみんなが共通
の良識をもっていて、それを頑(かたく)なに守り続けているから
なんだ。人間だからたまに羽目をはずす事だってあるけど、それを
規則違反として処罰したらここは楽園ではなくなるからね」
 「高い次元の自己責任ってことですね」
 「そういうことだ。規則を作って人を罰することは容易(たやす)
いが、それでは大人も子どもも窮屈だろう。大事なことは、大人に
とっては愛したい子どもに巡り合うことであり、子どもにとっては
愛されたい大人に巡り合うことなんだから。…両者がそれに向けて
努力することが大事なんだよ」
 「巷ではここのことを『青髭館』だとか『子ども妾』なんて言っ
てますけど、それは違うってことですね」
 「…………」先生はしばし苦笑いを浮かべたあと「確かに大人は
性欲を持った生き物だからね、この街の日常がまったくポルノっ気
がないものだとは言わないけど……それは色んな意味で教授を受け
る子どもの側にしたら仕方のないことだと思うんだよ。大人から授
けられるものは紙に書き起こせる知識だけではないからね」
 「……なるほど、そんなことを言うのは下衆のかんぐりという訳
ですか」
 「理性と感情を厳格に分ける事ができるなんて考える現代人の病
がそんな妄想を生むのさ。そもそも人間が人間に伝えていくものは
知識だけではない。その人が持っている着想力や思考処理といった
ものは、彼と言う人間の癖というか個性を知ってはじめて伝わって
いくものだからね。ここで保育園がないのも、まだ言葉や知識で物
事を把握できない赤ん坊に親という存在を肌で認識させるためなん
だ」
 「スキンシップ」
 「そうだ、ここではそれを何より大事にしてきた。だからこそ、
いつの間にかこんなに大きな組織になったんだ。今の人は『知識や
理屈を言い合って人間はコミュニケーションを取っている』ぐらい
に思っているようだが、実は、大半の事は言葉に出さずともお互い
理解できるし、むしろその方が相手を傷つけず自分の意見を言えて
相手の深い腹の底まで読み解くことができるから、その方がよほど
有意義なんだよ」
 「腹芸というやつですね」
 「日本人が長い歴史の中で作り上げてきた意思伝達の手段だ。異
民族との接触が多かった西洋人はお互いの意思の疎通を言葉に頼っ
てきたが、同民族だけで長年暮らしてきた日本人は細やかな意思を
伝えるのに言葉は不向きと考えていた節があるんだ。むしろ、言葉
では相手方に強く自分の気持が伝わりすぎてお互いの人間関係が気
まずくなる。そこで、微笑んだり何気ない仕草で間接的にこちらの
意向を相手に伝えるすべを獲得していったんだ」
 「赤ん坊も同じということですか?」
 「人間の英知がそこまで達していないので理屈ですべてを説明で
きないが、赤ん坊は言葉を獲得する以前からすでに母親と会話でき
てると思うよ。ロジックではなく感性でね…それもかなり深い内容
まで踏み込んで感じ取っているはずだ」
 「そんなことわかるんですか?」
 「『三歳までの間で最も長い時間、肌を接した人物の言葉が、その
後にあっても最も長く記憶に留めている』というのが私の持論という
か、実感なんだよ」
 「何だか難しいお話ですね」
 「そうかい。簡単な事さ。『赤ん坊にとっての母親はミルクを買っ
た人物ではなく、哺乳瓶で自分にミルクを与えてくれた人』だって
ことさ。だから、成長した後もその人が言った事は他の人の話より
長く記憶に残るし、その人の気持は理屈ではなく感じることができ
るんだよ」
 「テレパシー?」
 「いや、そんな大仰なものじゃなくて、ちょっとした仕草や顔の
印象でその人の心情を掴み取ることができるってことさ。機微に触
れるってことかな……他の人以上の感度でね」
 「確かに、ママと言っても相手はなさぬ仲の子どもですからね。
血のつながりはないし……」
 「血の繋がりはどうでもいいけど。二歳までのスキンシップは、
赤ん坊に親を認知させるための絶対条件だからね、ママは授業中も
自分の預かった赤ん坊を手放さないんだ。先生が赤ん坊を負ぶって
授業している教室なんて世界中探してもおそらくここだけだよ」
 「成果は目に見えるものなんですか?」
 「見えるも何も、さっき君はここの子どもを抱いて…『どうして
こんな天使のような子が育つんだろう』って感嘆してたじゃないか。
それが成果さ」
 「なるほど(・o・)……」
 「たとえどんなに多くの物を与えたとしても、寄る辺なき身の上
の子に帰るべき心の家がなかったら、あの笑顔は出てこないんだよ」
 「そうですね(*^_^*)」私は思わず苦笑した。
 「そして、そんな笑顔が見られないなら……私たちもまたこんな
山奥には用がない。献身的なママの愛も、私たちのお金も、厳しい
お仕置きも、何一つ欠けてもこの街は存続しないんだ。だから入山
には厳しいテストがあるんだ。ここに入山したければ何より子ども
を愛していて、かつ極端には走らない美徳が求められるんだよ」
 「……なるほど、それでこんなに手間がかかったのか(・0・)」
 ほつりと独り言。ただ、私は自分がそれほど立派な人間だと自覚
していないので多少困惑してしまった。
 「そう、かしこまって考えることじゃないさ。君の常識、良識で
行動すればいいんだから。……もし、不都合があったら女王様から
叱られるだけだ」
 「どんなことしたら叱られちゃいますかね(^_^;)」
 「一番多いのはえこひいきだな。もちろん子どもはどの子だって
可愛い。でも、誰にも『特にこの子だけは…』という子がいるもん
だ。ただそうすると、知らず知らずその子だけを優遇してしまう。
これが最も陥りやすい過ちだよ」
 「そんなことも女王様は把握してるんですね」
 「我々だけじゃない。先生方のえこひいきにも厳しく目を光らせ
てるよ。先生方もお互いがチェックし合って、おかしなことがあれ
ばすぐに女王様に報告が上がるようになっている」
 「ほう~(・0・)」
 「とにかく、彼女はこの亀山では絶対君主。ここでは一番偉い人
だからね。彼女によってここの秩序は保たれてると言っていい。
我々だって亀山の秩序を乱す輩と思われたら追放ということだって
あるよ(^_^)b」
 「えっ!誰か追放された方がいるんですか(?_?)」
 「いやない。でも数少ない規則の中にそう書いてあるよ(*^_^*)」
 安藤先生はウイスキーが回ってきたせいもあるのだろうか、赤い
顔を天井に向けにこやかに笑うのだった。(^◇^)
 私たち夫婦は、当初二週間の予定で滞在したが、それが二週間の
延長となり、さらに二ヶ月の延長、さらには、やむを得ない用事で
下山する時以外は、とうとうここにいついてしまったのである。

§3 <天使の庭で>

§3 <天使の庭で>

 お父様の朝は隣で寝ているチビちゃんたちのパンチと蹴りで始ま
る。さらにはトイレへ行くのが面倒な子もいて、そうした子がお隣
さんだとこちらもパジャマがびっしょりなる。
 ただその程度のことで気分を害するようなお父様というのはこの
街にはいないから、この子たちは常に天使でいられるのである。
 「ほら、しっかり立って」
 私は寝ぼけ眼の少女をベッドの脇に立たせると蒸しタオルで股間
を拭き上げる。もう11歳にもなるというのに、驚くほど悪びれた
様子がない。
 「…………」
 まるで、そうしてくれるのが当たり前とでも言わんばかりの眼差
しだ。
 むしろ大人たちの方が……
 「御前様(女中さんたちは我々をそう呼ぶことが多い)、そのよう
な事は私たちがいたします」
 女中たちはそう言って私から蒸しタオルを取上げようとするする
が、どうやら、彼女たちの方がよほど私の気持が分かっていない様
だ。
 「大丈夫だ。私がやるよ」
 にこやかに断ると相手もそれ以上無理強いはしなかった。
 そもそも私がやっているのは苦役でもなければボランティアでも
ない。これが好きだからやっているのである。
 まだ、下草もろくに生えていない少女の臍の下に手を入れている
だけで幸せなのだ。しかも彼女は熱いタオルを股の中に入れ、ごし
ごし擦っても嫌がったり恥ずかしがったりはしない。といってこと
さら苦痛に耐えている様子でもない。『ごく当たり前のことが当たり
前に起こっている』そんな表情で身じろぎ一つしないのである。
 彼女をこのスケベおやじの前に立たせているのはむろん愛情だけ
ではない。安藤先生の場合は、この子が赤ん坊の時からの付き合い
だから愛情もあるだろう。しかし、私は初対面から数日しか経って
いないのだ。少女にしてみれば私の存在はほとんど他人に他なら
ない。にも関わらず、こうして初老男の前にすっぽんぽんで立って
いられるのは信頼と権威がそうさせているのだった。
 ここでは、庭師や賄のおばちゃん、大工さん、バキュームのおじ
さんに至るまで子どもを邪険にする大人はいない。大人は常に自分
たちに優しくしてくれるという『大人への信頼』があるのだ。
 それと物心つく頃から色んな機会をとらえて「お父様はとっても
偉い人」と教えられ続けた結果、頭の芯にまで刷り込まれた『お父
様の権威』というものが少女を金縛りにしているようだった。
 もちろん、だからといってお父様の側も好き勝手をやっている訳
ではない。嫌がれば止めるという分別はここでは誰もが持っている。
だからこそ続いてきた関係だった。
 私は茜の身体を一通り拭いてやると、ショーツやシュミーズを着
せてやる。
 歳も歳だし彼女が独りで着替えができないわけではないが、大人
たちが着替えさせている時は逆らってはいけないと日頃から躾られ
ているのだ。
 私たちは子どもたちの教育や躾にほとんど口を出さないが、すべ
てはこちらの意向に沿うよう先生方が子供たちを御指導くださるの
で、こちらとしてはその事に何の不満もなかった。
 要するに私たちは完成されたお人形(アンドロイド)をただ抱く
だけでよかったのである。
 ま、これも私たちが若ければ自分の手で仕付けて、教育して、
自分の色に染めたいところだが、何ぶん、みなさんお年より。この
中では一番若い私にしたところでそれはしんどい事だったのである。
 だから、私たちはお父様と名乗らされてはいるが、実質的には子
どもたちのおじいさん、おばあさんといった役どころだった。
 しかし、それでもなお亀山での生活はこの上なく楽しい田舎暮ら
しだったのである。

§4 <天使の庭で>

§4 <天使の庭で>

 亀山では食事の時に当番に当ったコテージの子どもたちが私たち
のテーブルへとやってくる。普段は下座でママと一緒のテーブルな
のだが、当番の日だけは私たちと一緒に食事をする決まりだ。
 一つのコテージ(長屋)には、ママが面倒をみている子どもが
二三人。だいたい六歳違いで姉妹(兄弟)として暮らしている。
 例えば15歳の姉(兄)がいればその下は9歳、さらにその下は
3歳というわけだ。15歳14歳の子はすでに赤ちゃんを卒業して
いるので食事風景も大人と同席といった感じだが、13歳以下の子
どもたちは全て赤ちゃんとして扱われ、お父様の膝の上か、膝小僧
が当たるほど近くに椅子を置いて、料理も大人たちが取り分けてや
ることになる。
 それだけではない。お父様たる者、どの子に対しても二口三口は
料理をスプーンに乗せてその子の口元へと届けてやらなければなら
なかった。
 これも朝の着替え同様、『なぜ、私がこんなわずらわしい事を…』
なんて感じる人は…何度も言うが…そもそも亀山にはいないのだ。
私もそうだが、ロリコン趣味のある大人たちにしてみれば、13歳
にもなった少女が自分の差し出すスプーンを銜えて微笑むなんて…
…何より夢のように楽しい出来事だったのである。
 無論、彼女たちにだって自我が育っていないわけではない。が、
そこは女の子、順応性には長けている。彼女たちは13歳という年
齢を跳ね除けると、赤ちゃんや幼女にでもなった気で私たちのオマ
マゴトに参加してくれるのである。
 私も12、13の子を膝の上に抱いて幾度となく食事をしたが、
……その瞬間は、十も二十もいっぺんに若返った気がした。
 だから、その期を逃さず彼女達に服やオモチャなんかをねだられ
るとついつい「ああ、いいよ」と安請け合いしてしまうのだ。

§5 <天使の庭で>

§5 <天使の庭で>

 朝、子どもたちが学校へ行くと屋敷はとたんに静かになる。勿論、
そこで一息ついて自分の用事を済ますこともできるのだが、私は子
どもたちからは一足遅れてよく学校へ行った。普通、父兄が学校へ
行くというのは、父兄会や学芸会、運動会、卒業式といった行事の
ある時に限られるものだが亀山の学校はとってもアットホームで、
お父様やお母様がいつ顔を出しても嫌がらない。
 むしろ歓迎してくれると言ってよかった。その証拠に子どもたち
が学ぶ教室の後ろには中二階があり、父兄席として確保されたその
場所から誰もが授業の様子を見学できるのである。
 それだけではない。休み時間には教室へ下りていってうちの子を
抱いたり請われて宿題を教えることだってある。そんなことをやっ
ていると他の家の子ども達もせがむから他の子も抱くはめになる。
 ちょっとした人気者になった気分でそれはそれは楽しかった。
 もし、巷で見知らぬ男がいきなり自分の身体を抱こうとすれば、
泣き叫ぶか大人の手を払い除けて拒否するのが普通の反応だろう。
 しかし、ここではそんな子どもの姿は見た事がない。むしろそれ
が誰であれ、大人が抱きたいと両手を差し伸べさえすれば、まるで
手なずけられた子犬のようにものの見事にその人の胸の中へすっぽ
りと収まってみせたのである。
 子ども達は物心つく頃から目にする大人すべての胸に抱かれて
育つ。誰もが優しく接してくれる楽園では中に一人ぐらい見知らぬ
顔が混じっていても警戒しないのかもしれない。
 ただ、子どもたちにとっては私の膝の上だけが目的ではないよう
で、頭も首も背中も腰もとにかく私の身体の全てが彼らの遊び道具
だった。 それは老人にはちょっぴり大変なのだ。
 だから、お年を召してそんな事には耐えられないと学校へはあま
り足を運ばれなくなったお父様もいらっしゃるにはいらっしゃるの
だが、私だけではない、見ているとほとんどのお父様やお母様がご
自分の身体を子どもたちに自由に使わせる事で若い精気を存分に取
り込んでおられるようだった。
 そんなわけで始業の鐘が鳴り始めると私たちは子ども達との別れ
が名残惜しくてならなかったのである。

§6 <天使の庭で>

§6 <天使の庭で>

 私は学校の中庭をよく利用する。ここはお父様たち専用の庭、
子どもたちは立ち入れない。そもそもここは同じ敷地に建つ修道院
の一部なのだ。丹精された草花に囲まれて木陰のベンチに腰を下ろ
すと天使たちが群れ遊ぶ噴水からオゾンの風が吹いてくる。子ども
たちの学校とは腰の低いバラの生垣が結界となっていた。オフホワ
イトのマリア様も穏やかに微笑んで、ここは疲れた心と身体を癒し
てくれる最高の場所だったのである。
 ま、それだけでも十分なのだが、好事家たちにとってはお楽しみ
はこれだけではないようで、ここでは、他ではではちょっとお目に
かかれない種類の催し物が連日のように繰り広げられるのだ。
 実際お父様たちの中にはこの催しもの見たさに足しげく通う人も
珍しくなかった。
 「よくお目にかかりますね」
 「ええ、根がスケベなもので…」
 東亜自動車の元会長は隠しようのないほどの大きな身体で、少し
照れながらつぶやく。それでも屈託のない笑顔だった。
 「ただ、今日は娘が出て来やしないとそれが気がかりなんですが
……」
 「大丈夫でしょう。聞くところによるとお嬢さんは優等生だそう
じゃないですか」
 「いやぁ、だといいんですが、こればかりはわかりませんよ」
 二人は雑談や読書で時間を繋いだ。それはいつ始まるのかわから
ないからだ。たいていはのどかな昼下がりなのだが……いずれにし
ても突然、噴水先の舞台(一階テラス)に役者が表れることになる。
 そして、この日も……それは突然に表れたのである。
 「さあ、いらっしゃい。あなた何度言ったらわかるの」
 甲高い女性教諭の声がしたかと思うと、彼女は女の子の腕を引っ
張り建物から出て来た。
 右手を強く引っ張られているのは11歳位だろうか、困惑した顔
が何とも可愛い。腰が引け、さも嫌々ながらというのが、遠くから
でもよくわかった。先生が小さな手を強く引っ張るたびに少女の肩
まで伸びたストレートの髪がなびき、やがて舞台の中央へと引き寄
せられる。
 『あれ?あれは?』
 私がまだ少女を確認しないうちに会長が席をたった。
 「……?……!」
 それでかわかったのだ。
 「それでは、私はこれで…」
 軽く会釈すると、彼はその場を去る。
 そう、今まさに出て来たのは不幸にして彼が抱える里子の一人、
茜ちゃんだった。
 亀山では自分の預かった子どもを自らお仕置きしてはならない。
こうした場合もその場には立ち合わないのが暗黙の了解事項だった。
 数人の大人たちが少し遠くで見守る中、茜ちゃんは先生のお膝の
上でスパンキングを受け始める。
 何が原因なのかはわからないが、こんな場合、男たちにとっては
その理由などはどうでもよかった。ただただ少女の赤くなっていく
お尻と堪えられずあげる悲鳴だけがお目当てだったのである。
 安藤先生もおっしゃっていたが、『男は女性に二つの事を期待して
いる。一つは美しく気高い姿。もう一つはこれ以上ないほどのあら
れもない姿。どちらが欠けても男はその女を愛さない』
 しかし、亀山にはその二つがものの見事に同居しているのだ。
 無論、東亜自動車の元会長にしたところで、当初は私たちと同じ
火事場見物(?)を目論んでいたのかもしれない。それが自分の娘
(里子)とわかって目算が狂った様子だった。
 亀山のお父様は、寄るべなき身の上の孤児たちにとっては最後の
砦いわば救い主(神様)なのだ。だからその存在はママにも増して
絶対的。お父様はその子が自分の抱える子どもかどうか問わず亀山
に住む全ての子ども達への愛の供給者でなければならなかった。
 だからこそ家長としての権威も絶対的で、子供たちはどんな些細
な事でも滅多に逆らうことはない。しかし、そんな私たちへの絶対
的な服従も、実は、ママの「おじ様も私と同じように敬いなさい」
というお言いつけあっての話なのである。亀山の親子はあくまで仮
の親子だが、その心根は巷の親子と何ら変わらないのだ。
 それに、こう言っては何だが、お父様が御自分の娘の痴態を見た
いと願うならそれは何も中庭などに出向く必要はない。ママにその
希望をそれとなく伝える、というより匂わすだけでよいのだ。
 数時間後、彼は自宅にいながらにして娘の裸を思う存分に楽しむ
事ができたのである。

§7 <天使の庭で>

§7 <天使の庭で>

 「いったい何度言ったらわかるのかしら。ママはね、鮎美ちゃん
のお世話で忙しいの。あなたはもう大きいんだから宿題くらい自分
でやらなきゃ。ママがいなくてもそのくらいできるはずよ」
 両手を掴まれ、ママに睨まれると茜ちゃんは何も言えませんで
した。
 「だいたい、昨夜はどこへ行ってたの?あなたが、由実ちゃんの
処でやるって言うから許したのに、あとで行ってみたら由実ちゃん
のママからは『いえ、こちらには来てません』ってご返事だった
わ。これってどういう事かしら?」
 「……………」
 茜ちゃんは何も答えませんでしたが答えはすでに出ているようで
……
 「まったくあなたって子は……またお父様の処へ行って一緒に
テレビを見てたのね。私、もう知りませんよ。大竹先生が、今度、
茜ちゃんが宿題やってこなかったら、トリプルのあと市中引き回し
にするそうよ」
 「…………ひきまわしって?………ねえ、お馬さんで?(¨;)」
 「知りません。(-_-#)……でも、あなたみたいな子はその方がいい
かもしれないわね。ママはあなたみたいな子、かばってあげません
からね」
 「えっ!、そんな~」
 「何が、『えっ!』よ。仕方ないでしょう。あなたが悪いんだから
………今日はお勉強の前にあなたの怠け心にもしっかり効くように
……ようく効くおまじないをしてみましょうね」
 こう言われて、思わず茜ちゃんの手に力が入ります。いえ、これ
までもママの戒めから自由になろうとちょくちょく抵抗はしていた
のですが今回はその何倍もの力で、全身全霊で拘束されている自分
の両方の手首を引き抜こうとしたのでした。
 「いやあ」
 掛け声と共に目一杯の力で自分の両手を引き寄せてみたんですが
……
 「あっ……あっ……」
 という吐息だけでびくともしません。そこは大人と子供。腕力に
差がありますからどうにもなりません。そこへ……
 「ほら、何してるの!?お仕置きが増えるわよ」
 ママに一喝されるると茜ちゃんは急に怯えた表情で身を縮めます。
抵抗する力が急に抜けてしまったようでした。さらにママは青い顔
の茜ちゃんを見下ろして……
 「あなた、先週お父様の前で私に誓ったわよね?」
 「えっ?何が??」
 「今度、怠けたらどんなお仕置きでもお受けしますって……」
 獲物を狙う蛇のような陰険な目付きが茜ちゃんの今置かれている
不幸をさらに際だたたせますから周囲で見ていたお父様たちは内心
大喜び。
 女性の場合はこんな時でも不幸な少女のために『まあ、可哀想
だわ』なんて顔を作ってくれるかもしれませんが、男というのは、
心の内が正直に顔に出てしまいます。
 「ああ、いや、だめえ、やめてえ~~」
 籐椅子に座ったママの膝の上で裸になったお尻が可愛らしく跳ね
回ります。
 「ほら、暴れないの!せっかくの痛みがお尻の中へ入らず外へ逃
げてしまうでしょう。そんな我慢を知らない子にはお尻から血が出
るまでぶち続けますからね」
 茜ちゃんとしてもママの要望には副(そ)いたいところですが、
すぐに痛みに耐えかねて足をバタバタさせてしまいます。
 「いやあ~~ごめんなさ~~い」
 ひとつぶたれるたびに大声が上がり、そのたびにまだ小さなプッ
シーが太股の隙間から覗き見えて(本当は離れていてよく見えませ
んが……)ベンチに座った男達の目を楽しませます。
 不謹慎と言われようが悪趣味と言われようがそれが亀山のルール。
子供たちは自分のお仕置きを大人たちから隠すことはできませんで
した。
 一方大人たちにしてみると、ここでは心の奥底に沈む暗部をあえ
て隠す必要はありません。本性のおもむくままに子供たちの痴態を
観察し若返りの秘薬を一日中浴び続けることのできる。それがこの
場所、亀山だったのでした。

§8 <天使の庭で>

§8 <天使の庭で>

 5mも離れた場所ですから、何もかもが見えたわけではありま
せん。でも、ママは私たちが出来る限り見やすいように茜ちゃんの
お尻をこちらへ向けて叩いていますし、時折そのお尻の割れ目その
ものを押し広げたりもしてくれましますから目の保養には充分で
した。
 ただ、茜ちゃんにとってのお仕置きはこれだけではありません。
 スパンキングが終わると、自ら素っ裸になって、マリア様の像の
前に膝ま付き胸の前で両手を組んで懺悔します。
 乙女の祈りと呼ばれるこのポーズは亀山の少女たちが今の純潔を
示す大事な儀式。ちょっとでも不遜な態度が見られれば、再びママ
の膝の上に戻らなければなりませんから顔も自然と真剣になります。
 まずはママに……
「私は、昨日、宿題をサボったので朝のテストで落第点を取ってし
まいました。これからは決して怠けませんから、どうぞお仕置きを
お願いします」
 と懺悔して……でも、それで終わりではありません。茜ちゃんは
噴水脇の木戸をママに開けてもらうと、それまで何食わぬ顔でベン
チに腰を下ろしていた私たちの処へとやって来るのでした。
 「私は、昨日、宿題をサボったので朝のテストで落第点を取って
しまいました。これからは決して怠けませんから、どうぞお仕置き
をお願いします」
 茜ちゃんはさっそく最も近くにいたおじ様の足元に膝まづくと
振り絞るような声で懺悔をしてからトォーズを両手で頭の上に捧げ
ます。
 もちろん、これが茜ちゃんの真心というわけはありませんが、
ママがすぐ後ろに立って監視していますからどの道茜ちゃんに逃げ
道はありません。この難儀を逃れるためにはママに言われた通り
やるしかありませんでした。
 時代かがった形式美、型どおりの懺悔。でも大人たちにはすべて
を飲み込んでもなお、嬉しいものなのです。
 まだ小さく幼い顔が小刻みに震えているのがわかると思わず抱き
しめたくなります。そんな思いはどのおじ様たちもみなさん同じで
した。
 自らの足元で子犬のように震える茜ちゃんを見たおじ様は、……
いえ、この場合はあえて『お父様』と言った方がいいかもしれま
せん……茜ちゃんに怖い顔などしません。
 「おや、おや、これでぶつのかい?」
 両手でうやうやしく差し出されたトォーズを笑顔で取上げたお父
様は懺悔のポーズのままに固まっている茜ちゃんの両脇に手を入れ
て持ち上げると、お互い顔が見合わせる形で抱っこします。
 もちろん、茜ちゃんだってこれが初めての経験ではありません
から、おじ様はぶたないだろうとは思っているのですが、子どもに
とって大人はみんなキングコングのような大男。こんな大きな顔を
間近に見て恐怖しない子はいませんでした。その唇は青ざめ、唇と
言わず顔と言わず、その全身が小刻みに震えているのが分かります。
 でも、こんなにも恐怖におののく少女の顔を見て、さらに何か意
地悪でも…なんて考える冷血人間は亀山にはいません。むしろ、
こんなにも可哀想な少女を今こうして抱いてやれるのがお父様たち
にとっては無性に嬉しかったのでした。
 「お尻はまだ、痛いか?」
 「は、はい、ちょっと……」
 「大丈夫だ、すぐに治るよ。ママはそんなに強く叩いてないもの
…」
 「あれで?」
 「そう、あれでだ。もし中学生のお姉ちゃまと同じようにぶった
ら、お尻が痛くて私のお膝ににこうして穏やかに座ってお話なんか
できないぞ」
 高遠(たかとう)のお父様は悪戯っぽく茜ちゃんのお尻にご自分
の右手を滑り込ませます。
 「ふうん」
 「茜ちゃんは、まだまだ、赤ちゃんだからね、そんなに強いお尻
叩きなんて…されることはないんだ」
 高遠のお父様は滑り込ませた右手で茜ちゃんのお尻を少し揉んで
いるようでしたが、茜ちゃんが声を上げることはありませんでした。
 「そんなことないよ。おじ様はママのお仕置きを受けたことない
から分からないのよ。もの凄く痛くて泣いちゃうんだから」
 「はははは(^◇^)…それは仕方がないよ。だって、お仕置きだ
もの。笑ってすませられたらお仕置きじゃないだろう」
 「そりゃそうだけど……」
 「そんなお仕置きを受けない為にも次はちゃんと課題をこなして
から学校に行かなきゃだめだよ。茜ちゃん一人がやってこないだけ
でもみんなが迷惑するからね」
 「どうして?」
 「だって、一人でも分からない子がいたら先生は次の単元に行け
ないじゃないか。茜ちゃん一人の為に他の子も同じお勉強しなきゃ
いけなくなっちゃうだろう。そんなことが続いたら、みんなきっと
待ちくたびれちゃうよ。みんなと一緒にお勉強できないと仲間はず
れになっちゃうよ。仲間はずれになっちゃったら、茜ちゃんだって
楽しくないだろう」
 「そうかあ~~」
 「おそらく、昨夜はやってみたら一回だけ満点だったんだろう。
でも、テストでうかるためには少なくとも三回続けて満点が取れる
ようにしておかないと翌日は忘れてしまうからね。ママだってこれ
まではそうしてたはずだよ」
 「そう、三回じゃないよ。五回も続けて満点じゃないとOKして
くれないんだから。寝かしてくれなかったの」
 「おおかたそんなことだろうと思った。そんな大事な約束を破っ
て、このくらいやっておけばいいだろうって勝手に決めちゃうから
叱られちゃうのさ」
 「そうかあ~~」
 「ほら、わかったらお尻をぶってあげるからしっかり我慢するん
だぞ」
 高遠さんはそう言うと、茜ちゃんをご自分の膝の上にうつ伏せに
して、短いスカートを巻く利上げ、パンツの上から短めのトォーズ
で三回ほど叩いた。
 すでに温まったお尻だから優しく軽く叩いてもそれなりに衝撃は
あったはずだが……
 「ありがとうございました」
 茜ちゃんはお礼を言うと次のベンチへと向かう。
 事情はどこでも同じ。膝の上に抱き上げてもらい、お説教と言う
か、雑談をして、最後はお膝にうつ伏せになってトォーズ三回のお
仕置き。もちろん、強く叩く人など誰もいなかった。というのも、
これはそもそもぶつことが目的なのではなく、おじ様たちのお膝の
上でパンツ丸出しになる屈辱がお仕置きだったから。
 一方、おじ様たちにすれば、ものの数分、茜ちゃんを膝の上に抱
き、赤いほっぺを頬ずりしたり、肩まである髪を撫でたり、お尻を
よしよし、背中をトントン、両手の指を揉み揉みして心ゆくまで
11歳の少女を愛撫できる……それが幸せだった。
 もちろん、一口におじ様といっても親密度はそれぞれに違うわけ
で、あまり親しくない人の場合は緊張するだろうが、亀山の子は
よく仕付けられていて誰に抱かれても嫌な素振りは決して見せない。
 だから以前から親しくしているおじ様に出会うと茜ちゃんは膝の
上でまるで甘えているようにみえた。
 そして、そんな親しいおじ様に限って、茜ちゃんはほんのちょっ
ぴりだがほかのおじ様たちよりより強い形でトォーズの痛みをもら
うことになるのである。
 こんなことだから、お仕置きにも結構な時間がかかるのだが亀山
では授業といわずこのお仕置きといわず学校があまり時間の観念に
縛られていなかった。
 朝の八時半に登校してから午後四時にお風呂や夕食で家に帰るま
で、決められているのは国語と算数と昼食ぐらいなもので、あとは
その時の気分しだい。理科や社会が写生大会になったり映画鑑賞会
になったり家庭科がドッヂボールになったりなんてのは日常茶飯事
で、逆においたをしたり怠けたり、先生に注意されても反省しない
子がいると、お仕置きも一日をかけてやられたりする。
 ここではすべての時間がゆったりと流れている感じなのだ。
 『こんなことしていて大丈夫なのか?』
 当初は本気で心配してしまうような学校生活だった。
 ただ14歳になってからは生活がガラリと一変する。自由な雰囲
気が勉強中心の生活になっていくのだ。特に、山を下りて寮で過ご
す高校の三年間は、男女別個の缶詰状態で恋もできない。可哀想な
青春時代だ。ただ、その分学力はの方は一気に伸びていくから特に
男の子などはそこそこ名のある大学へ次々と受かってしまうので
ある。
 そして18歳になると彼らは念願の実母に会うことができる。
 もちろん、色んな事情から会いにこない母親もいるし、亡くなっ
た親だっているから全員が生みの母に会えるわけではないのだが、
多くはこのタイミングで実の親と会うことになるのだ。
 ただ、再会した親が子どもを引き取るケースは少なく、親の事情
もあるだろうが、子どもの方も物心つく前からの亀山暮らし、突然
現れた肉親より親しみのある義兄弟との生活を選ぶことの方が多かっ
た。
 話が急にそれてしまったが、茜ちゃんはどのおじ様たちともたっ
ぷり時間をかけて親しげに会話しては最後に形ばかりの鞭をもらっ
て次から次へと大人たちを渡り歩いている。
 そして、ついに私の処へもやってきたのだが私は困ってしまった。
 「すみません、先生。私、どんなこと話たらいいでしょうか?
実は、私、この子と初対面なもので……」
 私は恥を忍んで茜ちゃんの後ろに立つ先生(ママ)に尋ねてみた。
 すると先生が……
 「いいんですよ。どんなお話でも、そんなことに何の制約もあり
ませんわ」
 そこで、とりあえず膝の上に上げてみると……
 茜ちゃんは他のおじ様たち同様、私にも屈託のない笑顔を息が掛
かるほど間近で見せてくれるのである。そして……
 「ねえ、おじ様、連立方程式ってわかる?」
 と、いきなり妙な質問をしてきたのである。
 「えっ?……まあ、簡単なものなら……」
 予想だにしない質問にどぎまぎしていると……
 「だったら、教えて」
 とさらに満面の笑み。
 「いいけど、ここにはノートも鉛筆もないよ」
 私がこう言うと、茜ちゃんは一瞬で私の膝の上から飛び降り…
 「じゃあ、持ってくる」
 こう言って脱兎のごとく学校の建物の中へと消えていったので
ある。

§9 <天使の庭で>

§9 <天使の庭で>

 「いかがですか、ここの暮らしは?」
 茜ちゃんがこの場を去ると、彼女のママ、秋山先生が私に話しか
けてきた。
 「快適です。まだ慣れない事も多いのですが来てみて想像以上で
した」
 「それはよかった。私たちもそう言って頂けると張り合いがあり
ます。(’-’*)♪ここはなんと言ってもお父様方のお力で成り立っ
ておりますもの」
 「いやいやそれを言うなら先生方のご尽力の賜物ですよ。それに
してもどの子もあまりによい子ばかりなんで驚きました。私も一応
子育てはしてみましたけど、うちの子はこんなに素直じゃなかった。
こういう言い方は問題あるかもしれませんが、なさぬ仲の子を、
どうしたらこんないい子が育てることができるのか不思議なくらい
です。私は当時お金も教養もありませんでしたからそれは仕方の
ないことかもしれませんけど……」
 「そんなことありませんわ。簡単なことですのよ」
 「えっ!?」
 「余計な情報を入れず、過度な期待を持たず、常に愛情深く育て
ればそれだけでいいんです。『あなたはママの赤ちゃん。お父様の
赤ちゃん。司祭様も女王様も先生方も全ての大人の人たちはあなた
を愛していますよ』って語りかけ続け抱き続ければ、みんなみんな
良い子に育ちます。お金や教養は関係ありません。全てはよりよき
暗示ですわ」
 先生はゆっくりとした口調ながらも自身ありげにおっしゃいます
から、こちらはちょっと拍子抜けしてしまいました。でも、確かに
言われてみれば、子育てなんてそれだけの事なのかもしれません。
ただそんな事ができるのは日本広しといえどここだけ、亀山でしか
出来ない芸当のようでした。
 「私たちはお父様方が天使のように汚れのないお子さんをお望み
なので、そのように教育しているだけですわ」
 「茜ちゃんは快活なよい子ですからきっと人気者なんでしょうね」
 「打てば響くタイプなのでお父様だけじゃなく他のおじ様方にも
人気がありますのよ。おかげでお仕置きされる事も多いですけど
……。ただ、あの子ならそれも乗り越えられるでしょうから心配は
していませんのよ」
 「なるほど。でも同じように育てていても、やはり個性は人それ
ぞれ、中には優等生タイプというかお仕置きに縁のない子もいたり
するんじゃないですか…」
 「ええ、理屈はそうですが……そもそもお仕置きに縁のない子
なんて実は一人もおりませんのよ。お仕置きを受けるのは神様の
思し召しでもありますからね、私たちとしてはどの子にも平等に
光が当たるように育てるだけですわ」
 先生は茜ちゃんが戻ってくるはずの校舎の入り口を気にしながら
こう続ける。
 「誤解があるといけませんが、お仕置きに縁のない子だからその
子は優秀という事ではないんです。むしろ、そうした子は恥をかき
たくないあまり、何に対しても消極的になってる子が多いですから
ね。むしろ、好ましくないんです」
 「打っても響かないタイプ?」
 「そうした子は何かと言うと自分の殻にこもってしまいますから
……私たちにとってはむしろ困った子なんです」
 「いけませんか?そんな優等生タイプの子は?」
 「恥をかくというのは女性にとっては辛い事です。心を痛める
出来事です。でも、それを嫌がっていては肝心な時にも目を背けて
チャンスを潰したり、困難を恐れて小さな傷口をかえって大きく
してしまい、揚句の果てに、取り返しのつかない事にもなりかねま
せん」
 「度胸をつけさせるってことでしょうかねえ?」
 「ええ、そう言う事でもあります。よく男は度胸なんて言います
けど本当に度胸が必要なのは力のない女の方なんです」
 「で、ここならハレンチなお仕置きも安全ということで訓練して
いるってことですか?」
 「もともとこうしたことは親子のような親しい関係があって成り
立つものなんです。お仕置きってもともと家庭内の出来事ですから
……ただ、ここは特別なんです」
 「特別?」
 「ここの場合、子どもたちにとっての『お家』は『お父様の住ま
い』ということではありません。亀山にあってはこの山そのものが
天使たちの家であり揺り篭なんです」
 「なるほど、そんな理由があったんですね。私はてっきりお父様
の要望に応えるためかと……(≡^∇^≡)……とんだげすの勘繰りで
したね」
 「いえ、もちろんそれもありますよ。お父様に満足していただく
のは子供たちや私たちの義務ですから。ただそれが子供たちのため
にならないなら、もちろんやりません」
 「ということは、恥ずかしいお仕置きは効果があると…
(≡^∇^≡)」
 「ええ、女王様はそういうお考えですし、私も無意味だとは思っ
ていないんです…ま、子供の頃はなんてハレンチな事するんだろう
って思ってましたけど……(≡^∇^≡)」
 「ん?『思ってました』?…ってことは先生もここのご出身?」
 「ええ、子供の頃は裸のお尻を晒すたびにママや先生方を恨みま
した。ですが、それが良いか悪いかをいう前にこれは必要なんだっ
て実社会へ出てからわかったんです」
 「裸にならなきゃならない事態になったんですか?」
 「まさか」
 先生が笑う。
 「そうじゃなくて、私たちって……世間知らずで社会に出て行く
でしょう。それって箱入り娘さんと同じなんです。そんなお嬢様
たちとお知り合いになれたのでお話をうかがっていると、実は育て
られ方もよく似ていて…彼女たちもお家で恥ずかしいお仕置きを
たくさん受けたそうなんです。もちろんお嬢様たちの場合は、
お父様お母様の他は古くから仕えている女中さんだけの密室でした
けど、でも、これが一人二人なんかじゃなくてわりとどの家庭でも
行われていたみたいで……それで、私たちだけが変なことをされて
たわけじゃないんだってわかると、考え方も少しずつ変わってきた
んです」
 「でも、中にはなかなか隙を見せない子もいるんじゃないです
か?」
 「ええ、優等生タイプにはそういう子が多いんですが……でも
そこは子供の事、なんとかなります。理由はなんとでも見つける事
ができますから……」
 「たとえ、こじつけでも…」
 「ええ、そのような事をした事もあります。大事なことは、みん
なと同じようにちゃんとお仕置きを受けさせること。ちゃんと恥を
かかせることなんです」
 「でも、大丈夫なんですか?そんな事をして…」
 「どうしてですか?むしろその方がお友だちともうまくいきます
わ」
 「お友だちと?」
 「女は妬み嫉みの強い生き物ですからね、『一人のお友だちが自分
たちとは違ってお仕置きを受けなかった』となると……それを許さ
ない子が多いんですよ」
 「でも、それはその子が大人たちの意向に副って生活してきた
結果で……その子の責任ではないでしょう」
 「はははは(^◇^)」先生は意外なほど高らかに笑いました。
 そして………
 「それは男性の考えですわ。女の子の社会はそうはならないん
です。お友達や仲間の子たちとは理屈抜きに同じ事をしていたいん
です」
 「なるほど、運命共同体って事ですか」(≡^∇^≡)
 「これって女性にとってはとっても大事なことなんですよ。『いつ
までもみんなとお友達でいたいけど、一緒になってお仕置きは受け
る勇気はない。でも仲間はずれにもなりたくない』こんな気持が心
の中で渦巻いているんです。ですから優等生の子を無理やりにでも
お仕置きしてやると、むしろいい顔になるんです」
 「いい顔?……ですか?」
 「ええ、何と言ったらいいか…そうですね…憑き物が落ちたという
か、…ほっとしたというか」
 「不思議ですね。そんなことしたら嫌われて口もきかなくなるみ
たいに思えますけど」
 「その反対のケースがほとんどですわ。口にはだしませんけど、
私、女ですから、その子の気持がわかるんです」
 「どういうことですか?」
 「女の子というのはお友だちの中で一人浮いてしまうのが嫌なん
です。『不正をしたわけじゃないんだし私が優秀だったからお仕置き
受けないだけでしょう!』なんて言ってみても虚しい言い訳でしか
ないんです。女の子の世界ではみんなと同じ事ことをするのに理由
なんか必要ないんです。『一人だけ抜け駆けしてずるい。あんな子、
許せない』女の子の理屈はこれだけです。それだけで、陰口をたた
かれたり、仲間外れにされたりしますから」
 「え!?だって…」
 私はそこまで言って思わず絶句してしまった。
 「だから女の子って、一人でお仕置きを受ける時はこの世の終わ
りみたいに泣き叫ぶくせに、みんな並んですっぽんぽんにすると、
その時はわりと平気な顔してる子が多いんです。……どうしてだか
わかります?」
 「いいえ」
 「女の子は、みんなと一緒にいるという安心感が気持をとっても
楽にしてくれるんです。これはどんな精神安定剤より効きますのよ」
 「ほう……」
 「実は、女の子にとって一番辛い罰というは、ぶったり叩いたり
することでも恥をかかせることでもないんです。…長い時間一人に
すること。孤独の中に置くこと。これが女の子にとっては極刑なん
です」
 「そんな罰がここにもあるんですか?」
 「えっ?」先生は一瞬戸惑った様子だったが、すぐに笑って……
 「ありませんわ。だからやらないんです。子どもたちに与える体罰
は、どんなに厳しいものでも、愛の中で行われなければ何の意味も
ありませんもの」
 「なるほど」
 私が気のない返事を返すと、そこへ茜ちゃんがようやく戻って
きた。

§10 <天使の庭で>

§10 <天使の庭で>

 茜ちゃんは二三冊の本を大事そうに抱えてやってくるとベンチに
腰をおろした私の前でペコリとしてから、そのまま勢いよく私の膝
の上に飛び上がる。
 あっという間もあればこそ、ドスンという重みが膝にかかる。
 『おいおい』
 と言ってみたかったが、彼女の屈託ない笑顔に負けて頭を撫でて
しまった。
 「ねえ、これよ、この式、これってどうやって解くの?」
 彼女はそそくさと栞(しおり)を頼りに本のページを捲ると単刀直入
に尋ねる。
 「ほらほら、慌てないの。解き方がわかっても数式のたてかたが
分からないと意味がないだろう」
 私は入れ込むじゃじゃ馬を落ち着かせるようにさらに抱き寄せる。
 そして、ほっぺたのうぶ毛が私の息でそよぐ光景を楽しみにいく
つかの設問に数式のたて方や解法を教えてやったのである。
 解法は一度教わると二度と私の手を煩わせることがなかった。
 「解法は誰かに習ったの?」
 「最初はちょこっとお姉様。でも、あんまり丁寧に教えてくれな
かったからしつこく聞いたら…こんなのは中学生になってからやれ
ばいいのとか言っちゃって……意地悪言うから、あとは自分で本を
見て覚えたの」
 「そうかあ、独学なんだ。そりゃ凄い!今なら中学生のお姉様た
ちにだって負けない力があるよ」
 「ホント!?やったあ!」
 「でも、鶴亀算の方はまだ完璧にはいかないんだろう?」
 野太い声にはっとしてあたりを見回すと高遠のおじ様だ。彼だけ
ではない、いつの間にか周囲におじ様達が集まっていて私たちの
様子を羨ましげに覗き込んでいた。
 「いいのよ、あれは…問題解決」
 「どうして?」
 「だって連立方程式で解けば……こちらの方が簡単だもの」
 「なんだ、それで方程式を教えて欲しいって言ったのかあ。……
でも、鶴亀算は算数としての考え方を身につけるのには大事な訓練
になるからね、おろそかにしてはいけないんだよ」
 「答えが合えばいいんじゃないの?」
 「今は良くても、これから学年が進んで高い次元の数式に取り組
まなければならなくなると、どうやって答えを導きだしたかが大切
になってくるんだ」
 (((((((・・;)そ~~と覗いてみる
 「ふ~ん」
 気のない返事だが、それは今、問題を解いている最中だからだろ
うと好意的に解釈した。
 「先生、この子は女の子には珍しく算数が好きみたいですね」
 「特に算数が、というのではなく何に対しても好奇心旺盛ってと
ころでしょうね」
 「お父様は?この道?」
 「さあ┐('~`;)┌私にはまだ何も…でも、お気に入りみたいです
から、この子が望めば、あるいは男の子たちの進学クラスに入る
かもしれませんわ」
 「すると、四年生の大学へ行って、末は博士か大臣か……」
 「さあ、それはどうでしょう。女の子は何かにつけて飽きやすい
ですから……」
 私は茜ちゃんを膝の上に乗せて30分も頑張った。亀山では日頃
から膝を鍛えておかないと楽しみが半減します。(^-^)
 「さあ、もういいでしょう。他のおじ様のところへも行かなけれ
ばならないわ」先生はその時そうおっしゃったが、気がつけば私た
ちの周囲を取り囲んだおじ様たち輪がぐんと狭まっている。
 待ちかねたおじ様たちの中には茜ちゃんの頭を撫でたり、進んで
方程式の解法をレクチャーする人までいた。
 そう、すでにこの時、茜ちゃんはここにいるおじ様たちのアイド
ルになっていたのである。
 「さあ、おじ様にお仕置きをお願いしなさい」
 「え~~もう少しいいでしょう!」
 「だめです。桐山のおじ様には特にお世話になったんだからパン
ツを脱がしていただいた方がいいかもしれないわね」
 「嫌よ、どうしてそうなるのよ」
 「だって、その方が今習った事を忘れないでしょう」
 「嘘よ、そんなの」
 真に受ける顔が何とも可愛い。
 「おいで」
 そう言って彼女を裏返しにするとその顔がさらにひきつる。
私は茜の短いスカートを捲るとおもむろにショーツに手を掛けて
みた。すると、今度は観念したような顔になる。その可愛いことと
言ったら…
……でも、こちらもそう時間を引き延ばせない。
 「ほら、いくよ」
 そこで、ショーツの上から二つ三つどやしつけてやる。本当は
もっとあやしていたいところだが…
 「ほら、終わったよ」
 こう言って開放するしかなかった。
 すると、膝を降りるなりまたペコリと頭を下げて次のおじ様の
処へ。
 我々おじ様たちができるのはこれだけ。これで不満なら今のお父
様から茜ちゃんをもらい受け、自分の子どもにするしかない。ただ、
私はこれで満足。今の今まで茜ちゃんが座っていた暖かい重みが私
の心の奥底をしばらくは揺さぶり続けてくれるからそれで十分だ
った。
 どんな高級ワインも豊潤なブランデーも彼女の笑顔にはかなわな
かったのである。
 この後、茜ちゃんは二三人のおじ様のお膝で可愛がられると、
最後はお父様の胸に収まった。一旦は席を立ったお父様が、頃合を
見計らって公園の隅で彼女を待っていたのだ。
 すると、当然と言えばそれまでの事だがお父様への対応は私たち
とはまったく違っている。いきなり首っ玉にしがみつくと、膝の上
にでは『この子はこんなにも小さかったか?』と思わせるほど身体
を小さく縮めてお父様の小さな胸の中に納まろうとするのだ。
 言葉だって……、
 『これじゃあまるっきり赤ちゃんじゃないか』
 私は二人の会話を聞いていて呆れてしまった。
 「あ~ちゃんね、今日、ママからおちおき受けたの。とっても痛
かったんだから。それに、おぢちゃまたちが見てるところでなんだ
から……とっても恥ずかしかったんだから……ママに、あ~ちゃん
はもう大きな赤ちゃんなんだから、大人の人の見ている処ではパン
ツを脱がさないでくださいってお願いしてよ~~」
 「しょうか、しょうか、それは災難だったったねえ。でもね、
先生もあ~ちゃんを立派にしようってお仕事だからね、お仕置きは
仕方ないんだよ」
 「仕方なくないよ。あれって、とっても恥ずかしいんだから…」
 「しょうか、嫌か……でも、嫌な事をするのがお仕置きだから
なあ」
 茜ちゃんはそれから先もお父様のお膝の上で15分も甘え続けた
のである。

                                 <了>

12月22日

<12月22日>

 子どもって何のために造るんでしょうか?

 昔だったら『家の跡継ぎを創る』とか、今でも『自分の血筋を
後世に残したい』などというのがあるのかもしれません。

 でも、一番大きな理由は『可愛いから』『自分の意のままに
なって自分を慕ってくれそうだから』といったことなんじゃない
でしょうか?

 要するに親から見ると子どもには最初から『口をきくお人形』
としての役割が与えられているわけです。

 ところが、昨今では『子供の人権、人権』と叫んではこうした
大事な役割を子どもから取り除こうとする不逞の輩が少なく
ないことに驚きと嘆き、何より怒りを禁じえません。

 そもそも子どもというのは、たとえ億万長者の家に生まれ
ようとも『寄る辺なき身の上』。育ての親に貢ぐだけのものは
何一つとしてない存在のです。

 いくら快楽(SEX)の末にできたものだとしても自分たちに
何一つのメリットももたらさないこんな厄介者を、どうして面倒
みなきゃならないんですか?

 義務感や社会の慣習や法律なんていうのは、所詮、建前
です。
人間、極論すれば全員がエゴイスト。自分の立場が危うく
なれば、本音がでます。割を食うのは子供なんです。
虐待が横行する社会風潮がそれを何より証明しているじゃ
ないですか。

 感情に流されず冷静になって考えてみてください。

 お金と労力をつぎ込む以上、親はせめても可愛くあって
もらわなければならないんです。
 そしてそれは、子供ができる唯一の営業でもあるんです。

 何より、それを奪って不幸になるのは子供の方なんですよ。

 そりゃあ、子供をからかったり不条理なお仕置きを
仕掛ける事は、そのこと自体、違法であり人権侵害です。

 でも、赤信号を一度も渡ったことがないというのは、
そんなに自慢できることでしょうか?
 遊びもない家庭がそんなに幸せだとは思いません。

 そもそも親子という特殊な関係を他人との関係と
同尺度でみて、「けしからん」なんて言う方が、よほど
世間を知らないと思いますよ。

 『ギブアンドテイク』というビジネスの原則は基本的に
親子だって同じなんです。
 そして、その一歩を踏み込んだ先に、実は愛情って
あるんです。


*)Leeさんの絵
<Leeさん No.1>
<Leeさん No.2>


<<お知らせ>>
小説(というほど大そうなものじゃありませんけど)の執筆が忙しく
なったので、この日記(エッセイ)のコーナーはしばらく休止となり
ます。あしからずご了承くださいませ。m(__)m

12月21日

<12月21日>

 昔、回覧板にこの絵を飾ったら女の子達
から「これってSMじゃないですか!」と
言われてしまいました。

 「でも、これって女の子がお浣腸されて
る絵ではあっても、お仕置きとしてこうさ
れているとは限らないでしょう」って反論
したのですが、聞いてもらえませんでした。

 このように、そのお仕置きに愛があるか
どうかは極めて主観的なものですから親の
方は虐待をどのようにでも言い逃れできて
しまいます。

 これが、今日、お仕置きを虐待と同種の
ものとみる根拠となっているわけですが、しかしながらこれって本来
別のものなのです。

 医者が治療のためにメスで患者の身体を切り裂いた場合だって
その手術が必ずしも成功するとは限りません。「手術をしなければ、
もう少し長く生きられたのに」と悔やむことだってあるでしょう。
でも、だからといって強盗にナイフで切りつけられたのも結果に
おいて同じじゃないか、とは言わないはずです。

 お仕置きを虐待と同種のものとしてみる
昨今の風潮は思考回路があまりに幼稚過ぎ
てとても不愉快です。

 もちろん、だからと言って、何をしても
許されるというものではありませんが、親
や教師、人生の先輩たちがその強い意志を
示す一つの手段としてお仕置きという方法
があったとしても、その結果に顕著な効果
がなかったとしても、それを責めるべきで
はないと私は考えています。

 私のお仕置き小説はあくまで『親は子供
を愛している』という前提にたって語られていますから一般のSM
作品のように不条理を楽しむというのではないのです。


(*)
以下の絵は、ネットの性格上、一般に流布される可能性が
ありますから掲載は見送ります。

<本来は左上にあった絵>
9月9日にも一度同じ絵をこの日記に出したと思いますが、
加藤かほる先生の和物のイラストです。和室でお母さんと
おばあちゃんという設定でしょうか、二人の婦人から少女が
イチヂク灌腸を受けているところが描かれています。

<本来は右下にあった絵>
こちらも10月11日に一度この日記に出した絵です。
オムツ姿の少女が廊下で後ろ手に縛られ吊り上げられて
爪先立ちになっているところが描かれています。
SMと言えば、それも言えるかもしれませんが、私的には
お仕置きでも通る絵です。

12月20日

<12月20日>

 子供というのは何の知識もなく生まれてくるのですから、
まずは親を信頼して暮らす事になります。

 でも、親の方はというと、もう何十年と生きていますからね、
子どもをからかうなんてことは、本来簡単にできるわけです。
今の言葉で言えば『いじり』というんですか…。

 でも、今の親たちはこれを嫌がります。きっと、『子供の
人格を尊重しなければ』という思いが強いんでしょう。

 何とも紳士的でご立派な行いですれど……でも、私、
これもいけないことだと思っているんです。

 そりゃあ他人同士の関係ならそれはそうでしょうが、
親子というのは特殊な人間関係ですからね、そんな裃を
着て接するようでは伝わるものも伝わらない気がします。

 よくお仕置きの場面で親や教師がその事に能書きを言う
場面があります。『こういう罪を犯したからこういう罰を与える』
的なことです。

 それは一般社会の刑罰になぞらえて為政者側は自己を
正当化したいという思いがあるのでしょうが、私の経験則から
言ってそれは何の役にも立ちません。もちろん、その瞬間は
『ああ、そうだなあ』とは思います。でもそんなもの、ものの半日
と持ちませんから……。

 お仕置きの役割はそうではないんです。お仕置きは親子が
親子であることを確認する場なんです。猿の社会にはマウン
ティングと言って序列上位のものが下のものの背中に乗ると
いう習性があります。

 お仕置きはこれと同じで「俺はお前の親なんだぞう!」と
親や教師が自らの立場を誇示しているにすぎません。

 ただ、それだけの事。ただそれだけ。
 でも、それって大事な事なんです。

 子供は世間を知りませんんから、すぐに増長します。
それが怖いもの知らずで成功に繋がる事もありますが
虎の尾を踏んで大きな痛手を負う事も。

 そんな時、愛する虎が未熟者を甘噛みしてみせるのが
お仕置きなんですよ。

*)lupusのホームページ
 お仕置きドラマ(GEGfilmの作品)のDVDを販売するHPです。
過激なシーンもありますからご注意ください。
lupusのサイトへ

12月19日

<12月19日>

 私は親や教師にあまり迷惑をかけずに育ってしまいました。
おかげで周囲の子に比べれはお仕置きされた回数は少な
かったと思います。

 でも、それが幸せだったかというと、さて、どうでしょうか?

 お仕置きは虐待とは違います。お仕置きをする親や教師は
その子を愛していますから、ただその子を泣かせればいいと
考えているわけではないのです。

 悪い行いをやめて、よい行いをして欲しいと願っているわけです。

 もちろん、お仕置きでそれが即座に実現するわけではないのです
が、『親(教師)が怒っている』という現実は伝わるはずで、それで
十分なのです。あとは日頃の愛情がその子に考える時間を与えて
くれて、やがて自分なりの答えを導き出すことになります。それは
必ずしも、親のポリシーと一致しないかもしれませんが、それは
世代間の価値観のずれや親子でも育つ環境が違うのですから
仕方がありません。

 大事な事は子供の側がその問題をその後も心の中で検証し続け
る事。お仕置きという不愉快な刺激は、単に知識として善悪や
社会常識を学ぶより遥に多くの場面で子供の心にフィードバックを
もたらし、子供がそのつど考えることで自分なりの正義なり常識を
構築するのに役立つのです。

 優等生はその高い順応性ゆえに大人たちから往々にして仲間
意識で見られがちですが、人生経験の希薄な彼らに大人並みの
判断力や胆力はなく同世代が棲む森の中で道に迷う事も少なく
ないのです。

 そんな時、彼らが逃げ込みたがるのが親の絶対的な支配下に
あった頃の風景。泣いてもわめいても暴れても親の愛以外、
心と身体がどこにもぶつからない幼児の世界。
 その象徴こそがお仕置きなのです。


(*)
<左上にあった絵>
<Leeさんの絵>
<本来は右下にあった絵>
『うる星やつら』のラムちゃんとテンちゃんが抱き合ってるシーン
です。ネットで見つけた映像だと思ったのですが今回は見つかり
ませんでした。

12月18日

 <12月18日>

 一部の読者さんから、私の下手な小説が読みたいとの
リクエストがあがっております。思えばこの回覧板を読む
人たちの今や過半数の方々が私の小説を一度も目にした
ことがないわけで、ご要望はもっともかと思いますが、私は
すでに筆を折った身、今更古めかしい内容の作品を目に
しても得るものはないかと存じますのでご容赦ください。

 無論、過去に掲載した小説をコピーなどして収集されて
おられる方もおられる由、そうした方々から入手れるのは
何ら差し支えありませんので、ご理解のほどお願いいたし
ます。

 さて、上の絵はどこかのマンガの一コマ。理知的な匂い
のする顔の中に憂いを含んだ瞳が創作意欲をかき立てます。

 お仕置きというのは、言うまでもなく親や教師といった権力者が
未熟な者(子供)に力ずくで何かを訴えようとすることですから、
その相手方はたいてい劣等生の場合が多いのですが、中には
何一つ問題行動のない優等生が対象となる場合があります。

 ただそんな小説も、大半は、その優秀さ完璧さをねたんだ
劣等生たちが策を弄してその子を罪に落としいれるという
ストーリー展開なのですが、私の場合は、一見非の打ち所の
ない優等生に見えるその子があえて罪を犯してお仕置きを
望むというみょうちくりんな設定になっている場合が多いん
です。

 悪人の出てこない小説、愛がテーマの私の小説では
お仕置きを求められた先生や親もまたその子の心の
葛藤を知っています。

 ですから最初はなだめて解決しようとしますが最後は
厳しいお仕置きでその子に一時の愛と安らぎを与える
ことにするのです。

 『最も不自由な人間は何をやっても許される人。その点、
赤ん坊は最も自由だね』という格言を残して。

*)
<左上>
理知的で、それでいて憂いを含んだ瞳に心を動かされて
切り抜いてしまったマンガの少女です。
<右上>
アンガースタイン家の子供たち
9/19でしたか、以前にも一度登場させた幼子です。
素人の私が言うのも何ですが、ローレンスさんは有名な
画家さんではないかもしれませんが子供を描かせたら
上手ですよ。

12月17日

<12月17日>
 昨日は年甲斐もなくお仕置きとは関係
ない話をしてしまいました。こうした事
は一言二言で説明できることではないの
で戸惑われたでしょう。ごめんなさい。
 このページの二枚の写真。いずれも幼
い男女の後姿。何だか微笑ましくもあり
ちょっぴり意味深でドラマチック。日常
と非日常が一枚の写真に納まっていて素
敵です。 私も幼い頃は女の子とのお付
き合いの方が多かったせいでこんなこと
していたと思います。
 当時の女の子に対する私の評価は好意
的でした。いつも身綺麗で親や教師には従順、誰にでも優しいし少し
ぐらいつまらなくても習い事もサボりません。そんなわけでとても
立派な人種に見えたんです。対して男の子はというと、服はいつも
泥だらけ、親や教師にも反抗的で、誰彼となく意地悪はしかけるし、
興味がなくなると習い事もよくサボる。あまり評価は高くありません
でした。
 ですからお仕置きされるといえば相手はもっぱら男の子だったの
です。
 そんなこともあって私は『世の中みんな女の子ばっかりだったら
幸せなんだろうに』って思っていました。
 ところが、時が移り女の子たちも成長していくと、彼女たちが必ずし
も天使ではないことにこちらも気づかされてしま
います。
 自分を飾り立てる為には平気で嘘をつき。本人
を前にしては何も言えないくせにその場からいな
くなると陰口で大盛り上がり。何をやっても常に
自分が正しいと言いわんばかりの自己中心的な性
格や善意を友達に押し付ける悪癖は私を失望させ
るのに十分だったのです。要するに、女の子の優
しさというのは弱い自分を守るための煙幕なんだ
って分かったんです。その頃からでしょうか。お
仕置きの中心が男の子から女の子へシフトしたのは……。

*)
<左上>
幼い男女が街の通りを肩を組み合って歩いている後姿の写真。
<右下>
よちよち歩きの男の子と女の子が暗い森を出て明るい場所に
今まさに抜け出る瞬間を二人の背後から撮影した写真。

12月16日

<12月16日>
 私も昔は今の人達と同じように男女
が同じ権能と役割をもって創る社会が
理想だと考えていました。
 でも、今は考え方が違います。男女
が同じように幸福感を得られる社会で
なければならないとは思いますが、そ
れは必ずしも男女が同じ権能を有して
参画する社会ではないと思っています。
 浅学菲才の私の様な者でも長く生き
ていればわかることですが、男女には
体の構造上脳の回路構成上どうしても
相手に劣る仕事というのがあるのです。
それを同じ仕事をさせてうまくいくはずがありません。
 今更古臭い考えと思われるかもしれませんが、男性が仕事、女性
が家の中を切り盛りするというのが、やはりお互いの機能に則した
働きだと思うんです。
 もちろん、女性が社会参画してはいけないだとか言っているのでは
ありませんよ。例えば未亡人になって働きながら子育てしなければ
ならなくなった時の支援や政治的な発言力の強化には取り組んで
いかなければならないと思っているんです。
 でも、女性の有り様、たとえば主体的な形で
仕事の成果を求めない。もちろん彼女たちだっ
て一所懸命仕事はしていますが、彼女たちの場
合、『○○さんの為にする』というお付き合い
感覚なんです。これって女性の行動様式全般に
見受けられることで自ら企画立案した広い意味
での仕事の成果に満足するということはほとん
どありません。女性には人が評価しない事をや
るなんて、きっと無駄に見えているでしょうが、
これがない人たちだけの社会は発展していかな
いんです。
 男女参画が今の形なら危うい。私はそう思います。

*)
<本来左上にあった絵>
牧場の聖母(ラファエロ)
牧場の聖母
<本来右下にあった絵>
幼い女の子が自分にできた新しい弟(又は妹)を
ゆりかご越しに見ている絵です。
(この辺になると、絵は文章とリンクしていません
から、単なる飾りです)

12月15日

<12月15日>

 いい歳ををしてこんな事を言う
のも恥ずかしいのですが、私には
女という生き物がどうにも理解で
きないのです。
 ですから小説の中では偉そうな
顔をして分かったようなごたくば
かり並べていますが本当のところ
は自分の体験を焼直したものがほ
とんどなのです。
 そう、『女の子が今こんな気持で
ぶたれている』なんて書いてあっ
てもその実お尻をぶたれている子
にはオチンチンがついているとい
うわけです。
 もちろん、私の小説の読者はその大半が私同様(?)すけべな中年
男性ですからそれはそれでいいのかもしれませんが、たまに女性
読者から投げかけられる冷たい視線はやはり気になるのです。
 『この人、女性の気持がまったくわかっていない』
 そう主張する彼女達に反論するすべがないのが悔しいのです。
『すべて分かっているけど男性読者のためにあえてこういう風に
書いているんだ』ならいいんですが『土台お互いの生理が違う
んだから仕方がないだろう』
なんて居直ってみても問題の解決にはなりま
せんから……
 そんな女性を私がどんな風に見ているの
か、『偏見だ!』という批判は承知の上でお
話しましょう。
 そもそも女性というのは物事を抜本的に解
決する意欲に乏しいみたいです。
 『その場だけの言い逃れは正論』『隠せる
ものは何でも隠す』『隠せたことは解決した
ことと同じ』『仕事の成果より自分への噂話
の方が大事』……これっておばちゃんから少女までみんな同じなんです。


*)SUさんのイラスト

<本来は左上にあったイラスト>
SUさん F/f OTK (1)

<本来は右下にあったイラスト>
SUさん F/f OTK (2)

12月14日

<12月14日>

 二重三重四重と、まるで重箱
みたいに無駄に歳ばかり重ねて
きた身には歳が一桁なんて頃は
懐かしくて仕方がありません。

 あの頃は浅はかな悪戯ばかり
やらかしてはお仕置きばかりさ
れてました。

 でも、今、振り返ってみます
とね、『ぶたれたから反省した』
なんてことはなかったような気
がします。

 確かに、ぶたれたその瞬間は反省したかもしれませんが、そんな
もの子どもの世界では30分ともちません。どんなにしょげ返って
いても、
 「ごはんよ~~」
 というお母さんの声と共にすべては水に流れ、
出された食事は嬉々として頬張ります。

 もちろん、以後何もなければいいんですがね、
子供ってのは自分の欲望に正直ですから、また
何かやらかしては叱られるはめになります。
 それでまたお仕置き。

 お仕置きなんて胃薬の代わりにコーラを飲むよう
なもので、それで根治するわけじゃないんですが、
それでも親の方は少しは気が晴れるでしょう。
だから無価値ってわけじゃないんですよ。

 すると、『なあ~んだそんなことか』って思うか
もしれませんが、でも、これって大事なことなん
ですよ。今時の親ときたら、修道僧にでもなった
つもりで子供と接してるでしょう。
 だから途中で挫折してしまうんです。

 子供が一番嫌うこと。別の言い方をすると一番効果的なお仕置き
というのは親に拒絶される事なんです。

 親の方が泣いてみる、すねてみる、悪い事をしてもまるでペットが
粗相をしたように無視して後片付けする、こんな事が子供にとっては
一番効果があることなんです。何しろ彼らは寄る辺なき身の上なん
ですから……それは幼い子にもわかるんですよ。


(*)

<本来左上にあった絵>
お母さんの言葉がけっこうきつくてリアルです。

<本来右下にあった絵>
少女がイケメンのお兄さんにOTKでお尻を叩かれているイラストです。

12月13日

<12月13日>

 女の子の場合、お尻叩きに使うお道具は西洋でも普通はトォーズ
のような平ったい革鞭のようです。女の子は皮膚が弱いのと筋肉の
痛みより皮膚表面の痛みに敏感だというのがその理由のようです。

 お仕置きは大人同士でやるSMとは異なりただ相手を痛めつけれ
ばいいという訳にはいきませんから、後々の傷や健康といったこと
には十分配慮するみたいです。

 でも、十分配慮してなお西洋社会の子供へのお仕置きは日本人
の常識に照らせば半端でないほど厳しいようです。

 私もじかにその現場を見た訳ではないので偉そうなことはいえま
せんが、留学生の誰に聞いても平手は勿論お道具でのお仕置き
を経験した事がないなんて人は一人もいませんでした。
(今から40年も前はですよ)

 もし、女の子にケインのような鞭を当てる場合にはニットのパンツ
を穿かせるのが普通で、こうしておいけばぶつ方も心置きなく鞭が
使えますしニットのパンツ越しとはいえ女の子には辱めという罰
にもなります。

 もちろん男性(父親や教師)が女の子にケインの鞭を当てるのは
極めて例外的でよほどハレンチなことをしたか家名に傷を付ける
ようなことでもしなければ父親が直接手を下すことはないとくだん
の友だちは言っていました。

 そもそも、女の子へのお仕置きというのは同性である母親の
仕事だったのです。
 『成績が落ちた』『反抗的な態度をとった』『規則を破った』など
日常的トラブルはあくまで母親の仕事というわけです。

 ただ、こうも言っていました。父親が女の子のお仕置きに関与
していないというのは誤りで、比較的重い体罰に類する時は
自分で判断して母親に「こうしろ」「ああしろ」と具体的に命じる
んだそうです。そのあたりは、何だかんだ言っても男中心の
欧米社会らしいところですね。(40年前はそうだったんですよ)

*)
<左上>
http://maemitearukou.blog.fc2.com/category13-39.html
(『スパンキングとSM』のページから写真を保存)
<右下>
これも同じようにネットのどこかで見つけたものですが、
今回あらためて探したのですがみつかりませんでした。
写真自体は少女がおじさんにお尻を叩かれているという
ごくノーマルなOTKです。

12月12日

<12月12日>

 私は幼い頃よく女の子のお仕置き場面に遭遇した。もちろん、
当時は親が子供を折檻することが日常的だったから一般の子
だって今日よりそれを目にする機会が多いわけだが、それだけ
でなく女の子のそうした痴態を見たいというスケベ心が他の子
より強いものだから常に情報を求めて各所にアンテナを張り
巡らしていたのである。

 小説を書き始めたのは小四の年だが、思いは幼稚園からで、
言ってみれば物心ついた時からのスケベ。幼稚園へは女の子
のパンツを求めて通っていたと言っても過言でないくらいだった。

 ただ気の弱い子だったから、男の子らしく『自ら進んでスカート捲り』
なんて勇気はなくて、もっぱら先生が女の子を折檻する場面を覗き
見するだけの出歯亀少年だったのである。

 そのため女の子の動静には敏感で、男の子より女の子たちとよく
遊んでいた。そして、彼女たちが何か不始末をしでかすと、さっそく
先生に御注進。もしそれがお仕置きへと進みそうなら、さっさとその
場を離れ、事前にチェックしておいた安全な場所へと身を隠す姑息
さだったのである。

 当時の常識では幼稚園児というのは赤ちゃんと同じ扱い。年端も
行かないこれらの子供たちへは、女の子でも公開処刑というのが
珍しくなかった。

 いつだったか、女の子たちがボディペインティングに興じていた時
などは、みんな素っ裸にされて立たされたんだけど…乱痴気騒ぎの
危うさにお仕置きの匂いを感じた私だけが一瞬早くその場を離れて
礼拝堂へ。

 その小窓越しに女の子たちの割れ目を楽しく観察していた。
 いい時代だったなあ。(^◇^)

*)
<左上>
M/f
<右下>
注)これは私の日記に貼り付けた原本ではありません。sassyさんの
絵は、本人の意向だと思うのですが、多くの作品がネット上から引き
上げられており、これも同じ絵をアメリカのブログで見つけたもの
です。
Sassyさんのイラスト

12月11日

<12月11日>

 色々書いてきましたけど、僕が描くお仕置き小説がどんなものか
少しはお分かりいただけたでしょうか。

 そりゃあ、たしかに人を虐めて楽しんでいるわけですから、その
限りではSMでしょう。

 そんなこと真似する人が出たら子供の心が傷つきますと言われ
たらそれも否定しません。けれど、そもそも心を傷つけずに大人に
なれる人なんていますか?だいいち、そんな無菌室で育った子
なんて大人になって何かあったら立ち直れませんよ。

 大事な事はいかにして子供の心が傷つかないように育てるのでは
なく、傷ついた心を癒してくれる人(親、教師、友達など)をどう確保
するかでしょう。そして、さらに大事な事は、そうした信頼できる大人
の愛に身を任せてお尻をぶたれることじゃないでしょうか。

 これって、虐待とは違いますよ。

 人の世がどんなに進歩しても雑菌を一つ残らず取り除いて暮らす
事はできません。心の問題も同じで全てが善人の村なんてありえ
ない訳です。しかし、雑菌や悪意のプールの中で暮らさなければ
ならない我々はそれに対応できる強い心身も持っています。
 それを鍛えることも大切な『愛』だと思いますよ。

 管理する側の親や教師がしっかりとした理性や愛をもって接して
いるなら、多少の不条理だって子供は乗り越えられるはずで、それ
が乗り越えられず自暴自棄になったり自殺してしまうのは、その子
たちが人形やペットとしての愛は受けていても人間としての愛を
受けずに育った何よりの証なのです。

 今の子供たちを見ていると、親のご機嫌取りに体罰を禁止して
きた教育関係者の罪は深いと言わざるを得ません。

 適度にお仕置きのある教育こそがむしろ健全であり、健全な
教育を受けてきた人が楽しむのがお仕置き小説なのです。


*)共にOTKのイラスト
<左上>
F/f
<右下>
M/f

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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